平成22年度 財団法人JKA
日本企業のロシア・CIS諸国との機械産業基盤整備調査
ロシアビジネス要覧
2011年3月
社団法人 ロシアNIS貿易会 ロシアNIS経済研究所
競輪補助事業
序 文
ロシアでは経済成長に伴い、機械設備需要の一定の高まりが見られ、ビジネスチャンスが拡大 している。2008年秋のリーマン・ショック後の世界的な不況で、一時的な縮小は余儀なくされた が、潜在的な機械設備需要は大きく、日本の機械設備メーカーにとって、引き続き成長が見込め る有望な市場であることに変わりはない。
一方、我が国においては、対ロシアビジネス参入のためのHow toの空白が大きく、基礎的な情 報が不足しているのが現状であり、せっかくのビジネスチャンスを活かせない一因となっている。
そこで今回、JKAの補助の下に調査事業を実施し、ロシア向け機械設備輸出振興のための基礎 資料として『ロシアビジネス要覧』を作成し、ここにお届けすることになった。本資料が、日本 メーカーにとってのロシア新市場の開拓を促進することになり、日本の機械産業の振興に多少な りとも寄与できれば、これにまさる喜びはない。
2011年3月
社団法人 ロシアNIS貿易会 会 長 西 岡 喬
目 次
Ⅰ.ロシア経済の概要
1.ロシア経済一般 ... 1 2.ロシア極東の経済概況 ... 6
3.日ロ経済関係 ... 17
Ⅱ.ロシアの地域 1.ロシアの地域構成 ... 23
2.ロシアの各連邦管区概要 ... 25
Ⅲ.ロシアビジネスの手引き 1.現地法人、現地事務所の設立の手続き ... 41
2.労働事情 ... 53
3.税制・会計 ... 73
4.貿易取引 ... 101
5.ルーブル決済・送金実務 ... 117
6.旅行ガイド ... 129
1
1.ロシア経済の概要
(1)世界金融危機後のロシア経済
ロシア経済は、リーマンショックに端を発した2008年秋の経済危機を乗り越えて、上昇基調に ある。2010年のロシアの国内総生産(GDP)は、現行価格で44兆4,914億ルーブルとなり、インフ レを考慮した实質で前年から4.0%成長した(表1)。しかしながら、これは原油価格の再びの上 昇に負うところが大きく、2000年代の経済成長を支えた(油価の高騰)のも、その後の世界経済 危機のショックをもっとも強く伝えた(油価の急落)のも原油価格であった。
図1をみると、ロシア経済の成長がいかに油価と結びついているかがわかる。
GDPが2000~2007
年にかけて年平均7.2%の高成長で推移するなか、油価は2002年から上昇に転じ、2005年には対前
年比41.3%増、2008年には同36.4%増を記録している。ところが、2009年に36.3%減と大きく落ち 込むと、GDPも7.8%縮小した。そして2010年に油価が27.8%増となると、GDPも4.0%増と一定の 回復を示したように、ロシア経済の成長の原動力は継続的な原油高という従来の構造は変わって おらず、それが構造改革への意欲を減退させていることも否定できない。とはいえ、製造業の生産が増加していることは注目すべきであろう。鉱工業生産全体の伸びは
8.2%であったが、自動車を中心とする輸送機器は32.2%増、
電気・電子機器、光学機器は22.8%増、ゴム・プラスチック製品21.5%増を記録(表2)。経済危機によって2009年に大きく落ち込んだ部門ほ ど、その反動で回復が目覚ましい傾向がある。ロシア政府が資源輸出で獲得した資金を自動車な
表1 ロシアの主要経済指標の推移
(前年比实質増減率、%)
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 国内総生産(GDP)
鉱工業生産 農業生産 固定資本投資 商品小売販売高 实質可処分所得 輸出1)
輸入1)
4.7 3.1 1.5 2.8 9.3 11.1
5.3 13.4
7.3 8.9 1.3 12.5
8.8 15.0 26.7 24.8
7.2 8.0 2.4 13.7 13.3 10.4 34.8 28.0
6.4 5.1 1.6 10.9 12.8 12.4 33.1 28.8
8.2 6.3 3.0 16.7 13.9 13.3 24.5 31.0
8.5 6.8 3.3 21.1 16.1 12.1 16.8 36.0
5.2 0.6 10.8
9.1 13.0
2.7 33.1 30.6
▲7.8
▲9.3 1.4
▲16.2
▲4.9 2.1
▲35.7
▲34.3
4.0 8.2
▲11.9 6.0 4.4 4.3 32.9 30.2 インフレ率(%)2)
失業率(%)3)
15.1 9.0
12.0 8.6
11.7 8.3
10.9 7.6
9.0 6.9
11.9 6.1
13.3 7.8
8.8 8.2
8.8 7.2
(注)1)国際収支ベース。米ドルの名目増減率。2010年は1~11月の前年同期比。2)消費者物価。12月の前 年同月比。3)ILO方式。年末現在。
(出所)ロシア連邦国家統計局。
2
図1 ロシアの経済成長率と油価上昇率
(出所)ロシア統計局ウェブサイトから作成。油価はIMFウェブサイトの世界平均価格。
で獲得した資金を自動車などの製造業立て直しに投入した効果が出たといえる。他方、ロシアの 主力産業である鉱業は、危機でもそれほど落ち込まなかった分、2010年の伸び率も3.6%と小幅で あった。
2010年6月18日、メドヴェージェフ大統領は、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムにお
いて、今後10年の間に経済発展のモデルを原料輸出型からイノベーション型に移行し、経済の構 造転換を図ることによって、ロシアの「近代化(modernization)」を实現する旨の演説を行った。この演説は、ロシアにおける事实上の危機終息宠言及び新政策への移行宠言とも読み取れ、内外 のメディアでも注目された。製造業やハイテク産業の育成には、生産インフラの更新や先端技術 の導入をいかに迅速に進めるかが、ロシア経済の持続的な成長のカギになると思われる。石油・
ガスに依存する消費主導のモデルから、投資主導のそれへの転換ともいえるだろう。
メドヴェージェフ大統領はロシアの近代化のための優先分野として、外資の参入による投資フ ァンドの設立、金融セクターの発展とモスクワ金融センターの設立、2011年のWTOおよびOECD への加盟ならびにEUとの共通経済圏の創設、モスクワ近郊スコルコヴォにおけるイノベーション センターの創設、エネルギーセクターの技術革新、技術移転の努力などを挙げている。また、プ ーチン首相は同年4月、年次報告において、今後10年間で産業の生産性を尐なくとも2倍に引き 上げることを強調。GDPが2012年には金融危機前の水準に戻り、2020年までに経済規模で現在の 世界10位前後から、上位5位を目指すとの目標を掲げた。
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 GDP成長率(左軸 %) ▲ 5.3 6.4 10.0 5.1 4.7 7.3 7.2 6.4 8.2 8.5 5.2 ▲ 7.8 4.0 油価上昇率(右軸 %) ▲ 32.2 37.6 57.0 ▲ 13.8 2.5 15.8 30.7 41.3 20.5 10.6 36.4 ▲ 36.3 27.8
▲ 40
▲ 20 0 20 40 60
▲ 8
▲ 4 0 4 8 12
3
表2 ロシアの鉱工業部門別生産指数の推移
(前年=100)
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 鉱工業全体
鉱業
エネルギー資源採掘 エネルギー資源以外 製造業
食品、飲料、タバコ 繊維、縫製
皮革・同製品、製靴 木材加工・同製品 紙パルプ、出版・印刷 コークス、石油製品 化学工業
ゴム・プラスチック製品 その他の非金属鉱物製品 冶金、完成金属製品 機械・設備
電気・電子機器、光学機器 輸送機器
その他の生産
電力・ガス・水の生産と供給
108.9 108.7 110.3 102.5 110.3 106.9 101.2 111.5 109.7 107.8 102.2 105.4 105.5 107.3 107.2 119.1 143.2 114.0 110.8 103.3
