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胃静脈瘤をきたした慢性膵炎の1例

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(1)

(甕鷹講66第繍52肇請)

〔症例検討会〕

胃静脈瘤をきたした慢性膵炎の1例

 日 時  場 所

(発言者)

 司会 消化器内科

      〃

文責

昭和51年6月25日(金)

東京女子医科大学本部講堂

  〃 消化器外科   〃

  〃 消化器内科

竹内

森田 田中三千雄 土岐 文武

秋本 伸

武藤 晴臣  正教授 真子助手

羽生富士夫教授 鈴木 博孝助教授 神津 忠彦助教授

森田 真子    (発言順)

(受付 昭和52年4月9日)

 竹内:慢性膵炎は,最近非常に多くなってまいりまし た.と言いますのは,診断学の進歩のために今まで他の 病気として片づけられていたものが,慢性膵炎であると いうことがわかってきたということも一つの理由であり まずけれども,実際に頻度も多くなっている可能性もあ ります.その実際は分らないのですが,膵癌になります と,これははっきりした数字が出ています.例えば,東 北大学におられました瀬木先生の統計によりますと,20 年前の1年間と最近の1年間を比べますと,訂正死亡率 が5倍増えているということが知られておりますし,慢 性膵炎についても,恐らくはそういうことが次第に出る かと思います.はっきりとした慢性膵炎というと,一つ は膵石症という状態でありまして,レントゲン撮影をす れぽ,比較的簡単にわかる病気です.膵石症はこの数年

間に激増しています.それですから,膵石を伴わない慢 性膵炎も増えていることも言えます.次第に増えてくる と,その虚像もいろいろな面が知られてきています.今 回出していただく症例は,慢性膵炎が原因であって,胃 の静脈瘤をきたしたという症例です.それでは受持ちの 森田先生に説明していただきます.

 森田:患者は34歳の男性です(表1).主訴は腹痛で,

家族歴では特記すべきことはありません.既往歴では13 歳の時に虫垂切除術を受けました.飲酒歴は,10年以上 の大酒家で,24歳頃より連日ビール1ダース,ウイスキ ーを112ボトルぐらい飲んでいました.喫煙はいたしま せん.

 現病歴では,昭和44年頃(27歳頃)より飲酒後に左の 季肋部から背部にかけてのじわじわした痛みが出現し,

  Clinico Pathological Con飾re皿ce(106)8 varice8.

Aca8e of chro㎡c panceratiti8 accompaning 8tomach

(2)

表1 症例のあらまし 患者:34歳男性

主 訴:腹痛

家族歴:特記すべきことなし 既往歴:13歳 虫垂切除術

嗜 好;大酒家(24歳頃より連日ビール1ダース,ウイスキー    1/2ボトルを飲酒)喫煙一

転病歴:27歳頃より飲酒後の腹痛発作を反復し,昭和45年(28    歳)消化器病センター初診.諸検査の結果,{胃性再発性    膵炎と診断された.昭和49年,第1回目入院.昭和50年    第2回目入院.昭和51年2月,第3回目入院,経過良好    にて退院したが,5日目より腹痛出現,3月16日に再入    院した

現症:身長179cm,体重60㎏,貧血一,黄疽+.浮腫一,クモ    状血管腫一,静脈怒張一,脈拍数80/min,整,血圧110/

   70,体温38,4℃,心肺ともに異常なし,肺肝境界第6    肋間,腹部は肝脾ともに触れないが,心窩部に圧痛があ    り,勝上部に手掌大の軟かい腫瘤を触れた.腹水一,神    経学的異常一

検査成績:げ且沈45mrヅh,72 m職/2 h,血算RBC502×10:Hb     l5.99/dl, Ht 46%, WBC13100, CRP5+,血清     生化学T−p7.4, MG10, TTTO,4,.ZST2.7, G     OT12, LDH177, Al−p7.8, LAP151,Ch−E     O.96、r−GTP32, Amylase 214, T・cho乳2Q2,

    BUN14, Creat 1.1, U−A6.9, Na 139, K 3,7,

    C199, Ca 4.8, P 2,6, Mg 1.7、 Glu 1(π,

    OGTT:糖尿病型,検尿:正常, ECG:正常     腹部単純X・P:正常

消化器系検査:(第3回目入院時),便潜血一,便脂肪染色+,13且1−

    Triolein 2.0%,上部消化管検査:正常,注腸造影:

    正常,胆のう造影:正常,低緊張性十二捲腸造影:正     常,PS test,アミラーゼ排出量と最高重炭酸乱丁の     低下,血清酵素誘発テスト:陰性,EPCG:慢性膵     炎

その俵も年に2〜3回ぐらい,油物を摂取した時などに 同様の痛みが出現し,絶食することで痛みの転減をはか っていました.昭和49年4月,32歳の時に再度痛みが出 現したため,消化器病センターに第1回日の入院をいた しました.第1回入院時の現病歴では,身長179cm,体

・貢62kg,心窩部に圧痛のある他は理学的に特記すべき所 見はありませんでした.また,検査成績では貧血はな く,自血[球数の増多もなく,血液生化学検査では,血清 アミラーゼが1.860SRUと高値を示す以外は異常はあ

りませんでした.また,腹部の単純x線写真でも膵の石 灰化はみられませんでした.

