幼稚園における「英語活動」の現状と意義についての研究 : 兵庫県下の公立・私立幼稚園を対象とした調査より
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(2) 目次. 第1章 問題の所在………・・………・・………・………・………1 第2章 幼児期からの「英語」と幼稚園における「英語活動」での課題…・6. 第1節 幼児期からの「英語活動」についての現状…・…………・…6. 第2節「早期教育」と「早期英語教育」について…………・………7 1.「早期教育」について,,,,,.,....,,。,,,,,,,,,,,,,,,,.,,__。7. 1−1 「早期教育」とは……………一…・…………・……・7. 1−2早期教育の利点は何か………・………・・……………8 1−3早期教育が子どもに与える影響について・………………・9 2.「早期英語教育」について,,,。,,,,,,...,,..,,,,,,,,,,,,,,,,,10. 2−1早期教育から見た「英語」 …………・・……・………・10 2−2「早期英語教育」のメリット …・・……………・…・……ll. 2−3「早期英語教育」のデメリット…………・・……・…一…ll 第3節 幼児期から英語を学ぶ意義とは・………・………・…・・…!3. 第4節 幼稚園における「英語活動」のねらいについて……………15. 第5節 幼稚園における「英語活動」の課題………………… …・17 第3章 兵庫県下の幼稚園における「英語活動」の現状調査・…………19. 第1節 研究目的……………・…… …・……………・…・…・19 第2節 研究方法…・……・………・……………・・…’””oo”19 1.研究対象,,,,,.,,,.,,,,.....,.,...,.,,,,.,,,,,,,,,,,,.,,,,,19. 2.研究方法,,,,,.,,,じ,,.,.....,....,,.,.,,。,,,じ,,,,,,D,,,,,,,19 3.調査内容,,,.....,じ,,,,.....,....,じ,,,,,..,,..一,,,,,,,,.,.,20. 第3節 結果・……………・…… ………………9…………20 1.アンケート調査から幼稚園における「英語活動」の現状,,,,.,,,20. 1−1 幼稚園における「英語活動」の内容…・・………………20 1−2幼児期からの「早期英語教育」に関する幼稚園教諭の意識…28 2.「早期英語教育」賛成・反対に対する幼稚園教諭の捉え方,.,,.,31. 2−1「早期英語教育」肯定的・否定的な意見に対する教諭 の捉え方の構造9…・……………・………………3!.
(3) 2−2 私立幼稚園・公立幼稚園における,おこなっている園での 「英語活動」に対する捉え方についての比較・…………41. 第4節 考察及び課題………………… …………・・……・…43 1.考察.,,D,,ゆ9,,り..,,,,,,,.,.,.9,,,,,,...一...,,,,,,吟,隆...,,,43. 2.課題,..,....一.,,...,a,,,,,,,,D,..,,,嫡り.,.....,,,,D,,.99,,D44. 第4章 兵庫県における幼稚園での「英語活動」の実態調査及び. 幼稚園教諭による「英語活動」における捉え方…………・…・45. 第1節 研究目的・……………・…・…・…・…………・…一…45 第2節 研究方法…一……………・……・・…………・…・・…45 1.研究対象,,,,.....,,,,,,,D,D,....,,,,,,D,,,,,..,,,a D,,じ,,,,45 2.研究方法..,.,,,,,,,,,,......,D,,D,,.鞠..,..,,,,,,,,,,.り.,,ゆ45 3.質問内容,,,,じa,,,,,..,,.,,,じD,,,,.,,陶.一じ,a,,,,.,,.,.,,,,,D46. 第3節「英語活動」に賛成である私立幼稚園での「英語活動」の実態…46 1.A幼稚園における「英語活動」の実態,,,,,、,.,..,,,,、,,,....46. 1−1 A幼稚園の「英語活動」の様子…・…・…………・・…46. 1−2 A幼稚園における「英語活動」の実態……………・…47 2.B幼稚園における「英語活動」の実態,,....,,,,,.,,..,.,,,.,48. 2−1 B幼稚園の「英語活動」の様子…………・・……・…・48. 2−2 B幼稚園における「英語活動」の実態……・…………51 3.両園に見られる「英語活動」の違い.,,,,,,,,,,.,....,,,,,,,.51. 第4節「英語活動」に賛成である私立・公立幼稚園におけるねらい・・…52 1.私立幼稚園教諭の捉える「英語活動」をおこなう利点,,,,,,,,,52. 1−1「英語活動」に対しての私立幼稚園教諭の捉え方…・・……52. 1−2 私立幼稚園教諭の捉える「英語活動」をおこなう利点…一54 2.「英語活動」に賛成である公立幼稚園におけるねらい,.,,.,.,,,55. 2−1「英語活動」に対しての公立幼稚園教諭の捉え方・・………55 2−2 公立幼稚園教諭の捉える「英語活動」をおこなう利点…・・57. 第5節「英語活動」に賛成でおこなっている私立幼稚園と公立幼稚園の比較. …・一・・…………・…………・……… …・・…・………・58. 一n.
(4) 第6節 「英語活動」に反対である幼稚園での「英語活動」に対しての 私立・公立幼稚園教諭の捉え方の比較・…・……………・60 1.「英語活動」に対しての私立幼稚園教諭の捉え方,,,,,,,,,,,。60. 2.「英語活動」に対しての公立幼稚園教諭の捉え方,,,..,,..,,、63. 3.「英語活動」に対しての私立・公立幼稚園教諭の捉え方の違い64. 第7節 「英語教育」と「英語活動」の違いと「英語活動」での メリット・デメリヅトについて……・…・………・……65 1.「英語教育」と「英語活動」の違い,,,,,,,,,,,、,,,,,.,,,.。。65. 2.「英語活動」でのメリット・デメリット,,.,,,,,,,,,...,.,。,66. 第5章 全体考察・…・……………・……・・…………・・………68 第1節 幼稚園での「英語活動」の現状と実態………・・…………68 第2節 「英語活動」におけるねらいの違いの背景にあるもの………69. 1.私立幼稚園と公立幼稚園における違いとして見えてきたもの.69 2.幼稚園における「英語活動」と教育要領との関係.,,,,,。,,,,70. 第3節 幼稚園における「英語活動」の意義と今後の在り方について…71 1.幼稚園における「英語活動」の意義,,,,.,..,,,.,.,.,,,,,,,71. 2.幼稚園における「英語活動」の意義を活かすための今後の在り方. について72. 参考文献………・……’…・………………… …………・…・75 巻末資料………・・………・…・…・…………・…・…………79. 謝辞………・・………・……………・…・… ………………94. 血.
