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建築スケールにおける用途混在に対する 都市空間マネジメント

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(1)

建築スケールにおける用途混在に対する 都市空間マネジメント

-東京区部住工混在地と郊外ニュータウンを事例として-

Urban Spatial Management Methods

in correspondence to Functional Diversity of Buildings

- Case Study on Japanese New Town Development and Residential-Industrial Mixed Use Areas in Tokyo -

2010 年 2 月

佐久間 康富

(2)

.

(3)

建築スケールにおける用途混在に対する 都市空間マネジメント

-東京区部住工混在地と郊外ニュータウンを事例として-

Urban Spatial Management Methods

in correspondence to Functional Diversity of Buildings

- Case Study on Japanese New Town Development and Residential-Industrial Mixed Use Areas in Tokyo -

2010 年 2 月

早稲田大学大学院 理工学研究科 建設工学専攻 都市計画研究

佐久間 康富

(4)

.

(5)

目次

(6)

目次

序章 研究課題の整理 1

序-1 研究の背景と目的 3

(1)研究の背景

(2)研究の目的

序-2 研究の用語 5

序-3 研究の枠組みと対象 7

(1)研究の枠組み

(2)研究の対象

序-4 研究の構成と方法 43

(1)研究の構成

(2)研究の方法

序-5 既往研究の整理 47

(1)整理の視点

(2)都市活力の賦活に関する研究

(3)用途および用途の混在に関する研究

序-6 研究の位置づけ 79

第1章 住工混在地における「見えない混在」のある事業所建築物の特徴 83

1-1 はじめに 85

(1)本章の背景と目的

(2)調査分析の枠組みと方法

1-2 対象地の概況 90

(1)墨田区の位置と人口

(2)墨田区の製造業

(3)墨田区の産業政策

(4)墨田区のニット産業

1-3 職住関係に着目した事業所建築物の特徴 94

(1)職住関係・専用/共用による分類とその分布

(2)分類の形態特性(階数・建築面積より)

(3)分類毎にみる構造(図

1-14)

(4)分類毎に見る業種(図

1-15)

(5)事業所建築物と土地利用現況調査による建物用途(図

1-16)

(6)小括

(7)

1-4 まとめ 102

(1)まとめ

(2)考察

第2章 住工混在地における「見えない混在」のある事業所建築物の職住関係

と事業者の評価 105

2-1 はじめに 107

(1) 研究の背景と目的

(2)調査分析の方法

2-2 事業所建築物の職住関係と経営者の評価 108

(1) 事業所建築物の職住関係

(2) 事業所の利用実態

(3)経営者の評価

(4)周辺環境との関係

(5)小括

2-3 職住関係の実態と土地利用現況調査による「建物用途」の関係 123

(1)表札調査による職住関係(1-3)と土地利用現況調査による

「建物用途」の関係(表

2-6)

(2)アンケート調査による職住関係(2-2)と土地利用現況調査 による「建物用途」の関係(表

2-7)

(3)職住関係の実態と土地利用現況調査による「建物用途」の関係

(4)3つの調査間の職住の実態の対応関係(図

2-20)

(5)小括

2-4 まとめ 126

(1)まとめ

(2)考察

第3章 ニュータウンにおける「見えない混在」の分布と利用実態 131

3-1 はじめに 133

(1)研究の背景と目的

(2)調査分析の枠組みと方法

3-2 対象地の概要 140

(1)多摩ニュータウンの概要

(2) 供給住宅の変遷

3-3 アンケート調査概要 142

(1)実施概要

(2)対象の整理(図

3-7)

(8)

3-4 ニュータウン全域における併用住戸の分布と変遷 143

(1) 業種

(2)併用住戸発生率(注

3-7)からみた分布

(3)併用住戸発生率からみた変遷

(4)小括

3-5 各併用住戸における利用実態 148

(1)非居住機能の発生形態

(2)非居住機能が発生している居室の使用類型

(3)余室度と使用類型

(4)来訪者への対応

(5)小括

3-6 まとめ 151

(1)まとめ

(2)考察

第4章 ニュータウンにおける「見えない混在」の運営者の実態と評価 155

4-1 はじめに 157

(1)研究の背景と目的

4-2 各併用住戸における運営者の実態 158

(1)運営者の年齢構成

(2)年齢別にみる住戸内活動時間

(3)家計依存度

(4)発生経緯

(5)住戸外部への展開の希望

(6)非居住機能の受け皿としての空間の供給

(7)小括

4-3 運営者の評価と周辺環境との関係 164

(1) 運営者からの評価

(2)周辺環境との関係

(3)小括

4-4 まとめ 168

(1)まとめ

(2)考察

第5章 都市活力賦活のための一提案 171

5-1 はじめに 173

(1)本章の背景と目的

(9)

(2)調査分析の枠組みと方法

5-2「ファクトリー・ツーリズム」の定義 176

(1) 「ファクトリー・ツーリズム」の定義とねらい

(2)「ファクトリー・ツーリズム」の条件

5-3 墨田区の「3M運動」と「ファクトリー・ツーリズム」 179

(1)墨田区の産業振興施策の変遷と「3M運動」

(2) 「ファクトリー・ツーリズム」の「3M運動」における位置づ け

5-4 条件の検証 181

(1)方法

(2)対象地域の概況

(3)検証条件

1:産地としての集積があること

(4)検証条件

2:工場がまちに開かれていること

(5)検証条件

3:産地としての活力が求められていること

(6)条件4:仕事コミュニティが存在していること

(7)まとめ

5-5 「ファクトリー・ツーリズム」の可能性と限界 194

(1)定番商品の限界から産地の希薄化、空洞化について

(2)製造業のコストと企画立案型産業への転換について

(3)流通問題について

(4)ニット産業のイメージについて

(5)アパレルへの依存体質について

(6)生業の観光化について

(7)小括

5-6 関係者による評価 198

5-7 「ファクトリー・ツーリズム」の応用範囲 199

(1)産業における範囲

(2)地域における範囲

5-8 まとめ 205

(1)まとめ

(2)考察

第6章 「見えない混在」に対する都市空間マネジメント 209

6-1 行為の自己認識における用途の類推に関する課題 211

(1)行為の自己認識における用途の類推からみた「建築スケールの 用途混在」の実態(表

6-1)

(10)

