北陸地域 と対岸諸国 との経済交流 の実態 と課題
柳 井 雅 也
1 は じめ に
本稿 は新潟県,富山県,石川県,福井県 ( 以後,県は省略)の北陸地域 と, 対岸地域 ( 中国,韓国, ロシア) との経済交流の特徴 と課題 について検討 した
ものである。
この地域の経済交流については,金田
(1997)の二段階発展諭 という考え方 がある
1。 この考えは, 日本 の技術 と資本,韓国の中型技術 と資本, 中国の良 質な労働力, ロシアと北朝鮮の天然資源を合わせれば,大 きな経済発展が うま れるという通説的な理解を批判 して出てきた考え方である
。金 田は, このよう な 「 垂直分業的相互補完関係」 は第一段階にすぎないという。その上で,ある 程度 まで経済水準が上昇 した ら, よ り付加価値の高い産業を志向するようにな り,やがて 「 水平分業的相互補完関係」が形成 されるとした。 しか し, この考 え方 に対 して本多
(1998)は,国際的技術環境の変化,閉鎖的な社会主義,国 内市場競争の排除 という条件が, ロシア極東,中国東北部,北朝鮮 に残存 して いたことが経済発展地域の形成 にとって足かせにな っているとしている
2。また坂田
(2001)は北東アジアの特殊性を①宗主国と殖民地 という関係にあっ たこと,②構成主体 に国家 と国家の一部が混在 していること,③朝鮮半島の分 断に基づ く不安定性,④経済格差 と 「 軍需な どの生産知識体系」,⑤多様な経 済 システム,⑥文化の多様性,を指摘 して, これ らが経済交流圏の形成を阻害
しているとしている
3。1990
年代後半か ら
2002年 にかけて図イ 門江地域開発計画の挫折,朝鮮半島の緊 張,中国経済の沿海部 とりわけ上海地域の発展 ( 東北地域か ら見た経済発展の
‑99(507)‑
南方‑の重心移動), 日本経済の長期不況 な ど北東 ア ジアを取 り巻 ぐ情勢 は厳 しくな っている。 このように北東 アジア地域 における経済交流 は 「 環 日本海経 済圏」 の形成の困難 さとあいまって厳 しい環境下 にある。 この点 について, 中 藤
(1999)は地方 と地方の交流 を進 めて 「 友好 ・交流」 の段階か ら 「 協力 ・支 援」へ発展 させ る必要性を述べている
4。日本側の対象地域 は北陸地域であるが, この地域の研究 は今 まで, 3 つの側 面か らな されて きた。 1 つ は,企業行動 に関す る研究である。 それは主 に北陸 地域の経営理念,企業経営実態 ( ベ ンチ ャー企業な ど),企業 内 コ ミュニケー シ ョン手段な どの点か ら行われている
。その中では企業の安定志 向が強 いこと な どが指摘 されている
5。 2つ 目は,北陸地域の産業構造を扱 った研究である
6。ここでは構造不況業種型産業構造な どが指摘 されている。
3つ 目は,海外への 進出事例の研究,国内外工場の経営比較な どである
7。これら一連の研究から,北陸地域が構造不況型に特化 し,経済不況 とあいまっ て,変化を遂げられないでいる実態が明 らかになっている。それでも,海外進 出研 究の中には成功事例 もあり,今後の対岸交流を考える上でも参考になることが多い。
ここでは, これ らの研究成果を踏 まえなが ら,①北陸地域の産業構造 の特徴 を把握 し,②貿易 と企業の海外進 出の動向を把握 し,③ ア ンケー ト調査 を通 じ て実態の把握を行 ってい く
。そ して これ らの分析 を通 じて,北陸地域 の経済交 流の特徴 と課題 を明 らかに していきたいと考え る。
2
北陸地域 の特徴
( 1 ) 北陸経済圏の経済地理的枠組み
日本経済の地域構造か らみると,北陸地域 は,太平洋ベル ト地帯や大都市圏 には含 まれない地域 に属す る
8。東西 日本 の中央部 とはいえ,起伏 に富んだ幾 重 に も連なる山脈 に阻まれ, 日本海側 に位置す る北陸地域 は,経済発展の軸 に 乗 ることがほとん どなか った。
このため,産業 としては, 日本の食糧供給基地 と日本 のエネルギー供給基地
‑100(508)‑
とい う性格が与え られてきた。 また,伝統工芸をは じめ,個性 ある在来工業が 発展 してきた地域で もあ った。 た とえば福井 の眼鏡枠,織物,石川の漆器,陶 磁器,富 山の銅器,医薬品,新潟のニ ッ ト,金属洋食器な どである
