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<巻頭言>『異文化』に寄せて

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Academic year: 2021

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<巻頭言>『異文化』に寄せて

著者 栩木 玲子

出版者 法政大学国際文化学部

雑誌名 異文化

巻 17

ページ 2‑3

発行年 2016‑04‑01

URL http://hdl.handle.net/10114/12681

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『異文化』に寄せて

 『異文化』は今年で 17 号目、国際文化学部が開設された翌年の 2000 年以来、体裁を変えな がら毎年発行されてきました。タイトルに用いていることからもお分かりのとおり、私たちにとって異 文化は忌避や排除の対象ではなく、むしろ豊かさの証し。異なる文化との接触を通して成長し、問 題が生じた場合でもあきらめずに対話と交流の回路を見い出すこと。それが私たちの目標です。

 ただし言うは易く行うは難し -- 文化が違えば、考え方や価値観など、存在が依って立つ基盤そ のものが異なる可能性があります。つまり自分自身が根こそぎひっくり返され、否定されるリスクが 潜んでいるのです。そこにあえて踏み込んでコミュニケーションを成立させようとすれば、ことばの 力に加えて(あるいはそれ以上に?)柔軟な知性と精神力が必要でしょう。それらを鍛えるのは想 像以上にたいへんです。(もちろん文化が異なっても共通点の方が多く、昔からの友人同士のように 楽にコミュニケーションが成り立つこともあるわけですが。)

 そのために学部生は2年次秋学期にはSA(Study Abroad)プログラムで海外へ留学するんでしょ う?・・・・・・ そう思った方もいるかもしれません。でも「異文化=外国」と限定してしまうのはちょっ と気が早いかも。海外へ出るまでもなく、私たちのまわりにはすでにいくつもの「異文化」が息づ いています。若者文化、下町文化、地域文化、社風や校風、家風などなど、ローカルな文化は数 えだしたらキリがありません。さらに「異文化」は、理論や思想などといった抽象的なかたちをとる こともあるでしょう。つまり異なる文化を背景にした他者との出会いは、どこにでもある。そうした 出会いを繰り返しながら、私たちはボーダーを踏み越える困難と快感を知り、結果として変容し、

成長していくことができるのではないでしょうか。

 その試みの記録が、論考や報告としてここに収められています。前号同様、今号でも卒業生・

大学院生・学部生を編集スタッフに迎え、内容とともに紙面づくりもいっそう充実しました。でも今 国際文化学部長 栩木玲子

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3 号なにより誇らしく、同時にひどく悲しいのは 2016 年 1 月 21 日に亡くなられた玄宜青先生のご遺 稿が掲載されることでしょう。

 玄先生が中国語の兼任講師として初めて法政大学で教鞭を執ったのが 1990 年。それから 6 年 後の 1996 年には第一教養部の専任講師、1998 年には助教授になられます。1999 年、国際文 化学部の創設とともに本学部に移籍。着任以来、おもに市ヶ谷地区の中国語教育に貢献され、学 部の壁を越えて多くの学生たちを育ててくださいました。SA 中国の担当者としても長年ご尽力いた だいています。そのご指導はときに厳しく、でもその厳しさは学生たちを大切に思うからこそ -- そ んな先生のお気持ちを一番分かっていたのは、当の学生たちでした。

 また先生がものした中国語テキストは評価・評判ともに高く、近年では『話してみたい 中国語 スピーキング倶楽部』(朝日出版社、2000 年)、『中国語教室 Q&A 101』(大修館書店 2000 年)、『新 訂・語法ルール 66 漢語精粋』(朝日出版社、2009 年)、『新訂・リピート中国語』(朝日出版社、

2010 年)、『高校版 語法ルール 66』(朝日出版社、2015 年)などが出版されています。こうし たテキストで中国語のおもしろさや奥深さに目覚めた読者は、年齢を問わず多かったに違いありま せん。

 今号の『異文化』(論文編)に収められている玄先生の「中国語の “ 适合 ”と “ 合适 ” など」では、

類似しつつ異なる二語の意味用法がとても丁寧に論じられています。門外漢ながら推察するに、本 論考の根底にあるのは中国語話者ではない者にもこの違いを伝えたいという、玄先生の思いではな いでしょうか。それはまさに異なる文化間の橋渡しの作業。他者と出会ったときのコミュニケーショ ンをより滑らかに -- そう願い続けた玄宜青先生のご冥福を、学部メンバー一同お祈りしております。

 玄先生、これまでほんとうにどうもありがとうございました。

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