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想起練習と分散学習を取り入れた語彙学習 : 小学校における英語教育への示唆

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(1)Title. 想起練習と分散学習を取り入れた語彙学習 ― 小学校における英語教育 への示唆 ―. Author(s). 笠原, 究; 金山, 幸平. Citation. 北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編, 69(2): 29-41. Issue Date. 2019-2. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10343. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(人文科学・社会科学編)第69巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Humanities and Social Sciences)Vol. 69, No.2. 平 成 31 年 2 月 February, 2019. 想起練習と分散学習を取り入れた語彙学習 ― 小学校における英語教育への示唆 ― 笠原 究・金山 幸平* 北海道教育大学旭川校英語教育研究室 *. 札幌大谷中学校・高等学校. The Effects of Retrieval Practice and Spaced Learning: Review of Recent Studies and Implications for Elementary School Learners’ L2 Vocabulary Learning KASAHARA Kiwamu and KANAYAMA Kohei* Department of English Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education *. Sapporo Otani Junior & Senior High School. 概 要 本研究の目的は,想起練習効果と分散学習効果を検証した先行研究を紹介し,それがどのよ うに我が国の小学校における外国語学習で利用できるかを考察することである。数多くの心理 学実験では学習者の心的辞書へのアクセスを要求する,つまりある程度の学習負荷をかける想 起練習の方が心的負荷をかけない学習よりも効果的であることが証明されている。また学習の 機会を一度に詰め込む学習よりも学習機会を複数回に分けて行う分散学習の方が長期記憶に貢 献するという分散学習効果が証明されてきた。しかし,それらの先行研究のほとんどは大学生 を実験対象としてきた。本稿の目的を考慮すると児童を調査対象としている研究を概観する必 要がある。結果として海外の児童を対象にした研究においても想起練習効果と分散学習効果が 認められていることが裏付けられた。本稿の最後ではこの結果をどのように日本の小学校にお ける英語語彙学習に役立てるかについて考察する。. 1.はじめに 平成29年3月に公示された新小学校学習指導要領では,我が国では2020年から小学校での外国語教育が教 科化されることが正式決定された(文部科学省,2017)。小学校3年生から年間35単位時間程度の「外国語 活動」を, そして小学校5年生から教科として年間70単位時間程度の「外国語科」が導入されることになる。 樋口他(2017)では4年間で,ア600〜700語程度の語,イget up,look atなどの使用頻度の高い基本的な連. 29.

(3) 笠原 究・金山 幸平. 語,ウexcuse me,I see,I’m sorryなどの使用頻度の高い基本的な慣用表現などが取り扱われると述べて いる。児童は限られた時間内で大量の語彙や熟語などに触れなくてはならないにも関わらず,現在では小学 校英語において語彙を意図的に学習させる方法があまり提案されていない。特に小学校3年生の段階では英 語の文字指導が行われないので英単語の意味と文字のつながりの形成の指導が不可能であること,また英単 語の暗記が外国の音声や基本的な表現に慣れ親しむと言った外国語活動の目標と一致していないなどが原因 として挙げられる。そこで本研究では,効率よく語彙を学習する方法として,近年心理学研究で注目を浴び ている2つの学習方法,「想起練習」と「分散学習」が児童にも応用可能かどうかを検証する。. 2.先行研究 2.1.想起練習が長期記憶に貢献する理論的根拠 もし10分間の語彙学習時間が与えられたとき,次のうちどちらの方法がより効果的な学習に繋がるだろう か。⒜10分間単語帳を開いてひらすら覚える,⒝7分間単語帳を開いてひたすら記憶し,その後単語帳を閉 じて,残りの3分間でどれだけ覚えたかをテストする。これまでの数多くの研究では,⒝の学習方法が⒜よ りも長期記憶に貢献することが証明されている(Barcroft, 2007; Roediger & Karpicke, 2006; 他多数)。これ はテストを行うことで学習項目を忘却することを防ぐことができるためであり,またこの現象をテスト効果 (testing effect)と呼んでいる(Roediger & Karpicke, 2006)。 なぜテストを受けることが学習に貢献するのだろうか。理論的な根拠の1つして,テストを受けることで 学習者は想起練習(retrieval practice)を行うことになるからである(Kanayama & Kasahara, 2018)。想起 練習とは学習内容を頭の中から再度呼び起こす作業である。例えば,「dog:イヌ」とペア学習をする際に, 「dog:_____」のように頭の中でdogの意味,つまり「イヌ」を思い出そうとする行為が想起練習である。 心的努力をすることで,形式と意味のつながりが強化されるので,学習負荷をかけないで学習するよりも長 期記憶に貢献する(Roediger & Karpicke, 2006)。またこれは,Pyc and Rawson(2009)やNakata(2015) らが主張した,心的努力をかけて学習をした方が記憶は強化され忘却を防ぐという想起努力仮説(retrieval effort hypothesis)と一致した考え方である。従って学習者はただ単語帳を開いて眺めるよりも日本語の意 味を赤シートで隠し,英単語を見て頭の中で日本語の意味を思い出す努力がより望ましい学習だと言える。 2.2.想起練習が語彙学習に与える影響 ここでは,想起練習が語彙学習に与える効果を検証した研究を紹介する。Cull(2000,実験1)では英語 母語話者である66名のロヨラ大学シカゴ校の大学生を対象に,8個の手がかり語と目標語のペア(e.g., bairn:print)をコンピューター上で学習させた。1週目は手がかり語と目標語のペアを同時に提示され,そ れぞれ記憶するように指示を受けた。各ペアはそれぞれ8秒ずつ提示された。2週目から4週目までは想起 練習グループと同時提示グループに分かれて,それぞれの学習を行った。想起練習グループは最初の6秒間 は手がかり語のみが与えられ(e.g., bairn:_____),その間に学習者は目標語を想起するように指示され,そ の後2秒間,手がかり語と目標語が答えとして同時提示された。一方で同時提示グループは1語につき8秒 間手がかり語と目標語が提示され続けた。学習後直後にテストを行った結果,想起練習グループが得点で同 時提示グループを有意に上回った。 Cullの研究では手がかり語と目標語(e.g., bairn:print)のペアをアメリカの大学生に記憶させた実験を行っ た。つまり英語母語話者が英単語の学習をしたことになるため,この結果がそのまま第2言語語彙学習に応 用できるとは限らない。そこでKanayama and Kasahara(2016a)では日本の大学生を対象に英語と日本語. 30.

