教科書に描かれている父親の役割 : 家庭科と他の教科に表われた父親の役割の比較を通して
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第57巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.57,No.1. 平成18年8月 August,2006. 教科書に措かれている父親の役割 一家庭科と他の教科に表われた父親の役割の比較を通して−. 岡 田 みゆき. 北海道教育大学旭川枚家政教育講座. RoleofFatherin Textbook. −ComparisonofFatheringrolesbetweenHomeEconomicsEducationandtheotherSubjects− OKADA Miyuki DepartmentofHomeEconomics,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 要 旨 男女共同参画社会の推進に向けて,教育がどのような父親を碇示することで対応しているのか,最もその 対応を重視してきた家庭科がどのように貢献しているのかを明らかにするために,家庭科の教科書に表われ た父親と他の教科書に表われた父親を調査し,比較検討した.. その結果,父親の描き方は教科によってかなり異なっていた.家庭科と生活科の教科書では,家事を進ん で行う家庭的な父親や乳幼児の世話をする養護的な父親を理想とし,類似した父親を提示していた.一方, 国語と道徳の教科書では,性役割分業意識に基づいた仕事中心で,権威をもって子どもの教育やしつけに関 わる父親を理想として描かれていた.社会では,性役割分業意識に基づいた仕事中心の父親を描きながらも,. それを批判する記述も見られた.男女共同参画社会の推進の立場からこれらの教科書を考えるならば,家庭 科と生活科の教科書は,この立場に立って父親を描いているといえるが,国語や道徳の教科書では,この立 場から父親を描いている作品を取り上げていなかった.. 1.研究の背景と研究の目的 現在,出生率を上げ,子育ての環境改善を目指. は,特に家庭科が男女共同参画社会に向けて重安 な役割を果たしている.平成元年(1989)の学習 指導要領2 ̄4)では,男女が共同で家庭生活を築く,. すために,従来の固定的な役割分業にとらわれる. 女性の社会進出,男性の家事・育児を促進する教. ことなく,両親が共に社会生活と家庭生活に責任. 育が行われが).新学習指導要領(1999)6 ̄8)でも,. を持つという男女共同参画社会を,国は,政策と. 家族の人間関係や子育ての意義の内容を充実する. 教育の両方から,推進している1).教育において. とされている.特に,そこでは,男性つまり父親. 249.
(3) 岡 田 みゆき. 意識を変革していこうと言う意図が見られる.ま. 家庭科の教科書では,性別役割分業的な表現は排. た,父親のあり方が社会でも問題視され,また大. 除されていることを酒井(1995),鎌田他(1999). きく変化していると指摘されている9)10). が明らかにした.高等学校英語教科書では,家事. しかし一方で,2001年,2002年の日本家庭科教. 育学会「家庭生活についての全国調査」11)では, 「子どもたちの固定的な役割分業意識は薄くなっ. てはいるが,底流にある.」と報告されている. また,大学生の抱く父親像について調査した山. を担う男性像は認められるが,育児や介護をする 父親像は見られないと加藤(1999)19)は報告して. いる.また,氏原(2001)20)は,副読本を使って, 直接的に男女平等教育を行うことの効果を指摘し ている.. 添12)は,大学生は決断に迫られた時等の非日常. このように,今までは男女性別役割意識に基づ. 的状況で,父親が精神的に強いことを望んでいる. く父母が教科書で取り上げられていたが,最近で. と結論付けている.深谷・森川13)も,子どもた. は変わってきていることが推定される.. ちは,道具的なリーダーとしての父親像を認識し ていると報告している.. さらに,岡田14)が,2003年,大学生1・2年. そこで,本研究では,男性の家事・育児を促進. する教育が碇唱された平成元年(1989)の学習指 導要領以降に検定された教科書に表われた父親を. 生に行った実際の親像,理想の親像に関する調査. 検討することを通して,教育が,男女共同参画社. では,女子学生は理想の母親像を現実の母親から. 会の推進に向けてどのように貢献しているか,ま. 獲得し,理想の父薫別こもこれらに近い像を描いて. た,家庭科の教科書に表われた父親と他の教科書. いるが,男子学生は,理想の父親像を現実の父親. に表われた父親を比較検討することを通して,男. からはあまり得ておらず,この像も母親像とは異. 女共同参画社会の推進に向けて,家庭科がどのよ. なるものであることを報告している.つまり,男. うな役割を果たしているのかを明らかにしたい.. 子学生は女子学生よりも,性役割分業意識を強く もっていることを報告している. このことは,教育では,父親の意識変革を求め. 2.研究の方法. ようとしているが,現実には旧態依然の父親像を. (1)研究内容. 子どもが描いていることを示している.そこで,. ① 男女共同参画社会の推進に向けて,家庭科. 男女共同参画社会の推進のために,教育が,近い. がどのように父親を碇案しているかを検討す. 将来家庭を作るだろう若者にどのような影響を与. るため,家庭科の教科書における父親の記述. えているのか検討することは重要であると思われ. を分析した.. る.そのため,生徒に最も影響を及ぼす教科書を. ② 他の教科書ではどのように父親を描かれて. 取り上げ,そこに描かれている父親に着目したい.. いるかを検討するため,父親の記述が認めら. これまで,伊藤ら15),久保16),酒井17),鎌田. れた国語,社会,道徳,生活科の教科書にお. 他18)は,家庭科の教科書における男女の役割に. ける父親の記述を分析した.そして,男女共. ついて研究している.伊藤らは,1985∼1989年の. 同参画社会の推進に向けて,教育がどのよう. 小学校家庭科および中学校技術・家庭の教科書の. に貢献しているか,とりわけ家庭科がどのよ. 挿絵や写真には男女の固定的な役割を描いたもの. うな役割を果たしているのかを明らかにする. が多いことを明らかにした.久保は1951∼1957年. ために,家庭科の教科書に表われた父親と他. までの中学校技術・家庭の教科書には性別役割分. の教科書に表われた父親を比較検討した.. 業の記述が多く,男性は仕事,家庭の団欒,レク リエーションについての記述だけに登場している. (2)分析対象資料. ことを指摘している.男女共修になった高等学校. 分析資科として用いた教科書は,表1に示す通. 250.
