小学校における生徒指導の現状と課題
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(2) 小学校における生徒指導の現状と課題. 援助であり、個々の生徒の自己指導能力の育成. i)児童・生徒に「自己決定」の場を用意す. を目指すものである」とした。坂本(1994)も. ること、ii)児童・生徒に「自己存在感」を与. 同様に、児童生徒の自己指導能力の形成を強調. えること、iii)教師と児童・生徒、また児童・. している。また佐藤(1986)は、自己指導力を. 生徒相互に「共感的関係」を育てること。. 「自らの生活にかかわって発生する問題や課題. 文部省(1988b)は、これらを与え、育てる. を主体的に発見し、自らの力で適切な解決法や. ことが生徒指導の機能であるとし、原田(2003). とるべき進路を選択し、責任をもってそれらを. もまた、この3機能を実践原則として考えた。. 処理する能力」とし、”生きる力”そのもので. 生徒指導を実践する上で、教師は常にこの3機. あると述べている。. 能を意識し児童生徒の指導にあたることが大切 である。. たくましく生きていく力. (3)生徒指導が機能している状態 「生徒指導が機能している状態」は文献より次 の6点にまとめることができる。(宇留田,1988、. 自己教育力 自己指導力. 田村,1991、中元,1994、関根,1994、高野,1994、 有村,1999、林,2002、秦,2004). i)基本方針が共通語識されていること、ii) 教 育 課 程. 生徒指導・教育相談の体制が確立されているこ. 特別活動 各 教 科. 道徳 学級活動. 星曇活動. ク与活動. と、iii)子ども・問題行動への対応が適切であ. 学校行事. ること、iv)保護者・地域社会への対応にも適. 切であること、v)研修のあり方が改善されて. いること、vi)管理職の意識が前向きでリー. 生 徒 指 導. ダーシップが発揮されていること。 fig 1 生徒指導と教育課程に基づく指導との関係. 2 小学校における生徒指導の現状. (高橋,2002). 文部科学省(2006)は、小学生による校内暴 生徒指導の目標としてさまざまな考えが提言. 力が過去最多の年間2018件にのぼったことを報. されているが、大筋は文部省(1981)から出さ. 告した。近年、小学校におけるいじめ、不登校. れている目標を基にしており、また坂本(1994)、. 等の問題が数多く発生し、問題行動は低年齢化. 佐藤(1986)が強調する「自己指導能力」「生. の傾向にある。小学校においても、中学校・高. きる力の育成」に重点が置かれているといえよ. 等学校同様に生徒指導体制(体制asystem:社. う。. 会・組織などの仕組み)を見直す必要がある。本. 項では筆者の経験を元に、小学校の生徒指導の. (2)生徒指導の役割. 生徒指導は、「領域」ではなく、教師が行う. 問題点を述べたい。. (1)小学校における生徒指導体制の特徴. あらゆる教育活動において「機能」として存在 すべきものである(Fig.1)。文部省(1988 a). 中学校・高等学校同様小学校においても、校. は、自己指導能力の育成を図るために生徒指導. 務分掌に生徒指導の担当が位置づけられている。. がもつ次の3機能をあげている。. また、ほとんどの学校で生徒指導委員会および 一22一.