(4) 想起練習と分散学習を取り入れた語彙学習. のペア学習時の想起練習効果を検証した。最初に全参加者はスクリーン上で20セットから成る英語と日本語 のペア(e.g., ligament:靱帯 )を1セットにつき6秒間見るように指示された。その後,想起練習グループ (n=35)は英語のみを2秒間提示され(e.g., ligament:_____),この間に参加者には日本語の意味を意識的 に呼び起こす努力を求めた。その後2秒間英語と日本語を再度提示し,学習者に答えを確認させた。この過 程を2回繰り返した。一方で同時提示グループ(n=28)には1セットにつき4秒間英語と日本語を同時に 提示した。どちらのグループも同じ学習時間が設けられた。学習セッション後すぐの直後テストと1週間後 の遅延テストでは,想起練習グループの得点の方が同時提示グループの得点よりも有意に高かった。この研 究では,母語(L1)と第2言語(L2)のペア学習においても想起練習が有効であることが証明された。 外国語語彙学習において行われるのはL1とL2のペア学習だけではない。Barcroft(2007)では18歳から24 歳までのスペイン語を学ぶ,英語母語話者の大学生24名を対象に想起練習の効果を検証した。参加者はスク リーン上に映し出されるスペイン語(24語)とそれに対応する絵のペアを1つずつ覚える様に指示を受けた。 1ペアあたり3秒ずつ提示され,次々と語が映し出される仕組みであった。2週目と3週目では最初の12語 が想起練習で学習を行い,残りの12語は同時に提示され記憶していった。最初の12語は,6秒間絵だけ提示 され,その間学習者にはスペイン語の意味の想起を求めた。その後スペイン語と絵のペアが6秒間提示され 学習者は答えを確認した。一方で残りの12語はスペイン語とその絵のペアを12秒ずつ提示した。学習セッ ション後すぐの直後テストと,2日後と1週間後にそれぞれ遅延テストを行った結果,いずれのテストにお いても,学習者は想起練習を行った単語を行わなかった単語よりもよく覚えていた。この研究では,想起練 習は「dog:イヌ」のようなL1とL2のペアだけではなく,L2とその絵のペア学習においても有効であること が裏付けられた。このように上記で紹介した3つの研究では,いずれも想起練習の効果を支持しており,外 国語学習者は語彙学習において目標語彙を思い出す努力が必要であることが示唆される。 2.3.分散学習が長期記憶に貢献する理論的根拠 数多くの心理学実験では,学習の機会を一度に詰め込むよりもインターバルを設けて学習機会を分散させ る方が長期記憶に貢献するという分散学習効果が検証されてきた(Carpenter, Cepeda, Rohrer, Kang & Pashler, 2012; Kornell, 2009; 他多数)。前者を詰め込み学習(massed practice or cramming),後者を分散学 習(spaced learning or distributed practice)とそれぞれ呼んでいる。例えば,学習者が新たに英単語10語を 記憶する場合,その10語1日で30分学習するより,1日10分間の学習を3日間に渡り繰り返す方が学習者は より長期的に記憶することが可能になると言うことである。 詰め込み学習よりも分散学習の方がより効果的である理論的根拠の1つとしてGlenberg(1979)は符号 化変動性理論 (contextual variability theory)の重要性を主張した。この理論は学習内容を思い出すときには, 学習時の周りの文脈情報が多ければ多いほどそれがヒントとして役に立つという考え方である。例えば,学 習した場所(e.g.,自宅の部屋,図書館,教室など)や物理的な状態(e.g.,部屋の温度,匂いなど),学習 者の精神的状態(e.g.,怒っている,泣いているなど)や時間帯(e.g.,朝,昼,夕方など)などの付随情報 が学習項目と一緒に記憶される。この理論によると,インターバルを設けることで,学習者は様々な付随情 報というヒントを得る可能性が高くなる。一方で詰め込み学習を行うと,一定の場所や時間帯で学習するこ とになり,結果として周りの文脈情報を得ることが難しい。従って学習者は分散学習を行い,周りの文脈情 報を得ながら学習することが望ましいと言える。 2つ目は不注意仮説(inattention hypothesis)による考え方である(Hintzman, 1974)。この理論では,学 習時の注意力が学習そのものに影響を与えるという考え方である。詰め込み学習では1度に比較的長い時間 学習が要求されるため,学習者は徐々に集中して取り組みにくくなる。しかし一方で,分散学習の様にイン. 31.

