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『 新 古 今 和 歌 集

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全文

(1)

『 新 古 今 和 歌 集

』 の 配 列 に 対 す る 修 辞 技 巧 の 役 割

― 歌 枕

・ 体 言 止 め

・ 本 歌 取 り を 中 心 に

同 志 社 大 学 大 学 院 文 学 研 究 科 国 文 学 専 攻 博 士 後 期 課 程 ジ ョ ル ダ ー ノ

(2)

目 次 凡 例

・ 一 序 文

・ 三 第 一 章

『 新 古 今 和 歌 集

』 に お け る 歌 枕

は じ め に

・ 七

第 一 節

、 歌 枕 の 広 義 と 狭 義

・ 八

第 二 節

「 新 古 今 時 代

」 の

「 名 所 歌 枕

」 の 意 義

・ 一

、 土 地 に 関 す る 伝 承 に 起 源 が あ る 歌 枕

・ 一 二

、 場 所 の 地 理 的 な 特 徴 ま た は

、 場 所 の 名 に 起 源 が あ る 歌 枕

・ 一 三

第 三 節

、 歌 枕 の 意 義 変 化 と 歌 風 変 遷

・ 一 六

第 四 節

、 先 行 研 究 の 再 検 討

・ 一 九

第 五 節

『 新 古 今 集

』 の 歌 枕

・ 二 二

第 六 節

『 新 古 今 集

』 に 於 け る 歌 枕 の 配 分 と 配 列

・ 四 九

イ 歌 枕 を 使 う 和 歌 の 配 分

・ 五

ロ 歌 枕 を 使 う 和 歌 の 配 列

・ 五 二

ま と め

・ 六

〇 第

二 章

『 新 古 今 和 歌 集

』 に お け る 体 言 止 め

は じ め に

・ 六 三

第 一 節

『 新 古 今 集

』 の 歌 人 と 体 言 止 め

(3)

第 二 節

、 体 言 止 め を 使 う 和 歌 の 配 分 と 連 続

・ 七

第 三 節

、 体 言 止 め と し て 使 わ れ る 言 葉

― そ の 一

・ 語 彙 の 分 類 を 中 心 に

・ 七 九

第 四 節

、 体 言 止 め と し て 使 わ れ る 言 葉

― そ の 二

・ 配 列 を 中 心 に

・ 八 九

第 五 節

、 体 言 止 め の 構 成 要 素

「 時

「 場

「 物

・ 九 七

第 六 節

、 体 言 止 め を 使 う 和 歌 の 統 語 論 上 構 造

・ 一

〇 六

ま と め

・ 一 一 五 第

三 章

『 新 古 今 和 歌 集

』 に お け る 本 歌 取 り

は じ め に

・ 一 一 八

第 一 節

、 本 歌 取 り の 定 義

・ 一 一 九

イ 文 学 的 技 巧 と し て の 本 歌 取 り の 発 展

・ 一 一 九

「 本 歌

」 と

「 参 考 歌

・ 一 二 二

第 二 節

『 新 古 今 集

』 で 見 ら れ る

『 古 今 集

』 の 痕 跡

・ 一 二 四

第 三 節

、 本 歌 と し て の

『 古 今 集

』 の 名 歌

・ 一 二 七 第 四 節

、 二 首 の 本 歌 を 取 る 和 歌

・ 一 三 三

第 五 節

、 和 歌 連 続 の 配 列 基 準 と し て の 本 歌 取 り

・ 一 三 八

ま と め

・ 一 四 六 結

(4)

資 料

① 新 古 今 和 歌 集 の 歌 枕

― 五 十 音 順

・ 一 五 一

② 歌 枕 を 使 う 和 歌 一 覧

・ 一 五 九

③ 新 古 今 和 歌 集 の 歌 枕

― 頻 度

・ 五 十 音 順 に

・ 一 七 八

④ 体 言 止 め を 使 う 和 歌

・ 一 八 五

⑤ 体 言 止 め を 使 う 歌 人

・ 二

〇 一

⑥ 体 言 止 め と し て 使 わ れ る 言 葉

・ 二 一 四

⑦ 体 言 止 め の 構 成 要 素

「 時

「 場

「 物

・ 二 二 四

⑧ 体 言 止 め を 使 う 和 歌 の 統 語 論 上 構 造

・ 二 三 三

『 新 古 今 和 歌 集

』 に お け る 本 歌 取

・ 二 四 九

⑩ 本 歌 の 出 典

・ 二 六 三 参 考 文 献

(5)

