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外の事項の方針を決定する権限を持つとともに 大学の監督責任を大臣から委任された ( 高等教育機関の法人化に関する決定 3 ) 第 8 条 9 条及び 23 条 ) 本稿の目的は MWA の機能とその運用の実態を検討し MWA の導入が大学運営にどのよ うな影響を与えたのかを明らかにすることである 我

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インドネシアにおける国立大学法人化に関する考察

―ガバナンスに着目して―

和氣 太司   【要旨】 高等教育のグローバル化の中、インドネシアにおいても2000年に国立大学の法人 化が開始された。その狙いの一つは国立大学の国際競争力の強化を図る観点から、 学長が大学の運営の中心として政府に説明責任を負うという、従来の一元的なヒエ ラルヒー構造を転換し、様々なステークホルダーの声を反映できる大学ガバナンス を実現することであった。 このため法人化に伴い導入されたのが、政府、州、社会、評議会、職員、学生な どの代表から構成される「最高経営会議(MWA)」である。本稿では2000年に法人 化したバンドン工科大学(ITB)の事例を取り上げ、MWAの機能と運用の実態につ いて学長選考の事例などを通じて明らかにする。 キーワード:国立大学の法人化、MWA、評議会、学長、ガバナンス改革 はじめに インドネシアは赤道をまたがる約17,500の島々からなる島嶼国であり、その人口は 2 億 5 千万人で世界第 4 位である。アジア経済危機を契機として、1998年に30年以上続いたスハル ト第 2 代大統領の体制が崩壊し、その後、民主化や地方分権を目指した改革が進展した。近 年、経済も順調に発展し、国民の生活水準が向上するとともに教育の普及・拡大も進んでお り、高等教育粗就学率1 )は28.57%(2012/13年)に達した。 高等教育の拡大に伴い、高等教育機関が政府以外から財源を確保する必要性が高まるとい うアジア全体のトレンドを反映してアジア諸国では国立大学の法人化が進んでいる(リー: 141)。 インドネシアにおいても2000年に法人化が開始されたが、その背景には国立大学の国際競 争力の強化を図るためには大学ガバナンスの見直しが必要との認識があった。従来の学長が 政府への説明責任を負うという一元的なヒエラルヒー構造を転換し、広く政府や社会のス テークホルダーの声を反映できる大学ガバナンスを目指した(DepartemenPendidikan NasionalRepublikIndonesia2004:26-7)。 このため、法人化を契機に導入されたのが「最高経営会議(MajelisWaliAmanat: MWA)」2 )である。MWAは様々なステークホルダーからなる会議体であり、教育研究以

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外の事項の方針を決定する権限を持つとともに、大学の監督責任を大臣から委任された (「高等教育機関の法人化に関する決定」3 )第 8 条、 9 条及び23条)。 本稿の目的はMWAの機能とその運用の実態を検討し、MWAの導入が大学運営にどのよ うな影響を与えたのかを明らかにすることである。我が国でも2014年 2 月、中央教育審議会 大学分科会が「大学のガバナンス改革の推進について(審議のまとめ)」を取りまとめたよ うに、大学ガバナンスについての議論が活発であり、改革のための施策が実施に移されてい る。今後のわが国大学のガバナンスを検討する上でもアジア諸国の現状を把握し、比較する ことは意義あることと考える。 本稿の第 1 節ではインドネシアの国立大学法人化の経緯を整理する。第 2 節では MWA に関する規定やその運用についてバンドン工科大学(以下、「ITB」という)の事例を取り 上げて検証する。第 3 節では国立大学法人化の影響について、サトリオ・スマントリ氏4 ) へのインタビュー結果に基づき検討した。同氏は高等教育総局長を務めるなど国立大学の法 人化の行政側の責任者であり、また、大学教員(ITB教授)やMWA委員(インドネシア大 学及びインドネシア教育大学)の立場でも法人化に深く関わってきた。 最後に、これらの検討結果を踏まえ、インドネシアの国立大学法人化による大学ガバナン スの変容の現状について整理する。なお、インドネシアでは、教育文化省管轄の高等教育と 宗教省管轄のイスラーム高等教育が存在するが、法人化は教育文化省管轄の機関で進行して おり、本稿の記述も教育文化省管轄の機関を対象とした。 1 .国立大学法人化に関する制度の変遷 2000年に開始された国立大学の法人化について、以下では、先ず、法人化の背景について 述べ、その後、法人化に関する制度の変遷をたどる。 ( 1 )国立大学の法人化の背景 インドネシアでは高等教育機関数の97%を私学が占めるなど、私立高等教育機関の発展が 著しいが、学生規模に着目すると国立が私立に比べて一般に大きく、総合大学の 1 大学当た りの学生数を比較しても国立は31,898人、私立は5,011人となっている(表 1 )。また、全国 高等教育機関アクレディテーション委員会(BAN-PT)の実施するアクレディテーションの 結果を見ても一般に国立の方が私立よりも評価が高くなっている(和氣2015:77- 9 )。さ らに、歴史的にも、インドネシア大学やガジャマダ大学に代表される国立大学が私立を含む 大学全体のモデルとして先導的な役割を果たしてきた(カミングス・カセンダ1993:199-201)。 従来、国立大学は行政機関の一部として官僚的な文化を醸成し、また、学長等大学の執行 部が中央政府に説明責任を負う、一元的なヒエラルヒー構造のガバナンスを形成してきた。 しかしながら、高等教育のグローバル化の中で高等教育の国際競争力の強化が課題となる 中、大学のガバナンスを転換し、大学コミュニティ(教員、職員、学生)、学生の親、中央・