(5) 笠原 究・金山 幸平. ターバルを設けることで,学習による疲労を取り除くことができ(Kanayama & Kasahara, 2016b),集中 力を絶やさずに学習しやすくなる。従って学習者は同じ時間を学習に費やす場合,一度に詰め込んで学習す るよりも,インターバルを設け集中力を持続させながら学習することが理想的と言える。 そして最も重要な根拠として挙げられるのは想起努力仮説(retrieval effort hypothesis)である。この理 論は前述した様に,学習内容に対して思い出す努力をするほど学習効果が高まるという考え方である。分散 学習では学習と学習の間にインターバルを設けることになり,意図的に忘却の時間を作ることができる。イ ンターバル後の学習では学習者が記憶した項目をほとんど忘れていることに気が付き,更に学習努力をする ようになる。しかし一方で,詰め込み学習の場合は連続して学習を繰り返すため,忘却する時間を作りにく い(Kanayama & Kasahara, 2017) 。すると学習を重ねるうちにまるで完璧に覚えたような錯覚を覚え徐々 に努力をしなくなる(Kornell, 2009)。従って学習努力を持続させるためにはインターバルを設け忘れる時 間を作ることが必要不可欠なのである。以上が分散学習が詰め込み学習よりも長期的にはより効果的である 理由である。 2.4.分散学習が語彙学習に与える影響 ここでは,分散学習効果を実証するために,詰め込み学習との学習効果を比較した先行研究を紹介する。 Bell,Kawadri,Simone,and Wiseheart(2014)では,カリフォルニア州のサンタクララ大学の学生が実 験に参加した。参加者を詰め込み学習グループ(n=37),そして24時間のインターバルを設けた分散グルー プ(n=35)に分けた。最初に全参加者はコンピューター上で20個のスワヒリ語と英語のペアを学習した。 最初の1週目は1セットに付き7秒ずつペアが提示された。2週目は最初にスワヒリ語のみがコンピュー ター上に提示され,学習者はそれぞれ対応する英語の綴りを入力した後正しい答えが得られた。1つの語に つき, 2回正解するとその後テストから取り除かれ,最終的にすべての語が2回正解されるまで学習セッショ ンが続いた。詰め込み学習グループは最初のセッション後すぐに2回目の学習セッションへと移った。一方 分散グループは24時間後に2回目の学習セッションが行われた。10日後に行った遅延テストでは,分散グ ループの方が詰め込み学習グループよりも保持率は有意に高かった。 この研究では,2回の学習セッションを1日で詰め込むか,または1日1回を2日間に分けて分散させる かであったが,次に紹介するKornell(2009,実験2)ではさらに多くの学習セッションを分散させている。 彼はカルフォルニア大学ロサンゼルス校の大学生25名を対象に,詰め込み学習と分散学習の2条件で,それ ぞれ20語,計40語の目標語とその同義語のペア(e.g., effulgent:brilliant)を4日間学習させた。詰め込み条 件では,1日5語の学習を8回繰り返し,2日目には前日とは異なる新たな5語を8回繰り返した。3日目 と4日目も同様に異なる5語を8回繰り返し,4日間で20語を覚えた。分散条件では,1日20語を2回繰り 返し,2日目以降も同じ20語を2回繰り返し,4日間で20語を記憶した。どちらの学習条件でも20語を8回 繰り返して学習したことになる。5日目に行った遅延テストでは,分散学習で覚えた語の正解率が54%であっ たのに対して,詰め込み学習条件では21%であった。しかし詰め込み学習条件で1日目に学習した単語は遅 延テストから4日経過しており,より正確な分析を行うために,4日目に詰め込み学習を行った5語と,分 散学習条件で覚えた20語を遅延テストで比較した結果,やはり分散学習が詰め込み学習を有意に上回った (54% vs. 34%)。. 32.

