﹁ 聴 く ﹂ こ と の 理 論 と 方 法
社 会 現 象 の 解 釈 学 的 探 究
武 井 寿
一序
一九八〇年代以降︑マーケティングにおける消費者行
動研究は︑心理学研究を基礎とし自然科学的方法を模範
とした行動主義を脱して︑新たな理論的パラダイムを追
求してきた︒それは﹀﹂≦律07Φ=らによる︿﹀いω(<餌憎
二Φ9巳=hΦ磐鷺Φ)調査に関連したさまざまな学問分野
におけるパラダイム・シフトと呼べる近年の動向を反
映し︑可視的行動のみならず消費者の内面に目を向け︑
エモーション︑価値︑あるいは意味を参与的観察やエン
パシー(感情移入)などの方法によって解釈学的に理解
しようとする特色がある︒それゆえこれを消費者行動へ
のヒューマニスティック・アプローチ(人間中心主義的 研究)と称することができる︒われわれはこれまでの考
察のな万博こうした研究を跡づけ︑マーケティング現豫
を真に知るための理論と方法について検討を加えてきた︒
哲学のなかでは︑物事を本質的に理解するためには既成
概念を適用した分類ではなく︑概念に執着しない対象と
の一体化による洞察が重要であると説かれる︒研究者が
現象に参与し︑ありのままの状況のなかで︑厚い記述を
つくり︑それに基づく探究を行うための学問的方法が社
会学や人類学によって展開されてきた︒体験に基づく洞
察によって研究者のイマジネーションが拡大する効果を
期待できる︒そして正しい認識を得るためには解釈とそ
の修正を何回も繰り返さなければならない︒実証主義は
外部から現象を観察し︑分析を行い︑一般化によって事
国 際 経 営 フ ォ ー ラ ムNo.2
実を検証する方法を用いる︒しかし︑事実は研究者と対
象の相互作用のなかで構成されると考えること喝できる︒
そこで︑本稿では対象との対話(集巴o陰①)によって
理解を創造するための﹁聴く﹂行為に焦点をあて︑その
理論と方法について考察したい︒相手の話を聴くことは
理解の第一歩であって︑今日まで多くの研究者がさまざ
まな角度から意義を指摘してきた︒象徴的相互作用論の
研究者の2.凶・∪①ロN貯は聴くだけで体験の共有を意図
しようとしない面接は信頼を創造できないと述べ(雄・消
費者行動を人間存在との関連で探究することを前提に︑
研究者はインサイドへの接近によって︑現象を行為者の
立場に即して深く知ることが必要である︒そして︑理解
は当事者の感情にまで掘り下げて了解することが理想で
あり︑表現された行為のみならず目に見えない隠れた行
為の内容を解明しなければならない︒本稿では︑そのた
めに︑鈎≦切Φ穿らによ.て了ケティング研究に応
用されたナチュラリスティック・インクワイアリi
(嵩Ωo梓¢﹁巴δ鉱Oぎぬ縁﹁蜜)について網・Qり.いぎoOぎ"国.O. ら ○信ぴ鶉︒の文献を用いて説明したい︒つぎにマーケティン
グへ(⑳解釈学的アブ・‑チの特色とその学問的意義を探
こ︑oりオし
つぎに︑﹁聴く﹂ことの具体的方法について面接(イン
タビr)を中心に︑その分類・定性調査麩などにつ いて説明したい︒とりわけ︑いU・Uoロσq智ωのクリエイテ
ィブ・インタビr( き 自$野巴三Φ三Φ三轟)について理論的側面についての考察も包摂し論述したい︒当該文
献は著者の体験による人間の﹁生﹂に対する洞察を基礎
に面接のあり方を論じており︑理論的にも実践的にも豊
富な示唆を与える︒面接に関しては精神医学的面接を忘
れることができない︒既磁)のように当該領域畷神田橋条治鰐ぐれた研究がある︒本稿では土居健郎︑国・ψω巳一貯碧の研究を参照しながら︑人間存在と関連した面
接の意義︑規範などについて探究したい︒
このように︑本稿はマーケティングにおける消費者行
動を中心とした社会現象を解釈学的立場から捉え︑深い
理解に達するためにはどのような方法を用いればよいか
をインタビュー(面接)を中心に﹁聴く﹂行為の理論的
かつ実践的探究によって解明することを目的とする︒精
神医学においては﹁聴く﹂ことが﹁問う﹂こと以上に重
要とみなされることが多い︒本稿でも︑﹁聴く﹂ことに
﹁尋ねる﹂ことよりも力点をおきたい︒また︑可視的部
分をどのように見るか︑表現されたものをどう聞くかと