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地方政府、その他社会(雇用主、卒業生、産業界など)のステークホルダーの声を反映でき る体制へと転換することが課題となった(DepartemenPendidikanNasionalRepublik Indonesia2004:26- 7 )。 ( 2 )国立大学法人化の進展 以上のような課題も踏まえ、国立大学の法人化を導入するため、政府は1999年、「高等教 育に関する政令(1999年政令第60号)」5 )を制定し、高等教育制度の中に法人によって運営 される国立大学を位置づけた。そして国立大学法人化の制度設計を示す、「高等教育機関の 法人化に関する決定(1999年政令第61号)」6 )を制定した。同政令第 2 条では法人化された 国立大学は非営利の「国有法人(BadanHukumMilikNegara:BHMN)」とされた。 同政令の前文では国際競争力の向上が制定の目的と謳われ、また、第 3 条で法人の目的の 一つとして「専門的な管理規則に則って資源管理の原則を適用することにより卓越した競争 力を獲得すること」を上げた。また、同政令第 4 条で法人化の条件として、①効率的で質の 高い高等教育の実施、②財務処理能力に関する最低条件の基準を満たすこと、③経済性と説 明責任の原則に基づいた高等教育機関の運営を行うこととされた。 こうした条件を満たす大学から順次法人化が進める方針がとられ、2000年にインドネシア 大学、ガジャマダ大学、バンドン工科大学、ボゴール農科大学の有力 4 大学がBHMNとな り、北スマトラ大学(2003年)、インドネシア教育大学(2004年)、アイルランガ大学(2006 年)が続いた。 このように、インドネシアでは国立大学の国際競争力の強化の観点から法人化が実施さ れ、その特徴は、①個々の国立大学を個別に政令を制定して法人化する、② MWA の導入 によるガバナンス改革、③ 5 年間の事業計画による自律的な事業管理、④財務や人事の自由 度の拡大の 4 点にまとめることができる。 表 1 .高等教育機関数及び学生数(2012/13年) 総合大学 専門大学 単科大学 アカデミー ポリテクニック 合計 国立 学校数 52 7 1 0 36 96 学生数 1,658,696 75,701 1,105 0 76,925 1,812,427 学生数/学校数(A) 31,898 10,814 1,105 - 2,137 18,879 私立 学校数 424 51 1,383 1,099 136 3,093 学生数 2,124,758 178,936 1,265,532 355,694 84,796 4,009,716 学生数/学校数(B) 5,011 3,509 915 324 624 1,296 合計 学校数 476 58 1,384 1,099 172 3,189 学生数 3,783,454 254,637 1,266,637 355,694 161,721 5,822,143 出典:Ministry of Education and Culture, 2013, “Indonesia Educational Statistics in Brief

