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小学生におけるSAQ能力およびBSSC運動遂行能力の発達と男女差について

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(1)Title. 小学生におけるSAQ能力およびBSSC運動遂行能力の発達と男女差について. Author(s). 志手, 典之; 奥田, 知靖; 森田, 憲輝. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 68(2): 579-586. Issue Date. 2018-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9644. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 小学生におけるSAQ能力およびBSSC運動遂行能力の発達と男女差について 志手 典之・奥田 知靖*・森田 憲輝** 北海道教育大学岩見沢校体力学研究室 *. 北海道教育大学岩見沢校ゲーム分析論研究室. **. 北海道教育大学岩見沢校健康体力医学研究室. Development and Sex Difference of SAQ Ability and BSSC Movement Ability in School Children SHIDE Noriyuki, OKUDA Tomoyasu* and MORITA Noriteru** Department of Physical Fitness Science, Iwamizawa Campus, Hokkaido University of Education *. Department of Game Performance Analysis, Iwamizawa Campus, Hokkaido University of Education. **. Department of Medical Science in Health and Fitness, Iwamizawa Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究では,小学校1~6年生の男女児童におけるSAQ能力およびBSSC運動遂行能力の発 達と男女差について検討することを目的とした。対象は,北海道岩見沢市内のA小学校1~6 年生の男女298名であった。SAQ能力の評価では,光電管システムを用いたN Challengeによっ て,反応・スプリント走・右ターン・ミニハードル走・左ターン・スラローム走・総合の各タ イムを計測した。BSSC運動遂行能力の評価では,5回の連続ジャンプを行わせ,接地時間と 滞空時間を測定し,RJ指数を算出した。N Challengeにおける各項目は,男女ともに,低学年 の時期にタイムの短縮が認められた。また,リバウンドジャンプ時における滞空時間とRJ指 数は,男女ともに中学年時に発達が顕著となった。男女差について見てみると,SAQ能力で は早い時期にその出現が認められるのに対して,BSSC運動遂行能力では6年生だけに認めら れた。 キーワード:小学生,SAQ能力,BSSC運動の遂行能力,発達,男女差. Ⅰ 緒 言. である走・跳・投運動を用いた研究が数多く見ら れ,運動能力の発達の指標として用いられている。. これまでに,子ども達の運動能力については,. 毎年度,文部科学省が「全国体力・運動能力,運. 様々な角度から研究が行われている。運動の基本. 動習慣調査」を実施しているが,昭和60年度と平. 579.

(3) 志手 典之・奥田 知靖・森田 憲輝. 成27年度の調査結果を比較すると,子ども達の体. Ⅱ 方 法. 力水準は依然として低い状況にあることが報告さ れている(文部科学省,2015)。森(2009)は,. 1.対象者. 現代の子ども達は,体格は向上しているものの体. 対象は,北海道岩見沢市にあるA小学校に在籍. 力は低下しており,その直接的な原因は「運動経. する男女児童298名(1年生:男子29名・女子26. 験の不足」であると述べている。. 名,2年生:男子20名・女子32名,3年生:男子. 幼児期から児童期にかけての神経系の発達は著. 28名・女子18名,4年生:男子26名・女子22名,. しく,この時期はプレ・ゴールデンエイジ(5~. 5年生:男子29名・女子30名,6年生:男子15. 8歳頃)やゴールデンエイジ(9~12歳頃)と呼. 名・女子23名)であった。本研究では,事前にA. ばれ,様々な遊びや運動経験を通して,巧緻性・. 小学校の教諭と打合せを行うとともに,研究の趣. 敏捷性・平衡性・協応性といった能力が向上する. 