(6) 想起練習と分散学習を取り入れた語彙学習. 3.方 法 3.1.先行研究の問題点と研究課題 以上のように先行研究からは,語彙学習の際には想起練習効果と分散学習効果を上手く活用することで語 彙学習効率が高まることが証明された。しかし,多くの研究者が指摘するように(Karpicke, Blunt & Smith, 2016) ,ほとんどの語彙学習においては,高校生や大学生などを実験対象として想起練習効果 (Barcroft, 2007; Cull, 2000; Halamish & Bjork, 2011; Kanayama & Kasahara, 2016a; Karpicke & Roediger, 2007; Roediger & Karpicke, 2006) や 分 散 学 習 効 果(Bell et al.,2014; Bloom & Shuell, 1981; Cull, 2000; Kanayama & Kasahara, 2016b; Karpicke & Bauernschmidt, 2011; Kornell, 2009; Nakata, 2015; Schuetze, 2015)が検証されてきた。そのため,それらの効果が児童にも応用できるかどうかの保証はない。そこで次 の章では,幼い子どもから小学生の児童までを対象にした先行研究を紹介し,想起練習効果や分散学習効果 が日本の小学校英語教育において適切に運用できるかどうかを検証し,日常の教育現場で生かすことが出来 る語彙指導を提案する。従って以下の研究課題を設定した。 研究課題: 「想起練習」と「分散学習」は英単語を学習する児童にとって有効な学習手段か 3.2.考察の方法 考察の中心は,日本の小学校における英語語彙指導に有効だと思われる学習方法に関する示唆を与えるこ とである。従って,有効な学習に関係しそうな実験に絞って先行研究を概観し考察を行う。また日本の英語 教育や児童の実態などと関連させながら想起練習効果と分散学習効果の活用法を模索する。 3.3.想起練習が児童の学習に与える影響 Karpicke et al.(2016)では,インディアナポリスの小学校4年生(アフリカ系アメリカ52%,ヒスパニッ ク27%, コーカサス14%,その他7%から成る)を対象に24語の目標語(e.g., banana)を想起練習を行うグルー プ(n=20)と想起練習を行わない(同時提示)グループ(n=20)に分けて,それぞれの学習効果を比較 した。最初に実験者が教室の前のプロジェクターに1語につき2秒ずつ目標語を参加者に提示し,すべての 語を1通り提示した後,学習者は1分間で自由に学習する機会が与えられた。その後想起練習グループは手 がかり語と目標語彙の最初の2字(e.g., fruit:ba_____)が書かれた学習シートを使って想起練習をするよう に指示を受けた。一方で同時提示グループは手がかり語と目標語(e.g., fruit:banana)が示された学習シー トを見て記憶するように指示を受けた。その後すぐに実験者は白紙を配布し自由再生テストを行った。参加 者に覚えている目標語を自由に書かせた結果,想起練習グループの得点が同時提示グループの得点を有意に 上回った(55% vs. 44%)。 またKarpickeらは児童の認知発達レベルと想起練習効果の関係を検証するために,様々な学習課題も行っ た。その中の読解力テストでは,各英文の意味が通るように3つの語から適切な語を選択する問題(e.g., He was late, so he map/see/ran to catch the bus.)を2分半の中で参加者の児童に出来る限り多くの問題 を解かせた。またクロスアウトタスクと呼ばれる課題では,様々な幾何学的図形からある特定の形を見つけ る速さを調べた。これら2つのタスクと自由再生テストの結果を比較すると,認知発達段階に関係なく多く の児童は想起練習を行った時に得点が有意に高かった。このことから,Karpickeらは想起練習はどの学習 段階の児童にでも使用できると結論付けた。 典型的な語彙学習における想起練習とは,ペア学習において手がかり語をヒントに目標語彙を想起するこ. 33.

(7) 笠原 究・金山 幸平. とである(e.g., dog:_____?) 。このような単純作業では小学生にとっては退屈なものであり,もっと文脈の 中で想起練習をさせる必要があると考えたGoossens, Camp, Verkoeijen and Tabbers(2014)の研究では, 目標語彙を覚えるために,ペア学習とリスニングの中での語彙学習の効果を検証した。8〜11歳のオランダ 語を母語とし英語を第二言語として学習するロッテムダムの小学生60名を30名ずつの2グループ,ペア学習 グループとリスニング学習グループに分けた。リスニンググループではまず全20語の目標語彙が2度ずつ出 てくる物語を2度聞かせた後,それぞれの目標語の意味とその同義語を教えた(e.g., weep:cry)。その後20 語のうち10語は想起練習をしない学習方法で(e.g., weep:cry)学習させ,残りの10語は想起練習を促す方 法(e.g., weep:_____?)で学習セッションを行った。一方で語彙学習グループは最初に実験者が目標語とそ の同義語のペアを読み上げるのを聞き,次に目標語とその同義語(e.g., weep:cry)が提示された。その後 リスニンググループと同様に,20語のうち10語は想起練習をしない同時提示方法でペアを学習し,残りの10 語は想起練習で学習を行った。1週間後に目標語を見て同義語を答えるテスト(e.g., weep:_____?)を行っ たところ,学習条件(リス二ング学習,語彙学習)に関係なく想起練習を行った方がより効果的であった。 図1からわかるように,最も成績が良かったのは,想起練習を用いて語彙学習を行った時である。. 図1.Goossens et al.(2014)による遅延テストの結果. 3.4.