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( 3 )「教育法人」の導入 政府はこのように国立大学の法人化を進める一方、法人化の対象を拡大し、国立、私立を 問わず、すべての学校教育の主体を法人化するという方針に転換を図った。すなわち、2003 年に教育システムの基本法として定めた「国民教育制度法(2003年法律第20号)」7 )では国 立と私立を問わず、初等教育から高等教育まですべての学校教育の実施者を教育法人 (BadanHukumPendidikan)とした(第53条)。これは、政府が法人化によるガバナンスの 改革等が国立大学だけではなく、私立を含めて必要と認識したためである(Departemen PendidikanNasionalRepublikIndonesia2004:26)。教育法人について具体化するため、 2009年には「教育法人法(2009年法律第 9 号)」8 )が制定された。これにより、2006年まで に BHMN となっていた 7 大学を含む国立大学はすべて「政府教育法人(BadanHukum PendidikanPemerintah)」、 私 立 大 学 は「 民 間 教 育 法 人(BadanHukumPendidikan Masyarakat)」に転換することになった。 ( 4 )「教育法人法」違憲判決 しかしながら、教育法人法は2010年 3 月に憲法裁判所より違憲判決を下された9 )。その主 旨は教育の実施を教育法人に委ねることが教育に関する国の責務を謳う憲法に反するという ことであった。 この判決の背景には社会の大学の商業化に対する不満があった。2000年以来法人化した有 力国立大学が自己収入の拡大のために特別入学枠を設け、多額の入学金や授業料を条件に入 学を認めたが、こうした収入確保策についての社会の批判は大きく、マスコミも大きく取り 上げた(西野2004:114- 7 )。また、一部の私立大学関係者も違憲訴訟の原告となったが、 その理由の一つとして、法人化により導入された MWA がアラビア語起源のインドネシア 語であった10)ことから、キリスト教系の私立大学関係者がイスラーム色の強いものと受け 止め、不安視する声が法人化反対へとつながった面もある11) 違憲判決を受けて、10年 9 月に『「教育の経営と実施に関する政令(2010年政令第17号)」 を改正する政令(2010年政令第66号)」』12)が制定された。これにより、BHMNは 3 年以内 に法人格のない国立大学に移行することになり、MWAの設置根拠も失われた。そこで、例 えば、ITBではその機能を継続させるため、12年 9 月 3 日にITB学長決定によってMWAと 類似した機能を持つ諮問機関として「諮問会議(AdvisoryBoard)」を設置した(Institut TeknologiBandung2015:25)。 ( 5 )PTN-BHの創設 違憲判決の結果、国立大学の法人化は頓挫したが、その再整理を図る意味もあって、2012 年に高等教育の基本法として「高等教育法(2012年法律第12号)」13)が制定された。同法に よって国立の機関は、法人格のない国立高等教育機関と法人国立高等教育機関(PTN-BH) に分かれ、PTN-BHの具体的な組織や運営については各大学について政令で規定する定款に

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よることになった(同法第66条)。 続いて、2014年に「高等教育の実施及び高等教育機関の経営に関する政令(2014年政令第 4 号)」14)が制定された。これによると、PTN-BHに教育研究面では教育プログラムの開設 等、財務面では短期・長期の戦略計画、教育に関する料金の設定、収入・支出の管理、投 資、借入れ、人事面で採用の条件、が大学自身で決められるようになった(同政令23条及び 25条)。 PTN-BHに関する規定は運用が開始されたばかりで必ずしも明らかではないが、これらの 政令等を勘案して、BHMNとPTN-BHの制度設計を比べると、両者は共通点が多く、PTN-BHは2000年来の法人化を継承するものであることが明らかである。 従来のBHMNの 7 大学はPTN-BHに再転換し、その後新たに 3 大学がPTN-BHになり、 現在PTN-BHは10大学となっている。なお、高等教育法に対しても違憲訴訟がなされたが、 2013年12月憲法裁判所はこれを合憲と判断した15) ( 6 )公共サービス事業体財務管理の導入 このような大学改革の流れと併行して行政改革の観点から大学の経営体制の見直しが進ん でいた。国立大学の財務への「公共サービス事業体財務管理システム(PolaPengelolaan KeuanganBadanLayananUmum:PPK-BLU)」の導入である。PPK-BLUは、行政の効率 化という観点から、国庫法(2004年法律第 1 号)16)により導入され、2005年に「公共サー ビス事業体財務管理に関する政令(2005年政令23号)」17)、2008年には「公共サービス事業 体財務管理を適用する国立高等教育機関のミニマム・サービス基準要領に関する国民教育大 臣規則(2008年規則第53号)」18)が整備され、国立病院などと並んで国立の高等教育機関へ の導入が進んでいる。なお、実際にどの程度の財務上の独立性が付与されているのかの詳細 については情報公開されていない。 ( 7 )まとめ このように国立大学の法人化に関する制度は様々な紆余曲折を経て今日に至っている(表 2 )。一方、大学ガバナンス改革のために導入されたMWAについては、2000年の法人化開 始以来の制度設計が維持されていることがわかった。 2 .国立大学法人化による大学ガバナンスの変容 本節では西ジャワ州のバンドン工科大学(以下、「ITB」という)を取り上げて、MWA の機能やその運用について考察する。ITBを取り上げた理由の第一はITBがインドネシアを 代表する国立大学として2000年に始めて法人化された 4 大学の一つであり、MWAの活動実 績が10数年にわたること、第二に、一般に大学運営に関する資料の入手が困難な中、ITBで は学内文書の情報公開が進んでおり、資料の入手が可能であったことである。 以下では、先ず、ITBのMWAの変遷をたどり、次いでその機能について、評議会との機

