研究論文
中国の会社法 ・ 外資法 とコーポレー トガバナンス
丹 野 勲
は じめに
中国の会社法は、1994年7月に中華人民共和 国公 司法 として施行 され、1999年 と2004年 に一 部改正 された。会社法 は、2005年10月に大幅に 改正 を し2006年 1月施行 した(1)。
外資系企業 については、 「中外合資経営企業 法」 に よる合弁企業 、 「中外合作経営企業法」
による合作企業、 「外資独資企業法」による100
%外資企業、 「外商投資株式会社規定」による外 商投資株式会社 な どが存在 してい る。 中国会社 法では、外資系企業 にも適用 され るが、中外合 資経営企業法、 中外合作経営企業法、外資独資 企業法、外商投資株式会社規定に別段 の定めが あれ ばその定 めが適用 され るとしてい る。
本稿では、 この中華人民共和国公 司法 を中心 として(2)、 さらに外資法 としての中外合資経営 企業法、中外合作経営企業法、外資独資企業法、
外商投資株式会社規定にも言及 し、中国の会社 法 ・外資法 とコーポ レー トガバナ ンスについて 考察す る。
なお、本論文 は、文部科学省科学研究費補助 金基盤研究
C
「アジア ・太平洋 のフロンテ ィア 地域 の国際経 営」 (課題番号18530309)の研 究 成果 で もある。第
1
節 中国の企業形態中国の会社法では、会社形態 として有限責任 会社 (有 限責任公 司)、お よび株 式会社 (株 式 有 限公 司) がある (第2条)。有 限責任会社 と 株式会社 は企業法人であ り、全株主は出資額 を
限度 とた有限責任 である (第3条)0
中国の会社形態は、有限責任会社 と株式会社 があ り、有限責任会社 と株式会社 は法人で、全 ての出資者 は有限責任 である としてい る。 中国 の国有企業 も、法人 としての企業法人 となる。
1.会社の設立
会社 の設 立は、登記 が必要 で (第6条)、会 社形態 を変更す る場合 は本法に定める条件 を満 た さなけれ ばな らない (第9条)。会社設立 に は、定款 を制 定 し (第 11条)、会社 の経営範 囲 は定款に定め登記 しなければならない (第12条)0
会社 は どのよ うな事業 を行 うか とい う経営範 囲を 自由に決 めることができるが、その経営範 囲を会社定款 に明記 しなければな らない こと、
さらに会社定款 を変更す る場合変更登記 しなけ れ ばな らない。
2.労働組合 と企業内の共産党の活動
会社 の従業員 は、中国労働組合法に従い労働 組合 を結成 し、労働組合活動 を行 う権利がある。
会社 は、労働組合 に必要な活動条件 を提供 しな けれ ばな らない。会社 の労働組合 は、従業員 を 代表 して報酬、労働時間、福利 、保険及び労働 安全衛生等の事項 について会社 と集団契約 (労 働協約) を締結す る。会社 の再編、重大な経営 事項の決定、重要な規則 の制定な どの場合 は、
労働組合の意見、かつ従業員代表大会 な どで従 業員 の意見な どを聴取 しなけれ ばな らない (第 18条)。
中国の会社法 ・外資法 とコーポ レー トガバナ ンス 53
以上の規定では、従業員 は労働組合 を設立す る権利 があ り、会社 は労働組合活動 に必要 な活 動条件 を提供 しなけれ ばな らない としてい る。
さらに、会社 が重要 な経営決定 を行 う場合 、労 働組合 と従業員代表大会の意見 を聴 かなけれ ば
な らない としてい る。
会社 内に中国共産党の組織 を設立、党の活動 を行い、会社 は党組織 の活動 のために必要 な条 件 を提供 しなけれ ばな らない (第 19条)。 この 規定は、会社法 に共産党企業委員会 の活動保 障 を明記 してい る。 これ は社会主義国である中国 特有の特徴であろ う。
3.
株主株主は、株主の権利 の濫用、会社法人の独立 的地位 お よび株主の有限責任 を濫用す ることに よ り会社、株 主、債権者 の利益 を損 なってはな らない。株主が有限責任 を濫用 して、債務 を逃 れ、会社 の債権者 の利益 を著 しく損 なった場合 は、会社 の債務 に対 して連帯 して責任 を負 う。
(第20条)
会社 の法人格否認 の法理が、以上の条文で明 記 された。す なわち、会社 の法人格や有限責任 の濫用 または法人格 の形骸化 が認 め られた場合 に、当該会社 に限 り法人格が否認 され る。 日本 では、 この法人格否認 について判例 によ り認 め れれているが法律 の条文 にはないのに対 して、
中国では会社法の この条文で明確 に規定 されて い る。
第
2
節 有限責任会社1.設立
有限責任会社 を設立す る場合 、株主が50名 以 下、登録資本が3万元以上、会社定款 の制定、
法定の会社機 関な どが必要である (第23条、第 24条、第25条)0
有限責任会社 は、株 主が 1人以上50人以下、
登録資本金が3万元以上 と規定 してい る。株主
は、上限が50人 とされ、 1人有限責任会社 も認 めてい る。
有限責任会社 の登録資本金 は、登記 してい る 全株主の引き受 け出資額で、原則 として最低限 度額 は3万元である。全株主の初回出資額 は、
登録資本 の20%を下回ってはな らず、その残 り の部分 は株 主が会社成立 日か ら2年以内に全額 払い込む。 (第26条)
2005年 の会社法の改定では登録資本 を3万元 とし、改定前の業種 によ り10万元か ら50万元 と 比べて登録資本 を大幅 に引き下げた。 これ は、
登録資本金 を3万元 (1元 を約14円で換算すれ ば 日本 円で約42万円) と低 くす ることによって、
会社 を設立 しやす くす ることを狙 った ものであ る。 さらに、会社設立時に登録資本 の20%以上 を実際に払い込まなけれ ばな らず、残 りの部分 は原則 として2年以 内に払 い込 まなけれ ばな ら ない としてい る。 旧会社法では、設立時に一括 払い込みであった ことと比較す ると会社設立の 規制が緩和 された。 なお、 日本 の会社法で も最 低資本金 の規定が緩和 され、 1円の資本金 で も 会社 を設立す ることができるよ うになった。
株主は、貨幣、または現物、知的財産権 、土 地使用権 な どの金銭以外非貨幣財産 で出資す る ことができる。全株主の貨幣出資金額 は有限責 任会社の登録資本の30%を下回ってはな らない。
(第27条)会社法では、 出資方法 として人民元 や外貨 な どの通貨 による出資、工場 の建物、設 備機械 、倉庫、原材料 な どの現物 出資、土地の 使用権 (工場用地は50年 、居住用地 は70年 、商 業用地は30年) な どを認 めている。 なお、出資 額 の うち貨幣 出資は30%以上 とした。 これ は、
出資額 の うち現物 出資は70%まで認 めれれ るこ とになる。外資系の合弁企業の有限責任会社形 態 の場合 も適用 され るので、現地側 は出資額の 70%まで現物 出資による形態が認 め られ る。 な お、 日本 の会社法で も、一定の条件 で現物 出資 を認 めてい る (日本会社法第28条)。
2.
