児童・生徒の食生活の実態からみる食教育の課題 : 函館市内と近郊の児童・生徒およびその保護者の場合
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第別巻 第1号. 平成15年 9 月. JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.54,No.1. September,2003. 児童・生徒の食生活の実態からみる食教育の課題 一函館市内と近郊の児童・生徒およびその保護者の場合− 佐々木 貴子・藤居 恵子*・畑井 朝子** 北海道教育大学教育学部函館校家政教育教室. *函館大学付属柏稜高等学校 **函館短期大学. Ⅰ.はじめに. 平成10年および平成11年告示の小・中・高等学校学習指導要領は学校の教育活動をすすめるにあたって,. 「生きる力」の育成を中核的なねらいに据えるように位置づけた.この教育体制では,子どもたちが身につ けるべき「生きる力」の核となる豊かな人間性にかかわる感性や心が子どもたちに育まれるような環境づく. りが望まれる1).. しかし最近の学校教育現場では,「キレる子」や「学級崩壊」などの問題が発生しており2)3),また,家庭 における子どもたちのゆがんだ食生活が生活習慣病や情緒不安定などを増加させ,心身ともにさまざまな弊 害を起こしていると指摘されている′l ̄7). 文部科学省は,食生活の問題は基本的には個人や家庭に委ねられるべきであるが,家庭の教育力の低下を. 考慮し,その対応策として平成10年に都道府県教育委員会に対し,教師と栄養士がチームを組んで「食」の 意義を指導する食教育を行うように通知した8).. 「食」と「心」との関連については,「人間を“からだ’と“こころ”から捉えると,食は最も重要な出 発点であり,身体は直接的には食物によって支えられ,同時に食は独自の好みと結びつくことによって,心 とも深く関わる文化の問題でもある.身体は共有できないけれど,心は共有できる.それをつなぐのが “食”である」9)と,そのつながりの深さが注目されている.. そこで本研究では,子どもたちの「生きる力」の欠如という現代的課題の解決に向けて,食生活の面から のアプローチを試みることにした.そのためにまず,地域の子どもたちの食生活や心身の状況および問題点 について,調査を通して明らかにし,それをもとに今後の食教育の手がかりを得ることにした.これを踏ま. えて,子どもたちが「生きる力」を育むことができるような食環境としての家庭・学校・地域連携のあり方 について示唆が得られたので報告する.. なお本調査は,平成8年度農林水産省の委託を受けて,財団法人食生活情報サービスセンターが実施した. 「子供の食生活及び,家庭における食教育の実態調査」10)(以下,先行調査とする)に準じて実施した.先 行調査10)は,平成8年12月∼平成9年1月に,東京都内23区に通学する′ト中学生およびその保護者を対象 としており,調査対象である家庭は都心の山の手地域で,非常に食意識が高いことが特徴であった.した がって,本調査と先行調査10)を比較検討するにより,北海道函館市の地域性を捉え,地域における食教育の あり方を追求することを目的としている. 127.
(3) 佐々木 貴子・藤居 恵子・畑井 朝子. Ⅱ.方 法 1.調査方法. 質問紙による無記名自記式調査である.児童・生徒の場合は,学校で教員立ち会いのもとで実施した.保 護者の場合は,質問紙を学校で学級担任を通じて児童・生徒に配布し,家庭に持ち帰って保護者が記入後 に,再度学校で回収した.. 2.調査対象. 調査対象者は,北海道函館市にある附属HノJ、学校と市立H小学校の第6学年の児童とその保護者,中学 校は函館市にある附属H中学校と市立K中学校の第3学年の生徒とその保護者,高等学校は函館市内にあ. る道立H商業高校と近郊にある道立K高校の第3学年の生徒とその保護者である.児童・生徒への配布数 は762,回収数757,有効回答数696,有効回答率91.9%であり,保護者への配布数は762,回収数401,有効 回答数302,有効回答率75.3%である.. 3.調査期間. 平成12年7月7日∼8月30日である. 4.調査の枠組みと項目. 児童・生徒の調査の枠組みは,「属性」,「食環境」,「心身の健康状態」,「食の知識」,「食意識および摂食 状況」,「食生活の自己評価」の6項目である.保護者の場合は,「属性」,「食環境」,「食教育」の3項目で ある.. 調査項目は,児童・生徒の食生活の場合「属性」として,学校段階別(学年別)/男女別を設定した. 「食環境」としては,帰宅時間/夕食時間/孤食化の状況/手伝い/料理づくり/料理や買い物の学び方/. 食に関わる体験の有無を設定した.「心身の健康状態」としては,最近の体調を設定した.「食の知識」とし. ては,野菜の可食部/米の成育過程/果物の季節性/魚の鮮度の見分け方/米のとぎ方/尭養①「血や肉を 作る食品」,②「体の調子をよくする食品」を設定した.「食意識と摂食状況」としては,おやつ購入時の判 断基準/朝食の摂食状況/買い食いの状況/好き嫌いの状況を設定した.「食生活の自己評価」としては, 食生活の自己採点/将来の健康状態を設定した.. 保護者の場合は「属性」として,年齢/男女別/子どもの人数/祖父母との同居/健康留意者の有無//子 どもの面倒を設定した.「食環境」としては,調理担当者を設定した.「食教育」としては,食教育の自己評 価/食教育の必要性/最も効果的な食教育/学校,行政への要望を設定した.. 5.調査集計・分析方法. 集計・分析には,SPSS9.OfbrWindowsを使用した.児童・生徒の学年別,男女別に食生活に関する項 目とクロス集計をし,X2検定で有意差をみた.. Ⅱ.調査結果および考察 1.小・中・高校生の食生活の実態. 128.
