平 成 17 年 度 日 本 自 転 車 振 興 会 補 助 事 業 法 的 環 境 動 向 に 関 す る 調 査 研 究 報 告 書
著作権侵害行為の幇助者等をめぐる判例
平成 18 年 3 月
財団法人デジタルコンテンツ協 会
こ の 事 業 は 、 競 輪 の 補 助 金 を 受 け て 実 施 し た も の で す 。
序
デ ジ タ ル 化・ネ ッ ト ワ ー ク 化 の 進 展 に よ り 、我 々 の 社 会 は 大 き な 変 容 を 遂 げ つ つ あ り ま す 。と り わ け 、デ ジ タ ル 化・ネ ッ ト ワ ー ク 環 境 下 で 取 引 の 目 的 と な る デ ジ タ ル コ ン テ ン ツ を め ぐ り ま し て は 、関 連 す る 視 聴 機 器 や サ ー ビ ス 、さ ら に は そ の 取 引 形 態 や 利 用 形 態 ま で も が 日 々 刻 々 と 変 化 し て い ま す 。
ど こ が 節 目 か 分 か ら な く な る ほ ど の 限 界 的 な 変 革 の 時 代 に あ っ て 、当 然 の こ と な が ら 、 コ ン テ ン ツ を 取 り 巻 く 法 的 環 境 も ま た 変 化 を 余 儀 な く さ れ て い ま す 。技 術 の 進 展 に 沿 っ て 法 整 備 が な さ れ た 分 野 も あ れ ば 、法 整 備 の 真 っ 只 中 に あ る 分 野 も あ り ま す 。議 論 が 収 束 し つ つ あ る 領 域 も あ れ ば 、 緒 に つ い た ば か り の 問 題 も あ り ま す 。
財 団 法 人 デ ジ タ ル コ ン テ ン ツ 協 会 は 平 成 1 4 年 、技 術 や サ ー ビ ス の 進 展 に 伴 っ て 生 じ る 種 々 の 法 的 問 題 に つ い て 論 じ る た め 、 日 本 自 転 車 振 興 会 の 補 助 を 受 け 、 当 協 会 内 に 産・学・法 曹 各 界 の 有 識 者 か ら な る 調 査 研 究 委 員 会( 委 員 長:大 橋 正 春 弁 護 士 )を 設 置 い た し ま し た 。本 委 員 会 は 、以 来 、コ ン テ ン ツ 保 護 技 術 、保 護 技 術 の 迂 回 解 除 を め ぐ る 事 件 判 例 、Peer to Peer(「P2P」) コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 関 わ る 法 的 問 題 な ど 時 宜 に あ っ た 主 題 を 取 り 上 げ 、 成 果 を 積 み 重 ね て ま い り ま し た 。 そ し て 、 平 成 1 7 年 度 の 研 究 主 題 と し て 取 り 上 げ ま し た の が 、 い わ ゆ る 間 接 侵 害 ( 物 理 的 な 意 味 に お け る 行 為 を 直 接 行 っ た 者 以 外 の 関 与 者 の 責 任 ) の 問 題 で あ り ま す 。 関 連 す る 日 米 の 判 例 を 取 り 上 げ 、本 委 員 会 に お け る 検 討 を 経 て 、一 年 間 の 調 査 研 究 活 動 の 成 果 を と り ま と め ま し た の で 、こ こ に 報 告 い た し ま す 。
最 後 に 、本 調 査 研 究 を 遂 行 す る に あ た り 多 大 な ご 尽 力 を い た だ い た 大 橋 正 春 委 員 長 を は じ め と す る 委 員 の 皆 様 に 厚 く 御 礼 を 申 し 上 げ 、 序 と い た し ま す 。
平 成 1 8 年 3 月
財 団 法 人 デ ジ タ ル コ ン テ ン ツ 協 会 専 務 理 事 角 田 周 一
委 員 一 覧
( 敬 称 略 50音 順 ) 委 員 長大 橋 正 春 岡 崎 ・ 大 橋 ・ 前 田 法 律 事 務 所 弁 護 士 委 員
石 新 智 規 ジ ョ ー ン ズ ・ デ イ 法 律 事 務 所 弁 護 士 上 野 達 弘 立 教 大 学 法 学 部 助 教 授
大 野 郁 英 凸 版 印 刷 株 式 会 社 法 務 本 部 法 務 部 主 任 奥 邨 弘 司 神 奈 川 大 学 経 営 学 部 助 教 授
小 川 憲 久 紀 尾 井 坂 法 律 事 務 所 弁 護 士 川 口 和 宏 株 式 会 社 電 通 法 務 室
河 野 智 子 ソ ニ ー 株 式 会 社 ス タ ン ダ ー ド & パ ー ト ナ ー シ ッ プ 部 著 作 権 政 策 室 城 山 康 文 ア ン ダ ー ソ ン ・ 毛 利 ・ 友 常 法 律 事 務 所 弁 護 士
椙 山 敬 士 虎 ノ 門 南 法 律 事 務 所 弁 護 士 田 中 辰 雄 慶 応 大 学 経 済 学 部 助 教 授
戸 叶 司 武 郎 ヤ マ ハ 株 式 会 社 法 務 ・ 知 的 財 産 部 音 楽 著 作 権 マ ネ ジ ャ ー 宮 下 佳 之 あ さ ひ 狛 法 律 事 務 所 弁 護 士
山 神 清 和 首 都 大 学 東 京 都 市 教 養 学 部 法 学 系 准 教 授 オ ブ ザ ー バ
太 田 茂 雄 経 済 産 業 省 商 務 情 報 政 策 局 文 化 情 報 関 連 産 業 課 課 長 補 佐 吉 田 英 広 日 本 電 気 株 式 会 社 知 的 財 産 部 企 画 部 主 任
事 務 局
笠 羽 晴 夫 財 団 法 人 デ ジ タ ル コ ン テ ン ツ 協 会 研 究 主 幹 山 本 純 財 団 法 人 デ ジ タ ル コ ン テ ン ツ 協 会 企 画 調 査 部
報 告 書 の 構 成 及 び 執 筆 担 当
○ Ⅰ 章 :Grokster事 件 合 衆 国 最 高 裁 判 決 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 奥 邨 弘 司 委 員
○ Ⅱ 章 : わ が 国 著 作 権 判 例 に お け る カ ラ オ ケ 法 理 の 生 成 と 展 開 ・ ・ ・ ・ ・ 川 口 和 宏 委 員
○ Ⅲ 章 : わ が 国 プ ロ バ イ ダ ー 責 任 制 限 法 に 基 づ く 判 例 の 生 成 と 展 開 ・ ・ ・ 大 野 郁 英 委 員
○ Ⅳ 章 : 選 撮 見 録 事 件 大 阪 地 裁 判 決 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 石 新 智 規 委 員
留 意 事 項
本 調 査 研 究 は 、当 該 年 度 に お い て 計 6回 開 催 さ れ た 委 員 会 に お け る 各 委 員 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 及 び そ れ を 題 材 と す る 自 由 討 議 を 基 本 と し て 進 め た 。 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を ご 担 当 い た だ い た 委 員 に は 、 委 員 会 に お け る 討 議 を 踏 ま え 、 報 告 書 を ご 執 筆 い た だ い た 。 し た が っ て 、 本 報 告 書 に は 各 委 員 の 個 人 的 意 見 が 多 く 含 ま れ て お り 、 必 ず し も 各 委 員 が 所 属 す る 企 業 団 体 等 の 見 解 を 代 表 す る も の で は な い こ と を 念 の た め 申 し 添 え る 。
目 次
Ⅰ Grokster事 件 合 衆 国 最 高 裁 判 決 に つ い て··· 1
1 . 事 件 の 概 要 ··· 1
2 . 下 級 審 判 決 ··· 2
2 . 1 第 一 審 判 決··· 2
2 . 2 控 訴 審 判 決 ··· 2
2 . 3 裁 量 上 訴 ··· 3
3 . 最 高 裁 判 決 ··· 3
3 . 1 結 論 ··· 3
3 . 2 理 由··· 3
3 . 3 Ginsburg判 事 の 補 足 意 見··· 6
3 . 4 Breyer 判 事 の 補 足 意 見 ··· 7
4 . 検 討··· 9
4 . 1 は じ め に ··· 9
4 . 2 侵 害 の 誘 因 論 の 位 置 づ け ··· 10
4 . 3 意 図 と 認 識···11
4 . 4 誘 因 の 意 味··· 12
4 . 5 ソ ニ ー 判 決 に 与 え た 影 響 ··· 13
4 . 6 Grokster事 件 の 今 後 ··· 14
5 . ま と め に か え て··· 16
補 遺··· 17
Ⅱ わ が 国 著 作 権 判 例 に お け る カ ラ オ ケ 法 理 の 生 成 と 展 開··· 23
1 . は じ め に ··· 23
2 . 判 例 の 流 れ ··· 23
3 . 個 別 判 例 の 概 要··· 24
3 . 1 「 ク ラ ブ キ ャ ッ ツ ア イ 事 件 」( 最 高 裁 )··· 24
3 . 2 「 ス ナ ッ ク 魅 留 久 事 件 」( 大 阪 地 裁 ・ 大 阪 高 裁 ) ··· 25
3 . 3 「 ス タ ー デ ジ オ 事 件 」( 東 京 地 裁 )··· 27
3 . 4 「 と き め き メ モ リ ア ル 事 件 」( 最 高 裁 )··· 28
3 . 5 「 ビ デ オ メ イ ツ 事 件 」( 最 高 裁 ) ··· 29
3 . 6 「 ヒ ッ ト ワ ン 事 件 」( 大 阪 地 裁 ) ··· 31
3 . 7 「 デ ッ ド ア ラ イ ブ 2事 件 」( 東 京 高 裁 )··· 33
3 . 8 「 フ ァ イ ル ロ ー グ 事 件 」( 東 京 地 裁 ・ 東 京 高 裁 ) ··· 34