(5) 表の一覧 ロ ロ ド ロ ド ロ ロ ロ ロ ロ. 表表表表表表表表表表. 幼児期から英語を学ぶ意義…・…・…………・……………13. 園児数の割合・……………・…・…………一……・……21. 教員数の割合…………・…………………・……・……22 私立幼稚園・公立幼稚園別「英語活動」をおこなっている割合…・22. おこなっていない園の今後のおこなうことへの可能性…………23. 「英語活動」の開始時期……・…・………… ……………24 「英語活動」をおこなう回数・………………・・…・………25. 「英語活動」をおこなう時間………………… ………・…25 「英語活動」の指導者・……・…………・……………・…26. 「英語活動」の開始年齢……・………・…… ……………26. 表3−10. 私立幼稚園・公立幼稚園「英語活動」における活動内容・・……27. 表3・11. 「早期英語教育」に賛成・反対の割合…・………ρ……… …28. 図の一覧 図3・1 公立幼稚園・私立幼稚園の割合………・……・…・一………21. 図3・2 「英語活動」をおこなっている割合……………・…・・…・…23. 図3・3 「英語活動」における活動内容 全体・・………………・…・・27. 図3・4 「早期英語教育」に賛成・反対の割合 全体……・………・…29 図3・5 教諭による「早期英語教育」の捉え方の構造……・………・…31 図3−6 「早期英語教育」に肯定的・否定的な考えの教諭の捉え方・……・33. 図3−7 それぞれのカテゴリー間の関係性を表す相関図………………40 図3・8 おこなっている園の教諭による「英語活動」に対する捉え方. 私立幼稚園・・………………・…・・。●●””。●’●●●o●。o”o●●。41. 図3−9 おこなっている園の教諭による「英語活動」に対する捉え方. 公立幼稚園………………・… ………………・・……・42. 1V.
(6) 第1章 問題の所在 平成10年に改定された教育要領より,幼稚園での教育は,幼児期の特性を 踏まえ,環境を通して行うことを基本としている。また,幼児期における教育 とは,家庭との連携を図りながら,生涯にわたる人間形成の基礎を培うために. 大切なものであり,そのために幼稚園では,幼稚園での生活を通して,生きる 力の基礎を育成するよう努めなければならない,と定められている(文部省, 1998)。. そのため,幼稚園での教育目標として以下の5つが挙げられている。. (1)健康,安全で幸福な生活のための基本的な生活習慣・態度を育て,健全 な心身の基礎を培うようにすること。. (2)人への愛情や信頼感を育て,自立と協同の態度及び道徳性の芽生えを培 うようにすること。. (3)自然などの身近な事象への興味や関心を育て,それらに対する豊かな心 情や思考力の芽生えを培うようにすること。. (4)日常生活の中で言葉への興味や関心を育て,喜んで話したり,聞いたり する態度や言葉に対する感覚を養うようにすること。. (5)多様な体験を通じて豊かな感性を育て,創造性を豊かにするようにする こと。. (文部省,1998,p.2) このように幼稚園では,幼稚園修了時までに,これから続く学校教育に求め られている生きる力の基礎となる心情,意欲,態度などの育成をねらいとして,. 以上の目標に沿って幼稚園教育がおこなわれていることが分かる。さらに,こ. れらの幼児の発達の側面から,目標の(1)の心身の健康に関する領域は「健 康」,(2)の人とのかかわりに関する領域は「人問関係」,(3)の身近な環境 とのかかわりに関する領域は「環境」,(4)の言葉の獲得に関する領域は「言. 葉」,(5)の感性と表現に関する領域は「表現」,など5つの領域を軸として,. 幼稚園における生活の全体を通じて,様々な体験を重ねていく中で学んでいく. 1.
(7) ことを目的としている。. そのため幼稚園においては,これをしなければならないということについて. は特には定まっておらず,内容は各領域のねらいに基づいて適切な,具体的な 内容を工夫し,総合的に指導されるものである,と提示されている(文部省, 1998)。. そこで,現在幼稚園において「英語活動」を取り入れた園があるということ が山内(1999),米田・前垣内(2003)などでいわれている。大阪府の島本町 教育委員会では,国際社会を生きてゆく子どもたちに必要な「言語能力」・「コ ミュニケーション能力」・「異文化を理解する能力」を培うことをねらいとして、. 中学校だけでなく幼稚園・小学校にも外国人の英語指導助手を配置し、幼小中. の11年闇を見通した取組みを実施している,と提示されている。その中で,. 幼稚園における「英語活動」として町立の幼稚園に週2回,外国人の英語指導 助手が配置されているということが挙げられているのである。また,高知県田 野町立田野幼稚園でも,幼稚園の年長から,小学校・中学校と10年間を見通し た英語教育を実施している(田野幼稚園,2003)。さらに,沖縄新聞でも,名護. 市教育委員会が,15の市立幼稚園で英語教育を開始することを明らかにしたと 述べている(沖縄新聞,2001)。. 一方,私立園においても,幼稚園のホームページなどや米田・前垣内(2002),. また中山(2003)などで,幼稚園でも何らかの形で「英語活動」を取り入れて いることが分かる。. さらには,御影インターナショナルプリスクールのように英語だけで過ごす 幼稚園(神戸新聞,2002)や加藤学園でのイマージョン(immersion)教育の様に,. 保育の時問を英語に浸すことで,英語を学ぶのではなく,英語で学ぶ幼稚園も ある。. このように幼稚園段階からでも「英語活動」を実施している園もあるという ことが見受けられるのではないだろうか。 「英語活動」の内容としては,研究開発学校千早赤阪村立こごせ幼稚園では,. 異文化への抵抗が少ない幼稚園から,音声・リズム動作を中心とした「英語活 動」をおこなっていると述べられている(日本教育新聞,2005)。このような活. 2.
(8) 動は小学校でおこなわれている活動と方向性は似ているように感じられる。. しかし,幼稚園の活動の中の一つに「英語活動」を取り入れ,積極的におこ. なっている園があるにもかかわらず,幼稚園での「英語活動」においての研究 は少ないということが現状として挙げられる。これはなぜであろうか。. ・小学校での「英語活動」の現状. 小学校での「英語活動」については,2002年に「総合的な学習の時間」が新 設され,その中の「国際理解」に関する学習の一環として「英語活動」が導入. されている。また,平成15年度の小学校英語活動実施状況調査によると,全 国の約90%の小学校で「英語活動」を実施しているということが挙げられてい. る。また,この調査から,「総合的な学習の時間」がない1学年や2学年にお いても,教育課程外の時間や特別活動の時間などに「英語活動」をおこなって. いると答えた割合がおよそ50%いたことから,全国で半数の学校が,1学年の 時から英語を取り入れているということが明らかとなっている。小学校での「英. 語活動」について,文部科学省から出されている,小学校英語活動実践の手引 きを元に松川(2004)は,以下の6つの点を挙げている。. (1)英語活動は国際理解教育の一環として行われること。国際理解 教育は「英語活動」「国際交流活動」「調べ活動」の3つの組み 合わせで行うことが望ましく、「英語活動」はその中の一つの柱 であること。 (2)英語活動のねらいは言語習得より興味・関心、意欲の育成。 (3)扱われる英語は音声中心であること。. (4)授業は学級担任を中心に進めることが望ましい。 (5)体験的な活動を中心に扱う。. (6)数値の評価でなく、学習の過程や参加度の記述による評価。. (松川,2004,p.53). ここで(2)ねらいについて,松川(2004)は,小学校英語活動実践の手引き. 3.