ならんで︑不可視的部分をどのように推論し︑表現され
ないものをどう解釈するかに理解のポイントがあると考
えたい︒本稿で探究する﹁聴く﹂行為はこのようにマー
ケティング現象を深層において知る(理解する)ための
137
「聴 く」 こ と の 理 論 と方 法
方法論的意味合いを有している︒
注(1)﹀ヨo崔]≦詳o冨戸冒ヨΦωOoq鵠くざ四コ匹℃象臼
ωoゴ≦蝉詳N"§鴨§ト砺ぎo§曽ω即一ぎ辞Φ﹁コ餌辞凶o昌巴(吉
福伸逸監訳﹃パラダイム・シフト﹄TBSブリタニカ︑
一九八七年︒)拙稿﹁VA﹂S類型L(横田澄司.亀井昭
宏編﹃マーケティングの最前線﹄学文社︑一九九〇年︑
二三二〜二四三ページ︒)
(2)拙著﹃現代マーケティング・コミュニケーション﹄
白桃書房︑一九八八年︒拙稿﹁マーケティングにおける
﹁消費者研究﹂の新潮流L大分大学経済論集︑第四〇巻
第三号︑一九八八年九月︒拙稿﹁マーケティング研究に
おける知識生成の方法‑解釈主義の台頭l﹂大分大学経
済論集︑第四〇巻第六号︑一九八九年二月︒拙稿﹁マー
ケティング研究への解釈学的アプローチ﹂日経広告研究
所報一二九号︑一九九〇年二月︒拙稿﹁マーケティング
における﹁理解﹂研究の方法論的考察L神奈川大学国際
経営論集︑第一号︑一九九〇年三月︒拙稿﹁マーケティ
ングにおける﹁解釈﹂研究の理論と方法﹂神奈川大学国
際経営論集︑第二号︑一九九一年三月︒
(3)z︒目碧内・∪Φ邑pミ譜愚ミ§ミ紺§職§ぎ・
ωqoσq①℃ロぴ嵩o讐一〇昌ρぎoこ一りQ︒Pb・幽ω・
(4)寄羅=≦じd舞し︒ぎ哨・鉾Φ昌魯・b巳ζΦ苺凶Φ
芝巴一Φコ血o蹴"..>Z讐霞巴凶ω鼠oぎρ三曼凶三〇しd露︽臼禽︒口血 ωΦ一一臼じdωげ聾く圃o﹃象oω≦曽℃H≦ΦΦ戸︑.一〇ロ﹁昌巴o{Oo昌‑
ω∈B臼閃Φω①908﹃]≦費6げおQ︒Q︒"℃b・置㊤ーミρ菊乏く・しσΦ一ぎ
ζ.♂<巴一Φづユo﹃抽騨口血い司●ωげ臼﹁ざ冒̀..↓ゴΦQ∩mo﹁Φ螂偉o"α
什ゴΦ℃﹃oh蝉⇒ΦぎOo鵠ωロヨΦ噌しuΦげ餌<一〇畳↓げΦo島6団o昌けゴΦ
Oα︽ωωΦざ..一〇¢∋巴ohOo口ωロヨΦ﹃即Φω①母o貫一¢昌Φ一⑩Q︒炉
OP一1ωQo.
(5)曽8爵︒︒・旨︒︒ぎ鼻︒・ユ国︒q8ρo・げpきミミ警ら
き心ミ建"Qっ蝉αqo℃¢げ嵩o象凶oコω鴇ぎo二一㊤Q︒㎝・
(6)曽NぎΦ序ρ田﹁ω臼ヨ8(Φe}ミ鷺鳶§ミo§,
簑§ミ肉禽§§奔>oりωOO一︾↓HOZ閃O閑OO2QDq寓団閑
菊国ω国﹀国O工"一㊤oQO.
(7)︒︒什晋母内邑ρ︑.穿ΦO琶冨穿①閃①ω霞︒匡幕﹁︑
︿一①≦∴﹀勺﹃ΦコoヨΦ昌o一〇㈹一6巴四コ鳥餌口ΦコB①口①揖一6帥一
竃oαΦoh¢昌伽9ω訂嵩島昌ひq㌦.一〇¢﹁昌巴9勺ゴΦコoヨ①昌o一〇‑
αqド巴勺塁oげo一〇堕櫛くo一﹂♪Zo﹄噂一㊤c︒ω・
(8)冒葵∪.Uo億ぴq冨ρO越ミ帖竃冒鷺ミ暗ミ噛薦鴇ω餌σqΦ
℃二σ甥O国ユO昌ρH昌04一¢QQ9
(9)神田橋条治﹃精神科診断面接のコツ﹄岩崎学術出版
社︑一九八四年︒当該文献については拙稿﹁マーケティ
ング研究における知識生成の方法‑解釈主義の台頭I﹂
大分大学経済論集第四〇巻第六号︑一九八九年二月で論
述した︒
(10)土居健郎﹃方法としての面接﹄医学書院︑一九七七
年︒
(11)国碧蔓ω90ぎω巳=<餌登§恥きらミ黛壁苛ミ欝ミ暗斜
国 際 経 営 フ ォ ー ラ ムNo.2
≦.≦‑.乞o暮oコ印Oo田冨ξぎP一㊤漣(中井久夫他共訳
﹃精神医学的面接﹄みすず書房︑一九八六年︒)
ニナチュラリスティック・インクワイアリー
O実証主義との対比
既述のように消費者行動研究のなかでナチュラリステ
ィック・インクワイアリーの展開が論じられたのは一九
八〇年代の後半からであった︒幻・♂<.じqΦ澤らはこれを
対象がおかれたありのままの環境のなかでフィールド調
査を実施し︑その結果を解釈という手段によっで認識す
る方法と定義し︑現場の詳細な観察と記録︑ならびにコ
ンテクストを重要とした︒そして︑データの収集と分析
に他の方法よりも時間がかかるが︑消費者行動を分断す
ユ ることなく自然な形で把握できる利点があると指摘した︒
当該方法について嶋・ω.いぎooぎ‑図OO¢げ餌は実証主