分散学習が児童の学習に与える影響 Sobel,Cepeda,and Kapler(2011)では英語を母語とする,オンタリオの小学校5年生(平均10歳)の 児童39名を対象に8個の低頻度語(accolade, coerce, edict, gregarious, latent, salient, tacit, vex)を4つず つに分けて,それぞれを詰め込み学習条件と分散学習条件で学習させた。児童にはまず目標語とその定義と 例文をプロジェクターを通して提示し,それぞれの語を発音させた。次の3分間で4つの語の定義をブック レットに書かせた後,1分間で再度語彙の発音練習をした。最後に3分間でブックレットの空欄に目標語す べての定義とその語彙を使って新しい例文を自分で考えて書かせ,ブックレットを教師が回収した。詰め込 み学習条件では1分後すぐに復習を行い,分散学習条件では1週間後に復習を行った。復習セッションは最 初の学習と同様の作業を行わせた。それぞれの復習セッションから5週間後に目標語の定義を書かせる遅延 テストを行い,語彙の保持率を分析した結果,分散学習条件では20.8%保持したが,一方で詰め込み学習条 件ではわずか7.5%ほどしか保持できなかった。 Goossens, Camp, Verkoeijen, Tabbers and Zwaan(2012)はSobelらの研究に対して, 2度の学習セッショ ンで同じ学習を繰り返していた点を指摘し,彼らは語彙は学習毎に様々な活動を通して身に付けさせるべき だと主張した。そこでGoossenらはオランダ語を母語とし,英語を第二言語とするロッテルダムの小学校3 年生33名を対象に,分散学習の有効性を検証した。Sobelらの研究と異なるのは,学習セッションごとに毎. 34.

(8) 想起練習と分散学習を取り入れた語彙学習. 回異なる学習活動を行った点である。彼らは30語の目標語彙を分散学習条件で15語(No. 1〜15)と詰め込 み学習条件で15語ずつ(No. 16〜30)学習させた。1日目に実験者はすべての目標語彙(e.g., musical comedy)とその定義と(e.g., A play in which actors sing and dance)とその例文(e.g., Every year, the children of Grade 6 perform a musical comedy)をパワーポイントのスライド上で提示し目標語彙を覚え るように指示をした。2日目に,学習者は分散学習条件でNo. 1〜15の語を穴埋め問題形式(e.g., Tonight we are going to watch a _____)で再度学習した(活動1)。その後,詰め込み学習条件でNo. 16〜20番の 語を活動1,活動2,活動3という3つの方法で学習した。活動2では正誤式の問題(e.g., A musical comedy is a play on which actors are singing and dancing), 活 動 3 と は 選 択 式 問 題(e.g., What is a musical comedy?-A. a wedding in which people are singing. B. a CD with music. C. A performance with songs.)である。3日目と4日目も以下の表1にあるような手順で学習を行い,1週間後と4週間後にすべ ての語彙の記憶テスト(e.g., A play in which actors are singing and dancing.-_____)を行った結果,分散 学習条件で行った語彙の方が詰め込み学習で行った語彙よりも1週間後のテスト(55.96% vs. 46.46%)と4 週間後のテスト(49.49% vs. 42.22%),でいずれも有意に上回っていた。 表1.Goossens et al.(2012)の実験手順 1日目. 2日目. 3日目. 4日目. 11日目. 32日目. 語彙提示 No. 1-30. 活動1 No. 1-15. 活動2 No. 1-15. 活動3 No. 1-15. 遅延テスト No. 1-30. 遅延テスト No. 1-30. 活動1 No. 16-20. 活動1 No. 21-25. 活動1 No. 26-30. 活動2 No. 16-20. 活動2 No. 21-25. 活動2 No. 26-30. 活動3 No. 16-20. 活動3 No. 21-25. 活動3 No. 26-30. またこの分析方法だと11日目の時点でNo. 16-20の語は学習してから9日間経過しているが,No. 1-15の 語は7日間しか経っていない。このような差をなくすため,追加分析で4日目に学習したNo. 1-15の語彙と No. 26-30の語彙の保持率を検証した結果,同様に分散学習で行った方が有意に記憶されていた(55.96% vs. 46.06%) 。この結果から,Goossensらは分散学習が小学生でも十分有効であり,しかも毎回様々な学習をさ せたことから,より現実的で教育現場にも応用できることを立証した点が特徴的であると結論づけた。. 4.考 察 4.1.研究課題 Karpicke et al.(2016)とGossens et al.(2014)の研究から,想起練習は英単語を学習する児童にとって 有効な学習手段であると示唆された。上記2つの実験において,想起練習を用いて学習した語は想起練習を 使用しないで学習した語よりも有意に保持されていたからである。Karpicke et al.(2016)は,9歳から10 歳の児童はちょうど重要な教育上の発達段階にあり,効果的な学習ストラテジーを使用する年齢を迎えてい ると主張している。小学校中学年から,ピアジェの認知発達段階で言うところの,具体的操作期から形式的 操作期への移行期であり,脇中(2009)は9歳を境に,より質の高い高度な学習が求められると主張してい る。ただの暗記ではなく,学習内容を自身が持っている関連知識と結びつけて忘れにくくするなどのように,. 35.

