棒形スキャナを用いた骨材量推定による塩化物イオン量の補正方法
西松建設㈱ 正会員 ○迫 綾子 正会員 原田 耕司 佐賀大学 正会員 伊藤 幸広 奥野 裕太郎
1.はじめに
ドリル粉末を用いた構造物の塩化物イオン量の測定は,
コア法に比べて試料採取時の削孔径が小径で済む反面,試 料が少量であるため削孔する位置に存在する粗骨材の量 によって測定値に大きな誤差が生ずるという問題がある.
そのため,測定結果の精度を上げるために試料採取点数を 多くするなどの措置が必要になる.また,骨材分布の影響 を補正する方法として,JSCE-G 573-2013附属書1(参考)1) の方法があるが,試験が適用できる構造物が限定されるこ とや試験時間やコストが掛かることが課題として挙げら れる.
そこで,上記の課題を解決するため,試料中の骨材量を 棒形スキャナによる孔壁面画像を用いて推定し,塩化物イ オン濃度を補正する方法(以下,本手法と称する)を考案 した.
2.塩化物イオン量の補正方法の概要
本手法は,ドリル粉末を採取した孔を利用して行う.削 孔した孔の壁面を棒形スキャナにてスキャニングし展開 画像を取得した後,その展開画像を解析し試料中の骨材量 を推定する.推定された骨材量から全塩化物イオン濃度測 定値を補正するという方法である.本手法のフローを図-
1に示す.孔内壁面のスキャニングに使用した棒形スキャ ナの外観を図-2に示す.
3.精度検証試験 3.1試験概要
本手法の測定精度を検証するために,NaCl を混入した供 試体を作製して試験を実施した.作製したコンクリートの配 合を表-2に示す.試験体の寸法はφ125×250mmであり,
NaCl 混入量は,全塩化物イオン量が 0.3,1.2,3.0 および 5.0kg/m3の4種類となるようにした.
試料採取は深さ20mm毎に行い,1供試体につき8試料を 採取した.スキャニングした孔壁面画像の一例を図-3に示 す.画像中の白線が20mm毎の深さを表す.
削孔で得られた試料の全塩化物イオン濃度の分析は,JIS A 1154電位差 滴定法に準拠し行った.
3.2試験結果
深さ毎の全塩化物イオン量の補正前後の値の比較を図-4に,各ケース の補正後の値の変動係数を表-3に示す.図中の白丸のプロットが補正前
図-1 補正方法のフロー
キーワード 硬化コンクリート ドリル粉末 全塩化物イオン量 画像解析 棒形スキャナ
連 絡 先 〒105-8401 東京都港区虎ノ門1-20-10 西松建設株式会社 技術研究所 TEL 03-3502-0249 表-2 コンクリート配合表
スランプ (mm)
空気量 (%)
粗骨材 最大寸法
(mm)
W/C (%)
細骨材率 (%) 12 4.5 20 54 46.1
単位量(kg/m3)
セメント 水 細骨材 粗骨材 AE減水剤
317 171 817 998 2.298
20mm 深さ方向
図-3 孔壁面画像の例
ラインセンサ
ガイド目盛
回路部
図-2 棒形スキャナ外観
骨材量の補正式(1)を用いて,対象構造物コンクリートの全塩 化物イオン濃度
y
を求めるa x b
y
1
1 ・・・(1)
φ19mmのドリルを用いて削孔し,所定の深さ毎にドリル 粉末を吸塵装置を用いて採取する
孔をφ25mmに拡張し,棒形スキャナを挿入し孔壁面画像 を取得する
画像処理により,孔壁面画像中の所定区間(深さ)毎の5mm 以上の骨材を抽出し,面積を求める
所定区間(深さ)の面積に対する 5mm 以上の骨材の面積率
s
を算出し,ステレオロジー理論2)より『面積率=体積率』とし,
s a
(:試料中の骨材体積率)とする配合設計関連図書等を参考に,対象構造物コンクリートの 5mm以上の骨材体積率bを求める
JIS A 1154 によりドリル粉末の塩化物イオン濃度xを測
定する
土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)
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の測定値であり,黒丸のプロットが画像解析により骨材量を 補正した後の測定値である.図-4より,各ケースとも骨材 量の補正を行うことで全塩化物イオン量が NaCl混入量に近 い値となった.補正後の各 NaCl混入量別の誤差は,それぞ れ-3.3%,-5.0%,-6.3%および-2.2%である.また,表
-3より変動係数は2.0%前後であり,5本の供試体のばらつ きは小さく,本手法の有用性が証明された.
なお,補正前の測定値がNaCl混入量よりも大きな値となった理由としては,フレッシュ時と硬化時のコンクリー トの単位容積質量の違いによるとも考えられるが,湯浅の実験3)においても同様の傾向が見られ,ドリル削孔によ り採取した試料の測定値が大きくなる原因は明らかとなっていない.
4.まとめ
まとめを以下に列挙する.
(1)ドリル削孔した孔内の壁面画像を画像分析で骨材量を推定することによって全塩化物イオン量を補正する方法 を考案した.
(2)本手法の精度を検証するために,NaCl を混入した試験体を作製し試験を実施した結果,誤差およびばらつき とも大幅に小さくなり本手法の有効性を確認できた.
(3)従来法では,測定精度を向上させるために複数箇所から試料を採取し分析を行っていたが,本手法により少な い測点で検査できる可能性が示された.
参考文献
1) コンクリート委員会・規準関連小委員会:土木学会規準「実構造物におけるコンクリート中の全塩化物イオン分布の測定方 法(案)(JSCE-G 573-2003)の制定,土木学会論文集No.767,V-64,17-25,2004
2) 米山義広他2名:未水和セメント粒子の表面積の評価と水和度との関係,コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,2006
3) 湯浅昇:塩化物イオン量の測定を目的としたコンクリート試料採取方法の検討-コア径及びドリル削孔径の影響-,第 40 回セメント・コンクリート研究討論会論文報告集,71-76,2013
表-3 補正後の測定値のばらつき NaCl
混入量 (kg/m3)
全塩化物イオン量 (kg/m3) (各ケース平均値)
標準偏差 (kg/m3)
変動係数 (%)
0.3 0.29 0.005 1.7 1.2 1.14 0.023 2.0 3.0 2.81 0.082 2.9 5.0 4.89 0.113 2.3 0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
10 30 50 70 90 110 130 150 全塩化物イオン量(kg/m3)
補正前 補正後
0~
20
20~
40 40~
60
60~
80
80~
100 100~
120
120~
140
140~
160 削孔深さ(mm)
(Ⅰ)NaCl 混入量:0.3kg/m3
0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8
10 30 50 70 90 110 130 150 全塩化物イオン量(kg/m3)
補正前 補正後
0~
20 20~
40 40~
60 60~
80 80~
100 100~
120 120~
140 140~
160 削孔深さ(mm)
(Ⅱ)NaCl 混入量:1.2kg/m3
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
10 30 50 70 90 110 130 150 全塩化物イオン量(kg/m3)
補正前 補正後
0~
20 20~
40 40~
60 60~
80
80~
100 100~
120
120~
140 140~
160 削孔深さ(mm)
(Ⅲ)NaCl 混入量:3.0kg/m3
1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0
10 30 50 70 90 110 130 150 全塩化物イオン量(kg/m3)
補正前 補正後
0~ 20
20~ 40
40~ 60
60~ 80
80~ 100
100~ 120
120~ 140
140~ 160 削孔深さ(mm)
(Ⅳ)NaCl 混入量:5.0kg/m3 図-4 深さ毎の補正前後の全塩化物イオン量の比較
土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)
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