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脳血管障害例に対する新しい音声訓練法 -ウエイトノイズ法の提案-

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Academic year: 2021

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脳血管障害例に対する新しい音声訓練法 −ウエイ

トノイズ法の提案−

著者

高橋 信雄

雑誌名

教育情報学研究

15

ページ

73-74

発行年

2016-12-25

URL

http://hdl.handle.net/10097/00123141

(2)

脳血管障害後の音声障害に対する新しい訓練 法、ウエイトノイズ法を提案し、その有効性につ いて検討した。 脳血管障害後の声量低下、気息性◦無力性声質 を呈する音声障害に対しては、一般にプッシング 法、硬起声発声、努力発声要求を中心とする方法 などの声門閉鎖促進訓練が推奨されている。しか し、それらの訓練法を脳血管障害例の臨床で用い ようとすると、実際には適用が困難な場合が多く 見られた。脳血管障害でみられることの多い運動 機能障害や高次脳機能障害、精神機能の低下、意 欲低下、易疲労性などが、訓練適用の阻害因子に なっていると考えられた。 筆者は、ロンバール効果(Lombard effect:ノイ ズを聴覚的に負荷すると声量が増大する現象)を 利用した新しい訓練法、ウエイトノイズ法を開発 した。ウエイトノイズ法は、ウエイトノイズ(オー ジオメータから出力される広帯域雑音の一種)を 両耳に負荷しながら音読や復唱等を繰り返すこと により、声質および声量を改善させる音声訓練法 である。訓練法の開発においては、同じくロンバー ル効果を利用する音声訓練法、マスキング法の手 続きを参照し、その改良を行った。マスキング法 では90dB SPL のホワイトノイズを聴覚的に負荷 し、聴覚マスキングを成立させる。そのため強い 不快感を伴い、脳血管障害のように一定時間の訓 練を長期にわたって実施することが求められる場 合にはマスキング法の適用は困難と考察された。 負荷するノイズを検討したところ、55dB 程度の 音量を上限とするウエイトノイズを用いると、ロ

脳血管障害例に対する新しい音声訓練法

-ウエイトノイズ法の提案- 東北大学大学院教育情報学教育部 高橋 信雄 学位授与年月日:平成28年₃月25日 主査:東北大学大学院教育情報学研究部 教授 渡部 信一 副査:東北大学大学院教育情報学研究部 准教授 佐藤克美 副査:東北大学大学院教育情報学研究部 教授 熊井 正之 ンバール効果が得られかつ患者が強い不快感を持 つことなく訓練が可能であることがわかった。 写真 ウエイトノイズ法の訓練場面 従来の訓練法の適用が困難であった52症例にウ エイトノイズ法を適用し、48例で音声の改善が得 られた。また、2症例において症例検討を行った。 運動機能障害と高次脳機能障害のため、従来の訓 練方法の適用が困難であった失声例(症例1)では、 ウエイトノイズ法は訓練の手続きが簡易で、音声 を改善させるための大きな努力を要求されないた め、患者は訓練課題に対応しやすかったと考えら れた。運動機能障害と発声時の易疲労性のため、 従来の訓練方法の適用が困難であった一側性喉頭 麻痺例(症例2)では、ウエイトノイズ法は患者に 過度な努力を強いることがないため、無理なく訓 練を導入し継続することができたと考えられた。 教育情報学研究 第15号(2016)

Educational Informatics Research, 2016, No.15, 73-74

(3)

これら2症例では、音声症状の改善に訓練効果が 含まれていると推測された。 ウエイトノイズ法の導入により、従来の訓練方 法の適用が困難であった運動機能障害、高次脳機 能障害、精神機能の低下、意欲低下、発声時の易 疲労性を呈する症例に対して訓練の機会を提供す ることができるようになった。運動機能障害を呈 する症例に対しては、ヘッドホンを装着すること ができれば体位にかかわらず訓練を実施すること ができた。高次脳機能障害、精神機能の低下を呈 する症例では、復唱または音読が可能であれば音 声訓練を実施することができた。意欲の低下を呈 する症例および易疲労性のある症例では、訓練場 面で努力発声の必要がないため訓練課題に対応が 得られやすいと考えられた。 また、ウエイトノイズ法では即座に音声の改善 が得られるため、多くの患者において訓練意欲 の増大、担当言語聴覚士に対する信頼感の醸成、 QOLの向上が得られたと考えられた。 さらに CD 教材を作成することにより、ベッド 上仰臥位、半臥位での訓練、さらには家庭での自 主訓練も可能になると考えられた。 今後の課題としては、ロンバール効果の発現機 序、ウエイトノイズ法で音声の改善が得られる機 序、ウエイトノイズが訓練に適している理由など に関する生理学的裏付けが重要と考えられる。ま た、音声評価の枠組みにはさらなる厳密さが求め られるべきと考えられた。 ところで、神経難病例の音声訓練でも、脳血管 障害例と同様の障害が阻害因子となる。進行性核 上性麻痺により声量低下、気息性◦無力性声質を 呈する音声障害例にウエイトノイズ法を4か月適 用したところ、症例はウエイトノイズ法の課題に 対応が可能であった。始めの3か月は音声の改善 がみられたが、最後の1か月で音声症状の増悪が 認められた。進行性核上性麻痺が進行性疾患であ ること、訓練期間中に投薬条件の変更がなかった ことから、この一時的な症状改善は訓練効果と考 察された。しかし、今後病状の進行に伴い、音声 症状は増悪していくと予想された。音声の改善が 一時的なものであったとしても、QOL の向上に つながる場合があると考えられた。また、脳血管 障害例では、ノイズを負荷しない状態で良好な音 声が得られることを訓練目標としていたため、音 声の改善につれて負荷するノイズの音量を徐々に 下げていった。一方神経難病例では、訓練の初期 には訓練目標は音声の改善であったが、病状全体 の進行に伴い音声機能の維持が訓練目標になると 考えられた。神経難病例の音声訓練は、脳血管障 害例とは異なる経過をたどることを念頭に置いた 訓練プログラムが必要と考えられた。神経難病例 に対応した訓練の手続きを提案した。 脳血管障害例に対する新しい音声訓練法 - 74 -

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