(9) 笠原 究・金山 幸平. 工夫された高度な学習ができるようになる。また西垣(2000)では科学的な読み物を読む際に,「図・見出 し・タイトルを中心に読む」など効率的に読むメタ方略を持ち始める時期であると主張している。そのため 小学校3年生からは認知の飛躍的成長が起こる(大須賀,2016)。そのため想起練習のような認知的判断を 要求する学習ストラテジーが使用可能と考えられる。 さらにKarpickeらの実験から,想起練習はどの学習レベルの児童にも有効であることが証明されている。 想起練習は,ある特定の認知発達水準を超えた児童にのみ有効な学習方法ではないことも意識してもらいた い。しかし児童は心的努力をしない,楽な学習手段を好む傾向にあるため(Son & Simon, 2012),効果的な 学習手段を見逃す可能性が高い。想起練習で高い効果が得られるにも関わらず,児童はそれを使用しない可 能性があるため,教師は想起練習を小学校外国語活動や外国語科において積極的に取り入れるべきである。 またSobel et al.(2011)とGossens et al.(2012)の研究から,分散学習は英単語を学習する児童にとって 有効な手段であることが示唆された。上記2つの実験では,分散学習を用いて学習した語は想起練習を使用 しないで学習した語よりも有意に保持されていたからである。Guillery-Girard et al.(2013)は,9歳から 10歳までの間でエピソード記憶を効率的に使用できるようになると報告している。エピソード記憶とは自身 が体験した出来事に関する記憶を指し,その中には場所や時間や感情などの記憶も含まれている。エピソー ド記憶を効果的に使用できることから,9歳以降の児童は学習した内容だけではなく,学習した時間,場所 などの様々な文脈上の手がかりと学習項目を無意識的に結びつけることができると考えられる。これは前述 したように,符号化変動性理論と一致している。 また児童は発達した大人と比べて1つの物事に対する集中力に限界があるので,短期間で何度も繰り返す 詰め込み学習はより非効率的な方法となる。不注意仮説によれば,学習内容に注意が向くほど学習効果が高 いことがわかっている。そのため,児童にとっては間隔を空けながら,集中力を持続させることが大人の学 習者よりも重要になってくるだろう。 ただし前述したように,学習者は効果的な学習方法を自主的に使用するとは限らなく,心的努力を必要と しない楽な学習方法を好む傾向にある。Kornell(2009)の報告では,学習者は詰め込み学習の方が分散学 習よりも効果的であると信じている。それは,詰め込み学習の方が短期間で何度も繰り返すので,すぐに効 果が表われ,繰り返すほどに学習項目へのアクセス速度も上がり,完璧に覚えたと錯覚するからである。 以上のように小学校3年生以降の児童であっても大人と同様に,想起練習や分散学習のような認知的判断 を要する学習ストラテジーを使用することができると示唆された。しかしこの年齢の児童は自主的にこれら の方法を使用するとは限らないので教員の指導が不可欠である。 4.2.先行研究の参加者と日本の児童の言語能力の違い 想起練習や分散学習は児童にも十分に利用可能であることが先行研究から示唆された。しかし日本におけ る小学校の英語教育の実情を考えた時,考慮しなくてはいけない点,言い換えれば先行研究と大きく異なる 点が存在する。それは紹介した先行研究がすべて海外の児童を対象としていたという点である。このことか ら注意すべき点が少なくとも2つある。1つ目は日本の児童と海外の児童による第2言語能力の大きな差で ある。先行研究の児童たちはL2をある程度学んだ状態でL2の語彙学習を行っている。例えば,Goossens et al. (2012)の研究対象となった児童はロッテルダムの小学校3年生であるが,オランダは小学校1年生から英 語教育が開始されているため目標語彙の形式と母語の意味のつながりを意識したペア学習が可能であった。 オランダはEducation First(2016)から非常に高い英語能力を評価されている国でもある。反対に日本の 児童,特に小学校3年生は英語の綴りの知識がほとんどない状態である。このような状態でどのように想起 練習と分散学習を使って語彙学習に応用できるかを考察する必要がある。表2は中村・末松・林田(2008). 36.