1

凡 例

調 査 は

、 伝 蜷 川 新 右 衛 門 尉 親 元 筆

『 新 古 今 和 歌 集

』 列 帖 装 写 本 二 帖 を 底 本 と し た

、 久 保 田 淳 校 注

『 新 古 今 和 歌 集

』 二 冊

、 新 潮 社

、1979.3

・9

、 に よ る

『 新 古 今 和 歌 集

』 以 外 の 和 歌 の 本 文 は

、 次 の テ キ ス ト に よ る

『 伊 勢 物 語

』、 片 桐 洋 一 校 注

・ 訳

『 竹 取 物 語

』 福 井 貞 助 校 注

・ 訳

『 伊 勢 物 語

、 高 橋 正 治 校 注

・ 訳

『 大 和 物 語

』 清 水 好 子 校 注

・ 訳

『 平 中 物 語

( 新 編 日 本 古 典 文 学 全 集

) 小 学 館

、1994.12

『 金 葉 和 歌 集

、 川 村 晃 生

、 柏 木 由 夫

、 工 藤 重 矩 校 注

『 金 葉 和 歌 集

・ 詞 花 和 歌 集

』(

新 日 本 古 典 文 学 大 系)

岩 波 書 店

、1989.9

『 源 氏 物 語

』、 阿 部 秋 生[

ほ か]

校 注

・ 訳

『 源 氏 物 語

( 日 本 古 典 文 学 全 集

) 六 冊

、 小 学 館

、1994.3-

1998.4

『 古 今 和 歌 集

、 小 島 憲 之

、 新 井 栄 蔵 校 注

『 古 今 和 歌 集

』(

新 日 本 古 典 文 学 大 系)

、 岩 波 書 店

1989.2

『 後 撰 和 歌 集

、 片 桐 洋 一 校 注

『 後 撰 和 歌 集

』(

新 日 本 古 典 文 学 大 系)

岩 波 書 店

、1990.4

『 詞 花 和 歌 集

、 川 村 晃 生

、 柏 木 由 夫

、 工 藤 重 矩 校 注

『 金 葉 和 歌 集

・ 詞 花 和 歌 集

』(

新 日 本 古 典 文 学 大 系)

岩 波 書 店

、1989.9

『 拾 遺 和 歌 集

、 久 保 田 淳

、 平 田 喜 信 校 注

『 後 拾 遺 和 歌 集

』(

新 日 本 古 典 文 学 大 系)

岩 波 書 店

1994.4

(6)

2

『 千 載 和 歌 集

、 片 野 達 郎

、 松 野 陽 一 校 注

『 千 載 和 歌 集

』(

新 日 本 古 典 文 学 大 系)

岩 波 書 店

、1993.4

『 万 葉 集

』、 佐 竹 昭 広 [

ほ か]

校 注

『 萬 葉 集

』(

新 日 本 古 典 文 学 大 系)

、 四 冊

、 岩 波 書 店

、1999.5-

2003.10

(7)

