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院生から見た指導体制のあり方とMOBのあり方

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Academic year: 2021

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(1)Title. 院生から見た指導体制のあり方とMOBのあり方. Author(s). 瀬戸, 健一. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 2: 17-22. Issue Date. 2012-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2911. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第2号. 院生から見た指導体制のあり方とMOBのあり方. 瀬 戸 健 一. *. MOBの研究プロジェクト委員会の一員として、筆者は教職大学院(札幌キャンパス)の修了生2 名にインタビュー調査を行った。1名は30代ストレートマスター(男性)、1名は40代現職教師(男性) である。両氏とも公務多忙な中、インタビュー調査に協力していただいた。本大学院の修了生として 教職大学院に対する真撃に学ぶ姿勢と大きな期待感が伝わってきた。両氏に、「院生から見た指導体 制のあり方について、自由にお話しください」「MOBのあり方について、自由にお話ください」と半 構造化面接を実施し、発話記録を筆者がまとめた。その後、発話者に発話記録を送付し、表現等の吟 味をしてもらった。修正はなかった。 インタビュー調査の一般的な課題に見るように、本調査でも回答者側の抵抗感の存在(本調査では 指導・評価関係への懸念など)、質問者側の記録・分析段階でのバイアス、回答者と質問者の理解の ずれなど複数予想される。札幌キャンパスの修了生という限られた調査記録ではあるが、「院生から 見た指導体制のあり方とMOBのあり方」についての修了生の声を報告したい。. 「1」インタビュー調査の方法. ①A氏(2011年3月の修了生)のインタビュー調査 調査日時:2011年7月6日(約60分)、調査内容:院生から見た指導体制のあり方について、MOB のあり方について、調査方法:半構造化面接. ②B氏(2011年3月の修了生)のインタビュー調査 調査日時:2011年7月27日(約60分)、調査内容:院生から見た指導体制のあり方について、MOB のあり方について、調査方法:半構造化面接. 「2」インタビュー調査の結果. 発話記録は、次のように表記している。例えば、A氏へのインタビュー調査結果(発話記録)は、 内容のまとまりと時系列の順にAl、A2、・・・としている。 (1)MOBのイメージ (ストレートマスター). Al 院生にとってMOBの意味が不明であった。MOBのイメージが分かりにくくなっている。. MOB創始者には分かるかもしれないが、院生には分からない。「既存の修士論文ではない、実践論 *北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)札幌. 17.

(3) 瀬 戸 健 一. 文といわれているが」「実践論文なら日記的な報告記録でいいのか」「文科省の意味づけが院生からは. 理解できない」。院生にとってMOBに対する「魅力」が. ない状況にある。教職大学院の魅力は「実. 践力がつくこと」であって、「既存の大学院にみる学問の深化ではない」。そこが、教職大学院の選択. のモチベーションであった。「実践力がつく=MOBの作成につながらない」ことが問題である。. (現職教師). B3 教職大学院の特色である「修士論文は書くレベル高くなり、MOBはそれと比べて書くレベル が低い」というようなメッセージは、MOBのマイナスのイメージである。MOBを書くモチベーショ ンあがらない。「MOBの売りが、書くことが楽なのではなく」「MOBの売りが、書いてみたい、作っ てみたい、将来役に立つ」というようなコンセプトが重要である。外発的になるがモチベーション醸 成が必要である。. (2)MOBの指導方法の課題 (ストレートマスター). A2 2年間の実践を形にするのはよしとするが、「どんな形にするかは、初期の先輩たちはポート フォリオ、記録のつづりでよかった(1期生2期生)」から「スタッフが代わったせいか、指導教官 の指導方針が変遷したように感じた、指導者が従来の修士論文に近いものを求めていた」「コンセン. サスが教員で共有されていないのではないか」. A4 2年生の7月からでもMOB作成は間に合わない。研究の記録(貯金)の整備が必要。入学し た1年目から実習や講義の振り返りもMOBの資料として活用できる。最初は大学院の雰囲気(通学). に適応することで精いっぱい(4月、5月)である。6月は現場の実習で一杯一杯である。1年生7 月に初めて余裕ができた。1年生前期は忙しいが、やるべきことはあり\2年間を通したMOBのス トーリーと部品づくりをする必要がある。. A5 定例の指導会の助言に加えて、「書き方の指導」や「院生に何で書けないのか」などもっと面. 接で聞いてほしかった。創設期から先生方の悩みを共有しながら「どうやったらいいMOBになるの か」、垣根なく相談してほしかった。指導の時間と回数ではなく、学生側の満足度にMOBは影響さ れるのではないだろうか。. (現職教師). Bl 現職院生へのMOBの指導体制は十分であった。現職院生は、現場での目的意識があり大丈夫 である。しかし、ストレート院生には指導が不十分で、放置されているイメージがあった。放置とい. う表現は語弊があるが、もともと研究への目的意識が希薄なストレート院生への対応は、検討が必要 である。現状では、ストレート院生のMOBへの目定意識が醸成されていない。「絵に措いた餅」で はないが、指導者側がMOBを書いたことがないことを受け止める必要がある。 B2 授業の中で「修士論文とMOBの違いが、先生方で押さえられていないのではないか」と問い かけても、教員が十分に答えてくれない状況であった。. 18.

