<総 説>
がん治療における歯科医師の役割
-口腔がんの放射線治療への関わりを中心に
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔放射線腫瘍学分野 三浦雅彦
1.はじめに
歯科医師が行う治療としてすぐに思い浮かぶのは、虫歯、歯周病、抜歯等の歯に直接関連する 病気の治療や、咬合回復のための義歯作製、歯並びの矯正等であろうか。歯科医師が、実は悪性 腫瘍の治療にも関わっているときけば、意外と思われる方も多いかもしれない。それもそのはず で、世界的に見ても、がん治療は医師が行うのが一般的であり、歯科医師のみのシングルライセ ンスで直接がん治療に携わることが合法的に認められているのは、ほぼ日本だけといってもよい。
治療域はもちろん顎口腔領域に限られるが、口腔外科では、口腔がんの外科療法、化学療法、頸 部郭清、皮弁を用いた再建等、歯科放射線科では、外照射のプランニングや小線源治療等にも直 接参加している。この度、広島大学の河合秀彦先生、谷本啓二先生に、このような領域における 歯科医師の役割について総説執筆の機会を頂き、本誌の趣旨からするとやや異色な感を免れない が、特に私も関わっている口腔がんの放射線治療を中心に、歯科医師によるがん研究の動向も含 めて紹介させて頂きたい。
2.歯科の歴史と発展
歯科治療は、エジプトのファラオに歯牙の生体移植が行われたり、インダス文明の遺跡におい ても歯の治療をした痕跡が認められるなど、かなり古くから行われていたらしい。1700年代には、
フランスで近代的な歯科治療が行われ始め、1800年代には、アメリカで現代に近い歯科医療が始 まった。日本での歯科の歴史を振り返ってみると、何と701年の大宝律令で、耳目口歯科として 歯科が確立されたとされている。また、日本最古の入れ歯は、1500年代に作られた木製のものが 知られており、仏像彫刻の注文が少なくなった仏師がはじめたといわれる。日本で最初の歯科医 師は、1875年(明治8年)に第1回目の医術開業試験に歯科を専門に試験を申請し合格した小幡
キーワード:歯科医師、口腔がん、がん治療、放射線治療、再生医療 〒113-8549 東京都文京区湯島1-5-45
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放射線生物研究 46(3),2011 P211 ~ 220
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