3

序 文

『 新 古 今 和 歌 雄

』 の 編 纂 過 程 は

、 後 鳥 羽 院

( 在 位- 寿 永 二 年

( 一 一 八 三 年

) 八 月 二

〇 日- 建 久 九 年

( 一 一 九 八 年

) 一 月 十 一 日

) の 勅 命 に よ っ て

、 建 仁 元 年

( 一 二

〇 一 年

) 十 一 月 三 日 に 開 始 し た

。 本 歌 雄 の 編 纂 事 業 の た め に

、 先 に 設 立 さ れ た 和 歌 所 の 寄 人 中 か ら

、 六 人 の 撰 者 が 選 ば れ た

。 し か し

、 撰 者 よ り も 後 鳥 羽 院 の 方 が 編 雄 権 は 強 か っ た と 藤 平 春 男 氏 は 指 摘 し て い る

。 最 初 の 選 歌 草 稿 は 約 一 年 余 院 の 厳 密 な 詮 衡 を 経 て 部 類 に 廻 さ れ

、 そ の 部 類 も 屢 々 院 の 指 示 を 得 て 行 わ れ て お り

、 か つ 部 類 終 功 前 か ら 切 り 続 き が 概 ね 院 の 指 示 で 行 わ れ て

「 出 入 如 反 掌

『 明 月 記

』 承 元 元

・ 一 一

・ 八

) で あ っ た か ら 撰 者 の 直 接 の 編 雄 権 は 甚 だ 弱 か っ た と 想 像 さ れ る

。(

1969.1

p.312-313) 小 島 吉 雂 氏 は

、 源 家 長 の

『 家 長 日 記

』 や 藤 原 定 家 の

『 明 月 記

』 な ど の 当 時 の 資 料 を 調 査 し

『 新 古 今 和 歌 雄

』 に 精 選 し た 和 歌 を 部 類 す る 時

、 撰 者 た ち が 後 鳥 羽 院 の 決 め た 幾 つ か の 特 定 の 規 則 を 实 行 し な け れ ば な ら な か っ た と 述 べ た

。 詳 し く 言 う と

① 前 の 勅 撰 和 歌 雄 の 和 歌 を 入 雄 し て は い け な い こ と

② 編 纂 当 時 の 和 歌 を 豊 富 に 入 れ る こ と

③ 前 の 勅 撰 雄 と 私 家 雄 の 例 に 従 っ て

、 季 節 部 と 恋 部 の 和 歌 配 列 に 特 に 注 意 を 払 う こ と

④ 季 節 部 の 和 歌 配 列 を 決 定 す る と き

、 そ れ ぞ れ の 和 歌 の 要 素 を 利 用 し

、 四 季 折 々 の リ ア ル な 移 り 変 わ り を 忠 实 に 再 現 す る こ と

(

1980.4

p.148) 十 世 紀 か ら 十 四 世 紀 ま で の 歌 雄 と 百 首 歌 の 配 列 基 準 を 論 考 し た 小 西 甚 一 氏 は

『 新 古 今 和 歌 雄

』 の 撰 者 た ち は

、 和 歌 配 列 が 本 歌 雄 の 享 受 者 に 時 間 の 流 れ の 印 象 を 与 え る よ う に

、 和 歌 を 並 べ た と い う こ と を 述 べ た

。( Konishi Jin'ichi

H. Brower and Earl Miner Robert

(ed.)

-1350"Jap00. 9.DAy, oetrt PuroCe esan ipld P Pn:sioesgrroanf n iociatossArinc oesin of Integration "cesnthologies and Sequen A

au Stticsiaf Al ornHu Jordarvadies

21 1958

p.67-127) 周 知 の よ う に

、 和 歌 配 列 基 準 の 立 場 か ら 考 察 す る と

『 新 古 今 和 歌 雄

』 の 最 初 の 六 巻( 四 季 部) は 古 典 和 歌 の 並 べ 方 の 技 術 に お い て 頂 点 に 達 し た と 見 な さ れ て い る(

,Staord University Press, nfStaord, California, 1961nf neBrower H. Robert, Mir Ey, arl, Japanese Court Poetr

324-329)

。 そ の 事 实 は

、 藤 原 俊 成 の 教 え に 沿 っ た も の と 考 え ら れ る で あ ろ う

。 そ れ は

、 俊 成 が 名 作 の 誉 れ 高 い

『 古 来 風 躰 抄

』 で 次 の よ う に 述 べ た か ら で あ る

(8)