株主総会株 主総会 は、有限責任会社 の全株 主によって 構成 され、最高の意思決定機構 である。株主総 会 の権 限 と して、(1)会社 の経 営方針 ・投 資計 画 の決定、 (2)董事 ・監事 の選任 と報酬 の決定、
(3)董事会報告 の審議 ・承認、 (4)監事会 ・監事 報告 の審議 ・承認、 (5)年度財 務予算案 ・決算 案 の審議 ・承認、 (6)利 益配 当案 ・欠損補 填案 の審議 ・承認、 (7)登録 資本金 の増加 または減 少 につ いて の決議、 (8)社債発行 の決議、 (9)会 社 の合併 ・分割 ・解散 ・清算または会社形態の 変更 につ いて決議、 (10)会社 定款 の変 更、 (ll) 会社定款 に定 め るその他 の権 限、があ る。 (第 37条)
3.株主総会 の開催 ・招集
株主総会 は、定例総会 と臨時総会がある。 10 分の1以上の議決権 を有す る株主、3分の 1以 上の董事 (取締役)、または監事会 (監査役会) もしくは監事会 を設 けない会社の監事 (監査役) が臨時会議 の開催 を提案 した場合 は、臨時総会 を開催 しなけれ ばな らない。 (第40条)株 主総 会 は、原則 として董事会が招集 し董事長 ない し 執行董事 が主宰す る。董事会または執行董事が 株主総会招集 の職責 を履行 しない ときは、監事 会 または監事が招集 ・主宰す る。監事会 または 監事が招集 ・主宰 しない ときは、 10分 の1以上 の議決権 を有す る株 主が 自ら招集 し、主宰す る ことができる。 (第41条)
コーポ レー トガバナ ンスの視点で重要なのは、
10%以上の株主が要求すれ ば臨時株主総会 を開 催 しなけれ ばな らない ことである。改定前の以 前の会社法の規定では、臨時株 主総会 の開催要 件 として株 主の25%以上 の要求が必要であった が、2005年 の会社法改定では株 主の10%以上の 要件 に緩和 された。 これ は、少数株主の権利 を 保護す るとい うコーポ レー トガバナ ンス強化 を 意図 した ものであろ う。
4.株主総会の議決権
株主総会 においては、株 主が出資比率に基づ いて議決権 を行使す る (第43条)。株 主総会が 定款 の変更、登録資本金 の増加 または減少、会 社の合併 ・分割 ・解散 ・会社形態の変更につい て決議す る場合 は、3分の2以上の議決権 を有 す る株 主 に よって採 択 され な けれ ばな らない
(第44条)0
株主総会 の普通決議 では、2分の 1以上の株 主の賛成が必要である。定款 の変更、登録資本 金の増減、会社 の合併 ・分割 ・解散または会社 形態の変更についての決議は、特別決議 とな り、
3分の 2以上の株主の賛成 が必要である。
5.董事会 (取締役会)
有限責任会社 は、3名 か ら13名 の董事会 (敬 締役会) の設置 を義務づ けてい る (第45条)0 ただ し、株主が少 ないまたは小規模 の有限責任 会社 では、執行董事 を 1名置 き、董事会 を設置 しない ことができ、執行董事 は総経理 を兼任す ることができる (第51条)。董事会 には董事長1 名 を置 くもの とし、副董事長 を置 くことができ
る。董事長、副董事長 の選 出方法 は定款 によ り 定 め る。 (第45条)董事 の任期 は1期3年 を超 えることはできないが、再任 は可能である (第 46条)。 なお、董事の選 出は株主総会で行 う。
2つ以上の国有企業や 国有投資主体が投資 し て設立 した有限責任会社 は、董事会の構成員 に 会社 の従業員代表 をいれ なければな らない。そ の他 の有限責任会社 は、董事会の構成員 に会社 の従業員代表 をいれ ることができる。董事会の 従業員代表は、会社従業員 が従業員代表大会 な どで民主的選挙 によって選 出す る (第45条)。
以上の規定で興味深いのは、国有資本 の有限 責任会社では董事会 の構成員 に会社 の従業員代 表 を入れ ることを義務づ けた ことである。 この 規定は、従業員代表 の取締役会への経営参加 と い う点で注 目され る。 なお、一般 の有限責任会 社 では、 この従業員代表の取締役会‑の経営参 中国の会社法・外資法とコーポレー トガバナンス 55
加 は義務ではな く任意規定である。
6.