108.0 106.8 107.7 108.5 110.5 104.4 96.0 99.4 108.7 105.1 102.4 106.6 113.5 108.4 103.9 121.1 134.5 111.5 110.5 101.3
105.1 101.3 101.8 96.8 105.7 104.4 98.5 97.3 104.5 101.2 105.4 102.6 105.5 103.5 105.7 99.9 120.7 106.0 100.7 101.2
106.3 102.5 102.5 102.5 108.3 107.0 112.1 122.2 103.6 107.0 107.1 104.8 121.7 115.7 109.8 109.4 116.3 103.9 112.2 104.9
106.8 101.9 101.9 101.6 109.5 106.1 99.7 100.0 106.2 109.1 102.9 106.0 122.1 110.3 102.1 119.1 111.8 115.3 105.1 99.8
100.6 100.2 99.8 101.5 103.2 101.1 95.5 101.7 101.4 100.8 102.7 95.8 112.5 99.1 99.8 104.0 92.1 109.5 104.6 101.4
90.7 99.4 100.4 92.6 84.8 99.4 83.8 112.3 79.3 85.7 99.4 93.1 87.4 72.5 85.3 68.5 67.8 62.8 79.3 96.1
108.2 103.6 103.1 107.3 111.8 105.4 112.1 118.7 111.4 105.9 105.0 114.6 121.5 110.7 112.4 112.2 122.8 132.2 117.7 104.1
(出所)ロシア連邦国家統計局。
(2)ロシアの対外経済関係
ロシアの対外貿易は2000年以降拡大を続け、2008年には輸出入総計で7,346億ドルに達した。
2008年秋のリーマンショックの影響を受けて、2009年は前年比36.2%減となったが(表3)
、2010年に入りロシア経済が急速に回復した結果、6,254億ドル(対前年比33.3%増)と2007年の实績を 上回った。
2009年における貿易の地域構造をみると、対EU貿易が約半分を占めているが、ここ数年、対ア
ジア貿易のシェアが拡大している。2010年の貿易相手国別ランクでは、中国(貿易総額:593億ド
ル)がドイツ(同:519億ドル)を抜いて初めて第1位になった。とくにロシアの対中輸入が拡大(対前年比71%増)しており、中ロの経済関係は、資源をロシアに求める中国と、世界の工場が 集中する中国から生活必需品・安価な工業製品を求めるロシアの相互依存関係でかみ合っている。
2010年にはメドヴェージェフ大統領がベトナム、インド、インドネシアを訪問し、原発・武器の
売り込みなどの大型商談で实績を挙げた。東南アジア諸国連合(ASEAN)との間では、ロシアのWTO加盟を前提とした自由貿易協定(FTA)の締結のための基本協定に調印している。
4
表3 ロシアの貿易高
(100万ドル)
年 総額 輸出 輸入 収支
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
124,926 131,647 138,219 114,863 103,166 136,973 141,944 152,886 191,002 257,170 340,159 439,051 551,675 734,681 469,208 625,395
78,217 85,189 85,096 71,314 72,889 103,093 100,060 106,712 133,656 181,600 241,452 301,244 351,928 467,581 301,751 396,442
46,700 46,458 53,123 43,580 30,278 33,880 41,884 46,174 57,347 75,569 98,708 137,807 199,746 267,101 167,457 228,953
31,508 38,732 31,972 27,734 42,611 69,213 58,176 60,538 76,309 106,031 142,744 163,437 152,182 200,480 134,294 167,488
(出所)ロシア連邦国家統計局。
表4 2009年のロシアの貿易の地域構造
輸出入合計 輸 出 輸 入 収支
100万ドル 構成
(%) 100万ドル 構成
(%) 100万ドル 構成
(%) 100万ドル 全世界 469,207.7 100.0 301,750.7 100.0 167,457.0 100.0 134,293.7 CIS域内
CIS域外
68,415.7 400,792.0
14.6 85.4
46,633.6 255,117.1
15.5 84.5
21,782.1 145,674.9
13.0 87.0
24,851.5 109,442.2 ヨーロッパ
EU アジア アフリカ 米州 オセアニア
295,732.9 236,177.3 134,375.3 7,033.3 31,042.4 960.6
63.0 50.3 28.6 1.5 6.6 0.2
200,448.3 160,812.8 82,114.4 5,345.7 13,584.4 239.8
66.4 53.3 27.2 1.8 4.5 0.1
95,284.6 75,364.5 52,260.9 1,687.0 17,458.0 720.8
56.9 45.0 31.2 1.0 10.4 0.4
105,163.7 85,448.3 29,853.5 3,658.1
▲3,873.6
▲481.0
(出所)ロシア連邦国家統計局。
ロシアの輸出入品構成には大きな変化は見られない。石油ガスを中心とした鉱物製品は輸出の
70%弱を占め、一方、輸入では機械・設備がトップ(2009年のシェアは28%)、それに自動車を中
心とした輸送手段(同12%)が続いている。5
表5 ロシアの輸出入商品構成
(100万ドル)
2006 2007 2008 2009
輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入
総 計 301,244.2 137,807.0 351,928.2 199,746.3 467,580.3 267,100.7 301,750.7 167,457.0 生きた動物・畜産品
植物の製品 油脂
加工食品・飲料品・タバコ 鉱物製品
化学品
プラスチック・ゴム・同製品 皮革・同製品
木材・同製品 紙・パルプ 繊維・同製品 靴・傘等
石・セメント・硝子・同製品 卑金属・同製品
機械・設備 輸送手段
器具・装置・時計・楽器 雑製品
その他の商品
856.7 2,059.5 541.8 2,056.0 198,630.6 13,567.5 3,189.7 366.7 6,679.3 2,855.3 731.8 235.4 828.7 41,158.9 8,377.6 8,109.5 857.2 486.3 9,655.7
7,816.1 5,626.9 663.6 7,534.0 3,299.6 15,082.1 6,705.3 434.3 611.0 3,352.8 4,159.9 1,333.9 2,135.4 10,280.9 38,073.0 23,654.4 4,147.5 2,464.2 432.0
929.2 4,705.4 683.9 2,771.1 228,435.3 16,710.7 4,090.7 335.8 8,930.0 3,333.5 745.3 206.2 1,073.7 49,131.2 9,907.5 8,582.6 1,055.9 588.6 9,711.5
9,564.5 7,408.7 966.3 9,686.4 4,680.6 18,330.0 9,199.