4 . 所 見··· 35
Ⅲ わ が 国 プ ロ バ イ ダ ー 責 任 制 限 法 に 基 づ く 判 例 の 生 成 と 展 開··· 39
1 . プ ロ バ イ ダ ー 責 任 制 限 法··· 39
2 . 判 例 の 流 れ ··· 40
3 . 個 別 判 例 の 概 要 ··· 40
3 . 1 2 ち ゃ ん ね る ( 動 物 病 院 ) 事 件··· 40
3 . 2 2 ち ゃ ん ね る (「 罪 に 濡 れ た ふ た り 」) 事 件··· 43
4 . 所 見··· 46
Ⅳ 選 撮 見 録 事 件 大 阪 地 裁 判 決 に つ い て··· 49
1 . 事 案 の 概 要 ··· 49
2 . 被 告 商 品 「 選 撮 見 録 」 の 機 能 と 構 成··· 49
3 . 争 点··· 50
4 . 結 論··· 50
5 . 所 見 - い わ ゆ る 間 接 侵 害 に 対 す る 現 行 法 の 解 釈 の 限 界··· 50
Ⅰ Grokster 事 件 合 衆 国 最 高 裁 判 決 に つ い て
**奥 邨 弘 司*
1 . 事 件 の 概 要
第 一 審 の 被 告 で あ る Grokster等1は 、Peer to Peer技 術 を 利 用 し た フ ァ イ ル 交 換 ソ フ ト ウ ェ ア を 開 発 し 、 配 布 し て い る 。 フ ァ イ ル 交 換 ソ フ ト ウ ェ ア と し て は 、Napster が 有 名 で あ る が 、Napster と Grokster 等 が 配 布 し て い る ソ フ ト ウ ェ ア ( 以 下 、G 社 ソ フ ト ウ ェ ア と い う ) と の 間 に は 大 き な 機 能 上 の 差 異 が あ る 。 い ず れ も 、 フ ァ イ ル 交 換 自 体 は 、 個 々 の ユ ー ザ ー の コ ン ピ ュ ー タ 同 士 で 直 接 行 わ れ る2点 に 変 わ り は な い が 、入 手 可 能 な フ ァ イ ル を 検 知 す る 方 法 が 異 な る 。Napster 型 の 場 合 、 各 ユ ー ザ ー が 交 換 可 能 と し た フ ァ イ ル の 情 報 は 、Napster 型 ソ フ ト ウ ェ ア の 提 供 者 が 維 持 管 理 す る 中 央 サ ー バ で 集 中 管 理 さ れ る 。 フ ァ イ ル の 入 手 を 希 望 す る ユ ー ザ ー は 、 当 該 中 央 サ ー バ に ア ク セ ス し て 、 自 ら が 希 望 す る フ ァ イ ル が 存 在 す る コ ン ピ ュ ー タ の 所 在 情 報(IP ア ド レ ス )等 を 入 手 し 、当 該 情 報 に 基 づ い て 、 目 的 の コ ン ピ ュ ー タ と の 接 続3を 確 保 し て 、フ ァ イ ル を 入 手 す る 。一 方 、G 社 ソ フ ト ウ ェ ア の 場 合 、 中 央 サ ー バ は 存 在 し な い 。 個 々 の ユ ー ザ ー の コ ン ピ ュ ー タ が 夫 々 に 、 交 換 可 能 な フ ァ イ ル の 所 在 情 報 等 を 提 供 す る 形 に な る4。
第 一 審 の 原 告 で あ る MGM等5は 、G 社 ソ フ ト ウ ェ ア の ユ ー ザ ー が 、G 社 ソ フ ト ウ ェ ア を 使 用 し て 、 音 楽 デ ー タ を 権 利 者 に 許 諾 な く 交 換 を し て い る こ と は 著 作 権 侵 害 に あ た り 、 そ の よ う な 違 法 な フ ァ イ ル 交 換 を 可 能 と す る G 社 ソ フ ト ウ ェ ア を 提 供 す る Grokster 等 は 、 寄 与 侵 害 責 任 お よ び 代 位 侵 害 責 任 を 負 う と 主 張 し 、 訴 訟 を 提 起 し た 。
* 神 奈 川 大 学 経 営 学 部 助 教 授
* * 本 稿 の 初 出 は 、社 団 法 人 日 本 国 際 知 的 財 産 保 護 協 会 が 発 行 す る 月 報 2005 年 10 月 号( AIPPI (2005) Vol.50 No.10) で あ る 。 本 書 へ の 再 掲 に あ た り 、 執 筆 者 及 び AIPPI 事 務 局 に ご 快 諾 を い た だ い た 。
( な お 、 初 出 時 点 に お け る 、 筆 者 に よ る 校 正 ミ ス の 一 部 と 、 未 刊 行 文 献 の 引 用 情 報 に つ い て は 、 訂 正 を 施 し た 。)
1 Grokster社 、StreamCast Network社 。 訴 訟 提 起 時 は KaZaA社 も 含 ま れ て い た が 、 途 中 か ら 切 り 離 さ れ た 。 詳 し く は 第 一 審 判 決 ( 後 掲 注(6)) の 注 2参 照 。
2 こ の 点 が Peer to Peerと い わ れ る 所 以 で あ る 。
3 直 接 の 接 続 で あ り 、 こ の 時 点 で は 、 中 央 サ ー バ は 関 与 し な い 。
4 StreamCast社 が 提 供 す る ソ フ ト ウ ェ ア は こ の タ イ プ だ が 、Grokster 社 が 提 供 す る ソ フ ト ウ ェ ア の 場 合 、supernode と い う 仕 組 み を 利 用 す る 。参 加 す る コ ン ピ ュ ー タ ー 中 の 何 台 か が 、supernodeと し て 、 交 換 可 能 な フ ァ イ ル の イ ン デ ッ ク ス 情 報 を 提 供 す る 。 そ の 点 、Napster型 に 近 い が 、supernode自 体 は 複 数 存 在 し 、 ま た そ の 維 持 管 理 は 、 フ ァ イ ル 交 換 ソ フ ト ウ ェ ア の 提 供 者 に よ る も の で は な い 点 が 、 Napster型 と の 大 き な 違 い で あ る 。
5 MGM社 を 始 め と す る レ コ ー ド 会 社 、 映 画 会 社 、 そ し て 作 詞 作 曲 家 ら ( 以 下 、MGM 等 と い う )。
2 . 下 級 審 判 決
2 . 1 第 一 審 判 決
6第 一 審 で あ る カ リ フ ォ ル ニ ア 中 央 地 区 連 邦 地 方 裁 判 所 は 、Grokster等 の 行 為 は 、寄 与 侵 害 責 任 と 代 位 侵 害 責 任 の い ず れ に つ い て も 、 判 例 法 に 照 ら し て そ の 要 件 を 欠 く と し 、 サ マ リ ー ジ ャ ッ ジ メ ン ト で 、Grokster等 勝 訴 の 判 断 を 下 し た7。
2 . 2 控 訴 審 判 決
8 9第 一 審 判 決 を 不 服 と す る MGM等 の 控 訴 を 受 け た 第 9 巡 回 区 連 邦 控 訴 裁 判 所 ( 以 下 、 控 訴 裁 )は 、ユ ー ザ に よ る 直 接 侵 害 の 存 在 を 認 定 し た 上 で 、Grokster等 に も 責 任 が 生 じ る か 否 か を 寄 与 侵 害 責 任 、 代 位 侵 害 責 任 の 順 に 検 討 し た 。
控 訴 裁 は 、寄 与 侵 害 責 任 を 認 め る た め の 要 件 で あ る 、「 直 接 侵 害 の 認 識 」と「 直 接 侵 害 へ の 重 要 な 寄 与 」 を Grokster 等 は 満 た さ な い と 判 示 し た 。 す な わ ち 、 控 訴 裁 は 、 実 質 的 な ま た は 商 業 的 に 意 義 の あ る 非 侵 害 的 使 用 が 可 能 で あ る な ら 、 複 製 機 器 の 配 布 者 は 寄 与 侵 害 責 任 を 負 わ な い と 判 示 し た ソ ニ ー・ベ ー タ マ ッ ク ス 事 件 最 高 裁 判 決( 以 下 、ソ ニ ー 判 決 )10 を 踏 ま え て 、「 問 題 と な っ て い る 製 品 に 、実 質 的 な ま た は 商 業 的 に 意 義 の あ る 非 侵 害 的 使 用 の 可 能 性 が あ る 場 合 は 、 著 作 権 者 は 、 被 告 が 特 定 の フ ァ イ ル 侵 害 行 為 に つ い て 、 合 理 的 な 認 識 を 持 っ て い る こ と を 示 さ な け れ ば な ら な い 」と の 基 準 を 示 し た 上 で 、証 拠 に 照 ら せ ば 、 G 社 ソ フ ト ウ ェ ア に つ い て 、実 質 的 な 非 侵 害 的 使 用 が 可 能 で あ る 旨 が 証 明 さ れ て い る た め 、
Grokster 等 は 、「 擬 制 的 認 識 の 故 に 寄 与 侵 害 責 任 を 負 う こ と は な く 、 著 作 権 者 は … …
Grokster 等 が 特 定 の 侵 害 行 為 に つ き 合 理 的 な 認 識 を 持 っ て い る こ と を 示 す こ と を 要 求 さ れ る 」と し 、売 り 切 り 型 で ユ ー ザ の 手 に 渡 っ て し ま う G 社 ソ フ ト ウ ェ ア の 場 合 、そ の よ う な 認 識 は Grokster 等 に 存 在 し な い と 判 示 し た 。 ま た 、 過 去 に 寄 与 侵 害 責 任 が 認 め ら れ た 事 件 (Napster 事 件 、Netcom 事 件 、Fonovisa 事 件11) と 比 較 し て 、 そ れ ら の 事 件 で 認 め ら れ た よ う な 重 要 な 寄 与 を Grokster等 は 行 っ て い な い と も 判 示 し た 。