(9) には,小学校の「英語活動」が英語に触れ外国の生活や文化に慣れ親しむ「英. 語体験活動」であって,この段階では習得を目的としていないことが明確に示 されていると述べている。また,(3)(5)からも分かるように,小学校では,. 音声中心とした体験的な活動をおこなうということから,小学校英語活動実施. 状況調査においても,活動内容については,歌やゲームなどの英語に親しむ活 動がほとんどであり,次いで簡単な英会話の練習ということが挙げられていた。. こうした中で,大阪府千早赤阪村赤坂小学校や香川県直島町立直島小学校,. 兵庫県揖保川町立河内小学校,など多くの研究開発学校からカリキュラムや指 導法,また活動時の子ども実態などが報告されていることからも,現状として,. 小学校の「英語活動」はとても注目されており,研究も多いことがいえる。. ・小学校と幼稚園における「英語活動」で異なる点. 小学校と幼稚園における「英語活動」の違いとしては,小学校では,小学校 英語活動実践の手引きにおいて「国際理解に関する学習の一環としての外国語 会話等を行うときは,学校の実態等に応じ,児童が外国語に触れたり,外国の. 生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学 習が行われるようにすること。」(2001,文部科学省)と小学校での「英語活動」. における目的が示されているが,幼稚園ではそういった全体的な目的やねらい. は教育要領などにも示されてはいない。また,小学校ではどのくらいの学校が 実施しているかということなどの現状も明らかにされているが,幼稚園におい てはどれくらいの園が実施しているのか,それはいつ頃から実施されているの か,また子どもにどんな力をつけさせたいのか,など幼稚園における「英語活. 動」の現状や意義について見えてこない部分が多いということが小学校とは異 なる点として挙げることができると考えられる。. ・違いが出てきた要因は何か. このようなことからも分かるように,幼稚園における「英語活動」について は,おこなっている園があるにもかかわらず,見えてこない部分が多いという. 4.
(10) ことが課題として挙げられる。これは,小学校のように全体として提示されて. いる目的が定められていないこと,また「英語活動」を通してどんな力を育成 させたいのかについても明確になっていないことなどが原因として考えられる. のではないだろうか。さらに,幼児期においての研究として,早期教育につい ての研究は多くあるが,幼稚園における「英語活動」についての研究があまり ないことも原因の一つとして考えられる。. ・研究目的. そこで,本研究では,幼稚園でおこなわれている「英語活動」の現状を踏ま え,そこで育成しようとしている力や,「英語活動」でのねらいを明確にしてい. く。さらに,幼稚園における「英語活動」の意義についても検討することを目 的とする。. 5.
(11) 第2章 幼児期からの「英語」と幼稚園における「英語活動」での課題. 第1節 幼児期からの「英語活動」についての現状 幼稚園における「英語活動」についての現状としては,第1章で少し触れた が,ここでは詳しく調査をしたものを挙げてみる。山内(1999)は,幼稚園・ 保育所等に就職した卒業生を対象に,幼稚園・保育所における英語教育の取り. 組みについてのアンケート調査をおこなっている。この調査では,大学の卒業. 生420人にアンケートを配布し,そのうち有効回答数の98園(内幼稚園37園・ 保育所61園)について分析している。その結果,幼稚園や保育所での英語教育 の実施状況について,「積極的に取り入れ,それを園児募集の際などの売り物に. している」に回答した園が,幼稚園2園・保育所1園,「活発におこなってい る」と回答した園が,幼稚園0園・保育所3園,「定期的におこなっている」 と回答した園が幼稚園7園・保育所7園,「不定期におこなっている」と回答し. た園が幼稚園2園・保育所3園,であったことを挙げられている。山内(1999) はこれらの回答については英語教育をおこなっているものと考え,アンケート の回答全体から幼稚園で27.5%,保育所では,21。2%が何らかの形で英語教育. をおこなっている,と述べている。一方,おこなっていないと回答した園につ. いては,幼稚園で29園・保育所で51園あったとしている。 おこなっていない理由としては,音楽や絵画に力を入れていることなどが挙 げられていた。また少数意見ではあるが,モンテッソーリ教育をおこなってい る園では,子どもの自発的活動を重視しているために,集団活動となりがちな. 英語活動はおこないにくいと考えている園もあった,ということも述べられて. いる。そのため,英語教育そのものを否定しているわけではないが,園の状況 やねらいとしていることが別にあるために,積極的にはおこなっていない園も ある,ということが分かる。. さらに山内(1999)は,アンケートでは「英語教育」という言葉を使用して いたために,知識として学ぶための英語と捉えた園もあったことから,英語を. 使っての国際交流や文化交流としての活動はおこないたいが,語学としては不 要である,といった意見もあったと述べている。これは例えば,英語に触れな. 6.
(12) がら,異文化理解を含んだ活動という形であればおこなってもよいと考える人 がいたとしても,「英語」とともに「教育」という語がつくことによって,その. 是非を判断している可能性があることを示唆している。 すると,「英語教育」と「英語活動」という言葉の使い方によっても,教諭の. 英語に対する捉え方は変わるかもしれないと考えられるのではないだろうか。 そうであるとすれば,「教育」と「活動」といった語の用い方の違いがどこにあ るのかについては,検討していく必要がある。また,「英語教育」については「早. 期英語教育」という用語もあり,そういった教諭の英語に対する捉え方の背景 にはより大きな概念として取り上げられる「早期教育」で言われていることも 大きく関係してくると考えられる。. 「早期教育」とは本来スキルアップを目的した知識重視の考えでおこなうも のである。そのため,反対している人の中には,幼児期から英語をおこなうこ とが,知識重視の「早期教育」になる,と捉える人もいると考えられる。では,. 「早期教育」で言われていることはどんなことなのか,について知る必要があ. る。そこで,次は「早期教育」の視点から幼児期の「英語」について検討して いくこととする。. 第2節 「早期教育」と「早期英語教育」について 1.「早期教育」について. 1−1 「早期教育」とは. 現在,新聞やテレビ,また多くの研究でも「早期教育」という言葉を目にし たり耳にしたりすることがよくある。その一方で,「早期教育」とは,何を指す. のか,何歳からの教育を早期教育というのか,など詳しい内容についてはっき りした定義はないとされており,さまざまな議論がされている。その中でも, 高良(1996)は,「早期教育」の定義について以下のように捉えている。. 早期教育とは,. ①特定の能力や技能の習得を意図している。. 7.