。これ らの 中には個性的な企業が多数輩 出 している
。また,産業地域の集積 は市町 レベル の広が りに制限 され,相互 に関連 のない多数の孤立的な産業都市が 日本海 に沿 うように分布 している。 また,都市規模 も新潟を筆頭 に,金沢,富 山,福井な ど
30‑50万人規模 の都市が連 な り, 中枢管理機能 も分散配置 されているのが特 徴である。 た とえば,国土交通省 は新潟,北陸電力や経済産業省北陸支局が富 I 山な どにある。 この ことが, どの県 も北陸地域の求心力 を発揮できない一因 と な ってきた。
また,関越 自動車道 と上越新幹線 の開通 は,新潟の首都圏エ リアへの包摂を 進 め,福井 において も,例 えば地域整備公団の分譲では,関西 に拠点を持つ企 業 の進 出が多 くみ られ る
9。 このよ うに北陸地域 はけ して, 自立 的な経済圏を 形成 している地域 とはいえない。
( 2 ) 北陸経済の特徴
北陸全体の人 口は約
560万人
(2000年)で, これは兵庫
(550万人) とほぼ同 レベルの人 口規模 である。地域 の総生産額
(1998年) は
21兆
762億 円 ( 兵庫)
20兆
494億 円) で, 日本全体 の
4.4%である
。また,人 口
1人 当た り県民所得 で
は,石川
300万 円 ( 全 国
15位) をは じめ
3大都市 圏に次 いで所得 が高 いのが特 徴である
。県 内総生産 ( 名 目 :
1998年) を もとに した産業構成では,北陸地域 は第
3次産業 に対す る第
2次産業 の割合 が
1.9倍 ( 全国比
2.1倍) で,他地域 に 比べて第
2次産業 ( 特 に製造業) の地位が高 くな っている。
その内訳 は, まず第
2次産業 で は,新潟が
3259億 円 ( 全 国
16位) で,富 山
1806億 円
(25位),石
川1473億 円
(30位),福井
1043億 円
(39位)の順 とな って いる。第
3次産業 も,新潟 は
6360億 円
(13位) で,石川
3165億 円
(28位),富 山
2656億 円
(36位),福井
2277億 円
(40位) の順 にな っている
。このように北
‑101(509)‑
陸地域 の中では新潟 の地位が高 い ことがわか る
。( 3) 北陸地域 にお ける主な製造業の特徴
北陸地域は製造業の地位が高いことを指摘 したが, これをより詳細にみるために, 主要産業について付加価値額 と特化係数 (‑北陸のⅩ産業の地域 内産業 における 付加価値額 シェア/ 同様 に全国のシェア×1
00)を示 したのが表1である。
これによると,電気機械 ( 以下,電機),一般機械,化学,金属,繊維,衣 服 ・その他紙経 の順で付加価値額が大 きい。 また,特化係数では,繊維 の特化 皮
(454)が, 北 陸で は最 も高 く, 次 いで, 金属
(186), 衣服 ・その他繊維
(184)とな っている
。ここでは規模別 に上位
3位を大規模産業 として, また特 化係数で上位
3位 を全国 レベル とみなす と,大規模であるが地方 レベルの産業 ( 電機,一般機械,化学) と,小規模 で も全国 レベル ( 繊維,金属,衣服 ・そ の他) に分かれ る。 この ことか ら,北陸の産業 は比較的,市場規模が小 さい産 業で全国 レベルの シェアを獲得 していることがわか る。
県別 の付加価値額 の シェアでは,電機 は新潟が42.
4%を,一般機械では新潟 (38.2%)と石 川
(32.9%)で計71
.9%を 占め, 金属 は富 山 (47.0%)と新潟
(37.8%)で計84.8%を 占めている。繊維 は福井県が41.4%を 占めている。また
表
1北陸地域の付加価値額 と特化係数
(1998年)単位 :百万 円
その 他
1969389 426015 238923 224061 177031 36783 66756 204558 131268 279218 269068 30771 21022 154524 205778 52293 82821 95188 17754 180775 48920 37911 80653 115059 37318 1969554
1469377 929821 815105
799985 533472 321463 314469
18.3 10.5 6
.