(4) 児童・生徒の食生活の実態からみる食教育の課題. 一画館市内と近郊の児童・生徒およびその保護者の場合−. (1)児童・生徒の属性について. 児童・生徒の学年別,男女別の内訳をみると,小学校6年生は男子65人,女子81人の計146人(21.0%) であり,中学校3年生は男子169人,女子154人の計323人(46.4%),高等学校3年生は男子80人,女子147 人の計227人(32.6%)であった.. (2)食環境について 1)帰宅時間と夕食時間. 児童・生徒の帰宅時間をみると,平日には3つのピーク(午後4時頃,午後6∼7時頃,午後10時頃), 休日には2つのピーク(午後3時頃,午後6時頃)があった.学年別にみると,平日は,小学生と中学生の 大部分が午後7時半頃までに帰宅していた.しかし,高校生は,小・中学生に比べて帰宅時間が分散してお り,午後9時∼午前0時半頃までの遅い時間帯が30%を越えていた.休日は,小学生と中学生の帰宅時間は 午後6時頃に集中していたが,高校生は午後10時頃が最も多くなっていた. また,学校段階毎で男女別にみたところ,平日・休日ともに小・中学生では男女間に有意差は認められな かった.しかし,高校生では平日・休日ともに,女子が男子に比べて午後9時以降の遅い時間帯に帰宅する 者が多かった.. 一方,夕食時間は,平日の方が休日に比べてやや遅くなる傾向がみられたものの,大部分は午後7時頃で あった.1週間の平均でみると,午後9時以降の夕食時間が小学生では2.9%,中学生は6.7%であるが,高 校生では25.6%に増加し,学年が進むほど遅い時間帯に夕食を摂っていた.. 2)孤食化の状況. 表1−1は,児童・生徒が「夕食をとる時の人数」と,表1−2は「夕食を誰と一緒に食べているか」を. みたものである.「1人で夕食を食べている」は全体の17.0%であり,「2人以上」は83.0%であった.「2 人以上で食べている者」のうち,86.2%は「母親」と一緒に食べており,次いで「兄弟姉妹」であった.. 「父親」と一緒に食べている者は,全体の半数強であった.学年別にみると,「1人で食べている」は小学 生が4名であるのに対し,高校生は18.5倍の74名に増加しており,学年が進むほど「1人で食べている」つ. まり「孤食」が増える傾向が認められた.また,「2人以上で食べている者」でも,家族と一緒に食べる ケースは学年が進むにつれて減少し,家族以外の「友だち」と一緒に食事をするケースが増加していた.ま た,男女別では,いずれの学年においても男女間に有意差はみられなかった.. 表1−1.「夕食をとるときの人数」について ():%. 表1−2.「夕食を一緒に食べる人」について(複数回答). 選択項l] 全 体 小6〔n=レ12〕 中3〔n=283〕 高3〔n=153〕 xご検定 118(17.0) ∠l(2.7) 40(12.4) 74(32.6) ***. いる 2人以_l二で食. ベている. =578〕 小6〔n=142〕 中3〔n=283〕 高3〔n=153〕 X2検定. 選・択項目 全体〔n=. 1人で食べて. 578(83.0) 142(97.3) 283(87.6) 153(67.4) ***. お父さん 319(上∃. う5.2) 81(57.0) 148(52.3) 90(58.8). お母さん 498(j∃. う6.2) 129(90.8) 246(86.9) 123(80.4) *. おじいちゃん 32(. (5.5) 9(6.3) 15(5.3) 8(5.2). おばあちゃん 81(.L. L4.0) 32(22.5) 31(11.0) 18(11.8) **. 兄弟姉妹 441(7. 76.3) 117(82.4) 217(76.7) 107(69.9) *. 計 696(100.0) 323(100.0) 323(100.0) 227(100.0) x2検定:…p<0.001. 友だち. 31こ. こ5.4) 4(2.8) 7(2.5) 20(13.1) ***. その他. 28こ. こ4.8) 4(2.8) 9(3.2) 15(9.8) * xコ検定:−p<0.05,‥p<0,01,…p<0.001. 129.
(5) 佐々木 貴子・藤居 恵子・畑井 朝子. 3)手伝い. 「家庭で食生活に関わる手伝いをどれくらいしているか」,「どのような手伝いをやりたいと思っている. か」,その手伝いの実態と意識を把握するために,15の選択肢を設けて質問した.図1−1は,「よくする手 伝い」を学年別に比較した結果である.全体的にみると,「食器を並べる」が52.2%で最も多く,次いで 「飯や汁をよそう」45.0%,「食器を洗う」45.0%,「米をとぐ」42.2%の順であった.「全く手伝いをしな い者」も全体の17.8%みられた.手伝いをしている者は,学年が進むほど少なくなる傾向がみられた.男女 別では,小・中・高校生ともに女子の方が男子に比べて1.5∼9.8倍の範囲で手伝いをしており,手伝いの実 施状況については男女間に差があった.. また,図1−2は「やってみたいと思う手伝い」について,学年別に比較した結果である.「やりたい手 伝い」の内容をみると,いずれの学年においても「妙め物をする」や「献立を考える」,「野菜をきる」,「肉 や魚を焼く」,「買い物をする」がみられた.しかし,中・高校生では「やりたい手伝い」の項目よりも「手 伝いをやりたくない」が中学生37.9%,高校生34.5%で最も多く,小学生と中・高校生では手伝いに対する 意識に違いがみられた.. 児童・生徒が「よくする手伝い」は,料理の盛りつけや後片づけといった直接的に調理に関わるものでは なかった.しかし,「やってみたい手伝い」は献立作成や買い物,野菜を切ったり,肉や魚を焼いたり,妙 め物をしたりといった調理に関わるものであり,児童・生徒が手伝いに対して持っている意識とその実施状 況には,違いがあることがわかった.また,手伝いに対する意識や実施状況は,小学生が中・高校生に比べ て高く,学年が進むにしたがって手伝いに対する意識も実施状況も低くなる傾向が明らかになった.. 1献立を考える. 2買い物をする. 野菜等の皮をむく. 4野乗を切る. 5野菜を洗う. 6炒め物をする. 7肉や魚を焼く. 8米をとぐ. 9飯を炊く. 10食器を並べる. 11飯や汁をよそう. 12盛りつけ. 13食器を洗う. 14食器をふく. 15やらない. やりたくない (%)60. 50. 40. 30. 20. 10. 図1−1 「よくする手伝い」の校種別比較 130. 0. 5. 10. 15. ZO. 25. 30. 35. 図1−2 「やりたい手伝い」の校種別比較. 40(%).