(4) 教科書に措かれている父親の役割. りである.分析対象は,男女が共同で家庭生活を. いて分析した.本文中の父親に関する表記と,図. 築く,女性の社会進出,男性の家事・育児を促進. や挿絵とでは性質を異にするものである.文字と. する教育が提唱された平成元年(1989)の学習指. 絵の違いがあるだけではなく,本文が本質的な解. 導要領以降に検定された教科書とした.. 説であるのに対して,図表は補助的参考のための 資料である.しかしながら,教科書では文字で表. (3)分析方法. されている内容は少なく,挿絵は言葉で表現され. 教科書の中の父親の表記を本文,図,挿絵につ. ていない父親の役割を具体的に顕す手段として使 表1 調査資料. 教科. 学. 年. 教科書名,出版社,発行年. 「国語 2上,2下,3上,3下,4上,4下,5上,6上,6下」 教育出版 平成7年検定,9年発行 小学校1,2,3,. 「新編 新しい国語 二上,三上,四上,四下,五上,五下,六上,六下」 東京書籍 平成7年検定,9年発行. 4,5,6年. 「こくご 二上,二下,三上,三下,四上,四下,五上,五下,六上,六下」. 国 語. 光村図書. 平成7年検定,9年発行. 「わたしたちの小学校国語 1下,2上,2下,3上,3下,4上,4下,5上, 5下,6上,6下」 日本書籍 平成7年検定,9年発行 中学校1,2,3年. 小学校3,4, 5,6年. 社 会 中学校. 小学校1,2年 道 徳. 「中学国語1,2,3」. 教育出版. 「新編 新しい国語1,2,3」. 東京書籍. 平成8年検定,9年発行 平成8年検定,9年発行. 「社会 3上,3下,4上,4下,5上,5下,6下」 教育出版 平成7年検定,9年発行 「新編 新しい社会 3上,3下,4上,4下,5上,5下,6下」 東京書籍 平成7年検定,9年発行 「中学校社会 公民」. 教育出版. 平成8年検定,9年発行. 「新編 新しい社会 公民」. 東京書籍. 平成8年検定,9年発行. 「なかよし」. 香川県小学校道徳教育研究会. 平成10年発行. 3,4年. 「ともに生きる」 香川県小学校道徳教育研究会. 平成10年発行. 5,6年. 「わたしのいく道」香川県小学校道徳教育研究会. 平成10年発行. 「みんなのせいかつ1ねん,2ねん」 学習研究社 平成3年検定,6年発行 「せいかつ1,2」. 教育出版. 平成7年検定,9年発行. 大阪書籍. 平成7年検定,9年発行. 「わたしたちのせいかつ1ねん,2ねん」. 「新編あたらしいせいかつ①,②」 東京書籍 生活科 小学校1,2年. 平成7年検定,9年発行. 「しょうがっこうせいかつ1ねん,2ねん」 学校図書. 平成7年検定,9年発行. 「みる しらべる つくる せいかつ1,2」 日本文教出版 平成7年検定 9年発行 「新版 たのしいせいかつ1,2」. 大日本図書 平成7年検定,9年発行. 「しょうがくせいのせいかつ みる しらべる つくる1,2」 中教出版 小学校5,6年. 家庭科. 中学校. 高等学校. 平成7年検定,9年発行. 「わたしたちの家庭科5,6年」. 開隆堂. 平成7年検定,8年発行. 「新しい家庭5,6年」. 東京書籍. 平成7年検定,8年発行. 「技術・家庭(上・下)」. 開隆堂. 平成7年検定,9年発行. 「新しい技術・家庭(上・下)」. 東京書籍. 平成7年検定,9年発行. 「家庭一般」. 開隆堂. 平成10年検定,12年発行. 「家庭一般」. 東京書籍. 平成9年検定,12年発行. 「家庭一般」. 実教出版. 平成9年検定,12年発行. 251.
(5) 岡 田 みゆき. われている.教科書を使用する児童・生徒はそこ. 父親も違ってくると考え,学年に分けて示した.. から,具体的な父親の役割をイメージすると考え られるだけに,影響力は文字と比べ格段に小さい わけではないと予想されるので,同じく分析対象. 3.結果と考察. とした.しかし,性質は異なるものであるので,. (1)家庭科の教科書に表われた父親. 本文,図,挿絵に分けて提示した.. 表2に,小学校,中学校,高等学校の家庭科の. また,子どもの年齢によって,父親と子どもと の関係は異なるため,当然,教科書に表現される. 教科書に表われた父親を示した.. 小学校の教科書では,家事をしている父親が最. 表2 家庭科の教科書に表われた父親. 学 年 出版社. 父 親(表・挿絵). 父 親(本文). 収入を得る仕事をする. 家庭についての仕事をする.. 開隆堂. 幼児と遊ぶ.幼児にごはんを食べさせる.オ ムツを替える.子どもとお風呂に入る.乳児 をあやす.夕食の後片付け.掃除.食事作り. 部屋の整理整頓.風呂洗い.布団干し.ごみ. 糾し.買い物.病人の世話.PTAや地域へ の仕事.家族と団らん.家族とピクニック. 家族と食事.(挿絵). 小学校. 収入を得る仕事をする. 家庭についての仕事をする.. 食事作り.食器洗い.部屋の整理整頓.便所 の掃除.風呂洗い.布団干し.ごみ出し.動. 物の世話.買い物.病人の世話.PTAや地 東京書籍. 開隆堂 中学校. 東京書籍. 域への仕事.(表) 幼児にごはんを食べさせる.乳児をあやす. 子どもとお風呂に入る.子どもと一緒に出勤 する.夕食の後片付け.(挿絵) 子どもとの温かい触れ合いを通して,他人へ 家庭の仕事をする.仕事に忙しい.毎晩帰宅 の信頼感や愛情などの基本的な情操を育て が遅い.(表) る. 赤ちゃんをあやす.赤ちゃんを抱く.子ども 家庭の経済活動を維持する. と遊ぶ.子どもと会話する.掃除.食事の後 片付け.食事を作る.買い物.ごみの始末. 洗濯.(挿絵) 幼児の成長に大きな影響を与える. 保育に関わる. 子どもが自分の動作をまねる.. 仕事をする.子どもに笑いかける.子どもに 絵本を読む.子どもと遊ぶ.子どもを抱く. 子どもと花壇の手入れをする.乳母車を押す. 食事の後片付け.布団を干す.地域のバザー に参加する.家族と食事する.家族で遊ぶ.(挿 絵). 開隆堂. 協力して,仕事,家事,育児,介護の責任を 男は男らしく,女は女らしく育てることに 果たす.性別役割分業意識を持たない.育児 85%賛成.(図)家事の時間30分.(表) 休業制度を活用する.育児における母親の不 出産に立ち会う.子どもと会話する.子ども 安や負担を軽減する.保育園に迎えに行く. と遊ぶ.家族で一緒に食事を作る.家族と食 事をする.(挿絵) 協力して,仕事,家事,育児,介護の責任を 労働時間(9時間29分)が長い.(図) 果たす.性別役割分業意識を持たない.育児 赤ちゃんを抱く.おしめをかえる.子どもに 休業制度を活用する.育児における母親の不 食事を食べさせる.子どもが甘える.子ども. 高等学校. 東京書籍. 安や負担を軽減する.子どもと共に生きる.. 子どもと共に学ぶ.子どものモデルになる. 子どもの接触に心掛ける.地域と交流する.. 実教出版. 協力して,仕事,家事,育児,介護の責任を 妻には再就職(44.2%),専業主婦(30.4%) 果たす.性別役割分業意識を持たない.育児 を願う.結喪昏によってお金が減る(49.7%). 休業制度を活用する.労働時間が長い.子ど 結衆昏によってやりたいことが制約される. もとの接触が少ない.地域の活動に参加しな (47.6%).家事時間(32分).(図). い.. 252. 子どもに本を読む.家族と食事をする.家族 と団らん.地域の行事に参加する.(挿絵).