1 10. 4
1.2全 国比
全国内の構成比 特化係数
( 出所) 『工業統計表
』よ り作成。
‑ 102(510
)‑
衣服 ・その他繊維 は新潟 が
46.7%を 占めている。 この ことか ら,繊維以外 で は 新潟 の シェアが大 き く一般機械 は石川,金属 は富 山 とな ってい る。
3
北陸地域 と対岸諸国 との経済交流の実態 ( 1) 北陸地域 と対岸地域 との貿易
1999
年 の北 陸地域 と対岸地域 との貿易 は,輸 出が
890億
81百万 円で,輸入 が
1870
億
94百万 円 とな って お り,
980億
13百万 円の入超 とな って い る。輸 出 につ いて は,全 国の対岸輸 出 (
5兆
3183億
53百万 円) の
1.7%に過 ぎな い。 また, 北海道 か ら佐賀 までの 日本海側
1道
13県 の輸 出
(7591億
19百万 円) の
11.7%と な って い る
。また, 日本海最大 の輸 出県 で あ る福 岡
(2867億
151百万 円) との 比較 で は
31.1%とな って い る
。輸 入 につ いて は,全 国の対岸輸入 (
7兆
1282億
14百万 円) の
2.6%にす ぎな い。 また 日本海側 で は,輸入
(1兆
595億
73百万 円) の
17.7%とな って い る。 ま た, 日本海最大 の輸入県 であ る福 岡
(3772億
22百万 円) の
49.6%とな っている。
総 じて,輸 出入 とも国内全体 で はわずか しかな く, 日本海側 のなかで は輸 出 約
1割,輸入
2割弱 の地位 を 占め る レベルで ある。
国別 の輸 出につ いて は,韓 国 との取 引が最 も多 く,全体 の
59.8%を 占めて い る。 また, ロ シアへ はわず か
18億
38百万 円
(3カ国輸 出の
2.1%)しか輸 出 し てない。県別で は新潟 と富 山が韓 国への輸 出が多 く,両県 あわせて
75.1%にな っ て い る
。ところが,輸入 で は中国
(47.ラ%), ロシア
(29.4.%),韓 国
(22.8%)の順 とな る。特 に ロシア とは 日本全体 の輸入 の
12.9%を 占めて い る。 これ は富 山が木材, アル ミニ ウム, 同合金 な どを ロシアか ら輸入 してい るためで あ る1 0 。
( 2 ) 北 陸地域 の対岸諸 国進 出の統計 的実態
表 2 は北 陸地 域 の対岸 地域 へ の進 出状 況 を示 した もので あ る
。世 界 全体 で
580
件 の うち,対岸諸 国へ は
234件
(40.3%)を 占めて い る。 その うち中国 ( 香 港 を含 まな い) は
194件 と対岸地域 の
83.0%にな って い る
。次 いで韓 国
34件,
‑103(511
)‑
ロシア
6件 とな っている
。県別対岸進 出件数では,新潟
102件,石川
54件,宿 井
44件,富 山
34件 とな っている
。この うち, 中国への進 出件数では新潟が
85件 と多 い。韓 国, ロシア もわずかであるが新潟が 4県で一番多 くな っている
。産 業別では,機械が
51件,繊維
46件, その他製造業が
37件 とな っている
。このよ うに,対岸諸 国へ の進 出で は,新潟 を中心 と した中国へ の進 出が大 きな割合
(43.6%)を 占 め て い る こ とが わ か る。 ち な み に
2位 は石 川 の 中 国
47件
(20.1%)とな っている
。表
2北陸企業の対岸諸国への進出状況
(1999年)
世界 対岸諸 国 中国 韓国 ロシア
北陸
580 234 194 34 6新潟
127 102 86 14 3富 山
179 34 22 10 2石川
134 54 47 6 1福井
140 44 40 4 0( 出所) 『 北陸の対韓 国投資動 向 』
JETRO金沢資料
2000年より
。一部改変。
(3)
北陸地域の対岸諸国への進 出実態
2001
年
9月 に海外進出企業
182社 を対象 に対岸諸国への進 出についてア ンケー ト調査 を行 った ( 回収率
18.7%)。 しか し, 中国の
33件以外 (うち複数事業所 立地 もあるので,韓国 1 件 を含 む) ではロシアの 1 件 にとどま り,韓 国の詳細
● ■ なデータは得 られなか った。
韓 国 につ いて は,
JETRO金沢の レポー トと資料 ( 『北陸の対韓国投資動 向』
2000
年) を参考 に,韓 国へ進 出 している企業
24社 について紹介 と分析 を行 うこ ととす る。 まず韓国に進 出 している企業 の出身県別では,新潟が 5件,富 山 9 件,石川
