中学校技術科における情報基礎領域の意義と問題点
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(2) 126. 情報化社会に変化しようとしている。情報化といってもオフィスオートメーション(Offiice Automation, OA)は以前から浸透中であるが,ファクトリ-オートメーション(Factory Automation, FA)はまだ始まったばかりでホームオートメーション(Home Automation, HA)もやっと話題になり始めた程度である。社会の中にコンピュータが浸透するにつれ て,社会的な問題や健康上の問題も取り上げられている。社会的な問題としてはソフトに 対する著作権の問題やプライバシーの問題であり健康上の問題としてはVDT症候群の問 題などがある。高度な専門教育の場合はこれらが各々の専門で取り扱われるが情報基礎で はそれらも対象となる。 コンピュータにはハードとソフトが必要であるが,これからはソフトウェアクライシス といわれるくらい多くのソフトの開発要員が必要とされ,通産省ではそれに対するため∑ 計画を実施中である。 -ードとソフトの関係ではハードの発達の方がめざましく,ソフトの方は幾分遅れ気味 であるように思われる。この技術的な進歩はとどまるところを知らないが,最近ではその 進歩も以前よりは落ち着き,進歩の予測ができるようになってきた。情報技術の進歩が天 才的な個人の業績から,集団で計画的に進められる段階に入ってきたからである。とはい え,最近の我々の身近なコンピュータの技術の進歩及びその普及は驚くほど急激である。 コンピュータがようやく我々の日常の道具として利用できるような段階になってきた。し かしまだそれを利用できるのは特別の教育を受けた人で,万人が自然に利用できるもので はない。本来,コンピュータの開発は一方では高性能のコンピュータの開発があるが,他 方ではコンピュータをいかに人間に扱い易くするか,という問題にも取り組んでいる。こ の問題を解決するにはさまざまな技術の進展が寄与している。 最近では外部記憶メモリとして光磁気ディスクがパソコンに利用できるようになり,記 憶できるメモリ量が格段に増加したため,画像データの保存が便利になった。そのことは 教師が教科書の絵や図形をスキャナと呼ばれる画像取込装置で入力し,それを画面上で生 徒に提示することができるようになったことを示している。即ち,光磁気ディスクによっ て教師が教材を作成する手段が簡単になることを示すものであるO現段階ではワープロが パソコンの利用としては最もよく利用されているが,これを音声で入力することができれ ば,キーボードに習熟する必要もなくどんなに便利かしれないと思われるであろう。しか し,現段階では人間がキーボードを練習して入力する方がはるかに能率がよいのである。 コンピュータの普及は技術的な進歩と政治的,経済的な必要性がないと達成できない。ま た,個々の商品の技術の進歩には企業間の思惑もあり問題は単純ではない0 もう一方では,わが国は情報過多の傾向があり,最新の情報が日本中に伝送され,国民 の知的関心も高い。ところが,それがこうじると,例えば人口知能を用いたCAI等がと りざたされるとテレビ,新聞及び雑誌がそれらの特集を組み,明日からでもそれが実現し そうな錯覚に陥る。我国はこのようなことが時々みうけられるので,正確に技術情報を捉 え,それを判断しなければならない。情報化社会の進みぐあいや,実際のOAの進展の程 度など,正確で的確な知識を得て判断しなければならない。 中学校の生徒はコンピュータに対してどのような期待を持ち,理解をしているのであろ うかO先行研究によれば,中学生はコンピュータを用いた学習をしたいと答えている13-15)。 生徒の日常生活から考えると,生徒が毎日の生活で関わりを持っているのはファミコンと 自動販売機くらいではないだろうか。テレビやビデオのリモートスイッチにも4ビットの マイコンが組み込まれている。生徒は銀行にも行かないし緑の窓口で切符を買うことは少.