(2)これまでの都市計画の課題

6-2 建築物の外観から行う用途の類推に関する課題

215

(1)建築物の外観から行う用途の類推からみた「建築スケールの用 途混在」の実態(表

6-2)

(2)これまでの都市計画の課題

6-3 「建築スケールの用途混在」に対する「都市空間マネジメント」

218

(1)建築物の形態への対応

(2)建築内の行為への対応

(3)「建築スケールの用途混在」に対する「都市空間マネジメント」

終章 研究の総括 223

付 229

参考文献一覧

231

図表リスト

236

研究業績一覧

240

謝辞

247

(11)

研究課題の整理

序章

(12)
(13)

序-1 研究の背景と目的

(1)研究の背景

1)これまでの都市計画と人口減少時代の都市計画

産業革命の母国イギリスにおいて、19 世紀、都市問題が最も早く表れたといわれている。

「中小の工場が都市の中に無秩序に入り込み、林立する煙突から出る黒煙とガスは空を掩 い、工場排水は家庭の汚水とともに低地に溜まり、悪臭を放った。(中略)狭い道路は屈曲 したままで、住宅は工場に隣接して建てられ、建て増しや割り込みによって、日照や通風 の満足に得られない密集市街地が各所に形成されていった」(文序 -1)とされている。さらに、

伝染病も発生し、こうした産業化の帰結としての都市化にともない発生した都市問題に対 して、居住環境の確保を中心とした命題を掲げ近代都市計画はうまれた。

以来、都市空間のコントロールを目的とし、さまざまな計画技術が発達し、特に、都市 の過密への対策として、市街地の拡大抑制をいかに行うかに苦心してきた。大ロンドン計 画で策定されたグリーンベルト、区域区分における市街化区域と市街化調整区域の「線引 き」、開発許可制度、首都圏整備計画における衛星都市、都市計画分野以外においても工業 等制限法など、さまざまな手法を用いて、市街地の拡大抑制に対して計画的な挑戦を続け てきた。

しかしながら、2005 年、日本は総人口が減少局面となる人口減少社会に入った。都市計 画に対する社会的な要請も、都市活力の制限、市街地拡大の統制から都市活力の賦活、市 街地の計画的な縮退へと変わりつつある。

2)生活形態、就業形態の変化

都市化を先導した第 2 次産業を中心とした産業社会から、第 3 次産業に特化した情報社 会への転換によって、インターネットを中心とする情報技術の発展、工業の軽量化が進み、

生活者、事業者の住まい方、働き方において「住むところ」と「働くところ」が明確に規 定できなくなってきている。これまで空間の形態に対応していた人間の営みが、空間の形 態と直接対応することなく、自由に人々の生活行為、生産行為が行われるようになってい る。住宅の中で書類作成などの生産行為が行われ、町の喫茶店でも、軽量化した情報装置 を用いながら、打ち合わせや、書類作成が行われる。これらの営みは絶えず転換可能であり、

建築内で行われる人々の行為自体が時間的・空間的に小さな単位に細分化してきている。

(14)

3)成熟社会における都市活力の賦活

一方、都市活力の賦活においては、小林重敬(文序 -2)によれば、S O H O、コミュニティ・ビ ジネスといった「小さな単位で新しい機能が進出し、地域経済を活性化し」ていくことが 望まれているが、これらは住宅などの建築タイプに外観からは判別できない工場や事務所 などの用途が含まれるものである。

野嶋ら(文序 -3、序 -4、序 -5)

によって、地域活性化や魅力ある市街地形成に寄与するとの視座 から地方都市の住宅地における非居住機能の実態を扱った報告、羽鳥らによって(文序 -6)、 都市のマンションやの集合住宅に非居住機能が入り込み始めていることの報告がある。住 まうための器であった住宅、マンション、集合住宅にさまざまな生産活動としての非居住 機能が展開し始めており、羽鳥らは様々な用途に対応できる新たなビルディングタイプの 必要性を指摘している。

こうして外観から類推できる用途の形とは違った形での行為、使われ方が報告され始め ている。また、都市活力の賦活という観点からは、こうした行為の広がりが期待されている。

4)ストック活用社会の到来

また、地球環境の有限性に基づいた持続可能な社会の実現のために、いわゆる「200 年住宅」

といわれる政策に表れているように、これまでの資本や資源を長期間にわたって活用する ストック型社会への転換が求められている。その解決策のひとつとして、コンバージョン、

リノベーションといわれるような用途転換が試行されてきているが、建築物の外観から判 別できない用途が結果として発生する。

ニュータウンに目を転じてみても、人々の生活形態・就業形態の多様化に伴い、開発時 に予測されなかった住み手の新たなニーズが生まれ、各住戸内において事務所、各種趣味 教室などの非居住機能が展開している(文序 -7)。既往の研究において、非居住機能の存在を 指摘しているものはあるが(文序 -8、文序 -9)

実態の詳細は報告されていない。

これらはストック型社会の実現、都市活力の賦活という社会的要請からの観点では重要 な事例であるが、結果として、建築時の確認申請とは違った用途として利用されることに なり、外観からは類推できない用途として利用される。

5)問題の所在

以上、これらの対象は、都市活力の賦活という社会的要請の観点から、重要な事例であ るものの、これまでの都市計画の枠組みではとらえられてこなかった。人口減少社会にお ける計画論を構築する上で、こうした実態の解明が喫緊の課題として掲げられている。

(15)

(2)研究の目的

本論文では、建築物の外観から判断できない建築内の行為自体が時間的・空間的に細分 化している様態を「建築スケールの用途混在」と称し、未解明の実態を明らかにし、人口 減少時代における都市活力の賦活に向けた都市空間マネジメントからの対応を提示するこ とを目的としている。

「建築スケールの用途混在」の把握にあたっては、建築内の行為自体が時間的・空間的に 細分化され居住機能と非居住機能の両者が未分化のまま存在する住工混在地と、その結果 として建築内の行為と外観から類推される用途の関係を分析するため、住居と類推される 外観を持つニュータウンを対象にした。