6件,福井
4件 (
2件 は同一事業所) とな っている
。進 出形態 は新潟 の
1件が業務提携 によって化学の リサイクルプラン トをつ くり,富山の
3件が 事務所 を配置 している
。ここでは,鋳鉄 の販売,旅行会社,医薬品の委託販売 を行 っている
。残 りは,合弁 とな っている
oこの合弁形式 に該 当す る企業 は,
‑ 104(512)‑
製造や販売などを行 っている。同 レポー トの整理によれば,業種は,繊維,機 械,化学が多 く, この
3業種で全体の
77%を占めている。県別では新潟の化学 ( 構成比5
0%),富山の機械 ( 構成比1
0%),化学,鉄鋼,金属製品 ( それぞれ1
0%),石川は機械,福井は繊維の件数が多 くなっている。
さらに,新潟を除 く
3県の
JETROよ り得た資料か ら,わかる範囲でその進 出内容を示せば,まず富山では,旅行会社 ( 従業員
5人)が富山方面への旅行 を企画,医薬品関係では情報収集 と製造委託先 との交渉に利用 している。 この ほか
JETRO金沢の レポー トには掲載 されていない企業では,韓国でファスナー 製造販売
(393人),船舶用機器販売
(3人),固定抵抗器の製造販売
(122人) などを行 っている。同様 に石川は食品機械の製造販売,電子制御装置の製造販 売,チ ップ ・コンベアの販売,垂直搬送 システム販売や情報収集などの進出が 見 られる。福井はクリーニ ング機器販売,精密機械の営業 と市場調査,カーテ ン縫製, 自動車内装の企画販売,絹 レース製造販売,界面活性剤などの製造加 工販売などを行 っている。
総 じて製品の製造販売が多 く,韓国を一市場 とみな して進出す る傾向にある といえる。 ちなみに
JETRO金沢の レポー トでは,韓国か ら北陸に進 出 してい る企業は1
990年代を通 じて2
000年現在 0件であるとの報告 も行 っている。
中国については,3
3件がアンケー ト調査か ら得 られた ( 表3
‑1
,3‑2)。 これ によると,中国の都市への進出では上海の
5件が最高 とな っている。次いで大 連の
4件である。
県別では新潟の
8件の進出のうち,大連の
2件以外は上海など各 1件 となっ ている。表中整理番号1( 以下,事業所を示す数字 は整理番号)はニ ット関係,
2 は部品関係など労働集約部門が海外に進 出 している。 そのため進 出理 由も賃 金高騰 に対応するためと回答 している。一万
, 7のソフ トウェア関係は中国を 市場 とみな して進出 している。利用する空港,港湾は横浜港が
3件ある。富山 は上海 に
2件進出 している
。16は世界
58カ国に工場展開 してお り, ファスナー などの生産 を行 っている。9‑1
2,1
4,15はいずれ も労働集約部門である。 これ
‑ 105(513)‑
らの海外展 開の理 由は人件費 と,顧客 の海外 シフ トに対応す る随伴立地 タイプ である。地元 の港湾や空港以外 では関西空港,大阪洛,神戸港,成 田空港 な ど の利用 が見 られ る。石川 は, 中国 における進 出で,複数企業 による同一都市へ の進 出は見 られない。織維 ・衣服関係 が比較 的多 く
4件 の立地 がみ られ る
。こ こも労働集約部 門が中心 で,賃金高騰 を理 由 とす るものが多 い。地元以外 の空 港 と港湾利用 は,大 阪洛, 名古屋港,新潟港, 名古屋空港 な どで あ る 。 福井
(7件) も石川 の よ うに中国国内に分散 して いる。進 出理 由 も同様 に労働集約 部 門が 中心 で, 随伴立地 も
3件
(30‑32)あ る。 利用空港,港湾 は地元以外 で は関西空港,名古屋港 な どであ る。
全般 に,海外への進 出は
1990年前後 か ら始 ま り,進 出時期 にかか わ らず人件 費節約型 が多か った。
1995年前後か らは,現地市場 を 目指す ケースや,親企業 との随伴立地 もみ られ るよ うにな った。輸送方法 につ いては,地元 の空港 や港 湾が,仮 に時間や コス ト的 に,神戸,横浜 よ り有利 であ って も,貨物船 の運行 頻度 や対岸諸 国 に行 けるルー トの制約 な どがネ ックとな ってい るのが現状 であ
る。 また,空港 は貨物便 の運行 の有無 が課題 とな っている。
̀、ヽ
ー106(514)‑
表 3 ‑ 1
進 出国,都市名 従業員数 生産 品 目
新潟
1中国 .上海
160ニ ッ ト製 品
2
中国
850連絡事務所 プラスチック部品,弱電部品
3
中国 .香港
94
中国 .大連