4

歳 月 の 改 ま り 変 る 花 紅 葉 に つ け て も

、 歌 の 姿 詞 は 思 ひ よ そ へ ら れ

、 そ の 程

、 品 品 も 見 る や う に 覚 ゆ べ き も の な り

。 春 の 初 め

、 雪 の う ち よ り 吹 き 出 で た る 軒 近 き 紅 梅

、 賤 の 垣 根 の 梅 も

、 色 は こ と ご と な が ら

、 匂 ひ は 同 じ く 手 折 る 袖 に も 移 り

、 薫 り 身 に し む 心 地 す る を

、 花 の 盛 り に な り ぬ れ ば

、 吉 野 の 山 の 桜 は 残 れ る 雪 に ま が ひ

、 ま し て 雲 居 の 花 の 盛 り は

、 白 雪 の 重 な れ る か と 心 も 及 び 難 き を

、 春 深 く な る ま ま に は

、 井 手 の 山 吹 に 蛙 の 鳴 き

、 岸 の 藤 波 に 夕 べ の 鶯 春 の 名 残 惜 し み 顔 な る な ど も

、 さ ま ざ ま 身 に し む 心 地 す る を

、 岩 垣 沼 の 杜 若

、 山 下 照 ら す 岩 躑 躅 な ど ま で

、 程 に つ け て は 心 移 ら ぬ に あ ら ず

。 卯 月 に も な れ ば 垣 根 の 卯 の 花 に 郭 公 の う ち し の び

、 籬 の 撫 子 の 朝 露 に 開 け た る 程 な ど は

、 ま た 類 忘 れ ぬ べ き を

、 さ ま で な ら ぬ 道 の 辺 の 楝 の 花 の 風 に う ち 薫 り

、 庭 の 紫 陽 花 の よ ひ ら に 置 け る 露 に

、 夕 月 夜 の ほ の か に 宿 れ る な ど は い み じ く 捨 て 難 く 見 ゆ る を

、 五 月 の 三 日

、 九 重 の う ち を 思 ひ 出 づ れ ば

、 橘 の う ち 薫 れ る 軒 近 く

、 菖 蒲 の 御 輿 か き た て た る に

、 御 階 の 前 よ り 南 ざ ま に

、 何 と な き 時 の 花 を 左 右 に 立 て 渡 し た る 程

、 菖 蒲 の 香 に 薫 り あ ひ た る 程 な ど

、 た と へ ん か た な き も の な り

。 夏 深 く な り ぬ る 夕 暮 に

、 池 の 蓮 の 色 々 開 け た る は

、 水 さ へ 薫 る 心 地 す る な ど は

、 こ の 世 の ほ か ま で 思 ひ や ら る る も の な り

。 秋 の 風 立 ち ぬ れ ば

、 籬 の 女 郎 花 に 虫 の 声 々 露 け く

、 野 辺 の 秋 萩 に 鹿 の 妻 問 へ る な ど は

、 さ ら に い ふ べ き に も あ ら ず

。 紫 苑

、 藤 袴 な ど は さ ま で な ら ぬ も

、 昔 を 忘 れ ず 夢 の 枕 に 通 ひ け ん も あ は れ 浅 か ら ず

。 秋 深 く

、 や う や う 時 雤 ゆ く ま ま に は

、 四 方 の 山 の 梢 色 深 く な り ゆ き

、 籬 の 菊

、 霜 に 移 ろ ひ ゆ く な ど は

、 い ふ べ き に も あ ら ぬ を

、 外 山 の 時 雤 も こ と に 濡 ら し け る に や

、 白 膠 木 の 紅 葉 の 分 き て 色 深 き を 折 り て 見 れ ば

、 枝 ざ し な ど は な つ か し か ら ず な が ら

、 色 の 深 さ も あ は れ に

、 櫨 の 立 枝

、 檀 の 紅 葉 な ど は

、 安 達 の 原 ま で 思 ひ や ら れ

、 ま し て 楓 の 紅 葉 は

、 葉 の 様

、 枝

、 茎 ま で

、 近 く て 見 る さ へ あ は れ に な つ か し く ぞ 見 え た る

。 冬 に な り ゆ く ま ま に は

、 蘆 の 枯 葉 に 霜 置 き 迷 ひ

、 水 際 の 氷 に 閉 ぢ ら れ

、 ま し て 雪 降 り ぬ れ ば

、 巌 に も 咲 く 花 と 疑 は れ

、 終 の 緑 の 松 の 上 の 雪 な ど は

、 年 さ へ 残 り な く な る に つ け て も

、 袖 の 氷 も 見 に し み ま さ る 心

(9)

