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Academic year: 2021

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曲げ荷重を受けるCFRP板材への鋼球衝突損傷

著者 川尻 剛大

出版者 法政大学大学院理工学・工学研究科

雑誌名 法政大学大学院紀要. 理工学・工学研究科編

巻 57

ページ 1‑8

発行年 2016‑03‑24

URL http://doi.org/10.15002/00012942

(2)

法政大学大学院理工学・工学研究科紀要 Vol.57(2016年3月) 法政大学

曲げ荷重を受ける CFRP 板材 への鋼球衝突損傷

STEEL BALL IMPACTING DAMAGE TO CFRP LAMINATES SUBJECTED TO BENDING LOAD

川尻剛大 Takehiro KAWJIRI 指導教員 崎野清憲

法政大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程

Carbon Fiber Reinforced Plastics (CFRP) is one of composite materials. CFRP is superior in the specific strength and rigidity, which is useful in the fields required to reduce the weight of products. However, CFRP have the problem causing delamination between layers by the impact. Invisible delaminates may cause a great accident. In this study, a relationship between impact energy and delamination area of CFRP laminates was investigated. The impact tests that detect the effect of bending load and high temperatures on the layer delamination area of CFRP laminate are made using an air-gun system and incubator. Scanning Acoustic Microscopy (SAM) is utilized for detecting the delamination area of CFRP laminates. The residual strength of the specimen being damaged is also examined by using three point bending device. In convex transformation, the strength decrease was suppressed by delamination area is reduce at 7/8 layers. In concave transformation, the strength decrease was increased by fiber break in 8 layer.

Key Words : CFRP laminates, Delamination area, Bending load, High temperature, SAM

1. 緒論

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は,比強度と比 剛性に優れた材料として軽量化を求められている 様々な分野で活用が試みられている.CFRP は積層材 料であり,繊維方向の荷重に対して優れた強度を有 するが,繊維方向に対し垂直に衝撃を受けた際内部 に剥離が生じやすい欠点をもつ.外見からは確認で きない剥離による内部損傷は材料の強度に影響をお よぼし,重大な事故を引き起こす要因となる.構造物 に用いられる場合単純な平面での荷重だけでなく, 様々な方向からの力が加わり曲げ荷重が加わること が想定される.また,実際には温度変化による影響も

考えられるため高温など厳しい温度環境での使用が 材料に与える影響も考慮する必要がある.そこで,本 研究では曲げ荷重が CFRP 板材の鋼球衝突損傷にお よぼす影響,温度による影響を明らかにするために,

曲げ荷重をかけ,高温環境下で衝突実験を行い,比 較,検討を行った.衝突によって CFRP に生じる層間 剥離面積を,超音波探査装置(日立,HYE-FOCUS, 周 波数 50MHz)を用いて測定し,各条件下における CFRP の損傷への影響を検討した。

(3)

2. 実験 (1) 試験片

試験片は東レ製プリプレグ(P-3052S-12)を繊維配 向が[90°/-45°/0°/45°]s に積層された 8 層の CFRP 板材を使用し,1,8 層目に繊維が垂直の 90°

の長手方向になるように試験を行った.使用したプ リプレグは,繊維に高性能炭素繊維トレカ糸を,マ トリックスに硬化剤を含む熱硬化性樹脂(エポキ シ:#2500-130℃硬化型)を用いて構成されており炭 素繊維含有率は 67vol%である.実験に使用した試験 片は寸法が板厚 1.0mm 縦 100mm,横 50,40mm の2種 類である.

(2) 試験条件

本実験で用いた飛翔体は直径 6mm の鋼球である.鋼 球をホールドするサボットは直径 20mm 長さ 60mm の 円柱形発砲ポリスチレンを用いた.

試験条件として CFRP 板材への飛翔体の衝突速度範 囲は 100m/s~180m/s,曲げ荷重 50kN,たわみ量は中 心部分の最大変位量が 10mm となった.また,変形方 向が衝突方向に向いているものを凸面その逆を凹面 と定義した.試験温度は,常温(293K),333K,373K とした.試験温度は,熱電対を使用し試験片表面温 度を計測した.

(3) 実験方法

Fig.1 に衝撃試験装置の概要を示す.曲げ荷重衝 突試験時には,Fig.2 の曲げ試験専用の治具に CFRP 試験片を固定する.サボットに鋼球を設置したもの を銃身に挿入し,エアコンプレッサーを用いて空気 をエアタンク内に圧縮させ,解放することでサボッ トを発射し試験片に衝突させる.この時銃身の先端 に取り付けられているセンサーで鋼球の通過時間を 測定し,速度を算出さらに鋼球の質量と速度から衝 突エネルギーを算出した.