95
中国. 北京 1
6
中国 .太原
0な し
7
中国 .大連
5ソフ トウ エア
8
ロシア .ハバ ロフス ク
8サー ビス業
富 山
9中国 .紹興
300ベ ア リング レース加工
10
中国 .大連
62黄金鍛造切 削部 品
ll
中国 .錦秋
270靴下
12
中国 .南海
193プラスチ ック用金型
13
中国 .上海
16電子工業生産設備販売
14
中国 .夫津市
50電子部 品生産
15
中国 .上海
8電子部品抵抗器,
HⅠC 16中国. 上海,大連,香港,韓国
37000フ ァスナー .建材製 品
石川
17中国 .江蘇省,張家港
100鍔易
18
中国 .上海
29繊維機械部 品
19
中国 .香港,探せん
70イ ンク リボ ン, ベル ト
20
中国 .大連
53建設機械外装 品
21
中国 .深せん
150 OA機器用 ロー ラー
22
中国 .漸江
300婦人服
23
中国 .アモイ
50貸金庫
24
中国 .大連
30衣料付属 品製造
25
中国
220雨衣
26
中国 .安徽省
27農産物
27
中国 .蘇州
15生花,造 園
福井
28中国 .昆 山
480眼鏡フレーム .サングラス
29
中国 .上海
18地球物理探査関連
30
中国 .南通
80高圧配管用継手
31
中国 .蘇州
35輸 出用産業機械 の梱包
32
中国 .江蘇省武進
300経編機械及 びその部 品
33
中国 .香港
30ち りめん
資料 :聞取 り調査より作成。
‑107(515)‑
表 3 ‑ 2
海外進出理由 使用す る港. 空港名
新潟
23415 1現地市場の開拓,情報の収集 中国との輸出入業務のため事務所が必要
986年台湾進出,賃金高騰のため中国へシフト( 低賃金) 新潟空港,新潟東港 横浜 新潟,横浜,大阪,名古屋
6ユーザーが中国国内である 新潟,横浜
7
中国市場への魅力 新潟
8
対 ロシア経済進出を推進
富山
9銅 で コ
スけウ
ンが限界
,中 国 労 務費安 い,
紹輿 と
福光町が 友 好
都市
で あ る神戸
1 0 複数の顧客の生産拠点が海外へ シフ ト 大阪,富山新港
ll
国内コストアップ,人件費有利な海外に進出 富山,関空,成田,伏木 富山空港,関空
12顧客の海外 シフ トに対応するため
13
グローバル化, 日本の空洞化,
14国内人件費では採算取れず
15
コスト競争力の強化 海外マーケット対応 ( 中国)
16地域とともに繁栄が基本方針,産業開発地域に進出
石川
17良質原料が中国にあるか ら 日本各地の港
18顧客の薦めと中国市場への期待 大阪,金沢 金沢,伏木
19豊富な労働力 と低賃金
20
人件費の高騰 と空洞化, コス ト削減
21
国内ユーザーの海外進出に伴う現地への部品供給のため 名古屋,新潟,金沢 金沢 名古屋空港
22国内では
100%では生 き残れない
23
人 件
費が低 く, ロ ー
コスト で
生産 し ないと , ロ
ー柚製 品に 抵
抗できな い
24
円高によ り輸出競争力低下
25
日本の人件費高,円高による低価格に対応
26
27
労働賃金の安 さ
福井
◆
28コス ト減 による価格競争力を高める 関空,名古屋
29当分野研究推進のため , 中国地鉱部上海局をパバ ナーとし て合作 関空
30
取引先の海外進 出とコス トダウン
31日系企業からの依頼と,立地条件が蘇州工業地区であったため
注 :地名のみの表記は港湾を示す。
‑108(516)‑
4 おわ りに
日本経済か らみた北陸地域 は,第
2次産業 ( 特 に製造業) の割合が高 く,主 要産業の うち繊維,金属,衣服 ・その他で特化係数が高 いな ど,市場規模が小 さい部門で全国 シェアが高 いことがわか った。 その上で,貿易構造 は輸 出入 と も
1‑ 2%に過 ぎず, 日本海側で も
10%代 の シェアを占めるに過 ぎない。 日本 海最大を誇 る福岡との比較で も,輸 出で
3割,輸入で
5割弱 にすぎない。 しか し, 輸 出については,北陸で生産 されたモノが成 田空港や神戸港 に運 ばれて輸 出さ れる場合 もあるので,必ず しも輸 出規模が小 さいと結論付 けることはできない。
また国別の輸 出では,韓国 との取引がほぼ
6割 とな っている
。特 に,新潟 と富 山か ら韓国への輸出が多 く,両県 あわせて
75.1%にな っている
。輸入 は,中国, ロシア,韓国の順 にな ってお り,特 にロシアは 日本全体の
12.9%を占めている
。これは富 山が木材, アル ミニ ウム, 同合金な どを ロシアか ら輸入 しているため である