(3) 生徒指導研究 第18号. 就学指導委員会が設置されている。その委員会. 小学校では、担当の学級の児童以外とは関わ. の機能は、学校間格差はあるものの月に1回程. る機会が少ない。筆者は不登校児童を担任した. 度会議が開催され、問題行動の有無及び現状に. 経験があるが、その児童が不登校状態であるこ. ついての報告が成されることが多い。但しその. とを報告しても、生徒指導委員会等の話し合い. 報告にあがる項目は、各担任の裁量に任される. は行われず、担任独自で対応することになった。. 部分が多く、保護者や警察等がかかわるような. 個人的に先輩教師のアドバイスを受けることは. 大きな問題のみが報告され、それ以外を報告し. できるものの、管理職の支援や他の教職員から. ても議題として重要視されない現状がある。報. の協力を得られず、保護者の力になることが充. 告事項は担任独自の対応によって、終結に向か. 分できなかった。他にも、生徒指導担当や生徒. いつつあるもの、または、対応し終わったもの. 指導委員会が機能せず、担任一人に任されるこ. である。児童と一日の大半を過ごし、実際に、. とがあった。しかし、この場合には教頭が不登. 生徒指導を担当しているのは担任であり、担任. 校に対して問題意識が高く、指導面、担任の精. 一人に生徒指導を任せている現状があると思わ. 神面において支えになってくれた。教頭が率先. れる。. してかかわったため、他の教職員も不登校に対. 問題行動の大小にかかわらず、今ここで児童. して関心が高くなり、筆者に対する同僚からの. に起きている問題自体に目をむけ、その対応に. ねぎらいの言葉等の心配りがあった。そのため、. ついてよりよい手だてを考えなければならない。. 保護者の対応もうまくいき登校できるように. 担任一人に対応を任せ、会議では問題行動を報. なった。. 告するのみとなっている委員会の運営・組織を. 全教職員共通理解のもとに生徒指導上の諸問. 見ると、生徒指導の体制をより効果的なものに. 題に対応していくのが本来の生徒指導であろう。. する必要性を感じる。. しかし、小学校ではそれらへの対応が担任一人 に任されることが多い。また、生徒指導につい. (2)生徒指導観の不一致 小学校で問題行動が起こったとき、担任独自. ての意義の捉え方や理解は教職員個々によって. の判断でその対応にあたらなければならない場. かなり差がある。情報を提供しない担任も散見. 合が多い。その場合、同僚や先輩教師、管理職. される。他の教職員から、不登校などの児童の. には、個人的に相談することになるが、職場の. 問題について担任の指導力不足と判断されると. 構城、風土によっては、他の教師の協力が得ら. 怖れて、担任自身が児童に対する適切な指導、. れず、担任独自の判断で孤立的に職務を果たさ. 援助のための情報の共有化を怠るのである。. ざるを得なくなる。そして、それへの対応の仕. (3)児童理解の認識不足. 方によっては、問題がさらに大きくなってしま. 小学校では、職員会議等で学級の児童の状況. うこともあり、ひいては教師のバーンアウト. を報告する機会がある。職員会議で「児童理解」. (新井,2006)にもつながる。実際に、近隣i校や. という時間が設定され、その報告内容は担任に. 旧知であった同年代の教師も学級内での問題が. 任されている。しかし、明らかに不登校気味な. 元で、休職から退職へと追い込まれた。筆者に. 児童、及びADHDの疑いのある児童等が在籍. は「なぜ退職しなければならないのか」「同僚. していても担任はそれを問題視せず、また生徒. 教師は何をしていたのか」など考えさせられる. 指導委員会などへ報告することがない場合が. ことが多かった。. あった。該当児童に対して周りから指摘されて 一23一.