(3) 中学校技術科における情報処理領域の意義と問題点. 127. ないであろう。しかし,テレビ等のメディアをっうじて,コンピュータグラフィックやシ ンセサイザーのすばらしさを知っている。ワ-プロがあればコピーしたテープのケースに 歌手の名前と曲目を打ち込むかも知れない。パソコンで計算をさせるといっても三角関数 はまだ学習していないし,座標系は3年生で学習する。しかし教育制度から考慮すると, 中学校で義務教育は終わり社会人になる人もある。その責任からコンピュータを含んだ情 報教育を中学校で実施しなければならない。 3.中学校教育における情報基礎の役割 来る情報化社会を目指して,今回の指導要領改訂を機会に学校にコンピュータが導入さ れる。学校へコンピュータが導入されると,緒言で述べたように授業だけでなく学校管理 や教育研究などいろいろな分野に利用されることであろう.学校にコンピュータが利用さ れることと,情報基礎と無関係では考えられない。現在,多くの学校では,技術科の教師 が学校にコンピュータを導入し管理することが多い。コンピュータを導入するに際しては 機種の選定からその設置場所,管理の方法等多くの問題が生じて来る。しかも将来のこと を考えると技術科だけでなく全校的な判断をしなければならない。他の教科においてもコ ンピュータの利用は差し迫った問題だからである.数学,理科はもとより美術や音楽でも 考えられないことはない問題である。パソコンを選択したり設置する場所もそのような観 点で決定する必要がある。当分は学校内での教師の研修が必要であり,その間ソフトの収 集とその習熟が必要である。 コンピュータを学校に導入することとコンピュータで教育をすることは同じではないQ 一般にコンビュ-夕はソフトがなければただの箱と言われている。コンピュータで教育す ると言うことはコンピュータを用いて授業を行うことであるが,それには二つの意味があ る。その一つはコンピュータを掛図や黒坂の代用にする。この場合はコンピュータの画面 を利用し,授業の主体は教師である。これでもそのソフトには多くの準備が必要である。 もう一つの意味はいわゆるCAIでこれは生徒がコンピュータと対話しながら学習する。 これも無論,教師がプログラムである教材を準備するのであるが,生徒は直接コンピュー タと対話し学習するわけで,教師は前面には出てこない。コンピュータを学校に導入する ことは本来後者を目指すわけであるが,そのプログラムであるコースウェアを作成するの はもっと時間が必要である。そのため校外の教科書会社や出版社の協力も必要であるが, 生徒の到達度を理解している担当教師が作成するのが最適である。 CA Iだけで学習する のではなく教師の授業とCAIを併用する場合は特にそうである。 今回の技術科の情報基礎の導入は以上のような問題も含まれるが,その本質的な課題は これらの活動の基礎となるコンピュータに生徒が対応する基盤を確立すること,いわゆる コンピュータリテラシ-であるといわれている。そのはかコンピュータの仕組みを学習す る,コンピュータの役割を理解し,社会との関わりを理解することにある。そのためにシ ミュレーションプログラムを利用したり,自分で簡単なプログラムを作成するのである。 ここで,コンピュータと言うのは道具であることを認識しておきたい。道具を活用する にはその道具の仕組みを知り,その道具に習熟しその道具を意識しないで利用できるよう になって初めてその道具を活用することができるのである。佐伯16)はそれを道具の透明化 と述べている。その原理や仕組みを知ることにより人間が道具に使われるのでなく自分が 道具を活用していることを意識することができる。これから情報化社会に入りコンピュー タがいろいろな場所で利用され,生徒も将来それに関わることとなり意義のある問題であ.