旨を説明した後,測定を実施した。. 時期である。その中でも,敏捷性は「動作開始の 素早さ」 「動作切り替えの素早さ」, , 「動作の速さ」 の3つの要素から構成されている。一般的に敏捷. 2.形態計測およびSAQ能力・BSSC運動遂行能 力の測定. テストとしては反復横跳びが用いられているが,. 全ての測定は,平成27年12月24日に実施した。. 測定時間が20秒と比較的長いため,敏捷性の能力. 形態については,身長と体重を測定した。. を単独で評価しているとは言えず,敏捷性の因子. SAQ能力の評価については,奥田ほか(2015). に加え持久性など,他の因子が混在する可能性が. が開発したN Challengeを用い(図1),光電管・. 指摘されている(永田ほか,1967;酒巻ほか,. タイマー・コンピュータを組み合わせた自動計測. 1974) 。また,多様な動きを獲得すべき児童期に. システム(ウチダシステム社製)により,反応・. おいて,単一の運動様式による評価では,子ども. スプリント走・右ターン・ミニハードル走・左. 達の運動能力を有効に測定できるとは言えないこ. ターン・スラローム走・総合の各タイムを計測し. とから,奥田ほか(2015)は多機能な運動能力を. た.測定は2回実施し,よい方の記録を採用した。. 簡便に評価できる新規テスト「N Challenge」を. BSSC運動遂行能力の評価については,マット. 開発し,小学生低学年児童に対する有用性を報告. スイッチ・リレー回路・コンピュータから構成さ. している。さらに,「動作の切り替えの素早さ」. れるマルチジャンプテスタ(DKH社製)を用いて,. という観点から,リバウンドジャンプによる跳躍. 連続5回のリバウンドジャンプ時における接地時. 時のパワー発揮を評価することの有用性も報告さ. 間および滞空時間を測定した。リバウンドジャン. れている(遠藤ほか,2007)。. プ(RJ)指数を算出し,5回のジャンプで最も. 本研究は小学生の男女児童を対象に,奥田ほか. RJ指数が最も大きかったデータを採用した。こ. (2015) が 開 発 し たN Challengeを 用 いSAQ. の際,上肢の反動を利用しないよう両手を腰に当. (Speed,Agility,Quickness)能力を評価する. てた姿勢でジャンプを行わせた。また,児童には. と と も に, リ バ ウ ン ド ジ ャ ン プ に よ るBSSC. 踏切時間を短くし,高く跳躍することを意識して. (Ballistic Stretch-Shortening Cycle)運動遂行. 行うように指示した。実験の概略は図2に示した. 能力を評価し,それらの能力の発達および男女差. 通りである。なお,RJ指数は下記の算出式(図. を検討することを目的とした。. 子ほか,1993;遠藤ほか,2007)を用いた。 2. RJ指 数(m/秒 )=1/8×g× 滞 空 時 間 ( 秒 )/接 地 時間(秒). 580. g:重力加速度(9.81m/秒2).

(4) 小学生における敏捷性能力の発達と男女差. Ⅲ 結 果 1.形態的要因における学年間の比較と男女差に ついて 各学年における身長と体重の比較を表1に示し た。男女ともに,各項目において分散分析の結果 は有意で,学年進行に伴う増加が認められた。男 女差については,5年生の体重にのみ認められ, 男子が女子に対し有意に高い値を示した (p<0.05) 。 表1 各学年における形態的特徴の比較 図1 N Challengeの概略. 2.N Challengeの各タイムにおける学年間の比 図2 リバウンドジャンプの測定の概略. 較と男女差について 各学年におけるN Challengeの各タイムの比較. 3.統計処理. を表2に示した。男女ともに,いずれの項目にお. 全ての測定結果は,平均値±標準偏差(Mean. いて分散分析の結果は有意であった。. ±SD)で表した。各学年間における差の有意性. 反応時間では,男子において,3(p<0.05)・4. の検討は,一元配置の分散分析を行い,有意性が. (p<0.01)・5(p<0.01)・6年生(p<0.01)が1年生. 認められた項目についてTukey-Kramerの多重比. に対し,また女子においては,2(p<0.05)・3. 較を行った。また,各学年における男女差につい. (p<0.01)・4(p<0.01)・5(p<0.01)・6年生. ては,Studentのt検定を行った。なお,有意水. (p<0.01)が1年生に対し,5年生(p<0.01)が2年. 準は5%未満とした。. 生に対し有意に速いタイムを示した。 スプリント走では,男子において,2(p<0.05)・ 3(p<0.01)・4 (p<0.01)・5 (p<0.01)・6年生. 581.