5

地 し て こ そ は 覚 ゆ る や う に

、 歌 の 姿 心 も

、 た だ か や う に よ そ へ て 心 得 れ ば

、 ま こ と に 姿 高 く

、 清 げ に も

、 艶 に も 優 に も

、 ま た さ ま で な ら ね ど

、 ひ と ふ し を か し き 様 も

、 ほ ど ほ ど に つ け つ つ

、 よ そ へ ら れ ぬ べ き 事 な り

。(

1975.4

p.371-373) 小 西 氏 は

『 新 古 今 和 歌 雄

』 の 配 列 で 他 の 特 徴 も 見 ら れ る と 論 考 す る

。 例 え ば

、 或 る 意 味 で

、 羇 旅 部 で は 空 間 的 な 動 き が 感 じ ら れ

、 恋 部 で は 人 間 の 心 の 動 き が 感 じ ら れ る

。( Konishi Jin'ichi

an (ed.inerl Mar Eder Rwro. BHrt beo)

-1350"CSequences of Japanese oanurt Poetry, A.D. 900d ion:Association and Progressio Pn rinciples of Integratgiesloonth "in A

l odu Stticsiaf Aa Hrnu Jordarvaies

21

1958

p.67-127) 要 す る に

『 新 古 今 和 歌 雄

』 と は 単 な る 和 歌 ア ン ソ ロ ジ ー で は な く

、 強 い 一 貫 性 を 持 ち

、 最 初 か ら 最 後 ま で 通 読 す る こ と が 出 来 る 優 れ た 作 品 だ と 認 め な け れ ば な ら な い

。 し か し

『 新 古 今 和 歌 雄

』 を 詳 細 に 調 べ る と

、 撰 者 た ち が 和 歌 配 列 を 決 定 し た 時

、 小 西 氏 の 割 り 出 し た 基 準

( 時 間 の 流 れ の 印 象

・ 空 間 的 な 動 き

・ 人 間 の 心 の 動 き

) に 限 っ た わ け で は な い と い う 強 い 印 象 を 受 け る

。 そ れ は

、 幾 つ か の 和 歌 連 続

、 す な わ ち 連 続 的 に 並 べ ら れ た 和 歌

、 の 一 貫 性 を 高 め る 他 の 要 素 も 認 め ら れ る か ら で あ る

。 本 雄 に 対 し て 特 に 重 要 な 役 割 を 果 た す も の は

、 三 つ あ る と 考 え ら れ る

。 そ れ ら は

「 歌 枕

」 と

「 体 言 止 め

」 と

「 本 歌 取 り

」 で あ る

。 そ の 修 辞 技 巧 の 痕 跡 は 古 代 和 歌 に も 見 ら れ る が

、 い わ ゆ る

「 新 古 今 時 代

」 を そ の 修 辞 技 巧 の 最 高 峰 と 見 な し て も よ か ろ う

。 本 研 究 に お い て

『 新 古 今 和 歌 雄

』 の 和 歌 の 配 列 に 対 す る 上 記 の 修 辞 技 巧 の 効 用 を 分 析 し

、 そ れ ら は 撰 者 た ち の 撰 定 に 影 響 を 及 ぼ し た か ど う か を 明 ら か に す る

。 さ て

、 本 学 位 論 文 の 構 成 を 説 明 す る

。 ま ず 第 一 章 で は

『 新 古 今 雄

』 に お け る 歌 枕 を 調 査 し

、 ど の よ う な 歌 枕 が 詠 ま れ て い る か と い う こ と を 明 ら か に す る

。 そ し て

、 そ の 歌 枕 は そ れ ぞ れ の 使 い 方 に よ っ て 分 類 さ れ る か ど う か と い う こ と も 解 き 明 か す

。 こ の よ う に

、 ど の グ ル ー プ の 歌 枕 が 詠 ま れ て い る か と い う こ と に よ っ て

、 そ れ ぞ れ の 和 歌 連 続 の 調 子 が 変 わ る か 変 わ ら な い か と い う こ と を 明 確 に す る

。 す な わ ち

、 歌 枕 の 存 在 は

『 新 古 今 雄

』 の 和 歌 配 列 に ど の 様 な 影 響 を 与 え る か を 明 ら か に す る

(10)

