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学びの内容は職業と 結びついていますか 図表2 2003 年 OECD 生徒の学習到達度調査 PISA より 数学的リテラシー 科学 的リテラシーに関するグラフ ら 社会への移行準 備は学 校 生活の中 で常に意識されてい ます しかし普通科 高校では 学びと職 業の関係が見えにく いため 先生にと

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44 Kawaijuku Guideline 2011.9 「中学校のキャリア教育の手引き」(文部科学省)P29 より

 

将来の職業が見えにくい普通科だからこそ

 意識的、体系的なキャリア教育を

――初めに小学校、中学校、高校各段階でのキャリア教育 の目標について教えてください。  <図表1>にあるように、小学校は「進路の探索・選択に かかる基盤形成の時期」です。自己や他者、自分を取り巻く 環境に対する関心の拡大、意欲の向上、夢や憧れ、働くこと の大切さ、自己肯定感、人の役に立つことや集団の中で認め られることの喜びを知ること 等が目標です。  中学校は、「現実的探索と暫 定的選択の時期」です。代表 的な取り組みとしては、職場 体験があります。中学校の職 場体験では、必ずしも将来就 きたい仕事に関する職場では なくてもよく、視野を広げるた めに生徒が現在は関心を抱いていない職場を体験させること も大切です。ここから、顧客のニーズに即して一生懸命に頑 張るのはどの職種でも同じであることや、多くの事業所には 経理や広報など共通した役割分担があることを学びます。  こうした体験を通して、肯定的な自己理解、つまり「自分 にもできることがある」と気づき、興味・関心に基づいて、 自分の将来の方向性について暫定的に選択していきます。中 学校段階で重要なことは、夢想やあこがれではなく現実的な 探索をしていく点です。  高校では、現実的な探索を一歩深めて、「現実的探索・試 行と社会的移行準備」を行います。自分にできることを見定 め、職業選択の基準となる職業観や勤労観を確立し、将来設 計を具体化していくこと等が求められます。高校の場合はイ ンターンシップも、「自分が就くかもしれない」「就きたい」 という仕事を経験することが大切です。 ――普通科高校でのキャリア教育の課題は何でしょうか。  農業や工業、商業など職業に関する専門学科の高校ですと、  シリーズの第3回は高校でのキャリア教育を取り上げ る。幼児期から大学までの各学校段階の教育活動全体を 通じたキャリア教育が求められているが、高校では、大 学受験を前に、どのようなキャリア教育をすべきか戸惑っ ている先生方が多いのではないだろうか。  そこで、国立教育政策研究所生徒指導研究センター総 括研究官の藤田晃之先生に、高校、特に普通科高校にお けるキャリア教育の意義と、まず何から始めたらよいか について伺った。そして、高校でのキャリア教育の取り 組みとして、東京都の進学指導特別推進校に指定されて いる東京都立小山台高等学校の取り組みを紹介する。

 シリーズ「キャリア教育」

概説

 普通科高校で求められているキャリア教育とは

藤田晃之総括研究員

第 3 回

高校での

キャリア教育

<図表1>キャリア教育の全体図キャリア教育の全体図 継続教育・ 高等教育段階 中等教育段階 初等教育段階 就学前教育段階 現実的探索・試行と 社会的移行準備 高等学校におけるキャリア教育の目標 ○自己理解の深化と自己受容 ○選択基準としての職業観・勤労観の確立 ○将来設計の立案と社会的移行の準備 ○進路の現実吟味と試行的参加 現実的探索と 暫定的選択 中学校におけるキャリア教育の目標 ○肯定的自己理解と自己有用感の獲得 ○興味・関心等に基づく職業観・勤労観の形成 ○進路計画の立案と暫定的選択 ○生き方や進路に関する現実的探索 進路の探索・選択に かかる基盤形成 小学校におけるキャリア教育の目標 ○自己及び他者への積極的関心の形成・発展 ○身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の向上 ○夢や希望、憧れる自己のイメージの獲得 ○勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の形成