(6) 教科書に措かれている父親の役割. も多く挙げられていた.その仕事の内容は,食事. 仕事に忙しい父親の実態がそのまま表記されてい. 作り,掃除,病人の世話,地域活動の参加と広範. るが,高等学校では,それが子どもや家族との関. 囲であり,表や挿絵で示されている.文章では,「家. わりが少なくなる原因,あるいは家事に関わる時. 族の一員として家庭の仕事をする必要がある」の. 間が少ない理由として,批判的に取り上げられて. みで,具体的な内容に関しては記載されていな. いた.そのため,こうした性役割分業意識を持た. かった.中学校の教科書では,小学校と同様に,. ないことや,育児休業制度を活用することが奨励. 家庭の仕事をしている父親が挿絵で,本文も同じ. されていた.. ように示されていたが,その頻度はかなり少なく. さらに,妻との関係についても,高等学校の教. なる.高等学校の教科書ではほとんど扱われてい. 科書では若干であるが記載されていた.育児にお. なかった.. ける妻の不安や負担を軽減する役割を果たした. 一方,子どもとの関係においては,どの学年の 教科書にも父親は取り上げられていた.ただし,. その子どもの年齢は低く,乳幼児の世話をしてい. り,妻の再就職に関して理解を示したりすること が奨励されていた. このように,家庭科の教科書では,乳幼児の世. る父親が大半を占めていた.ご飯を食べさせたり,. 話をする父親がすべての学年で取り上げられ,養. あやしたり,お風呂に入れたりするなど,乳幼児. 護的な父親が理想として示されていた.また,小. の世話をする養護的な父親が取り上げられてい. 中学校の教科書では,家事を進んで行う家庭的な. た.特に,小学校の教科書では,すべてが乳幼児. 父親も理想として取り上げられていた.しかし,. で小学生以上の子どもは登場しなかった.しかし,. こうした養護的,家庭的な父親が少なく,家事や. 学年が進み,中学校,高等学校の教科書では,子. 育児の責任を果たせない状況に対して,高等学校. どもと遊んだり,絵本を読んであげたり,一緒に. では批判的にとらえ,性役割分業意識の持たない. 花壇の手入れをしたりするなど,小学生くらいの. ことや,仕事,家事,育児,介護の責任を二人が. 子どもも登場し,子どもと楽しく活動する様子が. 共同して果たすことを奨励していた.男女共同参. 描かれていた.ただし,子どもに教える,子ども. 画社会を推進する立場から父親をとらえているこ. を指導するといった父親は登場しない.また,子. とがわかる.. どもと一緒に家事をしている姿もあまり見られな かった.. 家族との関係においては,家族みんなでピク. (2)国語の教科書に表われた父親. 表3に,小学校,中学校の国語の教科書に表わ. ニックに行っている様子や,家族で食事をしたり,. れた父親を示した.()には,それを取り上げ. 団欒したりしている様子が,若干ではあるが,ど. た出版社も明記した.. の学年の教科書にも見られた.. 父親自身としては,仕事をするという父親が描. 小学校2年から中学校3年まで,多くの学年で 表わされているものに,仕事をする父親が挙げら. かれていた.小学校の教科書では,本文中に,収. れる.熱心に仕事をする父親,仕事に忙しい父親,. 入を得る仕事をするという表記で取り上げられて. 会社への出勤の様子など,父親が作品に取り上げ. いた.中学校の教科書では,仕事に忙しい,毎晩. られる場合,仕事をする父親が最も頻繁に出てく. 帰宅が遅いという父親の実態が表や挿絵で示され. る.働いている姿が父親の一般的なイメージとし. ていた.ただし,本文には取り上げられていなかっ. て,国語の教科書には表現されている.. た.高等学校の教科書では,仕事の責任を果たす. 次に,父親が作品の中に頻繁に取り上げられて. と同時に,労働時間が長い実態について,本文に. いるのが,子どもとの関係においてである.1つ. 記載されていた.実際,その労働時間(9時間29. は,子どもが良いことをしたら褒め,悪いことを. 分)が図にも示されていた.つまり,中学校では,. したら叱る,また,子どもを諭したり,子どもに. 253.