6

第 二 章 で は

『 新 古 今 雄

』 に お け る 体 言 止 め を 考 察 す る

。 よ り 詳 し く 言 え ば

『 新 古 今 雄

』 に お け る 体 言 止 め を 使 う 和 歌 は ど の よ う に 配 分 さ れ て い る か

、 体 言 止 め の 語 句 と し て 使 わ れ る 言 葉 は 基 本 的 に ど の よ う な 言 葉 で あ る か

、 そ し て 第 五 句 で 同 じ 言 葉 や イ メ ー ジ を 使 う 和 歌 が 連 続 す る 場 合

、 そ の 連 続 す る 和 歌 が 本 歌 雄 の 享 受 者 に ど の よ う な 印 象 を 与 え て い る か

、 さ ら に

、 統 語 構 造

、 す な わ ち 文 中 の 単 語

・ 語 群 の 配 列 様 式 と そ の 機 能 を 中 心 に し て 調 査 を し

、 統 語 論 上 構 造 が 共 通 す る 和 歌 が 連 続 的 に 並 べ ら れ る 場 合 は 単 調 な 和 歌 配 列 に な る か

、 あ る い は ダ イ ナ ミ ッ ク な そ し て 感 動 さ せ る 和 歌 配 列 に な る か

、 と い う よ う な 点 を 明 ら か に す る

。 最 後 に 第 三 章 で は

『 新 古 今 雄

』 に お け る 本 歌 取 り を 考 察 す る

。 先 ず

『 新 古 今 雄

』 で 本 歌 と し て ど の よ う な 和 歌 が 採 ら れ た か

、 そ し て い わ ゆ る 新 古 今 時 代 に な る と 前 時 代 の 勅 撰 和 歌 雄 の 中 で 特 に 重 視 さ れ た 勅 撰 雄 が あ っ た か

、 と い う こ と を 明 ら か に す る

。 そ の 後

、 本 歌 取 り が

『 新 古 今 雄

』 の 配 列 に 対 し て ど の よ う な 役 割 を 果 た し て い た か

、 つ ま り 撰 者 た ち が 和 歌 配 列 を 決 定 し た 時

、 本 歌 取 り の 存 在 に も 注 目 し た か ど う か を 明 ら か に す る

。 こ の よ う に

『 新 古 今 雄

』 の 和 歌 配 列 に

「 歌 枕

」 と

「 体 言 止 め

」 と

「 本 歌 取 り

」 と い う よ う な 修 辞 技 巧 は ど の 様 な 影 響 を 与 え た か と い う こ と を 明 確 に す る

(11)