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学びの内容は職業と 結びついていますか ら、社会への移行準 備は学校生活の中 で常に意識されてい ます。しかし普通科 高校では、学びと職 業の関係が見えにく いため、先生にとっ ても生 徒にとって も、移行準備の先送 りが可能です。とは いえ3年後には、就職にしろ、進学にしろ、社会に向けて一 歩を踏み出すことに変わりはありません。よって普通科では、 より意識的かつ体系的にキャリア教育を行う必要がありま す。  インターンシップにしても、職業に関する学科では「課題 研究」などの科目の中で、現場での実習を行います。そこで 働く大人と接し、将来自分が働くことについて現実的な吟味 をすることができます。  しかし、普通科でインターンシップを実施している高校は 少数です。2009 年度調査では、公立中学校の 94.5%の生徒 がインターンシップを経験し、23.7% は4日以上経験してい ます。一方、公立の普通科高校の生徒は 16.7%しかインター ンシップを経験せず、4日以上経験する生徒は 1.9%にすぎ ません(注 1)。さらに、大学では今年4月からキャリアガイダ ンス(注2)が義務化され、職業観の確立やインターンシップに 取り組んでいますが、現時点では、多くの大学で、本来高校 で行うべきキャリア教育の段階から始めている状況と言える でしょう。内容的にも、高校生でも十分可能な社会体験、職 業体験にとどまっているケースが少なくありませんが、本来 はもっと専門を生かしたものであるべきだと思います。

 

教員が教科に対する思いや

 社会人の先輩としての思いを語ることからスタート

  ――では、普通科高校では、何から始めればいいのでしょうか。  まずは、高校での学びの意義を伝えることです。<図表 2>は、2003 年の PISA の数学的リテラシーと科学的リテラ シーに関するグラフです。日本の高校生は国際的に見て高い 得点を上げていますが、数学や理科に対する自信指標、興味 指標、数学や理科の学習と自らの将来との関係把握指標はと ても低くなっています。「何のために勉強しているのかわから ない」「面白くない」「興味もない」という生徒たちの声が示 される結果から、大学受験後、すぐに剥落する「知」を無理 に詰め込んでいる現状が読み取れます。高校の先生方は担当 教科を知的興奮に満ちた大切な存在であると思っているの に、その気持ちが生徒に届いていないわけですから、残念な ことです。  ですから、まずは、年に 1 回、授業の中の5分、10 分でも いいので「なぜ自分がその教科を担当しているのか、その教 科のどこが好きで、どこが社会にとって重要だと思うのか」 を話してみてはいかがでしょうか。本質的な学びの楽しさや 意味を伝えないまま、 「入試に出るぞ」と勉強を促すだけで は、剥落していく知を生徒に強要していることになりかねま せん。例えば、「自分は将来英語を使う仕事には就かないか もしれないけれど、先生の気持ちや、英語が大切だというこ とはわかった」と思ってくれたら大成功です。その上で「大 切だから入試にも出るんだよ。今は面白さまでは実感できな いかもしれないけど、がんばろう」と伝えてみてはどうでしょ う。  そもそも私たちの生活は、先人たちが積み上げてきた知の 基盤の上に成り立っています。高校で自分たちの生活を支え てくれている知の一部を学んでいるということが実感できれ ば、生徒は「将来、自分はどの分野で新たな知を重ねていこ うか」と考えることができます。  また、高校の先生方は、生徒にとって働いて生活をする社 会人の先輩でもあります。そこで先生には、生徒に生活者と しての日々の思い、時には悩みなども話していただきたいと 思います。それは職業観の一部であり、時折話をすることに より、生徒が働くこと、生活することについて考えるきっか けとなります。特に結婚や子どもの誕生などを迎える先生の 話は、思春期の生徒にとって興味を持って考えやすい話題で はないでしょうか。 (注1)国立教育政策研究所生徒指導研究センター 「平成21年度職場体験・インターンシップ実施状況等調査結果より」 <図表2> 2003 年「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)」より、数学的リテラシー、科学       的リテラシーに関するグラフ 「キャリア教育は生徒に何ができるのだろう?」(国立教育政策研究所)より

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46 Kawaijuku Guideline 2011.9