義との対比によって特色をつぎのように説明﹂麗︒サイ
エンスの思想は自然に直接問いかけ︑自然に答えさせる
ことを長年尊重してきた︒そして自然科学の進歩は科学
技術の著しい発展をもたらした︒しかし人間の﹁知﹂の
探究は代替的方法の模索を進行させており︑かかる試み
のひとつが﹁ナチュラリスティソク﹂と呼ばれるもので
ある︒これは﹁脱実証主義的﹂﹁エスノグラフィック﹂
﹁現象学的﹂﹁主観的﹂﹁ケース・スタディ﹂﹁定性的﹂﹁解 釈学的L﹁ヒューマニスティック﹂などの名称で呼ぶこと
もできる︒心理学における当該視点に関する初期の研究
からつぎの二点の特色を指摘することができる︒ω研究
者は対象となる行動の先行条件に対して操作的意図をも
たない︑②研究者は結果に対するア・プリオリな単位を
課すことはない︒人間の﹁知﹂の探究の歴史はつぎのよ
うに分類することができる︒ω﹀ユω8二Φから一八世紀
に至るまでの実証主義以前の時代(℃噌Φ層Oω一什一.<一ω梓Φ吋覇Ω)︑
②一九世紀初頭から二〇世紀のウィーン学団の形成に至
る実証主義の時代(Ooω三≦ω什Φ轟)︑㈹脱実証主義の時
代(噂oω80ω置≦簿Φ鎚)︒
さて︑周知のように実証主義は科学的方法に対して重
要なインパクトを与えた︒実証主義(Ooω三≦ωヨ)とい
う言葉はQっ蝕艮・鎗ヨ8が自然科学の方法とその哲学へ
の敷延をさすために用いたのに始まるが︑経験的な事実
の背後になんらかの超経験的実在をみとめず︑すべての
知識の対象は経験的所与たる事実にかぎるとする立場で
ある︒そして︑近代自然科学の方法と成果にもとづき︑
物理的︑精神的現象世界の統一的な説明を目ざ﹂焔︒と
りわけ︑論理実証主義(δσq圃8ぢo︒︒譲三ωヨ)はウィーン学団とその同調者たちの哲学に与えられた名称であるが︑
論理分析の方法︑すなわち概念と命題の意味を論理的に
分析し︑それらの真に意味するところをあきらかにする
139
「聴 く」 こ と の理 論 と方 法
一方で︑そこに混入した意味をもたぬ非経験的︑形而上
学的要素を取りのぞく特色がある︒そして存在と意識︑
あるいは経験所与と悟性の二元論を︑経験とその表現の
道具としての記号系(主として言語)という矛盾のない
二元論におきかえることを試みた︒実証主義に対してこ
れまでさまざまな批判がみられた︒一例をあげれば︑実
証主義の浸透によって︑研究者がすべてを決定する外生
的(Φ×OαqΦ昌O=ω)研究が多数となり︑対象が決定に等し
く加わる内生的(Φ巳oαqΦコo¢ω)研究が排除されたと批判
される︒また︑外部的(客観的)視点の研究(Φ江o﹁Φ
ω①費oげ)のみが重要と考えられて︑内部的(主観的)視
点の研究(Φ5P一6﹁ΦωΦ餌﹃Oげ)が軽視される傾向が生まれた
とも言われる︒すなわち実証主義は人間的要因に対する
配慮が欠如していると批判された︒
実証主義を支える五つの原理はつぎのとおりである︒
ω単一の実体的現実が存在し︑これは分割可能で独立し
て研究できる︑②観察者は観察対象から独立して観察で
きる︑㈹観察の時間的および文脈的独立性(ある時点や
場所で真実であったことは適切な状況のもとでは別の時
点や場所でも真実である)︑ω直線的因果性(原因なくし
て結果はなく︑結果のない原因はない)︑⑤価値からの自
由(方法論は探究の結果が価値に影響されないことを保
証する)︒これに対して︑ナチュラリスティック・パラ ダイムの原理はつぎのとおりである︒ω複数の構成され
た現実が存在し︑ホリスティックに研究できる︑②研究
者と対象は相互に影響を与え︑両者は分離できない︑㈹
研究の目的は個性記述的(一匹一〇αQH帥Oげ一〇)な知識体系にあ
り︑それは個別の事例を記述した作業仮説(毛o蒔冒oq
ξbo9ΦωΦω)の形で示される︑ωすべての存在は相互的
同時的形成(量﹄ε巴ω冒巳富コΦ8ωω冨豆お)の状態にあ
り︑原因を結果から識別できない︑⑤研究はつぎの五つ
の点で価値を負う︒①研究者の価値観︑②パラダイムの
選択︑③理論の選択︑④コンテクストに内在する価値︑
⑤以上の共鳴と不協和︒
二つの原理を対比すれば表1のとおりである︒
⇔特色
つぎに︑以上の記述を基礎にナチュラリスティック.