(4) 小学校における生徒指導の現状と課題. も、担任は「児童の怠惰や性格上の問題」と考. 学級担任制がゆえに小学校教師は、他の教師. えたのである。「児童のことを一番理解してい. との交流が少なくなり、孤立状態になりがちで. るのは担任であり、学級の問題は担任に任され. ある。日常の生徒指導そのものへの無関心な風. る」という小学校特有の職場風土から、他の教. 潮も見られる。たとえ問題に気づいても、小学. 職員も担任が問題としない児童についてふれる. 校では学級王国といわれ、自分一人で解決し対. ことがなかった。. 応してしまおうとする。児童の問題行動への気. 小学校では、生徒指導の全般が担任に任され. づきが遅れがちとなるのである。. ている。担任は日ごろから児童理解に努め、児. (2)生徒指導の充実にむけての方策. 童からの小さなサインを見過ごすことなく対応. 小学校での生徒指導の充実に向け、1982年3月. していると思われている。しかし、すべての教. に「児童の理解と指導」(「小学校生徒指導資料」. 師が、その小さなサインを見過ごさないだけの. 1>が発刊され、小学校学習指導要領(文部省,. 技量や子どもの変化に対応できるだけの指導力. 1988)で「生徒指導」が明記された。学習指導. を持ち得ているとは言い難い。教師は、子ども. 要領(文部省,1998)において、「(3)日ごろから. たちを取り巻く状況を把握し、情報を手に入れ、. 愚級経瀞の {を図り、教師と児童の信頼関係. 児童に対して適切な支援・援助ができる力を身. 及び児童相互の好ましい人間関係を育てるとと. につけていく必要がある。. もに児童理解を深め、生徒指塑充塞を図るこ と、(4)各教科の指導に当たっては、児童が学士. 3 小学校における生徒指導の課題. 言題や。 を’巽 した らの将’について. えたりする絵を設けるなどの工夫するこ. (1)生徒指導の問題点. なぜ、学校において生徒指導が機能しないの. と」(小学校 総則第5の2 一部抜粋、下線筆. かという課題について、大石(1980)は、校内. 者)と位置づけられ、中学校・高等学校同様に. の連携をダメにする9点(「いざとなるど突わが荘. 重要視されるようになったのである。. 園”」「教師特有の喫第2の親心”」「意外にめんどう. 小学校における学級運営や生徒指導にかわる. な喫ヒ教師の関係”」「微妙にゆれる駅共通理解”」「生. 問題や事件等が多く発生するようになり、そう. かされない鳴璽指導組織”」「占有されている璽生活指. した事象や新たな課題に対応して、児童生徒の. 導情報”」「閉ざされだ更生徒と親の秘密主義”」「学. 問題行動等に関する調査研究協力者会議(1998)、. 年・分掌の喫ぐセクト主義”」「教師の¢協議の場の不. 学級経営研究会(2000)、青少年育成推進本部. 足”」)をあげた。小学校においては、中学校の. (2004)、学校と関係機関との行動連携に関す. 教科担任制に比べ、教科の大部分が担任に任さ. る研究会(2005)、文部科学省(2004)、国立教. れているため、より学級に対する思い入れが強. 育政策研究所生徒指導研究センター(2005)等. くなる傾向があり、まさに受わが荘園”である。. から報告書等が出され、「小学校における生徒. 同様に、大谷(1990)も閉鎖的な学級王国にし. 指導の充実」が大きく取り上げられた。それら. ない努力や校内組織との連携が大切であると述. は、子供たちの実態を多面的に把握し、学校と. べている。大石、大谷が、教師の学級経営に着. して生徒指導の方針を定め、組織的・計画的に. 目したのに対して、高階(1990)は、小学校教. 取り組む必要性や関係機関等と組織的、継続的. 師が生徒指導の意義を誤解していることを問題. に連携していくシステムを生徒指導体制に組み. としている。. 込んでいく必要性などを明示している。いずれ 一24一.