(13) ②できるだけ早い時期から開始するという志向性を持っている。. ③働きかけに対する子どもの期待される反応を強く期待して行われる。 ④乳幼児への計画的働きかけである。. (高良,1996,p.26) 以上のことから,高良(1996)は,こういった定義をすることにより,幼児 期の早くからおこなわれる教育が,すべて早期教育ということにはならないと いうことを指摘している。. 一方,無藤(1998)は,早期教育の内容について,学校教育に近いものや,. 伝統的なお稽古事のようなものもあるなど,いろいろな内容が含まれるのでは. ないかと述べ,早期教育に含まれる内容について,大まかに以下の5つの分類 を提起している。. (1)胎児や乳児向けの教育 (2)読み書き・算数などの教育 (3)英語 (4)ピアノなどのお稽古事 (5)水泳などのスポーツ教育. この無藤(1998)のように,英語が他のアカデミックな教科につながるよう な教育とは別のカテゴリとして早期教育に入っているといった捉え方をしてい る者もいる。これは英語がコミュニケーションスキルを中心とした,耳に慣ら. すためのものとして挙げられているからであり,中学校からおこなわれる学校. 教育の中での英語教育とは別のものとして,この分類では扱われている。幼児 期からのどのような英語教育が早期教育になるのかについては,もう少し詳し く考えていく必要があると思われる。. 1−2 早期教育の利点は何か. 古賀野(2003)によれば,早期教育ブームが起きたのは,その火付け役とも 言われている井深大(ソニーの創業者)や石井勲,また七田真,などといった. 早期教育産業の担い手の存在が多大な影響を与えているという。そこでは,計 算や漢字などの教育を乳幼児の段階から実施することで,子どもの学習に効果. 8.
(14) があるとされている。そういった中で,早期教育の利点としてよく挙げられる. のは,子どもは記憶力が優れているということである。この点について,和田 (2003)は,子どもと大人での記憶のパターンの違いを見たとき,「意味記憶」. が大人に比べ子どもの方が優位であるからと述べている。意味記憶とは,いろ. いろな事物の意味を記憶していく方法のことであり,言葉とその意味が対応す ることから,心理学者タルヴィングが名づけたものとされている。これを和田 (2003)は,体験や理解に関係なく,見たものや聞いたものが脳に放り込まれ. ていく丸暗記の仕方であると説明している。そして,意味記憶は丸暗記である ことから,本来は難しいはずが,小さい頃はこのやり方が得意で簡単にできる と述べている。このことが,早期教育が有効であると言われている一つの理由. であると考えられる。しかし和田(2003)は,そういった単純な意味記憶は,. エピソード記憶のように体験や理解とリンクしていないので,記憶としては残 りにくいことも同時に指摘している。. さらに,こういった早期教育がおこなわれる背景には,現代社会における情 報の豊かさと親の欲求とが重なりあっているといわれているが,そういった早 期教育が子どもに与える影響についても,様々な考えがある。. 1−3 早期教育が子どもに与える影響について. 早期教育が子どもに与える影響について,高良(1996)では,はじめは「将 来,苦労するのはかわいそうだから」と,親は軽い気持ちで早期教育に足を踏 み入れる。しかし,それがいつの間にか,周りとの競争になっていったり,出 来たことで「もっと,もっと」と欲が出てくることでエスカレートしていき,. そうなることで,子どもにとっては,できるかできないかで判断され,幼児期 に育つはずの「自分は自分でいい」という自己肯定感は失われる危険性がある. と提起している。さらに,そういった親の期待や他者との競争原理などが子ど. もにとって強いストレスとなり,子どもの成長に害を及ぼすのではないかと述. べている。また汐見(1993)も,早期教育を安易に始めると,信頼感形成のた めに,子どもに一人の人間として愛していると伝える「温かいコミュニケーシ ョン」ではなく,子ども自身よりも子どもにさせることに重きをおいてしまい,. 9.
(15) 親の期待を達成させることの手段となることで,子どもに不信感を与えてしま う「冷たいコミュニケーション」になる危険性があると述べている。これらの. ことを考えると,早期教育をおこなう上で,親の志向や意思決定がもっとも深 く関わってくることから,早期教育が及ぽす危険性も理解した上で子どもにと って,何が一番大切なのかについて親は常に考える必要があると思われる。. ここまでは早期教育全体についてのことを簡単に説明したが,幼児期からの 「英語」を見ていくには,無藤(1998)のいう,早期教育としての英語につい. て見る必要があるといえる。また,どんな英語教育が早期教育となるのかにつ いて知る必要がある。そこで,次は早期教育としての「英語」,あるいは「早期. 英語教育」といわれるものについて検討していくこととする。. 2.「早期英語教育」について. 2−1 早期教育から見た「英語」. 現在,幼児期からの「英語教室」や英語の教材など,幼児期における英語に. 対する関心はとても高いように感じられる。さらに無藤(1998)も,NHKで は幼児向けとして「英語であそぼ」という番組を流したり,幼児向けの通信教 育雑誌の中に英語コーナーがあったり,幼稚園で英語教室を開いたりしている と早期からの英語教育への関心が高くなったことを挙げている。. このことについて,市川(2004)は「早期英語教育」については「過熱化」 したというよりも,「習慣化」したというほうが事態を正確に認識したことにな るだろう,と述べている。これは,公立小学校でも英語を教えるということで,. 英語は小さい頃から始めた方がいいという考えに,疑問を感じなくなったので はないかということ,また,今までは乳幼児期から英語を教えるというのは,. かなり教育熱心というイメージがあったが,現在の状況では,そういう親の割 合は少なく,英語を楽しく学べればいいという親が多い,といった点を理由と して挙げている。. 10.
(16) 2−2「早期英語教育」のメリット ところで,こういった「早期英語教育」が子どもに及ぼすよい影響について は,「臨界期仮説」に関する事がよく挙げられる。「臨界期仮説」とは,生まれ. てから思春期にいたるまでのおよそ10年間ほどの言語習得時期をLanneberg (1976)が,言語習得の「臨界期」と称し,臨界期仮説(Critical Period Hypothesis)と唱えたと言われている(小西,2003)。. この点について無藤(1998)は,確かに,ある年齢以降の学習では,十分に 発達した状態,いわゆるネイティブ・スピーカー並みの英語力にはならないと. いう研究があることを述べている。また金森(2004)は,幼児期から英語を始 めるとネイティブのような発音を身につけることができる,という期待を持つ 向きが存在し,その根拠となるものが「臨界期仮説」であり,音声面に関して は「最適期・敏感期(言語の習得に最適,あるいは感受性の高い時期)」の存在. を支持する研究が多いことから,このような「臨界期仮説」に基づき早期英語. 教育のメリットが語られているのではないか,と述べている。しかし,同時に デメリットについても多くの研究者らが意見を述べている。. 2−3 「早期英語教育」のデメリット. 「早期英語教育」の危険性として,市川(2004)は,人問は適切な時期に適 切な言語刺激を受け,それを積み重ねていかなければ,ことばの能力を発達さ. せることができないことを挙げている。さらに,幼児期に与えられた言語への. 感受性は,本来は豊かな母語の能力の基礎をじっくりと育むために用いるもの であり,安易にマルチリンガルになる柔軟性がある時期と捉えるべきではない,. とも述べている。そのため,その重要性を十分認識しないまま,早期から英語. を学ぶとよいということだけに焦点を当てると,英語も日本語も十分に身につ かなくなる危険1生もあるということを指摘しているといえるであろう。. また,高良(1996)は,乳・幼児期に外国語を覚えるといっても,周囲がそ うした言語を話しているのを聞いて,模倣して使っているのであって,前頭連 合野をも総動員した言語獲得とはならない,といったことを指摘している。こ 11.