(4) 128. る。 また,教育用ソフトの良質な製品を作成し,それを活用することにより,学校の合理化 が進展することに気が付かなければならない。そのことはかなりの費用を支出しても採算 が合うことである。 4.背景となる情報関係の諸科学との関連 情報基礎の指導内容はその目的に鑑みコンピュータの利用分野に関する講義,その仕組 みに関する講義または実習, BASIC言語の実習,応用ソフトの実習などである。ここでは コンピュータの仕組みを生徒にどの様に指導するかについて検討する0 コンピュータを学習する際に,コンピュータの仕組みがどのようになっているのかにつ いて知ることは意味がある。それが技術科の教科の中ではコンピュータリテラシーを越え た最も技術科らしい内容である。しかしこれがあまりこうじると退屈を感じる生徒も出現 し問題である。しかし,生徒の一部にはそのことにたいへん興味を持っている5,16)。 そこでコンピュータの仕組みとは一体何であるかということになる。筆者のこれまでの 経験からボ-ドマイコンでアセンブラを学習すると不思議にコンピュータの仕組みが理解 できたような気分になるのである。コンピュータが世に出た初期の段階ではトレーニング キットとして発売され,興味のある人はグループでテキストと実物を首っ丈で学習したも のである。現場の先行的な実践報告を見ていると4ビットマイコンを用いた学習例を見る ことができる17)。これもアセンブラで命令を打ち込み,コンピュータを走らせることによっ てその仕組みの理解が容易になるものと思われる。 もう一方のコンピュータの仕組みはTTLで構成されたI Cを用いて簡単なロジック回 路を構成し実験してみることである18)。加算回路,デコーダ回路等を回路図にしたがって 製作させると同時にオンとオフを調べさせるのである。これは費用も安く実施できるがコ ンビュ-夕の基礎の基礎であるのだがコンピュータとしての実感がわかないおそれがある。 コンピュータの仕組みの学習について,上で述べてきたことは-ードウェアのことだけ であるが,実際にはソフトウェアのことを学習しなければならない。ソフトでの基本は高 級言語をコンパイルかインタプリトしてアセンブラに変換しそれをさらに16進数に変換す るoあるいはバイナリーでの加法,補数,等を学習することがそれに相当する。 以上の学習内容にBASIC言語の実習や応用プログラムの実習を加えれば,一般的に言 われている,電子計算機概論とか情報処理概論のほとんどの分野の基本に触れることにな る。欠落しているのは情報理論だけであるが,情報理論は講義でその本質的な内容に簡単 にふれることでよいものと考えられる。 5.教科の領域としての情報基礎の内容と構造 5.1技術科の目的と情報基礎領域との関係 技術科は普通教育の技術教育を担当し,他教科にはない実践活動するなかで物を創造し てゆく教科である。目的の物を製作するために計画を立てそれを設計し,材料を集め,部 品に加工し,組立調整を行い仕上げを行う。その間に生徒は物を作る喜び,計画性や創造 性をたいとくして行くのである。情報基礎領域もその規範のなかで学習活動が展開されな ければならない。 情報基礎は上で述べたようにシステムを分析し人間が関わっていた部分をコンピュータ で置き換えられるも1のは置き換えるように,新しいシステムを構築するものである.単に.
(5) 中学校技術科における情報基礎領域の意義と問題点. 129. 人間が電卓で計算していた手順をコンビュ-タプログラムに置き換えただけでは問題があ る。コンピュータのアルゴリズムやコマンドを知り,そのアルゴリズムやコマンドを組み 合わせて目的の機能を持ったプログラムを作成するのである。そう考えるとアルゴリズム やコマンドは一つの部品であり,ある目的を持った全体を構成する一部である。即ち,プ ログラムを組む学習活動の内容には,技術科で従来から工作などで実践してきた学習活動 に匹敵する内容がある。 5.2情報基礎の学習内容 中学校生徒の発達の段階に応じた情報科学の学習にはどのような内容が適当であろうか, それを情報関係の諸科学から精選することは簡単ではない。生徒が日常見聞する内容と, 生徒の能力にはかなりの食い違いがある。情報基礎を指導することは単に専門家のコンピュー タ教育をそのまま利用するわけにはゆかない。このたびの指導要領の改訂で示された情報 基礎の学習内容は次のようになる(1)コンピュータの利用分野を考える(2)コンピュータ の仕組みを知る(3)簡単なプログラムを作成する(4)アプリケーションソフトを利用する。 以上のことを20時間または35時間で実施するようになっている。また,情報基礎は選択領 域になっており準備が整った学校から学習にはいるようになっている。 初めて導入された情報基礎は指導要領の範囲ではかなり自由にしかも背景となる情報関 係の諸科学と比較しても広い範囲で学習が行えるようになっている。いちばん問題となる のは教師の指導力であり,たんにコンピュータの処理能力ではなく,広い意味での情報活 用能力が試される。また,担当の教師がそれほどコンビ3.一夕や情報処理に通じていなく ても充分その目的が果たせるような-ード,ソフトを含めた環境を作って行くことも我々 の課題である。 