具体的には、本研究の細目的としては以下の内容が挙げられる。

住工混在地における「建築スケールの用途混在」の実態については、以下の3点を明ら かにすることを目的とする。

1)職住関係に着目した事業所建築物の特徴

2)居住機能の有無による事業所の利用実態と経営者の評価 3)職住関係の実態と事業所建築物の外観との関係

ニュータウンにおける「建築スケールの用途混在」の実態については、以下の4点を明 らかにすることを目的とする。

1)ニュータウン全域の併用住戸の分布特性と変遷 2)各併用住戸の平面特性

3)各併用住戸の利用実態

4)運営者・管理者の立場からの非居住機能の評価と認識

さらに、都市活力賦活のための一提案においては、以下の3点を研究目的とする。

1)「ファクトリー・ツーリズム」という住工混在地における産業振興策の提案 2)産業の抱える問題との対応による、「ファクトリー・ツーリズム」の可能性と限界 3)「ファクトリー・ツーリズム」の関係者による評価と実現化に向けた条件

4)「ファクトリー・ツーリズム」の応用範囲

以上から、得られた知見を整理することで、「建築スケールの用途混在」に対する都市空 間マネジメントからの対応について明らかにすることを目的とするものである。

(16)

序-2 研究の用語

研究の用語を以下の通りに定義する。

居住機能 :住戸の中で行われる飲食、就寝、個人的な余暇・趣味活動を居住機能 とする。具体的には表札調査において、運営者名、経営者個人名が掲げ られているものとした。

非居住機能 :居住機能に対し、業務活動や来訪者を伴う趣味活動や生産活動を非居 住機能とする。具体的には表札調査において、運営者名以外の組織名、

団体名の記載があったもの、事業所名のみのものとした。

併用住戸 :各住戸において非居住機能を発生させたもの。

運営者 :併用住戸内で非居住機能を運営している人。

団地 :一団の住宅棟群。多摩ニュータウンでは各団地に個別の名称が付けら れており、同一の団地においては竣工もほぼ同時期となる。

供給者・管理者:供給者は分譲住宅を販売する主体、管理者は賃貸住宅を管理する主体。

多摩ニュータウンにおいて、供給者は都市基盤整備公団(当時。現・都 市再生機構)、東京都住宅供給公社が該当し、管理者は都市基盤整備公団、

東京都住宅供給公社、東京都が該当する。

専用 :対象建築物に掲げられている表札が当該事業所名・経営者名のみのも のをさす。

共用(主) :対象建築物に掲げられている複数あるものをさし、そのうち当該事業 所名・経営者名が主たるものをさす。

共用(副) :対象建築物に掲げられている複数あるものをさし、そのうち当該事業 所名・経営者名が副たるものをさす。

経営者 :対象事業所を経営する人。

「ファクトリー・ツーリズム」:都市型産業における分業体制を活用して、ツーリストが 自分自身のオリジナル製品をつくるために、ものづくりの過程を追いか けながら、まちあるきを楽しむ参加型の余暇活動のこと。本研究におけ る、都市活力賦活のための一提案である。

(17)

序-3 研究の枠組みと対象

(1)研究の枠組み

本節では、本研究で対象とする「建築スケールの用途混在」、「都市空間マネジメント」、 ならびにこれらを論ずる前提となる「計画」、「用途」、「混在」という概念について整理し ておきたい。

1)「計画」とはなにか

・主体と環境の相互規定

本研究では、「計画」とは、「主体と環境の相互関係の中で環境に対して働きかけをしよ うとする主体の意思を整理して表したもの」と定義する。

人間である主体は周囲の環境から独立しては存在し得ない。人間が自己同一性を獲得し ようとする際に、なにもない空間から人間として主体を確立することはできない。そもそ も誕生する時点において、生まれる時代である時間、生まれる国家、場所といった空間は 所与に規定されている。家族構成、生活文化、言語、宗教などの与えられた環境を手がか りに自己同一性を確保し、環境との相互関係の中で主体が確立されていく。和辻(文序 -10)に よれば風土という環境と人間の関係において「寒さを感ずる」というときに、「すでに我々 自身が寒さの中に出ているということに外ならない」という認識から、「風土は人間存在が 己を客体化する契機であるが、ちょうどその点においてまた人間は己を了解するのである」

とし、人間が自己認識を確立する際に、風土に大きく規定されていることを示している。

また、桑子(文序 -11)によれば、「個性の起源は、人間が身体を持っていることであり、個性 とはその身体の配置と履歴である」とし、やはりその身体が配置されている場によって、

個の理解が規定されていることと、時間的な履歴が大きく影響していることを論じている。

さらに、J . ギブソンにより提唱されたアフォーダンス理論(文序 -12)においても、アフォー ダンスは「動物にとっての環境の性質」であり、「環境としての物体の持つ性質が、知覚す る主体にとって物体自身をどう取り扱ったら良いかについてのメッセージをユーザに対し て発しており、その相互関係において人間が認知をしている」とするものである。いずれも、

人間自身の存在自体、またその存在の理解において、主体をとりまく環境に大きく依拠し ていることを論じている。

では、主体はすべて環境によって決定されるかというと、必ずしもそうではない。まっ

(18)

図序 -1 相互に規定しあう主体と環境

主体

環境

主体

環境

働きかけ 影響

主体

環境

働きかけ 影響

1)主体と環境

2)相互に関係する主体と環境

3)相互に規定しあう主体と環境

(19)

たく手つかずの自然という環境は、現代ではほとんど想定し得ない。すべてにおいて主体 の意思により形づくられた環境に身を置いている。さらに、各主体がそれぞれ自らの置か れている環境に対して働きかけをすることができる。必要があれば、手を入れ、必要があ れば改善し、そして必要があれば、その場所を離れ、適した場所に移動することもできる。

こうしてある主体による働きかけによって、環境は改変され、それ以降の主体にとっての 環境を形成する。

こうして主体と環境はそれぞれ独立して存在するものではなく、相互規定しあう関係の なかで成立している。こうした主体と環境の相互に規定しあう関係が、まずは想定される

(図序 -1)。

・「小さな意思」

こうした主体と環境のなかで、「計画」とはどのように考えればよいか。

下町のように家々が思い思いの形で成立し、それぞれの家々の生活がうかがい知れる街 並みを歩いていると、自然発生的にその街並みが成立したかのような錯覚を覚えることが しばしばある。しかしながら、いずれの場合も、その前提には一人ひとりの主体の「小さ な意思」が働いており、その「小さな意思」の集合があたかもあらかじめ定められたかの ような関係性を持って立ち現れてきているため、自然発生的に成立したかのように見える と筆者は考える。その前提には、必ず先に見たような環境に対して働きかけをする「意思」、 一人ひとりの主体としての「小さな意思」が存在している。そしてこれこそが、「計画」の 根底にあるもっとも本質的なものである。