代 位 侵 害 責 任 に つ い て は 、代 位 侵 害 責 任 が 認 め ら れ る た め の 要 件 の 内 、「 直 接 侵 害 者 を 監
6 Metro-Goldwyn-Mayer Studios, Inc. et al. v. Grokster Ltd. et al., 259 F. Supp. 2d 1029 (C.D. Cal.
2003)
7 第 一 審 判 決 に つ い て 詳 し く 解 説 す る も の と し て 、 作 花 文 雄 「Point of View/ 非 中 央 管 理 型 P2Pソ フ ト の 提 供 者 の 法 的 責 任 - 米 国『Grokster』事 件 第 一 審 サ マ リ ー 判 決 を め ぐ る 論 点 - 」コ ピ ラ イ ト 2003 年 8月 号 43~59頁 お よ び 中 崎 尚 「 分 散 型 フ ァ イ ル 共 有 ソ フ ト 提 供 事 業 者 の 著 作 権 侵 害 責 任 を 否 定 し た 米 国 判 決 (Grokster / StreamCast 事 件 )」AIPPI (2003) Vol.48 No.7 22~35頁 が あ る 。
8 Metro-Goldwyn-Mayer Studios, Inc. et al. v. Grokster Ltd. et al., 380 F.3d 1154 (9t h Cir. 2004)
9 控 訴 審 判 決 に つ い て は 、 拙 稿 「 著 作 権 の 侵 害 的 利 用 と 非 侵 害 的 利 用 の い ず れ も が 可 能 な 機 器 ・ サ ー ビ ス の 提 供 者 に 対 す る 民 事 的 責 任 論 の 米 国 に お け る 動 向 ~Grokster事 件 控 訴 裁 判 決 を 中 心 に ~ 」国 際 経 営 論 集( 神 奈 川 大 学 経 営 学 部 )28 号1~21頁 参 照 。ま た 、拙 稿 中 で 触 れ た も の の 他 に 、芹 澤 英 明「P2P フ ァ イ ル 共 有 ソ フ ト の 頒 布 が 著 作 権 の 寄 与 侵 害 (contributory infringement) や 代 位 責 任 (vicarious liability)に 該 当 し な い と さ れ た 事 例 –MGM Studios, Inc. v. Grokster, 380 F.3d 1154 (9th Cir. 2004)
- 」L&T No.26 128~133頁 。
1 0 Sony Corporation of America et al. v. Universal City Studios, Inc. et al., 464 U.S. 417 (1984)
1 1 Napster事 件 で は 中 央 サ ー バ ー の 提 供 が 、Netcom事 件 (Religious Technology Center. v. Netcom On-Line Com munication Servs., 907 F Supp. 1361 (N.D. Cal. 1995)) で は ユ ー ザ の 侵 害 メ ッ セ ー ジ を キ ャ ン セ ル し 世 界 中 に 頒 布 さ れ る こ と を 止 め な か っ た こ と が 、Fonovisa事 件 (Fonovisa Inc. v.
Cherry Auction, Inc., 76 F.3d 259 (9th Cir. 1996))で は 、侵 害 品 が 販 売 さ れ て い る 蚤 の 市 を 運 営 し 、 施 設 や 駐 車 場 、 広 告 を 提 供 し て い た こ と が 、 重 要 な 寄 与 に あ た る と さ れ た 。
督 す る 権 利 と 能 力 」が Grokster等 に 存 在 し な い と 判 示 し た 。控 訴 裁 は 、Napsterと 違 い 、 中 央 サ ー バ を 提 供 し な い 純 粋 な Peer to Peerタ イ プ の フ ァ イ ル 交 換 ネ ッ ト ワ ー ク で あ る G 社 ソ フ ト ウ ェ ア の 仕 組 み に 照 ら し て 、Grokster等 に は 個 々 の ユ ー ザ ー の ア ク セ ス を ブ ロ ッ ク す る 能 力 も 権 限 も 存 し な い と し て 、 代 位 侵 害 責 任 の 成 立 も 否 定 し た 。
2 . 3 裁 量 上 訴
控 訴 審 判 決 を 不 服 と し た MGM等 は 、 合 衆 国 最 高 裁 に 対 し て 裁 量 上 訴 の 申 し 立 て を 行 っ た と こ ろ 認 め ら れ(2004 年 12月 10日 )、2005 年 3 月 29日 に は 口 頭 弁 論 が 行 わ れ た 。最 高 裁 で の 審 理 の 行 方 は 広 く 関 心 を 集 め 、提 出 さ れ た 法 廷 の 友 意 見(amicus brief)も 55を 数 え た12。
最 高 裁 で の 争 点 は 、「 イ ン タ ー ネ ッ ト 上 で の 『 フ ァ イ ル 交 換 』 サ ー ビ ス を 提 供 す る Grokster社 と StreamCast 社 が 、そ の 提 供 す る サ ー ビ ス 上 で 生 じ 、サ ー ビ ス の 使 用 方 法 の 少 な く と も 90%を 占 め る 、無 数 の 日 常 的 な 著 作 権 侵 害 行 為 に 対 す る 責 任 か ら 免 れ る こ と が で き る 旨 判 示 し た 第 9巡 回 区 控 訴 裁 判 所 の 結 論 は 、長 く 確 立 さ れ た 著 作 権 法 に お け る 二 次 的 責 任 の 原 則 に 反 す る ( そ し て 、 第 7 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 と の 間 の 周 知 の 判 例 相 違 と な る )、
誤 っ た も の か ど う か13。」 と い う 点 で あ っ た 。
3 . 最 高 裁 判 決
1 4 1 53 . 1 結 論
Souter 裁 判 官 が 起 草 し 全 裁 判 官 が 同 意 し た 法 廷 意 見( 以 下 、3 .2 で は 、最 高 裁 と い う ) は 、「 明 確 な 表 現 や 侵 害 を 助 長 す る た め の 積 極 的 な 行 動 に よ っ て 示 さ れ る 、著 作 権 を 侵 害 す る 為 の 機 器 の 使 用 を 促 進 す る 目 的 を 持 っ て 、 機 器 を 配 布 す る 者 は 、 第 三 者 に よ る 結 果 と し て の 侵 害 行 為 に 対 し て 有 責 で あ る 」 と 結 論 付 け た 上 で 、 控 訴 審 判 決 を 取 り 消 し 、 事 件 を 控 訴 裁 に 差 し 戻 し た 。
3 . 2 理 由
( 1 ) 本 事 件 の 意 義 付 け
最 高 裁 は 、「 広 範 囲 に 広 が っ た 製 品 や サ ー ビ ス が 、侵 害 に 使 用 さ れ る と き 、保 護 さ れ た 作 品 の 権 利 を 執 行 す る た め に 全 て の 直 接 侵 害 者 を 訴 え る こ と は 不 可 能 で あ り 、 唯 一 の 実 際 的 な 代 替 的 手 法 は 、 寄 与 侵 害 理 論 か 、 代 位 侵 害 理 論 に よ っ て 複 製 機 器 の 配 布 者 を 訴 え る こ と
1 2 関 連 す る 資 料 に つ い て は Electric Frontier Foundationの サ イ ト <http://www.eff.org/IP/P2P/MGM _v_ Grokster/> で 入 手 可 能 で あ る 。 な お 、 本 稿 中 の URLは 全 て 、 特 記 な き 限 り 、2005 年8月 31
日 参 照 。
1 3 合 衆 国 連 邦 最 高 裁 の サ イ ト 中 の http://www.supremecourtus.gov/qp/04-00480qp.pdf。
1 4 Metro-Goldwyn-Mayer Studios, Inc. et al. v. Grokster Ltd. et al., 162 L. Ed. 2d 781, 125 S. Ct.