インクワイアリーの特色を説明したい︒
現実(噌$一一蔓)をどのように捉えるかは学問の基礎的
課題であり︑数多くの見方が提起されてきた︒社会学に
おいては一九二〇年代のパラダイム危機を契機に解釈学
的社会学が脚光を浴びた︒そこでは︑社会科学は法則的
命題を目的とするのではなく個人や社会生活の意味をよ
り深く理解すべきであると主張された︒心理学はO・
〆①=団のパーソナル・コンストラクト心理学(O臼ω8巴
表1実 証主義者 とナチ ュラ リス トの原理 の対照
原 理 実 証 主 義 者 パ ラ ダイ ム
ナ チ ュ ラ リ ス ト ・パ ラ ダ イ ム
現実 の性質
単 一 実 体 分割可能
複 数
構 成 的
ホ リ ス テ ィ ッ ク
研究者 と対象 の関係 独 立 的 二 元 論
相互 作用的 不 可 分 一 般 化 の 可能 性 時間 と文脈 に無関係 な一般
化(法 則的言 明)が 可能
時 間 と文脈 に関 係 した 作業 仮 説(個 別 的 言 明)の み が可 能
因果連鎖 の可能性 結 果 に先 行 した り同 時 的 で あ る真 の原 因 が あ る
すべ て の存 在 は相 互 的 同 時 的 形 成 の状 態 に あ るた め原 因 と 結 果 の識 別 は不 可 能 で あ る 価値 の役割 研究 は価値 と無関係 研 究は価値 と関係
(出 典)Y・S・Lin・ ・lnandE.G.Guba ,Naturrxlisticlnqur'ry,Sag・Publi・ati。ns ,ln、.,1985,p.37.
︒︒昌・︒膚ロ︒εω団︒3領)が同様の方法論を説き︑人聞の
内面世界に注目した︒哲学では存在論のなかで実在性を
つぎの四類型に分ける︒ω現実は実体的で経験によって
知ることができるとする客観的実在性︑②個人が知りう
るのは特定の視点(知覚)による内容であるとの知覚的
実在性︑㈹現実は人間の心の構成物で複数の存在である
と考える構成的実在性︑ω現実は参与者が創りだすとい
う創造的実在性︒ナチュラリスト・パラダイムは構成的
実在性の立場をとる︒構成された現実とはつぎのごとき
ものを称する︒①企業による消費者への広告活動︑②法
廷での手続き︑③辞書の言語学的構成︒
また︑実証主義者が一般化(σqΦ昌Φ惹欝餌戯8)を科学の重要な厨標と考えるのに対して︑ナチュラリスト・︒︑ラ
ノタイムはそれに代わる作業仮説(宅o蒔冒αqげ巻o窪o臨︒︒)の概念を導入する︒そして一般化はつぎのごとき欠点を
もつと指摘する︒ω決定論(α①櫛Φ﹁ヨ一ロ一ωヨ)の地位の低
下︑②人間活動の実情にそぐわない時間と文脈からの自
由という仮定︑㈹法則的一般化(昌o§03Φ鉱o)に対する
予測と統制のための個別化(繭島o鴨巷霞6)のジレンマ︒
研究者は個別の状況要因に配慮しつつ考察を進め︑かか
る要因は]般化を阻む場合がある︒このようにすべての
一般化は結論ではなく作業仮説とみなすことができる︒
状況によってコンテクストが異なり︑時間の経過によっ
141
「聴 く」 こ との 理 論 と方 法
て変化が生ずるため︑作業仮説は発見された状況と︑別
の状況の双方にとって仮定的であるといえる︒
つぎに︑因果性の概念に代わり相互的同時的形成の概
念を導入し︑人間の経験︑判断︑洞察などの関与する現
象を解明する︒これはつぎのような見方である︒すべて
のものは他のすべての存在に今この場において影響を与
え︑また︑行為に含まれた多数の要素は相互作用によっ
て同時的に互いの変化を誘発し︑観察者が結果(Φ唐09ω)と名づけるものに変化する︒しかし︑相互作
用には特定の方向性はなく︑結果はまったく予測できな
い形態形成的変化の相互的形成の産物である︒実証主義
的理解が自然によって規定された真の因果連鎖の評価で
あるのに対し︑研究者と現象の相互作用から生ずる合目
的の構造(bロ趨oω貯①ω茸仁oεお)を理解と考えることが
できる︒このように︑因果性は相対的確からしさ(お一甲
江くΦb冨賃臨甑捧︽)に変化する︒
日展開
つぎに︑ナチュラリスティック・インクワイアリーの
具体的展開について説明したい︒全体の流れは図1のよ
うに要約できる︒
当該方法論による研究は対象の存在するありのままの
文脈のなかで実施される︒これはつぎのような理由に基 つく︒ω実在性は文脈から分離して理解することのでき
ない全体である︑②観察行為は内容に影響を及ぼす︑㈹
発見内容の意義の判断において文脈(コンテクスト)が
高い比重を占める︑ω因果関係ではなく相互形成の機能
を重視する︒このように︑研究は時間と文脈に依存する
ことを前提とし︑コンテクストに関係するすべての要因
を考慮に入れる︒この場合︑研究者自身も外部的存在で
はなく文脈のなかに組み入れられる︒
つぎに︑データの収集の手段は人間を中心とする︒当
該方法論はすべては不確定との仮定から出発するため︑
人間の反応性︑適応性︑認識能力などを信頼してテータ
を収集する︒
ナチュラリスティック・インクワイアリーは言語で表
現できる命題知(b噌oOo臨含oコ巴げ口o芝δ血σqΦ)のみなら
ず︑体験的理解による暗黙知(冨o津ざo註巴αqΦ)を活用
する︒これはつぎの理由に基づく︒ω複数の実在性とい
うニュアンスはこうした方法でのみ評価される︑②研究
者と対象の相互作用の多くはかかるレベルで発生する︑
㈲暗黙知は研究者の価値観を映しだす︒暗黙知は洞察や
仮説の基礎を成すが︑研究者はこれを言語化し︑共有化
ヘへむするための努力を怠ってはならなし
当該方法論は人間によってデータの収集をはかるため
定性法に依拠している︒
図1 問題 、政 策選 択 の なか での 実 施 、 設 定 され た境 界
ナ チ ュ ラ リス テ ィ ック ・イ ン ク ワ イ ア リー の流 れ
ノ ロm の コ へ
!/\ 、
検 証 の 基 準
・真 実 性
、 。依 存 性
o石呈1{言i正 正 三 」1饗 …
/ r 量 冒 l E
i 作 業
i i
l
I I
1掌 聴Lた
i I i i
5
1内 包
r I i
i 作 成
1 I i i
l条 件
i I I i i
L‑一 ・一 一 一 一 一̲̲̲̲ ̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲ ̲̲̲̲
(出 典)Y.S.LincolnandE.G.Guba,op.cit.}p.188 .