(5) 生徒指導研究 第18号. の報告書も学級運営と生徒指導の在り方につい. 子どもへの指導の一貫性、具体的な指導、学. ての指摘であり、改善にむけた方策が打ち出さ. 校の体制、教師が率先、愛情をもった関わり、. れたものである。小学校現場では、それがどの. 子どもとの信頼関係、保護者との連携、担任の. 程度、教職員に意識され、現状を把握して適切. 心のゆとり。. な対応ができているのか疑問である。. これらより、生徒指導が機能している状態は 「生徒指導に対する教職員の共通理解のもと、. (3)機能している生徒指導体制とは(聞き取 り調査から). 生徒指導体制が確立されていることである」と. 生徒指導が機能している状態について小学校. 現職教員が考えているといえよう。また、「教. 現場の教員(管理職を含む)20名(男子8名女子. 師の力量・資質向上」や「管理職のリーダーシッ. 12名)に聞き取りを行い、次の項目を抽出した. プ」、そして、「職場風土の高揚」が重要である. (平成18年3月実施)。. と考えていることがわかる。これらは、前項ま での文献の論証に共通するものであるといえる。. 1生∠巳道とは、ど’い’ものか. (4)本論における「生徒指導が機能している. 児童の自己実現、自律支援をめざすもの、 基本的生活習慣の確立、社会の中で一人一人を. 状態」の定義. 育てる、問題行動の処理、児童理解、児童の成. ここまでの議論を基に、本論における生徒指. 長へむけての環境づくり、生徒指導体制の確立。. 導が機能している状態を以下に定義する。. 2生Zb着が’ムヒするために 切なことは. 『生徒指導が機能している状態とは、全教職. 生徒指導体制に対する教職員の理解、教職員. 員が生徒指導の目的を理解し、生徒指導に関す. の共通理解、職場風土、教師の力量・資質及び. る共通認識のもとに教師の力量・資質を高め、. リーダーシップ、保護者との連携。』. 実践できる状態のことである。』. 3 自の♪研として 切なことは. 生徒指導が機能するには、全教職員が「生徒. カウンセリングマインド、リーダーシップ、. 指導の目的を理解」することが基盤となり、さ. 生徒指導のスキル、人間関係づくり・熱意・行. らに「教師の力量及び資質の向上」、「管理職の. 動力、保護者との信頼関係、豊かな人間性、環. リーダーシヅプ」が求められる。そのために、. 境づくり、ネットワークカ、子どもの目線。. 生徒指導に関する「校内研修」の活用が有効で. 4呆謹 や地域との連 で大切なことは. ある。全教職員が生徒指導の目的達成のための. 学校の責任をはたす、コーディネーター、. 共通認識をもち、「協働的な指導体制」(同じ目. ネットワークカ、学校の情報公開、信頼関係を. 的のために教職員が協力して行われる組織体. 築く。. 制)を確立することが求められる。. 5交石傷で 切なことは 技術習得(カウンセリング等)のための研修、. lll協働的指導体制づくりの問題点. 校内連携システム、リーダーシップ。. 奪 協働的指導体制の重要性. 児童生徒は、多様な問題を抱え危機的な状況. 6竺王日噛の動きかけとして 切なことは. 教師への指導・支援、地域・関係機関との橋. に直面している。問題は具体的かつ緊要でその. 渡し、子どもとの関係づくり、オープンな校長. 解決を遅らせることはできない。これらの問題. 室、共に考える姿勢、リーダーシップ。. の解決のために、教師は日々奮闘している。し. 7 どもへの日々の巳首で 切なことは. かし、日々起こる生徒指導上の問題のいずれか 一25一.
(6) 小学校における生徒指導の現状と課題. ら着手し、どのような方法によって問題解決に. しかし、現実には協働的な指導体制が確立され. あたるべきかを判断することはきわめて難しい。. るのは容易ではない。ここでは、協働的な指導. これらの課題は、一人の学級担任では対応でき. 体制確立の阻害要因を、中元(1994)、中山 (2002)の意見から6項目にまとめる。. ない現状がある。全教職員による生徒指導のポ イントは、「協働」(異質な個性が共通の目的の. i)生徒指導に関する考え方の違い、ii)共. ために協力して働くこと)にあり、生徒指導に. 通理解の不足の問題、iii)組織の運営の問題、. は協働的な指導体制が必要であることがわかる. iv)生徒指導に対する教師の研修不足、 v)生. (大石,1992、高野,1994、神保,1995、國分・. 