(7) 岡 田 みゆき. 注意を与えたり,子どもの行動に許可を与えたり. て父親が描かれていた.また,学年が上がるに連. するなど,子どもを指導する立場として,父親の. れて,子どもに人間の生き方を示すなど,男性の. 姿がどの学年においてもよく見られた.その一方. モデル,人間としてのモデルとしても父親が描か. で,中学年では,子どもの考えを尊重し,命令す. れていた.. るのではないが,自分の考えや意見を言う人とし. 2つ目として,子どもに教える父親が,よく描. 表3 国語の教科書に表われた父親 学 年. 小学校1年 小学校2年. 父. 親(出 版 社). 体が大きい.子どもとお風呂に入る.息子と妹のためにいすを作る.子どもを褒める.庭の片づけ. をする.(日本書籍). 仕事をする.(教育出版,日本書籍)子どもに仕事を手伝わせる.子どもと話をする.(教育出版) 息子と食事を作る.(東京書籍) 子どもに注意をする.子どもから尊敬される.子どもに教える.. 子どもと町へ出かけて楽しむ.(光村図書) 会社に出かける.新聞を見る.子どもの質問に答える.. 子どもとお風日に入る.子どもをだっこする.(日本書籍). 小学校3年. 仕事をする.(教育出版,光村図書,日本書籍) 力強い.(教育出版,光村図書) 子どもを褒め る.(教育出版,東京書籍) 子どもとお風呂に入る.(教育出版,日本書籍) 子どもから信頼さ れる.子どもに仕事を手伝わせる.子どもに礼を言う.大きい声.(教育出版) 子どもと仕事を. する.子どもを褒める.子どもを諭す.(東京書籍) 低い声で話す.待っている子どものところ. に帰る.子どもに教える.家族で先祖の墓参りをする.子どもに子どもの頃の話をする.(光村図書) 子どもの成長を期待し,初めて立ったことを喜ぶ.いばる.(日本書籍). 小学校4年. 小学校5年. ため息をつく.子どもに高い高いをする.子どもをだく.子どもに笑いかける.子どもに花をあげ る.(教育出版,東京書籍,光村図書,日本書籍) 子どもをしかる.(教育出版,東京書籍) 子 どもを勇気付ける.(教育出版) 食べ物を独り占めする.子どもに注意する.子どもに教える. 子どもと遊ぶ.子どもに本をあげる.(光村図書) 笑う.仕事に州かける.子どもとお風呂に入る. 子どもに自分の意見を言う.食事のあいさつを言う.家のテーブルを作る.(日本書籍) 子どもに教える.(東京書籍,光村図書,日本書籍) 寂しそうにお茶飲む.(光村図書,日本書籍) 仕事をする.(教育出版,光村図書) 子どもに人間の生き方を示す.(教育出版,東京書籍) 子 どもにお土産をわたす.(教育出版) 健康のためにお酒を控える.子どもに注意する.子どもを. 心配する.子どもの言うことを聞かない.子どもと出かける.子どもに笑いかける.子どもに買い. 与える.(光村図書) 子どもを諭す.子どもに自分の意見を言う.子どもの頭をなでる.子ども に祖父の思い出話をする.(日本書籍). 小学校6年. 中学校1年. 子どもに人間の生き方を示す.(教育出版,東京書籍,光村凶書,日本書籍) 仕事を受け継ぐ.(教 育出版,東京書籍,光村図書) 熱心に仕事をする.弱音をはかない.子どもから尊敬される.子 どもに教える.(東京書籍,光村図書,日本書籍) 子どもに自分の意見を言う.子どもに子ども の頃の話をする.(教育出版,日本書籍) 自慢しない.(東京書籍,光村図書) 子どもに静かに 注意する.子どもに許可を与える.(東京書籍,日本書籍) 子どもをどなる.(教育出版,光村図 書)疲れたという.ぼうぜんと立ちすくむ.先祖のものを大切にする.子どもに拳骨をはる.子ど もの言うことを聞かない.子どもに肩車をする.子どもの手を引く.子どもにせがまれる.(教育 出版) 子どもに仕事を見せる.子どもを励ます.子どもと山登りをする.(東京書籍) 長い間, 出張する.お酒を飲む.涙を浮かべる.食事の要望をする.子どもを諭す.子どもを思う.子ども の質問に答える.(光村図書) 仕事で忙しい.硬い手のひら.写真をとる.子どもにプレゼント する.(日本書籍) 仕事をする.大声をあげる.涙を流す.子どもと遊ぶ.(教育出版,東京書籍) はげている.お 腹が出ている.グレーの背広.付き合いゴルフ.パチンコ.子どもから敬遠されている.子どもを. しかる.子どもと話す.お土産も持って帰る.酒を飲む.子どもに子どもの頃の話をする.(教育. 出版) 子どもを気迫う.子どもを背負う.(東京書籍) 子どもをしかる.(教育出版) 会社に行く.熱心に仕事をする.たくましい筋肉.頼もしい声. 中学校2年 . お茶を飲む.お風呂に入る.怒る.子どもに教える.子どもから尊敬される.子どもと話す.(東 京書籍). 中学校3年. 254. 仕事をする.子どもと話す.(教育出版,東京書籍) 弱音をはかない.子どもに仕事を見せる. 子どもに人間の生き方を示す.子どもに許可を与える.子どもから尊敬される.子どもの相談にの る.子どもに自分の生い立ちを話す.子どもからしがみつかれる.(教育出版) 怒る.厳しい. やさしい.涙を流す.家長.叫ぶ.タバコを吸う.不在.子どもの願いを聞き入れる.子どもをし かる.家族を指示する.(東京書籍).
(8) 教科書に措かれている父親の役割. かれている.子どもとの会話や活動,あるいは一. グレーの背広,付き合いゴルフ,酒を飲む,タバ. 緒に仕事をすることを通して,知識や文化,社会. コを吸うといった仕事から派生したものが父親を. の出来事を伝えている.子どもの質問に,丁寧に. 表わす表現になっていた.やさしい,涙を流すな. わかりやすく答えている様子がよく見られる.. ど養護的な表現は少なかった.. 3つ目として,子どもと一緒に活動している父. このように,父親は,第一に仕事をする人,さ. 親も描かれている.小学校低学年に多いのが,子. らに仕事から派生したイメージで作品の中に描か. どもと一緒にお風呂に入る父親の姿である.また,. れていた.これは,1985年,1987年の検定の小学. 自分の仕事の手伝いをさせたり,子どもと一緒に. 校国語教科書を調査した結果と同様である15).. 家庭内の仕事をしたりするのも低学年に多かっ. 子どもとの関係においては,道徳的な役割,教育. た.それが,学年が上がるに連れて,自分の仕事. 的な役割,社会や祖先との関係を語る役割を果た. を見せることのほうが多くなる.また,子どもと. す存在として描かれていた.そして,父親は権威. 話したり,教えたりすることが多く,子どもと一. 主義的で,体力的に強いイメージとしても描かれ. 緒に活動を楽しむことが減ってくる.また,全体. ていることが多かった.つまり,性役割分業意識. を通して,子どもと一緒に遊ぶ姿は少なかった.. に基づいた仕事中心で,権威をもって子どもの教. 4つ目として,自分の生い立ち,親戚や先祖を. 育やしつけに関わる父親を理想としていることが. 語る存在として父親が描かれていた.子どもと,. わかる.しかし,家事を進んで行う家庭的な父親. あるいは家族で旅行する様子が描かれている場. や,子どもと楽しく活動したり,幼児の面倒をみ. 合,父親の実家に帰り,仏壇に手を合わせている. たりする養護的な父親を国語の教科書の中でみる. ものやお墓参りに行っている内容がほとんどであ. ことは,非常に少なかった.このことは,男女共. る.また,自分が子どものときの話を子どもに聞. 同参画社会を推進する立場から家庭内の仕事を分. かせる場面や祖父も父も自分も通っている学校な. 担し,育児に深く関わる父親を理想としている家. どといった表現も見られた.自分たちが先祖から. 庭科とは,大きく異なるものであるといえる.. 続いていること,あるいは家族の歴史などを子ど もに語る人として,父親が描かれていた.. さらに,子どもが父親についてどのような感情 を示しているかについても,描かれている.尊敬 する人,弱音をはかない人というように,父親は. (3)社会の教科書に表われた父親. 表4に,小学校,中学校の社会の教科書に表わ れた父親を示した.. 小学校の教科書において,父親があげられてい. 子どもから信頼され,良いイメージとして描かれ. るのは,働く父親の姿あるいは父親が仕事につい. ていた.しかし,その一方で,厳しい,威張る,. て話した内容が大部分であった.そこには,様々. 怒鳴るなど子どもから敬遠され,怖いイメージと. な職業があげられているが,それらすべては,実. しても描かれていた.. 際の社会を反映したもので,産業,経済活動の中. 家族との関係においては,家長,家族を指示す. で大半を男性が占める職業のみであった.いわゆ. る,食事の挨拶を言う,食事の要望をするなど,. る看護士,保育士,小学校教諭などの職業には,. 権威主義的な父親が描かれていた.しかし,お土. 父親が登場しなかった.女性が登場するのは,工. 産を持って帰る,家族のために家のテーブルを作. 場や文化センターの案内係,スーパーで品物を並. るなど,数は少ないが家庭的な父親も描かれてい. べる人,警察官(東京書籍,教育出版),報道担. た.. 当記者(東京書籍),観光課の人(教育出版)で, 父親自身としては,体が大きい,たくましい筋. それも若い女性に限られ,母親の職業としては,. 肉,大きい声,低い声,硬い手のひらというよう. スーパーのレジのようなパート労働のみであっ. に体力的に強いイメージで描かれていた.また,. た.また,女性が,働く人として登場しているの. 255.