{
結 果の 協議
冒
,
個別 的解 釈仮 の適 用
\ーーーーーー;,ー11ー8‑1ーーー‑;ー﹂
ー
143
「聴 く」rと の 理 論 と 方 法
ナチュラリストのサンプリングを目的サンフリンク
(O霞℃oω才Φω四ヨO=昌σq)と呼ぶ︒サンプリングは通常代
表性を重視して実施され︑対象のすべての要素が等しい
選択の機会をもつように工夫される︒.︺れに対して︑目
的サンプリングでは多数の個別的事例を詳述することを
目的に︑以降の研究手順で重要と考えられる情報の把握
をはかる︒したがってサンプルの決定を事前に行うこと
をせずに︑研究の進行にあわせてサンプリング.デザイ
ンをし︑必要であればその範囲と内容を一層発展させる︒
このように統計的要因ではなく情報の内容を基準にサン
プリングを行う特色がある︒それゆえ︑情報の冗長性(おα琶α⇔昌o︽)が認められた場合に作業は中止される︒
ナチュラリストのデータ分析は帰納法による︒演繹法
では︑理論に基づきデータが先験的に限定され︑データ
は変数︑もしくは変数間のなんらかの関係をあらわす︒
そして演繹された内容を確認するための経験的データを
求める︒これに対して︑ナチュラリストは先験的理論や
変数を対象とせず︑それらは探究の結果生まれると仮定
する︒フィールドのなかで蓄積されたデータを帰納的に
分析し︑検証すべき作業仮説や問題を明らかにする手順
を用いる︒したがって︑ナチュラリストが目標とするの
はデータに依拠した理論(鵯oロ巳Φ血昏Φo蔓)といえる︒
ナチュラリスティック・インクワイアリーのリサー チ︒デザインは進行に応じて実施される︒それはつぎの
ような理由による︒ω対象となる多様な現実についてあー
らかじめ十分に知ることはできない︑②研究者と現象の
相互作用の結果を事前に予測することはできない︑㈹相
互形成のパターンを知ることはできない︑ωさまざまな
価値観が予測不可能な方法で結果に影響する︒
また︑調査内容の解釈においてはデータの出所である
回答者と協議を行う︒すべてに同意が得られるとは限ら
なくても︑研究者は必ずかかる手順を踏んで結論をまと
める義務がある︒それはつぎの理由による︒ω研究者は
対象の現実の再構成をはかる︑②特定の文脈での作業仮
説はそこに暮らす人間が最もよく確認できる︑㈹現地の
価値観は居住者がより深く知っている︒
ナチュラリスティック・インクワイアリーは研究内容
の報告に事例方式(O鋤ωΦ目Φ℃O︻一)を用いる︒それはこう
した方法がつぎの特色を有するためである︒ω厚い記述
を可能とする︑②複数の現実を記述できる︑㈹読者が臨
場感をもって内容に接することができる︒
また︑データならびに結論の解釈は対象の個別性に焦
点をおいて行われる︒これは主としてつぎの理由による︒
ω特定の文脈で発見された内容はその時点と文脈で意味
がある︑②意味の解釈はホリスティックに行わなければ
ならない︒
国 際 経 営 フ ォ ー ラ ムNo.2
さらに︑ナチュラリスティック・インクワイァリーは
発見事項の他のコンテクストへの応用に慎重である︒そ
の際にはケースごとに可能性を十分に確認しなければな
らない︒
また︑研究の信用性は伝統的基準︑すなわち内的およ
び外的妥当性︑信頼性︑客観性にかわって︑真実性︑移
転可能性︑依存性︑および確証性が用いられる︒
以上のごとく︑ナチュラリスティック・インクワイア
リーは人的手段によってデータの収集をはかるため︑面
接(インタビュー)がひろく活用される︒そして︑固定
的方式によらずに相互作用のなかから柔軟に対象に接近
する特色がある︒
四解釈学的消費者研究
社会現象を︑構成する人間を中心に考察し︑その体験
をホリスティックに理解するためのヒューマニスティッ
ク・インクワイアリーが消費者行動研究のなかで進んで
議︒解釈学的消費者研究もそうした試みのひとつで
ある︒
竃﹄.=︒奪8宥ω﹄Φ〒竃咀芝.O冨畜8はヒューマニズムの発達と社会科学の学問的位置づけをつぎのよ
うに説明した︒ヒューマニズム(ゴ臼自m三ロゆヨ)︑ないしは
ヒューマニティズ(汀§餌乱二Φω)は︑歴史的にルネサン スを契機に発達した︒ルネサンスの精神運動は人間の解