2764 (U.S. 2005)
1 5 本 判 決 の 全 文 訳 と し て は 、 井 上 雅 夫 「MGM v. Grokster P 2 P ソ フ ト 配 布 事 件 合 衆 国 最 高 裁 判 決 」 プ ロ グ ラ ム 関 連 米 国 判 決 集 <http://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/cr_050627MGM-Grokster.html
> が 公 開 さ れ て い る 。な お 、本 稿 に お け る 日 本 語 訳 部 分 は 、筆 者 の 独 自 訳 に よ る も の で あ り 、前 記 全 文 訳 と は 一 致 し な い 。ま た 、紙 幅 の 関 係 も あ り 米 国 流 の 判 決 該 当 頁 の 注 記 は 行 わ な か っ た 。な お 、見 出 し は 筆 者 に よ る も の で あ る 。 以 上 ご 了 承 い た だ き た い 。
で あ る 」 と 本 件 を 意 義 付 け た う え で 、「 著 作 権 保 護 を 通 じ て 、 創 作 行 為 を 保 護 す る こ と と 、 著 作 権 侵 害 責 任 を 制 限 す る こ と に よ っ て 新 し い 通 信 技 術 の 革 新 を 促 進 す る こ と の そ れ ぞ れ の 価 値 の 間 」 の 緊 張 関 係 こ そ が こ の 事 件 の ポ イ ン ト だ と す る 。
( 2 ) ソ ニ ー 判 決 再 考 の 必 要 性
最 高 裁 は 、ソ ニ ー 判 決 に つ い て 紹 介 し た 後 、「 ソ ニ ー が 、著 作 権 の 侵 害 と な る テ ー プ 録 画 を も た ら す よ う な 目 的 を 表 明 し た こ と や 、 不 法 な 録 画 か ら 自 ら の 利 益 を 増 や す べ く 積 極 的 な 行 動 を 取 っ た こ と を 示 す 証 拠 は 何 も な い 」と 指 摘 し 、ソ ニ ー 事 件 に お い て は 、「 侵 害 的 使 用 を 助 長 す る よ う な 意 図 の 表 明 や 含 意 を 示 す 証 拠 が な い 以 上 、 責 任 を 課 す た め に 考 え 得 る 唯 一 の 理 屈 は 、消 費 者 の 中 に は VCRを 侵 害 に 使 用 す る 者 が い る だ ろ う こ と を 知 り な が ら 、 販 売 し た こ と を 理 由 と す る 寄 与 侵 害 責 任 理 論 で あ っ た 」 と す る 。
「 両 当 事 者 も 法 廷 の 友 意 見 の 多 く も 、こ の 事 件 を 解 決 す る 鍵 は 、ソ ニ ー ル ー ル 、中 で も 、 製 品 が『 商 業 的 に 実 質 的 な 非 侵 害 的 使 用 が 可 能 か 』と い う 要 件 が 何 を 意 味 す る か だ 」と し 、 原 告 は「『 主 と し て 』侵 害 に 使 用 さ れ て い る 限 り に お い て 、ソ ニ ー 判 決 の 基 準 を 満 た さ な い こ と を 明 確 に す べ き 」 と 主 張 す る 。 一 方 で 、 被 告 は 「 自 ら の ソ フ ト ウ ェ ア は 公 有 に 帰 し た 作 品 の 複 製 に 使 用 可 能 で あ り … … た と え 、 そ れ ら の ソ フ ト ウ ェ ア に 関 し て 、 今 日 に お い て は 侵 害 ( 筆 者 注 : 的 使 用 ) が 主 た る 実 態 で あ る と し て も 、 非 侵 害 的 使 用 は 実 質 的 で あ り ま た 増 大 し て い く と 主 張 す る 。」
こ れ ら の 主 張 に 対 し て 最 高 裁 は 、「 確 か に 、 第 9 巡 回 区 控 訴 裁 判 所 が 、 ソ ニ ー 判 決 の 基 準 が 適 用 さ れ た 状 況 を 全 く 超 え て 、 二 次 的 責 任 を 制 限 す る も の の よ う に 、 ソ ニ ー 判 決 の 基 準 を 適 用 し た こ と は 間 違 い 」で あ り 、控 訴 裁 が 、「 製 品 に 実 質 的 な 合 法 的 使 用 法 が あ る な ら 常 に 、 第 三 者 に よ る 当 該 製 品 を 使 用 し た 侵 害 行 為 に 対 す る 寄 与 的 責 任 か ら 免 れ 得 る 」 と 解 し た こ と を 非 難 し た 上 で 、「 ソ ニ ー 判 決 は 、他 の 二 次 的 責 任 理 論 を 放 逐 し て は い な い 」と し 、 故 に 、こ れ 以 上 検 討 す る 必 要 は な く 、「 ソ ニ ー 判 決 の 再 考 は 、そ れ が 必 要 と さ れ る と き ま で 置 い て お け ば よ い 」 と 判 示 す る 。
( 3 ) 侵 害 の 誘 因 論16
最 高 裁 は 、「 製 品 の 性 格 や そ れ が 侵 害 に 使 用 さ れ る か も と い う 認 識 を 超 え て 、侵 害 を 助 長 す る こ と に 向 け ら れ た 発 言 や 行 為 を 証 明 す る 証 拠 が 存 す る と き 、 ソ ニ ー 判 決 の 汎 用 品 例 外 ル ー ル (staple-article rule) に よ っ て 責 任 が 排 除 さ れ る こ と は な い 」 と し た 上 で 、「 コ モ ン ロ ー に お い て は 、『 広 く 認 識 さ れ た 法 原 則 』に 基 づ き 、著 作 権 侵 害 訴 訟 や 特 許 権 侵 害 訴 訟 の 被 告 が『( 侵 害 的 使 用 を )予 想 す る だ け で な く て 宣 伝 に よ っ て 引 き 起 し た 場 合 』侵 害 に つ
1 6 こ こ で 、inducementと い う 言 葉 の 訳 を 「 誘 因 」 と し た こ と に つ い て 説 明 し て お き た い 。 例 え ば 、 ド ナ ル ド ・S・ チ ザ ム ( 竹 中 俊 子 訳 紋 谷 暢 男 監 修 )『 英 和 対 訳 ア メ リ カ 特 許 法 と そ の 手 続 き 改 訂 第 2版 』( 雄 松 堂 ・2000)403頁 で は 、inducementに 「 誘 導 」 の 訳 が 当 て ら れ て い る 。 こ れ に 倣 う こ と も 考 え ら れ た が 、後 に 見 る よ う に 特 許 法 制 の そ れ と 著 作 権 法 制 の そ れ と が 同 一 の も の や 否 や に つ い て 議 論 が 必 要 で あ ろ う こ と に 鑑 み 、先 入 観 を 排 除 す る 目 的 で 訳 語 を 変 え た 。本 稿 で は 、特 許 法 に 関 す る 場 合 は 「 誘 導 」 を 使 い 、 著 作 権 法 に 関 す る 場 合 は 「 誘 因 」 を 使 う こ と と し た い 。
更 に 意 訳 し て 、「 教 唆 ・ 幇 助 」 と 訳 す こ と も 選 択 肢 と し て は あ り 得 る ( ヘ ン リ ー 幸 田 『 米 国 特 許 法 逐 条 解 説 第 4版 』( 発 明 協 会 ・2004)282頁 ) が 、 特 に 著 作 権 の 寄 与 侵 害 の 一 類 型 と し て の 教 唆 幇 助 類 型 ( 後 掲 注(26)参 照 ) と の 間 で 、 先 入 観 を 排 除 す る 意 味 で 採 用 し な か っ た 。 な お 、「 誘 引 」 の 語 も 使 わ れ る ( 例 え ば コ ピ ラ イ ト 525号 56頁 参 照 ) が 、 先 に 挙 げ た 「 誘 導 」 や 「 教 唆 ・ 幇 助 」 の 訳 に も 照 ら し 、 そ れ ら と も 近 似 す る 「 誘 因 」 を 採 用 し た 。
い て 有 責 で あ っ た 」 と 述 べ る 。 そ し て 、「『 直 接 侵 害 を 助 長 す る た め に 取 ら れ た 行 動 』 の 証 拠 、 例 え ば 侵 害 的 使 用 の 宣 伝 や 、 ど の よ う に 侵 害 的 使 用 を 行 う の か の 説 明 等 は 、 製 品 が 侵 害 の た め に 使 用 さ れ る こ と へ の 肯 定 的 な 意 図 を 証 明 す る 。 そ し て 、 侵 害 が 助 長 さ れ て い る こ と を 示 す こ と に よ っ て 、 何 か し ら 合 法 的 な 使 用 が 可 能 な 商 業 的 製 品 を 被 告 が 販 売 し て い る だ け の 場 合 に 、( 筆 者 注:被 告 に 対 し て )責 任 を 問 う こ と を 躊 躇 す る 法 の 態 度 を 克 服 す る も の で あ る 」 と 判 示 す る 。