・「小さな意思」が「計画」になるために

さらに、こうした「小さな意思」が「計画」となるためには、主体が2以上の場合を想 定しなければならない。ある主体の「小さな意思」が、それ以外の主体に対して「小さな 意思」を伝えようとするとき、曖昧とした「小さな意思」を整理し、表現してはじめてコミュ ニケーションすることができるようになる。

ある主体の「小さな意思」は、環境からの影響がないところで自ずから立ち上がってく るものではない。環境からの影響に対する応答として、主体の「小さな意思」は立ち上がっ てくる。その「小さな意思」は最初から明瞭に形作られたものではなく、立ち上がってく る過程において、その輪郭は曖昧な状態で立ち上がってくる。ある環境に接したときに「な んとなく気持ちがいい」、「なんとなく違和感がある」といったような状態である。こうし た曖昧な状態では他の主体とコミュニケーションするのは難しい。ある主体自身の小さく

(20)

やわらかな意思を言葉、図、身振りなどを通じて表現することができて、はじめて他主体 とコミュニーションが可能になる。こうした曖昧な状態から「小さな意思」は生まれ、「計 画」の出発点となる。しかし、言葉、図、身振りなどで表現するだけでは、都市という環 境への働きかけはできない。都市については、様々な定義があるが、都市とは「相互に織 り込まれた流れの中の、流動的かつ拘束し得ないつながり」(文序 -13)とするのであれば、そ の定義から構成主体は複数であることは自明であり、市民、行政、事業者といった立場の 異なる主体から構成される。こうした立場の異なる複数主体による意思決定があって、は じめて都市という環境に対して「働きかけ」をすることができる。その複数主体に対する 意思決定のためには、「小さな意思」が言葉、図、身振りなどで表現され、複数主体による

「小さな意思」の伝播という働きかけがされなければならない。こうして表現されたものが

「計画」であると筆者は考える。

もちろん、ある1主体のなかで完結する場合もある。ある時点の1主体が、未来に向かっ て自分の意思を整理し表現しようとする場合には、将来の「他人」に対しての意思の整理 といえる。小学生が夏休みに作成するスケジュールはもちろん、生産行為の過程で作成さ れる To Do リストも計画の一つであるといえる。

以上のように、2以上の主体間でコミュニケーションが可能なように、複数主体で構成 される都市という周辺環境へ働きかけをしようとする主体の意思を分かりやすく整理し、

表現されたものが「計画」であるといえる。

・意思が表象される主体のスケール

さらに、「都市計画」における「計画」を考える際には、「計画」を発意する、あるいは「計 画」への意思が表象される主体や、意思が向けられる対象となる環境のスケールをも考慮 に入れなければならない。

対象となる環境のスケールでみれば、国家をまたぐ City Region という枠組みから、国 土形成計画等の国土計画、都道府県の総合計画、都市計画マスタープラン、市町村におけ る総合計画、都市計画マスタープラン、さらには都市計画マスタープランの地域別構想や 再開発事業などの地区の計画、各事業所の施設計画、各世帯の生活見通しなど、対象とな る環境のスケールによってその計画の表れ方も変わってくる。

また、対象となる環境のスケールに対する主体のスケールも、国家から、都道府県、市町村、

企業、市民、一人ひとりの生活者など、主体のスケールによって、計画の表れ方も変わる。

「都市計画」においても、都道府県・市町村の意思によって、土地利用計画が定められて きたが、経済社会情勢の変化に伴い利害関係者が多様化する相対的に大きなスケールによ

(21)

る主体の意思の表明が難しくなってきている。企業や市民といった相対的に小さなスケー ルの主体による意思による都市への働きかけ(は従来から存在してきたが)と、その多様 な小さな意思をとりまとめて方向付けることがより重要になってきている。改めて指摘す るまでもないが、1992 年の都市計画法改正により規定された「都市計画マスタープラン」

において必ず市民の意見が反映されるよう定められたように、多元的な価値が併存する現 代社会において、市民という小さなスケールの意思の表明が都市計画というフィールドを 構成する上で欠かせないものになっている。

・既往の「都市計画」における「計画」の定義について

ここで既往の文献から、本研究の「計画」の位置づけを確認しておきたい。

既往の文献では、「計画」自体の定義を述べているものは管見のかぎり多くは見つけるこ とができなかった。

たとえば、「都市計画」の定義としては、以下にあげるような事例がある。

周知の通りであるが、都市計画法には、第4条1項において、「都市の健全な発展と秩序 ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画」と定 義されている。

日笠ら(文序 -1)によれば「都市というスケールの地域を対象とし、将来の目標に従って、

経済的、社会的活動を安全に、快適に、能率的に遂行せしめるために、おのおの要求され る空間を平面的、立体的に調整して、土地の利用と施設の配置と規模を想定し、これらを 独自の論理によって組成し、その実現を図る技術である」とされている。

三村(文序 -14)によれば、都市計画の本質として「都市の形態と空間構成を決めること、交

通通信施設や物質循環施設によって都市機能を効率化すること、自然環境と歴史環境を保 存しながら新しいアメニティを造出することなどこれらの相互に矛盾することもすくなく ない政策ニーズを、かけがえのない各都市地域の空間において総合的に実現するところ」

だと主張している。

川上(文序 -15)によれば、都市計画とは「都市を創り、あるいは発展・改造するために地域

社会像を絵にして提示する行為」としている。

後藤(文序 -16)によれば、「都市計画とは、都市の物的な状況の改善という主要目的に向けて、

これに関連する手段的要因を計画的にコントロールしようとする社会的技術のこと」とし ている。

根上(文序 -17)によれば、都市計画は、「現在私たちが生活している都市をつくり、維持し

ていくための技術や仕組み(制度)」としている。

(22)