 竹内:これまで何かご質問はございませんか.それで は消化器系の検査を説明していただきましよう.

 森田:消化器系の検査では,便のスダン皿染色が陽 性,BLI一トリオレイン便中排泄率は2.1%と正常で,上 部消化管検査,注腸検査,経口胆のう造影,低緊張性十 二指腸造影は正常でした.P−Sテストでは,採取量が

1.5mglkgと低下している他はアミラーゼ排泄量,最高 重炭酸塩濃度は正常でした.また,血清酵素誘発テスト は陰性でした.同時に施行した細胞診では検体不良のた め結果は出ておりません.後に述べられると思います が,EPCG逆行性膵胆管造影では膵管は拡張蛇行し,尾 部に透亮像が見られ,砥石の存在が疑われました.

 竹内:のちほど,特殊検査については説明があると思 いますが,経過について説明して下さい.

 森田:第1回目の入院,精検の結果,慢性再発性膵炎 と診断されました.臨床経過図の(図1).中央の部分に 相当します.

 患者は昭和44年頃より症状が出現し,昭和45年8月

(28歳)に消化器センターを初診しており,第1回目入 院までに約3年間あり,この間,波線で示した痛みの発 作は3〜4ヵ月に1度位の割でおこっていました.第一 回入院以後も痛みのない時には以前と同様のペースでア ルコールの摂取を続け,疹痛発作と血清アミラーゼの上 昇がみられ,第2回,第3回の入院をくり返していま

す.

 昭和51年2月,第3回目入院時に,第2回目のEPCG

を施行し,2日後に経過良好にて退院しましたが,EPCG 施行5日目より左季肋部から背部にかけての激痛が出現

し,3月10日に第4回目の入院をしました.

 竹内=このように頻回にわたる癒痛発作があったこ と,その原因は飲酒と考えられます.暴飲暴食した後に 強い疹痛発作がおこり,その時の所見では,血清アミラ ーゼの高値が認められております.このような経過を示 す患者さんは,最近は慢性再発性膵炎(chronic relapsing pancreatitis)ではないかという診断がされます.あるい は同じような経過を示す膵臓の病気では再発性急性膵炎

(relapsing acute panoreatitis)という状態があります.

それとの鑑別には,膵機能検査とかEPCG(逆行性膵胆 管造影)というのが有力な武器となっています.

 森田1第4回目入院時には今までになかった4つの特 徴的な所見がありました.まず第一に,心痛の性格が今 までの膵炎の反復によるものとは異なり,左の季肋部か ら背部にかけての激痛であったということ,2番目には 膀上部に腫瘤様のものが触れたということ,3番目には 血清アミラーゼ値の上昇がみられなかったということ

(214SRU),4番目として発熱とか白血球数台多,血 沈の充進,CRP強陽性等と炎症所見が著しかったとい

う4つの点です.

 竹内:胃レントゲン撮影で(写真1),胃体上部小心側

(3)

腹痛発作

腹部所見

PS一テスト

皇清アミラーゼ

  2000   SRU/d1

1000 体温40

 ℃  38

36

       M.M. ♂ 34才

八一一_L_」_一論ヒ煎飯■

例「 ◎

\/

量;二,置顧

←血清アミラーゼ

臨睡

斜…

\/

←血清 アミラーゼ

 騨尾側切除術   :

5

●70.8    71

初診

74

  ■

  第1圃入院

図1 臨床経過

75        763

   ■     一

  購2回入院    纂3回入園  第4回入院

写真1 右の胃レントゲン像は,左の約1ヵ月半後  のものであるが,胃体上部中部小蛮にかけて圧迫  像と,胃静脈瘤があらわれてきた.

に圧排像がありますね.腫瘤形成をした膵炎ではない か,あるいは膵のう胞ではないか,という事が疑われた わけですね.

 森田:右側の胃レントゲン写真ではCardiaにVarix が認められますが,食道にはVarixは認められません.

左側の胃レントゲン写真は,4回目に入院する1ヵ月前

写真2 食道には,静脈瘤は認められない.

にとった右側とほぼ同じ部位の写真ですが,この時は胃 体部後壁からの圧排像も,CardiaのVarixもみられて おりません.

 竹内=Varixがみられたものですから内視鏡を行なっ ていますね.食道はVarixはないですね(写真2).

 田中:内視鏡(GIF−DII1)でみますと(写真3),胃体 下部から中部にかけての大湾のfoldの太さ,走向は正 常です.