(9) 岡 田 みゆき. は全体の1割にも満たないのが現状である.つま. 子どもと話す時間が取れない,あるいは家事がで. り,働いている姿が父親の一般的なイメージとし. きない状況にあるととらえられている.小学校と. て,社会の教科書には表現され,その職業も実際. 同じように,働いている姿が父親の一般的なイ. の社会の状況を示したものであった21).. メージとして描かれている.ただし,単身赴任の. そのほか,小学校の教科書においては,子ども. ためめったに帰らない,家事は女性の仕事だと. あるいは家族との関係において,父親が若干登場. 思っているなど本文に記載されたり,図では,家. する.子どもとの関係においては,子どもと話す,. 庭の仕事の分担が極端に少ない現状や仕事に生き. 子どもに仕事をしている自分を見せるなど,子ど. がいを持っていることを数値で示したり,仕事中. もに教えるといった教育的な要素を含んでいる場. 心の生活が浮き彫りにされている.父親の現状を. 合が多い.家族との関係においては,ドライブや. 批判的に描いていることがわかる.さらに,家事. 運動をするなど家族で楽しむレジャー的な要素を. をする,育児休暇が取れるようになったなどが本. 含んでいるときに父親が登場する.. 文に記載されたり,料理を作る父親の姿が写真に. 中学校教科書では,父親は仕事に忙しいため,. 掲載されたり,父親の家事や育児の参加を奨励す. 表4 社会の教科書に表われた父親 学 年. 出版社. 教育出版 小学校3年. 父. 働く父親の話(地区のセンター長,スーパーマーケットの店長,商店街の会長) 本文 子どもと夕日を見て話す.子どもと車で出かける. 挿絵 子どもの頃の話を子どもにする. 働く父親の姿(トラックの運転手,工場長,やおやさん,農家,漁師). 東京書籍 本文 教育出版. 親. 本文 挿絵. 4年. 東京書籍 本文. 働く父親の話(児童センター長,スーパーマーケットの店長,商店街の会長,工. 場で働く人,農家,農業協同組合の人). 働く父親の話(農家,市役所の人,林業の人,酪農家,漁師). 働く父親の姿(音争水場の人,ダムの人,ごみ収集作業の人,清掃工場の人,水道. 局の人). 働く父親の話(音争水場の人,警察の人,ごみ収集作業の人,清掃工場の人,消防 署の人,生活工芸館の人,役場の人,農家) 子どもに,森の大切さを話す.. 教育出版 挿絵. 働く父親の姿(農家,農業試験場の人,土地改良区の人,漁業協同組合の人,漁 師,水産加工の人,工員,海外工場の指導員,和紙作りの人,トラックの運転手, ターミナルで働く人,取材記者,役所の人,営林署の人). 東京書籍 本文. 働く父親の姿(農家,農業試験場の人,養豚場の人,栽培漁業の人,漁師,工場 の人,たたみ職人,大工,焼き物工房の人,研究所の人,トラックの運転手,中 央卸売市場で働く人,水産会社社長,テレビのデイレクター,取材記者,役所の 人,森林組合の人,営林署の人) 真剣な顔をして,田植え機を運転する.仕事をする. 自分の夢を子どもに語る.自分の仕事の様子を子どもに見せる. 仕事に忙しい.仕事で疲れている.家族とドライブする.家族と運動する.. 5年. 教育出版 本文 働く父親の話(裁判所の人) 6年. 東京書籍 本文 働く父親の話(町長さん,議員さん) 仕事に忙しい.単身赴任で,めったに帰らない. 子どもから将来や進路のことについて相談される.. 本文 教育出版. 図. 株主総会について,子どもに説明する.未成年の子どもに結婚を承認する. 子どもの親権は,母と共に共同して行う.. 中学校. 生きがい(仕事30%,家族29%,趣味26%) 家庭の仕事の分押(掃除2%,洗濯1.4%,買い物2.5%,食事作り0.9%) 本文 東京書籍. 家事は女性の仕事だと思っている. 写真. 256.