董事会 の権 限董事会 は、株主総会 に対 して責任 を負 う。董 事会 の権 限 として、(1)株 主総会 の招集 と報告 、 (2)株 主総会 の決議 の実行、 (3)経 営計画 ・投資 案 の決定、 (4)年度財務予算案 ・決算案 の作成 、 (5)利 益配 当案 と欠損補填案 の作成、 (6)登録 資 本金 の増加 ・減 少案 、社債発行案 の作成、 (7) 合併 ・分割 ・解散 ・会社形態変更の案 の立案 、 (8)内部管理機構 の設置、(9)総経理 ・副総経理 ・ 財務責任者 の選任 ・報酬 の決定、 (10)基本 的管 理制度 の決 定、 (ll)会社定款 に定 めるその他 の 権 限、である (第47条)。董事会会議 は原則 と して董事長 が招集 ・主宰 し (第48条)、董事会 決議 の議決 は、1人1票 によ り行 う (第49条)。
中国の会社法では、取締役会 は登録資本金 の 増減 については、その案 を作成す るのみで、決 議 は株主総会での特別決議 として株主の3分 の 2以上の賛成が必要である。 これ に対 して、 日 本 の会社法では授権株式制度 を採 り、会社 が将 来発行す る予定の株式の数 を定款で定めておき、
その授権の範囲内で取締役会 の決議 のみで株式 を発行す ることを認 める制度 を採 っている。
7.総経理
有限責任会社には、総経理 を置 くことができ、
董事会が任命又は解任 を決定す る。総経理 は、
董事会 に対 して責任 を負 う。総経理 の権 限 とし ては、(1)生産経 営管理 を主管 、董事会決議 の 実施、 (2)年度経 営計画 と投資案 の実施、 (3)内 部 管理機 構 の設置案 の立案、 (4)基本 的管理制 度 の立案、 (5)具体的規則 の制定、 (6)副総経理、
財務 責任者 の選任 の提案、 (7)管理 責任者 の任 命 の決 定、 (8)董事会 に よ り与 え られ たその他 の権限、である。 (第50条)
中国の有限責任会社 での総経理 は、任意 にお くことができ、会社 の実務上の最高責任者 であ り、社長 の よ うな存在 である。総経理 の選任 は
董事会 (取締役会)で行 ない、会社執行 に関わ る権限を持 ってい る。
8.監事会 (監査役会)
有限責任会社 は、3名以上か らなる監事会 を 設置 しなけれ ばな らないが、株主が少人数 また は小規模 な有限責任会社 は、1名 ない し2名 の 監事 を置 き監事会 を設置 しない ことができる。
監事会は、株主代表 と適 当な比率の会社従業員 代表 を含 まなければな らず 、その うち、従業員 代表 の比率は3分の1を下回ってはな らない、
監事会 は主席 1名 を置 き、主席 は全監事の過半 数 の選挙 によ り選 出す る。監事会主席 は監事会 会議 を招集 し主宰す る。董事及び高級管理職 は、
監事 を兼任 で きない (第52条)。 監事 の任期 は 1期3年で、再任 は可能である (第53条)。
以上の規定で、 コーポ レー トガバナ ンスの視 点で重要 なのは、有限責任会社 では、監事会 ま たは監事の設置 を義務づ けた こと、 また監事会 に従業員代表 を3分の1以上参加す ることを義 務づ けた ことである。有 限責任会社 の監事会 に 従業員代表 の参加 を義務づ けた ことは経営参加 の視点か らも注 目され る。
9.監事会,監事の権 限 と招集
監事会又 は監事会 を設 けない会社 の監事 の権 限 として、(1)財務 監査、 (2)董事 ・高級管理職 の職務執行 に対す る監督 、な らびに法律 、行政 法規、定款、株 主総会決議 に違反す る董事、高 級管理職 ‑ の罷免提案、 (3)董事 ・高級 管理職 の行為が会社利益に損害 を与 える場合 の是正要 求、 (4)臨時株 主総会招集 の提案、 (5)株 主総会
‑ の意 見提 出、 (6)董事 ・高級管理職 ‑ の訴訟 提起、 (7)定款 に定 め るそ の他 の権 限、 が あ る (第54条)。以上のよ うに、監事会の権限 として、
会社会計の監査 、解任提案権 、董事 と高級管理 職 に対す る是正要求権 、株主総会‑の召集権、
株主総会‑の提案権 、訴訟提起権 な どがある。
監事 は、董事会会議 に列席 し、質問や意見 を
提出 し、会社経営に関 しての調査 を行 うことが できる (第55条)。監事会決議 は、半数以上の 監事 の賛成 に よ り採択 され る (第56条)。監事 会 ・幹事の職権 を行使す るための費用は会社 の 負担 とす る (第57条)。 以上のよ うに、監事会 は監査権、諮問権、調査権な どがあ り、監事の 過半数以上の賛成で採択 され る。監事会 ・監事 に必要な費用は、会社が負担す ることを明記す ることによ り監事の役割 を十分果たせ るよ うに 規定 してい る。
第
3
節 一人有 限責任会社一人有限責任会社 とは、株主が1人の 自然人 または1社 の法人のみである有限責任会社であ る。 なお、特 に規定がない場合、有限責任会社 の規定 を適用す る。 (第58条) 中国の旧会社法 では、一人有限会社 に関す る規定がなかったが、
新会社法で新たな企業形態 として導入 された。
一人有限会社 は、 1人のみで出資す る有限責任 会社である。単独 の個人 出資 を認 めるこの会社 形態は、会社法の規制緩和 とい う意図もあろ う。
一人有限責任会社の登録資本最低限度額 は10 万元である。株主は、会社定款 に定める出資額 を一括で払い込まなけれ ばな らない。 1人の 自 然人 は、一人有 限責任会社 を1社 のみ投資設立 す ることができる。 当該一人有限責任会社 は、
新たに一人有限責任会社 を投資設立す ることは できない。 (第59条)一人有限会社 は、1人の 出資のみで設立できるため、設立 しやすい企業 形態であるが、悪用や不正な どの リスクも存在 す る。それ を防 ぐために、登録資本金 を一般 の 有限責任会社 よ り高い10万元、かつ一括で振込 みを しなければな らない と規制 した。また、 1 人が 1社のみの一人有限会社 を設立できると規 制 した。
一人有限責任会社 の定款 は、株主が制定す る (第61条)。一人有限責任会社 は、株主総会 を設 けない。株主の決定事項の権限は、有限責任会 社での株主総会の権 限 (第37条) と同 じである
(第62条)。一人有限責任会社 は、財務会計報告
書を作成 し、かつ会計士事務所の監査 を受 けな けれ ばな らない (第63条).一人有限責任会社 の株主は、会社の財産が株主 自身の財産か ら独 立 してい ることを証明す ることができない場合 は、会社 の債務 について連帯 して責任 を負わな ければな らない (第64条)。
以上のよ うに、一人有限会社は、法定の会計 士による監査を義務づけ、 さらに、個人財産 と 会社財産を混同 し有限責任の悪用を防 ぐために、
株主の連帯責任 を要求す る法人格否認 の法理 を 条文に明記 している。
第
4
節 国有独資会社 に関する特別規定国有独資会社 とは、国や国有資産監督管理機 構が単独で出資 した有限責任会社である (第65 条)。 国が出資 した国有独資会社 に関 して特別 規定を設けているのは、国有企業の改革政策の ためであろ う。
1.株主総会
国有独資会社 は株主総会 を設 けず、国有資産 監督管理機構が株主総会の権限を行使す る。国 有資産監督管理機構 は会社の董事会に授権 して 株主総会の権限の一部 を行使 させ、会社 の重大 事項 を決定 させ るもの とす る。ただ し、会社 の 合併、分割、解散、登録資本金の増加又は減少 及び社債 の発行 については、国有資産監督管理 機構が決定 しなければな らない。 (第67条)
2.