(4)

写真3 胃体中部〜下部の大饗のfoldsには異常は  認められない.

写真4 胃体上部から胃底部にかけての大騒騒にて  静脈瘤がみられる.

 竹内:ここにはVarixらしいものはないですね.

 田中:次の内視鏡写真(写真4)は,だいぶスコープ を上までひき上げているんじゃないこと思います.これ は胃体上部からFornix大湾の内視鏡写真です.大綱の foldが所々珠数状に太くなっていますが,色調の変化に は乏しく,われわれがよくみる食道静脈瘤の内視鏡像の みが念頭にありますと,直ちにVarixと断定するのがち

ゆうちよされます.

 竹内:そうですね.そうすると胃静脈瘤の診断という のは内視鏡的にむずかしい事がありますね.単なる四壁 の蛇行,肥厚だと考えられることがあります.

 田中:しかし,よくみますと珠数状に太まった部分の 中心部は,わずかながら青味を帯びており,またここを 鉗子で押してみますと,大へん柔らかな抵抗を感じまし た,以上の所見は単なる胃炎性の変化のみでは説明困難 であることも事実です.

 竹内:どうもありがとうございました.内視鏡的には Var三xという診断でよろしいでしょうか.

 森田=はい.胃体部後壁の胃外性の圧排像,それから 慢性再発性膵炎のhistoryがあるという事で,一応膵臓 に焦点をあてて検査を行ないました.

 まず,膵シンチグラフィを行ないました(写真5).こ の所見は膵の体部から尾部にかけて75Se・セレノメチオ ニンのとりこみの減少がみられて局在性の病変が疑われ ました.

 次に膵エコーグラムを施行しました(写真6).秋本先 生,鳥影をお願いいたします.

 秋本:上腹部の超音波横断層像です.こちらは肝の三 葉です.この辺に左葉がきれています.pancreasが脊椎 の上にみられ,正常でもここに出てくるのが普通です.

膵頭部,体部,尾部はこういうふうに出て,抜けてまい ります.この像だけから読むのはむずかしいのですが,

ここからこういう範囲で膵体部につながった部分にエコ ーのぬけとして読むことができます(矢印のところ).膵

年㎞

餐  、  。、∫砺二・〜,〆険

写真5 75Seメチオニンによる膵シンチグラム.

膵の体・尾部にかけてとりこみがわるい.

(5)

写真6 上腹部の超音波横断層像

写真7 初診時の膵管像(第1斜位)頭部と体部の  境界付近に狭窄がみられ,その尾側は拡張し,径  の大小不同,壁の硬化がみられ,分枝も拡張して  いる.

頭部,体部に連続して音響学的にあまり膵と差のない,

あたかもふくらみをもった状態として病変部が捉えられ ております.cystないしはabscessのような実質でな い,少なくとも癌のような硬いものではない組織が膵尾 部についているようにみえます.ただここでわかりませ んでしたのは,膵臓の組織の中にこの部分とこの部分に 比較的つよいエコーがあります.膵臓の中にはこういう 像は認めません.しかもわりにととのった形ですので,

悪性腫瘍エコーではございません.何か膵石のようなも のがあるかも知れません.ただ普通の石の場合ですと,

ここのエコーの下には音響陰影といいまして,この石で 音がはじきかえされて黒いかげとして出てくるのです が,ここではそれがなく,胆石の硬さに比べますと,も っと柔かいものがあるという事になります.ここの2カ 所の点についてはエコーグラムからの診断はできません でした.何か不明の膵内エローがあるという診断をした と思います.以上です.

 竹内:どうもありがとうございました.秋本先生,こ の場合に膵のcystであるということは言えますか.

 秋本:残念ながらこの症例では充分なエコーの像がと れていません.現在では膵の実質とcystとの鑑別のた めに,エコーのsensitivityを変えまして,膵の中に完全 に抜けないで多少の白いエコーの反射が出てくるくらい に感度を上げますと,膵の実質部分であれば,そこは当 然同じようにエコーの反射がもどってまいります.ただ cystやabscessでは感度を上げましてもエコーの抜けと

して黒い像がとらえられるものですが,この症例ではや ってないので残念ですが断定でぎません.もしもその操 作を加えておりますれば,膵実質かcystかの鑑別にな ると考えております.

 竹内:それで膵の腫瘍についての超音波診断という のは,膵自身がtranssonicのために比較的困難である ことが多い.そして膵に関しては一番の適応はcystで あるということが一般に言われております.

 次はEPCGです.土岐先生,照影をお願い致しま

す.