 組織的には、現在の行事をキャリア教育の観点から

 見直すところからスタート

――高校という組織全体としては、何から取り組めばよい でしょうか。  現在すでに、9割程度の高校で実施されている社会人講 話の有効活用でしょう。とりわけ、講演者に、高校でこれま でどんなキャリア教育を行ってきたか、生徒に足りない気づ きはどこかなどの情報を伝え、キャリア教育の一環としての 社会人講話の目的やねらいの設定意図までを共有していただ くことが重要です。  一方生徒たちには、講師の生い立ちや業績の中から、生徒 の興味・関心を惹きそうなポイントを伝え、なぜその方を講 師として招くのかという教師側の思いを明示していただきた いと思います。そのような事前指導があってこそ、生徒たち に「話の受け皿」が形成されるのです。また、目的やねらい が明確であれば、講話をもとにした発展的な事後指導も可能 となるでしょう。  また、高校生活の中には、体育祭や文化祭などの準備や運 営を通して基礎的・汎用的能力、例えば「人間関係形成・社 会形成能力」や「課題対応能力」が育つなど、キャリア教育 の要素がたくさんあります。ここで重要なことは、生徒自身 がそれらの活動を通して将来の社会的・職業的自立に必要と される力が身に付いたことを自覚できるようにすることです。 例えば、「文化祭で君たちは意見対立を乗り越えたけれど、 この力は社会に出てからも必要だよ」と話して生徒に意識化 させる、などです。さらに、これを先の社会人講話とリンク させて、講師に学校行事で生徒たちが乗り越えたエピソード を伝え、社会や職場でもそのようなことが起こっていること に言及していただくようお願いすることも考えられます。  このように、高校での日常生活や、すでに行っている行事 を見直すことでできるキャリア教育はたくさんあります。

 学習意欲の喚起にも有意義なインターンシップ

――次のステップとしては、何を行うべきでしょうか。  やはり、インターンシップの導入だと思います。インター ンシップは、確かに手間はかかりますが、学習意欲を喚起す る意味でも、やるだけの価値はあります。  例えば、静岡県立韮山高校では、1年生の希望者に対しイ ンターンシップを行ったところ、同校で「最難関大学」とし ている東京大、京都大、国公立大医学部の現役合格者のうち、 インターンシップ経験者の占める割合が相対的に高いという 結果が得られました。インターンシップ実施以前の段階では、 参加を希望した生徒とそうでない生徒の間に成績の有意な差 が見られなかったことも明らかになっています。  また、秋田県立能代高校では、数年前まで、補習や添削、 小論文指導といった受験対策を行う一方で、明確な目的意識 を持たずに進学する生徒が多くなったという課題を抱えてい ました。そこで、2年生全員を対象としたインターンシップ をはじめとするキャリア教育を実施したところ、難関大学に 合格する生徒が増加しました。  この2つの事例は、社会と接点を持って、こういう大人に なりたいと思った生徒は、学習意欲が高まることを示唆して いると言えるのではないでしょうか。 ――インターンシップ導入に当たって注意点はありますか。  社会人講話など他の取り組みにも通じることですが、イン ターンシップをより効果的にするために、事前学習や事後学 習を行うことです。常にねらいを確認しながら取り組みの内 容を検証するとよいでしょう。  事後学習については、体験後の発表会での生徒の相互評 価をしている学校は多いようですが、評価ポイントとして声 の大きさ、パワーポイントの資料のわかりやすさなど、プレ ゼンテーションの巧拙だけに焦点を当てているケースも見ら れます。事後指導のねらいは、職場での経験を共有して理解 を深めることにありますから、評価項目には、ねらいに沿っ た体験ができたかどうかを問う項目を入れるべきでしょう。 インターンシップに限らず、常にねらいを確認しながら、事 前指導から事後指導に至る系統性・体系性を考えたいもので す。

 仕事や学問の内容だけでなく

 大人の生き様や価値観に触れるのがキャリア教育

――大学進学者の多い高校の場合、大学の研究室訪問など もキャリア教育に有意義ですか?  数時間、研究室を見学したり、実験を体験したりするだけ でなく、数日大学に通って、教授陣や研究者・大学院生の暮 らしや研究に対する思いを知ることができるとさらに効果的 だと思います。というのも、1日だと表面的な会話しかでき ないことが多いのですが、3日目になれば、冗談も交わせる ようになり、本当に知りたいことを質問できるようになります。 大学院生が研究に取り組む後ろ姿も、数時間見るのと、2・ 3日見るのとでは、高校生に伝わる熱意の度合いが全く違う はずです。  その学問や仕事の表層的な内容を知るだけにとどまらず、 その人がどういう思いで研究や仕事をしているか、社会に とってなぜ有意義だと思っているかといった、熱意や生き様、 価値観に触れることも、キャリア教育にとって大切なのです。 「キャリア教育」第 3 回 高校でのキャリア教育 *今年 11 月には、高校版『キャリア教育の手引き』が発行される予定。