董事会 (取締役会)国有独資会社 は董事会 (取締役会)を設 け、
有限責任会社 の規定 (第47条,第67条) と同 じ 権限を行使す る。董事会の各期の任期 は3年 を 超 えてはな らない。董事会の構成員 には会社従 業員の代表 を含 めなければな らない。董事会の 構成員 は国有資産監督管理機構が任命派遣す る が、董事会構成員の従業員代表は会社従業員代 表大会の選挙によって選出す る。董事会は董事 中国の会社法 ・外資法 とコーポ レー トガバナ ンス 57
長1孝.を置 くもの とし、副董事長 を置 くこ とが できる。董事長、副董事長 は、国有資産監督管 理機 構 が董事会 の構 成 員 の 中か ら指名 す る。
(第68条)
コーポ レー トガバナ ンスの視 点で興味深いの は、国有独資会社 の董事会 の構成員 に、従業員 代表 を含 める とい う義務規定 を明記 してい る点 である。 国有企業の取締役会‑の従業員 の経営 参加 とい う観点で注 目され よ う。
3.総経理
国有独資会社は総経理 を置き、董事会が任命 ・ 解任す る。総経理 は、有限責任会社 の規定 (第 50条) と同 じ権限を行使す る。 国有資産監督管 理機構 の同意 を経 て、董事会構成員 は総経理 を 兼任す ることがで きる (第69条)。 国有独資会 社 は、董事会が選任す る総経理 を置 くことがで き、総経理 の権限は有限責任会社 の規定 と同 じ である。
4.監事会 (監査役会)
国有独資会社 の監事会 (監査役会)の構成員 は、5名 を下回ってはな らず、その うち、従業 員代表 の比率は3分の1を下回ってはな らない。
監事会 の構成員 は国有資産監督管理機構 が任命 派遣す るが、監事会構成員 の従業員代表 は会社 従業員代表大会 の選挙 によって選 出す る。監事 会 の主席 は国有資産監督管理機構 が監事会構成 員 の中か ら指名す る。監事会 は、有限責任会社 の規定 (第54条)お よび国務院の定 めるその他 の権 限を行使す る。 (第71条)
コーポ レー トガバナ ンスの視点で興味深いの は、国有独資会社 の監事会 の構成員 の3分 の1 以上 を従業員大会 に よって選 出す るとい う義務 規定が董事会 とともに明記 されてい ることであ る。 この規定は、監査役会‑の従業員 の経営参 加 とい う視点で も注 目され る。
第
4
節 株式会社 (株式有 限会社)株式会社 を設立す る場合、発起人の員数 、資 本 、株式の発行、会社定款、組織機 関、な どが 法律 の定 めに合致す る必要 がある (第77条)。
株式会社 (株式有限会社) は、資本が株式で、
出資者 は全て有限責任 である企業形態である。
中国の会社法では、株式会社 の うち、上場企業 については特別 な規定 を設 けている。
1.設立形態 と発起人
株式会社 の設立は、発起設立または募集設立 がある。発起設立 とは、会社株式 の全部 を発起 人が引き受 けて会社 を設 立す ることである。募 集設立 とは、株式の一部 を発起人 が引き受 け、
その他 の株式 を公開募集 または特定の対象者 に 対 し募集 して会社 を設 立す るこ とで ある。 (第 78条)株式会社 を設立す るときは、2名以上200 名以下の発起人が必要で、半数以上の発起人が
中国国 内に住所 を有 してい な けれ ばな らない (第79条)。
以上のよ うに、株式会社 の設立には発起設立 と募集設立があ り、2人以上200人以下の発起人、
かつ半数以上の発起人が中国国内に住所 を有す る必要がある。
2.登録資本金
発起設立方式によ り株式会社 を設立す る場合、
その登録資本金 は登記す る全発起人が引き受 け た資本総額である。会社 の全発起人の初 回出資 額 は登録資本 の20%を下回ってはな らず、その 残 りの部分は原則 として会社成立 日よ り2年以 内に全額払い込む。全額 を払い込むまで、第三 者 に対 して株式 を募集 してはな らない。募集設 立方式 によ り株式会社 を設立す る場合、その登 録資本金 は登記す る実際に払い込 まれた資本総 額である。株式会社 の登録資本 の最低限度額 は 500万元である。 (第81条)
発起人の出資方式 については、有限責任会社
の規定 (第27条) と同 じく、貨幣、または現物、
知的財産権、土地使用権 な どの金銭以外 の非貨 幣財産で出資す ることができ、貨幣出資金額 は 登録資本の30%を下回ってはな らない (第83条)。
株 式会社 の最低登録 資本 は500万元 で、登記 時に登録資本 の20%以上の払い込みが必要で、
残 りの登録資本金 は2年以内に支払 う。 出資方 法 については、貨幣 出資のみな らず各種 の現物 出資 を認 めてい るが、現物 出資 の割合 は70%ま で と規制 してい る。
3.
募集設立募集設立の方式 によ り株式会社 を設立す る場 合 、発起人の引き受 ける株式は会社 の株式総数 の35%を下回ってはな らない (第85条)。募集 設立では発行株式 の35%以上発起人が引き受 け るとい う規定は、登録資本 の多 くを他人資本 に よって会社 を設立 し、不正 に投資家か ら資金 を 集 めることを防 ぐとい う意図がある。
4.株主総会
株 主総会 は会社 の最 高意 思決 定機 関で あ る (第99条)。株主総会 の権 限は、有限責任会社 の 規定 (第38条) を適用す る (第100条)。株 主総 会は、毎年 1回定時総会 を招集す る必要がある。
臨時株主総会 は、単独 または合計で会社 の株式 の10%以上 を保有す る株 主の請求、または董事 会や監事会の要求 な ど場合、招集 しなければな らない (第101条)。株 主総会 は、董事会が招集 し、董事長 が主宰す る (第102条)。単独 でまた は合計で会社 の
3%
以上の株式 を保有す る株主 は、株 主総会 ‑ の提案 を董事会 に提 出で き る(第103条)0
コーポ レー トガバナンスの視点で重要なのは、
10%以上 を保有す る株主 は株主総会召集権、3
%以上 を保有す る株 主は株主総会 で提案権 を持 つ ことである。
株 主は、 1株 につ き 1個の議決権 を持つ。 た だ し、会社保有の 自己株式には議決権 はない。
株主総会の決議 は、総会に出席 した株主が保有 す る議決権の過半数 によって採択す る。ただ し、
株主総会が定款 の変更、登録資本金の増減、会 社 の合併 ・分割 ・解散、会社形態の変更につい て決議 を行 うときは、総会 に出席 した株 主が保 有す る議決権 の3分の2以上で採択 しなければ な らない。 (第104条)以上の よ うに、株主総会 では、普通決議 では50%以上の賛成 が、定款 の 変更、登録資本金の増減、会社 の合併 ・分