。また,海外進 出 している事業所の生産品 目は加工組立型労働集約製品が多 く, ハイテク製品で も周辺部品が多いな ど,北陸の産業構造 を反映 した品 目構成 と な っている。韓国への進 出理 由は市場を 目的 とした ものが多 く, 中国は労働力 確保か ら,現地市場を 目的 とす る企業や親企業 との随伴立地 も増加 してきてい ることがわか った。製品や部品のや り取 りで利用す る国内の空港や港湾 につい ては,関東,関西,名古屋 を利用す ることが多 い。 これは北陸地域の港湾 と空 港の問題 と絡んでいるのではないか と考え られ る
。つま り,航空 はフライ トの 方面のみな らず,運行頻度の問題,貨物便の有無などの問題があるか らである
。航路 につ いて も例 えば,韓 国航路 が富 山新港一新潟一秋 田一釜 山一富 山新港 ( 週
1便) とい う具合 に寄港 しなが ら巡 回す るので,
JIT輸送 に うま く対応 で きないために,特 に加工組立型産業 に不 向きにな っているといえる。
北陸地域 の経済規模が小 さいこともさることなが ら,各県の産業構造が大 き く異なることか ら,貿易や海外直接投資 において も業種 に違 いが見 られた。 ま た同地域 は構造不況型産業構造であるため,沿岸諸国 ( 特 に中国) と競争関係
‑ 109(517)‑
に入 りやす い。特 に眼鏡枠 のよ うな地場産業 の場合, 中国に進 出 して委託加工 された ものを 日本 で販売すれば,国内企業 と競争 が激化す るとい う,新 たな産 地 内競争 が生 まれ る構造 とな って い る ( 関係者 聞取 りよ り)。 さ らに,上述 の 交通 イ ンフラの問題が重 な って,北陸地域 で優位 な貿易構造 が築 けない結果 に な って しま ったのである
。このよ うに考 え ると,金 田の二段 階発展論 とい う考 え方 には国家対国家 の地 域発展戦略 とい う視点があ って も,北陸のよ うな地域 にはまだい くつかの克服 すべ き媒介項が残 されてい るのではないだ ろうか。つ ま り北陸が経済交流 を発 展 させてい くには,地域 の産業構造や交通イ ンフラ,それに経済交流のボ リュー ムな どの点 で, まだ課題 を抱 えているとい うことであ る。 そ して これを,変 え てい くためには,魅力的な新産業 の創 出 と産業再配置, それ に交通 イ ンフラの 拠点化 を行 って,対岸諸 国 との ビジネスチ ャンスを拡大 してい くことである。
その上で,北陸地域 の水平的国際分業の構築 を図 ってい く必要がある
。それが, 北陸地域 の対岸諸 国 との経済交流 の今後 の課題 とな る
。本研究は平成1 3 ‑ 1 5 年度に科学研究費補助金 ( 萌芽的研究,課題番号1 3 8 7 8 01 2 ,研究代 表者 柳井雅 也) の交付 を受 けて実施 した 「環 日本海 経済 圏 時代 にお ける国 際 的地域 連 携の研究」による報告である。
注 ・参考文献
1
金 田一郎 『 環 日本海経済圏
』NHKブックス
1997.2
本多健吉 『 北東アジアの未来像
21世紀の環 日本海』福井県立大学北東 アジア研究会
1998.3
坂 田幹夫 『 北東 アジア経済論一経済交流圏の全体像‑ 』 ミネル ヴァ書房
2001.4
中藤康俊 『 環 日本海経済論』大明堂
1999.この他,小川和男,菱木勤治 『 入門 環 日本海 経済圏 とロシア極東開発』 ジェ トロ
1994も日本 と対岸交流を考える際の参考 になる。
5
この点に関す る文献 は,まず北陸地域の企業 ・産業 に関す る研究 としては,伊東格 「 北陸 製造業のマクロ ・ダイナ ミズム
」『 北陸の企業行動
‑1996年 日本海経済 白書
‑』( 富 山大学 日 本海経済研究所
1996pp1
‑24)が,北陸
3県 ( 富山 ・石川 ・福井)の製造業 について, そ の地域的産業構成の差異 とベ ンチ ャー企業の動向に焦点を当てて分析 を行 っている。 その中
‑ 110(518)‑
で当地域は
1992年以降急激に事業所数が減少 していることと,成長業種 も主力 にな り待てな い事実が分析 されている。 またベ ンチ ャー企業の活動 も地域的分布の差異が認め られるが, 総 じて国内販売網拡大,営業力強化が共通の経営課題 となっていることが明 らかにされてい る。水谷内徹也 「 北陸企業の経営理念 と社会感応意識 」
(『北陸の企業行動
11996年 日本海 経済白書 ‑』富山大学 日本海経済研究所