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 東京都立小山台高校は、東京府立第八中学校を前身と する、都立有数の伝統校である。2007 年には東京都の進 学指導特別推進校に指定され、国公立大学、難関私立大 学合格に向けた学力育成に取り組んでいる。同時に「文 武両道」を掲げ、活発な学校行事や班活動(部活動)、国 際交流を推進している。そんな同校ではどのようなキャ リア教育が行われ、進学実績向上との両立が図られてい るのか。同校のキャリア教育の理念と具体的内容につい て、進路指導部主幹の山本美園先生と、同校進路アドバ イザーの川上崇穂氏に伺った。

 「社会人によるキャリアガイダンス」は

 学問と職業と社会のつながり、さまざまな価値観、

 生き方を伝える機会

 小山台高校のキャリア教育の目標は「未来設計力を育 成する進路指導」である。この、「未来設計力」という言 葉と「進路指導」が一体となっているところに、同校の 生徒育成の考え方が端的に表れている。  山本先生は「キャリア教育はいわゆる職業教育ではな く、生徒が、将来自立した一人の大人として生きていく ための土台を築く人間づくりです。日々の授業、学校行事、 委員会活動、班活動(部活動)など、高校での活動すべ てがキャリア教育なのです。その中で進路部では、『主体 的進路選択能力と高度な学力をつける』ことを目的とし た進路指導をしています」と語る。  では、同校の主な取り組みについて、順番に見ていこ う<図表>。  まず1学年の目標は「自分と社会のつながりから『未 来の自分探し』をスタートする」である。そのきっかけ をつくる行事として、「社会人によるキャリアガイダンス」 や、「留学生が先生」「国際協力を考える」という講演会 を実施している。  「社会人によるキャリアガイダンス」では、7月に5人 の講師を招聘し、生徒はそのうち1人を選んで聴講する。 講演では、講師の生き方、職業や進路に対する考え方、 社会と仕事とのつながりなどを話してもらう。自動車開 発の技術者で ある川上氏も 講師の 1 人だ が「私の場合、 通常の講演会 であれば、自 分の仕事の内 容や、やりが いなどを話すと思います。しかし、本校の講演はそれが 狙いではありません。特許や海外で生産する場合の資材 調達の問題などモノづくり全体に通じる話をしたり、同 じ研究開発職でも、学士課程卒、修士課程卒、博士課程 卒それぞれが携わる仕事の違いを伝えたり、ゼムクリッ プや折り紙を例に車体の強度に関する基本原理を話して、 身近な原理が先端技術につながることを説明したりして います」と言う。  ほかに、電気機器メーカーの元社長が商品開発の発想 法や失敗の大切さを語ったり、携帯電話のアプリケーショ ン開発者が、子どものころから電子機器に夢中で、興味 を突き詰めていった結果、現在の仕事につながったとい う経験や、好奇心を持つことの大切さを語るという。そ の後、「社会人によるキャリアガイダンス」では、10 月か ら2月の土曜日の午前中に、1回に3名が講演する形式 で計4回開催。生徒は4回のうち1名以上聴講し、1年 間で2名以上の講演を聴く。講演後、生徒は必ず感想を 書き、講師はそれを読んで、さらに答えを生徒に返して くれる。  また、同校にはイギリスやドイツへの海外派遣制度が あるため、国際交流に関心がある生徒が多い。そこで、「留 学生が先生」「国際協力を考える」という取り組みも行っ ている。「留学生が先生」は、日本の大学院で学んでいる 開発途上国からの留学生7人を招いて、学問にかける思 いや母国での夢を語ってもらうもの。母国の期待を担っ て勉強しているので、日本の学生とは真剣さが全く違い、 生徒は大いに刺激されるという。