 土岐:これは(写真7)第一回目の内視鏡的膵胆管造 影像で,正面ではなくほぼ第1斜位です.膵管像では頭 部から体部の移行部と思われる部位に強い狭窄があり,

それより尾側が拡張しています.それから主膵管の大小 不同や壁の不整が著明で,分枝にも拡張を含め同様の所 見がみられます.この写真からは慢性膵炎の膵管像とい えると思います.胆管像は十分に造影されてないため,

詳細な読影はできませんが,肝内胆管の拡張はないよう です.次の写真お願いします.これは同じ日の完全なる 正面像です(写真8)。ちよつと条件が悪くて見にくいと 思いますが,矢印のところに狭窄があります.体尾部の 主膵管は拡張し,これは分枝ですがはっきりした拡張が みられます.そして,主に尾部の主膵管内にですが,こ のように透亮像と思われる陰影がみられます.この所見 よりすぐ三石とは言えません.protein plugも考えられ

ます.写真9ぽ2回目のEPCG像です.初回に指摘し

た頭体移行部の狭窄はこのように高度です.そこから尾 側の拡張は著明です.それから分枝も同様な所見がみら れます.この写真からは頭部の方が体尾部に比べ変化が 軽度のような感じをうけます.次の写真が3回目の膵管 造影で(写真10,11)の上段,中段に示した第1回,第 2回の膵管像に比べて大きな変化は,主膵管が尾部にお いてここから造影されてないということです.この狭窄 の部位,程度はほとんど同じで,その他にはあまり大き

(6)

写真8 矢印のところに膵管の狭窄があり,体尾部  の主膵管および分枝が拡張している.

写真9 2回目の膵管造影の所見.頭部の狭窄は矢  印で示したところで,そこから尾側の膵管の拡張  が著明である.

な変化はないようです.主膵管が尾部で閉塞を示してい ることが大きな所見といえましよう.申し遅れました が,第1回目と第2回目の膵管像を比較すると,やはり 膵管鍛からの慢性膵炎としての所見は進んでいると思わ れます.

 竹内:一番顕著なのは尾部の膵管が拡張し,2つに分 かれていますが,分枝が太くなっているために2つに分 かれているように見えているわけですね.

 土岐:こちらが分枝です.これがここで途切れていま す.前の写真をもう一度出していただいて比較するとい

写真10 3回目の膵管造影の所見.前回にくらべる  と,主膵管の尾部が造影されなくなった.

写真11膵管像の経時的な変化

いと思います.このように尾部までずっと続いていま す.これはスコープ抜去後の写真ですが(写真10),まだ 尾部があると思われる……ここより尾側は造影されてお

りません.

 竹内:これからは膵癌との鑑別ができますか.

 土岐=この膵管像だけからは膵癌との鑑別はほとんど 不可能です.ただ言えることは,やはりこの先に(尾 部),何らかの閉塞をきたすような出来事がおこっている んじゃないかと言うことで,それが悪性変化であるかど

うかということは何とも言えないと思います.ただ慢性

(7)

写真12 腹腔動脈造影,背側膵動脈がやや太く,脾  影がやや大きい.

膵炎の変化ははっきりしています.

 竹内=まず,この写真を見れば慢性膵炎といってよろ しいと思われますね.正常の膵管は横走する細長い主膵 管から樹枝状に分枝が出て,主膵管は頭部では4mmぐ らい,体部が3mm,尾部が2mmぐらいの管ですね.

この例のように狭窄と拡張があり分枝も拡張していると いうことは,すでにこれだけでもって慢性膵炎の診断根 拠になるわけです.

次は選択的血管造影でありまずけれども,この所見に ついて武藤先生,ご説明をお願いいたします.

武藤:これは腹腔動脈造影ですが(写真12),これを見 て気がつくことは,脾動脈,総肝動脈はほとんど太さに 変化がない.脾動脈そのものは細くなっているとか,あ るいはstenosisが非常に強いとか,壁の不整があると か,そういうものは,ほとんど見られないということで す.ただ,脾臓が多少大きめであること,それから,ここ に背側膵動脈がありますが,これが,多少太い感じがし ます.もう一本ここから右の方に横走膵動脈というのが 出ていますけれど,その枝も,多少太く,特に末梢の方に 来て太くなっています.この辺に行きますと,広狭不整 の所見がでてきます.この辺の所は左の胃動脈の枝と重 なって非常に読みにくいので脾動脈の超選択造影を行な いました(写真13).そうしますと,横走膵動脈は分岐直 陵の部分より末梢の方が太くなっている.この辺に来ま すと,血管壁に硬い感じが出て来まして,かなり走行不

写真13 脾動脈の超選択造影.横走膵動脈は,末梢  の方が太くなっており,その分枝にも走行の不整  がみられる.