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表 2  国立大学の法人化をめぐる動向 年 事 項 1999年 ・高等教育に関する政令(1999年政令第60号) ・国立高等教育機関の法人化に関する決定(1999年政令第61号) 2000年 ・国立高等教育機関の法人化の条件及び手続きに関する国民教育大臣決定(042/U/2000) ・インドネシア大学をBHMNとする政令(2000年政令第152号) ・ガジャマダ大学をBHMNとする政令(2000年政令第153号)、 ・ボゴール農科大学をBHMNとする政令(2000年政令第154号)、 ・バンドン工科大学をBHMNとする政令(2000年政令第155号) 2003年 ・国民教育制度法(2003年法律第20号) ・北スマトラ大学をBHMNとする政令(2003年政令第56号) 2004年 ・国庫法(2004年法律第 1 号) ・インドネシア教育大学をBHMNとする政令(2004年政令第 6 号) 2005年 ・公共サービス事業体財務管理に関する政令(2005年政令23号) 2006年 ・アイルランガ大学をBHMNとする政令(2006年政令第30号) 2008年 ・公共サービス事業体財務管理を適用する国立高等教育機関のミニマム・サービス基準要領に関 する国民教育大臣規則(2008年規則第53号) 2009年 ・教育法人法(2009年法律第 9 号) ・教育法人の設置方法、BHMN若しくは国立高等教育機関の転換並びに教育法人として高等教育 を実施する主体の承認に関する国民教育大臣規則(2009年32号) 2010年 ・教育の経営と実施に関する政令(2010年政令第17号) ・「教育法人法」違憲判決(11-14-21-126-136/PUU-Ⅶ/2009、2010年 3 月31日) ・教育の経営と実施に関する政令(2010年政令第17号)を改正する政令(2010年政令第66号) 2012年 ・高等教育法(2012年法律第12号) 2013年 ・PTN-BHの予算の形式とメカニズムに関する政令(2013年政令第58号) ・バンドン工科大学の定款を定める政令(2013年政令第65号)、 ・ボゴール農科大学の定款を定める政令(2013年政令第66号) ・ガジャマダ大学の定款を定める政令(2013年政令第67号)、 ・インドネシア大学の定款を定める政令(2013年政令第68号) ・「高等教育法」合憲判決(2013年12月) 2014年 ・高等教育の実施及び高等教育機関の経営に関する政令(2014年政令第 4 号) ・インドネシア教育大学の定款を定める政令(2014年政令第15号) ・北スマトラ大学の定款を定める政令(2014年政令第16号)、 ・アイルランガ大学の定款を定める政令(2014年政令第30号) ・ハサヌディン大学の定款を定める政令(2014年政令第82号) ・スラバヤ工科大学の定款を定める政令(2014年政令第83号) 2015年 ・PTN-BHの予算の形式とメカニズムに関する政令(2015年政令第26号) ・パジャジャラン大学の定款を定める政令(2015年政令第51号) ・ディポネゴロ大学の定款を定める政令(2015年政令第52号)