東京都立小山台高等学校

キャリア教育の事例

生徒の「未来設計力」を育成するキャリア教育

高い志を持って、自分にチャレンジするためのプログラムを実施

生徒が自らの可能性を見つけるための多彩な進路行事と、きめ細やかな学習支援体制

進路アドバイザー 川上崇穂氏 進路指導部主幹 山本美園先生

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48 Kawaijuku Guideline 2011.9 「キャリア教育」第 2 回 大学のキャリア教育 を聞いた後で、10 の国公立大学の協力 で同校のために開催される「大学見学 会」に出かける。例えば東京大学は法 学部系、一橋大学は社会科学系、東京 工業大学は理工学部というコース設定 で、生徒は1つを選び見学する。見学 会では、大学側の説明やキャンパス見 学、大学生への質疑応答などがある。 同校の卒業生が見学会の企画立案に参 加している大学もあるそうだ。  生徒はこの見学会の後の夏休みに、 個人で他の大学のオープンキャンパ スに参加し、レポートを書いて提出 する。「一度大学を見るともっと見た くなるようで、生徒はオープンキャ ンパスに積極的に参加するようにな ります。東京大学に行って、頑張っ て受験勉強をするだけの価値がある 大学だと感じたり、案内する東大生 が身近に感じられたりすることで、 自分も東大に挑戦してみようと考え る生徒もいます」(山本先生)  さらに、10 月初頭には「卒業生に よる進路懇談会」を開催。「本校では学部系統別に 15 会 場を設け、各分野の卒業生 2 〜 3 名を呼んで実施してい ます。生徒は進みたい分野の会場で1時間目は卒業生の 話、2時間目には個別相談となります。卒業生には事前 に B5 用紙1枚に、学部・学科選択の理由、履修している 授業、学園生活、学部卒業後の進路、アドバイスを書い てもらい、それを生徒たちに配布しています」(山本先生)  この後、3学年の選択科目の説明会を開催。11 月には 担任との個人面談によって、志望校を絞っていく。  そして、2学期の期末試験後には、「学問の面白さ体験 講座」を実施。これは、大学や研究所の研究者による模 擬授業であり、「『平家物語』に描かれている、歌人平忠 度の生と死について」「行政ってなんだろう:図書館の『管 理』を考える」「火星探査計画」など、8つのテーマで行 われ、生徒はこのうち1つを選び、授業に参加する。  「この講座は、大学で学ぶ学問の面白さに触れ、学問へ の憧れを持つことが目的です。さらに、自分たちが、今、 学んでいる物理や化学が環境問題を解決する基礎になっ ていることや、社会科学や人文科学を学ぶことが現代の  「国際協力を考える」は2部構成で、1部が、国際機関、 NGO、海外青年協力隊の OB・OG など、国際協力を仕事 にしている社会人の講演会である。2部では、早稲田大 の学生が中心に運営する国際協力 NGO の「風の会」で活 躍する学生 15 名から、組織の活動内容と学生生活につい て話をしてもらう。「在校中にキャリアガイダンス講師で ある『風の会』会長の話を聴き、世界平和に貢献する仕 事を志して早稲田大学に進学し、『風の会』のメンバーと して活躍し、さらに国際公務員を目指して勉学に励む卒 業生もいます」(山本先生)  1学年では、このような取り組みや 「 総合的な学習の 時間 」 の活用、学年集会などでの指導を通して、大まか な将来の方向性を決めていく。

 

自分の目指す職業・夢につながる学部・学科を研究し

 「学問する」魅力を知った上で第一志望校を決定

 2学年での目標は「目標を定めて進路を見通す」。自分 の目指す職業・夢(目標)につながる学部・学科を研究 した上で、第一志望を決めて3学年での選択科目を選ぶ。  そのために、1学期の期末試験後、「 系統別進路講演会 」 <図表>小山台高校 3年間のキャリア教育プログラム 「文学―『平家物語』に書かれている 歌人平忠度の生と死について」  文学は物語の面白さだけではなく、 人間の深い一面を見せてくれるもので あると改めて実感しました。また文学 における価値観は国によって異なるこ とも学びました。海外の文学では異教 徒を殺害するのは理にかなっていると 考え、命をあまり重く見ない傾向があ るのに対して、日本では命を重く見な し、たとえ敵でも名前を名乗ったあと に殺す道理が存在するというのは、そ の国の歴史や環境、思想の違いによる ものだと思いました。そのために戦争 が起きるということも実感しました。 2011 年度小山台高校パンフレットに生徒の感想を追加