整が認められます.また,これより分枝する枝にも同じ ような所見が見られますが,そういう血管がかなりふえ ているということですね.もう1本ここに大回動脈とい うのがありますが,やはり同じようセこ狭くなったり,太 くなったりという不整像が見られています.ただ,これ が,癌の場合と比較した場合に,それぞれが不整な感じ を示しているけれども,1本1本の血管をよく見ます と,曲り方にも柔かさがあります.癌の時みたいに,

非常に硬い感じ,不自然な感じ,というのが見られませ ん.それともう一つ,血管の増生がかなり著明であり ます.そういうようなことで,まず,慢性膵炎というも のを考えるのが,いいんじゃないかと,思われます.も う1本脾動脈から上の方に延びて行く枝が見られます が,この辺にも同じような所見が軽くみられていますの で,tumorそのものとしては,だいたいこのくらいの範 囲のものじゃないかと思われる.慢性膵炎の,腫瘤状に なったものが一番考えられると思います.静脈相をみま すと(写真14)ちよつとわかりにくいかもしれませんけ れども,この辺に不整な淡い濃染像が出てきていまずけ れども,ここに少し濃くうつっているのが,これ脾静脈 なんです.脾静脈がちょうど圧排されたような感じで出 て来て,その後,太さが,普通の太さになって来てい る.この辺にも細い静脈がありますけども,ちよつと細 目の感じから太くなっている.この辺になにか,それを

(8)

写真14 静脈相でみられた淡い脾静脈,脾門脇の脾  静脈は圧排されて細くなっている.

写真15 脾門脈造影像.脾静脈が造影されにくく,

 胃大網静脈,左胃静脈が側副路として発達してい

 る.

圧排するような,かなり硬いものがあるんじゃないかと 思われます.ただ,先ほども言ったように脾動脈にはほ とんど影響がないと言うことで,癌はちよつと考えられ ない.というようなことになります.もうちよつと時間 を追ってみると,今度はここに小雛側の静脈ですね,こ れに,非常に強い拡張がみられる.それから,これが胃 の大磯側の静脈になりまずけれども,この両者が非常に 拡張しているという事になります.術前に脾門脈造影を 行いました(写真15).脾臓にいれた造影剤が,胃の静 脈をずっと造影いたします.非常に拡張している像がみ られます.強いStenosisがありまして,とくにこの辺

   ノ

∠11,

    り蔵

↓1.

、戯

    臥

5

 〆B

 3

10 4〆

1 2

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6

①雛 D

も・.

図2 側副路の形成の模式図

に圧排像があって,この辺から多少太くなっている.し かし,先ほどの脈の方から比べますと,太くなってい ます.この辺にも何か,変化が出てぎたんじやないかな あ,ということが,これで想像できます.

 もうちよつと時間を置きますと,ここに小町側と大野 側から,側副路として,門脈にはいっていく像が明らか に認められています.これは(図2),ある部位に狭窄が おこった場合に側副路というものがどう発達するかを図 にしたものですげれども,今の場合,脾静脈が閉塞され たわけです(図2のうち②)。そうしますと,こちらの方 の,6番から5番に行く静脈ですね.それからこの1番 の経路,これが非常に発達してくるわけです,そのため に,この小田例の静脈瘤が胃の内壁の方からも見られた んだと思いますが,こういうところの静脈が非常に発達 してくる.ここに1つの閉塞があって,その閉塞は血管 像の所見からみると,悪性のものは考えられない,一応 腫瘤状の慢性膵炎という診断になります.

 竹内:どうもありがとうございました.

 今のスライドの経皮門脈撮影というのは,かなり危険 があるということで,手術直前にやっているわけです ね.手術を前提として行なっているわけです.内科か ら外科にまわした大きな理由は,Varixがあるというこ と,それから出血するおそれがある,また,今後の疹痛 に対する処置ということから,外科的な適応を考えたわ けですが,外科に移った時は疹痛はもうなくなっていま

したか.

 森田:3月16日に第4回目の入院をして,約1週間ぐ らいで疹痛発作は軽快しています.

(9)

。i繍1・

        へ七曇

       嚇

.、,穰鯛 『帆/.

毎ヅ灘㌶:

 、蜘1・欝...・

写真16 手術所見として,胃大網静脈の怒張が著明  である.

 竹内:その時には,発熱があり,感染症状がある.

 つまりですね,白血球が増多がありますので,胆道系 の感染,ないし膵内のabsce認を考えていたかと思うん ですが,それも,手術にふみきる大きな理由であったろ

うと思いますね.それでは,羽生教授,手術所見につい て,ご説明願えませんでしょうか.

 羽生:開腹してみますと,術前既にVarixが指摘され ておりますが,胃の大育側のgastroepiploic veinが怒張

しております(写真16).

 膵頭部,十二指腸の外側をみますと,本例の慢性膵炎 は,特に体部から尾部にかけて,高度であるという手術 前の所見がございましたけれども,実際には,頭部にも 急性の炎症の所見があります.十二指腸外側の漿膜下に 限局性のedemaが著明です. Bursa omentalisを開いて 膵の体部をみますと,膵被膜は,通常の色調および性状 と全く異なって,丘brino 5br63な肥厚があります.膵は ほぼ全体に硬化しております.明らかに慢性膵炎の状態 です.病変は体尾部に高度でありますので,脾臓と共に 体尾部切除したわけであります.脾臓を脱転して,尾側 から膵を起してきたのですが,膵臓の後側の組織にまで

も搬痕性の変化が高度でした.