Fig.1 Experimental device for impacting damage of CFRP

Fig.2 Jig for bending load

(4) 残留曲げ強度試験

衝突試験を行った CFRP 板材の残留強度を評価す るために三点曲げ試験を行った.

曲げ試験片は衝突試験を行った試験片より衝突点 を中心に幅 15mm,長さ 100mm に切り出し,標点間距 離を 80mm,圧子の試験速度 2.67mm/min として試験 を行い,(1)式を用いて残留曲げ強度を求めた.

σ =

𝑏ℎ𝑃𝐿2

[1 + 4 (

𝐿δ

)

2

] (1)

ここで,σ:残留曲げ強度[MPa],P:最大曲げ荷重[N],

δ:たわみ量[mm],b:試験片の幅[mm],h:試験片 の厚さ[mm],L:支点間距離[mm]である.

3.

実験結果及び考察

(1)曲げ荷重による衝突エネルギーと剥離面積の

関係

Fig.3は,常温状態での平面,凸面,凹面におけ

るCFRP板材の剥離面積と衝突エネルギーの関係を 示したグラフである.平面に比べ衝突エネルギーが 大きくなると凸面では総剥離面積が増加する傾向が 見え,凹面では総剥離面積が若干減少している傾向

(4)

が見えるが大きな剥離面積の変化は見られない.

Fig.3 Relation between impact energy and delamination area in three type of setting conditions

一方でFig.4の各層剥離面積のグラフを見ると平 面に比べて凸面では6/7層の剥離が増加し,7/8層 の剥離は減少する傾向が見える.凹面では7/8層の 剥離が増加し,その他の層の剥離は減少する傾向が 見える.

Fig.4 Relation between each layer and delamination area caused in three type of setting conditions

この原因としてFig.5の剥離画像を見ると真ん中の 凸面剥離画像では左の平面剥離画像に比べて青色の 7/8層の縦方向の剥離進展が抑えられ,代わりに緑 色の6/7層の剥離が横方向に進展し大きく膨らんで いる様子が確認できる.このことから本試験条件で は8層目の繊維が90°方向の長手方向になってい るため,最も繊維の強度が高い方向に曲げ荷重が加 えられており,さらに変形による力が最も大きくか かる8層に繊維があることで,曲げ変形への抵抗が

大きく縦方向の剥離の進展の抑止につながる.その 結果,衝突エネルギーが6/7層の横方向への剥離面 積増加に使われ,このような各層剥離面積の変化が 生じたと考えられる.また,右の凹面剥離画像では 平面に比べ青色の7/8層の剥離が縦に大きく進展し ていることが確認できる.これは凹面では衝突によ る変形と同じ方向に変形の力が加わっているため,

最も変形による力の影響を受ける8層目の90°方 向の繊維に対する負荷が増加するためである.また,

高エネルギーになる8層目の最裏面において繊維の 破断が生じるため7/8層の剥離面積は大きくなった と考えられる.一方で繊維の破断に衝突エネルギー を使用し衝突エネルギーが減少したことで,その他 の層で剥離面積の減少が生じたと考えられる.

Fig.5 Delamination image of CFRP in three type of setting conditions

(2)積層方向の違いによる剥離面積の変化

Fig.6は1,8層目の繊維が0°方向の短手方向と なる試験片を用いた平面,凸面,凹面におけるCFRP 板材の剥離面積と衝突エネルギーの関係を表すグラ フである.総剥離面積を比較すると平面に比べ,凸 面では衝突エネルギーの増加と共に総剥離面積が大 きく増加しており,凹面ではわずかに総剥離面積が 減少している傾向が見える.

(5)

Fig.6

Relation between impact energy and delamination area in three type of setting conditions

この原因としてFig.7の各層剥離を見ると3,6層に 90°の繊維が来るため,凸面では縦方向の剥離進展 を抑制する力が軽減される.一方で,横方向の剥離 は進展しやすくなっているため,最も剥離が大きく なる7/8層をはじめこの条件では横方向への剥離面 積が平面に比べ大きくなったと考えられる.凹面で は5/6層の剥離が平面に比べ大きく下がっているよ

うに6層目の90°繊維において破断が生じた.その

ため,破断に衝突エネルギーが使われ全体の剥離面 積が低下したと考えられる.