5.3情報基礎の課題 コンピュータの仕組みを知り,簡単なプログラムを作成しかつアプリケーションソフト を活用するのは何とも欲張った内容ではないか。指導要領の内容からは情報基礎と呼ばず た計算機入門とか初級計算機と言った方が自然のような気もする。情報処理として情報を 適切に加工し情報の価値を判断する道具として計算機を使用するのが本質であるが,指導 要領の展開を読むとそのような内容は具体的には見あたらない19-21)。 一般に計算機を活用するにはシステムを構成しなければならない。そのために多くの時 間と労力を費やし便利なシステムが構築される。現在それがどのように人間の手によって 処理されているか等,現状を収集し分析した上でそれを計算機にどのように置き換えられ るか新しいシステムを机上で構築し,それをコンピュータプログラム上にコーディングす る,いわゆるプログラミングするわけである。情報処理とはまさにこの人間が行う部分が 大切で,実際にコーディングは決まった手続きでしかないOこれまでに示された情報基礎 の先行研究の中にはこのような意見を述べたものは見あたらないのが実情である。 山本は22)ソフトに金をかけよ,共同でソフトを開発するセンターを作れと述べているo コンピュータソフト作りの難しさを良く理解されており,半端なことでは許されないこと を示されている。いちおう,指導要領を改訂しコンピュータを導入するための補助金を用 意され23)かつ指導者の研修24)を実施され着々と準備ができているが,もう一つソフトを共 同で開発することが必要である。 CECにて教育用のコンピュータを開発するより学校用 のプログラムの良いものを開発して普及する方が急がれる。 -ードの方は現在のパソコン でもどうにか間に合うがソフトの方はそれよりはるかに問題があるからである。おそらく 市販のソフトに依存するか教師が自らの手で作成することを期待されているのであろう。.
(6) 130. ソフトの難しさは現在普及しているパソコン用の基本ソフトを概観しても理解できる.一 般に良いと認められているソフトはワープロ用をのぞいてその基はすべて米国製である。 5.4情報基礎によって培われる生徒の発達の側面 生徒の発達にはいろいろな側面があって,情報基礎を学習することによって生徒のどの ような側面の発達を育成するかについて明らかにすることは容易ではない。コンピュータ を恐がらなくなる,コンピュータの仕組みが判ったということも大切であるが,それを学 習することによって得られるより人間の基本的な側面を考えてみたい。もっと言うと,未 来の社会を生きるための人間に要求される新しい側面を満足させるものでなければならな い。本来は生徒の立場にたった実証的な研究が待たれるが,ここではその仮設をいくつか あげてみることにする。 先ず,一般にゲームをしていてもそうなのであるが,コンピュータから発せられる信号, 即ち画面の情報を見て,その際の諸条件を勘案し,的確な判断をして即座に自らキーボー ドを叩くなどの反応をしなければならない。その判断の基準は一般常識なのであるが,そ の前にそのコンピュータとのマンマシンインターフェイスの問題がある。このコンビュタリテラシーとは上で述べた状況をコンピュータを意識しないくらいに情報のやり取りが できるようにすることであろう。 コンピュータは正確なプログラムを作成すれば確実に作動し,余り考えないで成行きで プログラムを組むとたいてい思うようには動いてくれない。特に高度な知能を必要とする のではなく,着実に-歩一歩正確に実行する物の考え方,論理的思考が要求される。特に システム的なものの考え方が重要であるo現実の世界を記号を通してコンピュータの中に 表現するめわけで,現実とモデルや記号との投影や照合ができる能力が要求されるのであ る。 弊害としてはいわゆるデジタル人間と言われるように物事をゼロか-か決めてかかる, いわゆる情緒に欠けるような側面が現れるかも知れない。 技術科の他の領域は汗水たらして勤労の喜びを味わうことができる.コンピュータはプ ログラムが完成すると成功感を味わうことはできるがその味は汗水たらしたものとは異な るであろう。. 6.授業実践 現在の段階で公表されている授業実践は情報基礎の全貌がつかめない混沌としている中 で,自ら情報基礎の枠組みを考えて実行している点に,高い評価を与えることができ る25-33)。そのような困難な状況にあたるため具体的な実践報告はきわめて少ない。特に, 1 - 2時間の一過性の実践授業でなく, 20-35時間継続した研究は事例が極めて少ない。 実践報告は用いられたコンピュータによって二つのタイプに区別することができる。即 ち一般のパーソナルコンピュータを使う方法と,もう一方はトレイニングキット(4ビッ トマイコン)を用いる方法に区分される。 (1)一般のパーソナルコンピュータを利用する方法 一般のパソコンを利用することは情報基礎だけでなく,技術科の他の領域や他教科でも そのコンピュータを利用することができる。情報基礎のコンピュータリテラシーはこのパ ソコンを利用した指導が最も良いものと思われる。パソコンを用いた指導の内容は,その プログラムを工夫することにより極めて範囲の広いことを実施することが可能である。そ の中でも主として次の四つが考えられる。それには1) BASIC言語の学習。 2)ワープ.