割 ・
解散、会社形態の変更 といった特別決議 では3 分 の2以上の賛成が必要である。
株 主総会 で、董事、監事 を選 出す る場合、累 積投票制度 を実施す ることができる (第106条)0 累積投票制 とは、株主 1株 につき、選 出人数 と 同等の投票権 を有す る制度 (た とえば選 出人数 が6名.の場合6名連記 の投票 となる)で、中小 株主に有利 な制度 である。 中国の会社法では、
株主総会で董事、監事の選 出のみに、累積投票 制度 を任意で導入す ることができる。
5.董事会 (取締役会)、総経理
株式会社 は5名 か ら19名 の董事会 (取締役会) を設 けなければな らない。董事会の構成員 には、
会社 の従業員代表 を入れ るこ とができる。株式 会社 の董事の任期規定お よび董事会権 限に関す る規定は、有限会社 の規定 (第46条、第47条) を適用す る (第109条)0
株式会社 の董事会 (取締役会)に、有限責任 会社 と同 じく、従業員代表 を任意 に置 くことが できるとい う規定は、経営参加 の視点か ら注 目 され る。 ただ し、 この規定は、国有独資会社 の 規定 と違い、義務規定ではな く任意規定である。
董事会 は董事長 1名 を置 くもの とし、副董事 長 を置 くことができる。董事長お よび副董事長 は、董事会で全董事の過 半数 によって選 出 され る。董事長 は董事会会議 を招集及び主宰す る。
(第110条)
10分 の1以上の議決権 を有す る株主、3分の 1以上の董事又 は監事会 は、董事会臨時会議 の 開催 を提案 できる (第111条)010%以上の株式 中国の会社法・外資法とコーポレー トガバナンス 59
を所有す る株主の要求がある場合、董事会臨時 会議の開催 を提案できるとい うこの規定は、少 数株主の権利 を保護す るためであろ う。
董事会会議 の定足数は過半数で、議決は 1人 1票、過 半数以上の賛成 が必要である (第112 条)。董事 は、董事会 の決議 に責任 を負 う。董 事会の決議が法律、行政法規、定款、株主総会 決議 に違反 し、会社 に重大な損失を与えた場合、
決議 に参加 した董事 は会社 に対 して賠償責任 を 負 う。ただ し、議決 に異議 を表明 しかつ議事録 に記載 されてい るときは、当該董事の責任 は免 除す ることができる。 (第113条)董事会決議が 法規や定款違反で、会社 に重大な損失 を与 えた 場合、決議 に賛成 した董事は会社 に対 して賠償 責任 を負 うとい うこの規定は、取締役の法律的 責任 、コーポ レー トガバナ ンスの観点か ら注 目
され よ う。
株式会社 は総経理 を置 き、董事会が任命 ・解 任す る。総経理の権 限は、有限責任会社の規定 (第50条) を適用す る (第114条)。株式会社 の 董事は、総経理が兼任す ることができる (第115 条)0
会社 は、定期的に株主に対 して董事、監事、
高級管理職 の報酬 を開示 しなけれ ばな らない (第117条)。 以上の よ うに、 コーポ レー トガバ ナ ンスの観点か ら、董事、監事、高級管理職の 報酬開示義務 を定めてい る。
6.監事会 (監重役会)
株式会社 は、3名以上の監事会 (監査役会) を設 けなけれ ばな らない。監事会は、株主代表 お よび従業員代表 を含まなければな らず、従業 員代表の比率は3分の1を下回ってはな らない。
監事会は主席 1名 を置 き、副主席 を置 くことが できる。監事会の主席 ・副主席 は、全監事の選 挙によ り選出す る。監事会主席 は監事会会議 を 招集 し主宰す る。董事、高級管理職 (総経理、
副総経理、財務責任者、董事会秘書な ど)は、
監事 を兼任 できない。監事の任期お よび監事会 権限は、有限責任会社の規定 (第53条、第54条、
第55条)を適用す る。 (第118条)監事会の権限 行使 に必要な費用は、会社 が負担す る (第119 条)。監事会決議 は、半数以上の監事 の採択 が 必要である (第120条)。
以上の規定でコーポ レー トガバナンスの視点 で重要 なのは、株式会社 の監事会 の構成員 の3 分の1以上は、従業員代表 の監事でなけれ ばな
らない とい う規定を設 けたことである。株式会 社では、董事会への従業員代表の参加 は任意規 定であるが、監事会‑の従業員代表の参加 は義 務規定である点は注 目され よ う。
7.株式の発行
株式会社の資本は株式に分け、 1株 当 りの金 額は均一 とす る (第126条)。株式発行 は公平 ・ 公正、同一種類の株式は同等の権利、同時発行 の同一種類 の株券は発行条件 ・価額が均一 を原 則 とす る (第127条)。株式の発行価額 は、額面 額によるか、または額面額 よ り高 くす ることも できるが、額面額を下回ってはな らない (第128 条)。株式会社 の株式 は、株式の均一性 を要求
し、額面株式 と無額面株式、時価発行、記名株 式 と無記名株式な どを認 めている。
株式は、記名株式か無記名株式 とす る。新株 の発行では、新株 の種類お よび額、新株 の発行 価額、新株発行の開始 日お よび終了 日、既存株 主に割 り当てる新株の種類お よび額について株 主総会は決議 を行わなければな らない。 (第134 条)新株 は、登録資本金 を増加 させ ることにな
るので、株主総会での株主の3分の2以上の賛 成が必要な、特別決議事項 となっている。
中国では、普通株式以外 に、優先株、A株 、 B棟 な どの株式がある。 中国の株式市場では、
人民元普通株式 と呼ばれ るA株 、人民元特殊株 式 と呼ばれ るB棟 がある。A株 とは、人民元で 取引 され る主に中国国内投資家向けの株式であ る。B棟 とは、主に海外投資家向けに外貨で取 引 され る株式であるが、2001年2月以降、国内 投資家にも解放 された。
8.株式の譲渡
株主が保有す る株式は法 によ り譲渡ができる (第138条)。株式譲渡 は、証券取引所、または 国務院の定める方式によ り行 な う (第139条)。 発起人の保有株式は会社成立の1年間は譲渡で きない。公開前の株式は上場か ら1年以内は譲 渡できない。董事、監事、高級管理職 は、 自社 保有株状況の会社‑の申告、 1年間の 自社保有 株 の譲渡は25%以内、株式上場か ら 1年以内お よび離職 してか ら半年以内は 自社保有株 の譲渡 禁止、を規定 してい る。 (第142条)
以上のよ うな、株式会社の経営者や上級管理 者に自社保有株式の譲渡制限を設 けることによっ て、イ ンサイダー取引や不正取引な どを防止す る法規制 を行 った。
9.