(17) のことについては,金森(2004)も,ただ英語を聞かせるだけでは英語を聴く 力,分かる力,さらに話す力をつけることはできない,と述べている。これは,. 言葉の獲得というのは「言葉と,それが表す意味が分かる」ということである. ため,覚えたフレーズを発話するだけでは,しゃべれるということにはならな い,といづた理由を挙げており,これは高良(1996)の言う,模倣しているだ. けでは獲得しているとはいえない,といった考えと同じであるということが分 かる。. さらに無藤(1998)は,英語を習得しようと考えると,相当の時間を有し, また条件も必要となってくると述べている。そのため,意義あるほどの英語の レベルを早期に獲得することまでは期待できないのではないかと指摘している。. 一方,子どもの影響についてのデメリットとして金森(2004)は,子どもの ためになると思いおこなっている英語が,子どもにとっては,自分の理解を超 えた英語を聞かされ続けることは強いストレスとなり,分かろうとする気持ち,. やる気,さらに英語学習への興味さえ失う可能性にもなりかねない,と述べて いる。そのため,子どもの理解がどれくらいのところにあるのか,嫌がってい る子はいないか,などを常に意識しながら「英語活動」をおこなうことが重要 であることを挙げている。. ここまででメリット,デメリットについて述べてきた。これらのことから,. 「早期英語教育」とは,幼児期から音声面を中心に英語力をつけることを目的. とした考えであるということが分かった。そして,英語力をつけるということ. を目的とした中でのメリットとデメリットが言われており,メリットよりもデ. メリットを挙げている人が多いということが見受けられた。そのため,山内 (1999)のアンケートからも,幼児期からの英語教育はおこなっていないと回 答した人が多かったのではないか,と考えられる。. しかしそれでもなお,幼児期から英語をおこなっている園があるということ は,「早期英語教育」で言われていることと,さらに他にも幼児期から英語を学 ぶ意義が何かあるのではないだろうか。. 12.
(18) 第3節幼児期から英語を学ぶ意義とは 金森(2004)では,子どものころから英語を学ぶ意義について,英語のスキ. ルの育成面で期待できることとして4点,価値観・態度の育成面で期待できる こととして2点,と大きく2つの観点から6つの点について述べている。詳し い内容については表にまとめてみると以下のように表すことができる。(表1). 表1 幼児期から英語を学ぶ意義. 増やすことができる (4)大人に比べ,学習に対する心理的なバリアが低いため,. 期待できること. (3)長期で見ると,音声としての受容語彙数を. 期待できること. 聞くことの基礎力を育てやすい. 価値観・態度の育成面で. (2)文字からではなく,音声からの理解により,. 英語のスキルの育成面で. (1)英語の音声的な特徴に慣れる. 英語の発話に対する違和感が少なく,その後の学習への. 抵抗も少なくなる. (5)外国の人との直接的な交流によって,文化・言語の相対性 に触れ,偏見の少ない心を育てる機会になる. (6)英語を通しての簡単なコミュニケーション活動が,幼児期 に必要な意思疎通や自己表現を取り戻す機会となり,. 人間としての基本的な資質である,「自尊感情」や. 「他者理解」の心,人と関わる態度・価値観を育てる. (金森,2004,p.74参照) 表から英語のスキルの育成面での期待については,音声面を中心とすること. が大切であるということが分かる。音声面の特徴として,よく子どもは「耳が 13.
(19) よい」と言われているが,それに当てはまるのは,母語習得が完全に終わって. いない幼い子どもたちであることが挙げられている。この時期は,自文化への. 執着も弱いため,母語にはない音声のつながりやイントネーションなどをその まままねることに抵抗が少ない。そのような理由から,聞く・話すなどの音声. 面の指導が幼児期には適していると考えられているのではないだろうか。この 音声面については「早期英語教育」で言われている「臨界期仮説」に基づいて幼. 児期には音声面の育成が期待できる,としていると考えられる。 しかし,価値観・態度の育成面については,「早期英語教育」のメリットでは. 挙げられていなかった。金森(2004)は,子どもは文化的アイデンティティが 未完成の段階にあるため,学習への心理的バリアが低いという特徴がある,と. 述べている。また,大人よりも開かれた心を持っているとも言えるため,子ど もは自然な出会いさえ与えてあげると,国境も肌の色も言語の違いも,ほんの 短時間で乗り越えられる能力を持っている,とも言っている。. 一方Sparks(1994)は,子どもは4歳から5歳までの間に,人種的な理由 や障害に対して不快や拒絶を示すことで,自分と異なる子どもと付き合うこと. を拒否するようになる,と述べている。これは,小学校からではなく,幼児期. から様々な人にかかわることで価値観や人に対する態度を育成することが必要 であることを示唆してくれていると考えられる。このことから,どちらも早期 から「英語」に触れることは,価値観・態度の育成において必要だと捉えてい るが,その理由は異なっているということが分かる。. よって,幼児期からの英語を学ぶ意義は,「早期英語教育」で言われていた,. 「臨界期仮説」に基づいた音声面の育成の期待だけではなく,異文化理解や他. 者理解といったような価値観・態度の育成の期待もできるという点もあること が分かった。だとすると,幼児期からの「英語」を見たとき,音声面の指導を 中心とし,英語力をつけることを目的としていれば,「早期英語教育」となるが,. 英語力をつけることが目的ではなく他に目的があるならば,それは「早期英語 教育」とはならないと考えられる。. これらのことから幼稚園における「英語活動」を見てみると,そこでのねら いとされていることが,今まで述べてきたそれぞれの立場から主張されている 14.
(20) ことに関連があると思われる。そこで次は,幼稚園における「英語活動」のね らいがどのような見解から導かれているのかについて検討していくこととする。. 第4節 幼稚園における「英語活動」のねらいについて 幼稚園での「英語活動」について,米田・前垣内(2002)と中山(2003)が 幼稚園での「英語活動」の実践報告をしている。その中で,両者ともその園で の「英語活動」のねらいを挙げている。. 米田・前垣内(2002)と中山(2003)の幼稚園における「英語活動」でのね らいを見ていくと,米田・前垣内(2002)は,「英語活動」におけるねらいと. して,以下の7点を挙げている。. ①英語のリズムを身につける。 ②簡単な挨拶ができる。. ③英語を聞いて英語と分かる。. ④基礎的な語彙なら聞いて,何について指しているか分かる。 ⑤正しい発音ができる。. ⑥文化的な行事等を擬似体験する。. ⑦異人種を見ても同じ人闇として対応できる能力を身につける。. ①②③④⑤ねらいを挙げている理由は,「早期英語教育」のメリットとして挙 げられている,「臨界期仮説」を基に音声面の育成には幼児期からがよい,と捉. えている研究者と同じ立場の考えであるということが分かる。さらに,⑥⑦に ついては,金森(2004)で言われている,価値観・態度の育成についてのこと をねらいとしていると考えられるが,「論題には英語活動とついているが,「我々. が行っている活動は,「英語活動」と呼んではいるものの,英語学習を主眼に考 えた英語教育である。」と述べていることを踏まえると,英語を言語として学び,. 英語力をつけることを重視していると考えられるので,米田・前垣内(2002) の幼稚園における「英語活動」でねらいとしていることは,「早期英語教育」の. 考え方と同じ立場であると言えるのではないだろうか。 15.
