論文内容要旨
膵管癌の EUS-FNA 生検における p53 免疫染色の有用性と臨床病理学的意 義
昭和学士会雑誌 第 77 巻 第 3 号 2017 年 6 月 掲載予定
病理系臨床病理診断学 専攻 鈴木怜佳
【目的】膵腫瘍の質的診断のために超音波内視鏡下穿刺吸引法
(endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration: EUS-FNA)
が急速に普及しているが,播種の問題もあり最小回数での正診率の向上が 望まれる.今回我々は,膵管癌 EUS-FNA 生検材料における p53 免疫染色 像を解析し,悪性判定の有用性や臨床病理学的意義を検討した.【材料・
方法】昭和大学藤が丘病院において 2014 年~2016 年の期間に EUS-FNA さ れた膵疾患 90 症例のうち,膵管癌と最終診断された 50 例のパラフィン包 埋生検組織片を材料に p53 の免疫染色を行った.全腫瘍細胞に対する p53 陽性細胞の割合を百分率で算出し,10%以上の症例を p53 陽性群とし,p53 陰性群との間で臨床病理学的因子について比較した.【結果】p53 陽性細 胞の割合や分布は不均一であったが,50 例中 42 例(84%)に p53 変異を 示唆する明瞭な陽性所見(p53 蛋白過剰発現)がみられた.39 例は p53 陽 性群,11 例は p53 陰性群に分類された.各種臨床病理学的因子(性別,
年齢,局在,腫瘍径,組織分化,リンパ節転移率,遠隔転移率,病期)に 関して両群間に統計学的有意差はみられなかったが,p53 陰性群では膵体 尾部の発生が多く,低分化型が多く,腫瘍マーカーが低値である傾向が認 められた.なお,p53 陰性群のうちの 7 例に対して KRAS 遺伝子検査を行 ったところ全例で codon12 変異が認められた.【考察】EUS-FNA 検体でも p53 陽性所見が高頻度に同定され,悪性診断に極めて有用であると考えら れた.また,p53 陰性例では KRAS 解析が補完的な役割を担い得るものと 考えられた.p53 発現の多寡と相関関係にある臨床病理学的因子は見出せ なかったが,症例数を増やして検討する必要性が考慮された.