放を目的とするものであり︑中世封建制度の重圧から人
間を救いだし︑人間性の回復をはかる狙いがあった︒そ
のために古典的教養を人間にとって必須の条件と考え︑
これをフマ一一タスの精神と呼び︑尊重した︒それゆえ︑
古代ギリシアの生活と文化を理想とした文学︑哲学︑政
治学︑倫理学などの研究が進行し︑人間性の再興がとな
えられた︒ルネサンス期をへて︑ヒューマニズムが大き
く発展したのが一八世紀のドイツの反啓蒙運動の時期で
あった︒啓蒙思想を象徴する合理主義と機械的世界観に
対して︑古典的教養と人間的個性の尊重が主張され︑知
識の真の屠標は人間について知ることにあり︑また︑社
会の歴史的循環を理解することが重要であると説かれた︒
ヒューマニティズはこのように自己の手によって内面を
探究する人間の力を信頼する思想に基づく︒近代のヒュ
ーマニズムの思想のなかでは︑♂<・∪岸げ①︽の解釈学︑竃・出Φ置①器霞の存在論︑ζ吻QDOげ巴臼の人間学︑界冒ω冨﹃ωの実存哲学などが知られている︒U韓ゴΦ唄の分類を応用
した自然科学と人間科学(精神科学)の図式的区分は図
2のとおりである︒
図2に関してつぎの諸点に注目しなければならない︒
ω自然科学と人間科学の区分が認められる︑②人道主義玲
(ゴ暮p︒三$ユ鋤巳ωヨ)は人類の福祉と幸福のために努力
図2自 然科学 と人 間科 学の図式 的描写
倫理的/宗 教的 ヒユー一 ズム 雛 難
人道 主義
自然科学 人間科学
社 会 科 学
(心理 学,社 会 学,人 類学)
人 文 科 学(ヒ ュ ー マ ニ テ ィ ズ)
(文 学,芸 術,歴 史,哲 学)
(出 典)E.C,Hirschman(ed.),InterpretiveConsumer Research,ASSOCIATIONFORCONSUMER RESEARCH,1989,p.32.
する思想であり︑倫理的もしくは宗教的ヒューマニズム
は人間の奉仕を通じた自己実現に焦点がある︑㈹純粋倫
理あるいは純粋宗教は客観的知識の生成を目的とする︑
ω社会科学は自然科学と人文科学(ゴ¢∋o巳江Φω)の中間
に位置づけられる︑⑤人文科学は文学︑芸術︑歴史︑哲
学といった人類の歴史的および文化的遺産に関係する︒
=oま﹃oo評らによれば︑社会科学一般︑とりわけ消費
者研究のなかでヒューマニティズの意義を評価し︑導入 する動きが近年活発となってきた︒製品の象徴的意味や
消費行為の象徴性の解明はこうした傾向の反映である︒
このほか︑消費体験を人生の主要な関心のメタファーと
仮定したり︑芸術的表現としての人生を消費体験との関
連で探究しようとする研究がある︒これらは消費を人間
が﹁生きる﹂こととのかかわりのなかで解明しようとす
る特色があり︑ヒューマニティズと消費者研究との接点
を探るものである︒
今日までの消費者研究は行動の可視的部分を対象とし︑
それを自然科学的方法を応用することによって探究して
きた︒しかし︑消費象徴論(OO昌ω§も岳o昌ω︽ヨぴo=ωヨ)
とも呼べる新しい領域は︑意味や価値といった消費者の
主観的部分を対象とし︑表現︑メタファーなどの方法を
応用しながら人間としての消費者をトータルに研究する
特色がある︒
また︑旨ピ・ONoロコΦ・い.﹀・国ロ創ωoづは︑消費者研究の
同様な展開を跡づけることによって︑実証主義的アプロ
⁝チと解釈主義的アプローチの特色を表2のように要約
(8)した︒
そして解釈のプロセスをつぎのように示した︒ω観察
や面接などによって解釈の基礎(テキスト)をつくる︑
②テキストを成句や行為に分割する︑㈹サブテキストご
とに作業仮説と解釈をつくる︑ωサブテキストの解釈を
表2実 証主義者 と解釈 主義者 のアプ ロー チ 基 本 仮 説
価値論:
主要 目標 存 在 論'
現 実 の 性 質
認識論:
生成知識
因 果 性 の見 方 リサ ー チ の関 係
一 般 法 則
,予 測 に よ る 「説 明 」
客観的,実 体的 単
断片化可能 区 分 可 能 決 定 論 的 反 応 的 法 則 的 時間 に無関係 文脈 か ら独立 真 の 原 因 二元論 分離 特権的観察
(出 典)EC.Hirschman(ed.),oρ.CZt.,p.3.