米野(文序 -18)によれば、「都市計画というのは、公共の福祉の観点から都市の『空間』を『計画』

し、計画に基づく『事業』で整備を進めるとともに、開発行為を『規制・誘導』することで、

長い時間をかけて計画の意図を実現しようとするもの」としている。

以上から、「都市計画」=「計画」、「(社会的)技術」、「絵にして提示する行為」、「計画・

事業・規制・誘導」、として定義されていることがわかる。都市計画は「計画、事業、規制・

誘導という手法から構成される社会的技術」であるとすれば、本研究は特に「計画」に着 目しているといえる。

「計画」の定義を試みたものとしては、以下の様なものがあげられる。

根上(文序 -17)によれば、「計画」とは「ある意図をもって物事を行う場合に、その方法や

手順を決めていくこと(その一連の行為を指す場合と、決めた内容やそれを表現した図書 類を指す場合がある)である」としたものがあり、また、都市計画の対象となる都市は大 きく複雑であるため、計画の意図も単純ではないことを指摘している。

また、後藤(文序 -16)は、「計画」には様々な用法があり、「プロダクトとしての「P l a n」、 プロセスとしての「Plan-making」、技術としての「Planning」」という用法があることを指 摘している。

また、都市計画の定義ではあるが、川上(文序 -15)による「都市を創り、あるいは発展・改 造するために地域社会像を絵にして提示する行為」というのも、「計画」に関心を寄せた定 義であるといえる。

本研究における「主体と環境の相互関係の中で、都市という環境に対して働きかけをし ようとする主体の意思を整理して表したもの」という定義は、根上や、川上と同様に本研 究においても「計画」という行為に関心を置いているものと位置づけられ、特に、主体と 環境の相互関係、主体の意思という点に着目しているところが特徴的である。

2)「用途」について

本研究としては、「用途」、「ある空間の形態に対応して行われる人間の行動、アクティビ ティを認識可能な型にわけたもの」とする。

用途が、アクティビティに依拠すると考えたときに、その様態はあまりに多様である。

また、人々の生活の行動は、居住機能、非居住機能と簡単に分類できるものでもないし、

そうした分けて認識をするという営み自体、批判の遡上に上っている。しかしながら、都 市計画、あるいは「土地利用計画」という行政や市民、事業者等の複数の主体間で共有す ることが必要となるフィールドにおいては、共有と理解が可能なわかりやすい型に分けて 認識せざるを得ない。私たちは、複雑なものを複雑なまま表現、記述し、共有することが

(23)

望まれるが、残念ながら現段階の私たちの認識のあり方は、複雑なものを複雑なまま、混 じり合っているものを混じり合っているまま認識することはできない。還元された要素の 総合が、必ず全体になるわけではないが、私たちは当面、ある型や要素に分節して対象を 認識せざるを得ない。

複雑系に関する議論(文序 -19)にみるように、こうした事物を分節する理解のあり方、認識 のあり方が見直されているが、多くの市民の合意を前提とする都市計画という分野におい ては、「わかりやすさ」、またそれに起因する「説得力」は重要な価値である。当面、要素 に分節して表現、理解する方法に依拠せざるを得ない。

本研究でもこうした認識のもと、人々の行動の表れである用途を、居住機能、非居住機 能と分節して理解していく。

しかしながら、「居住機能」という言葉によって具体的な空間を特定することも、また明 確ではない。「住宅」については、法令や各種統計調査において、表序 -1、序 -2 のような 定義がなされている。しかしながら、本研究の対象とするのは併用住戸であり、ニット産 業の事業所建築物においては居住機能、非居住機能の双方が対象となるため、これらの定 義によることはできない。仮に、建築物内にトイレ・流し台(台所)・浴室のいわゆる「3 点セット」があったとしても、それが従業員の休息などのためのものなのか、居住のため のものなのか、形態だけでは判別できない。また、事業所建築物に、物干し竿や和室の障 子窓を外観から見ることができる場合であっても、物干し竿は、もっぱら居住の用途のた めの洗濯を干す場所なのか、従業員の衣服を干す場所なのかを判別できないし、和室は事 業所における応接室なのか、居住のためのものなのかを判別することはできない。

そのため本研究では、外観からの用途の判別方法として、表札調査(注序 -1)を用いるとと もに、実際の用途、つまり建築内の行為においてはアンケート調査によった。

(24)

法令名称 住宅の定義 住宅金融公庫法 第二条 1 人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分をいう。

住宅の品質確保の促進等

に関する法律 第二条 1 人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分(人の居住の用以外の用に供する 家屋の部分との共用に供する部分を含む。)をいう。

住宅・土地統計調査規則 第三条 1 一の世帯が独立して家庭生活を営むことができるように建築され、又は改造 された建物又は建物の一部(建築中又は改造中のものを含む。)をいう。

住宅融資保険法 第二条 1 主として人の居住の用に供する家屋をいう。

※ 法令名に「住宅」が使用されており、「住宅」の定義が記載されているもの。

※ 以下の参考文献を元に筆者作成(坂真哉:建物の用途に基づいた規制について-住宅を中心として-、「コンバー ジョンを通して考える住宅という用途」、第26回住総研シンポジウム資料集、pp.5-20、2006)

統計調査名称

住宅・土地統計調査

国勢調査

建築確認における定義

一戸建の住宅やアパートのように完全に区画された建物の一部で,一つの世帯が独立して 家庭生活を営むことができるように建築又は改造されたものをいう。

ここで,「完全に区画された」とは,コンクリート壁や板壁などの固定的な仕切りで,同 じ建物の他の部分と完全に遮断されている状態をいう。

また,「一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができる」とは,次の四つの設備要件 を満たしていることをいう。

(1) 一つ以上の居住室

(2) 専用の炊事用流し(台所)(共用であっても,他の世帯の居住部分を通らずに,いつ でも使用できる状態のものを含む。)

(3) 専用のトイレ(共用であっても,他の世帯の居住部分を通らずに,いつでも使用でき る状態のものを含む。)

(4) 専用の出入口(屋外に面している出入口又は居住者やその世帯への訪問者がいつでも 通れる共用の廊下などに面している出入口)

一つの世帯が独立して家庭生活を営むことが出来る永続性のある建物(完全に区画された 建物の一部を含む。)一戸建ての住宅はもちろん、アパート、長屋などのように家庭生活 を営むことが出来るような構造になっている場合は、各区画毎に一戸の住宅となる。な お、店舗や作業所付きの住宅もこれに含まれる。