(21) 次に,中山(2003)について考えると,幼稚園での「英語活動」のねらいは,. 英語を学ばせ習得させるのではなく,音声を中心として,英語に触れ,楽しむ 授業をおこなうことで,英語は面白いと感じさせることである,と述べている。. これは,英語を学ぶことを目的としたねらいではないので,「早期英語教育」の. 考えとは違う立場にいると言えるのではないだろうか。. では,両者が違う立場であるということは見受けられたが,活動内容につい て見てみると,米田・前垣内(2002)は,子どもたちの年齢にあった親しみや すい歌や指遊び,または踊りなどを中心としていると述べており,中山(2003) も,歌・絵カード・ゲーム等で子どもたちを楽しく英語の世界に導いていくとし. ている。1章でも,活動内容について,音声・リズム動作を中心としていると. 述べた。以上の2つの園での報告からも,幼児期における「英語活動」での活 動内容は,主に歌・ゲーム・踊りなど,遊びながらできるものを中心にしてい るということができる。だとすると,ねらいは異なっていても,活動内容につ いては,両者とも同じ内容であるように思われる。. このようなことから,幼稚園における「英語活動」でのねらいは,幼児期か らの「英語」をどのように捉えているかで異なるのではないだろうか。これは,. 英語力をつけることを目的としているのか,興味・関心を育てることを目的と しているのか,という2つの立場の捉え方があるのではないか,と考えられる。 しかし,それぞれの幼稚園における「英語活動」でのねらいは違うのに対して,. 活動内容としてはどちらも同じ内容であることが見受けられた。では,活動内 容は同じであるのになぜねらいに違いが出てくるのだろうか。その背景にはい ったい何があるのだろうか,といったことが課題として挙げられる。また,米. 田・前垣内(2002)では,幼稚園における「英語活動」を「英語教育」と述べ. ているが,中山(2003)については「英語活動」としている。このことも,幼 稚園における「英語活動」のねらいの違いに何か関係があるのかもしれない。. そのため,幼稚園における「英語活動」の意義を考える上では,それぞれの. 幼稚園の「英語活動」のねらいがどういった位置づけにあるのかを見ていく必 要があると考えられる。 16.
(22) 第5節 幼稚園におけるr英語活動」の課題 現在小学校では,1章で述べたようにどれくらいの小学校が「英語活動」を 取り入れているのかについての実施状況は明らかにされているが,幼稚園にお ける「英語活動」についての具体的な実施状況としては,先行研究で明らかに. なっていることと,あとはほとんどないのである。さらに,小学校での「英語. 活動」の実施が,平成15年度で90%であることを考えると,幼稚園における 「英語活動」にも何らかの影響を与えていることも考えられるのではないだろ. うか。このことからも,幼稚園における「英語活動」の詳しい状況や3節で述 べたねらいについてなどが課題として挙げられる。そこで,幼稚園における「英. 語活動」についての研究を見たところ,先行研究からわかるとおりいくつか挙 げられたが,私立幼稚園・公立幼稚園別の実施状況や幼稚園の教諭が「英語活 動」をどのように捉えているのかについての研究はされていない。また,個々 の幼稚園での「英語活動」におけるねらいはあったとしても,それがどういっ た位置づけにあるのかについては明らかにされていないのである。. よって,私立幼稚園・公立幼稚園別の「英語活動」の現状や幼稚園における 「英語活動」の意義を明らかにしていくために,教諭が「英語活動」をどのよ. うに捉え,それがどういう位置づけにあるのか,について知るために以下のよ うな課題を追求することとした。. 先行研究より,いくつかの幼稚園については知ることができた。しかし,ど の幼稚園についても同じようなことが言えるのかどうかをみるためには,他の. 幼稚園についても見ていく必要があると思われる。さらに,山内(1999)のア ンケート調査の時と,2002年からの小学校での「英語活動」の導入後では,幼. 稚園における「英語活動」に影響を受け,実施状況が変わっているとも考えら. れるため,改めて現状を調べ直す必要があると考えられる。その際,現状を知 るためには一度で多くの情報を知ることができる,アンケート調査をおこなう. ことが妥当ではないかと思われる。これらのことから幼稚園における「英語活. 動」の現状はどうなのか,については研究1で分析することとした。 また,幼稚園における「英語活動」の意義を見るためには,「英語活動」のね. らいの位置づけを明らかにする必要がある。そのためには,幼稚園教諭の「英 17.
(23) 語活動」に対する捉え方や「英語活動」がどのようにおこなわれているのか,. などを知る必要があると思われる。そこで,幼稚園教諭のそれぞれの「英語活. 動」に対する捉え方を調べるために,幼稚園における「英語活動」の実態を調 べることや,教諭に聞き取り調査をすることが妥当であると考えられる。よっ て,幼稚園における「英語活動」の実態や教諭がどのように捉えているのか, については研究IIで分析することとした。. 18.
(24) 第3章兵庫県下の幼稚園における「英語活動」の現状調査 前章では,実施状況や活動内容について報告されている研究をいくつか紹介 し,簡単に説明した。しかし,小学校への導入後の影響を考えると,改めて現. 段階での現状を見直す必要があると思われる。そのため本章では,幼稚園での 「英語活動」での現状を調査し,幼稚園教諭が「早期英語教育」についてどの ように捉えているのか,について考察していきたい。. 第1節研究目的 兵庫県下の幼稚園における「英語活動」において,現状としてどれくらいの 園が「英語活動」を実施しているのか,また実施内容はどのようなものなのか,. について知ること。さらに幼稚園教諭の「早期英語教育」の意識について検討 することを目的とする。. 第2節 研究方法. 1.研究対象. 対象としたのは,兵庫県下南部の都市部の公立・私立幼稚園409園である。 このうち,公立は226園(55%),私立は183園(45%)である。. 地域を選定する際,公立と私立の割合が出来るだけ均等になるように検討し たところ,この地域の幼稚園がほぼ均等になったために,この地域を研究の対 象にすることとした。. 2,研究方法. 研究方法は,事前に兵庫県下の幼稚園を名簿で調べ,そこから選んだ兵庫県. 下南部の都市部の公立・私立幼稚園に,2005年4月,郵送による質問紙法の アンケート調査をおこなった。なお,アンケートは当てはまるものについて○ 19.
(25) をつけて回答する形式と,自由記述による形式の2種類を組み合わせたものを 作成し,使用した。. その後,返信のあった幼稚園の結果から,実施の有無,実施内容や早期英語 教育に対する意識など,公立・私立幼稚園ごとに分析した。. 3.調査内容. 内容:調査内容は,以下の通りである。(資料参照)。. (ア)園について. ①公立・私立 ②園児数 ③教員数 (イ)英語活動の現状について. ①英語活動実施の有無 ②今後おこなうかどうか ③活動状況(回数・時間). ④指導者(担任・外国人英語講師・日本人英語講師). ⑤開始年齢 ⑥活動内容 (ウ)幼児期からの英語教育について(自由記述). 第3節 結果. 1.アンケート調査から幼稚園における「英語活動」の現状. 1−1幼稚園における「英語活動」の内容 アンケート調査から,兵庫県下南部の都市部の幼稚園409園中171園(42%) から有効回答を得ることができた。アンケートの各項目についての結果は以下 の通りである。. ア)園について. 今回のアンケート調査の結果,公立幼稚園・私立幼稚園の割合は,公立幼稚 園88園(51%),私立幼稚園83園(49%)であった。(図3−1). 20.