クツ的数イ的的的成テ構ス脈意進会リ社多ホ文主前
個 別 的 時間 に関係 文脈 依存的 複数 同時形成
相 互作用的,協 同的 非特権 的観 察
合わせて全体の解釈をつくる︑⑤研究者自身の解釈と代
替的解釈を提示する︒ON四§㌣躍&︒︒8によれば︑実証
主義のなかでは︑データ︑研究者︑そして方法が実証主
義者の仮定ならびに一般化︑研究者の客観性︑さらに
注(‑)幻口器色一♂<■しd①一ぎ﹄oげ昌閂ωげΦ﹁曙一}﹁二帥口創H≦①一四巳Φ
芝巴}Φ"価o臥℃.︑﹀﹁2四什窪﹁巴一ω誠o一昌ρ巳憎団3什obu¢︽Φ触凶口α
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(2)本章の以下の説明はつぎのものに基づく︒
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(3)﹃哲学事典﹄平凡社︑一九七一年︒
(4)前掲書︒
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柳
﹁真理﹂を求める目的と調和的である︒これに対して︑解釈主義では︑データ︑研究者︑理論︑そして方法がパ
ターンをつくり︑現実に関する多くの異なった記述を容
認する︒
「聴 く」 こ と の 理 論 と方 法
(7)以下の説明はつぎのものに基づく︒
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﹃哲学事典﹄平凡社︑一九七一年︒
(8)以下の説明はつぎのものに基づく︒
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三 面 接 の 種 類 と 方 法
O定性調査面接
﹁面接(インタビュー)﹂の概念と方法については今日
まで人類学︑民俗学︑社会学︑社会言語学︑心理学など
を中心に研究が行われ︑それぞれの特色をもつ研究成果
が認められ(観・社会学は面接の方法に焦点をおき︑体系
化や分類を行ってきた︒社会調査の方法としての面接は︑
調査者(面接者)と被調査者(被面接者)との対面的な
関係による言語交換(質問と回答)をつうじてのデータ
の収集であ(解また・より一般的には︑﹁人と人とが︑一
定の場所において︑直接︑顔を合わせ︑ある目的をもっ
て︑主として言語を用い︑話し合い︑情報の交換︑意志 の伝達︑相談︑問題の解決などの目的を達するための方
法Lと定義で義・面接に際して︑あらがじめ決められ
た順序で一定の質問を行い︑調査員が回答を記入するも
のを指示的面接(鳥一同ΦO仲一くΦ一嵩什①触く一Φ≦)︑ある程度の質問
項目は想定するが︑相手の状況に応じて自由に質問を重
ねていくものを非指示的面接(昌︒阜虫﹁Φ︒二くΦ一昌什79一
くδ≦)︑両者の中間的性格のものを半指示的面接と呼ぶ︒
指示的面接は標準化面接(ω叶四コユ鋤﹃創一NΦ伍一昌辞Φ﹁<一〇ぐく)と
も呼ばれ︑つぎのような長所がある︒ω調査員(面接老)
の個人差による偏りが少ない︑②質問におけることばの
エラーを回避できる︑㈹同答者の表現のニュアンスを補
足的に把握できる︑ωケースとケースの比較が可能とな
る︒一方︑非指示的面接は非標準化面接(二口ω邸巳母阜一NΦαぢ辞臼≦①毛)︑あるいは自由面接(h﹁ΦΦ一昌梓Φ﹃<一Φ♂く)と
も呼ばれ︑つぎのごとき長所がある︒ω問題をより深く
知ることができる︑②事象を広範な社会的文脈のなかで
知ることができる︑③事例的調査に有効である︒また︑
半指示的面接は︑若干の面接ガイドをつくり︑なおその
上で深い質問を行うことによって︑面接の柔勲姓を保持
しながら多数事例の相互比較ができる利点がある︒
さて︑面接は方法としての実践的側面が強調された結
果︑高い使用頻度にもかかわらず科学的分析を欠き︑理
論面の整備が十分ではないといわれる︒Qo.訳く巴Φは心
国 際 経 営 フ ォ ー ラ ムNo,2
浬蝉におけるこうした状況の原因をつぎのように整理した︒ω会話としての面接は複雑かつ多様であって一般
理論をつくることが難しい︑②面接はサイエンスという
よりもアートであると認識される︑㈲その現実的特性か
ら方法論の対象になり難いとみなされる︑ω実証主義の
科学観に合致しない︑㈲面接は現象学的および解釈学的
理解の様式と関係が深い︑㈲面接の専門性に対する認識
の希薄さ︑ω社会的調査に対する政治の抵抗︒そして︑
内く鉱Φは人々の生活を対象とした現象の意味を解釈する
ための面接の必要性を指摘し︑これを定性調査面接(ρ億巴搾碧才Φ捲ω①碧oゴ繭三Φ署冨≦)と呼んだ︒
定性調査面接はつぎのような特色をもつ︒ω対象の生
活世界を扱い︑その中心的テーマを記述し理解すること