自己株式取得の原則禁止会社 は 自己株式 を取得できない。ただ し、(1) 登録資本 の減少、 (2)自社株 式 を保有す る他社
との合併、 (3)株式 を褒賞 として 自社 の従業員 に給付す る場合、 (4)株 主が株 主総会 での合併 または分割の決議 に異議 があ り会社 に株式買取 を求めている場合、例外 として 自社株 の取得 を 認 めているが、その場合株主総会の決議 が必要 であ り、 この 自己株式は発行済株式総額の
5%
以内 と制限 している。(第143条)
第
5
節 上場会社組織機構 に関する 特別規定上場会社 とは、その株式が証券取引所で上場 取引 してい る株式会社である (第121条)0
中国の証券法では、上場の条件 として①株式 が公開発行 されていること、②株式総額が3,000 万元以上であること、③公 開発行の株式が株式 総額の25%以上 (ただ し、株式総額が4億 円以 上の場合 は10%以上)であること、④過去3年 間に重大な違法行為がな く、かつ会計報告に虚 偽記載がない こと (証券法第50条)である。
上場会社が上場後1年以内に売買 した重大な 資産または担保 の金額が会社資産総額の30%を 超 える場合 には、株主総会で出席株主の3分の 2以上の賛成が必要 とい う特別決議 によらなけ ればな らない (第122条)。以上のよ うに、上場 会社が重大な資産の購入 ・売却 と担保 について は、特別決議 と同 じ株主の3分の2以上の賛成 が必要であるとい う規定を設 けている。 これは、
重大な資産変更は、株主の利益に大きき影響 を 与える可能性があるため、株主保護 とい う視点 か ら設 け られた。
上場会社の董事は、董事会会議の決議事項に 関わる企業 と関連関係 を有す る場合、当該決議 事項 について議決権 を行使 してはな らない。 当 該董事会会議 は、過半数の関連関係 のない董事 が出席すれば開催でき、董事会会議で行 う決議 は、関連関係 のない董事の過半数 によ り採択す ることを要す る。董事会に出席 した関連関係 の ない董事の人数が3人に満たない場合 は、当該 事項 について上場会社の株主総会での審議 を求 めなければな らない。 (第125条)
以上の規定は、コーポ レー トガバナンスの強 化 とい う観点か ら、決議事項 に関わる企業 と何 らかの関係 を持つ董事の議決権行使 を禁止 して い る。
上場会社は独立董事 を置 き、具体的規則 は国 務院が定める (第123条)。 中国の上場会社 は、
外部取締役 としての独立董事 を置 くことを義務 づけた。この独立董事の設置義務は、コーポ レー トガバナンスの視点で極めて注 目され る。なお、
独立董事 となる要件 として、資格、独立性、専 門性、経験な どを国が定めている。
第
6
節 株主代表訴訟、社債、合併 ・解散1.株主代表訴訟
董事、高級管理職に賠償責任事由がある場合、
有限責任会社 の株主、な らびに株式有限会社で
1%
以上の株式 を保有す る株主は、書面によ り 監事会、または董事会 (ない場合は執行董事) 中国の会社法・外資法とコーポレー トガバナンス 61に訴訟 の提起 を請求す るこ とがで きる (第152 条)。董事 、高級管理職 が法律、行政法規また
は会社定款 の規定に違反 し株主の利益 を損 なっ た場合 、株 主 は訴訟 を提起す るこ とがで きる
(第153条)0
中国会社法では、2005年 の改正で株主代表訴 訟 に関す るこの条文が新たに加 え られた。会社 の取締役や高級管理職 (総経理、副総経理、財 務責任者、董事会秘書な ど)が法律または会社 定款 な どに違反 し会社 に損害をもた らし、株主 の利益が損なった場合、
1%
以上所有す る株主 は監事会ない し董事会 (執行董事)に対 して裁 判所‑の訴訟 を提起す ることができると規定 し ている。 この株主代表訴訟 の規定は、少数株主 の権利 を保護す るための規定であろ う。2.社債
社債 とは、会社が法定の手続で発行す る一定 の期限に元利 を償還す ることを約定す る有価証 券である。社債発行 は、証券法 に定める発行条 件 に合致 しなければな らない (第154条)。社債 は、記名債券 と無記名債券がある (第157条)0 社債 は譲渡す ることができ、譲渡価額 は譲渡人 と譲受人 とが約定す る。社債 を証券取引所 にお いて上場取引す る場合は、証券取引所の取引規 則 に従 って譲渡す る。 (第160条)
中国の証券法では、社債発行の条件 として① 株 式有限会社 では純資産が3,000万元以上、有 限責任会社 ではそれ が6,000万元以上、②社債 累積発行額が会社純資産の40%以下、③最近の 利益率が規定以上であること、④国の産業政策 に適合す ること、⑤債券の利率が規定以下であ ること (証券法第16条)、な どがある。
上場会社 は、株主総会の決議 を経て転換社債 を発行す ることができ、上場会社 は転換社債 を 発行す る場合、国務院証券監督管理機構 に審査 が必要である (第162条)。転換社債 を発行でき るのは、一定の条件 に適合 した上場企業 と国有 企業 に限定 されている。
3.会社の合併、解散
会社の合併は、吸収合併 と新設合併がある。
吸収合併は、 1つの会社が他の会社 を吸収す る ことで、吸収 され る会社 は解散す る。新設合併 は、2つ以上の会社が合併 して1つの新会社 を 設立す ることで、合併の各当事会社は解散す る。
(第173条)
会社の合併や解散は、経営上の重大な決定 と なるため、株主総会での株式の 3分の 2以上の 賛成が必要であるとい う特別決議事項 となって いる。
第
7
節 上場企業の所有構造中国のコーポ レー トガバナンスを考察す る場 合、会社法 とい う法律的分析のみな らず、現状 での国営 ・公営企業の支配構造 を考慮す る必要 がある(3)。 中国では、依然 として国営 ・公営企 業の経済に占める割合が高 く、上場企業で も国 が所有す る株式の割合が高い。す なわち、中国 の上場企業 の実際の所有構造 は、国有法人(国 有企業が中心)、特殊法人(国有資産管理委員会 の直接 の管理下にある国有資産管理会社 を指す 一種 の国有法人である)な どを通 して間接 的に これ らの企業 を支配す るか、または国が直接 に 所有す る形態がまだ多い。
中国での株式市場は、 このよ うな状況 を反映 して特有な構造 となっている。すわわち、流通 株 と非流通株の存在である。株式の種類 として、
国家株 と国有法人株 とい う国有株が存在 してい る。国家株 は、政府 が所有す る株式である。国 有法人株 は、国有企業が所有す る株式である。
国家株 と国有法人株 は、市場で取引できない非 流通株である。 さらに、非流通株 として一般法 人が所有 している一般法人株がある。一般法人 株 とは、企業、または法人格 を持つ社会団体が 法的に認 め られた運用資産 を使 って投資 した非 流通株である。そのほかに、市場で取引できる 流通株がある。上場企業の実際の株式構成 をみ ると、国家株 、国有法人株、一般法人株 といっ