(26) あなたの幼稚園は,公立ですか,私立ですか?. n=171). 公立,88. 私立,83. (51%). (49男). 図3−1 公立幼稚園・私立幼稚園の割合 また,今回アンケート調査をおこなった幼稚園の園児数の割合・教員数の割 合は,公立幼稚園・私立幼稚園とも以下のような結果であった。 (表3−1,3−2). 表3−1園児数の割合 公立(園). (園の数). 3. 24. 24. 50人∼100人未満. 13. 43. 56. 100人∼150人未満. 13. 17. 30. 150人∼200人未満. 14. 4 1. 18. Q。園児数は何人ですか. 私立(園). 50人未満. 40. 200人以上. 41. 結果からもわかるように,私立幼稚園では,200人以上の園児がいると答え た園が一番多く,規模が大きい園が多くあることが分かった。公立幼稚園では. 逆に50人∼100人の欄が一番多く,私立幼稚園に比べて規模が小さい園が多 くあるということが分かった。. 21.
(27) 表3−2 教員数の割合 公立(園). (園の数). 1. 31. 32. 20. 45. 65. 10人∼20人未満. 37. 40. 20人∼30人未満. 9 2. 3 0 0. 私立(園). Q.教員数は何人ですか? 5人未満. 5人∼10人未満. 30人以上. 9 2. また,教員数の割合を見てみると,園児数が多かった私立幼稚園においては,. 教員数も10人∼20人未満と答えた園が一番多いという結果であった。また,. 園児数が少なかった公立幼稚園では,教員数も5人∼10人未満と答えた園が多 かった。よって,園児数が多いと教員数も多いということが分かった。. イ)英語活動の現状について. 英語活動の実施状況については,現在英語活動をおこなっていますかという 問いに対し,おこなっていると回答したのは56園(33%),おこなっていないと 回答したのは113園(66%),無回答は2園(1%)であった。 (表3−3)(図3−2). また,おこなっていないと回答した園に対し,今後おこなうことを考えてい. ますかという問いをしたところ,はいと回答した園は13園,いいえと回答し た園は92園,無回答は8園であった。(表3−4). 表3−3 私立幼稚園・公立幼稚園別「英語活動」を. おこなっている割合 Q.現在,英語活動を. 私立(園). 公立(園). (園の数). (%). はい. 44. 12. 56. 33. いいえ. 37. 76. 113. 66. 無回答. 2. 2. 1. こなっていますか. 0 22.
(28) 現在英語活動をおこなっていますか?. 無回答,2 (nニ171) はい,56 (33%). いいフし,. 113 (66%) 図3−2 「英語活動」をおこなっている割合. 表3−4 おこなっていない園の今後のおこなうことの可能性 Q.いいえと答えた方,. 後おこなうことを考え. 私立(園). (園の数). (%). 8. 13. 12. 公立(園). ていますか はい. 5. 》 いえ. 29. 63. 92. 81. 無回答. 3. 5. 8. 7. この結果より,兵庫県では公立幼稚園・私立幼稚園合わせて約3割の幼稚園 で「英語活動」をおこなっていることが見受けられた。割合でいうと,私立幼 稚園の方が公立幼稚園に比べ実施している園は多かった。. 「英語活動」の実施について,公立幼稚園で実施している園はいないであろ. うと予想していたにもかかわらず,1割の公立幼稚園がおこなっているという 結果であった。また,現段階ではおこなっていないが,今後おこなうことにつ いては検討中であると回答した公立幼稚園が,私立幼稚園を僅かではあるが上 回る結果となった。. 23.
(29) ここからの結果については,英語活動をおこなっていると答えた園に対して. の計56園(内私立幼稚園44園・公立幼稚園12園)でのデータとなる。 活動開始時期について,アンケート調査での回答には,1年前,2年前,3 年前,それ以前という4つの項目を設けた。しかし,それ以前と答えた園に対 してはさらに,詳しい開始時期を記入するよう求めた。結果は以下の通りであ った。(表3−5). 表3−5 「英語活動」の開始時期 Q.いっごろからおこなって. 私立(園). 公立(園). (園の数). (%). いますか. 1年前 2年前 3年前. 3 2 5. それ以前. 34. 無回答. 0. 5 1 0 5 1. 8 3 5. 14. 39. 70. 1. 2. 5 9. 「英語活動」の開始時期においては,私立幼稚園は小学校の影響があって始. めた園は少なく,それよりは早く概ね10年∼20年くらい前より積極的に実施 しているであろうと予想していた。結果,私立幼稚園は予想していた通り,そ. れ以前が最も多かった。しかし,その年数は予想していたよりもさらに前から. おこなっている園が多く,20年前や30年前,さらに,最も長くおこなってい る園では50年前からおこなっていると答えた園もあった。一方公立幼稚園で は,1年前からとそれ以前が最も多かったが,それ以前の中でも,5年前から の開始であり,私立幼稚園に比べて開始時期は最近であることが分かった。. 次に,活動状況についてだが,活動状況については,回数と時間を記入方式 で回答してもらったのだが,集計の際,比較しやすくするために活動回数は,. 週1回と週2回,月1回と月2回,年1回とそれ以外の6つに分けることとし た。活動時間は,30分未満,60分未満,それ以上の3つに分けることとした。 (表3−6,3−7). 24.
(30) 表3−6 「英語活動」をおこなう回数 Q.どのくらいの回数. 私立(園). 公立(園). (園の数). (%). 27. 48. 2 8 6 3 8. 3. こなっていますか. 1 0 4 1 3 3. 26. 週1回 週2回 月1回 月2回 年1回. 2 4 5 0 5. その他. 14 10. 5 17. (*その他には,年6回や月3回,年9回などの回答があった。). 表3−7 「英語活動」をおこなう時間 Q.どのくらいの時間おこ. 私立(園). 公立(園). (園の数). (%). 28. 49. 21. 38. なっていますか. 30分未満. 25. 60分未満. 16. それ以上. 3. 3 5 2. 5. 9. (*それ以上には,90分,120分,最も長くて180分という回答があった。). 回数と時間について見てみると,私立幼稚園は週1回が最も多く,時間は30 分未満としている園が多いので,少しの時間を定期的に実施していることが見. 受けられる。一方,公立幼稚園は,月1回や,年1回などで実施している園が 多いが,時間は60分未満と比較的長い時間かけておこなっているので,私立 幼稚園のように定期的には実施していないが,その代わりに一回の活動にかけ る時間を長くしていることが分かった。. 指導者や開始年齢については,あてはまるものに○をつけてもらったが,回. 答には,指導者にも開始年齢においても複数Oをつけたものがあった。しかし 指導者においては,活動時に複数の指導者を設けている園もあると考えられた. 25.