徒指導主事の役割の問題、vi)管理職の意識の. 門田,1996、石鎗,1996、八並,1997、秦,!999、. 問題。. 丸山,2004、上地2005)。. IV 生徒指導体制の構築へ向けての 2 協働的指導体制づくりにむけて. 校内研修の必要性. 生徒指導体制を確立するには、校務分掌組織. 1 校内研修と協働化の促進. 全体を見直し、生徒指導の組織が有機的、系統. 八尾坂(1999)は、小学校において全教職員. 的に働くように位置づけられているかを学校の. が同一テーマのもとで行う校内研修の必要性を. 実態に即して検討することが大切である。協働. 強調した。中・高等学校同様、小学校において. 的指導体制づくりにむけて、岩淵(1990)、中. も共通理解を得るための校内研修の役割は重要. 元(!994)、中山(2002)、石井(2002)らが生. であり、各校で積極的に取り組まれている。. 徒指導体制をつくるための留意点を述べている。. 学校教員は、研修が義務付けられている(教. これらを6点にまとめる。. 育公務員特例法19条1項)。永田、(2002)は、「教. i)生徒指導のための全体構想の策定、ii). 師は新しい指導感を練磨し続けなくてはならな. 生徒指導のための人的組織化、校務分掌組織の. い」とし、牧(1988)も「研修とは、一人ひと. 見直し、iii)生徒指導のための時間的計画の策. りの子どもの望ましい変容、つまり人間として. 定、iv)生徒指導の担当者、および教職員全員. の成長・発達を促すことを究極的なねらいとし. の資質向上をめざした研修制度の充実、v)生. て、教師が行う研究と修養を意味する」と述べ. 徒指導のための資料整備や環境整備を行うこと、. ている。教師は、成長する子どもを前に、絶え. vi)教師のモラールを高め、協働意欲を強固に. ず自己を振り返り、自分自身も成長していかな. するために効率的な分掌組織づくりに努めるこ. ければならない。そのため、研修を法規上の義. と。. 務として捉えるのでなく、教師にとって大切な. 教職員が生徒指導の基本方針等を共通認識し. 成長過程であると捉えるべきである。教師研修. 児童生徒の自己指導能力の育成に向けて協力し. には、自己研修、・承認研修、校内研修等がある. て働く、つまり、協働的な指導体制をとること. が、ここでは校内研修について考える。. が重要といえる。. 「校内研修」を基盤とした現職教育の推進(文 部省,19862)、校内研修が、教員個人の資質向. 3 協働的指導体制を阻害する要因. 上を高め、かつ教員全員が参加することが、校. 協働的指導体制の確立には全教職員の生徒指. 内の課題解決にむけて効果的であること(文部. 導に対する意思を統一することが大切である。. 省,19873)、優れた指導実践や知識の蓄積と継 一26一.
(7) 生徒指導研究 第18号. 承を図ることの必要性と、校内研修による同僚. の必要性が述べられている。学校のおかれてい. 教員からの援助や助言の有効性(文部科学省,. る状況に即した生徒指導上の問題を取り上げ、. 20054)が提言されている。. 共通理解を深めることが重要である。. 校内研修の意義を丸山(!988)は、「学校全. 指導が困難な問題を学級担任だけが抱え込ま. 体のモラールの向上、教職員個人の資質の向. ず、校内研修で事例検討し、全教職員の共通理. 上」とした。校内研修の効果をあげるには、教. 解を得ながら、協力的な指導のチームをつくる. 師の協働が必要(望月,1987)であり、校内研. 必要がある。研修の中で指導の仕組みをつくり、. 修をより活性化させるにあたっては、教師間の. 学校全体としての連携と協力の体制へと発展. 意見の尊重やパートナーシップの発揮をあげ、. (丸山,1999、芝谷,2004)させ、生徒指導部を. 研究・研修を「共同体制」から「協働態勢」に. 中心として施策していくことが考えられる。学. していくことが大切(丸山,2004)である。. 年・学級経営の充実を生徒指導の重点とし、組. 校内研修に教員全員が参加することで、教員. 織的な研修と実践を行うのである。. 同士の共通理解が進み、校内研修の充実が期待. 生徒指導の校内研修について、松田(1998). できる。さらに校内の課題解決につながり、ま. は、生徒指導体制の点検項目の中に校内研修を. た同僚教員の援助や助言が有効となって、ひい. 位置づけ、その必要性を述べている。生徒指導. ては教員個人の教育力を高めることになる。. を行う上で、全教職員の共通理解を図るために. 