た非流通株 は、依然 としてかな りの割合 で存在 す る。 中国株式市場の 1つの特徴 は、株式の非 流動性 であるともい える。
中国政府 は、国家 に とって重要な産業分野の 企業 に対 しては、大株主 として資本 の公的所有 を維持 しなが ら、国有企業改革 を進 める政策 を とっている。今後 、政府 は国家株や 国有法人株 といった国有株 を どの程度 に市場 に放 出 し、民 営化 を推進す るかが課題 となる。
第
8
節 外資系企業法外資系企業 に適用す る外資系企業法 (外商投 資企業法) として、合弁企業 を規定 した 「中外 合資 (合弁)経 営企業法」、合作企業 を規定 し た 「中外合作経営企業法」、 100%外資企業 を規 定 した 「外資独 資企業法」、外商投資株式会社 を規定 した 「外商投資株式会社規定」がある(4)0 会社法では、外資 による有限責任会社お よび株 式会社 には会社法 を適用す るが、外資系企業法 に別 途規 定 が あ る場合 はそ の規 定 を適 用す る (第218条) としてい る。 したがって、外資系企 業は会社法が一般法 として適用 され るが、外資 系企業法 に規定がある場合 はその規定が優先適 用 され る。本稿 では、代表的外資系企業形態で ある、合弁会社、 100%外資会社 (独資企業)、
外商投資株式会社 について別途規定のある事項 を中心に考察す る。
1.合弁会社
合弁会社 は、 中外合資 (合弁)経営企業法に 基づいて中国企業 と外国企業の共 同出資によ り 設立 された有限責任会社である。合弁企業は、
中国法人 として法人格 を有 し、出資者 は出資額 のみに責任 を負 う有限責任 である (合弁企業法 第16条)。 合弁企業 の登録 資本金 の うち外資側 の出資比率 は25%以上必要であるが (合弁企業 法第5条)、審査認 可 を得れ ば外資側25%以下 の出資 も可能である。 現物 出資による出資は、
会社法の規定によ り70%まで可能である。
合弁会社 は、株主総会 を設 ける必要はな く、
董事会が最高意思決定機 関 となる (合弁企業法 実施条例30条)。董事 は3人以上必要であるが、
人数配分は各出資者者 が出資比率 を参考に して 協議 し決 める。董事は、出資当事者が任命 し、
任期 は4年 である。 (合弁企業法実施条例31条) 董事会 の定足数 は 3分の 2以上である。定款変 更、解散、資本 の増減、合併 ・分割 の重要事項 の議決 は、董事会での全員一致決議 が要求 され るが、それ以外 の議決 については特 に定 めてい ない (合弁企業法実施条例33条)。
董事長 は、合弁会社 の法定代表であ り、董事 長 は外資側 か ら任命す ることもできる。副董事 長 は、董事長 を出 してない側 の出資 当事者 が任 命す る。 (合弁企業法第6条)董事長 は、1人 しか認 め られないが、副董事長 は人数制限がな く中国側1名 と外資側1名 を任命す ることも可 能である。
合弁企業では董事会が指名す る 1名 の総経理、
複数 の副総経理 を置 くことができ、総経理は董 事会の決議 を執行 し、経営管理 を行 う。外 国人 が総経理、副経理 になることができ、総経理、
副
経理 は董事 を兼任す るこ とができる。 (合弁 企業法実施条例35条、36条、37条)。監事会 (監査役会)は、合弁企業法 に規定が な く、監事会の設置は任意であった。新会社法 が2006年 に施行 された後は、有限会社法が規定 しているよ うに監事会の設置が要求 され るよ う になった。ただ し、会社法 の施行 日である2006 年 1月 までの設立 され た合弁会社 については、
定款 を変更 して監事 をお く必要はない。
合弁企業では、かつては会社存続期間の規定 としての合弁期限を設定 し、その期間は10年か ら30年 に設定す ることが義務づ け られていた。
しか し、現在 では一定の業種 のみ合弁期限を定 めなけれ ばな らない以外 は、合弁期限を定 める ことも定めない こともできると改正 された。
2.100%外資会社 (独資会社)
100%外資会社 (独資会社) は、外資独資企 中国の会社法・外資法とコーポレー トガバナンス 63
業法 に基づいて、外 国人の出資のみで設立 され た企業であ り、有限責任会社である。外国出資 者 は単独 で も複数 で もよい。外 国単独 出資の独 資会社 は、会社法の一人有 限会社 の規定が適用
され る。
独資会社 の機 関については、外 国独資企業法 ではほ とん ど規定がないが、政府 の意見 ・解説 によると独資企業の機 関についての特別規定は 以下で あ る(5)。 株 主総会 は、外資共 同出資 の 場合 は置 くが、外資単独 出資の場合 は置かない こともできる。董事会 は、外資共同出資、外資 単独 出資 とも置 く必要がある。監事会 は、外資 共 同出資、外資単独 出資 とも置 く必要がある。
総経理 は、外資共 同出資、外資単独 出資 とも置 くことができ、董事会が任命 ・解任す る。
3.外商投資株式会社
外商投資株式会社 は、外商投資会社規定に基 づいて中国企業 と外 国企業 の共 同出資 によ り設 立 された株式会社 である。三資企業 といわれ る 合弁会社 、合作会社 、独資会社 は有限責任会社 であるのに対 して、外商投資株式会社 は株式会 社 であることに特徴がある。
外商投資株式会社 では、特別規定がない場合 は基本的に会社法 の株式会社 の規定が適用 され る。会社 の機 関、新株発行 、社債発行 、上場 な どについては株式会社 の規定が適用 され る。
外商投資株式会社 の特別規定 として、最低登 録資本金、外資割合 についての規制 などがある。
外 商投 資株 式会社 は最低登録 資本金 が3,000万 元 (外商投資株式会社規定3条) と、会社法に よる通常の株 式会社 の最低登録 資本金 は500万 元 よ り高 く設定 されている。外商投資株式会社 での外資側 出資比率は25%以上 (外商投資株式 会社規定2条) とされてい る。
外商投資株式会社 は、会社機 関やその決議事 項 については基本的に会社法が適用 され、董事 会や株 主総会 の議決 について も会社法の規定が 適用 され る。合弁会社 と外商投資会社 の コーポ レー トガバナンスを比較 した重要な相違 として、
合弁会社 の場合、定款 の変更、資本 の増減、合 併 、解散等 の重要事項 について董事会での全会 一致が必要であるのに対 して、外商投資会社で はその規定がない ことである。合弁会社 では、
現地側の少数株主が任命 した董事が反対すれば、
このよ うな重要事項は否決 され る とい う、少数 株 主に拒否権があるよ うな形 となってい る。外 商投資株式会社では、会社法の規定によ り特別 決議事項で も董事会 で過 半数 の賛成、株主総会 で 3分に 2以上の賛成があれば議決できるので、