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能分担に焦点を当てて記述する。さらに2014年に行われた ITB の学長選考の事例を取り上 げ、MWAの機能とその運用について検討する。 ( 1 )法人化の変遷とMWA 2000年12月に制定された「バンドン工科大学をBHMNとする政令(2000年政令第155号)」19) によりITBはBHMNとなり、同時にMWAが設置された。10年 3 月の教育法人法違憲判決 を受けて、同年「教育の経営と実施に関する政令(2010年政令第17号)」を改正する政令 (2010年政令第66号)」により、ITBは他のBHMNとともに 3 年以内に法人格を失うことに なり、これに伴い、MWAの設置根拠も失われることになった。そこで、ITBではMWAの 機能を継続させるため、12年 9 月 3 日に ITB 学長決定によって MWA と類似した機能を持 つ諮問機関として「諮問会議(AdvisoryBoard)」を設置した。 一方、「高等教育法」では過去に BHMN であった ITB など 7 大学は 2 年以内に PTN-BH に転換すると定められ(同法第97条 c)、13年10月に「バンドン工科大学の定款を定める政 令(2013年政令第65号)、以下「定款」という」20)が13年10月に定められた。 以上のように、MWA は2000年から2012年の間は BHMN の組織、12年 9 月から13年の間 は「諮問会議」という暫定的な位置づけ、そして、2013年以降は PTN-BH の組織として存 在している。BHMNとPTN-BHにおけるMWAの位置づけはほぼ同じである。構成員が20 名から15名へと減少したが、その構成に大きな変動はない。 ( 2 )ITBのガバナンス ITBの主な組織はMWA、評議会及び学長の 3 者である。MWAはITBの施策一般の調整 と決定を行う機関と位置づけられている(定款第 1 条)。その構成員は15名で教育文化大 臣、西ジャワ州知事、評議会議長、学長、社会代表 4 名、評議会代表 4 名、卒業生代表 1 名、職員代表 1 名、学生代表 1 名から成る。学生代表以外の構成員の任期は 5 年間で 1 度だ け再任が許される。学生代表の任期は 1 年間である(同第21条)。 議決権については、学長の任免以外の議題では各構成員が平等に議決権を有する。学長の 選考や解任の議案の場合は教育文化大臣の議決権が有効投票数の35%の重みを占めることに なっており、また、評議会議長と学長は議決権を持たない(同第23条)。 一方、評議会は学術分野において、政策の調整・形成・決定の機能を運用するとともに、 学術に関する指示や指導を行う機関と定義される(定款第 1 条)。その構成はITBでは35名 が学部等から選考され、学長、学部長等の充て職が19名で合計54名となっている。充て職の 構成員には議決権がなく、また、評議会の議長に学長、副学長及び学部長が就くことはでき ない。評議会議長の任免の承認はMWAが行う(同第34条)。 MWA は最高決定機関として、学術分野の基準や政策の決定機能を評議会に委任するが (定款第19条)、評議会が逆に MWA に対して一定の影響力を持つ仕組みもビルトインされ ている。

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表 3 .バンドン工科大学のMWAと評議会の概要 MWA 評議会 所掌 施策一般の調整・決定 教育研究分野の施策の調整・決定・指 導 構成員数 15名 54名 構成 教育文化大臣 西ジャワ州知事 評議会議長 学長 社会代表 4 名 評議会代表 4 名 卒業生代表 1 名 職員代表 1 名 学生代表 1 名 各学部等から選考:35名 学長等執行部、学部長:19名 議決権 学長の任免以外は平等 学長の任免に関する投票数の35%は教 育文化大臣が有する 学長等執行部及び学部長は議決権を有 さない 相互の牽制機能 ・学術分野の基準や政策の決定機能を 評議会に委任 ・評議会議長の任免の承認 ・MWAの委員を大臣に提議 ・評議会代表 4 名及び社会代表 4 名を MWA委員としてMWAに推薦 (出典)「バンドン工科大学の定款を定める政令(2013年政令第65号)により筆者作成 先ず、MWA の構成員の選考は評議会の提議により教育文化大臣が承認する(同第21 条)。評議会代表 4 名と社会代表 4 名の合計 8 名の選考は評議会が行い、これに、評議会議 長を含めると 9 名となり、15名で構成されるMWAの過半数を形成する。 以上のようなMWAと評議会の機能等を比較して整理すると表 3 の通りである。 ( 3 )学長選考の事例 学長の任免については定款第20条に MWA の業務として位置づけられている。なお、法 人化以前は評議会の議を経て大臣の上申に基づき、大統領が学長を任免していた。以下では 2014年から19年を任期とする ITB 学長選考において MWA がどのような機能を果たしたの か、評議会との関係に留意しながら検討する。 ①選考のスケジュールと方法 学長選考は2014年 8 月25日に開始され、同年12月15日に選考が終了した。そのスケジュー ルは表 4 の通りである。 学長選考のプロセスは、①専門委員会による登録者の発掘、資格審査及び第 1 次候補者 (10名)の選考、②評議会による第 2 次候補者( 5 名)の選考、③MWAによる最終候補者 ( 3 名)の選考及び学長の選考である(MWA 規則002/P/I1-MWA/2014