(31) ので,結果はデータをそのまま使用した・開始年齢で複数○のあった場合につ いては,回答の中の最も低い年齢のデータを使用した。結果は以下の通りであ る。(表3−8,3−9). 表3−8 「英語活動」の指導者 Q.誰がおこなってい. 公立(園). 私立(園). (園の数). (%). ますか. 1. 2. 38. 67. 9. 0 9 2. ll. 20. 5. 0. 5. 9. 1. 0. 1. 2. 担任. 1. 外国人英語講師. 29. 日本人英語講師. 外国人英語講師と日 本人英語講師 全員. 表3−9 「英語活動」の開始年齢. Q何歳児からおこな. (園の数). (%). 0 7. 28. 50. 17. 30. 5. ll. 20. 公立(園). 私立(園). っていますか. 3歳児 4歳児 5歳児. 28 10. 6. この結果から,私立幼稚園・公立幼稚園共に,ほとんどの園が外国人英語講 師を指導者にしているということが分かった。さらに私立幼稚園では,外国人 英語講師だけでなく,日本人英語講師も含めておこなっていることや,担任も 含めた3人でおこなっている園もあるということが見受けられた。. また,開始年齢については,私立幼稚園では3歳から、公立幼稚園では4歳 からと年長ではなく,年少や年中の比較的早い段階から何らかの形で「英語活 動」をおこなっていることが分かった。. 次に活動内容について聞いたところ,以下のような結果となった。活動内容. 26.
(32) については,実際に取り入れている活動全てに回答してもらったため,一つの 園で複数の活動を取り入れた園も多くあった。(表3−10)(図3−3). 表3−10私立幼稚園・公立幼稚園別「英語活動」における活動内容 Qどんな活動をおこなって. 私立(園). 公立(園). (園の数). いますか. ①CD・テープ・ビデオなどを. 29. 2. 31. ②絵本・紙芝居を鑑賞. 30. 35. ③チャンツ. 30. 5 7. ④ゲーム. 42. 11. 53. ⑤歌. 44. ll. 55. ⑥劇・製作などの創作表現活動. 7. 0. 7. 11. 1. 12. 26. 4. 30. 5. 0. 5. 使った活動. ⑦教科書・ワークシートなどを. 使って学習 ⑧行事などに取り入れる ハローウィン・クリスマスなど). ⑨ゲストを呼んでの活動. Q9どんな活動をおこなっていますか?. (n=56). 60 50 40 蝋 祠30 照 20 10 0. 一 53 55一. 31. 30 12. 1 2 3. 4 5. 6 7 8 9. 活動内容. 図3−3 「英語活動」における活動内容 全体. 27. 37.
(33) 活動内容については,歌・ゲーム・チャンツといった活動をおこなっている のではないかと予想していたが,この結果から,「英語活動」をおこなっている と答えた園のほとんどが,予想通り,歌・ゲーム・チャンツなどと答えていた。. また,同じ座学の活動であったとしても絵本や紙芝居などといった活動は回答. が多かったが,教科書・ワークといった活動は回答が少ないということが分か. った。私立幼稚園と公立幼稚園を比較すると,私立幼稚園では①のCD・テー プ・ビデオなどを使った活動に半数近くの園がおこなっていると答えたが,公. 立幼稚園では,1割しかおこなっていないという違いが見受けられた。また, 私立幼稚園では,「生活発表会には英語あそびとして簡単な劇あそび生活あそび に発展させています。」などといった意見から,⑥の劇・製作などの創作表現活 動をおこなっていると回答した園も複数あった。. 1−2幼児期からの「早期英語教育」に関する幼稚園教諭の意識 次に,早期教育について賛成,反対に対する質問をおこなった結果,賛成が 77園(44%),反対が42園(25%),どちらでもないが25園(15%)という結果と. なり,無回答が27園(16%)あった。また,質問のあとに,自由記述でそれぞれ の教諭の考えを記入するよう求めた。(表3−11)(図3−4). 表3−11 「早期英語教育」に賛成・反対の割合 Q幼児期から,英語教育を. こなうことについて賛成. 私立. 公立(園). (園の数). (%). 園). ですか,反対ですか 賛成. 45. 32. 77. 44. 反対. 18. 24. 42. 25. どちらでもない. 9. 16. 25. 15. 16. 27. 16. 無回答. !1. 28.
(34) 英語教育に賛成ですか,反対ですか? (n=171) 無回答,27, (16瓢). 賛成,77,. どちらでもない,. (44鶉). 25、(159丘). 反対,42,(2騙). 図3−4 「早期英語教育」に賛成・反対の割合 全体. この結果より,アンケート調査をおこなった幼稚園の教諭については,「早期. 英語教育」に反対と答えた人は全体の4分の1しかおらず,約半数の人たちが,. 「早期英語教育」に対して賛成であると答えた。どちらでもないという意見の 中には,内容や指導法などによっては賛成にも反対にもなるという考えの人と,. 家庭でなら賛成だが,幼稚園でおこなうことについては反対という考えの人な どが含まれていた。. 賛成意見として挙げられたものをいくつか紹介すると,. 「耳の鋭い幼児期に聴覚を通して生きた英語を学ぶことにより,正しい発音が 身につく。外国人講師と触れ合うことで英語に対しての親しみを持ち,国際人 としての初歩の教育となる。」「異文化に触れる機会を増やすという捉え方で. は賛成です。」「小さい頃から英語を聞いたり、歌・絵本・ゲームなどを通し. て英語に親しむことは、その後の英語教育をスムーズに受け入れることが出来 ると思うから。但し、日本語教育をきちんとしていくことが大前提だと思いま す。」などであった。反対意見として挙げられた意見は,. 「自分の母国語をしっかり理解できていないのに,他の国の言葉は理解するの. は不可能だと思う。まず,日本語をしっかりと使えるように指導すべきであ る。」「幼児期には,子どもの心身の健やかな成長の為に,体験しなければい 29.
(35) けないことが沢山あると思います。例えば,身近な自然にいっぱい触れて名も. ない素朴な遊びを存分に体験し,感じたこと,思ったことを感性豊かに表現す るなど,人問の根っこの時代である幼児期には,心を動かせて遊ぶことを通し て,真の生きる力を育てたいと思います」「きちんとした日本語を話せること が基本。ただし,耳は小さいほうがいいと聞いているので耳に入れる経験はい. いかとも思う。歌やゲームetc…」などであった。 しかし,今挙げた内容をよく見てみると,賛成と答えていても反対と答えて いても肯定的にも否定的にも捉えることができる意見が含まれていた。だとす れば,幼稚園教諭の「早期英語教育」に対する考えは,もっと深いところまで. 見ていく必要があるのではないかと感じた。そこで賛成・反対関係なく全ての 意見を,肯定的・否定的に分け直し内容が同じものについてはカテゴリーでく. くり,そこからもう一度教諭の「早期英語教育」に対する考え方について検討 していくこととした。. 30.
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