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高結晶性単層カーボンナノチューブを用いた平面型電界電子放出源に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

高結晶性単層カーボンナノチューブを用いた平面型

電界電子放出源に関する研究

著者

公文 翔一

64

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

環博第287号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00129715

(2)

くもん しょういち

公文

翔一

博士(学術)

学 位 記 番 号

学 位 授 与 年 月 日

令和 2 年 3 月 25 日

学位授与の根拠法規 学位規則第 4 条第 1 項

研究科,専攻の名称 東北大学大学院環境科学研究科(博士課程)環境科学専攻

学 位 論 文 題 目

高結晶性単層カーボンナノチューブを用いた

平面型電界電子放出源に関する研究

員 東北大学教授 高橋 英志

論 文 審 査 委 員

主査 東北大学教授

高橋英志 東北大学教授

川田達也

東北大学准教授 佐藤義倫 東北大学准教授 下位法弘

論 文 内 容 要 旨

環境問題や資源問題が叫ばれる中で生活水準の維持・向上が求められる社会においてはそれにかかる エネルギーを削減することが重要である. 日本においてそのエネルギー需要の内訳をみると, その約 2 割が照明用途に称されている. これを駆動力として LED への置き換えなどの新しい産業構造がもたら されている. 一方でこのような取り組みにもかかわらず 2010 年代の照明にかかるエネルギー量はほぼ 横ばいである. このためより優れたエネルギー効率を有する光源が求められている. 発光反応の中でも 電子線励起型発光(CL)は優れたエネルギー効率を示すことが知られているため, それを用いた照明が注 目されている. 加えて CL デバイスは LED では発光効率の低い紫外線領域においても優れた発光効率を 実現することも期待されているため, より小型で組み込みや持ち運びの容易な紫外線光源としての応用 も考えられ, 新奇な社会的価値を創成するデバイスが提供できる可能性も有している. しかしながら優 れたエネルギー効率を有する CL デバイスを実現するためには, 優れたエネルギー効率を有する電子源 が必要である. そこで本研究では原理的にエネルギーロスのない電界電子放出(FE)に着目し, 優れた FE 特性を有することが期待される高結晶性単層カーボンナノチューブ(hc-SWCNTs)を電子源として使 用することを試みた. 本論文は次の全 5 章から構成される. 1 章では序論として hc-SWCNTs を用いた FE 型の平面電子源を研究するための動機付けと本論文の 目的について述べた. SWCNTs をはじめとするナノカーボン材料を電子源として使用するための最も

学術(環)博第287号

(3)

大きな問題は, 実動作環境における電子源の消耗に起因する FE 特性の経時的な劣化である. そのため 化学的安定性に優れる hc-SWCNTs が電子源として注目されるものの, デバイスへの製造プロセスによ る化学的安定性の低下が懸念されている. そこで本研究では製造プロセスにおける hc-SWCNTs の化学 的安定性の変化を定量化し, 化学的安定性が担保されうる製造プロセスを提供することを目指した. 合 わせて製造条件の最適化による FE 特性の最適化および, FE-CL 反応に適したデバイス構造の提案を行 うことで, 省エネルギー駆動型の FE-CL デバイスの実現に向けたエネルギー効率に優れる電子源の開 発を試みた. 2 章では電子源の製造工程における hc-SWCNTs の化学的安 定性の変化を追随し, その変化を抑制した製造工程の提案を目 指した. 電子源への加工は hc-SWCNTs の合成, hc-SWCNTs の 湿式分散による塗料化, 塗料の塗布・焼成による塗膜形成, 塗膜 の物理的な切削による hc-SWCNTs のエミッタとしての活性化 によって行われる. これらの行程のうち特に湿式分散行程では せん断作用による hc-SWCNTs の破壊によって hc—SWCNTs の化学的安定性の低下が懸念されるため, その程度を可視化す ることが必要となる. そこで化学的安定性を熱重量測定(TGA) の曲線に対応させることをこころみ, TGA 曲線から化学的安定 性が変化するメカニズムの推定及び化学的安定性の変化を TGA 曲線の変化を用いて定量することで, 化学的安定性の変化を抑 えた湿式分散プロセスを選定した. 具体的には高純度な hc-SWCNTs の合成と湿式ジェットミル分散を組み合わせることで, せん断力を 制御しかつせん断力の作用機会を均一化することで, 化学的安定性の変化 ~ FE 特性の経時的な劣化を 抑制したままに分散塗料化を志向した. Figure i は hc-SWCNTs のバッキーペーパーを用いて一定の FE 電流を得るために必要な電界強度の経時変化を記録した結果である. このように分散行程前後で同一な FE 特性の経時的安定性を示すことが確認されるため, hc-SWCNTs の化学的安定性を維持したままに分 散を行うことに成功した.