(6) 児童・生徒の食生活の実態からみる食教育の課題 一函館市内と近郊の児童・生徒およびその保護者の場合一. 中学生で手伝いに対する意識が低下するのは,部活や塾,習い事などの家庭外活動が増えるうえに,受験. を控え,時間的・精神的にもあまり余裕がないためと考えられる.しかし,高校生の手伝いに対する意識や. 実施状況の低さは帰宅時間が遅いことに関連すると考えられるが,高校生の帰宅時間の遅い理由について は,今回の調査では明らかにし得なかったが,今後の課題としたい.. 4)料理づくり. 児童・生徒は,日常,「どれくらいの頻度で料理づくりをしているか」についてみた結果では,「ほとんど. しない」が全体の41.2%で最も多く,次いで「過1回」が40.4%,「週2回以上」が18.4%であった.週1 回以上料理をしている者(409人)が,どのような料理を作ってい・るかをみたところ,第1位が「チャーハ. ン」66.8%であり,次いで「インスタントラーメン」60.2%,「カップめん」55.5%,「目玉焼き」54.3%, 「おにぎり」49.6%の順であった.チャーハンや目玉焼き,おにぎりなどは比較的簡単に調理することがで きるものである.しかし,カップめんやインスタントラーメンが調理に該当するかは問題である. 前述の手伝いの実施状況をみても,直接,調理に関わるものは少なく,また,日常作っている料理も調理 技術を必要としないものであることから,本調査の児童・生徒には調理技術が身についていないのではない かと推察された.. 5)料理や買い物の学び方 表2は,「買い物や料理のしかたをどのように学んだか」について質問した結果である.「お母さん・お父 さんから」学んだと答えた者は全体の73.3%であり,次いで「人のをみていて自然に」,「学校の先生から」 の順であった.この結果から,家庭は子どもたちに買い物のしかたや料理づくりを身につけさせる重要な食 教育の場であることがわかる.しかし,学校での学習が少ないことから,今後の学校教育における調理技術. の習得のしかたについて見直す必要性があろう.. 表2.「料理や買い物の学び方」について. 選 択 項 目. ():%. 全体〔n=690〕 ′ト6〔n=109〕 中3〔n=238〕 高3〔n=173〕 506(73.3). 238(74.6). 162(72.0). 25(17.1). 50(15.7). 25(11.1). 53(7.7). 10(6.8). 30(9.4). 13(5.8). 183(26.5). 57(39.0). 87(27.3). 39(17.3). 22(3.2). 3(2.1). 10(3.1). 9(4.0). 265(38.4). 63(43.2). 129(40.4). 73(32.4). 11(1.6). 4仁2.7). 5(1.6). テレビをみて. 139(20.1). 30(20.5). 67(21.0). 42(18.7). 料理の本や雑誌をみて. 128(18.6). 19(13. 61(19.1). 48(21.3). 18(5.6). 16(7.1). お母さん・お父さん. おばあちゃん・おじいちゃん 100(14.5) お姉さん・お兄さん. 学校の先生(授業中に) 友達から. 人のをみていて自然に 料理教室で. 39(5. その他. 計. 402(100.0). 106(72.6). x2検定. 5(3.4) 322(220.4). 695(217.8). ***. 2(0.9). 429(190.6) x∠検定:***p<0.001. 6)食に関わる体験の有無. 食に関わる体験の有無について,「農業の見学」,「魚の養殖場の見学」,「田植えの体験」,「魚の漁の体 131.
(7) 佐々木 貴子・藤居 恵子・畑井 朝子. 験」,「野菜の栽培」,「野菜の収穫」,「果物の収穫」,「料理教室へ行ったことがある」,「特にない」の9つの 選択肢を設けて質問した.その結果,「果物の収穫」が54.9%で最も多く,以下「野菜の収穫」が47.4%, 「野菜の栽培」が44.1%であり,農作物の収穫や栽培が多くなっていた.「特にない」も全体の約20%にみ られた.学年別にみたところ,果物や野菜の収穫・栽培の体験については,中学生が小・高校生に比べて多 い傾向が認められた.. 函館市近郊には,いちごやりんご,プルーンなどの果物を収穫できる場所はあるが,魚の漁を体験する場 所や養殖場は近くには見当らない.つまり,児童・生徒の食体験の有無は,子どもたちが住んでいる場所や 地域性および学校での取り組みなどが影響するのではないかと考えられる.. (3)心身の健康状態について. 児童・生徒の健康状態を把握するために,「最近の体調はどうか」について,「調子がよい」,「ときどき疲 れる」,「いつも疲れている」の3つの選択肢を設けて質問した.「調子がよい」と回答した者は全体の17.1% であり,「ときどき疲れる」と「いつも疲れている」を合わせると,全体の約83%が疲れを感じていた.学 年別では,「いつも疲れている」が小学生14.5%,中学生28.2%,高校生42.7%であり,学年間には危険率0.1% で有意差が認められ,・学年の進行に伴い疲労を感じている者が増加する傾向が認められた.男女別にみる と,中学生で「調子がよい」は男子23.7%に対して女子9.1%,「ときどき疲れる」が男子49.7%に対して女. 子61.0%,「いつも疲れている」が男子26.6%に対して女子29.9%であった.また,高校生では「調子がよ い」は男子21.3%に村して女子7.5%,「ときどき疲れる」は男子36.3%に対して女子49.7%,「いつも疲れ ている」は男子42.5%に対して女子42.9%であった.小学生の男女間に有意差は認められなかったが,中学 生および高校生では男女間に危険率1%で有意差が認められ,女子の方が男子に比べて疲労を感じている者 が多いことがわかった.. (4)食に関する知識について. 児童・生徒が食に関する知識をどれくらい有しているかを把握するために,以下に示す1)∼7)の調査 項目を設定した.. 1)野菜の可食部. 「根の部分を食べる野菜はどれか」について,「キャベツ」,「アスパラガス」,「きゅうり」,「さつまい も」「トマト」,「とうもろこし」,「ほうれん草」,「白菜」,「なす」の9つの選択肢を設けて質問した.正答 は,「さつまいも」であるが,これを選んだ者は全体の61.6%であった.学年別に正答者の割合をみると,. 中・高校生に比べて小学生の誤答が多くなっていた.また,「アスパラガス」や「ほうれん草」を根の野菜 と考えている者が,小・中・高校生を問わずに各約10%強みられた.男女別では,小・中学生においては男 女間に有意差はなかった.しかし,高校生女子の正答率は71.7%であるのに対し,男子は49.4%であり, 男女間に危険率0.1%で有意差が認められた.. 2)米の成育過程 「米のできる過程」について,「田起→田植→稲刈→脱穀→精米」,「脱穀→田起→田植→稲刈→精米」, 「田植→稲刈→田起→脱穀→精米」,「田植→田起→稲刈→精米→脱穀」,「田起→田植→稲刈→精米→脱穀」 の5つの選択肢を設けて質問した.正答は「田起→田植→稲刈→脱穀→精米」であり,正答率は全体の75.8% であった.学年別にみたところ,正答率は中学生が81.7%に対し,小学生は68.5%,高校生は71.2%であ 132.