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社会を理解する基礎になることも、生徒は学びとってい るようです」(山本先生)。<図表>の生徒の感想を見ると、 山本先生をはじめとする同校の教員や、講師の思いと狙 いがしっかりと生徒に届いている様子がうかがえる。  2学年3学期には、総合的な学習の時間5回を使って、 探求型学習の「社会を知り、考えるシリーズ」を行う予 定である。現代社会の問題について、環境問題であれば、 環境負荷の低い製品開発や生態系の維持など、多様なア プローチがあることを教員が示した上で、生徒は具体的 なテーマを決めて調べ、その結果をグループ内で発表す る。「このころには、志望する学部・学科がほぼ決まって いますので、関連するテーマを選ぶ生徒が多いようです。 ここで生徒は、自分で調べて何かがわかるという、学問 の入り口を体験します」(川上氏)  多くの社会人や卒業生の協力で進路行事を実施してい る同校だが、有意義な取り組みとする秘訣を「必ず事前 に入念な打ち合わせをすること」「生徒の生の声を講師に 伝えること」「進路行事の目的を学年集会で事前に伝える こと」と山本先生は言う。「『社会人によるキャリアガイ ダンス』では事前にスライドの内容を見せてもらい要望 を伝えています。  また、社会人や研究者は、毎年ほぼ同じ講師に依頼し ているのも特徴である。「良いお話をしてくださるので変 える必要がなく、講師自身がその年の生徒の傾向に合わ せて内容を変えたり、前年度よりもっとよい話になるよ う、内容を更新できる」というのがその理由だ。そのた めにも事前の打ち合わせは毎年欠かさない。

 「受験は団体戦」を合い言葉に

 生徒が自発的に協力しあう雰囲気を作り

 最後まで全員で戦う!!

 3学年でのキャリア教育の目標は「考える力を強化し、 第一志望実現!」である。  同校では、センター試験1年前である2学年の冬休み を本格的な受験勉強に取り組む時期と位置づけて、生徒 への働きかけを始める。まず、2学年の冬休み初めに2 泊3日の「冬期勉強合宿」を行う。昨年度は、2年生約 280 名中 100 名弱が参加した。「受験生になるための2泊 3日」という位置づけである。講習もあるが、それ以外 の時間はひたすら自習する。黙々と机に向かう同級生の 姿を見て刺激を受け、自主的に勉強する習慣が自然に身 につく。合宿に参加した生徒が、2年3学期(3年0学期) から本格的に受験勉強をスタートさせるため、各クラス 東京都立小山台高等学校 ◇所在地:東京都品川区小山 3—3—22  ◇沿革:1923 年 東京府立第八中学校として創立     1950 年 東京都立小山台高校と改称 ◇学級編成:全日制 1年7クラス、2 年8クラス、3年7クラス ◇生徒数:884 名(男子 451名、女子 433 名)2011年 7 月1日現在 ◇特色:社会で活躍する「ひと」づくりを目標に、「合唱コンクール」 「水泳大会」「寒菊祭」と呼ばれる運動会・文化祭、「マラソン大会」 などの多彩な学校行事、加入率は延べで 100%を超えるという活 発な班活動(部活動)、ドイツやイギリスなどへの海外派遣制度な どの国際交流を行っている。2007 年には、東京都から「進学指導 特別推進校」の指定を受けている。 ◇卒業生の進路:2011年3月卒業生 275 名 ・進学先:4年制大学 209名、短大1名、専門学校2名 ・合格の内訳(延べ数):国公立大学62名 私立大学725名 短期大学5名 各種・専門学校2名 の核になり、学年全体の受験ムードを盛り上げていく。  また、2学年の冬休みの課題として全員に「第一志望 宣言書」を書かせるが、なぜその大学のその学部に行き たいかを自分で書いてみることで、自己分析ができて非 常に有効だと、山本先生は実感している。  3学期には「難関大プロジェクト」(英語・数学)と名 づけた放課後の勉強会も開始。また、長期休業中や放課 後に学校で行われる講習に参加した生徒たちが、同じ志 望校を目指す仲間を見つけ、 「東工大グループ」や「チー ム早稲田」などが自然発生的に生まれている。  3学年になると、受験本番まで学校中心の生活を送る ように指導を徹底している。長期休業中や放課後の講習 もかなりの講座数に上る。また、大学センター試験を「高 校卒業試験」と位置づけてほぼ全員が受験している。2 学期は総合的な学習の時間を「協同学習の時間」として 利用している。科目別に7クラスを編成し、同じ科目を 勉強する生徒たちが、1つの教室で自習しながら、わか らない問題を教え合う。  以上のような取り組みの結果として、国公立大学合格 者数は、2008 年の 40 名から 2010 年には 62 名に増加。早 慶上智理(*)合格者は 77 名から 103 名に増加した。  成果について山本先生は「生徒が自分の可能性に気づ き、視野を広げて、具体的な夢や目標を持つことで本気 で勉強するようになった結果が、進学実績の向上に結び ついているのだと思います。大学は長い人生の通過点で す。その先をどう生きたいかが見えれば、おのずと自分 の進む道、進路が見えてくるはずです」と語る。 (*)「理」は東京理科大学

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