(4) 院生から見た指導体制のあり方とMOBのあり方. B5「課題の見つからない1年生」は「1年生の実習の在り方(受け入れ側)」に問題がある。例えば、 「院生の問題と受け入れる教員の消極的姿勢」「受け入れが面倒くさい」「後進育成を拒む文化」など ある。. (3)MOBの指導体制への期待と提言 (ストレートマスター). A3 指導教員の独自性である研究姿勢として「ポートフォリオ形式から修士論文形式まで」、各自 の研究方法とテーマ等を説明したほうがよい。院生が教員を選べないとしても、研究方法等を開示さ れていたほうが、「そこからMOBの話が始まる」のではないかと考える。教員の考え方の違いがあ るいのが、「研究方法の前提」として重要であり、そこから何かが共有される。院生にとって暗黙の. 暗闇としてのMOBよりも、混沌としているが目にみえるものがよい。また、ポートフォリオ形式で も研究枠組みとして可視化可能なものに、まとめあげる力量が必要である。. (現職教師). B4 教職大学院の授業全体は役に立った。1年生の第一セメスター「学校教育の課題探し」は、内 容は現職寄りだったが、「今抱えている課題の掘り起こし」「課題を解決する方法」をMOBの出発点 にするには効果的であった。しかし、その後の教科は、MOBの基底をなすような切片づくりとして、 カリキュラム内容の連続性がなかったのではないだろうか。MOBに関していうと、授業が分散的に 開設され、「教員の中にMOBの全体像をもって、院生をガイドしていくプロセス」の提示など必要 である。具体的には、それぞれの授業レポートは大変だが、授業レポート(振り返りではない)の20 科目×2ページで40頁のMOBになり、MOBとしての集積が可能であると考えることである。教員. 側の研究姿勢として、「MOBにつながる科目の基底部分」の説明が必要である。「課題意識、解決プ ロセス」が1年と2年で変わっていい。. B6 授業の中では院生が質問する姿勢が問われている、(私自身は)「コミュニケーションの定義と は何か?」など2年生第4セメスターの各授業で質問した。「授業のなかで受け身で教わる状態から、 前向きな質問する状態になるような授業」が必要である。具体的には「MOBを書くための授業」 「MOB関係質問コーナーの開設」「MOB作成・発表としてのクライマックスである2年生の4セメ の興奮を、早く1年生にもっていく必要がある」。具体的には、「1年後期のMOBデザイン発表の計 画(早期取組)」「MOBの完成形への教員全体での助言の在り方」「研究の足りない部分の指導ではな. く、完成形へのガイダンス」など必要である。教員側のMOBへのこだわりを組織的に体系的に伝え てほしい。1年生のすべての教科を通して、「MOBの2年生への出発点」になることを期待したい。 院生同士の情報共有の場として、2年生(ヨコの関係)のMOBの悩みの共有の場の設定、MOBの 2年生発表練習会(院生の自主的相互交流会)、中間発表会など必要であり、そこへの1年生の参加 も必要である。. 「3」まとめと考察. 繰り返しになるが、本調査は札幌キャンパスの修了生2名という限られた調査記録である。それゆ え、「院生から見た指導体制のあり方、MOBのあり方」について一般化することはできない。得ら. 19.