697.2 880.4 4,428.8 6,268.3 2,362.4 2,883.2 15,757.4 56,437.6 39,299.8 6,287.8 3,777.7 829.1
904.2 4,041.5 1,038.5 3,294.1 326,313.6 25,224.2 5,009.9 354.4 7,882.1 3,677.9 648.4 221.7 1,137.4 54,585.9 12,143.7 9,140.1 1,317.4 636.3 10,009.5
12,712.8 9,496.2 1,627.0 11,353.5 8,279.4 23,460.8 11,747.6 1,038.3 1,173.9 5,329.8 8,417.3 3,240.9 3,494.2 18,524.8 76,193.6 56,504.8 8,436.1 5,113.8 956.0
2,043.0 4,113.9 952.0 2,845.2 203,372.9 15,029.1 3,673.6 241.4 5,630.5 2,806.3 500.5 198.9 898.5 33,591.3 9,102.4 7,660.3 1,074.0 504.3 7,512.6
11,123.2 8,855.0 952.3 9,165.3 4,074.1 19,927.6 7,968.7 769.1 764.1 4,346.3 7,047.7 2,507.0 1,979.8 10,853.8 47,257.8 20,441.1 5,159.2 3,503.6 760.9
(出所)ロシア連邦国家統計局。
ロシアへの外国投資は、2000年にプーチン大統領が就任してロシアの内政が安定し、経済も原 油をはじめとする資源の国際市況の高騰で活況を呈した結果、急激に拡大した。2007年の外国投 資受入高は1,209億ドルで、2000年の11倍に達した。同年をピークに外国投資受入高は下降線を辿 っているものの、2009年以降、中国のロシア向け投資は急拡大している。同年におけるロシアの 外国投資受入高819億ドルのうち、ルクセンブルグ(117億ドル)、オランダ(116億ドル)に次い で、中国(97億ドル)が第3位であった。中国の投資は直接投資や証券投資ではなく、「その他投 資」に分類されているので、東シベリアからの原油輸送パイプラインへの融資によるものと考え られる。2010年1~9月期でも15億ドルが記録され、ドイツ、オランダ、キプロス、英国、フラ ンスに次ぐ6番目に位置しており、中ロの経済協力は「貿易」から「事業投資」へ拡大すると予 想されている。
6
2.ロシア極東の経済概況
ロシア経済は2003年以降、毎年5%以上の経済成長率を達成し、BRICsの1ヵ国として、好調な 経済パフォーマンスを続けてきた。2008年秋に発生した世界的な経済危機はロシア経済にも大き な影響を与えた。経済成長率は1998年以来のマイナス成長となった。2010年はエネルギー価格の 上昇や世界的な景気回復で4.0%のプラス成長となった。
再び高成長の軌道へ ロシア極東の成長率は発表されていないが、おそらくは国の成長率の4%
前後になったものとみられる。ロシアの統計数字はこれまでの意図的に操作することが多いとさ れ、とくに地方の主要経済指標については、特段のプラマイ要因がない限り、国の数字の前後と することが慣習となっている。発表される数字がどこまで正確なものかは不明だが、一忚の目安 にはなる。ロシア極東に度々訪問している者からすると、成長率はもっと高いように感じる。国 の経済が回復する中、極東はその一翼を担ったといえよう。
公共投資と貿易拡大が牽引 極東の経済が好調な背景には大きな2つの要因がある。1つは、道 路、橋、発電所、空港などインフラ整備への膨大な政府投資がある。プーチン政権による1兆386 億ルーブル(3兆円強)の極東・ザバイカル地方社会経済発展プログラムを中心に、道路や空港、
港湾の整備、パイプライン、資源開発などインフラ整備事業を筆頭に、医療・福祉分野の充实、
低所得者や若年家族向け住宅の建設、人材の育成など、政府と民間の投資拡大による大規模な経 済開発を打ち出している。その最大の柱は、総額の約半分、5,105億ルーブル(1兆5,000億円)
を投下する政府による公共投資だ。老朽化が著しい道路などのインフラを整備する。民間も含む 大規模な公共事業で雇用を創出すると同時に立ち遅れたインフラを刷新し、住民の生活水準の向 上と定住化、中央との格差是正を目指す。なかでも、沿海地方のウラジオストクでは、2012年の
APEC首脳会合開催に向けた大規模な再開発が進行中で、民間投資含めた投資額は 2008年から
2012年までの5年間で、6,629億ルーブル(約2兆円)に達する。この額はプログラム全体のおよ
そ66%に相当する。プログラムによれば、2010年にはプログラム全体で2,568億ルーブル、うちウ ラジオストクの再開発に同2,253億ルーブルという巨額な資金が投下された。2011年にはさらに多
くの額が極東地域に投下されることになっており、公共投資拡大による好景気が今年も続くもの とみられる。しかし、こうした公共投資に支えられたバブルはいつか限界がくるのは必至だ。いつまでも公共 投資、国や地方によるインフラ整備には期待できない。極東開発が息切れになる前に、資源産業 以外の産業を創出できるか、極東の未来はこの1点にかかっている。
7
ロシア極東の基本情報○面積:616.9万km2(ロシアの36%、日本の16.3倍)
○人口(2008年初):648.6万人(ロシアの4.6%、日本の5.1%)
○連邦構成主体:9つ(ロシア全体では83)①サハ共和国、②カムチャッカ地方、③沿海地方、
④ハバロフスク地方、⑤アムール州、⑥マガダン州、⑦サハリン州、⑧ユダヤ自治州、⑨チュコ ト自治管区
○主要都市:ウラジオストク(57.9万)、ハバロフスク(57.7万)、ヤクーチア(25.6万)
○平均賃金:21,147.5ルーブル(2008年)(705ドル、1ドル=30ルーブル換算)
○主な産業:資源・原料基地としての役割(沿海地方:漁業、木材、鉱石、ハバロフスク地方:
機械製造、石油精製、石炭、サハ共和国:貴金属、石炭など)
○主な輸出品:原油、LNG、石炭、ダイヤモンドなど
○主な輸入品:中古車、中古建機・重機、軽工業品、食料品など
○経済開発:ロシア政府は「2013年までの極東・ザバイカル社会経済発展プログラム」(260のプ ロジェクト、総事業費7,000億ルーブル)を採択し、ロシアで最も遅れている地域である極東地域 を重点的に開発していく方針。とくにウラジオストクでは大規模なインフラ開発が進行中であり、
経済発展著しいアジア・太平洋諸国へのシフトとロシアの成長エンジンとしての期待がある。
○懸案事項:①人口流出が止まらない(1989年794.1万人、1995年736.1万人)、②中国の影響力拡 大、人とモノの流入、③生産セクターの未発達、資源・原料基地からの脱却が課題
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表6 ロシア極東の主要工業製品の生産動向
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 発電量(10億kWh) 40.1 40.6 41.1 40.7 41.8 41.9 44.0 原油(100万t) 3.9 4.4 6.6 15.2 13.6 17.4 18.3 石油一次精製(100万t) 8.8 10.2 10.3 11.0 11.3 11.0 11.8 天然ガス(10億m3) 3.6 3.5 3.9 8.4 11.0 20.7 26.6 石炭(100万t) 31.9 32.5 32.1 32.2 32.3 27.8 31.7 粗鋼(1,000t) 638 787 810 886 1,065 547 … 完成鋼材(1,000t) 614 729 755 863 1,021 500 … 鋼管(1,000t) 0.003 … … … 1.8 0.1 … 木材伐採量(100万m3) 14.3 14.5 15.5 16.2 13.1 11.1 … 産業用材(100万m3) 12.2 12.5 13.4 14.3 11.9 9.6 … 挽材(1,000m3) 1,146.1 1,233.9 1,317.4 1,341.2 1,152.1 1,252.0 1,068 板紙(1,000t) 21.2 22.5 24.0 21.4 23.5 22.3 … セメント(1,000t) 1,273.3 1,354.6 1,431.7 2,013.8 2,919.1 1,607.7 1,802 鉄筋コンクリート構造(1,000m3) 587.6 628.3 625.0 658.1 