(5) 志手 典之・奥田 知靖・森田 憲輝. 表2 各学年におけるN Challengeの各タイムの比較. (p<0.01)が 1 年 生 に 対 し,5 (p<0.01)・6 年 生. 生に対し,5年生(p<0.05)が2年生に対し有意に. (p<0.01)が2年生に対し有意に速いタイムを示し. 速 い タ イ ム を 示 し た。 女 子 に お い て は,2. た。女子においては,3(p<0.01)・4 (p<0.01)・. ( p < 0 . 0 5 )・ 3( p < 0 . 0 1 )・ 4 (p<0.01) ・5. 5 (p<0.01) ・6年生(p<0.01)が1年生に対し,4. (p<0.01)・6年生(p<0.01)が1年生に対し,5年. (p<0.05) ・5年生(p<0.01)が2年生に対し有意に. 生(p<0.01)が2年生に対し有意に速いタイムを示. 速いタイムを示した。. した。. 右ターンでは,男子において,3 (p<0.05) ・4. 総合タイムでは,男子において,2(p<0.05)・. (p<0.01) ・5 (p<0.01)・6年生(p<0.01)が1年生. 3(p<0.05)・4 (p<0.01)・5 (p<0.01)・6年生. に対し,また女子においては,3(p<0.01)・4. (p<0.01)が1年生に対し,5年生(p<0.01)が2年. (p<0.01) ・5 (p<0.01)・6年生(p<0.01)が1年生. 生に対し有意に速いタイムを示した。女子におい. に対し,5(p<0.05)・6年生(p<0.05)が2年生に. て は,2(p<0.05)・3(p<0.01)・4(p<0.01)・5. 対し有意に速いタイムを示した。. (p<0.01)・6年生(p<0.01)が1年生に対し,5年. ハードル走では,男子において,2(p<0.01)・. 生(p<0.01)が2年生に対し有意に速いタイムを示. 3 (p<0.01) ・4(p<0.01) ・5(p<0.01) ・6年. した。. 生(p<0.01)が1年生に対し,3 (p<0.05)・4. 次に,各項目における男女差について見てみる. (p<0.01) ・5 (p<0.01)・6年生(p<0.01)が2年生. と,いずれの項目においても男子が女子に対し速. に対し有意に速いタイムを示した。女子において. いタイムを示す傾向が認められた。反応時間にお. は,3 (p<0.01)・4 (p<0.01)・5(p<0.01)・6年. いては,1(p<0.05)・2(p<0.05)・4(p<0.05)・. 生 (p<0.01)が 1 年 生 に 対 し,3(p<0.01)・4. 5年生(p<0.05)で男子が女子に対し有意に速いタ. (p<0.01) ・5 (p<0.01)・6年生(p<0.01)が2年生. イムを示した。スプリント走においては6年生. に対し有意に速いタイムを示した。. (p<0.01),右ターンでは5年生(p<0.05)で,男子. 左ターンでは,男子において,3 (p<0.05) ・4. が女子に対して有意に速いタイムを示した。ハー. (p<0.05) ・5 (p<0.01)・6年生(p<0.01)が1年生. ドル走においては,2年生以上で男子が女子に対. に対し,女子においては,5年生が1(p<0.01)・. し て 有 意 に 速 い タ イ ム を 示 し た(2 年 生:. 2年生 (p<0.05)に対し有意に速いタイムを示した。. p<0.01・3年生:p<0.05・4年生:p<0.01・5年. スラローム走では,男子において,3(p<0.01)・. 生:p<0.01・6年生:p<0.01)。左ターンでは5. 4 (p<0.01) ・5 (p<0.01)・6年生(p<0.01)が1年. (p<0.05)・6年生(p<0.05)で男子が女子に対して. 582.