(5) 瀬 戸 健 一. れた発話記録を解釈することは、慎重でかナればならない。本調査は、今後の教職大学院の担うべき. 役割を具体化することを目指して、「札幌キャンパスの指導体制のあり方やMOBのあり方」に焦点 化しインタビュー調査を実施したものである。調査上の限界はあるが、今後の研究の出発点として位 置づけたいと考えている。今後も、継続して調査研究を重ねる必要があり、各キヤンパスの独自性、 各キヤンパスにおける共通性などの観点からも調査する必要がある。 以下、筆者の個人的な見解になるが、得られた発話記録をもとに、(ヨカリキュラムの階層性、②教 育研究の方法論の困難性、③教師の実践志向性、の各観点から説明を加えてみたい。. (1)カリキュラムの階層性. 田中(2001)によれば「教育という暖味な営みを対照とする教育学の中にあって、カリキュラムは、 研究対象として一見、その具体像を把握しやすいように思われがちである。(中略)カリキュラムの. 実体を捉えるのは、一般に考えられるほど容易ではない。現実のカリキュラムは多くの層からなって いる。われわれがこの多層性の中でどの水準で議論するかを明示しなければ、議論が生産的にならな いであろう」と下図のような多層性を構造化し説明している。. 表1 カリキュラムの多層性(田中,2001). Ⅰ層 制度化(教育行政)されたカリキュラム ‥. ・意図されたカリキュラム. Ⅱ層 計画(各校・各教師)されたカリキュラム‥. ・意図されたカリキュラム. Ⅲ層 実践(各教師)されたカリキュラム‥ ‥・. ・意図されたカリキュラム. Ⅳ層 経験(院生一人ひとり)されたカリキュラム・. ・意図されなかったカリキュラム. 「指導体制のあり方やMOBのあり方」をカリキュラムの階層構造に着目して検討してみたい。一 例として4つの階層を上位から説明すると、①「制度としてのカリキュラム」の課題、(発話記録の 一部:文科省の意味づけが院生からは理解できない。院生にとってMOBに対する「魅力」がない状 況にあるなど)。②「計画されたカリキュラム」課題、(発話記録の一部:2年間を通したMOBのス トーリーと部品づくりをする必要があるなど)、③「実践されたカリキュラム」の課題、(発話記録の 一部:スタッフが代わったせいか、指導教官の指導方針が変遷したように感じた、指導者が従来の修 士論文に近いものを求めていた、コンセンサスが教員で共有されていないのではないかなど)、④「認 知されたカリキュラム」の課題と展望、(発話記録の一部:1年生の第一セメスター「学校教育の課 題探し」は、内容は現職寄りだったが、「今抱えている課題の掘り起こし」「課題を解決する方法」を MOBの出発点にするには効果的であった。しかし、その後の教科は、MOBの基底をなすような切 片づくりとして、カリキュラム内容の連続性がなかったのではないだろうか)など具体的な課題が浮 かび上がってくる。 いわゆる「隠れた」(hidden)カリキュラムという教員側の教育意図と院生側の学習経験の間に生. じるギャップに着目した4層構造を参考にするならば、上位Ⅰ層から順に下位層のカリキュラムへと いうカリキュラムを細分化していく制度設計からの4年間の流れに加えて、実際に入学し、修了した 院生の教育効果のアセスメントなどⅣ層から順に上位層へという、教室のリアリティから積み重ねて いくカリキュラム研究の視角も同時に求められている。教職大学院の制度化された教育意図(Ⅰ層) と目の前の大学院生の学習経験(Ⅳ層)の関連性に大きな関心をもち、北海道教育大学教職大学院に. −て(1.