を目的とする︑②中心的テーマの意味の記述と理解をは
かる︑㈹被面接者の生活の異なる側面からできるだけ多
くのニュアンスを得る︑ω未解釈の記述を入手する︑励
状況や行為の記述の特定性を尊重する︑㈲仮定をもたな
い記述を入手する︑の面接は特定のテーマに焦点をあて
る︑㈹被面接者の発言の曖昧さを容認する︑㈲被面接者
の説明や意味の変更を認める︑⑩面接者の感受性によっ
て内容が変わる︑ω面接者と被面接者は相互作用をする︑
働被面接者にとって面接はプラスの体験である︒
定性調査面接の記述から解釈に至る局面はつぎのよう に要約できる︒ω被面接者が自発的に行為︑考えなどを
記述する︑②被面接者が体験や行為のなかに新しい関係
や意味を発見する︑㈹面接者が記述の意味を解釈し︑被
面接者に確認を求める︑ω完成した面接を面接者あるい
は第三者が解釈する︑㈲解釈を被面接者に戻すことによ
り内容を補強する︑㈲面接による洞察に基づき被面接者
が行為する︒
分析と解釈の理論的接近のために現象学や解釈学の成
果を応用することができる︒解釈学から抽出できる意味
解釈一般の規範はつぎのとおりである︒ω部分と全体を
往復しながら理解を深める(螺旋的解釈)︒全体の直観
的理解に基づき部分の解釈を行い︑それらを再び全体に
関連づける︒②解釈は面接のなかの異なったテーマの意
味がパターンを形成し︑矛盾のない統一に変化する(ゲ
シュタルト)まで続ける︑㈹部分的解釈をテキストの全
体的意味︑あるいは同一の著者の他のテキストに照らし
て検証する︑ω面接の解釈は発言の内容に即して行う︑
㈲面接者はテーマに関する広範な知識を必要とする︑ω
面接の問いや解釈の前提となる条件を知る︑の新しいニ
コアンスや関係を明らかにすることによって解釈の強化
や拡大を期待する︒
国く巴Φによれば︑市場調査のなかの深層面接(儀8夢
ぎ8署融≦)や動機面接(ヨO梓一くΦ一昌けΦ﹁<一Φ≦)は以上のこ
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「聴 く」 こ と の 理 論 と方 法
とき定性調査面接と関連しており︑これらによって︑製
品の表層的意味の背後の隠れた意味が明らかとなること
がある︒例えば︑車は輸送の手段であるばかりではなく︑
名声やパワーなどの象徴でもある︒
⇔クリエイティブ・インタビュー
面接者と被面接者の協力作業によって生活体験の深層
を探ることを目的とした定性面接のなかにクリエ(召ティ
ブ・インタビュー(臼$口くΦヨけ霞≦Φ惹pσq)がある︒こ
れは一・∪・Uo¢σq冨ωの社会調査のなかから提唱された方
式であり︑彼はこれを﹁常識と体験の企て﹂と評価した︒
クリエイティブ・インタビューは彼のつぎのような
﹁生﹂に対する哲学と学問的認識を基礎に誕生した︒
人間の生活は﹁部分的に位置づけられている(b母︑
二⇔ξω凶ε鉾Φ血)﹂との見方によれば︑人生を完全に予測
することは不可能であり︑決定や行為における人間の自
由意志と責任の所在を認めることができる︒これに対し
て合理主義‑科学主義(﹁餌什一〇コ餌一凶ωヨーωO一Φ一口叶一ω巳口)は予測
可能性に高い信頼をおく︒こうした絶対主義的立場は社
会科学のアンケート調査の基礎を成すものである︒アン
ケート方式は個人的要因や状況的要因への配慮を欠いて
おり︑これらに注目することは科学の方法的規範をおか
すと考えてきた︒しかし現実にはアンケート調査は予測 不能な要因に影響される場合もあり︑また内容や質問者
の特性が回答に重大な影響を与えることもある︒それゆ
え回答に誤解や虚偽の情報が寄せられることもある︒日
常世界の社会学︑深層心理学︑参与的観察︑ジャーナリ
ズムの面接法などは人生は部分的に位置づけられている
という哲学を基礎としている︒クリエイティブ・インタ
ビューは面接の状況(ω騨§江o口)と︑その内容への影響
を考える︒かかる理解を基礎に人間に関する真実の発見
のために面接方法を工夫する︒状況に応じてアプローチ
を柔軟に変更しながら面接を継続する点に当該方法の特
色がある︒
また︑人間が自己を知ること︑ならびに他人とのコミ
ュニケーションで問題をかかえている際にクリエイティ
ブ・インタビューの真価が発揮される︒エモーションに
関する質問に対して人は必ずしも正直に自分の気持ちを
表現するとは限らない︒こうした場合に︑クリエイティ
ブ●インタビューは被面接者と友好的関係を強化するこ
とによって体験やコンテクストに基づく解釈を試みる︒
とりわけ面接者はつぎの点に注意を払い︑質的充実をは
かることが必要である︒ω広い体験をもつ︑②体験をよ
り開かれた態度で学習する︑㈹体験の意味の理解にエモ
ーショナルにコミットする︒
つぎにクリエイティブ・インタビューの詳細を﹁聴