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特別活動の取組みを活かした児童の言語能力の育成

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Academic year: 2021

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特別活動の取組みを活かした児童の言語能力の育成

小笠原哲司

(高知大学)

鹿嶋 真弓

(高知大学)

Development of childrenʼs linguistic abilities using

approaches to special curricular activities

Tetusi Ogasawara

(Kochi University)

Mayumi Kashima

(Kochi University) キーワード:特別活動・学校ぐるみ・言語能力の育成

1はじめに

高知市立A小学校は、児童数446名、18学級(特別支援学級3)の中規模校である。これまで、高 知県教育委員会による教育課程拠点校(国語科)の指定を受け、「活用力を育てる国語科授業の創造 〜『考える』国語の授業づくりを通して〜」を研究主題とし、長年にわたって国語科教育の研究・ 実践に取り組んできた伝統がある。 しかし、言語能力の育成については、単に国語科授業の改善・充実を図るだけでは、日常場面に 活かすことは難しい。言語能力には生活言語能力と学習言語能力がある。言語能力の育成のために は、実際に言語を用いて行う言語活動を各教科等において充実させるとともに、体験活動を通じて、 実社会の中で様々な事象に触れたり、多様な他者との交流の機会を持ったりすることも重要であり、 アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善の中で、それらの充実を図っていく必要がある(2016, 文部科学省)。そこで本校では、学校・学年行事や集会活動、帯タイム等の特別活動における実施方 法および実地内容を工夫し、教育活動全体を通して子どもどうしが関わり合いながら、言語活動を 行う体験の場を設定することで、生活言語能力と学習言語能力のいずれもより効率よく効果的に育 成できると考えた。

2 主題設定の理由

公立学校において教職員の入れ替わりがある中で、蓄積された研究・実践の成果や教育活動など を継承し発展させていくことができる学校体制をめざして、次のような方針を定めている。 学校ぐるみで取り組む体制づくり ① 全校児童が一斉に、かつ同時に取り組む学習活動を常時的に行う。 ② 全学年が取り組む学校・学年行事や集会活動等を通じて言語活動を行う場を設定する。 ③ どの学級でも授業の中で取り組む内容や方法を確立する。 ④ 教職員が共通の目標を持ち、その達成に向けて協働的に取り組む。 これらを教職員が意識的に行うことで、日々の授業だけにとどまらず特別活動等を活用すること でら、学年・学級の取組みの差も解消され、学校全体で児童の言語能力を高めていくことができる と考えられる。そこで、特別活動の取組みを活かした児童の言語能力の育成をテーマに研究を進め ることとした。

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3 本研究に迫る校内研修の概要

① 学力標準調査の結果分析および今後の指導・支援のあり方について検討。 ② 特別活動を通して児童の言語能力の育成を図る教育計画の作成。 ③ 外部講師を迎え、特別活動・学級会活動に関する研修。

4 帯タイムに全学級で取組む4つの活動

(1)音読タイム 毎週木曜日の朝8時30分からの10分間、全校音読を行ってい る。 児童は、各教室であらかじめ配布された音読教材を手に、校 内放送による指示や範読、クラベスのリズムに合わせて一斉に 音読を行う。放送を担当する教員は輪番制で、放送原稿の案は 研究主任が作成している。時には、向き合う校舎(南校舎と北 校舎)の窓から全校児童が、掛け合いをしながら読み合うこと で、互いに高め合いながら活動を続けることができる。教材に よっては、低学年と高学年で読む速さが違うこともあるが、全 ての学級の児童が一斉に同じ活動をすることで一体感を感じな がら、子どもたちは、自信をもって堂々とした声で音読ができ るようになっている。 (2)短作文タイム 毎週水曜日の朝8時30分からの10分間は、短作文を書く時間である。各学年のねらいに即して短 作文を書かせることで、児童が文章を書くことに慣れ親しむとともに、言語能力の一つである書く 力、作文力を高めることをねらいとしている。 始業前に学級担任がその日の題材を板書しておく。題材は年間計画(学校ホームページに掲載) が立てられており、同学年は同じ題材で書く。原稿用紙のマス目は児童の学年に合わせたものを使 用する。書いた後は、学級の中で読み合ったり、掲示したりした後、各自のファイルに綴じていく。 徐々に書けるようになった段階で、題材以外に、書き方に関する条件も提示するようにした。こ れは、学力調査の分析の中で明らかになった「求められた条件に従って文章を書く力が弱い」とい う課題に対応するためである。 〔条件の例〕 ・○字以内で書く。(字数の条件) ・自分の考えをはじめに書いて、その理由を書く。 ・例をあげて、自分の考えを説明する。 ・示された段落構成で書く。など (3)視写タイム 毎週月曜日の午後、5校時が始まる前の10分間は、全校で 視写を行う。詩や文章を視写させることで、言葉や文章を正 しく丁寧に書こうとする態度を育てる。さらに、文章を書く ときのマスの使い方(句読点や「 」)を身につけ、書く力を 高めることをねらいとしている。視写用のテキストは学年別 に作成している。各学年の発達段階を踏まえた内容、マス目 になっており、1学期分ずつを綴じて冊子にしている。