(6) 小学生における敏捷性能力の発達と男女差. 有意に速いタイムを示した。スラローム走では1. 滞空時間では,男子において, 3(p<0.01)・4. (p<0.05) ・3 (p<0.01)・ 5 年 生(p<0.05)に お い. (p<0.05)・5(p<0.01)・6年生(p<0.01)が1年生. て,総合タイムでは,2年生以上で男子が女子に. に対し, 6年生が2(p<0.01)・4年生(p<0.05)に. 対 し て 有 意 に 速 い タ イ ム を 示 し た( 2 年 生:. 対し有意に高い値を示した。女子においては, 3. p<0.05・3年生:p<0.05・4年生:p<0.05・5年. (p<0.01)・5(p<0.01)・6年生(p<0.05)が1年生. 生:p<0.01・6年生:p<0.05)。. に対し, 5年生(p<0.01)が2年生に対し有意に長 い滞空時間を示した。. 3.リバウンドジャンプによる跳躍動作時の各パラ. RJ指数では,男子において, 3(p<0.05)・6年. メータにおける学年間の比較と男女差について. 生(p<0.05)が 1 年 生 に 対 し, 女 子 に お い て, 3. 各学年におけるリバウンドジャンプによる跳躍. (p<0.01)・5年生(p<0.05)が1年生に対し有意に. 動作時の各パラメータの比較を表3に示した。男. 高い値を示した。. 女ともに,いずれの項目において分散分析の結果. 各パラメータにおける男女差について見てみる. は有意であった。. と,6年生の滞空時間(p<0.05)とRJ指数(p<0.01).  接地時間では, 男子において,5年生が1 (p<0.01). において,男子が女子の値を有意に上回った。. ・2(p<0.05) ・3年生(p<0.01)に対し, 6年生が 3年生 (p<0.01)に対し,有意に遅かった。また,  女子にいては, 6年生が1(p<0.01)・2(p<0.05). Ⅳ 考 察. ・3年生 (p<0.01)に対し有意に遅い接地時間を示. 1.SAQ能力の発達と男女差について. した。. これまでに,敏捷性を評価するテストとしては, 表3 各学年におけるリバウンドジャンプによるBSSC運動遂行能力の比較. 583.

(7) 志手 典之・奥田 知靖・森田 憲輝. 反復横跳び,J.S.テスト(Jump Step Test),折. いると考えられる。それに対して,スプリント. り返し走(5m×4往復) ,シャトル・ラン,時. 走・左右のターンでは,高学年においてのみ男子. 間往復走,開閉脚跳び,バーピー・テスト,ステッ. が女子に対し有意に速いタイムを示し,単純な運. ピング, ジグザグ・ドリブルなど,単純な素早さ・. 動様式の直線走やターンでは,高学年期にその能. スピードに加えて,様々な身体活動を正確に行う. 力に男女差が生じるものと考えられる。以上のこ. 要素を含む方法が採用されている(磯川ほか,. とから,ハードル走やスラローム走は,敏捷性の. 2007) 。学校現場では,これまで旧文部省・スポー. 中でも「動作切り替えの素早さ」が要求され,こ. ツテストおよび現文部科学省・新体力テストにお. のような運動様式では,小学校期の早い段階で男. いて採用されている反復横跳びが多く用いられて. 女差が生じることが示唆された。. いる。しかし,測定時間が20秒間と比較的長いた め,敏捷性因子に加え持久性など他の体力因子が. 2.BSSC運動遂行能力の発達と男女差について. 混在する可能性が指摘されている(永田ほか,. BSSC運動のパワー発揮能力を評価するため. 1967;酒巻ほか,1974)。そのため,本研究では,. に,図子ほか(1993)はリバウンドドロップジャ. 短時間で簡易に,複数要素の敏捷性の評価が可能. ンプによる評価方法を提案した。リバウンドド. な新しい評価テストであるN Challenge(奥田ほ. ロップジャンプにおいて測定される接地時間およ. か,2015)を用いて,小学生のSAQ能力を評価. び滞空時間は,各々,独立した要因であり,接地. した。. 時間からは運動遂行時間の短縮能力を,また,滞. 学年進行に伴うN Challengeの各タイムの比較. 空時間からは高い跳躍高の獲得能力を評価できる. について見てみると,女子の左ターンを除く全て. ことが報告されている(図子ほか,1995a,b)。. のタイムで,2年生または3年生以降,有意なタ. 本研究では,小学生におけるBSSC運動遂行能力. イムの短縮が認められた。また, 3年生以降では,. をより安全に評価するため,リバウンドジャンプ. 男女ともに,各学年間に有意な差は認められな. を用いた。. かった。