九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
鉄を触媒としたCO-H2混合ガスからの炭素析出反応メ カニズムおよび析出炭素のガス化挙動に関する研究
西廣, 一隼
https://doi.org/10.15017/4060126
出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式2)
氏 名 :西廣一隼
論 文 名 :鉄を触媒とした CO-H2混合ガスからの炭素析出反応メカニズムおよび 析出炭素のガス化挙動に関する研究
区 分 :甲
論 文 内 容 の 要 旨
本研究は、酸化鉄の還元反応においてH2を活用することにより炭素への依存性を軽減する技術に関す るもので、CO-H2混合ガスからの炭素析出反応挙動および析出炭素のガス化反応挙動について検討を行 ったものである。このため、鉄を触媒として生じるCO-H2混合ガスからの炭素析出反応挙動の調査の一環と して還元鉄試料を用いた炭素析出反応実験を行い、炭素析出反応速度に及ぼす種々の影響因子につい て考察するとともに、析出した炭素に関する物理的性状を調査した上で酸化性ガスによる炭素のガス化反応 挙動について考察し、炭素析出反応およびガス化反応について速度論的に明らかにした。その結果をまと めた本論文は、第1章から第5章までの5つの章で構成されている。
第一章は緒論であり、本研究の背景、目的および構成について述べた。まず本研究の背景として、鉄鋼業 の社会的使命および世界的気候変動の対応のための二酸化炭素排出抑制への要求を踏まえて、それらの 対策としてのH2ガス使用の有用性を示した。一方で、高水素分圧で運転される高炉の安定操業にはH2ガス 使用によって新しく生じる随伴反応の把握、制御が必要であることを踏まえて、鉄を触媒として生ずるCO-H2
混合ガスからの炭素析出反応の挙動調査が必要不可欠であることを示した。次に、炭素析出反応に関する 現状の研究について種々の触媒による炭素析出機構および炭素析出反応速度解析に関する研究をまとめ、
未だ明らかにされていない炭素析出反応挙動に関する基礎的知見獲得の必要性を述べた。また、高炉で 一般的に用いられている炭材のガス化反応に関する調査の現状として種々の炭材によるガス化反応の調査 結果をまとめた。鉄を触媒としてCO-H2混合ガスより析出する炭素の物理的性状およびガス化挙動につい て未解明な点が多いことを踏まえ、析出炭素のガス化挙動に関する基礎的知見獲得の必要性を述べた。
第二章では、炭素析出反応に関して実験を行い検討を加え、還元鉄を触媒としたCO-H2混合ガスからの 炭素析出反応速度に対する反応温度、H2濃度の関係を明らかにした。実験試料はヘマタイトを600℃でH2
を用いて還元した還元鉄粉末試料を用いた。この試料を用いて、炭素析出反応が激しく生起する500℃
~700℃でのCO-H2混合ガスによる炭素析出反応をひずみゲージを備えた熱天秤を用いて評価した。反応 中の重量変化量の測定によりCO単一ガスにH2を加えると炭素析出反応速度が著しく増大することを明らか にするとともに、低温になるほどH2による炭素析出反応促進効果が大きくなることを示した。これらの挙動を 考察するために実験後試料相のXRD分析を行い、還元鉄共存下で炭素析出反応が進行すると析出炭素 と還元鉄の反応によりセメンタイトが生成することを見出した。また、生成セメンタイトが炭素析出反応に伴い 高速で分解することで鉄微粒子が生成し、その鉄微粒子を新しい起点として繊維状に炭素析出反応が激し く進行するメカニズムを明らかした。
第三章では炭素析出反応挙動と還元鉄表面性状の関係について検討を加えた。まず、比表面積や表面 形態の異なる試料を準備するために、ヘマタイト、マグネタイト、ウスタイトをそれぞれ還元雰囲気を変化させ て還元した。その結果、還元条件が異なることで試料表面性状が大きく異なる試料の作製が可能となった。
これらの試料を用いて、反応温度は600℃、ガス組成は50vol%CO-50vol%H2で炭素析出挙動を調査した。
実験後試料のSEM観察により、実験前の還元鉄比表面積が大きい試料から炭素析出過程で生成した鉄 微粒子は細かく、生成数が多くなることを明らかにした。また、鉄微粒子の生成数が多くなるほど炭素析出量 が大きくなることを明らかにした。以上の結果を踏まえて鉄微粒子の生成メカニズムについて考察するととも に、炭素析出反応速度には鉄触媒表面性状の際に起因する鉄微粒子の生成反応挙動が影響を与えてい ることを明らかにした。
第四章では鉄を触媒として生成した析出炭素の物理的性状およびガス化反応挙動について検討を加え た。このため、CO-H2混合ガスからの析出炭素を用いて種々の条件でのガス化反応実験を行った。熱天秤 を用いた重量変化測定結果から、ガス化反応速度は800℃~1000℃の温度範囲で温度依存性を持ち、
CO2濃度が高いほどガス化反応速度が大きくなることを示した。ラマン分光分析装置による炭素結晶性測定 から、ガス化の進行においては欠陥をもつグラファイト構造が優先的にガス化されることを明らかにした。また、
XRDによるカーボンの半値幅測定からガス化前後でのカーボンの結晶子サイズを測定し、CO-H2混合ガス からの析出炭素のガス化反応には結晶学的選択性があることを明らかにした。また、試料内部に存在する鉄 微粒子の挙動に関してXRD分析およびSEM観察結果により、ガス化反応の進行に伴って鉄微粒子の焼結 および酸化反応が進行することを明らかにした。以上のようなガス化反応形態を考慮した上で、析出炭素の ガス化反応速度を定量的に評価し、Langmuir-Hinshelwood式により鉄を触媒とした析出炭素のガス化反 応速度の表現が可能であることを明らかにした。
第五章は本研究で得られた知見を総括し、本論文の結論とした。