751.5 602.5 700 建材(100万m3) 10.7 11.4 10.8 13.8 16.4 15.1 15.6 建築用レンガ(100万標準レンガ) 147 143 152 157 190 106 … メリヤス製品(100万枚) 26.9 17.6 8.9 2.4 2.2 2.2 2.6 靴下類(100万足) 5.9 5.8 5.4 5.3 4.7 4.2 … 靴(1,000足) 1,389 1,285 1,903 884 1,224 2,952 3,643 テレビ(1,000台) 408.2 333.8 98.5 50.7 43.1 45.8 … 冷蔵庫・冷凍庫(1,000台) 128.7 159.8 152.0 175.7 189.0 138.2 … 洗濯機(1,000台) 299.4 284.6 201.5 146.5 91.2 22.4 … 乗用車(1,000台) … … … 13.8 パン・パン製品(1,000t) 332.9 336.0 321.0 320.8 306.2 299.6 297 菓子類(1,000t) 31.7 33.9 35.1 36.9 38.6 38.9 41.4 食肉(1,000t) 28.8 32.9 35.7 39.6 48.0 57.8 … 全乳製品(牛乳換算)(1,000t) 204.7 219.2 226.7 237.5 257.5 276.6 287 植物性油脂(1,000t) 16.3 22.8 23.7 24.1 18.7 28.2 … ビール(100万daℓ) 27.3 29.8 33.7 38.1 39.8 38.0 33.6 ウォッカ・リキュール(100万daℓ) 4.6 4.0 2.9 2.6 2.9 2.4 … 魚・海産物の水揚高(1,000t) 1,741.4 1,972.1 2,000.2 2,231.7 2,188.4 2,467.8 … 水産加工品(1,000t) 1,537 1,786 1,766 2,017 1,957 2,247 1,903 魚の缶詰・瓶詰(100万標準缶) 161 225 192 197 269 214 122
(注)原油はガスコンデンセートを含む。水産加工品は魚缶詰を含む。2007年~2009年の石炭はハバロフスク地 方とユダヤ自治州を含まない。2010年は『2010年のロシアの社会経済情勢』、2004~2009年は『ロシアの地域』(2010)、
石油一次精製、建材、菓子類、水産加工品、魚の缶詰・瓶詰は『ロシアの社会経済情勢』(各年版)、乗用車は報 道。
(出所)ロシア連邦国家統計局『ロシアの地域』、同『2010年のロシアの社会経済情勢』(2011)ほか。
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表7 ロシア極東の電力・エネルギー資源・金の生産動向
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 発電量(10億kWh) 40.1 40.6 41.1 40. 41.8 41.9 44.0 サハ共和国(ヤクーチヤ) 8.3 7.7 7.7 7.3 7.7 7.0 7.3 カムチャッカ地方 1.6 1.6 1.6 1.6 1.7 1.7 1.7 沿海地方 9.1 9.4 9.1 8.8 9.5 8.8 9.3 ハバロフスク地方 7.9 8.0 7.7 7.5 7.8 7.2 7.2 アムール州 7.4 8.2 9.3 9.7 9.5 11.6 12.7 マガダン州 2.5 2.3 2.3 2.3 2.2 2.2 2.2 サハリン州 2.7 2.7 2.8 2.9 2.8 2.8 3.0 チュコト自治管区 0.5 0.6 0.5 0.5 0.6 0.5 0.5 原油(100万t) 3.9 4.4 6.6 15.2 13.6 17.4 18.3 サハ共和国(ヤクーチヤ) 0.4 0.4 0.4 0.4 0.8 2.0 3.5 サハリン州 3.5 4.0 6.2 14.8 12.9 15.4 14.8 天然ガス(10億m3) 3.6 3.5 3.9 8.4 11.0 20.7 26.6 サハ共和国(ヤクーチヤ) 1.6 1.6 1.6 1.6 1.8 2.0 2.2 サハリン州 1.9 2.0 2.2 6.8 9.1 18.7 24.3 石炭(100万t) 31.9 32.5 32.1 32.2 32.3 27.8 31.7 サハ共和国(ヤクーチヤ) 11.1 11.2 11.4 12.2 12.6 7.2 11.2 カムチャッカ地方 0.04 0.02 0.05 0.04 0.05 0.04 … 沿海地方 10.7 11.0 10.6 9.8 10.1 10.5 10.4 ハバロフスク地方 … 2.1 1.9 … … … 2.6 アムール州 3.1 3.6 3.4 3.3 2.9 3.1 3.0 マガダン州 0.5 0.5 0.4 0.4 0.5 0.4 … サハリン州 3.3 3.4 3.6 3.4 3.6 3.5 3.7 ユダヤ自治州 … 0.1 0.09 … … - … チュコト自治管区 0.5 0.6 0.5 0.5 0.4 0.3 … 金(t) 82.2 79.0 62.9 68.6 86.8 102.0 … サハ共和国(ヤクーチヤ) 20.2 18.8 19.9 19.0 18.9 18.6 … ハバロフスク地方 20.9 18.2 15.7 14.8 16.2 14.6 … アムール州 14.2 14.7 14.5 14.7 18.7 21.9 … マガダン州 22.6 22.6 8.0 15.8 14.5 15.7 … チュコト自治管区 4.3 4.7 4.8 4.3 18.5 31.2 …
(注)金はマガダン州提供資料。2004~2009年は『ロシアの地域』、2010年は『2010年のロシアの社会経済情勢』。
(出所)ロシア連邦国家統計局『ロシアの地域』(2010)、同『2010年のロシアの社会経済情勢』(2011)ほか。
【メモ】サハリン1は2005年10月から原油・天然ガスの商業生産を開始、2006年10月から原油輸出を開始した。2010 年の生産量は原油が698.2万t、天然ガスが77.5億m3。サハリン2は1999年7月から原油生産を開始、2008年末か ら通年生産を開始した。サハリン2のLNG工場(生産能力は960万t)は2009年2月に稼動を開始した。2010年 の生産量は原油が604.7万t、天然ガスが153.9億m3。サハ共和国のタラカン油田は2008年10月から商業生産を開 始、2009年末からESPOを通じた原油輸出を開始した。2010年の生産量は331.9万t。
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表8 ロシア極東の木材伐採量・産業用材・水揚高の生産動向
2004 2005 2006 2007 2008 2009 木材伐採量(100万m3) 14.3 14.5 15.5 16.2 13.1 11.1 サハ共和国(ヤクーチヤ) 0.5 0.6 0.7 0.6 0.4 0.4 カムチャッカ地方 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 沿海地方 3.8 4.0 4.5 4.7 3.8 3.2 ハバロフスク地方 7.9 7.9 8.2 8.5 6.9 5.9 アムール州 1.2 1.2 1.4 1.6 1.5 1.0 マガダン州 0.0 0.0 0.01 0.01 0.01 0.01 サハリン州 0.6 0.4 0.3 0.4 0.2 0.2 ユダヤ自治州 0.1 0.2 0.2 0.2 0.1 0.1 産業用材(100万m3) 12.2 12.5 13.4 14.3 11.9 9.6 サハ共和国(ヤクーチヤ) 0.3 0.4 0.5 0.4 0.6 0.5 カムチャッカ地方 0.06 0.07 0.06 0.06 0.06 0.06 沿海地方 3.2 3.4 3.7 4.0 3.3 2.9 ハバロフスク地方 7.1 7.2 7.5 7.9 6.4 5.2 アムール州 1.0 0.9 1.1 1.4 1.3 0.8 マガダン州 0.0 0.0 0.01 0.01 0.0 0.01 サハリン州 0.5 0.3 0.3 0.4 0.1 0.2 ユダヤ自治州 0.1 0.2 0.2 0.2 0.1 0.1 魚・海産物の水揚高(1,000t) 1,741.4 1,972.1 2,000.2 2,231.7 2,188.4 2,467.7 サハ共和国(ヤクーチヤ) 3.0 3.8 4.3 4.3 3.5 カムチャッカ地方 586.6 613.2 690.1 727.7 838.9 沿海地方 634.3 638.3 700.6 690.6 660.7 ハバロフスク地方 137.2 143.4 146.8 147.4 182.1
