飛込選手の腰痛発生要因の解明
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(2) はじめに 飛込競技は高さ 10m の固定台,あるいは 3m・1m の高さの飛板から跳び上がり,入水ま での空間で宙返りや捻り技を行い入水する採点競技である.10m の固定台からの演技では, 入水時の衝撃はおおよそ 400kg 重と大きく,身体への負荷は大きい. さらに近年,飛込競 技の演技は,難易度が高くなり技術が高度化してきている.そのため,トレーニング強度, 頻度共に増加し,それに伴い傷害の発生も増加している. しかし,飛込競技における傷害調査は少なく,基礎的研究はほとんど行われていない. そこで,飛込競技の傷害発生状況を調査し,飛込選手の傷害発生予防法を検討するため, 本研究を行うに至った. 本論 「飛込ジュニア選手における腰痛予防のための介入方法の提言」をするため,ナショナ ルジュニア合宿に参加する選手を対象に,6 つの課題を設定した. 課題 1 では,飛込ジュニア選手における傷害発生状況を明らかにするため,飛込競技全 日本ジュニア強化合宿に参加した男性 60 名,女性 56 名,合計 116 名の傷害発生状況を調査 した.結果,飛込選手では腰痛有訴者が多く,特に伸展時痛を有する者が多かった.また, 対象者の各年齢における腰痛者の割合は,年齢が高くなるにつれて増えていた.傷害発生 場面では,入水時の腰椎過伸展により腰痛を発症している者が多かった. 課題 1 で飛込選手に腰痛が多いことが明らかになったため,続く課題 2 では飛込選手の 腰痛リスクファクターを検討することを目的に以下の 3 つの研究を行った. 研究課題 2-1 では,飛込選手の腰椎器質的変化の特徴を X 線,MRI 画像にて調査し,腰 椎器質的変化と腰痛との関係を検討することを目的とした. その結果,39 名中 12 名 (30.8%) に画像上の側弯を認め,特に女子選手は 16 名中 9 名(56.3%)と高い保有率であった.ま た,8 名(20.5%)に腰椎分離を認め,25 人中 11 人(44.0%)が椎間板変性を有しており, 上位椎間板に変性が多い傾向であった.また,腰椎器質的変化の有無と腰痛既往,腰痛誘 発との間に関連性は認めなかった. 研究課題 2-2 では,縦断的に飛込競技男子ジュニア選手の身体特性の変化を調査し,腰 痛との関係を検討することを目的とした.男子選手 13 名の身体特性を 13~15 歳の間,縦 断的に調査した結果,一般同年代よりも,30 秒上体起こしが高値であり,年々向上してい た.また,15 歳以降の体重の増加,体幹の伸展可動性が不十分であることが,腰痛発症に 関わっていると示唆された. 研究課題 2-3 では,ジュニア飛込選手男子 42 名,女子 41 名において,様々な身体特性,.
(3) 技術特性のパラメータを独立変数として,腰痛に関連する因子をロジスティック回帰分析 により検討した.その結果,男子選手は年齢,肩回旋幅(肩関節・肩甲帯の可動性の指標), 女子選手は年齢が腰痛危険因子であった. 課題 2 より,肩関節・肩甲帯の可動性低下が腰痛発症(特に後方回転種目の入水時)に 関与していることが示唆されたため,課題 3 では男子選手 13 名の飛込競技後方 1/2 回転蝦 型(201B)における入水時アライメントと肩関節可動域との関連を検討した.その結果, 入水時の肩関節屈曲角度と体幹伸展角度の間に負の相関を認め,入水時の肩関節屈曲制限 が腰椎前弯角度の増大に関与していることが明らかになった.さらに,入水アライメント は肩関節屈曲可動域,90°屈曲位での内旋可動域が影響している事が明らかになり,肩関 節可動域の低下を改善,予防する事が腰痛予防につながると示唆された.また,入水時に おいて,腰痛群の入水時体幹伸展角度,入水姿勢角度が非腰痛群と比較し有意に大きかっ た. 課題 3 までの結果から,肩関節可動域低下が入水時の腰椎前弯角度を増大させ,伸展型 腰痛を引き起こしている可能性が示唆された.そこで課題 4 では,飛込ジュニア選手の腰 痛予防法を提言するため,飛込練習前後の肩関節可動域の変化を検討した.その結果,練 習の翌日に 90°外転位での外旋可動域が低下し,90°外転位での内旋可動域が拡大し,90° 屈曲位での内外旋可動域の低下を認めた. 結論 飛込競技では腰痛有訴者が多く,男子選手では肩関節・肩甲帯の可動性低下が入水時 の腰痛発症(主に伸展型腰痛)に関与していることが明らかになった.飛込練習後には 90°外転位での外旋可動域の低下,90°外転位での内旋可動域の拡大,90°屈曲位での 内外旋可動域の低下を認め,飛込競技においてこれらの肩関節可動域の可動性を維持す る事が,腰痛予防に重要であると示唆された..
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