1996 pp119‑162)では, 北陸企業の経営理念 と社 会的感応性 ( 戦略志向的 ・管理志向的な概念) について実態分析 している。それによると経 営者の出身は 「 創業者の直系親族」が多 く,経営スタイル としては安定志向が強いことが指 摘 されている。 この うち回答企業の
8割は経営理念を保有 し「 社会( 地域) への貢献」が最 も多 い。 この点か らも中堅 ・中小企業が地域社会の期待を ビル トインして貢献を果たすべきであ ることなどが提言 されている。
6
北陸地域の産業構造やその変化を扱 った もの としては,松井隆幸 「 産業構造変化 と地域経 済への影響
」『 地域経済の比較分析( 北陸 と東北)
‑1997年 日本海経済白書
‑』( 富山大学 日本 海経済研究所
1997 ppト19)では,富山 ・高岡 ・山形 ・酒田について産業構造の変化が与 えるイ ンパ ク ト比較を分析 した ものである。それによると高岡市は地方第
2位都市 として素 材型業種に特化 したために富山市 と人 口格差が開いたことや,いまだ電気機械産業の展開が 遅れるなど産業構造の転換 に失敗 している事実が指摘 されている。 また富山 ・山形両県 とも 東アジア諸国への 日本企業による工場進出によって再編過程にあることが指摘 されている。
松井隆幸 「サー ビス経済化 と北陸の諸都市
‑1980年代の産業構造変化を中心に して
‑」( 『 研 究年報』富山大学 日本海経済研究所
1994 pp1‑18)では,石油危機以降の産業構造変化が 北陸
3県諸都市 にどのような影響を与えたかを,北陸の産業構造の特色に留意 しつつ分析 し たものである。県庁所在地は人 口およびサー ビス業の集積が一番進んでお り,通勤圏で もこ の傾向を裏付けることができる。 また福井の電気機械産業が富山 ・石川で拡大 していること や,産業 ごとの雇用変化では高岡市で素材産業への依存体質など地域的差異が分析 されてい る。柳井雅也
「IT革命の現状 と課題
」(中藤編 『国際化 と地域』大明堂
2001 )が,北陸 地域の
IT化の進展について,産業構造の特徴を踏 まえて分析 している。柳井雅也 「 統一性 の復元で発展戦略一北陸圏
」(『 季刊 河川 レビュー』新公論
杜 2002 pp12‑18)では,北 陸地域の発展戦略 として,沿岸交流を考えることなどが指摘 されている。
7
北陸の企業の国際化過程を扱 った もの としては, 田中祥子 「 転換期 における北陸企業の海 外直接投資一北陸
3県立地企業 ア ンケー ト調査か ら
‑」 『北陸の企業行動
‑1996年 日本海経 済 白書
‑』 ( 富 山大学 日本海経済研究所
1996 pp25‑51 . ) では
,1995年 における,北陛地 域の企業の海外進出について,その現状 と傾向について分析を行 っている。 その特徴は海外 進出企業が中堅 ・中小企業にまで及んでいることや,国際化戦略が本社の中 ・長期計画 に組 み込まれていること。労務面では日本的経営が導入 されているが,従業員の定着性 に問題の ある地域では年功序列はほとんど実施 されていないなど,北陸企業の海外直接投資は日本的 経営を現地 にあわせて進出 している段階にあるとしている。岩内秀憲 「 富山県企業による海 外事業展開の具体的事例 」
(『北陸の企業行動
‑1996年 日本海経済白書 ‑』富山大学 日本海 経済研究所
1996 pp69‑80)では
,ASEAN諸国に立地展開す る富山県企業 についてその実 態を分析 した ものであるO例えばS 杜は建設関連企業で, クアラル ンプールでローカル ・ス タ ッフの雇用安定を重視 している経営姿勢 と,他の製造業 との比較で分析 している。 また化 学関連企業 N 杜の事例では日本国内とタイ事業所で生産 シフ トが行われ,円高回避などをきっ かけにそれが確立 したことな どや,今後の事業展開について分析 されている。 田中祥子 「 北 陸企業のグローバル経営 (
3)
」(『 研究年報』富山大学 日本海経済研究所
1997 ppト1 0) では,福井県のマ シニ ングセ ンタの製造 ・販売を行 う
A社 と,富山県の情報通信関連産業
G‑
1 11
(519)‑
社 の
2社 につ いて企業分析 を行 った もので あ る 。
A社 は高速切 削器 を もとに世界 でオ ン リー ワ ンを 目指 した企業 で,顧客 の要求 の先取 りによ って ス ピー ドの経済 が発揮 されて い ること が分析 されてい る。 G 社 は部 品製造会社 か ら転換 した ものでマ レー シアに海外進 出後 は国内 企業体質 の強化が図 られている。馬駿 「日本企業 の職能資格制度の中国における適用可能性 一 北 陸大手製造企業
A社 に関す る事例研究 を通 して ‑