教師は、絶えず自己を振り返り、自ら成長し. は、組織的な研修と実践が必要であり、全教職. ていくために研修が必要である。その中でも、. 員参加の校内研修が効果的であるといえる。. 校内研修は、教員全員が参加することで、同僚 教員の援助や助言を得ることができ、教員個人. 3 生徒指導研修に対する教師の意識. の教育力を高めることができる。また、職員間. 教師自身は生徒指導の研修をどのように捉え. の考えの違いを尊重することで共通認識を図るこ. ているのだろうか♂教師の関心が高い研究領. ともでき、学校目標の達成という同じ目的にむ. 域”の調査で、教師の一番関心が高い項目は「児. けて協働態勢(態勢 preparations arrangements:. 童生徒心理、カウンセリングの研究」であった. 物事に対する構えや状態)をとることができる。. (国立教育研究所,1984)。田村(1991)は、こ. そして、集団としての組織力を高めることにも. の調査項目の「児童生徒心理、カウンセリング. つながるのである。. の研究」以外の項目に注目し、「部活・進路指 導の研究」「児童生徒の個別指導」をとりあげて、. 2 協働性の基盤をつくる生徒指導研修. 教師は生徒指導に深く関連する研究について関. 学習指導要領(文部省,1988)には、「ガイダ. 心が高いと述べている。また、「生徒指導をす. ンスの機能の充実」があげられている5。また、. すめる上で必要と思われる研修内容及び学校で. 『生徒指導の手引き(改訂版)』(文部省,1981). 進められている生徒指導に関する研修内容」の. では、生徒指導の校内研修のあり方として、r全. 調査では、学校で必要と思われ、また実際に行. 教師の生徒指導に関する理解を深め、生徒指導. われている研修内容として、「生徒指導の事例. 体制の基盤を培うこと」、「全教師の生徒理解の. に即した具体的な指導方法」「集団の指導と望ま. 質を高め、生徒に対するその指導力を向上する. しい学年・学級経営」「教師相互の共通理解や. こと」があげられ、生徒指導に関する校内研修. 協力の仕方」があげられている(岡田,1986)。兵. 一27一.
(8) 小学校における生徒指導の現状と課題. 庫県立教育研修所(1987)は、教師の校内研修. 員が協力して研修の推進を阻害している要因に. に対する意識・満足感が高いと報告した。校内. ついて把握し、改善に努めなければならない。. 研修に対する教師のモラールは高く、その盛り 上がり要因が研修テーマの共通理解、研修体制. V おわりに. の確立であると指摘している。. 小学校では、生徒指導は学級担任一人に任さ. 教師は、生徒指導の研修に関心が高く、中で. れており、学校の生徒指導体制が機能的に動い. も児童生徒理解において、より技術を高めたい. ているとは言い難い。また、生徒指導の意義の. と考えている。全教職員が参加する校内研修の. 捉え方やその理解など生徒指導観の不一致から. 実施は、生徒指導上、重要とされる職員の共通. 児童に対する適切な指導、援助のための情報の. 理解や協働体制に効果的であると考えられる。. 共有化が、全職員で充分に成されていない現状. 校内研修を促進する(阻害する)要因につい. がある。. て、鈴木(1999)は、次の5点をあげている。. このような現状をふまえ、小学校の生徒指導. i)研修計画において、教師間の共通理解と. 体制を確立していくには、教職員間の共通理. 組織運営の簡素化、ii)研究実施において、同. 解億思統一が大切である。そして、「担任への. 僚問の開放性と研修内容の革新性、iii)研究評. 責任所在の個人集中」(一担任教師ばかりが責任. 価において、日々の教育実践における適時性と. を感じ、一人制問題を抱えること)、管理職のか. 個々の教師に対応した具体性の導き、iv)校長・. かわりにも目を向ける必要がある。. 主任のリーダーシップ(専門的実践性、協働性. 筆者は問題点を認識し、共有するために全教. を育むリーダーシップ、形式にとらわれない実. 職員が参加する校内研修を行うことが有効であ. 質性)、v)外部支援・連携。. ると考えた。生徒指導の教育的意義を理解、共. これらの意見は、兵庫県立教育研修所(1987)、. 有し、担任教師個人の責任として問題を焦点づ. 角谷(1994)にも共通するものである。