最 高 裁 は 、 ソ ニ ー 判 決 に お い て 、 セ ー フ ハ ー バ ー ル ー ル と し て 特 許 法 の 汎 用 品 例 外 ル ー ル を 採 用 し た が ご と く 、 侵 害 の 誘 因 論 を 著 作 権 の 世 界 に 採 用 す る の も 理 に 適 っ た こ と だ と す る 。そ の 上 で 、「 も ち ろ ん 、我 々 は 、通 常 の 商 取 引 を 害 し た り 、合 法 と 違 法 の 両 方 の 潜 在 能 力 を 持 つ 技 術 の 開 発 意 欲 を く じ い た り す る こ と は 慎 ま な け れ ば な ら な い 。 故 に 、 ソ ニ ー 判 決 に お い て 、VCR が 侵 害 に 使 用 さ れ 得 る こ と に つ い て メ ー カ が 認 識 を 持 っ て い た に も か か わ ら ず 意 図 的 な 侵 害 の 誘 因 を 認 め な か っ た よ う に 、 潜 在 的 な 侵 害 や 実 際 の 侵 害 的 使 用 に つ い て の 認 識 だ け で は 、 配 布 者 を 責 任 に 問 う に は 十 分 と は い え な い 。 ま た 、 製 品 の 配 布 に 伴 う 通 常 の 行 為 、 例 え ば 、 消 費 者 に 技 術 的 サ ポ ー ト や 製 品 の ア ッ プ グ レ ー ド を 提 供 し た り す る こ と 等 自 体 で は 、 責 任 を 問 う に 十 分 で は な い 。 む し ろ 、 誘 因 ル ー ル は 、 目 的 的 か つ 不 埒 な 表 現 や 行 為 に 責 任 を 問 う こ と を 前 提 と し 、 故 に 、 合 法 的 な 商 取 引 を 害 し た り 、 合 法 的 な 将 来 性 を 持 つ 革 新 を 減 退 さ せ た り す る も の で は な い 」 と 述 べ る 。
( 4 ) 侵 害 の 誘 因 論 の 本 件 へ の あ て は め
以 上 の 判 示 を 前 提 に 、最 高 裁 は 、MGM 等 の 示 し た 証 拠 が 、侵 害 の 誘 因 論 の も と で 、MGM 等 に サ マ リ ー ジ ャ ッ ジ メ ン ト を 与 え る に 十 分 な も の か を 具 体 的 に 検 討 す る 。
ま ず 、Groskter社 等 が 、誘 因 の メ ッ セ ー ジ を ユ ー ザ ー に 伝 え て い た か と い う 点 に つ い て は 次 の 事 実 を 指 摘 す る 。例 え ば 、「StreamCast 社 は 、Napster互 換 ソ フ ト ウ ェ ア の ユ ー ザ ー の ス ク リ ー ン 上 に 、StreamCast 社 の OpenNap プ ロ グ ラ ム ― ― 名 前 が 示 す よ う に 、 当 時 大 量 の 侵 害 を 助 長 し て い る と し て 裁 判 所 で 攻 撃 さ れ て い たNapsterの 常 連 客 を 引 き つ け る た め に 設 計 さ れ た プ ロ グ ラ ム で あ っ た ― ― の 採 用 を 呼 び か け る 広 告 を 表 示 し 、」Napster 同 様 の サ ー ビ ス を 提 供 し た 。 ま た 、「Grokster 社 は 、 自 ら の ソ フ ト ウ ェ ア が 著 作 権 の あ る ポ ピ ュ ラ ー ミ ュ ー ジ ッ ク に ア ク セ ス で き る 能 力 を 有 す る こ と を 記 し た 記 事 へ の リ ン ク を 含 む 電 子 ニ ュ ー ス レ タ ー を 配 布 」し て い た 。更 に 両 社 共 に 、「 著 作 物 の 検 索 や 再 生 方 法 に 関 す る 助 言 を 求 め る 問 い 合 わ せ に 対 し て 、 肯 定 的 に 返 答 す る こ と で 明 確 な メ ッ セ ー ジ を 伝 え て い た 。」
も っ と も 、 最 高 裁 は 、 そ も そ も 「 メ ッ セ ー ジ が や り と り さ れ た か ど う か は ポ イ ン ト で は な く 、 誘 因 理 論 に お け る メ ッ セ ー ジ の 役 割 は 、 被 告 自 身 の 発 言 に よ っ て 、 被 告 の 不 法 な 意 図 に よ り 、 彼 を し て 保 護 を 求 め る に ふ さ わ し く な い 立 場 で あ る こ と を 証 明 す る 点 に あ る 」 と し 、StreamCast 社 に 関 し て は 「 社 内 通 信 や 、Napster ユ ー ザ ー を 狙 っ た 宣 伝 の デ ザ イ ン 」 に よ っ て も 、 不 法 な 意 図 は 補 強 さ れ る と し た 。
最 高 裁 は 、 意 図 に 関 す る 証 拠 の 3つ の 特 徴 を 、 特 に 注 目 に 値 す る と し た :
① 両 社 共 に 、Napsterの 旧 ユ ー ザ ー か ら な る マ ー ケ ッ ト が 求 め る 著 作 権 侵 害 へ の 需 要
を 満 た す こ と を 狙 い と し て い た 旨 を 明 ら か に し て い る が17、 こ れ は 、 侵 害 を 助 長 す る こ と に つ い て の 、 唯 一 の も の で は な い が 主 要 な 意 図 を 証 明 す る 。
② い ず れ の 会 社 も フ ィ ル タ リ ン グ ツ ー ル や そ の 他 の 侵 害 行 為 を 減 少 さ せ る 仕 組 み の 開 発 に 努 力 し な か っ た 事 実 は 、 両 社 の 不 法 な 目 的 ― ― ユ ー ザ ー に よ る 侵 害 行 為 を 、 意 図 的 に 容 易 に し た こ と ― ― の 存 在 を 強 調 す る 。
③ 両 社 が 、そ の ソ フ ト ウ ェ ア を 使 用 し て い る コ ン ピ ュ ー タ 上 に 広 告 を 表 示 す る ス ペ ー ス を 売 る こ と に よ っ て 利 益 を 得 て い た こ と は 、不 法 な 目 的 に 対 す る 直 接 的 証 拠 の 補 強 と な る 。
以 上 を 踏 ま え て 最 高 裁 は 、 不 法 な 目 的 は 明 白 だ と 結 論 づ け た 。
最 後 に 、 最 高 裁 は 、 侵 害 を 助 長 す る 意 図 と 侵 害 に 適 し た 機 器 の 配 布 と い う 2つ の 要 件 が 満 た さ れ る こ と を 踏 ま え た 上 で 、侵 害 の 誘 因 を 成 立 さ せ る も う 一 つ の 要 件 で あ る 、機 器( 本 件 の 場 合 G社 ソ フ ト ウ ェ ア )の 受 領 者 に よ る 実 際 の 侵 害 行 為 の 存 在 に つ い て も 、明 白 だ と し た 。
( 5 ) 総 括
最 高 裁 は 、「 ソ ニ ー 判 決 は 、合 法 な 使 用 と 不 法 な 使 用 が 代 替 的 で あ る 製 品 を 、ユ ー ザ ー の 中 に は 不 法 な 側 に 流 れ る 者 が い る で あ ろ う こ と を 認 識 し つ つ 配 布 し た こ と の み に 基 づ く 責 任 論 を 扱 っ た も の で あ っ た 。 ソ ニ ー 判 決 で は 、 製 品 に 実 質 的 に 合 法 な 使 用 の 可 能 性 が あ る 場 合 、 他 人 に よ る 違 法 な 行 為 に 関 し て 、 過 誤 や 結 果 と し て の 二 次 的 責 任 を 帰 す こ と は 禁 止 さ れ る と 判 示 す る こ と に よ っ て 、 保 護 と 革 新 の そ れ ぞ れ の 利 益 の バ ラ ン ス を 取 っ た 」 も の だ と 位 置 づ け た 。そ の 一 方 で 、「MGM 等 が 本 件 で 示 し た 証 拠 は 、代 替 的 な 使 用 が 可 能 な 製 品 の 配 布 に 関 し て 、( 筆 者 注:ソ ニ ー 判 決 の そ れ と は )異 な る 責 任 論 の 基 盤 を 明 確 に 示 し て い る 。 本 件 に お い て 、 配 布 行 為 自 体 を 超 え た 配 布 者 の 言 葉 と 行 為 に 関 す る 証 拠 は 、 第 三 者 に 著 作 権 侵 害 行 為 を 起 こ さ せ る こ と 、 お よ び そ れ か ら 利 益 を 得 る こ と を 目 的 と し て い た こ と を 証 明 す る 。 侵 害 の 誘 因 に よ る 責 任 が 最 終 的 に 認 め ら れ る 場 合 、 そ れ は 推 定 的 責 任 や 代 位 責 任 に 基 づ く の で は な く て 、 そ の 目 的 が 何 か を 示 す 発 言 や 行 為 か ら 、 明 白 な 違 法 目 的 を 推 測 す る こ と に よ っ て で あ る 」 と 判 示 し た 。
そ し て 、誘 因 の ど の 面 で も MGM 等 に 有 利 で あ る に も か か わ ら ず 、Grokster等 に 軍 配 を 上 げ た サ マ リ ー ジ ャ ッ ジ メ ン ト は 間 違 い だ と し た 。 そ の 上 で 最 高 裁 は 、 差 し 戻 し 審 で 、 MGM 等 の サ マ リ ー ジ ャ ッ ジ メ ン ト の 申 し 立 て を 再 考 す る の が 順 当 で あ り 、 控 訴 裁 判 決 を 取 り 消 し 、 本 判 決 に 沿 う 形 で 更 な る 手 続 き を 進 め る た め 、 事 件 を 差 し 戻 す と 結 論 し た 。
3 . 3 Ginsburg 判 事 の 補 足 意 見
Ginsburg判 事 が 起 草 し 、Renquist 長 官 お よ び Kennedy 判 事 が 同 意 し た 補 足 意 見 は 、「 少 な く と も 、Grokster 社 や StreamCast 社 の 責 任 に 関 し て 、 積 極 的 に 侵 害 を 誘 因 し た こ と に 基 づ く だ け で な く 、 ま た は 代 替 的 に 、 ソ フ ト ウ ェ ア 製 品 の 配 布 に よ り 寄 与 侵 害 責 任 を 負