アムール州 0.03 - - - -
マガダン州 105.8 102.4 108.0 93.0 100.9 サハリン州 471.4 452.6 522.3 475.3 642.9 チュコト自治管区 33.8 46.5 59.9 50.1 38.7
(注)木材伐採量と産業用材の2004~2009年は『ロシアの地域』、魚・海産物の水揚高の2004~2009年は『2009 年の極東連邦管区の社会経済情勢』。
(出所)ロシア連邦国家統計局『ロシアの地域』(2010)、ロシア連邦国家統計局ハバロフスク支部『2009年 の極東連邦管区の社会経済情勢』(2010)ほか。
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表9 ロシア極東の農産物の生産動向(総収穫量)
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 穀物(1,000t) 265.1 381.4 430.2 560.4 504.2 581.3 296.4 サハ共和国(ヤクーチヤ) 16.3 14.1 12.8 12.6 6.4 7.6 10.1 カムチャッカ地方 0.9 0.4 0.3 0.3 0.2 0.1 0.4 沿海地方 112.0 121.5 137.2 133.3 164.1 192.7 143.5 ハバロフスク地方 19.0 8.9 17.8 22.7 26.6 17.1 5.6 アムール州 98.2 214.2 233.7 361.9 272.8 337.8 130.4 ユダヤ自治州 18.9 22.4 28.4 29.7 34.2 26.0 6.3 春まき小麦(1,000t) 71.4 138.3 164.2 258.6 223.4 … … 沿海地方 26.6 33.5 39.3 44.2 45.3 … … アムール州 34.0 96.7 113.8 203.2 165.5 206.8 … 大豆(1,000t) 325.4 393.0 448.5 416.5 509.8 626.7 … 沿海地方 113.4 130.9 133.3 82.4 110.3 133.6 … ハバロフスク地方 … 11.0 11.4 10.5 9.3 11.6 … アムール州 178.4 191.9 239.7 261.5 323.8 435.6 … ユダヤ自治州 33.6 59.2 64.1 62.1 66.4 45.9 … じゃがいも(1,000t) 1,276.5 1,206.1 1,181.7 1,205.7 1,315.9 1,281.9 1,287.0 サハ共和国(ヤクーチヤ) 75.9 89.5 62.9 62.4 75.2 68.2 71.8 カムチャッカ地方 42.7 43.7 41.7 39.6 54.0 51.0 46.1 沿海地方 347.0 308.4 306.5 320.9 323.3 369.6 359.5 ハバロフスク地方 271.2 252.0 232.7 266.2 270.4 289.6 282.6 アムール州 322.0 273.7 312.0 271.5 364.8 304.7 303.9 マガダン州 13.2 12.1 9.9 12.0 15.2 15.2 15.2 サハリン州 94.0 113.9 104.5 114.1 93.9 71.6 90.7 ユダヤ自治州 110.4 112.6 111.5 118.9 119.0 112.4 117.2 チュコト自治管区 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.0 野菜(1,000t) 392.2 356.4 372.3 351.9 392.6 388.8 399.4 サハ共和国(ヤクーチヤ) 28.2 33.6 26.9 24.3 30.8 30.3 32.1 カムチャッカ地方 19.8 19.1 16.9 14.2 18.3 16.3 16.2 沿海地方 125.4 106.9 127.4 115.5 125.0 153.6 161.0 ハバロフスク地方 80.0 70.9 70.6 67.2 69.7 60.0 58.3 アムール州 61.1 51.9 55.5 56.6 67.3 59.2 58.9 マガダン州 3.9 4.1 4.2 4.3 4.5 5.0 5.0 サハリン州 41.6 36.2 40.0 39.1 41.0 33.3 33.6 ユダヤ自治州 31.8 33.6 30.7 30.5 35.9 31.1 34.3 チュコト自治管区 0.4 0.1 0.1 0.2 0.1 0.1 0.1
(注)2010年は推計値。2004~2009年は『ロシアの地域』、2010年は『2010年のロシアの社会経済情勢』。小麦は
『ロシアの農業、畜産、木材産業』、2009年のアムール州のみ州行政府提供資料。極東地域の大豆の収穫量は4連 邦構成主体の合計。ハバロフスク地方の大豆の収穫量は『ハバロフスク地方統計年鑑』(2010)。
(出所)ロシア連邦国家統計局『ロシアの地域』(2010)、同『2010年のロシアの社会経済情勢』(2011)、同『ロ シアの農業、畜産、木材産業2009』ほか。
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エネルギー輸出が牽引 2つ目は貿易の拡大である。極東税関によると、
2010年のロシア極東の
貿易高は、輸出が159億ドル、輸入が76億ドルとなり、235億ドルと前年と比べて52.5%増えた。とくに輸出は前年と比べて48.2%増となった。一方、輸入も62.2%増となった。輸出・輸入とも 過去10年で最大の伸びとなった。
貿易構造をみると、輸出の74.3%は燃料エネルギー、12.0%は魚介類が占める。右2品目に「そ の他の鉱物原料」と「食料品」を加えた2商品の輸出全体に占める割合は、2009年の85.5%から
87.8%に上昇した。燃料・エネルギーの輸出は前年と比べて59.7%増えた。
一方、輸入は機械・設備・輸送機器が輸入全体の37.9%、繊維製品が22.9%、食料品が12.0%を占 める。右3品目が輸入全体に占める割合は73.3%から72.8%に低下した。
特定産品への依存度は輸出で増加し、輸入で低下したが、依然として、特定産品に偏った構造に ある。
輸出が大きく増加した背景には、2009年2月にサハリン2プロジェクトのLNGプラントが稼動し、
LNGの輸出が増えたこと、2009年末に部分開業した東シベリア太平洋石油パイプライン(ESPO)
からの原油の本格輸出が始まったことの2つがある。
サハリン州の天然ガスの生産は前年比30%増の243億m3となり、その大半を日本や韓国などのア ジア太平洋地域に輸出する。ナホトカ郊外のESPO最終地点、コジミノ石油港からは、サハ共和国 のタラカン油田などの原油1,500万tをアジア太平洋地域に出荷した。
2011年1月1日には、中国
へのパイプラインが稼働を開始し、同じく年間1,500万tの原油輸出を始めた。今年はESPO全体 で原油3,000万tを輸出する。サハリン州とサハ共和国の燃料エネルギー輸出は全体の94.3%を占 める。ロシアは2009年1月より、不正輸出防止と国内の水産加工業振興を目的に、漁獲物をロシア国内 の港に1度寄港し、通関してから輸出するよう義務づけた。寄港先は出港した港でなくてもよい ため、マガダンなどの漁船は、サハリンやウラジオストクなど輸出先により近い港で通関するよ うになった。連邦構成主体別では、沿海地方が全体の36.8%、サハリン州が19.6%を占める。た だ、「抜け道」があるとされ、数字の信ぴょう性には疑問もつきまとう。
日本からの中古車輸入が回復した。日本の財務省の統計によると、日本からロシアに輸出された 中古車の台数は乗用車で9万4,499台、トラック・バスで1万977台に達した。ピーク時の56万台 と比べると、2割程度の水準であるが、リーマン・ショック後の経済危機と輸入関税の大幅引き 上げで10分の1以下に激減した2009年と比べると、倍増した。
繊維製品は前年と比べて114.3%と大幅な増加となった。中国からの主要輸入品の1つである繊維 製品は、国境を接する沿海地方、ハバロフスク地方、アムール州から陸路で持ち込まれている。
ロシアは2010年1月より、関税同盟の発足に伴い、個人が関税や税金を支払う必要なしに無申告
13
で持ち込める荷物の重量を35kgから50kgに変更した。これにより、下火になっていた「スーツケ ース貿易」(担ぎ屋貿易ともいう)が復活。通関統計に反映されない、こうした貿易も含めると、
数字以上に中国製品が流入している。