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(4)読書タイム・絵本の読み聞かせ 毎週火〜金曜日の午後、5校時が始まる前の10分間は全校読書の時間である。毎日の学校生活の 中に読書の時間を位置づけて読書に親しむとともに、静かに本を読んだり話を聞いたりすることで 午後の授業への気持ちの切り替えをしていく。 また、毎週月曜日の朝8時30分からの10分間は、「よむよむボランティア」(保護者や地域の皆さ んの有志)による絵本の読み聞かせを全学級で実施している。 26年度・全国学習状況調査の「読書は好きですか」の設問に対 し、A小学校6年生の「好き・どちらかと言えば好き」の割合は 77.9%で、全国平均を4.9%上回っている。(資料3)

5 集会活動として全学年が取り組む活動

(1)全校ドレミファ音読集会 「読書タイム」、「ドレミファ集会」(全校音楽)や日々の学習の成果を学年毎に発表し合う行事と して、3学期に実施している。音読・群読や合唱などを発表し合い、お互いの声の響きを聞き合う。 また、全体の進行役は児童の代表が務め、各学年の発表後は、他の学年の児童が感想を発表し合っ ている。 (2)Aっ子ロング集会 A小学校では、掃除をするときのチームを異学年の子どもたちによる「縦割り班」で編成してい る。6年生が各チームの班長となり、リーダシップを発揮している。班編成をして間もない5月に は、その班ごとに班員同士の結びつきを深めること を目的として、「Aっ子ロング集会」を実施する。学 校に関する「○×クイズ」や、「じゃんけん列車」等 のゲームを楽しみながら、班長からの指示に従って グループごとに集団行動ができるようになることが ねらいである。 資料3 「あなたは読書が好きですか」の回答の割合

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(3)上級生による本の読み聞かせ 読書週間(9月から10月にかけての行事)の取り組みの一環と して、上級生がお気に入りの本を持って下級生の教室に出向き一 対一で読み聞かせを行う。(6年生が2年生、5年生が3年生、4 年生が1年生に) (4)2分の1成人式 毎年、二十歳の半分の10歳を迎えた4年生は「2分の1成人式」 を行う。一人ひとりが将来の夢や目標を話せるよう、事前指導を 行う。児童の書いた原稿を推敲しておくことで、当日は保護者の 前で全員が自信を持って発表できる。

6 体験的な活動と国語科学習を結び付けて

(1)藁焼きタタキ体験と手紙の学習 食育の一貫として、4年生は鰹を料理して藁焼きタ タキを作る体験学習を行い、国語科学習と関連させた 授業づくりを行った。 国語科単元「お願いやお礼の手紙を書こう」の学習 の中で、お世話いただいた皆さんへのお礼の手紙や、 鰹についてさらに知りたいことを尋ねる手紙を書くと いう課題を設定して授業を行った。 (2)バリアフリー教室と手紙の学習 3年生は、総合的な学習の時間の活動として、社会福祉協議会の協力のもとバリアフリー教室を 実施している。目の不自由な方の体験談や、どのような援助をすればよいのかについて話を聞いた 後、アイマスクをつけて実際に体験をした。 この後、国語科単元「町について調べてしょうかいしよう」の学習の中で、「高知駅のバリアフリー を説明しよう」という課題を設定し、効果的な説明の仕方について学習した。

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7 子どもどうしのかかわりの場の設定

特別活動を通して学級集団づくりを行い、仲間と共に学ぶからこそできる学習活動を効果的に取 り入れていきたいと考え、ペアでの対話やグループでの活動を入れることで、一人ひとりの言語活 動量が増えたり、互いに学び合いながら学習を深めたりすることが期待できる。また、全体での話 し合いでは、「つなぎ言葉」を意識させることで、前の発言者の考えと自分の考えをつなぐようにし ている。時には、教師が望ましい話し方のモデルを示すようにしている。

8 成果と課題

(1)書く力の向上 短作文づくりの積み重ねに加え、授業の 中で児童が書く場の設定、ノートづくりの 工夫等を通して、個々の児童の思考が促さ れ、書くことへの慣れや成長が見られる。 26年度全国学力調査における問題形式別の 正答率を見ると、国語・算数ともに記述式問 題の正答率が全国平均を2.6〜4.3%上回って いる。(資料5) また、全国学習状況調査の「国語の授業で意見を書くとき、考えの理由が分かるように気をつけ て書いていますか」の設問に対し「当てはまる」と答えた児童の割合は、全国平均を12.1%上回って いる。(全国平均29.0%、A小学校41.1%) (2)全国学力調査の結果に見られる変容 25年度の全国学力調査(6年生)の結果、 A小学校では国語Aについては正答率が全 国平均を上回ったものの、B問題について は大きく下回っていた。26年度の調査結果 では、B問題についても全国平均を上回っ た。(資料6)学校ぐるみで言語能力を育て る取り組みをめざした取組みによる成果が、 この結果からも見てとれる。 (3)今後の課題 児童の思考力や活用力は、一朝一夕の取り組みで身につくものではない。今後も、一人ひとりの 児童が思考したり身についた力を活用したりする場を意図的に設定した教育活動を、学校ぐるみで 地道に積み上げていくことが大切だと考える。 〔引用文献〕 文部科学省 2016 教育課程部会言語能力の向上に関する特別チーム(第3回)配付資料より. 資料5 平成26年度全国学力調査における記述式問 題の正答率 資料6 全国学力調査・国語の正答率における変化

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参照

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