(7) 中学校技術科における情報基礎領域の意義と問題点. 131. ロとしての利用。 3)表計算。 4)図形表示などがある。 これらの四つの中で最も技術科らししい内容は1)のBASIC言語の学習であろう。その 理由はここで言うまでもない。 BASICの学習はコンピュータプログラムを作成する場合の 考え方を学習するために実施するのである。そのため用いるコマンド(機能語)は限定し て学習する必要がある。そのさい,文字列処理,図形処理,計算等の場合によって限定す るコマンドが異なり問題である。また,プログラムする内容も生徒の必要性や,技術科の 他の領域の内容に合わせて組むような課題を用意する必要がある。 現在のようなパソコンの普及にはパソコンがプログラム一つでいろいろな目的に使用で きるからで,パソコンをワープロとして利用している場合は極めて多い。情報基礎でもパ ソコンのいろいろな利用法の一つとしてワ-プロとしての活用は進めるべきであり,生徒 も興味を持つものと思われる。しかし,ワープロそのものは情報基礎,技術科というより も教科で言えば本来技術科のするべき問題ではない。コンピュータを利用するからと言っ て何でもかんでもは問題がある。特にワープロは普通に文書を清書するだけにとどまらな いで,文書の書き方に新しい側面が生じてくるからである。その一つはキーの操作にも関 係する。生徒が正しいキー操作を覚えるのにどのくらいの時間を要するかは実験をしてい ないのでわからない,また,先行研究では,生徒のキ-求-ドへの対応は大人はど問題は ないようである34)。ワープロとしての入力方法に仮名キー変換とローマ字変換とあり一良 一短であるが,一般にはローマ字変換を勧める人が多い.しかし,多くのワープロのロー マ字入力は小学校で学習するローマ字とは異なるので,ここでも問題がある。 表計算やデータベースは情報整理の実践に最良であり,情報基礎の本質的な指導ができ るものと考えられるが,これまでの指導例を見ると余り見あたらないのが実情である。中 でも板倉らの立琶湖の総合学習が目を引く6)。ごっこあそびのように,クラスの名簿を作 成し,あるいは地域の情報を入れてその情報を加工する方法を指導することが可能である。 しかし,これも情報を加工するとしてもその目的が明確でないと実行できない,それをもっ と進展させると本来,技術科ではなくて社会科や国語科の教科となる。作図ソフトも同様 で,単にパソコンを利用して図面を描く体験をする,そうしてパソコンの操作はこのよう なものだと言う理解をさせることが必要であろう。そのように考えれば今回の情報基礎は 学校にコンピュータを取り入れる突破口としての意味が大きいことが判る。 (2)ワンボードマイコンの利用 情報基礎の中で最も技術科らしいコンピュータの利用はそのワンボ-ドマイコンの活用 である。ただし,コンピュータリテラシーと言う意味ではキーボードがフルキーボードで ないだけ不利かも知れない。このワンボードマイコンの学習はなんと言っても記号的なア センブラのプログラミングと,その結果がランプの点滅とか物の動きとして見ることがで きる点にある。アセンブラでプログラミングするにはコンピュータの構造を理解しないと 組めない。この様な学習はコマンドの範囲を限定することにより,中学生の発達段階でも 充分学習が可能である。中学校の段階でマイコン,すなわちコンピュータの基礎をしっか り学習しておくことは極めて意義のあることである。また,この学習は技術科の電気,機 械,木材加工,金属加工等の他の領域との連携の題材を選択することができる。 7.情報基礎学習領域の展開 実際に情報基礎領域を導入するに際しては,上でも述べたようにいくつかの実践例が示 されている。これらを見ると試行的に実施されたことはあっても,生徒に与えたBASIC言.