このことは,N Challengeによって評価. 学年進行に伴うリバウンドジャンプ時の接地時. された小学生のSAQ能力は低学年から中学年に. 間,滞空時間およびRJ指数の比較について見て. かけての早い時期に発達することを示していると. みると,接地時間においては,男子では5年生が. 考えられる。宮口ほか(2009)は,幼児における. 1・ 2・3年生に,6年生が3年生に対し,また,. ラダー運動と運動能力の関係性について検討した. 女子では6年生が1・2・3年生に対し有意に遅. 結果,年長児は年中児に比べて難易度の高い運動. い値を示した。このことは,男女ともに,高学年. 課題を正確に速く実施できることを報告してい. 児童において,接地時間の遅延が生じたことを示. る。その要因として,年中から年長にかけて運動. しており,運動遂行時間の短縮能力の低下が考え. を統括する神経系が発達し,各運動が密接に関連. られる。滞空時間においては3・4・5・6年生. したことを挙げている。このことは,子ども達の. が1年生に,6年生が2・4年生に対し,また,. SAQ能力の発達は幼少期のかなり早い時期に起. 女子では3・5・6年生が1年生に,5年生が2. こることを示唆するものである。. 年生に対し有意に高い値を示した。また,中学年,. 各学年におけるN Challengeの各タイムの男女. 高学年では,男女ともに各学年間に有意な滞空時. 差について見てみると,反応・ハードル走・スラ. 間の差は認められなかった。このことは,男女と. ローム走・総合の各タイムで低学年から,男子が. もに,中学年時に高い跳躍高の獲得能力が増大す. 女子に対し有意に速いタイムを示した。このこと. ることを示していると考えられる。RJ指数にお. は,これらの項目では,低学年の早い時期から,. いては,男子では3・6年生が1年生に対し,女. 男子は女子に対し高い能力であったことを示して. 子では3・5年生が1年生に対し有意に高い値を. 584.

(8) 小学生における敏捷性能力の発達と男女差. 示した。上述の滞空時間と同様に,中学年,高学. いると考えられる。. 年の各学年間に有意なRJ指数の差は認められな かった。このことは,BSSC運動の遂行能力は中 学年時に増大することを示していると考えられる。. Ⅴ 結 論. 志手・新開谷(1996)は,小学校4~6年生の. 本研究は,小学生1~6年生の男女児童を対象. 男女児童におけるBSSC運動の遂行能力の経年的. に,N ChallengeによるSAQ能力およびリバウン. な増大が接地時間に差が認められなかったことか. ドジャンプによるBSSC運動遂行能力を測定し,. ら,跳躍高の増大に起因していることを報告して. 発達と男女差について検討することを目的とし. いる。また,遠藤ほか(2007)は6歳~18歳の男. た。SAQ能力の評価には,光電管測定システム. 子を対象にリバウンドジャンプを用いた研究にお. に よ るN Challengeを 用 い, 反 応・ ス プ リ ン ト. いて,踏切時間は低年齢から一定であること,ま. 走・右ターン・ミニハードル走・左ターン・スラ. た,滞空時間においては経年的な発達が認められ. ローム走・総合の各タイムを計測した。BSSC運. ることを報告している。本研究において,中学年. 動遂行能力の評価では,リバウンドジャンプ時に. 時に認められたBSSC運動遂行能力の増大は,高. おける接地時間と滞空時間を測定し,RJ指数を. い跳躍高の獲得能力の増大が大きな要因であると. 算出した。主な結果は以下の通りである。. 考えられ,先行研究と一致するものであった。. 1.N Challengeにおける各項目は,男女ともに,. 各学年におけるリバウンドジャンプ時の接地時. 低学年の時期にタイムの短縮が認められた。. 間,滞空時間およびRJ指数の男女差について見. 2.N Challengeにおける各項目の男女差は,反. てみると,接地時間においては,全ての学年で有. 応・ハードル走・スラローム走・総合の各タイ. 意な差は認められなかった。志手・新開谷(1996). ムで低学年から,男子が女子に対し有意に速い. は,4年生以上の小学生で,リバウンドドロップ. タイムを示した。それに対して,スプリント. ジャンプ時の接地時間に男女差が認められなかっ. 走・左右のターンでは,高学年においてのみ男. たことを報告している。これらのことから,小学. 子が女子に対し有意に速いタイムを示した。. 生においては,運動遂行時間の短縮能力には男女. 3.リバウンドジャンプ時における接地時間は,. 