Fig.7 Relation between each layer and delamination area

(3)温度による剥離面積への影響

Fig.8は333Kでの平面,凸面,凹面における CFRP板材の剥離面積と衝突エネルギーの関係を表 すグラフである.333Kでは常温と比較して凹面で の剥離面積の大きさに変化は見られないが凹面では

剥離面積の減少が確認できた.この原因として333K の凹面では 1 層目と 8 層目両方で繊維破断が生じ ることが確認できた,そのため衝突エネルギーが 減少し剥離面積の減少につながったと考えられ る.

Fig.8 Relation between each layer and delamination area in three type of setting conditions at 333K

Fig.9は373Kでの平面,凸面,凹面におけるCFRP 板材の剥離面積と衝突エネルギーの関係を表すグラ フである.このグラフからは平面と凹面の剥離面積 に違いは見られないが,凸面の剥離面積が増加して いる傾向がみられる.これは高温になることで母材 のエポキシ樹脂が炭化しもろくなり,それにより耐 衝撃性が低下することで剥離が生じやすくなり横方 向の剥離が増加しやすくなったためと考えられる.

凹面では剥離面積の変化は見られなかったが,高温 になることで母材であるエポキシ樹脂は炭化しもろ くなる,結果373Kでは1層目で大きな繊維破断が 確認された.

Fig.9 Relation between each layer and delamination area in three type of setting conditions at 373K

(6)

(4)残留曲げ強度

Fig.10は常温での平面,凸面,凹面におけるCFRP 板材の剥離面積と残留曲げ強度の関係である,平面 に比べ凸面は残留曲げ強度の低下が少なく,凹面は 残留曲げ強度の低下が大きい.これは総剥離面積の 変化は少ない一方で今回の曲げ強度に最も影響を与 える90°の繊維である8層に関与している7/8層の 剥離が凸面では減少したため強度の低下が少なかっ たと考えられる.一方,凹面では変形方向に力が加 わったこともあり8層目の繊維に破断が生じた事が 大きな強度低下を招いたと考えられる.

Fig.10 Relation between residual strength and delamination area in three type of setting conditions

次に,Fig.11は常温,333K,373Kでの平面,凸 面,凹面におけるCFRP板材の剥離面積と残留曲げ 強度の関係を示している.高温状態において,常温 と333Kでの強度に変化は見られないが,平面は 373Kでは剥離面積の増加とともに常温,333Kに比 べ強度が低下していく傾向がみられる.凹面は 373Kでは剥離面積が小さい状態でも常温,333Kに 比べ強度が大きく低下していることが確認できる.

これは,373Kでは1層目で繊維の破断が生じてい るため曲げを加えた時の内側に生じる圧縮に対する 強度が大きく下がっているためそれが全体の強度低 下につながったと考えられる.凸面は高温状態でも 常温状態と同じ剥離面積で比べて強度低下は見られ ないが,373Kになると同じ衝突エネルギーでも剥 離面積が増加するため,結果として剥離面積の上昇 による強度の低下につながっている.

Fig.11 Relation between residual strength and delamination area obtained at temperatures of RT,

333K, 373K respectively in three type of setting conditions

4.

結論

常温における曲げ荷重では総剥離面積の大きな変 化は見られなかったが,各層剥離面積では変化がそ れぞれ確認され,結果として凸面では変形の加わっ た繊維方向の剥離が減少する傾向が確認され,残留 曲げ強度は下がりにくくなった.一方で,凹面では 曲げ荷重の加わった方向の8層目の繊維で破断が生 じやすくなり残留曲げ強度の低下が生じた.

高温環境においては333Kでは剥離面積,残留強 度共に温度による影響は見られないが,373Kでは 母材であるエポキシ樹脂の硬化温度である403Kに 近いこともあり凸面では剥離面積の増加による強度 の低下,凹面では1層目の繊維で破断が生じ残留強 度の大きな低下が確認された.

5.

謝辞

本研究に際して様々なご指導を頂きました崎野清 憲教授に深く感謝致します.また多くのご指摘と共 に実験を行なってくださった,崎野研究室の後輩,

機械工学専攻の同期の皆様に深く感謝致します.

参考文献

[1] 田中,黒川,他2名,日本航空宇宙学会誌 Vol.37,No.425(1989)

[2] 清水,足立,他2名,日本機械学会論文集 Vol.63,No.607(1997)

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