(8) 児童・生徒の食生活の実態からみる食教育の課題. 一画館市内と近郊の児童・生徒およびその保護者の場合−. り,学年間には危険率1%で有意差が認められ,中学生の正答率が最も高かった.男女別では,小・中・高 校生ともに男女間に有意差は認められなかった.. 3)果物の季節性. 「冬に一番多く採れる果物はどれか」について,「すいか」,「ぶどう」,「みかん」,「なし」,「もも」,「さ くらんぼ」の6つの選択肢を設けて質問した.正答は「みかん」であるが,正答率は全体の89.6%であっ た.学年別の正答率では,中・高校生が約93%であったのに対し,小学生は約80%であり,小学生の正答率. が中・高校生に比べて低かった.男女別では,いずれの学年においても男子と女子とでは正答率に10∼20% 程度の差があり,男女間には′J、・高校生で危険率0.1%,中学生で危険率1%の有意差が認められ,女子の 方が男子よりも正答率が高いことがわかった.. 4)魚の鮮度の見分け方. 「魚の新鮮さを見分けるところはどこか」について,魚の「目」,「胸びれ」,「背びれ」,「身」,「尾びれ」 の5ケ所を図示して質問した.「目」を正答した者は全体の74.2%であり,「身」という誤答も19.3%であっ た.学年別では,小学生で「目」の正答率が43.8%であるのに対し,「身」の誤答率が45.2%あり,中学 生の正答率84.1%,高校生79.6%に比べて,小学生の誤答率が高いことがわかった.男女別にみたところ,. ′ト・中学生では男女間に有意差は認められなかった.しかし,高校生では男女間に危険率5%で有意差が認 められ,女子の正答者が男子に比べて多かった.小学生の正答率の低さは,家の手伝いが調理に関すること. はしておらず,学校教育でも魚は切り身で扱い,さらにその学習は中学校技術・家庭科であるためと考えら れる.. 5)米のとぎ方. 「正しい米のとぎ方をはどれか」について,「米をざっと水切りだけする」,「米を熱い湯にひたしてお. く」,「洗剤を入れて米を洗う」,「水で洗い,とぎ汁はすてない」,「水で洗い,とぎ汁は毎回捨てる」の5つ の選択肢を設けて質問した.正答は「水で洗い,とぎ汁は毎回捨てる」であるが,学年別に正答率をみる と,小学生約94%,中・高校生は約96%であり,学年間や男女間には有意差がなかった.正答率がいずれの 学年においても高かったのは,児童・生徒が日常,家庭での米とぎの様子をみていることや手伝いで米とぎ を体験していること,さらに家庭科の調理実習で技能を習得していることに関係していると考えられる.. 6)栄養(∋「血や肉をつくる食品」. 表3−1は「血や肉をつくるものはどれか」の問いに対する結果である.正答は,タンパク質食品の 「とうふ」,「牛乳」,「小魚」である.この3食品のうち最も正答率が高かったのは「小魚」であり,全体の 約半数強が正しく回答していた.「とうふ」や「牛乳」を正しく回答した者は全体の約1/3であり,学年別で は中学生の正答率が高かった.高校生においては「ほうれん草」や「ごはん」の誤答が′ト・中学生に比べて. 多く,「とうふ」の正答率も19.5%で最も低かった.男女別では,小・中・高校生ともに男女間に有意差は なかった.. 7)栄養②「体の調子をよくする食品」. 表3−2は「体の調子をよくしてくれるものはどれか」の問いに対する結果である.正答は,緑黄色野菜 の「ほうれん草」,「カボチャ」,「にんじん」である.これらの正答率は,3食品ともに調査対象者全体の半 133.
(9) 佐々木 貴子・藤屈一 恵子・畑井 朝子. 数に満たなかった.また,学年別では,3食品ともに正答率は学年間で有意差が認められ,高校生が小u中 学生に比べて正答率が最も低く,誤答も多かった.男女別では,小・中・高校生ともに男女間で有意差はな かった.. 栄養に関する調査結果から,本調査対象者は全体的に栄養に関する知識が乏しく,特に高校生の知識不足 が顕著であった.栄養に関する学習は,中学生では技術・家庭科「食物」領域で,高校生では「家庭一般」 の授業でも既習しているはずであるが,このように高校生が最も知識不足であることは問題である.. 表3−1.「栄養(血や肉をつくる食品)に関する知 識」(複数回答) 選、択項月 全体〔n〒638〕 ほうれん草 338(52.9) ごはん. にんじん 119(18.7) とうふ 212(33.2) そば. ほうれん草 309(49.8) 68(49.6) 161(52.(う) 80(38.5) ** ごはん. 233(37.5) 50(ニヨ6.5) 85(27.8) 98(47.1) ***. 30(22.1) 51(16.9) 38(19.0). にんじん 2と;0(′15.1) 53(38.7) 164(53.6) 63(ニiO.3) ***. 50(36.8) 123(∠10.7) 39(19.5) ***. とうふ. 22(16.2) 38(12.6) 22(11.0). そば. 42(、30.9) 106(35.1) 84(42.0). 斗二孔. 31(22.8) 61(20.2) 40(2().0). 333(52.2) 討 1914(468.′1). 50(36.8) 122(40.4) 104(52.0) **. 72(52.9) 167(55.3) 94(47.0) 408(,300.2) 906(300.0) 600(300.n) xご検定:**P<0.01,***P<0.001. ():(‰. 選択琢服 全体〔n=651〕 小6〔n=137〕 ll■3〔n=306〕 高3〔n=208〕 xご検定. かぼちゃ 279(14.9) 59(43.1) 146(47.7) 74(:i5.6) *. 232(36.4). さつまいも 132(20.7). 知識」(複数回答). 44(32.4) 92(3∩.5) 封(27.0). 82(12.9). 斗二乳. 小机. 小6〔n=136〕 小3〔n=302〕 高3〔n=200〕 xコ検定 67(49.3) 1∠16(4臥3) 125(62.5) **. 276(43,3). かぼちヤ 190(29.8). 表3−2.「栄養(体の調子をよくする食品)に関する ():%. 