少数株主の拒否権 をめ ぐる紛争が発生 しに くい とい う特徴 がある。 その よ うなメ リッ トがある ので、 日本企業や欧米の企業な どで、合弁企業 形態か ら外商投資会社形態‑の移行 、新規設立 の場合外商投資企業形態での設立の動 きも見 ら れ る。
おわ りに
中国の会社法、外国投資法の観 点か ら、中国 の コーポ レー トガバナ ンスの特徴 について考察 してみよ う。まず、会社法による中国企業のコー ポ レー トガバナ ンスの特徴 について、以下の点 が指摘できる。
第 1は、中国の会社法では、基本的には会社 の法定機 関は株 主総会 、取締役会 (董事会)、
監査役会 (監事会)であるとい うことである。
この点では、 日本、ベ トナム、タイな どのアジ ア諸国の会社法 と基本的に共通す る。 アングロ サ クソン型 の経営機 関 として取締役会 と執行委 員会 に分離す るとい う形 は、中国の会社法では 制度化 されていない。
第2は、各種 の経営参加 が法制化 されてい る ことである。有限責任会社 、株式有限会社、お よび国有独資会社では、監事会 (監査役会) に 従業員代表 を3分の 1以上参加す ることを義務 づ けた。 また、国有資本 の有限責任会社 では董 事会 (取締役会)の構成員 に会社 の従業員代表 を入れ ることを義務づ けた。 なお、一般 の有限 責任会社お よび株式有限会社では、董事会‑従 業員 の代表 を入れ ることができる とい う任意規
定 を置 いた。以上 の よ うな監事会 、董事会‑ の 従業員代表 の参加規定 は、経 営参加 とい う観 点 か ら注 目され る。
第3は、 中国の上場会社 は、外部取締役 と し ての独立董事を置 くことを義務づ けた点である。
独 立董事 とな る要件 として、資格 、独 立性 、専 門性 、経験 な どを国が定 めてい る。 上場企業 に 専 門家 としての外部取締役 の設置 の法制化 は、
取締役会 での外部取締役 の監視 とい う観 点でそ の成果が極 めて注 目され る。
第4は、少数株 主の権利 の保護 が強化 された こ とで ある。有 限責任会社 では、10%以上保有 す る株 主 は株 主総会招集権 を持つ。株 式有 限会 社 では、10%以上株 主 は株 主総会召集 権、3%
以上 の株 主 は株 主総会 で提案権 を持つ。 以前 の 会社法 の規定では、臨時株 主総会 の開催 要件 と して株主 の25%以上 の要求が必要 であったが、
2005年 の会社法改定では株 主の10%以上 の要件 に緩和 され た。 さらに、株 主総会 で、董事 、監 事 を選 出す る場合、累積投票制度 を任意 に実施 す るこ とがで きる とした。 累積投票制 とは、株 主 1株 につ き、選 出人数 と同等 の投票権 を有す る制度 で、 中小株 主 に有利 な制度 で ある。 以上 の よ うに、 中国会社法では、少数株 主の権利 を 保護 す る規定が強化 され た。
第5は、株主代表訴訟権 を認 めた ことである。
有 限責任会社 の全株 主、お よび株 式有 限会社 の 1%以上 の株 式 を保有す る株 主 は、書面 によ り 監事会 、または董事会 (ない場合 は執行董事) に訴訟 の提起 を請求す ることがで きる と規定 し た。 中国会社法 では、2005年 の改正 で株 主代表 訴訟権 に関す る条文 が新 たに加 え られ 、取締役 や高級管理職 (総経理 、副総経理、財務責任者 、 董事会秘書 な ど)が法律 または会社 定款 な どに 違反 し会社 に損害 をもた らし、株 主の利益 が損 なった場合 、1%以上所有す る株 主 は訴訟 を提 起す るこ とがで きる とした。
第6は、会社 の法人格否認 の法理 が会社法 で 明確 に明記 され てい るこ とで ある。す なわち、
会社 の法人格や有限責任 の濫用 または法人格 の 形骸化 が認 め られた場合 に、当該会社 に限 り法
人格 が否認 され る。 日本 では、 この法人格否認 について判例 に よ り認 めれれ てい るが法律 の条 文 にはないのに対 して、 中国では会社法 の この 条文 で明確 に規定 され てい る。
第7は、 中国の会社法では、株 主総会 の普通 決議 は過 半数以上の賛成 、特別決議 では3分 の 2以上 の賛成 が必要である としてい る。株 主総 会 が定款 の変更、登録資本金 の増減 、会社 の合 併 ・分割 ・解散 、会社形態 の変更 について特別 決議 は、総会 に出席 した株 主が保有す る議決権 の 3分 の 2以上で採択 しなけれ ばな らない とし てい る。
第8は、株式有 限会社 の経営者や上級管理者 に対 して、 自社株 の保有 申告お よび譲渡制 限 を 設 けてイ ンサイ ダー取 引や不正取引を防止す る 規定があることである。す なわち、董事、監事 、 高級管理職 は、 自社保有株状況の会社‑の申告、
1年 間の 自社保有株 の譲渡 は25%以内、株式上 場 か ら1年 以 内お よび離職 してか ら半年 以 内は
自社保有株 の譲渡禁止 、を規定 してい る。
第9は、上場会社 で関連 関係 を有す る取締役 の議決権行使 を禁止 した ことである。すなわち、
取締役 (董事) は、取締役会 の決議事項 に関わ る企業 と関連 関係 を有す る場合 、その事項 につ いて議決権 を行使 してはな らない とした。
以上のよ うに、中国の新会社法は、コーポ レー トガバナ ンス を強化す る各種 の規制が織 り込 ま れ た。 ただ し、 中国では、法 の実際の運用 と企 業 の法令遵守 に課題 が あるこ とか ら、 中国での 今後 の会社法 とコーポ レー トガバナ ンスの動 向 に注 目してい きたい。
中国の会社法・外資法とコーポレー トガバナンス 65
注
(1
)
「中華人民共和 国公 司法」 の条文 の 日本語訳 として、射 手矢好雄 ・布井 千博 ・周剣龍(2006)、 求索(2007)があ り、本稿 で も参考 に した。(2)「中華人民共和 国公 司法」 に関す る解説 とし て、射 手矢好雄 ・布 井 千博 ・周剣龍(2006)、求索 (2007)、梶 田幸雄(2007)、今泉慎也 ・安倍誠編 著 (2005)、 志村 治美(2003)な どが あ り本稿 で も参考 に した。
(3)中国の企業 の支配構 造 、 コー ポ レー トガバ ナ ンスに関 しては、川井伸一(2003)、金 山権(2008) な どを参照。
(4)外資系企業法 としての 「中外合資 (合弁) 経営企 業法」、 「中外合作経営企業法」、外資独 資 企業法」、 「外商投資株式会社規定」 については、
森 ・溝 田松本法律 事務所編 著(2009)、 日本 国際貿 易促進協会 (2008)、徐治文(2005)な どを参照。
(5)森 ・演 田松本法律事務所編著(2009)、43ペー
ジ 。
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