Figure i: Emission stability of high purity hc-SWCNTs buckypaper before and after wet-jet milling, on CC measurement at 10 mA cm-2 with applied voltage around 1 kV.

(4)

3 章では hc-SWCNTs の電子源への加工プロセス条件(Figure ii 参照)が FE 特性に与える影響を精査し, 最適な FE 特性を有す る電子源の開発を行った. 加工工程の中でも分散行程, ひいて は塗料中の SWCNTs の分散状態が FE 特性を支配することが示 唆された. そこでまず分散状態と FE 特性の経時的再現性のあ る相関を取得するために, 塗料中の SWCNTs の経時的な分散安 定性や粒度分布の評価を行った. 結果として分散プロセス条件 に対応する分散状態 ~ FE 特性の関連付けが可能であることを 見出すことに成功した. その後最適な分散条件の探索を行い, デバイスに必要な FE 電流として設定した 1 mA cm-2の出力電 流密度において少なくとも 1500 h 以上もの間 FE 特性を維持 したままに駆動するエミッタを作製することに成功したことを Figure iii に示す.

Figure ii: Schematic of preparation process for emitter in a diode structure.

Figure iii: Emission stability of the hc-SWCNT planar emitter on CC measurement at 1 mA cm-2

(5)

4 章では電子源を用いたデバイスの設計自由度を上げるために, 新規の FE 電流密度制御方式である アンダーゲート方式を提案した. 一般的なオーバーゲート方式とは異なりアンダーゲート方式ではゲー ト電極への FE 電流の散逸を抑制することが可能となるため, 優れた電流効率のもとで FE 電流密度を 制御できることが期待される. アンダーゲート型デバイスはエミッタであるカソード電極の下部に絶縁 膜を挟んでゲート電極が備え付けられたものである. このときゲート電極への電圧印加によってエミッ タ周辺の電界強度分布が変化することで FE 電流の制御が可能となる. この電界強度分布の変化は絶縁 膜の誘電率や厚みによって変化するため, 絶縁膜の設計には数値計算によるポアソン分布解析を用いて 行った. Figure iv が実際に作製したアンダーゲート型デバイスの外観およびその FE 特性である. 厚さ 1 μm の SiO2絶縁膜を介してエミッタとゲート電極が設けられている. 実際にその FE 特性を評価する とゲート電極への電圧印加によって FE 電流密度Ia-cが制御可能であること, デバイス全体に流れる電流 に対するその割合:電流効率は 1 に近く非常に効率的に FE 電流密度が制御可能であること, がわかる. よってアンダーゲート構造の導入によって優れた電流効率のもとで FE 電流密度を制御できる電子源の 開発に成功したといえる.

Figure iv: Appearance of triode structure with an under-gate electrode for FE current controlling, and its FE

performances with field intensities of 3.8 V μm-1 between cathode and anode electrodes.

(6)

(別紙)

論文審査結果の要旨及びその担当者

論文提出者氏名 公文 翔一 論 文 題 目 高結晶性単層カーボンナノチューブを用いた平面型電界電子放出源に関する研究 論文審査担当者 主査 教 授 高橋 英志 教 授 川田 達也 准教授 佐藤 義倫 准教授 下位 法弘