1ニi8(22.2) 36(26.3) 65(21.2) ニi7(17.8) 7車11.9) 14(10.2) 38(12.4) 22(i().6) 294(47.3) 65(47.4、) 107(35.0) 122(58.7) ***. さつまいも 116(18.7) 16(11.7) 59(ユ9.3) 41(19.7) 小1(】. 230(37.0) 50(36.5) 93(30.4) 87(4ユ.8) *. 計 1953 xご検定:*P<0.05,**P<0.01,***P<().001. (5)食意識と摂食状況について. 1)おやつ購入時の判断基準 「おやつを買う時に最も注意することは何か」について,「おまけのついているもの」,「テレビ等で宣伝. しているもの」,「好きなキャラクターの絵や写真がついているもの」,「好みの昧のもの」,「安い値段のも の」,「量の多いもの」,「日付をみる」,「添加物がふくまれているかみる」,「栄養のあるもの(成分表をみ る)」,「その他」,「特に気にしない」の11の選択肢を設けて質問した.この結果,「好みの味」が全体の42.8% で最も多く,次いで「値段が安いもの」16.0%,「特に気にしない」11.4%の順であった.「日付をみる」や 「栄養のあるもの」,「添加物をみる」は全体の3∼6%と少なく,ほとんどこれらには留意していなかっ た.学年別に「おやつ購入時の注意すること」の上位3位をみると,小学生では①好みの味,②安い値段, ③日付であり,中・高校生では①好みの味,②安い値段,③特に気にしないであった.本調査対象の小学生 は中・高校生に比べて,「日付」を重視していることがわかった.男女別では,小学生と高校生の男女間に. 有意差は認められなかった.しかし,中学生では「特に気にしない」と答えた者が,女子に比べて男子が多 く,危険率5%で有意差が認められた.. 2)朝食の摂食状況. 「朝食の摂食状況」について質問した結果,「ほとんど毎日食べる」は全体の76.3%であったが,「ほとん ど食べない」も12.1%みられた.学年別では,「ほとんど食べる」が小学生84.2%,中学生79.9%,高校生 66.1%で,学年が進むほど減少しており,逆に「ほとんど食べない」は学年が進むにつれて増加していた. 朝食の欠食は,小・中学生と高校生間には差があった.男女別では,小学生および高校生の男女間に有意差 は認められなかった.しかし,中学生では「ほとんど食べない」について,危険率5%で男女間に有意差が 認められ,男子が女子に比べて多いことがわかった. 134.
(10) 児童・生徒の食生活の実態からみる食教育の課題. 岬函館市内と近郊の児童・生徒およびその保護者の場合−. また,朝食の内容についてみると,「ごはんやパンのある食事」をしている者は約80%であったが,学年 が進むにしたがって「コーヒーや紅茶だけ」が増えていた.. 3)買い食いの状況 「学校や塾,習い事,クラブ活動などの行き帰りに買い食いをするか」について,「週5回以上」,「週3. ∼4回」,「週1∼2回」,「ほとんどしない」の4つの選択肢を設けて質問した.その結果,全体の61.6%が 「ほとんどしない」であり,次いで「週1∼2回」が27.3%であった.「過3回以上」買い食いをする者は 約10%であった.学年別に買い食いを「ほとんどしない」をみると,′ト学生は68.5%,中学生は64.1%,高 校生は53.7%であり,危険率5%で学年間に有意差が認められ,高校生が小・中学生に比べて買い食いをす. る者が多かった.男女別では,小・中・高校生ともに,男女間に有意差はなかった. 買い食いを「ほとんどしない」と回答した429名に対して,「買い食いをしない理由」を質問したところ,409 名から回答が得られた.理由の第1位は「特に食べたいと思わないから」61.1%であり,次いで「太るか ら」14.4%,「夕食が食べられなくなるから」9.8%,「親から禁止されているから」7.3%であった.買い食 いをしない理由は児童・生徒の自主的な判断によるものが多く,親から禁止されているからというものは少 なかった.また,週1回以上買い食いをすると回答した267名に対して,「何を食べるか」を複数回答で質問 したところ,最も多かったのは「ジュースなどの飲み物」63.3%,次いで「パン」49.4%,「スナック菓 子」38.2%,「アイスクリーム」36.3%の順であった.. 4)好き嫌いの状況 「好き嫌いの有無」について質問した結果,好き嫌いが「ある」は全体の76%,「ない」は全体の24%で あり,本調査対象の児童・生徒には好き嫌いが多いことがわかった.. そこで,好き嫌いがあると答えた529名に対して,「嫌いな食べ物がでた時,どうするか」を質問した結 果,「いつも頑張って食べている」が16.5%,「頑張って,時々食べている」が36.5%,「頑張るが,残して しまう」が15.8%であり,これらを合わせると約70%の児童・生徒は嫌いな物を食べるように努力している ことがわかったが,−▲方「いつも残す」も30%程度であった. また,好きな食べ物には「か ̄レーライス」(34.1%),「ラーメン」(33.3%),「焼き肉」(30.9%)が上位 を占めていた.嫌いな食品としては「ピーマン」(35.5%),「にんじん」(23.9%),「しいたけ」(23.9%) があり,これらは現代の子どもたちが共通して嫌いな野菜にあげているものであり川,本調査結果も同様の 傾向がみられた.. (6)食生活の自己評価について 1)食生活の自己採点. 表4−1は,「あなたは自分が健康な食生活をしていると思うか.100点満点で自分自身の食生活を採点し てください」について質問した結果である.全体的には「70∼79点」が22.2%で最も多く,70点以上は全体. の54.9%であった.「70点以上」の採点者を学年別にみると,′ト学生は71.3%,中学生は60.3点,高校生は 36.7%であり,学年が進むほど70点以上を採点した者が減少していた.食生活の自己採点については,小・ 中・高校生間に危険率0.1%で有意差が認められ,高校生は小・中学生に比べて自己評価が低いことがわ かった.男女別にみると,小・中学生では男女間に有意差は認められなかったが,高校生では男子が女子に 比べて自己評価が高いことがわかった.. 135.