ここ数年の特徴は、サハリンからのエネルギー輸出が本格化したことで、収支が大幅な黒字とな っていることだ。2010年は、これにESPOの原油輸出が加わり、83億ドルの黒字となった。
日中韓で8割以上 国別にみると、中国(29.6%)がトップ、次いで日本(29.5%)、韓国(26.5%)、
米国(2.4%)の順となっている。貿易相手国の数はアジア太平洋諸国を中心に124ヵ国(CIS諸国 9ヵ国を含む)。貿易上位の常連国は中国、日本、韓国の3ヵ国であり、これら3ヵ国との貿易は 全体の86%を占める。
中国との貿易は、通関統計には含まれない「スーツケース貿易」を含めると、以前から最大の貿 易相手国とされてきた。2005年に統計上でも第1位となり、中国との貿易が急速に拡大している ことが数字の上でも証明された。貿易高は2004年の3倍の水準となった。
日本との貿易は、
ESPOからの原油輸出の開始とサハリンからのLNG輸出の増加により、輸出が大
幅に増加した。ESPO原油の出荷先で日本は全体の約30%を占め、最大の買い手となった。一方、輸入は中古車ビジネスの低迷により、
7.6億ドルと微増にとどまり、貿易黒字は54億ドルに拡大し
た。タイやフィリピンとの貿易が増えた理由も、原油・ガスの輸出が増えたためだ。14
表10 ロシア極東の対外貿易の推移と主要貿易相手国
(単位 100万ドル)
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 貿易総額 7,640.5 12,394.6 16,049.1 21,270.5 24,194.6 15,409.5 23,495.1
輸出 4,625.5 6,581.6 9,065.8 13,525.4 15,386.1 10,724.8 15,896.3
輸入 3,015.0 5,813.0 6,983.3 7,745.1 8,808.5 4,684.6 7,598.8
中国 ②2,147.1 ①3,350.3 ①4,274.9 ③4,525.1 ③5,069.0 ①4,392.1 ①6,943.9
輸出 1,491.8 2,162.9 2,573.1 1,984.2 1,892.1 2,379.4 3,033.1
輸入 655.3 1,187.4 1,701.8 2,540.9 3,176.9 2,012.7 3,910.8
日本 ①2,406.2 ②3,499.2 ②3,245.4 ①6,105.3 ①7,070.2 ③4,057.5 ②6,942.6
輸出 1,202.0 1,558.2 1,534.7 4,070.2 4,392.3 3,582.6 6,177.7
輸入 1,204.2 1,941.0 1,710.7 2,035.1 2,677.9 474.9 764,9
韓国 ③1,163.9 ③2,183.5 ③2,788.7 ②5,849.2 ②6,475.2 ②4,137.9 ③6,237.7
輸出 811.2 1,277.8 1,185.4 4,555.2 5,774.9 3,754.1 5,351.8
輸入 352.7 905.7 1,603.3 1,294.0 700.3 383.8 885.8
米国 ④393.6 ④694.6 ④727.3 ⑤853.8 ④867.4 ⑤695.7 ④567.8
輸出 185.5 206.0 300.5 352.4 198.5 41.8 32.8
輸入 208.1 488.6 426.8 501.4 668.9 653.9 534.9
スイス ... ... ... ... 133.3 112.5 ⑤519.8
輸出 ... ... ... ... 125.8 105.8 517.8
輸入 ... ... ... ... 7.5 6.8 2.0
タイ ... ... ... 63.5 208.3 78.8 ⑥248.8
輸出 ... ... ... 34.1 111.5 48.0 207.4
輸入 ... ... ... 29.4 96.8 30.8 41.4
フィリピン ... ... ... ... 76.3 183.2 ⑦207.7
輸出 ... ... ... ... 53.9 165.8 186.5
輸入 ... ... ... ... 22.4 17.3 21.2
ノルウェー ... ... ... ... 16.4 114.0 ⑧177.6 輸出 ... ... ... ... 2.0 0.5 4.3
輸入 ... ... ... ... 14.4 113.5 173.3
フランス ... ... ... ... 129.6 33.7 ⑨132.4 輸出 ... ... ... ... 0.4 0.9 0.8
輸入 ... ... ... ... 129.2 32.8 131.5
ベトナム ... ... 120.7 133.8 156.8 110.8 128.3
輸出 ... ... 90.4 88.1 95.4 74.6 87.1
輸入 ... ... 30.3 45.7 61.4 36.1 41.2
北朝鮮 ... ... ... ... 13.9 8.2 13.5
輸出 ... ... ... ... 12.2 7.7 8.7
輸入 ... ... ... ... 1.8 0.5 4.8
(注)輸出は2005年までは貴石・貴金属・同製品を含まず、2006年以降は含む。
(出所)2004~2008年は当会『ロシアNIS調査月報』(2010年9-10月号)、2009年と2010年はロシア極東税関 の通関統計。
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エネルギーをテコにアジア太平洋への進出 東シベリアの油田地帯からロシア極東の太平洋沿岸へ 石油を送るパイプラインが中間地点まで完成したことを受けて、ロシアは、太平洋沿岸までパイ プラインと鉄道で原油を運び、アジア太平洋市場に輸出するプロジェクトを2009年末にスタート させた。ナホトカ郊外に完成した積み出し施設で行われた開業式典には、プロジェクトを大統領 時代より強く推進してきたプーチン首相自らが出席し、アジア太平洋市場への本格進出を宠言し た。
当初は、原油は本当に運ばれてくるのか、ロシアは約束を守れるのかとの懸念が、日本をはじめ とする外国企業の間にあったが、ロシアはきちんと約束を果たしてきた。開業からちょうど1年 の2010年12月28日に出荷量1,500万tを達成、最終的に1,534万tまで伸ばした。
このプロジェクトは、イルクーツク州のタイシェトから沿海地方のコジミノまで全長約4,700㎞を パイプラインで結ぶもので、膨大な埋蔵量を誇る東シベリアの原油を、成長が続くアジア太平洋 地域に輸出する。今回開業したのは、このうちタイシェトから中間地点のスコヴォロヂノ(アム ール州)まで全長2,694㎞のパイプラインと積み出し施設で、パイプラインと鉄道で原油を太平洋 沿岸まで運ぶ。当面は年間1,500万tを輸出する。同時に、スコヴォロヂノから最終地点のコジミ ノまでのパイプラインの建設を進め、将来的に中国向け3,000万tを含む年間8,000万tの原油を アジア太平洋地域に輸出する。当初は2008年末の開業予定であったが、建設費の高騰や、バイカ ル湖付近のルートと最終地点の変更により、1年遅れで開業した。ロシアとって念願といえるプ ロジェクトの实現であり、成長が続くアジア・太平洋地域のエネルギー市場への本格進出を意味 する。建設費はこの第1フェーズだけで4,400億ルーブルにも及んだ。ロシアは外国からの融資や 支援に頼ることなく、自前で調達した。
日本にとっても、ロシアは重要な調達先となりつつある。日本はサハリンから原油を購入してい るが、これに東シベリアからの原油が加わったことで、ロシアからの原油輸入が急増している。
財務省の貿易統計によると、8月のロシアからの原油輸入は194万6,880klと、前年同月と比べて
149.3%の大幅な伸びとなった。
ロシアは言わずと知れた世界最大の資源大国だ。石油は生産量でサウジアラビアに次いで世界第 2位、輸出量では第1位を誇る。だが、パイプラインがバイカル湖近くのイルクーツク(アンガ ルスク)までしか通っていないため、石油の輸出はパイプライン網が整備されている欧州方面に 限られてきた。ロシアはこの欧州方面に偏る現在のパイプライン輸送網に満足していない。この 構図を今回のパイプライン開通が大きく変える。西だけでなく、東への輸出出口も確保したこと で、ロシアは供給先を多様化することができる。エネルギー消費量が増え続ける中国や東南アジ アは、ロシアにとっても魅力的なマーケットである。
もに、国別でもイランやクウェートを抜いて4位に浮上。ロシア産原油が日本の原油輸入全体に