現場の判断にゆだねられる。

一般的には形態上、一以上の居室を持つとともに専用の出入り口を有し、トイレ・流し台

(台所)・浴室(「3点セット」と呼ばれている)を備えているもの。

住宅の定義

※ 以下の参考文献を元に筆者作成(坂真哉:建物の用途に基づいた規制について-住宅を中心として-、「コンバー ジョンを通して考える住宅という用途」、第26回住総研シンポジウム資料集、pp.5-20、2006)

表序 -1 法令による住宅の定義

表序 -2 統計調査による住宅の定義

(25)

3)「混在」について

・相対的に決定される「混在」

本研究では、「混在」という用語を、「2種類以上の用途がある単位空間内に併存してい る状態」とする。

しかしながら、どこまでの混じり具合の場合に「混在」と称し、どこまでの混じり具合 の場合に「純化」と称するかの基準は曖昧である(図序 -2)。つまり、単位空間の設定に 依存するといえる。

前項での議論でみたように、連続したものを連続したままとらえることはできないので、

認識可能な型に分節しなければならない。本研究では、地域類型では大きく「住居地域」、「住 工混在地域(住商混在地域)」、「工業地域(商業地域)」と分節される。本研究では建築スケー ルにおける用途混在に特に着目するため、対象となる建築類型を「住宅」、「併用住宅」、「事 業所建築物」の3つに分節し、理解するものとする。

また、単位空間の設定により、混在の様相は異なって立ち現れる。「混在」とは、用途間

居住機能

地域類型 建築類型

混在

純化 純化

非居住機能

住居地域 住工混在地域住商混在地域 工業地域商業地域 住宅 併用住宅 事業所建築物 図序 -2 相対的に決定される「混在」

建築内混在

(床間)

建築内混在

(室間)

建築内混在

(室内)

混在の 諸形態

用途間 の関係 職住の 関係 段階

敷地内混在 街区内混在 地区内混在 地域内混在

「既成市街地における住工混在地帯環境整備計画調査」建設省、1974年 に加筆 室で複合

職住近接 職住分離

床で複合 室で分割

建築で複合 床で分割

敷地で複合 建築で分割

街区で複合 敷地で分割

地区で複合 街区で分割

地域で複合 地区で分割

都市内混在

都市で複合 地域で分割

図序 -3 様々なスケールにみる用途混在の諸形態

(26)

の関係を表す概念であるため、対象とする単位空間の大きさの設定によって、相対的に決 定される。大きな単位空間においてはすべて混在しているともいえ、小さな単位空間にお いてはすべて純化しているともいえる。本研究においては、図序 - 3に示すように、おお むね建築内混在から街区内混在程度のもの、特に、建築内混在に着目している。

・「混在市街地」と「小さな意思」

では、「混在市街地」を、どのようにとらえるのか。本研究では、「市街地のなかの生活者、

事業者の多様な主体による「小さな意思」が反映されて集合した様態」であると考える。

先に見たように、用途の混在した市街地は、一見「計画」もなく、それぞれの家々が思 い思いの形で成立し、自然発生的にその街並みが成立し、隠された秩序が存在しているか のように感じられることがしばしばある。しかしながら、いずれの場合も、その前提には 一人ひとりの主体の「小さな意思」が働いており、その「小さな意思」の集合が、あたか もあらかじめ定められたかのような関係性を持って立ち現れてきているものであると考え る。隠された秩序によって、あたかも一つの生き物のように調整された関係性の元、全体 が構成されているようにも見えるが、その前提には、必ず先に見たような環境に対して働 きかけをする「意思」、一人ひとりの主体としての「小さな意思」が存在している。行政な どによる基盤整備などのスケールの大きな意思が「小さな意思」を発する主体の生活環境 の基盤に働きかけられている場合もしばしばあるが、その土台のうえでの生活者、事業者 による「小さな意思」によって、市街地が構成されているのである。

・「混在」と「混合」という用語

三村らの既往の研究(文序 -20)においては、「混合」という用語が使用されている。「混合」は、

「専用に対置された概念」、「居住専用と生産専用との中間にあるのが混合地域」とし、「混 在」は「主成分とは異質な物の存在」、「複能」は「機能的な見方で、住工混合地域の1つ」、

「複合」は「2 種以上の機能があわさって一体となった状態」、「住工混合地域を1つの合成 機能体と理解する場合」とそれぞれ用語の定義と使用する場面の想定がされている。三村 らが使用しているように「混合」という概念が本研究の対象として近しいものではあるが、

「混ぜ合わせる」と解釈すると、ある主体の意思により積極的に用途を関係づける意味が含 まれる。本研究では、用途における主体の意思について特に配慮を払うため、そのような 意味が含まれない用語がふさわしい。そのため、「混ざっている状態」、「異なる用途が併存 している状態」として、より一般的に使用されている「混在」という用語を使用すること

(27)

とする。

また、同じく三村ら(文序 -20)によって、対象とする住工混合地域においては「工場および 住宅の単位、またはその集まりの規模が小さく、つまり一定以下の粒度であって数多くの 粒子が空間的に入りまじっている状態」とし、「地域把握の単位が大きすぎるとすべての地 域が混合地域に判定され、逆に小さくしていくと専用地域に判定され」、資料入手との可能 性も鑑みて、500m メッシュ(250ha)が適切な単位として指摘している。

また、本研究の関心である「用途の見方」については、三村らは、「土地利用あるいは建 物利用といった空間利用用途でみているものが多い」と指摘するにとどまっている。「土地・

建物の利用に着目するのは、混合を現象としてみる上では分かりやすい指標」であること を理由としている。

本研究としては、これらを否定するものではないが、「建築スケールの用途混在」と称す る建築内の行為自体が時間的・空間的に細分化され、建築物の外観からは見えない用途の 混在を扱うため、建築内の2以上の用途の関係について、特に着目する。具体的には図序 -3 に示したような、建築内混在に着目するものとする。

・都市計画における用途地域の変遷

これまでの都市計画は用途を「純化」を志向して改正が重ねられてきた(文序 -21、文序 -22)

(図 序 -4、序 -5)。

1919 年、市街地建築物法、旧都市計画法の制定によって、住居地域、商業地域、工業地域、

ならびに用途地域の種類の未指定と4種類の用途地域として、わが国の都市計画における 用途の制限は始まった。1938 年、市街地建築物法の改正により、住居地域に中小工場が立 地可能だったため、住居専用地区が創設された。また、埋め立て地、運河沿いなどの苦行 的利便を図る地域のために工業専用地区が創設された。1950 年には、建築基準法の制定の 際、それまで制限のなかった工業地域において工業の利便を害するものの建設が禁止され た。