(11) 佐々木 貴子・藤信 忠子・畑井 朝子. 2)将来の健康状態. 表4−2は,「現在の食事の摂り方を続けていったとしたら,自分の体はどうなると思うか」について質 問した結果である.「特に問題ない」が全体の45.4%を占めており,「いつか健康を害すると思う」は 31.2%,「わからない」も23.4%みられた.学年別にみると,高校生では「特に問題はない」が小・中学生 に比べて少ないが,逆に「いつか健康を害すると思う」は小・中学生に比べて多くなっていた. ニ方,表4−3に示す「普段,健康に気をつけているか」を質問した結果では,小・中学生で「十分気を つけている」と「気をつけている」を合わせると約60%以上が気をつけていると回答していたが,高校生で は約39%であり,小・中学生に比べて20%以上低かった. このことから,高校生は現在の食生活を継続していけば,将来的には健康を害すると予測しているにもか かわらず,現在は健康に留意した食生活をしていないという実態が明らかになった. 表4−1.「食生活の自己採点」について 選択項目. ():%. 全体〔n=651〕 小6〔n=146〕 中3〔n=322〕 高3〔n=226〕 Xご検定. 13(1.9) 1(0.7) 5(1.6) 7(3.1). 0、9点. 10、19点. 17(2.4). 20、29点 17(2.4). 3(2.1). 5(1.6). 9(4.0). 8(2.5) 9(4.0). 30、39点 34(4.9) 3(2.1) 9(2.8) 22(9.7) *** 40、49点 35(5.0) 6(4.1) 9(2.8) 20(8.8) **. 表4−2.「現在の食生活を継続した場合の健康状態の 予測」について. ():%. 選択頬巨】 全体〔n=696〕 小6〔n=146〕 中3〔n=323〕 高3〔n=227〕 x=検定 特に問題は ないと一県う. 316(45.4) 73(50.0) 166(51.4) 77(33.9) ***. いつか健康を 害すると思う 217(31.2) 29(19.9) 82(25.4) 106(46.7) *** わからない 163(23.4) 44(30.1) 75(23.2) 44(19.4). 50、59点 92(13.3) 15(10.3) 44(13.7) ニi3(14.6). 討 696(100.0) 146(100.0) 323(100.0) 227(′iOO.0). 60、69点 1(〕5(15.1) 14(9.6) 48(14.9) 43(19.0) *. x2検定:***P<0.001. 70、79点 154(22.2) 36(24.7) 82(25.5) 36(15.9) * 80、89点 124(17.9) 32(21.9) 64(19.9) 28(12.4) * 90、100ノ.1き二 103(14.8) 36(24.7) 48(14.9) 19(8.4) *** 言t 694(100.0) 146(100.0) 322(100.0) 226(100.0). が検定:*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001. 表4−3.「健康への留意状況」について. ():(‰. 選択項l≡t 全イ本〔n=696〕 小6〔n=146〕 ri】3〔n=323〕 ネ‡3〔n=227〕 x∠検定. 十分気をつ けている 67(9.6) 15(10.3) 41(12.7) 11(4.8) ** 気をつけて いる. 324(46.6) 82(56.2) 165(51.1) 77(33.9) ***. あまり気を つけていない 236(33.9). 36(24.7) 93(28.8) 107(47.1) ***. ほとんど雲(を. つけていない 69(9.9) 13(8.9) 24(7.4) 32(14.1) * 計 696(100.0) 146(100.0) 323(100.0) 227(100.0). Xご検定:*P<0,05,**P<0.01,***P<0.001. 以上の結果から,次のようなことが明らかになった.. 本調査村象の児童・生徒の食生活は,学年が進むほど悪化しており,特に高校3年生では顕著であった. 『平成9年度児童・生徒の食事調査報告書(1999)』(女子栄養大学)でも12),小学生に比べて中学生の食事 に問題が多く,学年が進むにしたがって悪化すると報告されており,本調査結果も同様の傾向が認められ た.男女別では,全ての学年で男子の食生活の方が悪くなっているが,高校3年生では男女差がほとんどな くなり,女子は男子と同様に悪化していることがわかった.. 夕食時の「孤食」を先行調査の結果10)と比較してみたところ,本調査の小学生の方が「孤食」が少なかっ た.しかし,中学生や高校生では急激に「孤食」が増加していることが明らかになった.食事の仕方は,子 どもの「心」へ与える影響が大きい6)と指摘されており,本調査対象の中・高校生の「心」の状態が危倶さ. れる.また,父親不在の食卓は重要な教育的意義が機能せず, 摘があるが,本調査結果でも父親不在のケースが多く,この傾向は全国的な調査結果と同様であった. 136.
(12) 児童・生徒の食生活の実態からみる食教育の課題 一画館市内と近郊の児童・生徒およびその保護者の場合一. 一方,家庭における手伝いの状況をみたところ,本調査対象の小学生は何らかの手伝いをしており,さら. に調理に関わる手伝いを積極的にやりたいと思っている者も多く,親との関わりもみられた.しかし,中・ 高校生になると「手伝い」も減り,「やりたくない」という意識も高くなっていることがわかった..料理を つくる時は作ってくれる人が不在の暗が多く,自分から積極的に料理を作るという姿勢は少なかった.現代 の子どもたちは以前に比べて家事に関わる時間が著しく減少しているとの報告レ1)がなされており,本調査結 果も同様であった.. 朝食を欠食する児童・生徒は,小学6年生3.4%,中学3年生6.8%,高校3年生25.1%であり,小・中学 生については平成9年の全国調査結果12)とほぼ同様の結果であったが,高校生の欠食は本調査対象の方が急 激に増加していた.欠食の理由は「時間がない」や「食欲がない」が多くなっており,先行研究12)と同様の 結果であった.. また,朝食の欠食が多い一方で,間食や夜食を摂る子どもが多いと指摘されているが15),本調査でも買い 食いをする児童・生徒は40%程度みられた. 心身の状況では,約85%が疲労を感じていたが,平成10年に福岡県宗像市で行った調査結果16)でも小学生 の約90%が疲労を感じていることが明らかになっており,本調査結果と同様であった. 食に関する知識については,中学生が小・高校生に比べて正答率は高かったものの,栄養に関する知識は 全ての学年で不足していた.特に,高校生ではそれが顕著であった.このように栄養に関する基本的な知識. が定着していないのは,小・中・高等学校段階における学習内容・方法にも原因があるのではないかと考え られる.平成14年度から小学校家庭科では栄養に関する学習内容が削除されたが,小学生にも理解しやすい. 教材を開発するなどして,小学生段階から栄養に関する知識を指導する必要があると考えられる. 2.家庭における食教育の実態. (1)保護者の属性. 保護者の学年別の内訳は,小学生の保護者132人(33.7%),中学生182人(46.4%),高校生78人 (19.9%)であった.男女別では男性は24人(6.1%),女性は368人(93.9%)であった.年齢は「40∼44 歳」が全体の約半数を占めており,30歳代20.7%,40歳代73.9%,50歳以上4.1%であった.祖父母と同居. している家庭は,全体の26.3%であり,子どもの数は「2人」(54.8%)が最も多く,次いで「3人」 (27.3%),「1人」(11.0%),「4人以上」(6.9%)であった.家族に健康に留意する者がいる家庭は,全. 体の31.9%(125人)あった.子どもの面倒をみているのは,全体の92.7%が「母親」であり,2.6%が「祖 父母」,1.3%が「父親」であり,父親が子どもの面倒をみる割合は非常に少なかった.. (2)食環境について. 「家庭で主に調理を担当しているのは誰か」の問いには,「母親」が94.4%,「祖父母」が2.1%,「父親」. が1.3%であり,ほとんどの家庭で「食事の支度」は母親が担当していた.近年,「男は仕事,女は家庭」と いった性別役割分業意識が崩れつつあると言われているが,本調査対象の家庭では男性の家事参加度は著し く低いものであった.. (3)食教育について 1)食教育の自己評価. 「あなたは家庭で,子どもに対して食教育を行ってきたと思うか」について,「十分行ってきた」,「不十 137.