(8) 132. 語や図形処理,ワープロなどの簡易言語あるいは専用言語がいわゆる大人用の一般に流布 しているプログラムを流用している。しかし,実用品を生徒が活用できれば問題ないが, 生徒の発達から考えて無理な面も出てくる。例えばN88BASICはエラ-メッセージが英語 で出てくる。これらは生徒の立場にたって考えると日本語で出された方が当然生徒は理解 し易い。筆者はMS-DOS上のN88BASICに生徒が作成したプログラムのエラーをERR番 号及びERL番号から日本語のエラーメッセージが出るようなプログラム作成の指針を得 ている。 生徒の発達段階を考慮して生徒が学習する範囲でわかりやすく教師の手をあまり煩わさ ないような言語やプログラムの開発が急がれる。しかもそれらを統合した,中学校技術科 情報基礎用の統合化プログラムの開発が急がれる。 また,技術科の他の領域のシミュレーションプログラムや, CAIプログラムも用意さ れ,情報基礎を情報基礎だけに終らせないようにすることが,コンピュータの利用を全学 的に広め,技術科情報基礎が単なるコンピュータリテラシ-に終らせず,本来の技術科ら しい内容を指導できることとなる。 8.教員養成の立場からの情報基礎 指導要領が公示され実際に準備が完了した学校から情報基礎領域を展開して行くわけで あるが,その際最も大切なことは或職教員の研修,あるいは学部技術科学生の指導カリキュ ラムの充実である。昨年から文部省は指導者研修会を全国各地で開催し,各県の指導者養 成を開始した。日本教育大学協会技術部会では情報教育専門委員会を設置していたが本年 の大会で教員養成の開講科目を提示している。兵庫教育大学では大学院学校教育研究科生 活健康系技術分野の開講科目として情報処理及び情報処理演習を開講している。研究活動 として日本産業技術教育学会全国大会,同近畿支部大会,日本科学教育学会などにて,そ の理念及び実践について多数の研究発表をしている。 上でも述べたようにコンピュータは道具であり,それは単なる知識として学習するので はなく,それに習熟しなければならない。そのためにはとりあえず学校にコンピュータを 購入し,学校内の教育活動の全ての部分にそれを活用し,それに連れて習熟度を深め情報 基礎の導入を開始する必要がある。 9.緒言 中学校技術科の情報基礎領域の果たすべき役割について考えてきた。これまでの研究に なかった問題を提起し,より内容ある情報基礎の方向を探らなければならない。 従来の研究では生徒の興味や関心,世の中の情報社会化の進展にともなう情報基礎領域 の必要性などについて論述したものが多かったが,既にその段階は終了した。今後は指導 すべき内容をより明確にし,生徒の理解の上にたった指導法の研究,及びその教材の開発 が必要である。特に今回の過度的なコンピュータリテラシ-教育から,次の段階の本格的 な情報処理教育に向けて研究が必要である。 問呂iJi 1)文部省:中学校指導要領(平成元年3月), (1989. 3),大蔵省印刷局。 2)松浦正史:学校教育におけるコンピュータの利用例,愛媛大学教育実践センター紀要, Vol. 2, (1984), PP119-125。.
(9) 中学校技術科における情報基礎領域の意義と問題点. 133. 3)亀井寛: 「情報基礎」の教育内容,日本産業技術教育学会誌, Vol. 30, No. 3, (1988), pp279286。. 4)松田純雄,板倉安正,富山朝司:中学校における情報科学教育-総合学習としての展開一,日本 産業技術教育学会誌, Vol. 30, No. 1, (1988), pp35-40 5)稲富和夫,成林健:中学校技術科で電子計算機の授業を実施した結果について, Vol. 17. (1975), pp38-41。. 6)板倉安正: 「情報基礎」をどう考え,どう教えるか,教育マイコン実践, 198a 9,pp52-5&ぎょ うせい。 7)浅見匡:技術・家庭科「情報基礎」新領域設置のねらい(1), (2),マイコンレーダ(1988. 8), pp36-38, (1988. 9), PP42-44,罪-法規0 8)朝井英清:情報化社会と情報教育,マイコンレーダ, (1988. 8), ppl6-19,第-法規。 9)山口晴久:パーソナルコンビュ-夕教育用市道カリキュラムの試作と実験授業, E]本産業技術教 育学会誌Vol. 30, No.2. (1988), ppl23-131。 10)稲富和夫,成林健:中学校で電子計算機の授業を実施した結果について,日本産業技術教育学会, Vol. 17, (1975), pp34-370 ll)河原淳夫,上田邦夫:技術科教育における「情報基礎」教育の-試案,日本産業技術教育学会誌. Vol. 29, No.3, (1987),pp97-109。 12)坂本昂,東洋:これがコンピュータ教育だ, (1987),ぎょうせい。 13)佐伯肝:コンピュータと教育, (1986),岩波書店。 14)田北晋一,横田昭:計算機及びメカトロニクスの教材化のための意識調査,日本産業技術教育学 会誌Vol. 29, No.l, (1987), pp42-48。 15)松田純雄,富山朝司,村田利文,村田昭治,板倉安正:中学校における情報処理教育-技術系列 の選択教科としての導入-,日本産業技術教育学会誌, Vol. 27, No.4, (1985), pp49-57。 