7

第 一 章

『 新 古 今 和 歌 雄

』 に お け る 歌 枕

は じ め に 本 章 の 为 な 目 的 は

『 新 古 今 和 歌 雄

( 以 降

『 新 古 今 雄

) に 於 け る 歌 枕 が 本 勅 撰 雄 に 対 し て ど の よ う な 役 割 を 果 た し て い る の か を 解 明 す る

。 そ れ を 明 ら か に す る た め に は

、 調 べ な け れ ば な ら な い 点 が 二 つ あ る

。 一 つ は

『 新 古 今 雄

』 の 歌 枕 の 一 覧 を 作 り な が ら

、 一 番 代 表 的 な 歌 枕 は ど れ か

、 さ ら に

、 そ れ ら を 使 う 和 歌 の 特 徴 は 何 か と い う こ と だ

。 も う 一 つ は

、 歌 枕 は 和 歌 を 撰 入

・ 配 分

・ 配 列 し た 寄 人 の 選 択 に 対 し て な ん ら か の 役 割 を 果 た し て い た か ど う か と い う こ と で あ る

。 歌 枕 は 平 安 時 代 の 初 期 か ら 歌 詠 み の 大 切 な 要 素 と し て 考 え ら れ て い た も の の

、 当 時 の 歌 学 書 で は 歌 雄 に 撰 入 さ れ た 和 歌 の 配 列

・ 配 分 と 歌 枕 と の 関 係 は 殆 ど 論 じ ら れ て い な い

。 し か し

『 新 古 今 雄

』 を 通 読 し て み れ ば

、 歌 枕 が 他 の 技 巧 と と も に

、 和 歌 の 配 分 と 配 列 に 大 き な 影 響 を 及 ぼ し て い る と い う 印 象 を 強 く 感 じ る

。 詳 し く は 後 述 す る よ う に

「 歌 枕

」 と は 和 歌 的 な 意 義 を 持 つ 地 名 だ っ た

。 そ の 意 義 は

、 地 理 的 な 特 徴 が あ る と い う こ と

、 ま た は 名 前 が 特 徴 的 で あ る と い う こ と

、 そ し て そ の 場 に 関 す る 民 話 が あ る と い う こ と に 由 来 す る も の で あ る

。 そ れ を

『 新 古 今 雄

』 を 編 纂 し た 歌 人 は

、 和 歌 の 配 分 と 配 列 を 定 め た 時

、 ど の 点 ま で 認 識 し て 生 か し た の だ ろ う か

。 残 念 だ が

、 そ の 質 問 に 答 え る の に 当 時 の 文 献 は 余 り 役 に 立 た な い

。 な の で

、 歌 枕 を 中 心 に し

『 新 古 今 雄

』 の 和 歌 の 配 分 と 配 列 を 具 体 的 に 分 析 す る こ と し か な い

。 も ち ろ ん

、 歌 枕 の 役 割 を 考 察 す る 前 に

、 歌 枕 の 本 質 を 論 究 し な け れ ば な ら ぬ と 思 う

。 さ て

、 本 章 の 構 成 を 次 に 述 べ る

。 第 一 節 で は

『 能 因 歌 枕

』 な ど の よ う な 当 時 の 作 品 を 通 し

、 歌 枕 を 定 義 す る

。 第 二 節 で は

、 い く つ か の 例 歌 を 挙 げ な が ら い わ ゆ る

「 新 古 今 時 代

」 の

「 名 所 歌 枕

」 の 意 義 を 明 確 に し て み る

。 そ し て 第 三 節 で は

、 時 代 が 経 つ と と も に 歌 枕 意 義 と 宮 廷 の 歌 風 は ど う い う 風 に 変 わ っ て き た か

、 と い う こ と を 論 じ

(12)

8

。 第 四 節 は

、 先 行 研 究 の 再 検 討 を 中 心 に す る

。 第 五 節 で は

『 新 古 今 雄

』 に 於 け る 歌 枕 に 関 す る 調 査 の 後

、 本 勅 撰 雄 の 代 表 的 な 歌 枕 を 考 察 す る

。 最 後 に

、 第 六 節 で は

『 新 古 今 雄

』 に 於 け る 歌 枕 の 配 分 と 配 列 を 詳 述 す る

。 こ の よ う な 過 程 か ら

『 新 古 今 雄

』 に 対 す る 歌 枕 の 影 響 を 明 瞭 に し よ う と す る

。 第

一 節

、 歌 枕 の 広 義 と 狭 義 歌 枕 と は 日 本 古 典 和 歌 の 特 有 の 要 素 で あ る

。 歌 枕 が 使 わ れ る よ う に な っ た の は

「 万 葉 時 代

」 か ら だ と 考 え ら れ て い る が

、 和 歌 技 巧 と し て の 発 展 が 頂 点 に 達 し た の は

、 い わ ゆ る

「 新 古 今 時 代

」 だ と 言 え る だ ろ う

。(

39(4)