(10) 教科書に措かれている父親の役割. る表現が若干ではあるが見受けられた.つまり,. (4)道徳の教科書に表われた父親. 小学校では,仕事をする父親が好意的に善かれて. 表5に,小学校の道徳の教科書に表われた父親. いるのに対し,中学校では,それがあまり過度で. を示した.. あると批判的に善かれ,父親を描く様相が異なっ. 父親が道徳の教科書に登場することは全体的に 少なく,特に低学年の教科書にはほとんど父親は. ていた. このことから,社会の教科書では,家庭の中,. 登場しなかった.しかし,その中でも,最も多く. あるいは産業,経済活動の中で,父親は仕事に忙. 挙げられているのは,働く父親の姿である.朝早. しく,母親は家庭を守るという役割分業をしてい. くから夜遅くまで働く,日曜日も働くなど仕事に. る現状を描いていた.ただし,小学校の教科書で. 忙しい父親の様子が描かれていた.また,額から. は,それを無批判に取り入れているのに対し,中. 汗を流して,フーフ一言いながら仕事をするなど,. 学校の教科書では批判的に描いており,家庭科で. その仕事は大変で,ときには肉体労働も含んでい. 求めている養護的,あるいは家庭的な父親を理想. ること,そして父親は一生懸命その仕事に従事し. とする父親のイメージに接近しようという意図が. ていることなど,忙しい仕事の状況をより具体的. 見られた.男女共同参画社会を推進しようという. に,イメージしやすいように描かれていた.やは. 政府の方針を意識した配慮であると考えられる.. り,道徳の教科書でも,働いている姿が父親の一 般的なイメージとして,表現されていた.. 表5 道徳の教科書に表われた父親 学年. 1年. 父. 親(本 文). 子どもをほめる.鉛筆をけずる.筆箱を買ってあげる.家をつくる.. お父さんは,おじいちゃんに似ていて,ぼくはお父さんにそっくり.. 2年 願いをこめて,大切な子どもに名前をつける.. 3年. 会社から帰る.背広をぬぐ.毎日,朝早くから夜遅くまで働く.日曜日も働く.仕事をする. にこっと笑って,仕事に出かける.仕事に忙しい.ひたいからあせを出して,重いものを運ぶ. 大きな掛け声をあげる.うでの力癌をうくらます.おこづかいをあげる.冗談を言う. 子どもに約束させる.厳しい声で怒る.真っ赤な顔をして怒る.子どもが学校に行くことを許可する.. ねこを飼うことを認める.仕事の仕方を子どもに教える.子どものいうことを本気にしない.. 子どもと親戚の家に行く.子どもの達成したことをよろこぶ.子どもから慕われる. 子どもから助けられる.食べ物を集めに行く.ねこが嫌い. おじいさんも,お父さんも,ぼくもこの木の周りで遊んだ.. 4年. 5年. めずらしく,仕事から早く帰る.汗を流して,フーフ一言いながら,仕事をする. 家族のリーダーになる.大きな声をあげる.子どもの友だちをひどくしかる. 30年後,子どもの友だちにわびる.自分のあやまちを相手に伝える. 息子と一緒に家の力仕事をする.子どもに英語を教える.息子と海につりに行く. R本の美しさを子どもに伝える.子どもと一緒に蛍を見に行く.子どもと話す. 自分の子どもの頃の話を息子にする.子どもから質問され,説明する.息子と親戚の家に行く. 息子と一緒に校歌を歌う.父親と息子は同じ学校に通った.子どもから労われる. 「おれも年だな.疲れたよ.」と言う.お母さんにやさしくする. 酒を大切にする.ブランデーを飲む. 一生懸命仕事をする.仕事の話を子どもにする. 子どもの過ちの原因を子どもに考えさせる.子どものわがままをしかる. 子どもに責任感,規則を守る必要性,努力の大切さなど道徳を伝える.子どものほほをたたく.. 子どもに注意する.子どもに過った行動をした理由を聞く.子どもの行動を承認する.. 高山植物の大切さをしばしば話す.子どもに手伝いを頼む.子どもの話を静かに聞く. 暖かい手で,子どもの頭をなでる.子どもを励ます.. 6年. 仕事で忙しい.息子と共に,仕事の成功を喜ぶ.妻と仕事の話をする. 「今何をしなければならないかを,よく考えなさい.」と子どもに口癖のように言う.. 子どものために,黙ってお金を山す.子どもの様子を心配そうに見守る.子どもとドライブをする.. 妻の病気を心配する.妻の病気に付き添う.タバコを吸う.きちんと留守番をした子ども達を褒める.. 257.
(11) 岡 田 みゆき. 次に,父親が作品の中に頻繁に取り上げられて. な存在として父親が描かれていた.. いるのが,子どもとの関係においてである.特に,. 道徳の教科書であることから,道徳的な役割を果. このように,道徳の教科書においても,父親は,. たしている父親の姿が多く取り上げられている.. 第一に仕事をする人,それも大変な仕事を一生懸. 子どもが良いことをしたら褒め,悪いことをした. 命やっている人として描かれていた.子どもとの. ら叱る,また,子どもに約束させたり,注意を与. 関係においては,第一に道徳的な役割,そのほか. えたり,責任感,規則を守る必要性や努力の大切. 教育的な役割,社会や祖先との関係を語る役割を. さを伝えたりするなど,子どもを指導する立場と. 果たす存在として描かれていた.また,父親は家. して,父親の姿が描かれていた.さらに,子ども. 族の中心で,良き夫としても描かれていた.つま. をしかる際,厳しい声で怒る,真っ赤な顔で怒る,. り,性役割分業意識に基づいた仕事中心で,権威. ほほをたたくなど荒々しく厳しい父親と,その一. をもって子どもの教育やしつけに関わる父親を,. 方で,過った行動をした理由を聞く,「よく考え. 国語の教科書と同様に理想をしていることがわか. なさい」と言うなど冷静でやさしい父親の両方が. る.しかし,家庭科の教科書が頻繁に描いていた. 描かれていたが,前者のほうが多かった.. 家事を進んで行う家庭的な父親や,幼児の面倒を. 2つ目として,子どもに,英語や日本の美しさ. みたりする養護的な父親をみることはなかった.. や仕事を教える父親が描かれていた.子どもの質. 男女共同参画社会を推進する立場から父親をとら. 問に説明している描写も見られた.. えている家庭科とは,大きく異なるものであると. 3つ目として,あまり多くはないが,子どもと. いえる.. 一緒に活動している父親も描かれている.子ども と一緒に家庭内の仕事をしたり,子どもと話した. (5)生活科の教科書に表われた父親. りする様子が描かれていた.また,ドライブや釣. 表6は,生活科の教科書に表われた父親を示し. りに行くなど,子どもと一緒に活動を楽しんでい る姿も見られた.ただし,その活動は,娘より息 子と一緒の場合が多かった.. たものである.. 生活科の教科書の中で,父親が最も挙げられて いたのは,家族とレジャーを楽しんでいる場面で. 4つ目として,自分の生い立ち,親戚や先祖を. ある.家族で食事をしたり,旅行に行ったり,買. 語る存在として父親が描かれていた.子どもと親. い物をしたりするなど,半数以上がこうした家族. 戚の家に行く,自分が子どものときの話を子ども. で活動を行っているとき,家族の一員として楽し. に聞かせる,祖父も父も自分も通った学校や遊ん. んでいる父親が数多く描かれていた.また,家族. だ木などといった表現も見られた.自分たちが先. で一緒に家庭内の仕事をしている父親も,食事を. 祖から続いていることを子どもに語る人として,. 作る,掃除をする,洗濯をする場面で見られた.. 父親が描かれていた.. 5つ目として,子どもを見守る存在として父親. その次に多かったのは,子どもと一緒に活動を している父親の姿である.子どもと一緒に車を. が描かれていた.子どもの達成を喜ぶ,子どもの. 洗ったり,洗濯物を干したり,掃除をしたりする. 頭をなでる,黙ってお金を出す,励ます,心配そ. など家庭の仕事を行っている場面が多く見られた. うに見守る,願いをこめて名前を付けるなど,多. が,それよりも子どもと一緒に釣りをしたり,花. くは語らないが,子どもへの思いや願いを見守る. 火をしたりするなど楽しく遊んでいる場面のほう. という姿で描写されていた.. が父親は多く登場していた.そのほか,子どもに. 家族との関係においては,妻の病気に付き添っ. 切符の買い方や自転車の乗り方を教えたり,勉強. たり,やさしくしたり,良き夫として描かれてい. をみたりする父親も描かれていたが,こうした子. た.また,家族のリーダーといった家族の中心的. どもに教えている父親の姿は少なかった.. 258.