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占める割合は2010年に6.8%に達した。通年では6位だった。東シベリア産原油の出荷先でも日本 は全体の30%(約450万t)を占め、最大の買い手となった。
日本以外では、韓国(29%)、米国(16%)、タイ(11%)、中国(8%)、シンガポール(2%)
が主な輸出先だった。
東シベリアの原油は、中東産と比べて品質が高いこと、輸送日数も数週間かかる中東と比べて2
~3日と短いことから、日本での関心は高く、2月に初出荷されると、コンスタントに数量を伸 ばした。原油の9割を中東に依存している日本にとって、東シベリアからの原油輸入は調達先の 多様化につながっている。日本に匹敵する買い手となった韓国を含め、上位3ヵ国が出荷量全体 の75%を占めた。
スコヴォロヂノ以東の太平洋沿岸へのパイプラインの建設(ESPO-2)は開業の翌月にスタートし た。昨年12月までに全長2,045㎞のうち、約半分でパイプラインの敶設を終えた。トカレフ・トラ ンスネフチ社長によると、完成時期は予定より1年ほど早まり、2013年になる可能性がある。
中国へのパイプラインは1月に予定通り開通した。中国向けが太平洋沿岸向けよりも先に完成す ると、太平洋沿岸までの通油量を確保することができないという議論があるが、ロシアはどうや ら両方の約束を果たすようだ。
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1.日ロ経済関係
(1)日ロ貿易
日ロ貿易は2003年以降拡大基調になり、ハイピッチで記録を更新してきた。しかし2008年秋の リーマンショックを境として、輸出の4分の3を担ってきた自動車の売上げが激減し、2009年は 大きく後退をせざるをえなかった(表11)。
2010年に入って経済も徐々に回復した結果、ロシアの
自動車市場も復活して自動車輸出も回復、極東からの原油・LNGの輸入が増えた。日ソ・日ロ貿 易の最高記録であった2008年には及ばないものの、2007年の数字を上回った。2010年1~9月期の輸入品構成では、原油が全体の43.3%を占めてトップ、LNGが17.3%で続
いており、対ロ輸入の6割が原油とLNGで占められるようになった。2009年末に稼動した「東シ ベリア太平洋石油パイプライン(ESPO)」輸出総量1,530万tの約30%が日本向けに引取られ、既 存のサハリンⅠならびにⅡプロジェクトの原油、さらにサハリンⅡからのLNGを加えたものが、現段階での日本の対ロ輸入の中核になっている。今後に関しては、現在亣渉中のサハリンⅢプロ ジェクト、ESPOに並行的に敶設される天然ガスパイプライン、沿海地方に予定されるLNG基地、
石油精製・石油化学・ガス化学工場等々のプロジェクトが、時代の要求に合わせて検討されてい くだろう。日本からの輸出は自動車ならびに周辺産業、重機械、鉄鋼等々の素材産業である。ロ シアの自動車市場では、政府が2010年3月導入した「新車買い替えを促す販売促進策」を、2011年 も継続する方針であり、自動車市場は今後も過熱するであろう。そのため各社の販売競争はます ます激しくなると思われる。
表11 日ロ貿易の推移
( 1,000ドル)
総 額 日本の輸出 日本の輸入 バランス
2000 5,163,619 571,358 4,592,261 ▲4,020,903 2001 4,591,897 717,501 3,874,396 ▲3,156,895 2002 4,219,154 942,498 3,276,656 ▲2,334,158 2003 5,981,899 1,763,948 4,217,951 ▲2,454,003 2004 8,804,382 3,110,610 5,693,772 ▲2,583,161 2005 10,689,790 4,485,278 6,204,512 ▲1,719,234 2006 13,723,183 7,065,490 6,657,693 407,797 2007 21,292,200 10,738,418 10,553,782 184,636 2008 29,655,685 16,374,432 13,281,253 3,093,179 2009 12,148,138 3,294,727 8,853,412 ▲5,558,685 2010(1~11月) 21,527,536 7,184,450 14,343,086 ▲7,158,636
(出所)日本の通関統計にもとづきロシアNIS貿易会で作成。
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経済のグローバル化はますます拡大して、貿易・投資を二国間統計だけでは捉えることが困難 になってきている。日本企業の投資でも、当該企業の第三国法人から資金が流れていることが多 い。ロシア政府は産業構造の近代化のための優先的発展分野として、エネルギー効率、原子力、
宇宙通信、医療、
ITを挙げているが、上記分野への日本企業の進出はこれからという段階である。
2010年の日ロ貿易は、輸出入合計で240億7,013万ドルとなり、前年比98.1%増となった。経済
危機で大幅な縮小を余儀なくされた前年から一転して、ほぼ2倍増を記録したことになり、伸び 率という点では過去最高となった。とくに、危機からの回復効果で、輸出の拡大が目覚ましく、前年比143.0%増の80億602万ドルとなった。一方、輸入の伸びも81.4%増と大きく、
160億6,411万
ドルに達した。収支は80億5,809万ドルの日本側の入超であり、この入超幅も過去最高となってい る。日本側の輸出商品構成を示したのが、表12である。周知のように、近年、日本の対ロ輸出に占 める自動車の比率が高まり、中古車や商用車も含めれば、一時は全体の4分の3を占めるに至っ ていた。2009年に輸出が(ひいては日ロ貿易全体が)急激に縮小したのは、まさにこの最重要品 目が不振に陥ったからであった。当然、2010年に対ロシア輸出が拡大したのも、自動車輸出の回 復に負うところが大きい。その回復の過程を月別の数字で跡付けたのが、表5である。
一方、輸入商品構成は、表13のとおりである。2010年の輸入拡大は、ひとえに石油・ガスの賜 物だと言っていいだろう。原油は、サハリン産原油の輸入がすっかり定着しているのはもちろん のこと、2010年になって太平洋パイプライン経由の東シベリア原油がこれに加わり、量的拡大に つながった。また、2009年4月に入荷が始まったサハリンの液化天然ガス(LNG)も、2010年に は輸入量が倍増した。そして、原油・LNGとも、2010年には輸入単価が上昇している。両者合わ せて、2010年には輸入全体の6割強を占めており、対ロ輸入の中核的な商品として完全に定着し た。なお、その他の主要商品では、魚介類、木材、石炭などはほぼ前年並みか微増にとどまった が、鉄鋼の輸入が急回復し、また非鉄金属は単価の上昇で金額が伸びた。
(2)日ロ経済関係の現段階
2000年代に入って、乗用車をはじめとするロシアの消費市場が盛り上がり、日系企業がそれをタ
ーゲットにロシアに工場を開設するという流れがあったわけだが、昨今ではそれらが続々と稼働 を果たしている。一方、ロシア極東においては、石油・ガスを輸出するインフラが相次いで完 成し、日本への輸出も本格化している。2010年11月にメドヴェージェフ大統領が北方領土 を訪問したことで、日ロの政治関係が冷却化する場面こそあったものの、経済関係は総じ て順調であり、過去数年の取り組みが結实した状態にある。この一つの到達点から、日ロ経済関係をさらに高いステージに引き上げるためには、ロシアとい
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表12 日本の対ロシア輸出商品構成
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表13 日本の対ロシア輸入商品構成
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う国が直面している課題に、日本としても積極的に向き合うことが求められるのではないか。具 体的には、製造業の育成、極東および東シベリアの開発、イノベーション経済への転換といった ロシアの戦略的な課題に沿った形で、日ロ経済関係を推進していくことが避けて通れないであろ う。その意味では、別稿で論じられている自動車産業における日ロ間の新たな協業の動きなどは、