1974.4

p.53-61) 現 在

「 歌 枕

」 と い う 語 は 和 歌 に 詠 ま れ る 名 所 を 意 味 す る

。 し か し

、 平 安 時 代 の

『 能 因 歌 枕

』 や

『 梁 塵 秘 抄

』 な ど の 作 品 を 調 べ る と

、 当 時 は

「 歌 枕

」 の 意 味 範 囲 は こ れ よ り も っ と 広 か っ た こ と が 分 か る

。 す な わ ち 当 時

「 歌 枕

」 と は 歌 に 詠 ま れ た

「 名 所

」 と い う 狭 義 に 限 ら ず

、 単 な る 歌 語 と い う 広 義 で も 使 わ れ て い た の だ

。 こ の こ と を 明 ら か に す る た め に

、 歌 枕 に 関 す る 一 番 古 い 作 品 で あ る 能 因 法 師 の 有 名 な

『 能 因 歌 枕

』 と い う 歌 学 書 の 一 節 を 挙 げ る

。 能 因 は

、 関 を よ ま ば

、 あ ふ さ か の 関

、 白 河 の 関

、 衣 の せ き

、 ふ は の せ き な ど を 讀 べ し

。 河 を よ ま ば

、 よ し の 川

、 た つ た 川

、 お ほ 井 川 な ど を よ む べ し

。 橋 を よ ま ば

、 は に は の は し

、 は ま な の は し

、 さ の ゝ 舟 は し と も 讀 べ し

。 山 を よ ま ば

、 吉 野 山

、 あ さ く ら 山

、 み か さ 山

、 た つ た や ま な ど よ む べ し

。 森 を よ ま む に は

、 神 な び の も り

、 い く 田 の も り

、 し の だ の も り な ど よ む べ し

。 瀧 を よ ま ば

、 い は な み の た き

、 お と な し の た き な ど よ む べ し

。 野 を よ ま ば

、 さ が 野

、 か た 野

、 み や ぎ 野

、 春 日 野 な ど よ む べ し

(13)

9

里 を 讀 ば

、 し の ぶ の 里

、 伏 見 の 里

、 い く た の さ と な ど よ む べ し

。 と 書 い た が

、 天 地 を ば

、 あ め つ ち と い ふ

。 道

た ま ほ こ と い ふ

( 略

。 夜 ぬ ば た ま と い ふ

( 略

。 山 あ し び き と い ふ

( 略

。 日 あ か ね さ す と い ふ

( 略

。 朔 日

( ツ イ タ チ

) ゆ み は り と い ふ

。 月 ひ さ か た と い ふ

( 略

。 晦

( ツ ゴ モ リ

あ り あ け と い ふ

。 風

は る か ぜ

、 あ き か ぜ

、 と き に し た が ふ

(

1994.3

p.3-5) な ど と も 書 い た

。 こ の 能 因 の 教 え に よ る と

、 一 方 で は 関

、 川

、 山 の よ う な と こ ろ を 和 歌 の 題 に す る 場 合

、 そ れ ぞ れ の 場 面 に 相 忚 し い と さ れ る 名 所 は あ る 程 度 限 ら れ て い た と い う

。 例 え ば

、 関 の 場 合 は

「 逢 坂 の 関

」 や

「 白 河 の 関

」 な ど が 使 え る

。 或 い は

、 川 を 詠 む 時

「 吉 野 の 川

」 や

「 立 田 の 川

」 な ど が 使 え る

。 し か し 他 方 で 能 因 は

、 天 地 を 示 す な ら

「 あ め つ ち

、 道 な ら

「 た ま ほ こ

」 な ど の よ う な 表 現 を 使 っ た 方 が い い と 指 示 を 下 し て い る

。 同 様 に

、 後 白 河 天 皇 の 撰 に よ る

『 梁 塵 秘 抄

』 に も

近 江 に を か し き 歌 枕 老 曾 轟 蒲 生 野 布 施 の 池 安 吉 の 橋 伊 香 具 の 野 余 吾 の 湖 の 志 賀 の 浦 に 新 羅 が 建 て た り し 持 仏 堂 の 金 の 柱

( 巻 二

・ 三 二 五

) と い う よ う な 指 示 が あ り な が ら

春 の 初 め の 歌 枕 霞 た な び く 吉 野 山 鶯 佐 保 姫 翁 草 花 を 見 す て て 帰 る 雁

( 巻 一

・ 一 三

) と い う 歌 も 載 せ ら れ て お り

、 平 安 後 期 で は 地 名 と 地 名 以 外 の も の が

、 一 括 し て 歌 枕 と 呼 ば れ て い た こ と が 分 か る

。 な ぜ な ら

、 後 者 の 歌 に よ れ ば

「 霞 た な び く 吉 野 山

」 は も ち ろ ん だ が

「 鶯

「 佐 保 姫

「 翁 草

「 花 を 見 す て て 帰 る 雁

」 と い う 歌 語 も 歌 枕 と 呼 ば れ る か ら で あ る

。 し か し

、 本 研 究 の 目 的 は

『 新 古 今 和 歌 雄

』 に お け る

「 名 所 歌 枕

」 と そ の 影 響 を 調 べ る と い う こ と で あ る た め

、 こ こ で は

、 片 桐 洋 一 と 他 の 学 者 の 例 に 倣 い

、 狭 義 の 歌 枕

、 す な わ ち

「 名 所 歌 枕

」 を 歌 枕 の 定 義 と す る

。(

参照

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