16)稲富和夫,成林健:中学生の電子計算機への関心度一教室で実演して見せた結果について,日本 産業技術教育学会誌Vol. 16, (1974), pp159-1620 17)伊藤剛彦,宮川秀俊: 4ビットマイコンを用いた「情報基礎」の学習,年会論文集12, 1988, pp219-222,日本科学教育学会。 18)河原淳夫,上田邦夫,長校正康: 「情報基礎」教育用教具「2進-10進操作・表示盤」の開発, 日本産業技術教育学会誌, Vol. 30, (1988), pp241-243。 19)津止登喜江,浅見匡,河野公子:改訂中学校学習指導要領の展開技術・家庭編, (1989. 8),明 治図書。 20)津止登喜江,浅見匡,河野公子: '89告示中学校学習指導要領技術・家庭科の解説と実践, (1989. 8),小学館。 21)津止登喜江,浅見匡,河野公子:中学校新教育課程を読む技術・家庭科の解説と展開(1989. 8), 小学館。 22)山本米雄:教育用ソフトの普及,マイコンレーダ, (1988. 4), pp43-45,罪-法規。 23)教育とマイコン実践, (1989. 4), PP30-31,ぎょうせい。 24)昭和63年度中学校教育課程技術・家庭科講習会資料,マイコンレーダ, (1988. ll),第一法規。 25)駅田省吾,宮川秀俊他:技術科教育におけるパソコンの実践的利用,年会論文集12, 1988, pp 215-218,日本科学教育学会。 26)宮川秀俊,駅田省吾他:技術科教育におけるプログラミングの学習の授業実践,年会論文集16, 1989, pp263-266,日本科学教育学会.
(10) 134. 27)駅田省吾,宮川秀俊:コンピュータ教育に関する実証的研究(3),日本産業技術教育学会第32回全 国大会講演論文集, (1989), pp93,日本産業技術教育学会 28)西原口伸一: E]常生活とコンピュータ情報とデーター,マイコンレ-ダ, (1988. 8), ppl0-15, 罪-法規。 29)奥山拓雄:コンピュータの構成と特徴,マイコンレーダ, (1988. 9), pp4-9,第-法規. 30)花田茂:コンピュータがデータを処理する仕組み,マイコンレーダー(1988. 10), pp9.才ー 法規。 31)金子雄治:コンピュータの操作1ソフトウェアの機能,マイコンレーダ, (1988. 12), PP4-9, 罪-法規。 33)長谷川義美:簡単なプログラムBASIC,マイコンレーダ, (1989. 1), pp4-9,第一法規。 34)藤木卓:中学生の一本指入力によるキーボード操作技能に関する考察, El本産業技術教育学会誌, Vol. 31, No. 1, (1989), pp53-56。.
(11) 中学校技術科における情報基礎領域の意義と問題点. 135. Importance and Discussion of Elementary Computer Science Education (jyoho-kiso) in the Subject of Technology. Masashi Matsuura. The object of this paper was to make clear the problems of learning in elementary computer science in junior high school and to analyze the structure and contents of the field of elementary computer science education. It was dealt from the view point of present information oriented society and discussed concerning, the role of elementary computer science education at a 】unior high school level. Additionally, the relationship between background of the science of information and elementary computer science education was examined. The objects, contents and problems of elemantary computer science education were analyzed from the view point of pupils development in intelligence. Also, it was dealt with how the lectures should be prepared and progressed. Finally, it was discussed about the teacher training programs in elementary computer science..
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