論文審査結果の要旨

地球温暖化は地球上に存在する二酸化炭素の増加が主因であり、二酸化炭素を削減するための技術開発は我々にとって 喫緊の課題である。二酸化炭素を削減すべく、省エネに特化した電子デバイスとして低エネルギーで高効率な電子放出を 可能にする電界電子放出(FE)型電子放出源デバイスが挙げられる。FE 型デバイスに搭載される電子放出材料に関する研究 開発は過去多岐に渡って推進されており、カーボンナノチューブ(CNT)類もそれらの一つであったが今まで実用化された実 績は皆無であった。そこで我々は実用化を念頭に FE 電子放出の信頼性を確保するために CNT の結晶性に着目し、とりわ け単層型 CNT(SWCNT)の結晶性を制御した FE 型デバイスの構築を試みている。公文翔一氏は、高結晶化した SWCNT の 安定合成技術を確立しつつ、工業的に SWCNT を取り扱うための分散技術の実用化および電子デバイスの構築を目的とし 研究開発を進めた。 第一章は緒論であり、FE 型電子材料としての CNT の有意性と実用化に向けた信頼性に関する問題点を解決するための 手法について論理的な説明を行った。 第二章においては、SWCNT の結晶性と FE 特性の相関性を導き、高結晶化 SWCNT の安定的な合成、精製および分散処 理技術の確立を検討した。SWCNT の結晶性および分散性の指標として、熱重量・示唆熱分析(TG-DTA)より得られる TG 曲線の変化から導かれる相関係数を定量的な指標値として用いた。SWCNT の TG 曲線より得られる相関係数と FE 特性の 比較から、SWCNT の結晶性・分散性制御により FE 特性の大幅な電子放出安定化、並びに長寿命化を確立することに成功 した。 第三章においては、第二章の結果を踏まえ分散処理を施した SWCNT の分散状態と FE 特性の相関性を検証した。SWCNT の工業的実用化を目指す場合、SWCNT を安定に分散した塗料を設計する必要がある。そこで、SWCNT を含む塗料の粘度 測定から塗料中の分散質(SWCNT)の有効体積率を導き、FE 特性との関係性確立に成功した。一般的に、SWCNT など微細 分散質を含む塗料は自然放置により分散質の再凝集および沈降が見受けられる。そこで第二章で確立した分散制御に関す る基本技術を基に沈降物を除去し、分散質の有効体積率を安定化することで FE 特性の高性能化の維持を可能にした。結果 として 1mA/cm2の高電流密度で 1500 時間連続した FE 電子放出に成功しており、本成果は世界的にもトップレベルの特筆 すべき特性である。 第四章では、第二及び三章の結果を踏まえ、FE 型電子源デバイスの基礎構造構築を検討した。電子放出の ON/OFF を担 う電極を電子放出層の下部に敷設することで、低駆動電圧かつ高効率な電子放出を実現する平面型 FE 電子放出源の基礎設 計確立に成功した。 第五章は結論であり、本研究の総括や意義について纏めている。

公文翔一氏は第二章(前半部)に係る内容について International Journal of Applied Engineering Research に、第四章に係る内容 について Journal of Vacuum Science & Technology B に投稿し掲載済である。さらに第二および三章について論文を作成し、 Carbon に投稿する予定である。また、DCM 2016,2017、IDW2017、IVNC2018 等の国際学会およびエレクトロニクス実装学 会 2017(横浜市)、エコデザイン・プロダクツ & サービスシンポジウム 2016(東京)などの国内学会および会議に参加し、自 身の成果について報告を行っている。 以上より、公文翔一氏は従来とは異なる視点から SWCNT の実用化を図る手法を考案するとともに、実際に SWCNT の 高結晶化並びに分散性制御技術を開発することで、実用化に向けた応用研究・技術の先鞭を確立するなど、独創的かつ先 駆的な研究を行った。 よって,本論文は博士(学術)の学位論文として合格と認める。

Figure  i:  Emission  stability  of  high  purity  hc-SWCNTs  buckypaper  before  and  after  wet-jet  milling,  on  CC  measurement  at  10  mA  cm -2   with applied voltage around 1 kV
Figure  ii:  Schematic  of  preparation process for emitter in a diode structure.
Figure iv: Appearance of triode structure with an under-gate electrode for FE current controlling, and its FE  performances with field intensities of 3.8 V μm -1  between cathode and anode electrodes.

参照

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