实に意義深い。もっとも、肝心のロシア側の情勢が、2012年大統領選挙を控えて流動化する様相 もあり、大きなプロジェクトを仕掛けるにはそのあたりの情勢の見極めが肝心になってくる。他 方、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日ロ経済関係にも大きな影を落としている。短 期的な観点から言えば、2011年の日ロ貿易のパフォーマンスも、その影響を色濃く受けることが 予想される。日本の電力不足を火力発電で緊急に補うために、ロシアからのLNGをはじめとする エネルギー輸入が拡大されようとしており、また復興需要で大量の資材等が必要とされることか らも、対ロ輸入は引き続き拡大する可能性がある。気がかりなのは輸出であり、震災を受けて日 本にある自動車関連の工場の多くが一時的に操業ストップしており、どのくらい影響が続くのか 不透明な情勢である。
表14 ロシア向け投資の主要国別実績
(2009年の投資額が多い順に掲載)
ロシア向け投資の主要国別実績
(2009年の投資額が多い順に掲載)
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 受入総額 10,958 14,258 19,780 29,699 40,509 53,651 55,109 120,941 103,769 81,927 1.ルクセンブルク 203 146 1,258 2,166 8,431 13,841 5,908 11,516 7,073 11,723 2.オランダ 1,231 1,249 1,168 1,743 5,107 8,898 6,595 18,751 14,542 11,640
3.中国 … … … … … … … … … 9,757
4.キプロス 1,448 2,331 2,327 4,203 5,473 5,115 9,851 20,654 19,857 8,286 5.ドイツ 1,468 1,237 4,001 4,305 1,733 3,010 5,002 5,055 10,715 7,366
6.英国 599 1,553 2,271 4,620 6,988 8,588 7,022 26,328 14,940 6,421
7.日本 117 408 441 1,005 153 165 695 484 864 3,020
8.フランス 743 1,201 1,184 3,712 2,332 1,428 3,039 6,696 6,157 2,491 9.英領バージン諸島 137 604 1,307 1,452 805 1,211 2,054 2,140 3,529 1,792
10.ベラルーシ 1 1 47 420 292 447 624 956 193 1,542
(出所)ロシア連邦国家統計局。
(100万ドル)
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1.ロシアの地方構成
ロシアは共和国、地方、州、自治管区、自治州の5種類の連邦構成体で構成する連邦国家であ る。
2011年3月現在、 21の「共和国」 ( республика
、respublika)
、9の「地方」(край、kray)、
46の「州」
(область、oblast)、2の「市」(город、gorod、モスクワ市とサンクトペテルブルグ市の2市で、ロシアには他にも多数の市があるが、それらとは区別されて日本で言えば特別市に相当 する)があり、1つの「自治州」(автономная область、
avtonomnaya oblast、極東のハバロフスク
の西にあるユダヤ自治州)、4つの「自治管区」(автономный округ
、avtonomny okrug) がある。憲法上は、これらの地位に差別はなく対等である。しかし、实体としては、共和国に大きな権限 が与えられる場合があり、また、経済力、人口などにより、有力な地方もある。共和国、地方、
州、自治管区、自治州の呼称の違いであるが、共和国、自治管区、自治州は特定の民族名を冠す る地域がほとんどであり、民族的特性を重視した地域である。しかし、必ずしも、その名前を冠 した民族が多数派となっているわけではなくロシア人が多数はを占める地域が非常に多い。自治 管区は、チュコト自治管区以外について、連邦構成主体でありながら、行政機構として州となっ ている。地方、州は、大きな差はないといってよいが、地方は州よりも多民族性が強く、民族名 のある地区が域内にある場合が多いが、すべてがそうであるわけではない
連邦構成体は、ロシア連邦を脱退する権利を有する国家に準じた組織体であり、いわゆる地方 自治の概念は、それより以下のレベルである町、地区、村に適用される概念である。しかしなが ら、プーチン氏が2000年に大統領になってから後、住民の直接選挙による連邦構成体の首長選挙 は廃止されたために、連邦構成体は単なる一地方に成り下がったといえるだろう。プーチン大統 領の時代には、89あった連邦構成体は、弱小の自治管区を中心に大きな連邦構成体に統合する動 きが進み、2011年3月現在、83 まで減尐した。また、これらの連邦構成体は、プーチン大統領の 時代、2000年に7つの連邦管区に地域割りがなされ、それぞれの連邦管区に大統領全権代表がお かれるようになった。とはいえ、この連邦管区は、憲法上に明記された組織ではなく、また、大 統領全権代表と構成主体の首長との権限が不明確で、連邦管区は機能しているとは言い難い。
7つの連邦管区は、2010年1月に南連邦管区から北カフカス連邦管区が分離され、8つの連邦 管区となって中央、北西、沿ボルガ、ウラル、南、北カフカス、シベリア、極東となっている。
以下、各連邦管区の概要について記する。
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2.ロシアの各連邦管区概要
(1)中央連邦管区―政治、経済、文化の中心とモスクワ一極集中
中央連邦管区首都モスクワがあり、ロシアの政治、経済、社会、文化あらゆる分野の中心であ る。モスクワ市および周辺を囲むモスクワ州を含めると、1,709万人とロシアの人口の12%を占め る。モスクワ市だけでも1,000万人を上回り、ヨーロッパ最大の都市である。GRP(地域総生産、
GDPに相当する地域指標)比でみてもモスクワ市のみでロシア全体の22%を占める。
モスクワは、所得もロシアで群を抜いて高く、世界の高物価都市として有名となっている。し かし、一方で中央連邦管区は、モスクワ市以外に、100万都市がなく、人口、経済でも見务りがす る地域が多い。1人あたりのGRP(地域総生産、
GDPに相当する地域指標)では、モスクワ市とモ
スクワ州は平均を上回るが、それ以外は下回る。所得でも、ロシア平均を下回るところが多い。中央連邦管区は 原子力、航空宇宙、ハイテク系の企業、研究所あるいは一部重工業、機械産業 はあるが、首都モスクワの周辺の産業の厚みは乏しい。
2000年に入り、日本企業を含め、モスクワ周辺に工場建設を行う外資企業は多くなっているが、
その理由は、巨大な消費地に近いのみならず所得が低く、賃金コストが安いからである。
モスクワ周辺の賃金の安さは、急速に変化し、ロシアの経済成長とともに、大消費地モスクワ 周辺に外資を含め、自動車、家電等の工場建設が進み、賃金は急上昇中である。とくに、モスク ワの南西にあるカルーガ州は、フォルクスワーゲンを皮切りにボルボ(トラック)、三菱、サムス ン(家電)、等の外資が進出し、サンクトペテルブルグとともに、ロシアのデトロイトを目指して いる。日本のコマツもモスクワ東方のヤロスラブリ州に進出した。なお、この管区には、モスク ワ州に技術導入型の特別経済区、リペツク州は製鉄の街であるが、製造業型の特別経済区がおか れ、横浜ゴムが進出している。
中央連邦管区は、ロシア固有の要素の非常に強い地域である。他の連邦管区と異なり、民族名 を冠した地方行政府がない地域である。一方で、首都モスクワは世界都市であらゆる地域から人 が流入し、国際色豊かで、様々な点で「ロシアではない」とも言われ、ロシア固有の海に世界都 市があるといったところであろう。
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中央連邦管区の概要
○連邦管区の中心:モスクワ市
○人口:3,712万人(ロシア全体の26%、うちモスクワ市、1,051万人、モスクワ州、671万人、
2009年初現在)
○面積:65万km2(ロシア全体の4%)
○GRP比:36%(うちモスクワ市、22%、モスクワ州、5%、2009年)
○1人当たりGRP(地域総生産、
GDPに相当する地域指標)の全国平均に対する%:136%(モ
スクワ市、300%)①モスクワ市 ②ベルゴロド州 ③ブリャンスク州 ④ウラジーミル州 ⑤ヴォロネジ州 ⑥コスト ロマ州 ⑦カルーガ州 ⑧イワノボ州 ⑨クルスク州 ⑩リペツク州 ⑪モスクワ州 ⑫オリョール州
⑬リャザン州 ⑭スモレンスク州 ⑮タンボフ州 ⑯トベリ州 ⑰トゥーラ州 ⑱ヤロスラブリ州