1 7 Streamcast社 の 場 合 : 社 内 文 書 で 恒 常 的 に Napster に 言 及 し て い る こ と 、Morpheus(StreamCast 社 が 配 布 し た G社 ソ フ ト ウ ェ ア の 名 称 ) を Napster互 換 の OpenNapプ ロ グ ラ ム を 通 じ て 配 布 し た こ と 、Napsterユ ー ザ ー に 対 し て 宣 伝 を 行 っ た こ と 、MorpheusがNapster同 様 以 上 に 機 能 し た こ と 。 Grokster社 の 場 合:Napsterに あ や か っ た 名 前 で あ る こ と 、OpenNapを 配 布 し て い た こ と 、Napster 同 様 の 機 能 で あ っ た こ と 、Napsterに 対 す る 検 索 を 自 身 の サ イ ト に 誘 導 し た こ と 。
う か と い う 意 味 で 『 重 要 な 事 実 に つ い て 真 正 な 問 題 点 』 が 存 在 す る 」 旨 を 指 摘 す る 。 Ginsburg 判 事 は 、 ソ ニ ー 判 決 で は 、 権 利 の 保 護 と ビ ジ ネ ス の 自 由 と の バ ラ ン ス を 取 る た め 、 汎 用 品 例 外 ル ー ル を 採 用 し た こ と に 触 れ 、 そ れ が 故 に ベ ー タ マ ッ ク ス が 商 業 的 に 実 質 的 な 非 侵 害 的 使 用 方 法 が あ る か 否 か を 検 討 す る こ と に な っ た の だ と 整 理 し た 。 そ し て 、 そ の 答 え を 導 く た め に 、「 裁 判 所 は『 ベ ー タ マ ッ ク ス の 潜 在 的 使 用 方 法 中 の 意 味 の あ る 数 が 非 侵 害 で あ る か 』を 考 慮 す る こ と に な り … … 裁 判 所 は 1つ の 潜 在 的 な 使 用 方 法 に 目 を 向 け た ― ― 私 的 か つ 非 商 業 的 な 家 庭 に お け る テ レ ビ 番 組 の タ イ ム シ フ ト で あ る 」 と 指 摘 し た 。 さ ら に 、「 ト ラ イ ア ル に お け る 証 言 が 示 す と こ ろ に よ れ ば 、タ イ ム シ フ ト の 内 の い く ら か は 権 利 者 に よ っ て 許 諾 さ れ て い る し 、 他 の も の も 合 法 的 な フ ェ ア ユ ー ス に 該 当 す る か ら 、 裁 判 所 は 、タ イ ム シ フ ト は 非 侵 害 で あ る と 判 断 し た 」と し た 上 で 、「 大 抵 の 購 入 者 が 、ベ ー タ マ ッ ク ス を 、 裁 判 所 の 基 準 を 『 明 ら か に 満 た し た 』 使 用 方 法 で あ る タ イ ム シ フ ト の た め に 主 と し て 使 っ て い る 以 上 、 ソ ニ ー 判 決 で は 、 ど の 程 度 の ( 実 際 の ま た は 潜 在 の ) 使 用 方 法 が 商 業 的 に 実 質 的 か と い う 問 い か け に 対 し て 正 確 に 答 え る 必 要 が な か っ た 」 と 分 析 す る 。 そ し て 、本 件 で は 状 況 は 全 く 異 な る と し 、「 フ ェ ア ユ ー ス は 見 出 し 得 ず 、非 侵 害 的 使 用 に 関 し て 事 例 証 拠 を 超 え た も の は ほ と ん ど 存 在 し な い 」 に も か か わ ら ず 、 地 裁 も 控 訴 裁 も 、 被 告 の 提 出 し た 宣 誓 供 述 書 に 大 い に 依 存 し て 、 非 侵 害 的 使 用 の 存 在 を 認 定 し て い る と 非 難 す る 。 そ の 上 で 、「 た と え 、Grokster 社 や StreamCast 社 の ソ フ ト ウ ェ ア を 使 っ て 複 製 さ れ た 非 侵 害 的 な フ ァ イ ル の 絶 対 数 が 大 き く て も 、 そ れ 故 に 、 製 品 が 実 質 的 に 非 侵 害 的 な 使 用 に 供 さ れ て お り 、た め に 責 任 か ら 免 れ る と い う こ と に は な ら な い 。非 侵 害 的 複 製 の 数 は 、 交 換 さ れ て い る フ ァ イ ル の 莫 大 な 総 数 を 反 映 し て い る の か も し れ な い し 、 そ の 前 で は 小 さ な も の か も し れ な い 」 と 指 摘 す る 。
Ginsburg 判 事 は 、「Grokster 社 や StreamCast 社 の 製 品 が 今 、そ し て か つ て あ る 程 度 の 期 間 、 圧 倒 的 に 侵 害 の た め に 使 わ れ て い た こ と 、 そ し て そ の 侵 害 こ そ が 製 品 か ら 生 じ る 収 入 の 圧 倒 的 な 源 で あ っ た こ と に 関 す る 証 拠 が 存 在 す る 」と 指 摘 す る 。そ の 上 で 、「Grokster 社 や StreamCast 社 が 積 極 的 な 侵 害 の 誘 因 を 行 っ た こ と を 理 由 と し て 、 差 し 戻 し 審 に お い て MGM等 に 有 利 な サ マ リ ー ジ ャ ッ ジ メ ン ト が 下 さ れ て 本 件 が 解 決 さ れ な い 場 合 に は 、 控 訴 裁 は 、 全 記 録 に 基 づ い て ソ ニ ー 判 決 が 示 し た 製 品 配 布 に 関 す る ル ー ル に つ い て の 解 釈 の 見 直 し を す べ き で あ る 」 と 結 ぶ 。
3 . 4 Breyer 判 事 の 補 足 意 見
Breyer 判 事 が 起 草 し 、Stevens 判 事 、O’Conner 判 事 が 同 意 し た 補 足 意 見 の 主 目 的 は 、 Ginsburg 判 事 の 補 足 意 見 に 反 論 す る 点 に あ る 。
( 1 ) ソ ニ ー ル ー ル の 該 当 性
Breyer 判 事 は 、ソ ニ ー 判 決 を 概 観 し た 上 で 、ソ ニ ー 判 決 の 際「 裁 判 所 の 前 に は 、全 て の VCR 録 画 の 約 9% が 、ソ ニ ー の た め に 証 言 台 に 立 ち 、タ イ ム シ フ ト に 反 対 し な い プ ロ デ ュ ー サ ー や 流 通 業 者 が 所 有 し て い る プ ロ グ ラ ム … … で あ る こ と を 示 す … … 調 査 結 果 が 存 在 し た 」 と 指 摘 し た 上 で 、「 裁 判 所 は 、( 筆 者 注 : 録 画 を ) 許 可 さ れ た 番 組 の 重 要 性 は 『 意 義 あ る 』 も の で あ る と 認 め 、 更 に 『 意 義 の あ る 潜 在 的 な 将 来 の 許 可 さ れ た 複 製 』 に つ い て も 留 意 し た 」と す る 。ま た「 裁 判 所 は 、『 実 質 的 』と い う キ ー ワ ー ド を 使 う こ と で 、こ れ ら の 状
況 の み で 、二 次 的 責 任 を 課 す こ と を 拒 否 す る 十 分 な 根 拠 に な る こ と を 示 し た 」の だ と す る 。 そ し て 「 そ れ に も か か わ ら ず 、 裁 判 所 は 、 い ず れ に し て も 、 許 諾 を 受 け な い タ イ ム シ フ ト は 多 く の 場 合 侵 害 で は な く て 『 フ ェ ア ユ ー ス 』 を 構 成 す る の だ と 別 途 判 示 す る こ と で 、 先 の 結 論 を 補 強 し た の だ 」 と 位 置 づ け る 。
そ の 上 で 、 判 事 は 、「 今 我 々 の 前 に あ る 証 拠 は 、Grokster 社 が ソ ニ ー 判 決 の テ ス ト ― ― 製 品 が 実 質 的 ま た は 商 業 的 に 意 義 の あ る 非 侵 害 的 使 用 が 可 能 か ど う か と い う テ ス ト ― ― を ク リ ア し て い る こ と を 示 し て い る 。 例 え ば 、 上 訴 人 ( 筆 者 注 :MGM 等 ) … … 自 身 の 専 門 家 は 、Grokster 上 で 現 在 利 用 可 能 な フ ァ イ ル の 75% は 侵 害 物 で あ り 、 侵 害 が 疑 わ し い も の も 15% に の ぼ る と 証 言 し た が 、 こ れ す な わ ち 、 明 ら か に 非 侵 害 的 な 約 10% の フ ァ イ ル が 残 さ れ て い る こ と を 意 味 す る し 、 こ の 数 字 は ソ ニ ー 事 件 で 裁 判 所 が 直 面 し た VCR の 許 可 さ れ た タ イ ム シ フ ト 使 用 の 数 字 9% 程 度 と 非 常 に よ く 似 て い る の で あ る 」 と 言 い 切 り 、 少 な く と も MGM等 は 、 サ マ リ ー ジ ャ ッ ジ メ ン ト の 基 準 を 満 た せ る だ け の 証 拠 を 提 示 し て い な い と し た 。