及び016/P/I1-MWA/2014)。

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ていた。その選考規程は表 5 の通りである。 ②学長選考の実際 専門委員会から10名の第 1 次候補者の通知を受けた評議会は11月 8 日に候補者による公開 の討論や質疑応答を行い、その後、11月21日の評議会で投票を行い、その結果を11月24日付 けの学長最終候補者決定に関する評議会決定(18/SK/K01-SA/2014)でMWAに通知した。 その内容は、カダルサ教授23票、インドラトモ教授14票、インタン教授13票、ヘルマワン教 授12票、デニィ教授11票という上位 5 名の投票結果を明らかにした上で第 2 次学長候補者と してMWAに提出した(SenatAkademik2014:25)。 MWAは、上記の評議会通知を受け、12月 6 日のMWAでカダルサ教授、インドラトモ教 授、インタン教授の 3 名を最終候補者に選考した(MajelisWaliAmanat,2014a)。続いて、 表 4 .バンドン工科大学・学長選考のスケジュール 日時 事項 2014年 8 月25日〜10月11日 専門委員会による登録者の発掘及び資格確認 10月29日 専門委員会が評議会に10名の第 1 次候補者(10名)を通知 11月 8 日: 8 時〜12時 評議会(公開)で第 1 次候補者による討論      14時〜18時 評議会(非公開)で第 1 次候補者による質疑応答 11月21日 評議会における投票で第 2 次候補者( 5 名)を選抜 11月24日 上記投票結果をMWAに通知(18/SK/K01-SA/2014) 12月 6 日 MWAにより 3 名の最終候補者を決定 12月15日 MWAにおいてITB学長を選考 表 5 .MWAにおける学長選考に関する規定 最終候補者 3 名の選考 MWAは評議会から提出された 5 名の候補者から話し合いで 3 名を選考 する。もし話し合いで合意に達しない場合は次のような投票で決定す る。 ①すべての構成員は 3 名の候補者名を記入する。 ②投票数上位の 3 名を最終候補者とする。 ・大臣、評議会議長及び学長も含め、全員平等の 1 票を持つ。 学長選考 MWAは最終候補者 3 名から話し合いで学長を選考する。 もし話し合いで合意に達しない場合は次のように投票で決定する。 ①各構成員は 1 名の学長候補者名を記入する。 ②50%以上の投票を得た者がいる場合は学長に選考する。 ③50%に達する候補者が存在しない場合、各構成員は投票数上位 2 名の 学長候補者の中から 1 名を記入する。最も多い投票を獲得した者を学長 とする。 ・評議会議長及び学長には投票権がない。また、大臣は有効投票数の 35%の議決権を有す。 (出典)MWA規則016/P/I1-MWA/2014により、筆者作成。

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12月15日の MWA でカダルサ・スルヤディ教授を学長として話し合いにより選考した (MajelisWaliAmanat,2014b)。 このように、MWAの二段階の審査の結果はいずれも評議会における得票順と一致するも のであった。 2 段階のいずれも投票はなく、話し合いによる合意であった。 ③MWAの関与について 以上のように、2014年の学長選考の事例では評議会の投票結果が反映されたことが確認さ れた。MWAが学長選考に独自の立場で積極的に関与した形跡は見られなかった。規定上は MWAが学長の任免権を有しているが、事実上は評議会の意向が反映されたと考えられる。 また、最終候補者 3 名から学長を選考する際には、教育文化大臣が有効投票数の35%を握 るが、投票に至らずに話し合いで合意が成立した。コンセンサスを重視した選考が行われた ことがわかった。 3 .国立大学の法人化による大学の変化について それでは、法人化による大学現場の変化はどうなっているのか。教育行政、大学現場で国 立大学の法人化に深く関わってきた、サトリオ氏へのインタビュー21)の結果は次の通りで ある。 ・2000年来の国立大学法人化は大学現場によい影響をもたらした。その最大の成果は大学ガ バナンスの改善であり、法人化後、学長の大学運営が広く大学内外のステークホルダーを 意識したものになったと感じる。 ・法人化以前、学長は教学側からなる評議会の議長として大学に君臨し、任命権者の政府だ けを見て大学を運営していた。しかし、法人化で MWA が導入され、学長は学内外の幅 広いステークホルダーに対して説明責任を負うようになった。 ・学長選考では教育文化大臣が投票数の35%の権限を持つが、従来のように100% ではな い。したがって、学長は、政府以外のステークホルダーである、学内の教員、職員、州知 事、学生、卒業生などにも配慮が必要となった。学内の運営に関する情報の開示も進み、 透明性も増した。 ・2000年以来の法人化の変遷の中で、教職員の公務員から法人雇用への移行が課題として 残っている。世界水準の大学を実現するためには教員の非公務員化が重要である。 以上のようにサトリオ氏は法人化における大学改革の成果として MWA の導入によるガ バナンス改革を高く評価している。徐々にではあるが、法人化を契機に大学のガバナンスや 組織文化が変化していると思われる。