(12) 教科書に措かれている父親の役割. また,父親が家庭内の仕事を一人でする姿もよ. は,ほとんど見られなかった赤ちゃんをお風呂に. く見られた.お風呂の掃除をしたり,洗濯をした. 入れたり,病気の世話をしたりするなど赤ちゃん. り,犬の散歩をしたりする姿が見られた.その中. の世話をしている父親が描写されていた.ただし,. でも,特徴的なのは,赤ちゃんの世話をしている. 仕事をしている父親の姿は極端に少なかった.ま. 姿が見られたことである.家庭科以外の教科書で. た,父親が子どもを怒ったり,注意を与えたり,. 表6 生活科の教科書に表われた父親 学年. 出版社 学習研究社. 父. 父. 親(本 文). 親(挿 絵). 仕事をする.子どもと一緒に遊ぶ.ときどき 娘を自分の腕にぶら下げる.お風呂の掃除を する.家族みんなで掃除をする.家族でハイ. お風呂掃除をする.. キングに行く.家族でトランプをする.. 大阪書籍. 娘の看護.家族で洗濯をする. お湯をわかす.. 東京書籍. 子どもに竹馬を教える.子どもと一緒に車を 洗う.子どもと一緒に洗濯物を干す.子ども とコマ回しをする.家族で一緒に食事を作る. 子どもに仕事を教える.息子と釣りに行く.. お茶を飲む.娘と食事の準備をする.家族で 一緒に食事を作る.家族で一緒に掃除する. 家族で海水浴に行く.家族で動物園に行く.. 教育出版. 家族で子どもの誕生会をする.家族で買い物. 1年. に行く.家族で運動をする.. 息子と釣りをする.お風呂を掃除する.ごみ を捨てる.家族でハイキングをする.家族で. 学校図書. 団欒する.家族で花火をする.. 子どもと一緒に出勤する.息子と水槽をあら う.洗濯をする.家族で食事を作る.家族で 買い物する.家族でハイキングする.家族で. 日本文教出版. スポーツする.. 娘と洗濯をする.もちをつく.家族で掃除を. 大日本図書. する.. 息子と車を洗う.息子と掃除をする.子ども. 中教出版. 学習研究社. と花火をする.家族で食事をする.. 子どもに手紙を書く.家のベランダにプール を作る.子どもの誕生の泣き声を聞いて,う. れしくて涙がでた.子どもから手紙をもらう.. 子どもの小さい頃の思い出を子どもに語る.. 家族でキャンプをする.家族で旅行する.家. 大阪書籍. 東京書籍. 族で父母の家に行く.家族で食事する.. 釣りに行く.子どもの病気を心配する.子ど 赤ちゃんをお風呂に入れる.子どもの病気の もの病気の世話をする.赤ちゃんをお風呂に 入れる.家族でキャンプに行く.. 2年. 家族で旅行をする.ビールを飲む.子どもの. 教育出版. 写真を家族で見る.. 息子に自転車の乗り方を教える.息子と虫取 りをする.大の散歩をする.家族で食事をつ くる.家族で旅行をする.家族で食事を食べ. 学校図書. る.子どもの写真を家族で見る.. 日本文教出版. 大日本図書 中教出版. 子どもにビデオを見せる.. 子どもの記念樹を植える.家族で旅行する. 家族で家の新聞を作る.. 仕事をする.子どもと遊ぶ.. 子どもと花火をする.子どもの写真を家族で. 子どもの勉強を見る.. 息子と町の運動会に参加する.. 見る.家族で食事をする.. 切符の買い方を子どもに教える.家族で旅行 する.. 259.