」(『平成
10年度 富 山県委託調査研 究報 告書』 富 山大苧環 日本海経済研 究 セ ンター
1999.3 pp57‑78)で は, 職能 資格 制度 を企業 内部 における従業員 の技能形成 のために どの よ うな役割 を果 た してい るか に焦点 をお き,北 陸大手製造業 につ いて調査 した もので あ る
。その結 果,3つ の工場 ともブル ー カラー とホ ワ イ トカラー に区分 されて い ることと,人事考課 と昇格昇進 の仕組 みな どが同 じであ ること。
給与体系 には若干 の相違 が見 られ ること。 そ して
A社 の 日本工場 と中国の工場 には従業員 の 採用政策 な どの点 で相違点 も見 られ ることが分析 されてい る
。田中祥子 「 北 陸企業 の グ ロー バ ル経営
(5)」『富大経済論集』 ( 富 山大学経済学部
1999.7 pp129‑139)で は, 富 山県 のG 社( 情報通信等) につ いて海外事業戦 略が分析 されて い る
。それ は経 営戦 略の一環 と して国 内 事業 のパ イ プを維持 し, なおかつ太 くす るための コス トとい う位置付 けで海外事業 が展 開 さ れて い ることであ る
。その結果, マ レー シア とイギ リスに進 出 したが, イギ リスにつ いて は 日本 の組織 間関係 の文化 を移植 した。 この ほか英語取得 な ど企業経営 の国際化 の課題 につ い て も分析 を行 っている
。この ほか, 国際化 に関す る行政 の支援策 につ いて検討 した松井 隆幸
「 北 陸企業 の グローバル化 に対 す る行政等 の支援策 につ いて
」(『北 陸の企業行動
‑1996年 日 本海経済 白書 1 1富 山大学 日本海経済研 究所
1996 pp53‑67)で は, 北 陸企業 の グ ローバ ル化 に対す る行政 ・経済 団体 の取組 み につ いて他地域 と比較分析 を行 ってい る。各県 の取組 みを具体 的 に分析 す る中で,北 陸地域 の特徴 と して情報収集 ・提供, イベ ン ト,人材育成支 援 に偏 る傾 向があ り,一方 で直接 的支援 や学術交流,技術 ・制度支援 が少 ない ことが指摘 さ れてい る。 その上 で情報収集 ・提供 システムの相互利用 につ いてネ ッ トワー ク化 と海外事務 所 の共 同化等 を提言 してい る
。8
「 戦後 か ら高度経済成長期 までの地域構造 の形成 は, アメ リカ市場 によ り近 い太平洋側 の 地域 を 中心 に形成 が行 われた。 つ ま り
4大工業地帯 の形成 と, これ に加 えて,首都 圏か ら九 州 までの太平洋 ベル ト地帯 の形成 がそ うだ った。 と りわ け東京,大 阪, 名古屋 の
3大都市 圏 は工業集積 のみな らず,行政 ・サー ビス機能 も集 中 し, それ 自身 が市場 を形成 して, 自立 的 な広域経済 圏を形成 してい った。 しか し,東京一極集 中が顕著 にな り出 した
1980年代 に入 る と,東京 の一人勝 ちが鮮 明 にな って 「 人, モ ノ, カネ,情報」 が東京 に集 中す るよ うにな っ たo つ ま り,東京 を中心 と した,地方 の管理体制 が進 ん だのであ る
。この結果,大 阪や名古 屋 の相対 的地盤沈下 と札 幌,仙台,広 島,福 岡の地方 中枢都市 が成長 を遂 げ, いわゆ る支店 経済化 が進 んだ。
1990年代 は,長期不況 の もと, ア ジア経済が成長 を始 めた時期 であ る。韓 国や台湾が経済力 をつ け, タイやマ レー シアで も経済成長 が始 ま った。 さ らに, 中国が珠江 デル タや長江 デル タでパ ソコ ンや携帯 電話 な どを生産 して, 「世界 の工場
」とな るだ けでな く, 自 らも巨大市場 を有す るよ うにな って くる と, それ 自身 の集積効果 を発揮 して経済発展 を遂 げ るよ うにな って きたので あ る 。 」 ( 柳井雅也 「統一性 の復元 で発展戦 略 一北 陸 圏 」 『季 刊 河川 レビュー』新公論社
2002 pp12‑18)9
例 え ば若狭 中核工業 団地( 遠敷郡上 中町) は7社 の立地企業 の うち,
4社 が関西 であ る
。10
富 山
298万 円 (同
16位),新潟
294万 円 (同
19位),福井
290万 円 (同
21位) であ る。
11
例 えば, 木材, アル ミニ ウム, 同合金 の合計 は
2001年現在 で
155億 円 とな ってい る
(2001年現在,伏木税 関支所調 べ)。
‑ 112(520)‑