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まとめ 本稿では、国立大学法人化に伴う、MWA の導入によるガバナンスの変容について ITB (バンドン工科大学)の事例を中心に検討を行った。 先ず、MWAの全委員15名のうち 8 名は評議会が選考するなど評議会の影響力が担保され ている。また、学長選考においては、教員組織である評議会の投票結果が反映しており、 MWAの積極的な関与の形跡は見られなかった。さらに、MWAでは投票に至ることなく、 話し合いによる合意がなされるなど、コンセンサス重視の運用がなされていると思われる。 一方、MWAの導入によって大学内外のステークホルダーを意識した大学運営が始まるな ど徐々にガバナンス改革の成果が出ていることも明らかになった。 第 1 節で述べたように2000年来の法人化は紆余曲折を経てきた。このため、法人化の成果 を検証するための情報についても現段階では必ずしも十分ではないのが現状だと思われる。 したがって、本稿で取り上げた事例も限られたものとなった。今後、さらなる情報収集を行 い、分析を深めることが課題である。 1 )高等教育粗就学率は19歳〜23歳の全人口に対する高等教育機関在籍者総数の割合。 2 )MajelisWaliAmanat(マジュリス・ワリ・アマナット)はアラビア語を語源とするインドネシア語で あり、最高経営会議を意味する。イスラーム教育に関する用語のほとんどはアラビア語を起源とするイ ンドネシア語である。 3 )PeraturanPemerintahRepublikIndonesiaNomor61Tahun1999tentangPenetapanPerguruan TinggiNegerisebagaiBadanHukum 4 )サトリオ・スマントリ・ボジョネゴロ(SatryoSoemantriBrodjonegoro)氏は高等教育総局長(1999年 〜2007年)として国立大学の法人化の責任者であった。現在、バンドン工科大学教授、最高経営会議委 員(インドネシア大学及びインドネシア教育大学)。 5 )PeraturanPemerintahRepublikIndonesiaNomor60Tahun1999TentangPendidikanTinggi 6 )PeraturanPemerintahRepublikIndonesiaNomor61Tahun1999tentangPenetapanPerguruan TinggiNegerisebagaiBadanHukum 7 )Undang-UndangRepublikIndonesiaNomor20Tahun2003tentangSistemPendidikanNasional 8 )Undang-UndangRepublikIndonesiaNomor9Tahun2009tentangBadanHukumPendidikan 9 )PutusanMahkamahKonstitusiNomor11-14-21-126-136/PUU-Ⅶ/2009 10)イスラームはインドネシアの国教ではなく、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教、儒教も少なくとも建前 上は平等に扱われているが、国民の 9 割はイスラーム教徒であり、スハルト体制崩壊後の民主化を経 て、イスラームの規範が社会の隅々に浸透している(見市2014:19)。 11)サトリオ・スマントリ・ボジョネゴロ(SatryoSoemantriBrodjonegoro)氏へのインタビュー(2015年 7 月 9 日、ジャカルタ市内)による。 12)PeraturanPemerintahRepublikIndonesiaNomor66Tahun2010tentangPerubahanatasPeraturan PemerintahNomor17Tahun2010tentangPengelolaandanPenyelenggaraanPendidikan 13)Undang-UndangRepublikIndonesiaNomor12Tahun2012tentangPendidikanTinggi 14)PeraturanPemerintahRepublikIndonesiaNomor4Tahun2014tentangPenyelenggaraanPendidikan TinggidanPengelolaanPerguruanTinggi

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15)PutusanMahkamahKonstitusiNomor103/PUU-X/2012及びPutusanMahkamahKonstitusiNomor111/ PUU-X/2012 16)Undang-UndangRepublikIndonesiaNomor1Tahun2004tentangPerbendaharaanNegara 17)PeraturanPemerintahRepublikIndonesiaNomor23Tahun2005tentangPengelolaanKeuangan BadanLayananumum1 18)PeraturanMenteriPendidikanNasionalRepublikIndonesiaNomor53Tahun2008tentangPedoman Penyusunan Standar Pelayanan Minimum Bagi Perguruan Tinggi Negeri yang Menerapkan PengelolaanKeuanganBadanLayananUmum