 慢性膵炎の痛みというものは,単に膵管の内圧が高ま るとか,あるいは膵臓そのものの痛みもあると思います が,こういった激しい膵後側の炎症性病変によっても,

起こるのではないかと私は思っております.いずれにせ よ,ひどい膵臓の後側の病変がありました.

 切除を終ってみますと,先程の胃大弩側の静脈瘤は跡 形もなく消え去ってしまいました.膵尾側切除には当然 脾動脈および静脈は結紮切断されますが,本例では脾静

%轍3笛讃,25

         》

写真17 切除した膵臓は,全体に硬化し,白色搬痕  状になっているのが切断面でみられる.

脈狭窄があったため,副難燃行路ができていたわけであ りますが,動脈も結紮切断し,脾臓も摘出してみると,

このように静脈瘤も消失してしまったというわけです.

脾臓はもちろん通常の3倍くらいに大きくなっておりま す.摘出膵臓は全体に硬化し白色搬痕状です.切断面で

(写真17)はっきりとみえまずけれど,静脈は非常に狭 小化しております.膵臓の実質はほとんど荒廃した搬痕 組織であります.肉眼的にはAbscessとかZysteとか いうものは見られませんでした.

 竹内:どうもありがとうございました.そういう事で 膵の尾側10cmぐらいを切除して, spleenと一緒に取っ ているわけですね.その際に門脈圧向進症をきたす疾患 として肝硬変も同時に考えなければならない.一見,肉 眼的には,手術時には肝臓はそのような所見ではなかっ たのですが,術中biopsyをしているわけです(写真 18,19).この所見はどうでしょう.

 鈴木=これは,アザン・マロリー染色ですが,ヘマト キシリン・エオジン染色,その他の銀染色その他で見ま

写真18 肝の組織嫌(アザン・マロリー染色).幽囚  管周囲炎および肝周囲炎(↑印)の像を呈してい

 る.

(10)

雛灘灘

鐵窺灘瓢蓋,

難耀驚灘雛綴猿籍

写真19 写真18の拡大像,胆管周囲の炎症所見が明  らかである.

すと,肝実質にはほとんど変化はございませんで,ここ の青く染まっている所が,線維化を起こした所でありま すが,主として,こういう血管が在ったり,それから胆 管のある周辺に線維化が起こっているという事で,本来 門脈圧充進症の時に問題になる肝硬変,あるいは肝の線 維化という事は余り関係がないという事,それから肝 炎,いわゆる細胞自身に変化が来ている事も,細胞に多 少の変性が見られますけど,ほとんどないという所見で ございまして,主として細胆管周囲炎と言いますか,そ ういうような現象だけでございます.

 竹内:発熱の原因が,この辺から求まるかもしれませ ん.かなりの発熱と白血球増多があり,抗生物質を投与

していたのですが,その原因があるいはこういった細胆 管炎であったのかもしれません.

 鈴木:正常と思われる組織を示します.膵実質細胞が 密に存在している状態を呈示します.問題症例の膵臓を 示します(写真20).今ご覧頂いたのと明らかに異って,

ほとんどルーペ拡大で,膵実質の炎症はさることなが ら,膵周囲の線維化が非常に強く認められます,動脈と

写真20 膵組織のループ拡大像.実質は殆ど脱落し,

 線維化が著明である.一部の膵管内に層状の沈着  物protein plug(↑印)がみられる.

写真21写真20の拡大像.実質細胞は島状に残在し,

 周囲は線維でとり囲まれている,膵管内にエオジ  ンで赤く染まる層状の物質がつまっており,膵石  の前駆物質であるprotein plug(1印)と考えら  れる.

静脈の断面が見えます.動脈も中膜あるいは内膜の肥厚 があります.静脈も膠原線維その他が増して,静脈炎が あるのではないかという事が想定されます.これが標本 の膵組織です.ごらんいただいたように先程の組織と違 って非常に強い線維化があり,その中にバラバラと膵管 あるいは膵実質細胞が非常に少なくなって変性をおこし て存在しています,

 膵管の拡張した所ではマットなエオジンで赤く染まる 物質がつまっています.結石ではないと思いますが,分 泌物あるいはリンパ液その他が凝縮した像のようにみう けられました.膵管周囲の濃くみえている所は,すべて 細胞浸潤です(写真21).

 竹内3ちよつとよろしいですか.今の写真で膵管の所 にたまっているものがございましたね.

 鈴木:はい.ここの所です.

 竹内:膵石の成因の1つにその前駆物質としてprotein plugが出来ると言われています.ムコプロテインらし いのですけれども,それが膵管の中にたまって,そこに 石灰沈着がその後におこるといわれています.この場合 protein plugと言ってよろしいですか.