その中. けることなく、全教職員で児童・生徒を支援し. で、管理職や中堅層のリーダーシップのあり方. ていく研修のありかたを提起し、実践していき. をあげ、校内研修を促進していく際に、一番重. たいと考えている。教師の意識に基づいた具体. 要で影響力があると指摘している。. 的な研修プログラムを開発、実践することが望. 生徒指導に関する校内研修を推進し、研修の. まれる。. 充実を図るためには、管理職をはじめ教職員全. 1特別活動;「児童・生徒の現在および将来の課題に即して、適切な情報提供や案内・説明、体験活 動、各種の援助・相談活動などを、児童・生徒や保護者に対応していくための研修会を行うこと」. 21986年4月臨時教育審議会第2次答申;「教員の現職研修は、各学校の日常の教育実践と結びついて 行われる交 創傷を基盤として、組織的、計画的に行うようにする。」(下線筆者) 31987年教育職員養成審議会の答申;「第2 教員の現職研修の改善」の冒頭においても、「教員の職. 責にふさわしい資質能力は、教員養成のみならず教職生活を通じて次第に形成されていくもので ある。この場合、教員自身が修練を積み重ねることによってその資質能力を高めていくことが基 本となることはもとよりである。そのためにも、交目論目が富力する六内君傷の を叉ること 蚕狂要である。校内研修の実施に当たっては、各学校の教育目標を十分踏まえ、かつ、地域や幼 一28一.
(9) 生徒指導研究 第18号. 児・児童・生徒の実態等を考慮しつつ、組織的に、計画、実施し、十分な評価を行うことが重要 であり、その成果は、幼児・児童・生徒の教育に反映される必要がある。校長をはじめとする教 員は、校内石傷が交 の言題の解決と 員 人の 六 を窩める上で基盤となるものであること に助意し、その’性ヒのために一層の をする必 がある。 (下線筆者). 42005年3月中央教育審議会 義務教育特別部会;「優れた指導実践や知識の蓄積と継承を図ること は必要であり、その意味において、日愚性や「闘性に蔦れた交内石馴こよる同.、員からの援助 や壷口は忌めて 交であることが述べられている。」(下線筆者). 5中学校 学習指導要領(文部省,1998)の総則;「児童・生徒がおかれた状況や課題について、教 職員が組織的に総合的な指導力や企画力を発揮すること」。. 引用文献. 新井肇 2006 インシデント・プロセス法の教師のバーンアウト予防効果に関する研究・兵庫教育大 学生徒指導研究会 生徒指導研究第17号 兵庫教育大学生徒指導講座 26−37 有村久春 !999 生きる力を育む全校指導体制の確立 大石勝男編 喫更実践に学ぶ”特色ある学校づ. くり「生徒指導」編 教育開発研修所 28−32. 学校と関係機関との行動連携に関する研究会 2005学校と関係機関等との行動連携を一層推進する ためにく概略〉文部科学省初等中等教育局児童生徒課 生徒指導上の諸問題の現状と文部科学省の 施策について 221−225 学級経営研究会 2000 学級経営をめぐる問題の現状とその対応一関係者間の信頼と連携による魅力 ある学級づくり一 学級経営の充実に関する調査研究(最終報告書)文部省委託研究 原田信之 2003 生徒指導の領域論と機能論 原田信之(編)心をささえる生徒指導 ミネルヴァ書 房 7−19 秦 政春 1999 一人ひとりの教師が単独で行うには限界 秦政春 改訂版 生徒指導 放送大学区 育振興会 300−304 秦 政春 2004 [生徒指導・進路指導]実践チェックリスト 教育開発研究所 144−145. 出歯2002学校の生徒指導体制と家庭・地域との連携高橋超編生徒指導・進路指導116−131 兵庫県立教育研修所 1987 校内研修に関する調査研究一教員の資質向上に関連して一 兵庫県立教 育研修所 研究紀要98集 67−90 石井眞治 2002 生徒指導のための学校体制 松田文子・高橋超 生きる力が育つ生徒指導と進路指 導 北大路書房 228−246 石隈利紀 1996学校教育における援助システムと援助コーディネーションー教師・保護者・スター ルカウンセラーの効果的な連携をめざして一 河合隼雄(編) こころの科学70号 日本評論社 2−10. 岩淵 健 1990 校内の生徒指導体制づくりの留意点 岩城信一 新生徒指導読本 教育開発研究所 144−149. 児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議 1998 学校の「抱え込み」から開かれた「連携」 へ一問題行動への新たな対応一 一29一.