(13) 岡 田 みゆき. 褒めたりするような子どもを指導している場面は. 男女共同参画社会を推進する立場から家庭内の仕. ほとんどなかった.. 事を分担し,育児に深く関わる父親を理想として. このように,生活科の教科書では,性役割分業. 意識に基づいた仕事中心で,権威をもって子ども. いる家庭科とは,大きく異なるものであった. 社会の教科書では,家庭の中,あるいは産業,. の教育やしつけに関わる父親は見られなかった.. 経済活動の中で,父親は仕事に忙しく,母親は家. 父親は家族の一員として描かれ,家族と一緒に活. 庭を守るという役割分業をしている現状を描いて. 動を楽しんだり,家庭内の仕事をしたりするとき. いた.ただし,中学校の教科書ではそれを批判的. に最も多く登場していた.また,子どもとの関係. にとらえており,家庭科で求めている養護的,あ. においても,それは変わらず,一緒に楽しんだり,. るいは家庭的な父親を理想とする父親のイメージ. 仕事をしたりする場面で登場していた.さらに,. に接近しようという意図が見られた.. 幼児の面倒もみる父親も描かれていた.つまり,. 道徳の教科書では,父親は,第一に仕事をする. 家庭科の教科書が描いていた家事を進んで行う家. 人,そして,家族の中心で,良き夫としても描か. 庭的な父親や,幼児の面倒をみたりする養護的な. れていた.子どもとの関係においては,権威をもっ. 父親を生活科の教科書の中にみることができ,こ. て子どもの教育やしつけに関わる存在として描か. うした父親を理想のイメージとしてとらえられて. れていた.これは,家庭科とは大きく異なるもの. いることがわかる.. であり,性役割分業意識に基づいた仕事中心の父 親を理想とし,男女共同参画社会を推進する立場. 4.結 論 男女共同参画社会の推進に向けて,教育がどの. から父親をとらえてはいなかった. 生活科の教科書では,父親は家族の一員で,家. 族と一緒に活動を楽しんだり,家庭内の仕事をし. ような父親を提示することで対応しているのか,. たりする存在として描かれていた.また,子ども. 最もその対応を重視してきた家庭科がどのように. と一緒に楽しんだり,仕事をしたり,さらに幼児. 貢献しているのかを明らかにするために,家庭科. の面倒もみる父親としても描かれていた.家庭科. の教科書に表われた父親と他の教科書に表われた. の教科書同様,家庭的な父親や養護的な父親を理. 父親を調査し,比較検討した.. 想のイメージとしてとらえられていた.. 家庭科の教科書では,乳幼児の世話をする父親. このように,父親の描き方は教科によってかな. がすべての学年で取り上げられ,養護的な父親が. り異なっていた.家庭科と生活科の教科書では,. 理想的な父親として示されていた.また,家事を. 家庭的で養護的な父親を理想とし,類似した父親. 進んで行う家庭的な父親も理想として取り上げら. を碇示していた.一方,国語と道徳の教科書では,. れていた.さらに,高等学校の教科書では,性役. 性役割分業意識に基づいた仕事中心で,権威を. 割分業意識の持たないことや,仕事,家事,育児,. もって子どもの教育やしつけに関わる父親を理想. 介護の責任を二人が共同して果たすことを奨励. として描かれていた.社会では,性役割分業意識. し,男女共同参画社会を推進する立場から父親を. に基づいた仕事中心の父親を描きながらも,それ. とらえていた.. を批判する記述も見られた.男女共同参画社会の. 国語の教科書では,性役割分業意識に基づいた. 推進の立場からこれらの教科書を考えるならば,. 仕事中心で,権威をもって子どもの教育やしつけ. 家庭科と生活科の教科書はこの立場に立って,父. に関わる父親を理想として作品の中に描かれてい. 親を描いているといえる.一方,国語や道徳の教. た.家事を進んで行う家庭的な父親や,子どもと. 科書は男女共同参画社会の推進の立場に立った父. 楽しく活動したり,幼児の面倒をみたりする養護. 親を描いている作品を取り上げていないことにな. 的な父親を作品の中にみることは非常に少なく,. る.社会はその中間的な立場で父親を取り上げて. 260.
(14) 教科書に措かれている父親の役割. おり,教科によって異なる父親像を描いていると いうことになる.もちろん,国語や道徳の教科書. は教科の目的から作品を選んでおり,男女共同参 画社会の推進の立場からそこで描かれている父親 像を検討し,作品を選んでいるわけではない.子. どもに伝える内容は別のところにある.しかしな がら,国語や道徳の教科書のような物語作品の中 で登場する父親は,子どもに感情移入されやすく,. 4)文部省(1989),高等学校指導書家庭編,開隆堂,1 5)河野公子(2001),家族や生活に関する学習を通した 人間教育の充実:高等学校家庭科の改訂の趣旨,家庭 科教育,家政教育社,75(4),6−11 6)文部省(1999),小学校学習指導要領解説家庭編,開 隆堂,3 7)文部省(1999),中学校学習指導要領解説技術・家庭 編,東京書籍,3 8)文部省(2000),高等学校学習指導要領解説家庭編 開隆堂,5−6. それを理想の父親像として取り入れやすいのでは. 9)林 道義(1996),『父性の復権』,中公新書,1−10. ないかと思われる.いくら家庭科や生活科の教科. 10)正高信男(2002),『父親力』,中公新書,92−116. 書の中で,家事や育児をする父親の姿を挿絵で示 しても,それは挿絵でしかない.子どもの目には. 留まるが,それをこれから求められている父親像 として持つことができるであろうか.父親は仕事. 11)日本家庭科教育学会編(2003),「家庭生活について の全国調査」の質的分析とクロス集計結果,平成14年 度科学研究費基盤研究報告書,84 12)山添 正(1981−1985),人学生の父親の研究1∼5, 山梨大学教育学部研究報告,32−36,121−128,127−132, 140146,176182,8793. に忙しく,大変なのだから,子どもに関われない. のは仕方ないことであるという考えに陥るのでは ないだろうか.もちろん,仕事中心で,権威をもっ て子どもの教育やしつけに関わる父親が望ましく. ないわけではない.そのような父親も必要であろ う.しかし,性役割分業意識に基づいた家庭生活 を送り,仕事中心で,家事や育児に関わらない父. 親が未だに,現状では多い.それだけに,性役割. 13)深谷和子・森川浩珠(1990),父親像の因子分析的研. 究,家政誌,41(6),487−495 14)Okada.M,(2005),ParentsintheModernJapanese. Family:DoUniversityStudentsObtainIdealsfrom TheirParents?,JournalofAHAHE,12,190−196 15)伊藤良徳・大脇雅子・紙子連子・吉岡睦子(1991), 『教科書の中の男女差別』,明石書房,44−88 16)久保加津代(1994),1947年から1957年の中学校家庭 科の教科書に見る家庭生活:家族関係・家庭生活像・ 女性の生き方,家教誌,37(2),17−24. 分業意識を排除し,男女が協力して,仕事,家事,. 育児,介護の責任を分担する社会を作り上げてい. 17)酒井はるみ(1995),『教科書における家族と女性の 戦後50年』,労働教育センター. こうという意識に改革することは,今の教育では. 18)鎌田浩子・木村清子(1999),家庭科におけるジェン. 難しいと思われる.家庭科が男女共同社会の推進. ダー観:高等学校教科書の分析から,北海道教育大学. のために先駆的な役割を果たしていることは認め られるが,今の教科書では大きな成果は求められ ない.父親のあり方を示すことは,男女共同社会. の推進のための大きな鍵になると思われる.それ だけに,挿絵や図で,父親のイメージを示すだけ. ではなく,これからの父親のあり方を考えさせた. 釧路校研究紀要・釧路論集,31,117−127 19)加藤育子(1999),教科書分析からの提言,人権教育, 人権教育研究所,8,14−21 20)氏原陽子(2001),男女平等教育副読本の顕在的カリ キュラムと「隠れたカリキュラム」:教科書分析の知 見と比較して,名古屋短期大学研究紀要,39,81−92 21)日本教職員組合教育文化局(1988),『小学校教科書 白書』,教科書白書,日本教職員組合,24,106−150. り,意識付けさせたりするための方法を早急に碇 案していかなければならないと考える.. (旭川校助教授). 参考・引用文献 1)内閣府(2005),男女共同参画白書,大蔵省,7 2)文部省(1989),小学校指導書家庭編,開隆堂,1 3)文部省(1989),中学校指導書技術・家庭編,開隆堂,1. 261.
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