(13) 佐々木 貴子・藤居 恵子・畑井 朝子. 分だが行ってきた」,「ほとんど行ってこなかった」,「その他」の4つの選択肢を設けて質問した.「十分 行ってきた」と回答した者は全体の45.3%,「不十分だが行ってきた」は48.3%であり,これらを合わせる と約93%の保護者は,程度の差はあっても家庭で何らかの食教育を行ってきたと評価していることがわかっ た.しかし一方では,「ほとんど行ってこなかった」も6.1%あった.. 「不十分だがおこなってきた」と「ほとんど行ってこなかった」と回答した207人に対して,食教育が不 十分だったと考える理由を質問した結果,「自分に知識がないから」33.8%,「時間がないから」29.5%,. 「その他」19.8%,「普段疲れているから」5.8%,「食教育の必要性を感じか−から」4.3%,「食教育を受 けていないから」3.9%,「学校が教えてくれるから」2.9%の順であり,保護者自身に知識や時間がないこ とを理由に挙げた者は全体の1/3にあたることがわかった.本調査村象の保護者は,何らかの食教育を行っ. てきたと評価しているものの,自分自身の知識不足も認めていることから食教育に対する自信のなさが窺え た.. 2)食教育の必要性. 「 ̄ぁなたは今後,子どもに食教育をすることが必要だと思うか」の問いについては,「必要だと思う」が 全体の93.8%,「思わない」が6.2%であった.ほとんどの保護者が食教育の必要性を高く認識していること がわかった.. 3)最も効果的な食教育. 「子どもに村する食教育で,最も効果的な方法はどのようなものか」について,「家庭での教育」,「家庭. ・学校・地域・産業界や行政の相互の連携」,「学校での教育」,「マスコミによる働きかけ」,「自治会や行政 機関の体験学習」,「その他」の6つの選択肢を設けて質問した.その結果,「家庭での教育」が54.6%と最 も多く,次いで「家庭・学校・行政等の連携」が36.1%,「学校での教育」が4.9%,「マスコミによる働き かけ」が2.6%,「その佃」が1.0%,「自治会や行政機関の体験学習」が0.8%の順であった. 保護者は,家庭での教育機能の重要性を認識しているものの,一方では機能低下を補完する仕組みづくり を期待していることが推察された.. 4)学校,行政への要望. 「食教育に関して,学校や行政に望むことは何か」の問いには,「乱れた食生活と健康影響についての知 識を身につけさせて欲しい」が46.3%で最も多かった.以下「食生活の関心を高めてほしい」21.2%,「栄. 養の知識を身につけさせる」15.4%,「望ましい食習慣を身につけさせる」臥9%,「正しい食事マナーを身 につけさせる」5.0%,「その他」3.1%の順であった. この結果から,保護者は子どもたちの乱れた食生活を心配しており,健康に与える影響などの知識や情報 を学校や地域,産業界や行政といった機関に求めていることがわかった.一方,食習慣や食事マナーなどの しつけに関することも家庭で行うのではなく,他に求めている保護者もいることがわかった.. 以上の結果から,児童・生徒の食生活の主たる実践の場であり,また教育の場である家庭の食教育機能 が,低下していることが再認識された.食教育者としての保護者が,食教育の必要性を十分に認識していな がらも具体的な食教育の知識や手法をもっていないという実態が浮き彫りにされた.. 本調査対象の保護者の年齢は,40歳代が70%を占めており,ちょうど,この保護者たちが子どもの頃は日 本の経済成長がめざましい時期であり,女性の社会への進出も伴って「鍵っ子」という言葉や「父親不在の 138.
(14) 児童・生徒の食生活の実態からみる食教育の課題. 一画館市内と近郊の児童・生徒およびその保護者の場合一. 食卓」という言葉が流行し,食生活も洋風化や簡便化へと変化してきた時期である.この年代の保護者が学 校教育で受けた栄養に関する知識は,現在とは異なっているものもある17).したがって,児童・. 生徒の食教. 育については,学校や地域,産業界や行政との連携を望む割合が高かったのは当然の結果と考えられる. 本調査結果から,′ト学校6年生では日本型食生活を好む傾向がみられ,児童・生徒の食生活は学年進行に. したがって悪化し,男女別では全ての学年で男子が悪く,高校3年生になると男女差はなくなり,女子が男 子と同様に悪化していることがわかった.これは,孤食率が小・中学生よりも高校生でかなり進行している. ことによっても裏付けられる.一方,食に関する知識は,小学生と比較して中学生が高い傾向がみられた が,高校生では知識不足が顕著であった.. 保護者では,家庭での食教育機能の低下を改善するのではなく,・自分の知識不足や忙しさを理由に学校や. 行政に相互連携を求めていることがわかった.食教育とは,栄養に関する知識を子どもたちに教えることの. みではなく,子どもと一緒に食事をしながら,食事マナ「や会話をする楽しさや昧の継承などを教えること も重要なことと考えられる.しかし,孤食率がすすんでいる実態をふまえると,ますます子どもたちの食事 マナーが悪化し,好き嫌いも助長し,健康状態にも悪影響を及ぼすのではないかと危倶される. 児童・. 生徒への食教育のみならず,今後,保護者に対してもどのような食教育を実施していくかという新. たな問題も浮き彫りにされた.. 3.先行調査−0)との比較とまとめ 子どもの食生活及び家庭における食教育について調査した,函館市の小・中・高等学校の6・3・3年生. とその保護者の結果と,東京都の′ト・中学生及びその保護者を対象とした先行調査結果10)を比較した結果は 以下のようにまとめられた. ①食に関する知識は,先行調査10)では′ト学生に比べて中学生の方が低かったが,本調査では小学生に比べて 中学生の方が高くなっていた. ②買い食いの状況は,先行調査1り)では約45%が買い食いをしていたが,本調査では約35%であった.. ③おやノっ購入時の判断基準は,先行調査l())と本調査とでは順位が異なり,本調査には「安い値段」が入っ た.. ④心身の状況は,先行調査10)では15%が「いつも疲れている」であったが,本調査では約25%であった. これらのことから,地域的特徴はあまりみられず,本調査結果は先行調査結果川)とほぼ同様であり,現在 の児童・生徒の食生活の実態は,全国的に共通した傾向にあるものと考えられた.ただし,買い食いの状況 が先行調査10)に比べて少ないのは,購入する店や食べる場所が少ないことにあり,おやつの選択基準に「安 い値段」がみられたことは,先行調査川)の時期よりも本調査時期の方が経済状況が悪化していることに関連 しているものと考えられた.. 一方,児童・生徒の学年進行による食生活の変化をみるために,先行調査1())当時の′ト・中学生と本調査の 中・高校生とを比較・検討した結果,次のような結論が得られた. (∋食に関する知識は,先行調査10)では学年が進むほど低くなっていたが,本調査では学年進行による変化が. なくなっていた.. ②手伝いの実施状況や意識は,学年が進むほど低くなり,「やりたくない」という意識も学年が進むほど増 加していた.. ③夕食時の「孤食」状況は,先行調査iO)では9.7%であったのに対し,本調査では20.7%であった. ④おやつ購入時の判断基準は,先行調査10)は「日付をみる」が多かったが,本調査は「安い値段」が多く 139.