 鈴木3言えると思いますか,ただどういう現象でたま ったのかはっきり断言できなかったものですから,分泌 物というような表現をしました.

 竹内=特にアルコール飲みの膵石の成因は,まず protein plugが出来て,それにのちに石灰が沈着して懸 垂になるというふうにされていますから,この患者さん はアルコール飲みですから,それに相当するのかもしれ ないですね,どうもありがとうございました.

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羅糠難聴諜

写真22 膵管周囲は,とくに炎症細胞滲潤が黒蟻で  ある.

 鈴木:膵実質をみますと,膵実質細胞の萎縮,消失,

線維化があり,小葉構造その他は全部消失してなくなっ ております.それからこの膵管をみますと,腸上皮様細 胞から分泌物が出ている像もみうけられます.膵管のあ る部分の多少拡大した所の像ですが,膵管の上皮がここ にあります.この上皮の中に多核白血球が浸潤していま す.部分的に上皮がはくりしている所もあります.上皮が はくりした所から間質の遊走細胞が膵管内に出ている.

この像からは急性炎症,しかしながらほんとうの意味の 急性というよりは,むしろ亜急性もしくは亜慢性の状態 の炎症籐がつかまりました(写真22),膵管と関係のな い実質細胞の中にみられたfoca1な病巣性の膿瘍の中の 一部ですが,こういう風にいろいろな浸潤細胞,多形核 白血球,その他の浸潤細胞があって,異物巨細胞が出た り,細網細胞の毛細血管などが出現して,ある程度肉芽 が成長してきている像がつかまりました.それからこれ が先程のマヅドないわゆるPlugの所の壁ですが,こう いう所の膵管の上皮も,もうほとんど変性しています.

細胞浸潤は比較的軽度でございますが,膵管周囲の線維 化が非常に強いという像です.これが膵尾部で脾臓に近 い部分の断面の弱拡大です.私には今,立体的な構築が できないでおりますが,脾臓のカプセルと膵の間にでき ている間腔の部分です.H−E染色でみますと,これが カプセルの壁です.静脈壁は厚くなっています.間腔壁 には弾力線維の増殖があって,この内に肉芽があるとい う状態です.脾臓はかなり強いうつ血脾の状況を呈しま した.ただ今の組織所見を総合いたしますと,いずれに せよ,慢性膵炎に急性膵炎あるいは亜急性膵炎が重積し ているという組織像に,脾臓もしくは膵尾部をまきこん だなんらかの形の膿瘍,もしくは出血巣があったか単な

る嚢胞があった.また:炎症像は膵管の中だけでなくて,

膵の実質の中にも点々とみられた.膵石という形をとっ ておりませんが……いわゆるprotein plugが膵管の中の 拡張した部位にみられた.cystないしabscessというも のが脾臓と膵臓の間に介在したかもしれないが炎症との 因果関係は不明である.というところまでしか判明いた しませんでした.

 竹内:どうもありがとうございました.それでこの症 例は炎症性腫瘤をつくり,それが脾静脈を圧排してその 副行路が発達しまして胃静脈瘤をつくったというふうに 考えられるのですが,この七時は若い時から大酒家であ って,すでに20代の後半に初発症状があった.32歳の時 に本院を受診してはじめて慢性膵炎とされたわけなんで すが,ごらんのように膵に非常につよい線維化があり,

炎症症状があり,それにもかかわらず肝臓の方は肝硬変 にはなっておりません.このようなことはフランス学派 がよく言っていることでありまずけれどもマルセーユ地 方というのはchronic pancreatitisが多いので知られて いまして,殆どはは膵石症を伴った慢性膵炎です.そこ では大酒家は相当のカロリーの食事をとります.そうい う人達は,膵臓をやられ,しかも肝臓の方はほとんどや られておらないということを言っております.わが国で は,大体においてアルコールと肝臓の方が注目されてい ました.このような症例をみますと,アルコールと膵臓 ということが浮びあがって来るだろうと考えられます.

ところで,このような門脈圧充進症を伴った慢性膵炎と いうことは,実はあまり本邦では気づかれていなかった ので,われわれの症例を通して,注目されてくるだろう と思います.外科の先生方は手術の際にどうも静脈怒張 がみえるというふうにはおっしゃっていたのですけれど も,それも慢性膵炎と直接関係あるとはなかなか示して はいただけなかった.すでに諸外国では2〜3の報告が ございまして,それについて文献的考察を神津先生にお 願い致しましよう.

 神津=この症例のポイントは,門脈圧充進症を示唆す る静脈瘤が胃にあるのに食道にないことと,肝にはほと んど問題がなかったことであります.慢性膵炎例にみら れたこの特色ある臨床像を少し考察してみたいと思いま

す.