(6) 院生から見た指導体制のあり方とMOBのあり方. おける独自の実践的理論研究としてのMOBのあり方を探求していくことが求められている。 しかし、このような実践的理論研究は、繰り返し指摘されてきたことではあるが、二つの大きな問. 題を抱えているともいえる。それは「教育研究の方法論確立の困難性」、「教師の実践志向性」、の問 題である。. (2)教育研究の方法論確立の困難性一見慣れた二つの方法論的前提− ここで大学院を出た若手研究者の声を紹介する。筆者と同じような研究方法上の問題意識を有する. 水越(2011)は教育学とは異なる研究分野である経営学研究の観点から次のような指摘をしている 「(略)見慣れた二つの方法論的前提といいながらも、やはりお叱りを受けてしまいそうなことをい えば、辛か不幸か、商学や経営学という研究領域は、学問としての地位が高いとはいえないようであ る。一方で、商学や経営学は実学であって、科学ではなくアートであると言い切るほど、僕には思い 切りもない。他の研究領域からは学問ではないとされ、ビジネスの現場からは、実学というには余り にも役に立たないとと言われる。少ないながらこの10年ぐらいの経験からいえば、それほど間違って ないように感じる。」 このような研究者と実践者からの厳しい視線を感じた水越は、大学院で学んだ研究方法を次のよう に説明している。それは、実証主義的視点と相対主義的視点とよばれていたり、法則定立的研究と解. 釈主義的研究というものである。前者は研究上の実在を仮定し実在の構造性を明らかにし、実際に当 の実在性を構築してしまう。後者は非実在性を問い、実在の仮定のために膨大な事前分析を必要とし、 実在の構築性そのものが議論の焦点になる。商学・経営学では大きく二つの方法論的前提が緩やかに 対立しながら共存していた、それは現在も変わっていないと述べている。 また、両方法論における困難性を次のようにも説明している。前者は自らが観察であることを意識 しすぎて行き詰まり、後者は自らが観察であることを前提にしようとして際限がなくなる。このよう な方法論の限界を踏まえたうえで、ビジネススクールでの事例を用いた教授方法であるケースメソッ ドの可能性について説明している。. 本調査においても、修了した院生から次のような意見が出ている。指導教員の独自性である研究姿 勢として「ポートフォリオ形式から修士論文形式まで」、各自の研究方法とテーマ等を説明したほう. がよい。院生が教員を選べないとしても、研究方法等を開示されていたほうが、「そこからMOBの 話が始まる」のではないかと考える。教員の考え方の違いがあるいのが、「研究方法の前提」として 重要であり、そこから何かが共有される。院生にとって暗黙の暗闇としてのMOB よりも、混沌とし ているが目にみえるものがよい。また、ポートフォリオ形式でも研究枠組みとして可視化可能なもの に、まとめあげる力量が必要である。このような意見も参考に、教職大学院での実践的理論研究を確. 立していく必要がある。そのような確立過程の中で、想定される実践者側の問題についても考察した い。. (3)実践者の行動特性−「実践的関心(clinicalmind)」. 発話記録の中に、「実践力がつく」ことが最も重要であり、「実践力がつく=MOBの作成につなが らない」ことが問題であるという指摘がある。このような実践力と研究力のイメージとしての傾斜が なぜ発生するのであろうか。院生の教職大学院への期待が、「実践的関心」が強くなり、「研究的関心」 は相対的に弱くなるという傾向は特別なものであろうか。このような「実践と理論の融合プロセスと しての研究のあり方」における大きな壁は、Sergiovanni(1989)により指摘されている。アメリカ. 21.

(7) 瀬 戸 健 一. における教師行動を分析すると、教師の「実践的関心(clinicalmind)」の過度な強さが特徴的である。. このことは当然のことでもあるがそのことにより、「まずは実践ありき」という無自覚で極端な態度 志向のため、実践家において研究における論理的プロセスが動くことは極めて少ないと述べている。 すなわち実践家の世界において支配的なのは、問題解決のための行動を数ある選択肢の中から選ぶ 傾向であり、それに役立つ知識であって、必ずしも科学的な手続きで検証された理論ではないという ことである。要するに、実践者は理論研究よりも行動を優先する。このような「実践的関心 (clinicalmind)」にみる教師の行動特性を、「真理を探求するものではなくて(nottruth−Seeker)、 真理を構成するもの(truth−maker)」と表現することができると述べている。以上の分析は、「理論 よりも実践」の教師の行動特性の総体として教職大学院への役割期待が拡散し、混乱していくことを. 的確に説明している。「まずは実践ありき」で、「どのようにして子どもたちは学ぶのか」という実践 研究からの問いかけが意識されずに日々の実践は営まれている可能性も否定できない。このような実 践における根底からの問いかけをもちつづけることが教職大学院の大きな使命でもあろう。 「指導体制やMOB作成のプロセスと方法論として」、どのようなことが院生から望まれているのか、. またどのような指導が実際には効果的なのか、在籍する院生や修了生の声を今後も参考にしながら、 研究調査を進めていきたい。. く参考・引用文献〉. 水越康介 2011「商学や経営学研究の方法論を考えながら一『企業と市場と観察者』を刊行して一」書斎の窓 7月8月 No.606 有斐閣 pp.43−47. Sergiovannie,T.J.Mystics1989NeatsandScruffies:informingProfessioalPracticeinEducationalAdministration.Jornal OfEducationalAdministr−ation,27−2,pp.7−21.. 田中統治 2001「教育研究とカリキュラム研究一致育意図と学習経験の元離を中心に一」山口満編著「現代カリキュ ラム研究」 学文社 pp.21−33.. ?2.

(8)

参照

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