(10) 想起練習と分散学習を取り入れた語彙学習. の研究を参考に,児童が習得するべき語彙知識をまとめたものである。これを参考に提案する学習方法でど のような知識が身に付くか考察する。 表2.児童が習得するべき語彙知識:中村他(2008)を参考 ⑴ 音声から意味. 語の発音を聞いて,その意味がわかる. ⑵ 意味から音声. 実物・絵や写真を見て発音できる. ⑶ 文字から意味. 英語の綴りを見て,その意味がわかる. ⑷ 意味から文字. 実物・絵や写真を見て,英語の綴りがわかる. ⑸ 文字から音声. 英語の綴りを見て,それを発音できる. ⑹ 音声から文字. 語の発音を聞いて,英語の綴りがわかる. 4.3.外国語活動・外国語科における想起練習 長年我が国は英語学習が中学校1年生から開始されており,その頃の学習者はある程度の認知能力が身に 付いているため,文字と意味と音声のつながりの同時形成が指導可能であった。小学校英語では音声を中心 に導入することで母国語の語彙習得に近づけようとする狙いがあると考えられるため(笠原他,2011),小 学校3,4年生の児童に対しては音声による大量のインプットを通して音声と意味のつながりの形成,つま り語の発音を聞いてその意味が理解できる,または絵や写真を見てそれを英語で発音できる力を習得させる 必要がある。 小学校3,4年生を対象とした外国語活動の段階では,先行研究で紹介したBarcroft(2007)の実験方法 を参考にした想起練習が可能である。彼の実験では,目標語の綴りとそれに対応する絵を提示し学習させた 後,絵だけを提示し学習者にはその目標語の意味を想起するように指示している。小学校外国語活動ではス クリーン上に映して想起練習を促す方法が効果的だろう。音声とそれに対応する絵や写真を提示した後,次 の学習では音声のみを流し児童に,その音声に対応する絵や写真を頭の中でイメージさせる。数秒後にスク リーンに答えを映すことで同時提示よりもはるかに表2の⑴の知識が定着しやすくなる。また逆の方法も効 果的であり,絵や写真のみを提示して,それに対応する語を発音させる,もしくは頭の中で考える時間を作 るなどテスト要素を取り入れることで表2の⑵の知識が強化できる。例えば,教員が表3の4つの単語から 一つを選び,その単語を発音する。児童はまずは頭の中でその単語のイメージを想起し,その後選択肢を見 て解答を選ぶ。これらは新学習指導要領における,「ゆっくりはっきりと話された後に,自分のことや身の 回りの物を表す簡単な語句を聞き取るようにする」「文字の読み方が発音されるのを聞いた際に,どの文字 であるかが分かるようにする」という聞くことの目標に十分に応えられる学習方法である。 文字知識がある程度定着した小学校5年生以降は,表2の⑶〜⑹の語彙知識を意識して想起練習ができる。 つまりは小テストを使った指導が可能になる。テスト時に学習者は頭の中で学習項目を思い出そうと努力す るので,テストを行うことが直接,想起練習に繋がるのである。笠原他(2011)で扱ったテストでは表2の ⑶から⑹の知識の定着を図ることが可能である。教員は表3の4つの単語から一つを選び,その単語を板書 する。児童は頭の中でその単語のイメージを想起し,その後選択肢を見て解答を選ぶ。新学習指導要領の外 国語科の「活字体で書かれた文字を識別し,その読み方を発音できるようにする」と「音声で十分に慣れ親 しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする」といった目標に大変効果的である。もちろん 上記のように絵と音声や綴りを組み合わせる学習自体は古くから存在しているが,ここで強調したいのは想 起する時間を作る重要性である。想起練習も児童にも十分効果的であることから我が国の小学校英語教育に. 37.

(11) 笠原 究・金山 幸平. おいても取り入れるべき学習方法の一つである。 表3.語彙知識を定着させる提示方法の例:笠原他(2011)を参照. 4.4.どのように学習を分散させるか 想起練習とは別に,記憶の定着にはインターバルを設けることを忘れてはいけない。先行研究では日単位 のインターバルであったが,分単位や秒単位などのインターバルでも連続して学習させるよりは効果的であ ることが分かっている(Vlach et al. 2014)。例えば,授業の最初の3分と最後の3分間の語彙学習は,授業 中の連続した6分間の語彙学習よりも長期記憶が十分期待できる。 学習と学習の間隔はどのくらいが適切だろうか。多くの研究では,最適な学習インターバルは保持期間に 影響を受けることを報告している(Cepeda, Vul, Rogrer, & Pashler, 2008; 中田,2017)。保持期間とは最後 の学習セッションと記憶テストまでの期間のことである。Cepeda et al.(2008)では,1回目の学習セッショ ンの後に様々なインターバル(1日, 2日,4日,7日,11日,14日,21日,35日,70日,105日)を設けて, 2回目の学習セッションを行い,記憶テストを様々な保持期間を設けて行った(7日,35日,70日,350日)。 その結果,保持期間が7日の場合最適な学習インターバルが1日で,同様に保持期間70日の場合は21日間の インターバルが最も効果的であることを発見した。Kuepper-Tetzel et al.(2014)の実験でもこの考えを支 持しており,2回の学習セッション間のインターバルを,それぞれ1日と10日に設定し,その後7日後と35 日後に遅延テストを行った結果,保持期間が7日の場合には1日のインターバルを設けることが望ましく, 保持期間が35日なら10日のインターバルが効果的であった。要するに短い保持期間なら短いインターバルで, 長い保持期間なら長いインターバルが最適であるという結論である。以上の結果やCarpenter et al.(2012) の調査によると,保持期間のおよそ10-20%の間隔で学習インターバルを設けることが最適であると報告さ れており,また中田(2017)はおよそ10-30%が最も高い保持率に結び付くと提案している。 上記はすべて学習セッションが2回の場合どのような間隔が最適であるかを示したものであるが,実際に 学習を繰り返す場合は2回以上行う場合が多い。何度も学習を繰り返す場合はどのようなインターバルが最 適だろうか。伝統的にインターバルを空ける方法は2つあり,どのような種類のインターバルで学習するべ きかについては現在でも議論が分かれている。1つは拡張分散学習(expanding spacing)と呼ばれており, これは最初の復習までの期間を短く設定し,徐々に復習の間隔を長くしていく方法である(Kanayama & Kasahara, 2016b)。もう1つは均等分散学習(equal spacing)と呼ばれており,これは間隔の空け方が常に 一定である。Vlach et al.(2014)では語彙実験ではないが,拡張分散学習の優位性を示した。3歳の英語 母語話者を対象にあるカテゴリーの物体を提示し(e.g., 恐竜のおもちゃ),グループごとにインターバルを 変えて再提示した。拡張分散学習では10秒後に10秒間再提示し,今度は30秒後に10秒間また提示し,その後 50秒後に10秒間提示した。従ってインターバルは10秒,30秒,50秒と徐々に長くなっていった。均等分散学 習グループは30秒,30秒,30秒と等間隔で対象物を10秒ずつ提示した。ただし再提示の時には同じ物体だが,. 38.