 門脈圧軽卒症portal hypertens量on}よその発生機序に より,肝前駆prehepatic,肝内性i庸ahepatic,肝玉性 posthepaticに大別されます.階前性とは門脈や脾静脈な ど肝に入る前の門脈域に起る閉塞が原因となるものを言

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い,肝内性とは肝硬変など肝そのものの変化によるもの を,そして肝後性とはBudd−Chiari症候群など肝から出た 静脈の閉塞によるものを意味します.肝前性と肝後性と をあわせて肝外性extrahepaticということもあります.

 この症例は,慢性膵炎により脾静脈が閉塞され,胃静 脈瘤を来たしたものでした.したがって取前性の門脈充 進症を伴った慢性膵炎の1例ということができます.さ て肝外性の門脈圧充進症のうち,このように脾静脈のみ に限局した閉塞は,どちらかといえ.ば希なもののようで す.たとえば1966年Gr㎜ertの報告をみると,門脈城 に起こった血栓症327例中,脾静脈に限局したものはわ ずか1.2%にすぎません.一方,脾静脈の閉塞を来たす 病因に関しては,1970年Sattonが1900年から1968年ま での英語文献に現われた53例で検討しています。それに よりますと,原因の第1位は悪性腫瘍で35.2%を占め,

次いで原因不明(恐らく広義のBanti症候群がかなり含 まれていると思いますが)が29.6%,そして第3番目が 膵炎で11.1%,さらに外傷7.4%,膵嚢胞5.6%と続き ます.ところで,1971年Longstrethらの報告によりま すと,肝外性門脈圧尤進症164例中5例(3.0%)が慢 性膵炎によるものだったということです.このように多 少の差はありますが,膵炎による脾静脈閉塞の報告例は 決して多くはありませんでした.もっともこれは本当に 絶対数が少ないというよりも,単に報告されなかっただ けなのかもしれません.

 さて,脾静脈に閉塞が起こりますと,脾静脈を介して 門脈に流入する静脈の領域にうつ血が起こります.そこ で脾腫と共に,静脈瘤がまず語順静脈や左証大網静脈の 領域,つまり調子隆部から胃体上部大蛮に,現れてくる わけであります.この場合,胃冠状静脈や食道静脈には 直接影響されないので,食道静脈瘤は現われないか,あ るいは現われかたが遅くなります.このことは通常みか ける頻度の高い肝硬変による門脈圧充進症と異る点で す.肝硬変では門脈に近い食道静脈に静脈瘤が現われや すく,この症例のような胃体部大嘉例の静脈瘤はむしろ 少ないか,あるいは晩期にはじめて現われることになり

ます.これはかなり著しい対称的な事柄です.そのため に,脾静脈閉塞による門脈圧詠進症はIeft−sided portal hypertensionとか, regional portal hypertension とか,

10calized portal hypertensionとか呼ばれます.その消

化管出血を来たす頻度は65%ぐらいです.

 本症例のような慢性膵炎による局所性門脈圧充進症の 例は,工ongstrethが1971年までに英文文献で16例見出し てreviewをしています.しかしわが国では調べた限り まだ報告例はありません.もっとも今後そのつもりで調 べればかなりしばしばみかけるものかもしれません.い ずれにせよ,食道胃静脈瘤や脾腫などの門脈圧尤進症の 病因を考える上で,膵炎もまたその原因たり得ることを

この症例によって教えられたと思います.

 竹内:どうもありがとうございました,まとめてみま すと,比較的若いアルコール飲みにおこった慢性膵炎の 症例でありまして,それが胃静脈瘤を合併し,慢性膵炎 自身に原因が求められたものです.慢性膵炎といいます のは,難病対策に上げられているような病気であり,ま ず治らない病気であると理解されています。その合併症 として,一つは,このような門脈圧充進症に至るような 状況があるということが示されます.また,この症例を 通して残されている問題としては,何故にこのような,

若い人にアルコールを飲んで早く慢性膵炎になってしま うかということです.例えば,二十年飲んでも,70〜80 歳になって初めて慢性膵炎になることはまずない訳で,

たいてい慢性膵炎になる人は比較的若くしてなってしま います.大体30代前後,40代には完成してしまいます.

そういう文献は既にございまして,フランスの先ほどの マルセイユのSarlesのところでは,急性膵炎は比較的 高年老に見られるけれども,慢性膵炎は比較的若年者に 見られるとそれを統計的に集めてみておりますが,13歳 若い人たちのグループにアルコール飲みによる慢性膵炎 がみられております.

 この患者の予後については非常に暗然たるものがある と思いますが,portal hypertensionに関してもまだ解決 されてないかも知れません.すなわち残った膵臓に二炎症 が再びおこって,線維化がすすめぼやがては門脈を圧迫

して,再び門脈圧充進症をおこすかも知れません.この ように非常に難治性な膵炎ということで慢性膵炎をとり あげ,その合併症としての胃静脈瘤というものを強調し て,この検討会を終ります.どうもありがとうございま

した.

 付記:本論文の一部は厚生省慢性膵炎研究助成金によ     る.

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