1969 年、新都市計画法、1970 年、建築基準法の改正の際には、用途地域が 6 種類から 8 種類に拡充された。郊外その他の問題ある用途の住宅関係地域からの排除を中心に、地域 環境の純化と維持向上が図られた。1992 年、都市計画法、建築基準法の改正時には、用途 地域がさらに 12 種類に拡充された。事務所が住居系の用途地域に無秩序に進出することへ の対策が背景であった。

こうして、1919 年から 1980 年にかけては工業の環境悪化要因から住環境を守るための 改正が行われてきており、1980 年以降は地価負担力の違いによる事務所などの住居系用途

(28)

1919

1910 1920 1930 1940 1950

1919 1906

1917

1906 1913

1950 1938

1931

1923 1945

1939 1931

1938 1939 市街地建築物法

旧都市計画法 建築学会:建築物法制

会の動き(片岡安)

都市計画調査会(佐野 利器、内田祥三)

内務省:都市計画法法 制化の動き(池田宏)

東京市建築条例案

建築基準法

用途地域:4 種類(住・商・工・未指定)

住居系で禁止される工場:16 種類 1)用途地域

1)’専用地区 工業地域内特別用途地区:工業地域内に指定可能

工業地域でなければ建築できないもの:27 種類

市街地建築物法改正 満州事変

関東大震災 太平洋戦争終戦

郊外のベットタウン化 工業化の進展

住居専用地区

工業専用地区 実害 住居地域:住居の安寧を害する虞ある用途に

供する用途が禁止。

住居地域内であっても、一般事務所や原動機が 3 馬力以内の工場、室面積 50m2 以下の自動車車庫は 建築可能であった。家内工業への配慮など

→用途純化を目指したものではない。

←多くが混在していたから。

住居系用途自身の規定は少ない

工場用途のコントロールが都市計画 の主眼となっていたと考えられる。

商業地域も住居地域と同様:商業利便を害す る虞ある用途を禁止。

中小工場が立地可能だった

一部改正:住居専用地区に建築で きるもの→「住宅」「住宅にして 事務所の類を兼ぬるもの」「共同 住宅、寄宿舎または下宿屋」

現行規定の源流。住居専用の 用途純化を目指したもの。

馬力数の改正 工場業種を明示

準工業地域の新設

田園調布地区 1 地区のみ 埋立地、運河沿い地などの

工業的利便を図るべき地 域にその他の用途を排除

市街地建築物法施行規則改正

1) 法の目的の明文化

2)

適用範囲:主務大臣の指定

→単体規定:全国適用、集団 規定:都市計画区域

3) 建築確認制度

特別工業地区 文教地区 その他政令で定め る特別用途地区 条例で定める特別 用途地区

用途地域のメニューは 大きい変化なし 許可制になり地域制限からは ずされたもの:火葬場、と殺 場、卸売市場、伝染病院、ご み焼却場、汚物処理場 工業地域は従来制限がなかったが、工業の利便を 害するものが禁止されたこと/準工業地域は未指 定地と比べ工業地域的な性格を強化/建築制限の 基準指標が原動機馬力数から作業場の床面積に。

廃止

住居専用地区

工業専用地区 店舗等併用住宅の店舗部 分の床面積が 10m2 以下に 限られていたが撤廃

都の制度が先行:学園地区の環境整 備のための必要な用途制限仕組み

2)特別用途地区

【参考】

・ 坂真哉:建物の用途に基づいた規制について-住宅を中心として-、「コンバージョンを通して考える住宅という用 途」、第 26 回住総研シンポジウム資料集、pp.5-20、2006.7

・ 石田頼房:日本近現代都市計画の展開、自治体研究社、2004

図序 -4 都市計画に関する出来事と用途に関する変遷

(29)

1960 1970 1980 1990 2000

1959

1969 1970

1976

1980 1980

2002 2002

1992 1992

1998

1959 1971

1988 1990

1995

1993

3)地区計画 建築基準法別表の改正

新都市計画法 建築基準法改正

建築基準法別表の改正 高度経済成長

線引き制度(市街化区域・市街化調整区域)

開発許可制度 都市の人口集中とスプロール

都市計画法改正 建築基準法改正

都市計画法改正 建築基準法改正

都市計画法改正 建築基準法改正

都市計画法・施行令改正

5種のメニューの拡充:

小売店舗地区、事務所地区、厚生 地区、娯楽地区、観光地区。

工場の種別の拡充:

住居地域で禁止される工場:6→14

商業地域で禁止される工場:18→26 準工業地域で禁止される工場:27→29

特別用途地区規定改正

危険物の貯蔵、処理に供する建築物の規 制を拡充

工業対応の傾向を強化

表示:馬力数→kW

種類:2→7 建築してはならない建築 物に、病院とホテルが追加

用途地域の拡充:8→12 種 都市計画法施行令改正

特別業務地区の追加 拡充:7→8 種

卸売市場、卸売店舗、トラッ クターミナル、倉庫などの流 通関係施設、自動車修理工場、

ガソリンスタンドなどの広域 サービス施設を交通至便な地 区に集中立地させる趣旨 建築基準法集団規定・都市計画法地域地 区制度の大幅改正

用途地域の拡充:4→8 種

日影規制の創設 第 2 種住居専用地域の容 積率:400%をはずし、100%、

150%を追加。住居系用途地 域で前面道路幅員に基づ く容積率規制の強化

日照問題などの 居住環境の確保 住居地域→第 1 種住居専用地域、第

2 種住居専用地域、住居地域

商業地域→近隣商業地域、商業地域 工業地域→準工業地域、工業地域、

工業専用地域

2 専用地区の廃止

・ 都市計画上の活用が不十分

・ 日照などのトラブルが多発。住宅地 の環境悪化、中高層アパート激増な どへの対処

・ 土地利用計画として適切な用途地域 を定める必要

公害その他問題のある用途の住宅関 係地域からの排除を中心に、地域環 境の純化と維持向上が図られた。

第 1 種住居専用地域:住居専用地域 の規制に大学、自動車教習場等を追 加規制。

第 2 種住居専用地域:工場、旅館、

ボーリング場、遊技場を規制から排 除。小規模工場のうち公害問題を発 生させているものを追加規制(5 種)