ま た 、Breyer 判 事 は 、ソ ニ ー 判 決 が 実 質 的 な 非 侵 害 的 使 用 の「 可 能 性 」と い う 言 葉 を 使 っ た こ と を 捉 え 、 そ れ は 「10% の よ う な 数 字 に つ い て 、 常 に そ れ に 固 定 さ れ て い る の な ら 十 分 な 証 明 に は な り 得 な い が 、 時 間 が 経 て ば 合 法 的 な 使 用 が 拡 大 す る 合 理 的 な 見 込 み が あ る 場 合 、 適 切 な 基 準 と な り 得 る 数 字 だ と い う こ と を 示 唆 し て い る 」 と し 、 更 に 「 そ の 用 語 は 、 製 品 の 『 可 能 性 』 を 判 断 す る 上 で 、 製 品 の 将 来 の 潜 在 的 な 使 用 に つ い て 考 慮 す る こ と が 適 切 で あ る こ と も 示 唆 し て い る 」と 主 張 す る 。そ の 上 で 、判 事 は 、「 想 定 さ れ 得 る そ の よ う な 発 展 中 の 使 用 と 、10% と 推 定 さ れ る 非 侵 害 的 な も の と を あ わ せ る と き 、ソ ニ ー 判 決 の 基 準 を 満 た す に 十 分 で あ ろ う 」 と 結 論 す る 。
( 2 ) ソ ニ ー ル ー ル 修 正 の 必 要 性
Breyer 判 事 は 、本 件 に お け る ポ イ ン ト は 、証 拠 が ソ ニ ー 判 決 の 基 準 を 満 た す か 否 か で は な く て 、 同 基 準 を 修 正 す る か 、 ま た は よ り 厳 し く 当 て 嵌 め る か に あ る と す る 。 そ し て 、 ソ ニ ー 判 決 の 基 準 が 、 著 作 権 者 の 利 益 と 他 人 が ビ ジ ネ ス す る 自 由 と の バ ラ ン ス を 求 め る も の で あ る こ と を 考 え る と 、「 ソ ニ ー 判 決 の 基 準 を 修 正 し た り 、厳 し く 当 て 嵌 め た り す る こ と が 必 要 か ど う か を 決 め る た め に は 、 ソ ニ ー 判 決 の 基 準 で は 、 著 作 権 と 新 技 術 の そ れ ぞ れ の 利 益 の バ ラ ン ス が 上 手 く と れ て い な い こ と を MGM が 証 明 で き て い る か を 考 慮 し な け れ ば な ら な い 。特 に 、 (1)ソ ニ ー 判 決 の 基 準 は 、( 私 が 解 釈 し た よ う に )新 し い 技 術 を 保 護 す る た め に 機 能 し て き た か 、(2)も し そ う な ら 、修 正 や 厳 格 解 釈 は そ の 保 護 を 大 い に 弱 め る か 、(3) も し そ う な ら 、新 し く ま た は 必 要 な 著 作 権 関 連 の 便 益 は 、そ の よ う な 弱 体 化 よ り も 重 要 か 」 の 3点 が ポ イ ン ト で あ る と す る 。
第 1点 目 に つ い て は 、 ソ ニ ー 判 決 の 基 準 は 明 快 な も の で あ り 、 技 術 の 将 来 性 も 考 慮 に 入 れ て お り 、「 強 力 に 技 術 保 護 的 で あ る 。新 技 術 が 問 題 と な る と き 、裁 判 所 が 二 次 的 責 任 を 見 出 す の を 故 意 に 難 し く し て い る 」 と す る 。
第 2 点 目 に つ い て は 、「Ginsburg判 事 の ア プ ロ ー チ は 、ソ ニ ー 判 決 の 保 護 を 得 る た め に 、 被 告 が ― ― こ こ に お い て 提 示 さ れ た も の に 比 べ て ― ― 相 当 に 多 く の し っ か り し た 証 拠 を 提 示 す る こ と を 求 め る も の で あ る 」 が 、 そ れ は 技 術 の 開 発 者 に と っ て 、 リ ス ク と 不 確 実 さ を 増 す だ け で あ り 、「 結 果 、 技 術 開 発 の 萎 縮 を 増 す こ と に な る 」 と 批 判 し た 。
第 3 点 目 に つ い て は 、「 ソ ニ ー 判 決 の 基 準 を 揺 る が す こ と が 、一 般 的 に 著 作 権 者 の 収 入 の 確 保 に つ な が る か 疑 い を 持 っ て い る 」と し 、「 著 作 権 の 側 に 生 ま れ る 利 益 が 、技 術 の 側 の 損 失 を 超 過 す る と 結 論 づ け る の は 難 し い 」 と も い う 。 ま た 、 ソ ニ ー 判 決 の 基 準 を 変 更 し な い と ど れ だ け の 害 が あ る か を 検 討 し た と き 、「 違 法 な コ ピ ー は( 著 作 権 )業 界 の 収 入 を 害 す る が 、 ど の 程 度 か は 明 確 で は な い 」 と す る 。
以 上 を 踏 ま え て 、Breyer判 事 は 、ソ ニ ー 判 決 を 変 更 す る 必 要 性 は 十 分 に は 示 さ れ て お ら ず 、 む し ろ そ の 悪 影 響 を 考 慮 す る と 、 既 に 述 べ た よ う な 理 解 の ま ま 、 ソ ニ ー 判 決 は 維 持 す べ き で あ り 、そ の 意 味 で は 控 訴 裁 の 判 断 は 正 し く 、Ginsburg判 事 に 賛 成 で き な い と す る 。
4 . 検 討
1 84 . 1 は じ め に
本 判 決 は 、 ソ ニ ー 判 決 お よ び そ の 汎 用 品 例 外 ル ー ル の 適 用 範 囲 を 明 ら か に す る こ と で 、 本 件 と ソ ニ ー 判 決 と で は 事 案 が 違 う と 整 理 し 、 ソ ニ ー 判 決 で は ほ と ん ど 触 れ ら れ る こ と の な か っ た 侵 害 の 誘 因 論 に 着 目 す る こ と で 、 事 案 の 解 決 を 図 っ た も の で あ っ た 。
21年 ぶ り の 判 例 変 更 か と 注 目 さ れ て い た 本 件 が 、侵 害 の 誘 因 論 に よ っ て 解 決 さ れ た こ と は 、 あ る 意 味 で は 肩 す か し と い え る19。 本 判 決 は 、 ソ ニ ー 判 決 が 下 さ れ て 以 来 、 常 に 議 論
1 8 本 判 決 に 関 す る 評 釈 等 の 内 、 執 筆 時 点 で 筆 者 が 参 照 し た も の と し て 、 城 所 岩 生 「 フ ァ イ ル 交 換 ソ フ ト に よ る 著 作 権 侵 害 司 法 は 技 術 中 立 性 を 貫 け 」日 本 経 済 新 聞 2005年 7月12 日 朝 刊 、小 川 憲 久「 知 的 財 産 法 ア ベ ニ ュ ー Grokster 米 国 連 邦 最 高 裁 判 決 」e-houki.com会 員 制 サ イ ト 、「 知 的 財 産 関 連 の 動 向 ( 1 )P2Pに 関 す る 米 連 邦 最 高 裁 判 決 を め ぐ っ て 」AIPPI Vol.50, No.7 (2005) 56~58頁 、 平 野 晋 「 イ ン タ ー ネ ッ ト 法 判 例 紹 介 86 MGM v. Grokster ~ セ ン ト ラ ル ・ サ ー バ ー を 用 い な い P2Pフ ァ イ ル 交 換 ソ フ ト 頒 布 者 で あ っ て も 、著 作 権 市 販 行 為 を 導 い て い た 場 合 に は 有 責 で あ る と 連 邦 最 高 裁 が 判 断 ~ 」 国 際 商 事 法 務 第 33巻 7号 2005 年7月 1006~1007頁 お よ び 「 イ ン タ ー ネ ッ ト 法 判 例 紹 介 87 MGM v. Grokster ~P2Pフ ァ イ ル 交 換 ソ フ ト 頒 布 者 の 責 任 に 関 す る 同 意 意 見 ~ 」 国 際 商 事 法 務 第 33巻 8号2005 年8月 1156~1157頁 、 井 口 加 奈 子 「P2Pソ フ ト ウ ェ ア と 著 作 権 侵 害 - 米 最 高 裁 MGM 対 グ ロ ク ス タ ー 判 決 - 」NBL No.815 (2005) 4~6頁 、 ス テ ィ ー ブ ン ・ ギ ブ ン ズ = 三 原 繁 美 「Grokster 米 連 邦 最 高 裁 判 決 と Winny開 発 者 事 件 を め ぐ る 「 意 図 」 の 関 係 」 国 際 商 事 法 務 第 33 巻 8号 2005年 8月 1034~1039頁 、Pamela Samuelson “Legally Speaking: Did MGM Really Win the Grokster Case?” 48 Comm. ACM (forthcoming Oct. 2005)<http://www.sims.berkeley.edu/~pa m/papers/CACM%20SCT%20decides%20MGM.pdf> 、Lee A. Hollaar “ ’Sony Revisited,’ Revisited Another look at the paper that presaged Grokster and inducement liability”<http://www.digital- law-online.info/papers/lah/sony-revisited.pdf> 、 な ら び に LATHAM&WATKINS Litigation De- partment “MGM v. Grokster: The Supreme Court Revisits the Parameters of Secondary Liability for Copyright Infringement” Client Alert Number 474, August 16, 2005 <http://www.lw.com/
resource/Publications/_pdf/pu b1352_ 1.pdf> 参 照 。 ま た 、 井 上 ・ 前 掲 注(15)の 「 訳 注 」 も 参 照 。