(10) 小学校における生徒指導の現状と課題. 神保信一 1995 不登校対応校長教頭も学校組織全体で機能する体制 神保信一 不登校への対応と 予防 金子書房 97−120 國分康隆・門田美恵子 1996 養護教諭を中心に教職員問の連携をよくし校内体制 國分康隆・門田 美恵子 保健室からの登校 不登校児への支援モデル 誠信書房 国立教育政策研究所 1984 教育研究の役割 国立教育研究所内教育研究の役割研究委員会(編)教 育制度・内容・方法の改革における教育研究の役割に関する実証的総合研究 国立教育政策研究所生徒指導研究センター 2005 学級運営の在り方についての調査研究報告書 10 牧 昌見 1988 研修全体における校内研修の位置づけ 岩城信一 校内研修読本 教育開発研究所 12一ユ8. 丸山綱男 2004 研究・研修目的への意識の統合と協働体制の大切さ 高階玲治(編)教職生活安心. BOOrけんしゅう”編 教育開発研究所 96−101 丸山義王 1999 生徒指導に関する研修のあり方 落合恵(編)全訂生徒指導読本 教育開発研究所 134−137. 丸山祐二 1988 全校的研修の意義と留意事項 岩城信一 校内研修読本 教育開発研究所 192− 197. 松田素行1998「生徒指導部」の改善一機能する生徒指導部づくりをどう進めるか一大石勝男・飯 田稔(編)問題行動への対応 いま、学校は何をすべきか 東洋館出版 164−167 望月茂 1987校内研:修における協働化に関する実証的研究一研修テーマの設定手順を中心として兵 庫教育大学大学院学校教育研究科修士論文(未公刊) 文部科学省 2004 児童生徒の問題行動対策重点プログラム(最:終まとめ)について. 文部科学省 2005「中央教育審議会 義務教育特別部会 文部科学省 2006 生徒指導上の諸問題の現状について 文部省 1981 生徒指導の手引 改訂版 大蔵省印刷局 1−7 文部省 1982 生徒指導資料第1集 児童の理解と指導 小学校編 大蔵省印刷局 、. 文部省 1986 臨時教育審議会 第2次答申 文部省 1987 教育職員養成審議会 答申. 文部省 1988a 生徒指導資料集第20集 生活体験や入間関係を豊かなものとする生徒指導 中学. 校・高等学校編大蔵省印刷局16 文部省 1998b 小学校 学習指導要領 大蔵省印刷局 文部省 1998c 中学校 学習指導要領 大蔵省印刷局 永田繁雄 2002 研修をどう充実すればよいか 宮川八面(編) 新しい生徒指導への経営戦略 教育 開発研究所 162−165. 中元順一 1994 生徒指導の指導体制 坂本昇一(監)生徒指導の機能を生かす ぎょうせい 239 −251. 中山憲治 2002 生徒指導の体制 坂本 昇一・比留間一成 u子どもをとりまく問題と教育 第16巻 生徒指導のあり方” 開隆堂出版 192−214. 大石勝男 1980 校内の連携をダメにする9章 月刊生徒指導編集部 生徒指導・連携の実際 学事出 一30一.
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