(15) 佐々木 貴子・藤居 恵子・畑井 朝子. なっていた.. (9健康に気をつけている者は,先行調査10)では65%であったのに対し,本調査では55%であった. ⑥買い食いをしない理由には,先行調査10)では「太るから」というダイエット意識はみられなかったが,本 調査では「ダイエット」に対する意識がみられた. ⑦嫌いな食べ物は,先行調査10)では「いつも残す」が25%であったのに対し,本調査では35%であった. ⑧心身の状況は,先行調査10)では「いつも疲れている」が約15%であったのに対し,本調査では約35%であ り,約85%の子どもが疲れを感じていた.. ⑨食生活の自己評価点は,先行調査10)では「70点以上」と評価した者が60%あったのに村し,本調査では50% であった.また,現在の食生活を継続した場合の将来の健康影響については,「特に問題ない」は先行調 査10)で半数以上であったが,本調査では半数以下になっていた. 以上のことから,学年進行に伴って孤食傾向と疲労感をもつ者の増加が著しいことがわかった.また,健 康への配慮は薄れ,嫌いな食べ物は「いつも残す」ようになっており,将来の健康状態にも不安を感じてお. り,心身の状況や食生活の変化が悪化していることが明らかになった.特に,中学生男子と高校生の食生活 と食に対する意識の改善が示唆された.. これらの対応策として,小・中学生はもちろんのこと高校生に対し,食教育をさらに強化して行う必要性 のあることが示唆された.具体的には,日本型食生活の良さを再認識させることであり,これを通して栄養 や食品などに関する知識を深めるとともに,自分の健康や食生活の自己管理能力を育成させることが必要と. 考えられる.学校現場では,平成10年度から教師と栄養士がチームを組んでの「食教育」が実践されている はずであるが,その実施状況と効果については,今後,調査をして確認する必要があるものと考えられた.. また,厚生省が2000年1月からスタートさせた「21世紀における国民健康作り運動(健康日本21)」1射で も,栄養・食生活改善のための,①適切な栄養素(食物)摂取,②行動変容,③環境づくりが提示されてい る.家庭・学校・地域が連携して「健康日本21」をとり入れた具体案をどのように実践していくのか,それ を今後の課題として取り組んでいきたいと考えている.. 引用文献. 1)時事通信社.“新学習指導要領”をよむ−21世紀に学ぶもの.教員養成セミナー3月号別冊Vol.21,NO.10,1999 2)′ト玉正博.“「キレる」子どものストレスと食生活”.栄養と料理8月号,1998 3)北海道新聞.「学級崩壊どう防ぐ」.1999.7.19付 4)冨永美穂子他.中・高生および大学生の食生活を中心とした生活習慣と精神的健康度の関係.日本家政学会誌52(6),2001,pp.499−510.. 5)岡崎愉加他.中学生の食生活と栄養摂取に関する男女の比較.学校保健研究42,2000,pp.363−374 6)足立己幸.“なぜ−・人で食べるの∼食生活が子どもを変える”.東京,日本放送出版協会,1983 7)田辺由紀他.′ト学生の食生活及び食に関する意識・知識の発達的変容(第2報).日本家政学会誌51(7),2000,pp.499−510 8)北海道新聞.乱れる子どもの食事 上・中・下.1999.8.23/24/25付 9)味の素 食の文化センター.“こころとからだをむすぶ食”,Vesta35,東京,1999 10)財団法人 食生活情報サービスセンター.“子供の食生活啓発方策検討事業”,委託調査結果報告書,1997. 11)カゴメ株式会社.“第8回カゴメ子どもの食生活調査∼「食卓からみた野菜と子どもの付き合い方」”,1996 12)女子栄養大学出版部.“子供たちの食生活はどう変化しているのだろうか一平成9年度『児童生徒の食調査報告書』から”,栄養と料理5 月号,1999. 13)岡田みゆき.食事中の会話の教育的意義一父子の会話の歴史的変遷−,日本家庭科教育学会誌41(3),1998,pp.9−16 14)長津美代子.“子どもと家庭”,子ども白書,1997. 15)足立己幸.“知っていますか.子どもたちの食卓”,東京,NHK出版,2000. 140.
(16) 児童・生徒の食生活の実態からみる食教育の課題. 一函館市内と近郊の児童・生徒およびその保護者の場合−. 16)日本教育新聞.“「疲れた」′ト学生9割,3剖が友だちと遊びたい”,1999 17)足立己辛.“食生活論”,東京,医歯薬出版,1990. 18)食糧栄養調査会編.2000年版.食糧・栄養・健康.東京,医歯薬出版,2000,pp.60−62. (佐々木貴子 函館校助教授) 函館大学付属柏陵高等学校講師. 元函館校大学院生. 函館短期大学教授 北海道教育大学名誉教授. 141.
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