差がないことを示していると考えられる。また,. 男女ともに,高学年において,遅延傾向が認め. 滞空時間とRJ指数には,6年生において有意な. られた。滞空時間とRJ指数は,男女ともに中. 男女差が認められた。このことは,高学年におい. 学年時に発達が顕著となった。. て,高い跳躍高の獲得能力とBSSC運動遂行能力. 4.リバウンドジャンプ時における各項目の男女. に男女差が生じるという志手・新開谷(1996)の. 差について見てみると,滞空時間とRJ指数に. 結果と一致するものであった。 6年生においては,. おいて,6年生にだけ認められた。. 男 子 は 女 子 に 対 し, 高 い 跳 躍 高 の 獲 得 能 力 と. 以上のことから,SAQ能力においては,低学. BSSC運動遂行能力に優れることが示唆された。. 年の早い段階で,その能力が発達するとともに,. 短時間のパワー発揮の発達に関して岡川(1989). 男 女 差 も 出 現 す る こ と が 示 唆 さ れ た。 一 方,. は,体重当たりのパワー出力が男子では11歳まで. BSSC運動遂行能力は,中学年時における滞空時. 急激に向上し,14歳まで緩やかな発達を示すのに. 間の発達に起因して,その能力が増大することが. 対し,女子では急激なパワーの向上が男子より1. 明らかとなった。6年生におけるBSSC運動遂行. 年早く終了し,10歳以降,発達の停滞が認められ. 能力の男女差は,思春期以降における脚の筋パ. ることを報告している。思春期以降に生じる脚の. ワー発揮の男女差に起因していると考えられる。. 筋パワー発揮の男女の差異が,6年生における BSSC運動遂行の男女差に大きな影響を及ぼして. 585.

(9) 志手 典之・奥田 知靖・森田 憲輝. 謝 辞 本研究は,文部科学省の科学研究補助金(基盤 研究C 課題番号15K01497,平成27年度から平成 29年度)を受けて実施されている。. 参考文献 遠藤俊典・田内健二・木越清信・尾縣貢(2007)リバウ ンドジャンプと垂直跳びの遂行能力の発達に関する横 断的研究.体育学研究,52:149-159. 磯川正教・今中國泰・大槻文夫・北一郎・桜井智野風・ 山崎秀夫・琉子友男(2007)首都大学東京体力標準値 研究会編,新・日本人の体力標準値.不昧堂出版, pp.231-280. 宮口和義・出村愼一・蒲真理子(2009)幼児におけるラ ダー運動の成熟度と運動能力との関係.発育発達研究, 43:1-10. 文部科学省(2015)平成27年度全国体力・運動能力,運 動調査結果,調査結果の概要.文部科学省ホームページ, http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/ chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1377959.htm. 森誠護(2009)子どもの体力低下に関する一考察-遊び の減少に着目して-.鈴鹿工業高等専門学校紀要, 43:33-37. 永田晟・飯塚鉄雄・日丸哲也・唐津邦利(1967)全身敏 捷性テストの検討.体育学研究,12:203. 岡川暁(1989)子どものアネロビックパワー.体育の科学, 39:857-861. 奥田知靖・森田憲輝・大山祐太・寅嶋静香・山本理人・ 野村翼・菊地可央理・志手典之・小林規・佐藤徹 (2015)  敏捷性評価のための新規テスト(N Challenge)の開発 とその信頼性.体力科学,64:649. 酒巻敏夫・加藤延雄・福光能里子・長谷部昭久・安達知 恵子・竹森謙一・柚木斉(1974)反復横とび測定方法 の検討.体力科学,23:77-84. 志手典之・新開谷央(1996)小学校児童におけるリバウ ンドドロップジャンプを用いた跳躍動作のパワー発揮 の発達に関する研究.スポーツ教育学研究,16:39-46. 図子浩二・高松薫・古藤高良(1993)各種スポーツ選手 における下肢の筋力およびパワー発揮に関する特性. 体育学研究,38:265-278. 図子浩二・高松薫(1995a)バリスティックな伸張−短縮 サイクル運動の遂行能力を決定する要因―筋力および 瞬発力に着目して―.体力科学,44:147-154. 図子浩二・高松薫(1995b)リバウンドドロップジャンプ における踏切時間を短縮する要因:下肢の各関節の仕. 586. 事と着地に対する予測に着目して.体育学研究,40: 29-39.. (志手 典之 岩見沢校教授) (奥田 知靖 岩見沢校准教授) (森田 憲輝 岩見沢校教授) .

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