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1997 年以降の尼崎港内外での水質底質の変化について

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Academic year: 2022

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1997 年以降の尼崎港内外での水質底質の変化について

徳島大学大学院 正会員 上月康則 徳島大学大学院 正会員 山中亮一

(一社)地域資源研究センター 正会員 三好順也 (NPO)人と自然とまちづくりと 正会員 中西敬 徳島大学工学部 学生会員 ○平川倫 徳島大学大学院 学生会員 西上広貴

大阪湾広域臨海環境整備センター 非会員 鵜池泰一

1.背景と目的

かつて瀬戸内海は汚濁物質や栄養塩が過剰な状態に あったが,水質総量規制や下水の高度処理などにより,

水質の栄養塩濃度は減少傾向にあるという1).瀬戸内海 の中で最も汚濁が進んでいると言われてきた大阪湾に おいても近年,大阪湾の湾口部や大阪湾西部海域で水質 改善されつつあるが,湾奥についての報告は見あたらな い.そこで,本研究では,大阪湾湾奥の水質および底質 の変化についてデータ分析を行った.検討の対象海域は,

大阪湾の湾奥にあって,未だ夏には貧酸素化し,時には 青潮が発生する尼崎港とその周辺とした.

2.データ解析方法

水質,底質の検討は,大阪湾での行政によるモニタリングデータを収集し,水質の変化傾向をみることとし た.データは図 1に示す.尼崎港の港内(地点 b,2,3)と港外(地点 a,1),淀川(地点 c),神崎川(地点 4)

の河口のものを用いた.データの出展は,水質については国土交通省による「瀬戸内海総合水質測定調査」(地 点 a),大阪府,兵庫県による「公共用水域水質測定調査」(地点 b,c,d),底質については大阪湾広域臨海環 境整備センターによる「環境監視調査」(地点 1~4)である.解析は水温,透明度,TN,TP,DIN,DIP と,底 質の強熱減量,TN,TP の経年データを対象に,Mann-Kendall 検定による傾向変動解析を行った.なお,環境基 準の水質類型では,大阪湾の湾奥は IV 類型(TN:1mg/L 以下,TP:0.09mg/L 以下)に指定されている.

3.結果および考察

3.1 水質および底質の経年変化

図 2に TN,TP,DIN,DIP,透明度(夏期)の経年変化を示す.TN は,尼崎港内を含む全ての地点で減少傾向(

P

<0.01)にあった.尼崎港沖(地点a)では,1985 年頃から減少傾向にあり,尼崎港内(地点 b)では,2005 年より基準値付近の値を示すように減少していた.TP は尼崎港内を除く,港周辺で減少傾向(

P

<0.01)にあ った.港内の TP は,TN と同様に環境基準値と同程度の値を示していた.DIN も減少傾向であったが,特に港内 と淀川河口(地点 c)の値は同程度の値で,減少傾向(

P

<0.01)にあった.DIP は淀川河口で最も高く,尼崎 沖を除く 3 地点で減少傾向にあった.透明度は尼崎沖では 1980 年代より随分と改善されているが,湾中央での 改善傾向は見られなかった.

強熱減量,TN,TP の底質は,水質ほどには顕著な減少傾向になかった.強熱減量値は,尼崎港中央(地点 3)

の値が最も高いが,近年では 10%を大きく上回ることはなくなった.また港口では,ごく弱い減少傾向(

P

<0.05)

にあった.TN も港口では,ごく弱い減少傾向(

P

<0.01)にあり,TP でも港中央を除く 3 地点でごく弱い減少 傾向にあった.

3.2 水質,底質の変化要因

要因には大きく次の 2 つのことが考えられる.一つ目は,事業場排水に対する濃度規制や総量規制,下水道 の整備2)である.栄養塩の総量規制は 2002 年に第 5 次水質総量制限で決められ実施され,尼崎港内に放水口

図1 調査地点

c b

4 a 1

d 2

3

0 5km

大阪湾

●水質調査

○底質調査

尼崎港 神崎川 淀川 jsce7-123-2016

1 / 2

(2)

のある武庫川下流浄化センターでも 2008 年に高度処理に切り替えられ,栄養塩の削減が行われている.二つ目 には,淀川からの栄養塩負荷の低下である.実際に,淀川河口(地点 c)の TN,TP は 2002 年を境に減少して いる.底質については,尼崎港中央(地点 3)では未だ改善傾向はみられなかったが,尼崎港先(地点 1)や尼 崎港口(地点 2)では,改善しつつあり,近い将来にはその傾向が港中央にも及ぶと思われる.

4.まとめ

この 10 年間で尼崎港内の水質は透明度を除くと概ね改善傾向にあった.底質も湾奥では未だ大きな変化は見 られなかったが,湾口では改善する傾向にあることがわかった.

参考文献 1)松田治:瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方,瀬戸内の自然・社会・人文科 学の総合誌No.65,pp.4-8,2013 2)吉田ら:大阪湾に流入する河川の栄養塩濃度の変動について,pp. 15-25,2014 3)永 淵ら:最近10年間における瀬戸内海底質の変動評価,水環境学会誌,第21巻,第11号,pp.797-804,1998

**:

P

<0.01 *:

P

<0.05 -:有意差なし

図2 水質・底質の経年変化

a**

d**

b**

c**

TN

0 0.5 1 1.5 2 2.5

TN (mg/l)

a** d**

c**

TP

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35

TP (mg/l)

b**

a** d*

c**

DIN

0 0.5 1 1.5 2

DIN (mg/l)

(年)

c*

d*

a b*

DIP

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

DIP (mg/l)

d

b a**

透明度

0 1 2 3 4

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

透明度(m)

(年)

4 2*

1**

3 強熱減量

4 6 8 10 12 14

強熱減量 (%)

4

1 3

2*

底質TN

0 1000 2000 3000 4000

 TN (mg/kg 乾泥)

(年)

1**

2*

4**

3 底質TP

200 400 600 800 1000 1200 1400 1600

 TP (mg/kg 乾泥)

1998 2000 2004

1995 201020102010 2015

Ⅳ類型 基準値

Ⅳ類型 基準値

jsce7-123-2016

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