床面積が 1500m2 を超える 大規模な店舗、事務所、倉 庫などが制限。これらが 3 階以上に及ぶことも制限

工業地域の住宅の排除を 検討→見送り。:既存不適 格の大量生産のおそれ

・ 建築できるもの:「住宅」「住宅で事務所、店舗その他こ れらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるも の」「共同住宅、寄宿舎又は下宿屋」→現行規定へ

・ 兼用住宅の基準設置:住宅と兼用する用途の面積が全体 の半分を超えずかつ 50m2 以内であること等が規定

ミニ開発やバラ建ちスプロール等によ る不良な市街地形成に対応するため、一 体的整備及び保全を図るべき地区につ いて必要な事項を一体的、総合的に定 め、それぞれの地区に応じたきめ細かい まちづくりの手段として設けられた。

地区計画制度の創設 整備等の方針と、地区整備計画(地 区施設の配置等、用途制限や形態規 制に係る事項及び土地利用計画)を 定める。決定権者は市町村。条例に より制限を定められ、建築確認によ り用途等をコントロールできる。

用途地域による制限を強化することや、敷地面積の最低限度 などを定められるようになった。用途地域規制に係る別表で 区分されない用途について細かい条件を付して一定のもの のみを排除することも可能。用途規制の世界が広がる道筋。

法規定上の整理合理化

再開発地区計画

用途別容積型地区計画

再開発等促進区 バブル経済

地価の高騰

事務所が住居系の土地利 用地域に無秩序に進出

これまでの類型を廃止 市町村が住民の多様なニ ーズに応じた柔軟な対応 をするため、個々の都市計 画において定める 地方分権推進法

補完性の原則

都市計画の決定権限→

都道府県:三大都市圏 の既成市街地、近郊整 備地帯等及び政令指定 都市に限定。

市町村へ変更:三大都 市圏の都市開発区域、

新産業都市、工業整備 特別地域、道府県庁所 在地及び 25 万人以上 の市 第 1 種住居専用地域→第 1 種低層住居専用地域

第 2 種住居専用地域→

住居地域→第 2 種住居地域

拡充:8→11 種 中高層階住居専用地区の追加

研究開発地区の追加 カラオケボックスを用途種別に新設。自動 車車庫の制限の一部を緩和。公害関係諸法 を参考に規制対象事業種別を追加。

第 1 種住居地域(3000m2 を超える建築 物を禁止)

準住居地域(自動車車庫の制限なし、自 動車修理工場上限を 50→150m2 に緩和)

第 2 種低層住居専用地域(150m2 以内の 店舗等の利便施設を許容)

第 1 種中高層住居専用地域(病院、児童 厚生施設、500m2 以内の店舗を許容) 第 2 種中高層住居専用地域(店舗等の上 限が 1500m2 に緩和)

小規模のコンビニ等の立地を許容

中規模のスーパーマーケット等の 立地を許容

大規模な事務所や店舗の進出が居 住環境を阻害することの防止 自動車関連施設との住宅が調和し て立地する地域という趣旨

中高層階を住宅等に限定する立体用途 規制で住宅の確保を図る 低層階の住宅工場等を制限し、商業業務 用途の利便の増進を図る 。 商業専用地区の追加

用途地域制の規制を国土交 通大臣の承認を得て条例に より緩和できる用途緩和型 の地区計画が付与

(30)

未指定

住居

工業 商業

1919 市街地建築物法、旧都市計画法   

4つの用途地域が制定  

工専 未指定

工業

商業

住専 住居

住居地域に中小工場が立地可能だったの で住居専用地区を創設

埋め立て地、運河沿いなどの工業的利便 を図るべき地域のために、工業専用地区 を創設

1938 市街地建築物法改正

工専 準工 工業

住専 住居

商業

工業地域は従来制限がなかったが、工業 の利便を害するものが禁止された 1950 建築基準法

1住

2住 住居 近商 商業 準工

工業 工専

用途地域の拡充。

郊外その他の問題ある用途の住宅関係地域 からの排除を中心に、地域環境の純化と維 持向上が図られた。

1968,70 都市計画法、建築基準法改正

1低

1中 2中 1住

2住 準住 2低

近商 商業 準工

工業 工専

用途地域の拡充。

事務所が住居系の用途地域に無秩序に進 出。

1992 都市計画法、建築基準法改正

図序 -5 用途の関係性の変遷(1)

(31)

地域への進入から住環境を守るための改正が行われている。一貫して、住環境を守るため の改正であり、そのために用途地域の種類が年を追うごとに精緻化され、拡充されてきた といえる(図序 -6)。

これまでは、住環境の安寧を守るために、工業系用途、商業系用途といった都市の活力 を制限してきたのが用途地域の変遷であったが、後述する「建築スケールの用途混在」が 出現している成熟社会においては、それだけではなくて、都市活力賦活のためには工業系 用途、商業系用途から共存可能なものを住居地域に取り込んでいくような展開が求められ ている。

・都市計画における純化-混在論

以上のように用途地域の改正の背景は、住環境の保全、いわば用途を純化させる方向で あったといえる。しかしながら、用途混在に関する一連の研究では、用途混在のもつ積極 的な価値自体を否定するものは管見の限り見つけることができず、「秩序のある混在」がど のように実現されるかという問いを掲げている研究が数多く蓄積されてきている。用途の 混在がもたらす活力、職住近接の価値という積極的な側面の一方で、住環境の悪化、土地 利用の混乱という消極的側面の両面から議論され、小さな単位空間においては純化させる 一方、大きな単位空間においては混在させる方が望ましいとする「マクロ混在、ミクロ純化」

という概念で、混在地域のあり方は整理されてきた(文序 -23)

一方で、純化への欲求が私たちにはには内在する。私たちは、複雑な状況を複雑なまま でいることに対して、抵抗力を持っておらず、単純に整理して理解したい、認識したいと いう欲求がある。混沌とした都市空間をいかに整理し、あらかじめ決められた秩序で都市 空間を覆い、単純に整理して理解するために行ってきたものが、近代都市計画が営々と築

住居

工業 商業

1980-

地価負担能力の違いに よる事務所などの住居 系用途地域への侵入か ら住環境を守る 1919-1980

工業の環境悪化要因 から住環境を守る

図序 -6 用途の関係性の変遷 (2)

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