(12) 想起練習と分散学習を取り入れた語彙学習. 色などを変えて提示した(e.g.,赤い恐竜や青い恐竜)。24時間後に遅延テストを行った結果,拡張分散学習 グループが有意にテストの成績が良かった。同様にNakata(2015)でも日本の大学生を対象にした日本語 の英語のペア学習において,効果量は小さいが拡張分散学習の優位性を報告している。しかしほとんどの研 究では必ずしもその効果が実証されているわけではなく,長期的には均等分散学習の優位性を示した研究 (Karpicke & Roediger, 2007; Logan & Balota, 2008) や 両 者 に は 差 が な い と い う 研 究(Karpicke & Bauernschmidt, 2011; Pyc & Rawson, 2007)など様々な報告がある。最大の問題点は日本の児童を対象に した語彙学習における拡張分散学習と均等分散学習の比較研究がないことである。従って現在の段階ではイ ンターバルの種類ではなく間隔を空けることの重要性を意識してもらいたい。. 5.結 論 本稿の目的は小学校英語語彙指導における想起練習効果と分散学習効果の利用可能性について言及するこ とである。先行研究のほとんどは大学生を実験対象としており児童を対象とした研究は数少なかったため小 学校でも応用可能かどうかの議論はなかった。そこで本稿では児童を対象とした先行研究を概観し,その結 果児童にも想起練習や分散学習が十分に有効であることを示した。語彙指導の際には,⑴考える時間を作る ことで想起練習効果を最大限まで引き出すこと,⑵一度のみの学習にはせず学習機会を分散させることで忘 れる時間を作ること。以上の事を念頭に入れて語彙指導を意識してもらいたい。 最後に本稿で紹介した語彙指導方法において留意すべきことが一点ある。本稿では,児童の認知発達など の観点から「想起練習」と「分散学習」が効果的かどうかを議論した。つまりここで紹介したのは意図的に 語彙を学習させる方法であり,活動を通して付随的に語彙を覚えさせる方法ではないということである。ア レン玉井(2010)は,児童に単語を機械的に学習させると吸収する前に興味を失い退屈してしまうので,文 脈の中で使う活動が必要であると主張している。児童が語彙や表現に慣れ親しませるためには,歌やチャン ツなどの活動がより効果的であるという主張もあり(大城・直山,2008),近年では様々なアクティビティー を紹介した専門書が出版されている。従って,語彙を意図的に学習させることが児童にどのような影響を与 えるのか動機付けの観点等から検証することも今後の調査課題である。. 参考文献 アレン玉井光江(2010).『小学校英語の教育法 理論と実践』東京:大修館書店. Barcroft, J. (2007). Effects of opportunities for word retrieval during second language vocabulary learning. Language Learning, 57 ⑴, 35-56. Bell, M. C., Kawadri, N., Simone, P. M., & Wiseheart, M. (2014). Long-term memory, sleep, and the spacing effect. Memory, 22 ⑶, 276-283. Bloom, K. C., & Shuell, T. J. (1981). Effects of distributed practice on the learning and retention of second-language vocabulary. Journal of Educational Research, 74, 245-248. Carpenter, S. K., Cepeda, N. J., Rohrer, D., Kang, S. H. K., & Pashler, H. (2012). Using spacing to enhance diverse forms of learning: Review of recent research and implications for instruction. Educational Psychology Review, 24, 369-378. Cepeda, N. J., Vul, E., Rohrer, D., & Pashler, H. (2008). Spacing effects in learning: A temporal ridgeline of optimal retention. Psychological Science, 19, 1095-1102. Cull, W. L. (2000). Untangling the benefits of multiple study opportunities and repeated testing for cued recall. Applied Cognitive Psychology, 14, 215-235. EF Education First. (2016).『EF EPI:EF 英語能力指数 第6版』. 39.

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