1 9 侵 害 の 誘 因 論 が 俄 然 注 目 を 浴 び る よ う に な っ た の は 、第108連 邦 議 会 に お け るS.2560法 案(Inducing Infringement of Copyrights Act of 2004: 略 し て Induce Act) の 審 議 が 契 機 で あ る 。(Induce Act に つ い て は 、拙 稿「 第 108米 国 連 邦 議 会 に 提 案 さ れ た H.R.107法 案 と S.2560法 案 の 検 討 」情 報 ネ ッ ト ワ ー ク ・ ロ ー レ ビ ュ ー 第 4巻 第 2号 1~18 頁 参 照 。)
Grokster事 件 第 一 審 判 決 を 不 服 と し て 、 当 時 の 上 院 司 法 委 員 会 委 員 長 Orin G. Hatch 上 院 議 員 が 主 た る 提 唱 者 と な っ て 上 程 さ れ た Induce Actは 、 賛 成 反 対 両 派 か ら の 激 し い 議 論 を 巻 き 起 こ し 、 侵 害 の 誘 因 論 の 可 能 性 と 問 題 点 を 浮 き 彫 り に し た 。
Induce Act自 体 は 、賛 成 反 対 両 派 の 折 り 合 い が 付 か ず 、大 統 領 選 挙 前 の 議 会 の 状 況 も あ っ て 、結 局 廃 案 と な っ て し ま っ た が 、そ の こ と は 侵 害 の 誘 因 論 が 、表 舞 台 か ら 降 壇 し た こ と を 意 味 す る も の で は な か っ た 。 そ も そ も Induce Actの 登 場 に は 布 石 が あ り 、 上 院 司 法 委 員 会 の フ ェ ロ ー を 勤 め た 経 験 も あ る ユ タ 大 学 のHollaar教 授 が 発 表 し た 論 文(Hollaar前 掲 注(18)の2004年6月6日 版http://www.digit al-law-online.info/ papers/lah/sony-revisited-june6.pdf)が 、そ の き っ か け と な っ た と さ れ て い る 。
を 巻 き 起 こ し て き た 「 実 質 的 に 非 侵 害 的 な 使 用 」 の 意 義 に つ い て 、 最 高 裁 が 見 解 を 示 す 機 会 を 先 延 ば し に し て し ま っ た 。本 件 の 事 実 関 係 を 前 提 に す る 限 り 、「 実 質 的 に 非 侵 害 的 な 使 用 」 の 意 義 が 限 定 さ れ る こ と を 期 待 し て い た 著 作 権 者 達 に と っ て は 、 事 案 と し て の 勝 利 に も か か わ ら ず 、 残 念 な 結 果 と な っ て し ま っ た に 違 い な い20。 一 方 で 、 侵 害 の 誘 因 論 に よ る 肩 す か し 解 決 で あ っ た 結 果 、 ソ ニ ー 判 決 を 維 持 し た こ と に つ い て 本 判 決 を 評 価 す る 声 は 少 な く な い21。 も っ と も 、 そ の 代 償 と し て 登 場 し た 侵 害 の 誘 因 論 自 体 に 対 す る 評 価 は 様 々 で あ る22。
以 上 の よ う な 認 識 の 下 、本 稿 で は 、本 判 決 の ポ イ ン ト で あ る 侵 害 の 誘 因 論 に 注 目 し つ つ 、 検 討 を 進 め た い 。
4 . 2 侵 害 の 誘 因 論 の 位 置 づ け
本 判 決 に も あ る よ う に 、 侵 害 の 誘 因 論 と 類 似 す る 考 え 方 は 、 特 許 法 271 条23の(b)項 に 、 積 極 的 誘 導 侵 害 と し て 法 定 さ れ て い る 。も っ と も(b)項 の 規 定 ぶ り か ら 明 ら か な よ う に 、積 極 的 誘 導 侵 害 は 、 二 次 的 侵 害 で は な く て 、 直 接 侵 害 の 一 種 と さ れ て い る 。 し か し 、271 条 の 立 法 過 程 を 振 り 返 る と 、 そ れ が 、 か つ て は 、 二 次 的 侵 害 の 一 類 型 で あ っ た こ と は 明 ら か で あ る 。す な わ ち 、271条 の 制 定 前 の 段 階 に お い て は 、271 条(b)項 の 積 極 的 誘 導 侵 害 と(c) 項 の 寄 与 侵 害 と が 未 分 化 の ま ま 、 い わ ば 広 義 の 寄 与 侵 害 概 念 に 包 摂 さ れ て い た と こ ろ 、 立 法 化 に あ た っ て 、そ こ か ら(c)項 に 該 当 す る よ う な 侵 害 類 型 の み を 狭 義 の 寄 与 侵 害 と し て 抜 き 出 さ れ 、 他 が(b)項 と し て 整 理 さ れ た の で あ る24。
そ し て 、 広 義 の 寄 与 侵 害 概 念 が 、 共 同 不 法 行 為 責 任 に 端 を 発 す る25以 上 、 特 許 権 侵 害 の
Hollaar教 授 は 、侵 害 の 誘 因 と い う 考 え 方 を 用 い れ ば 、ソ ニ ー ル ー ル に 手 を つ け る こ と な く Grokster 事 件 を 解 釈 に よ っ て 解 決 可 能 で あ る と 提 案 し て い た 。そ の 意 味 で は 、Induce Actは 屋 上 屋 に 過 ぎ ず 、 そ の 廃 案 自 体 は 大 き な 問 題 と い え な い こ と は 明 ら か だ ろ う 。 事 実 、2005年 3月 29日 に 開 か れ た 最 高 裁 に お け る 口 頭 弁 論 に 際 し て は 、侵 害 の 誘 因 と い う 考 え 方 が し ば し ば 言 及 さ れ る こ と と な り 、ま た 少 な か ら ぬ 法 廷 の 友 意 見 も 侵 害 の 誘 因 論 に よ る 解 決 を 示 唆 し て お り 、今 回 の 判 決 の 結 論 は あ る 意 味 予 想 さ れ て い た と も い え る 。
2 0 Samuelson・ 前 掲 注(18) 1頁 参 照 。
2 1 城 所 ・ 前 掲 注(18)お よ び Samuelson・ 前 掲 注(18) 6頁 参 照 。
2 2 城 所 ・ 前 掲 注(18)お よ び Samuelson・ 前 掲 注(18) 6頁 参 照 は 、 技 術 開 発 へ の 影 響 は 少 な い と 評 価 す る 。一 方 、例 え ば 全 米 家 電 協 会(CEA)は 、そ の 不 明 確 さ 故 に 技 術 開 発 に 萎 縮 効 果 を 与 え る の で は な い か と 懸 念 す る 。 <http://www.netcaucus.org/events/2005/grokster/one-pagers/cea-grokster2005.
pdf> ま た 、 権 利 者 で あ る 全 米 映 画 協 会 (MPAA) や 全 米 レ コ ー ド 協 会 (RIAA) は 当 然 の こ と が 認 め ら れ た に 過 ぎ な い と し て 歓 迎 の コ メ ン ト を 寄 せ る 。 <http://www.netcaucus.org/events/2005/
grokster/one-pagers/mpaa-grokster2005.pdf> <http://www.netcaucus.org/events/2005/grokster/
one-pagers/riaa-grokster2005.pdf>
2 3 米 国 特 許 法 271条
(a) こ の 法 に 特 段 の 定 め が あ る 場 合 を 除 き 、 許 諾 な く 、 特 許 発 明 に つ い て 、 そ の 有 効 期 間 中 に 、 米 国 内 に お い て 生 産 し 、 使 用 し 、 販 売 を 申 し 出 、 も し く は 販 売 し 、 ま た は 米 国 内 に 輸 入 す る 者 は 誰 で も 特 許 権 を 侵 害 す る 。
(b) 特 許 権 の 侵 害 を 誘 導 す る 者 は 誰 で も 侵 害 者 と し て 責 任 を 負 う 。
(c) 特 許 さ れ た 機 械 、 製 品 、 化 合 物 も し く は 構 成 物 、 ま た は 特 許 さ れ た 方 法 を 実 施 す る 上 で 使 用 さ れ る 原 料 も し く は 装 置 で あ っ て 、 発 明 の 重 要 な 部 分 を 構 成 す る も の で あ り 、 実 質 的 に 非 侵 害 的 な 使 用 に 適 す る 汎 用 的 な 製 品 ま た は 商 業 上 の 日 用 品 で な い も の に つ い て 、 そ れ が 当 該 特 許 の 侵 害 と な る 使 用 の た め に 特 に 生 産 さ れ ま た は 特 に 改 造 さ れ た こ と を 知 り つ つ 、 米 国 内 に お け る 販 売 を 申 し 出 も し く は 販 売 し 、ま た は 米 国 内 に 輸 入 す る 者 は 誰 で も 寄 与 侵 害 者 と し て 責 任 を 負 う 。
( 略 )
2 4 DONALD S. CHISUM, CHISUM ON PATENTS (2004) §17.04[3] 参 照 。
2 5 Hewlett-Packard Co. v. Bausch & Lomb Inc., 909 F.2d 1464, 1469 (Fed. Cir. 1990) 参 照 。