19)Peraturan Pemerintah Republik Indonesia Nomor 155 Tahun 2000 tentang Penetapan Institut TeknologiBandungsebagaiBandanHukumMilikNegara 20)PeraturanPemerintahRepublikIndonesiaNomor65Tahun2013tentangStatutaInstitutTeknologi Bandung 21)サトリオ・スマントリ・ボジョネゴロ(SatryoSoemantriBrodjonegoro)氏へのインタビューは2015年 7 月 9 日16時〜17時、インドネシア・ジャカルタで実施した。 引用(参考)文献 中央教育審議会大学分科会,2014,『大学のガバナンス改革の推進について(審議のまとめ)』(http://www. mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/1344348.htm,2015.9.30) DepartemenPendidikanNasionalRepublikIndonesia,DirektoralJenderalPendidikanTinggi,2004, “StrategiJangkaPanjangPendidikanTinggi(HELTS)2003-2010”.(http://luk.staff.ugm.ac.id/phk/ helts/HELTS2003-2010A.pdf,2015.9.30) InstitutTeknologiBandung,2015,“DasardanStatusHukumITBPengalamanPemilihanRektor”(http:// mwa.itb.ac.id/wp-content/uploads/2014/06/Buku-I-Lap.AB-Dasar-dan-status-hukum-ITBFinal.pdf, 2015.9.30) カミングス,ウィリアムK.・カセンダ,S.,1993「インドネシア近代高等教育の起源」アルトバック,P.G.著, 馬越徹・大塚豊監訳『アジアの大学―従属から自立へ』玉川大学出版部,199-230. リー,モリーN.N.,2004「マレーシアの高等教育の法人化、プライバタイゼーション、国際化」 アルトバック,フィリップ・G.編,森利枝訳『私学高等教育の潮流』玉川大学出版部,135-59. MajelisWaliAmanat,2014a,“SidangPlenoMWAⅩ,6Desember2014” (http://mwa.itb.ac.id/rapat-mwa-x- 6 -desember-2014/.2015.9.4) MajelisWaliAmanat,2014b,“SidangPlenoMWAⅪ,15Desember2014” (http://mwa.itb.ac.id/sidang-pleno-mwa-xii-15-desember-2014/,2015.9.4) 見市建,2014,『新興大国インドネシアの宗教市場と政治』NTT出版株式会社. MinistryofEducationandCulture,2013,“IndonesiaEducationalStatisticsinBrief2012/2013”. 西野節男,2004,「インドネシア―市場化と国家統一維持の政治的課題」馬越徹編『アジア・オセアニアの高 等教育』玉川大学出版部,101-23. 大崎仁,2011,『国立大学法人の形成』東信堂. SenatAkademik,InstitutTeknologiBandung,2014“LAPORANKEGIATANTAHUN2014” 和氣太司,2015,『インドネシアの私立大学―発展の仕組みと特徴―』弘前大学出版会.

表 2  国立大学の法人化をめぐる動向 年 事 項 1999年 ・高等教育に関する政令(1999年政令第60号) ・国立高等教育機関の法人化に関する決定(1999年政令第61号) 2000年 ・国立高等教育機関の法人化の条件及び手続きに関する国民教育大臣決定(042/U/2000) ・インドネシア大学をBHMNとする政令(2000年政令第152号) ・ガジャマダ大学をBHMNとする政令(2000年政令第153号)、 ・ボゴール農科大学をBHMNとする政令(2000年政令第154号)、 ・バンドン工科大学
表 3 .バンドン工科大学のMWAと評議会の概要 MWA 評議会 所掌 施策一般の調整・決定 教育研究分野の施策の調整・決定・指 導 構成員数 15名 54名 構成 教育文化大臣 西ジャワ州知事 評議会議長 学長 社会代表 4 名 評議会代表 4 名 卒業生代表 1 名 職員代表 1 名 学生代表 1 名 各学部等から選考:35名 学長等執行部、学部長:19名 議決権 学長の任免以外は平等 学長の任免に関する投票数の35%は教 育文化大臣が有する 学長等執行部及び学部長は議決権を有さない 相互の牽制機能 ・

参照

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