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不確実性・多地域・動的環境での費用便益分析の厚生経済学的基礎に関する研究

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(1)

不確実性・多地域・動的環境での費用便益分析の厚

生経済学的基礎に関する研究

著者

森杉 壽芳

(2)

不確実性・多地域・動的環境での費用便益分析の

厚生経済学的基礎に関する研究

17360242

平成17年度∼平成19年度科学研究費補助金

(基盤研究B)研究成果報告書

平成20年3月

研究代表者 森杉 寿芳

東北大学 名誉教授

(3)

不確実性・多地域・動的環境での費用便益分析の

厚生経済学的基礎に関する研究

17360242

平成17年度∼平成1・9年度科学研究費補助金

(基盤研究B)研究成果報告書

平成20年3月

研究代表者 森杉 専芳

東北大学 名誉教授

(4)

はしがき

本報告書は、平成17年度∼平成19年度における独立行政法人日本学術振興会 科学研究費 補助金(基盤研究B)「不確実性・多地域・動的環境での費用便益分析の厚生経済学的基礎に関す る研究」の成果をとりまとめている。本研究は、本研究は,不確実性があり移住が可能な多地域 経済であり動学的状況下にある世界に注目し,便益の定義,計測可能性,効用水準との整合性, 補償基準との整合性に関する見解を整理することを目的としている.その主な成果は以下のとお りである. 第1に、不確実性下の便益の定義および計測式と補償基準との関係分析をした:不確実性下の 便益の定義としてアレー余剰の適用を提案し、(1)この定義は期待効用関数と不確実性下の補償 基準の両者に対して必要十分な関係であること、(2)定義した便益は不確実性下の個人の防災行 動を観察することによって計測できることを示した. 第2に、多地域(動的)経済下での便益計測式の提案を行った:(1)交通整備によって企業や 人々が都市に集積して混雑がさらにひどくなるという現象は集積の経済が存在する場合のみに発 生することを示し,交通改善便益(混雑悪化不便益)に加えて集積の経済の便益を計測する必要 があることを示した.(2)小関放都市(smallopen)の仮定を導入しないで地価の変化で地方公 共財の便益を計測する公式を提案した.(3)scGE における運輸部門の取り扱いを明示的に経済 活動として定式化し,交通施設整備の便益計測式を改善した. 第3に、動的環境下の地球環境経済評価を行ったこ日本を1地域とした修正RICEモデルを開発 し、(1)便益=GDP+WPT,費用=投資、純便益=消費と定義して、市場に任せた場合の将来の姿 を最適化問題で示す方法を開発した。(2)時間選好率と限界効用の消費弾性値の組み合わせによ る感度分析を行った。 第4に動的不確実性下の評価モデル:中止・休止オプションを明示的に考慮した公共事業の事 前・再評価モデルを開発するとともに,これらのオプションの経済価値の計測方法を提案した. 本研究の成果の論文の連名者の方々には多大な協力をいただいた。また、本報告書の作成に当 たり、東北大学特任助手中嵩一意氏には多大なご指導とご尽力をいただいた。ここに記して謝す る次第である。 平成20年3月 研究代表者 東北大学名誉教授 森杉 寿芳

研究組織

研究代表者 : 森杉 寿芳(東北大学 名誉教授)

∴㌍芸

者:安藤 朝久(東北大学 情報科学研究科 教授)

者 : 林山 泰久(東北大学 経済学研究科 教授)

研究他者:河野 達仁(東北大学 工学研究科 准教授)

研究他者 ‥ 織田澤利守(東北大学 情報科学研究科 助教)

交付決定額(配分額)(金額単位‥円)

直 接 経 費 間 接 経 費 合  計 平 成 1 7 年 度 3 ,3 0 0 ,0 0 0 0 3 ,3 0 0 ,0 0 0 平 成 1 8 年 度 3 ,8 0 0 ,0 0 0 0 3 ,8 0 0 ,0 0 0 平 成 1 9 年 度 2 ,7 0 0 ,0 0 0 8 10 ,0 0 0 3 ,5 1 0 ,0 0 0 総  計 9 ,8 0 0 ,0 0 0 8 10 ,0 0 0 1 0 ,6 1 0 ,0 0 0

(5)

研究発表.

(1)雑誌論文

特に(無し)としたもの以外は査読ありの雑誌である。

l)安藤朝夫:隣接自治体による NIMBY施設の個別整備と都市形状,都市計画論文集,

No.40−3,pp.151−156,2005

2)Asao Ando and Ryuichi Uchida:The Space−Time Structure of Land PricesinJapanese MetropolitanAreas,AnnalsofRegionalScience,Vol.38(4),pp.655−674,2005 3)林山泰久,稲垣雅一,阪田和哉:現在偏重型選好における環境教育の長期的効果:数値解 析によるいくつかの知見,土木学会論文集,No.797,VIT−36,pp.25−36,2005 4)林山泰久,稲垣雅一,阪田和哉:環境教育による長期的な態度行動変容:洗練化と合理化, 土木計画学研究・論文集,Vol.22,No.2,pp.287−296,2005 5)奥山忠裕,林山泰久:環境質の代替性を考慮した便益評価.環境システム研究 全文審査 部門論文,Wl.33,pp.317−327,2005 6)林山泰久‥交通サービスの社会的費用と環境政策,交通工学,bl.40,No.4,pp.7−13, 2005(査読無し) 7)林山泰久:道路計画プロセスにおける評価と市民参軌 日本不動産学会誌,Ⅶ1.19No.2,pp. 74−$3,2005(査読無し) 8)河野達仁,加藤公優:環境運動の存在する経済における緑地供給システムに関する厚生分 析,土木学会論文集,No.786,TV−67,pp.113L122,2005 9)河野達仁,柳田眞由美,樋野誠一:歪みのある空間経済における生活関連公共施設整備便 益の計測方法の提案,土木学会論文集,No.786,IV−67,pp.103−112,2005 10)岸昭雄,河野達仁:労働者の異質性がもたらす空間的集積構造の分析,土木学会論文集, No.786,1V−67,PP.123L134,2005 11)岸昭雄,河野達仁,森杉寿芳:一般化交通費用に基づく交通需要予測のバイアスと内生的 時間価値,土木計画学研究・論文集,No.22,pp.47−52,2005 12)ToshimoriOtazawaandKiyoshiKobayashi:OptimalTimingStrategyfbrProjectEvaluationand lmplementation,ProceedingsofIEEESystems,Man,andCyberneticsConference,2005,pp.634 −639,2005 13)織田澤利守,長谷川専,小林潔司:不確実性を考慮した公共事業評価スキームの設計手法 に関する考察,土木計画学研究・論文集,Ⅶ1.22,pp.65−76,2005 14)河野達仁,森杉寿芳,樋口敦司:代替・補完財の存在による旅行費用法の適用限界,土木 学会論文集,No.807,IV−70,pp.21−28,2006 15)河野達仁,能登谷浩路:費用便益分析に基づく公共投資政策の動学的不整合問題,土木学 会論文集,No.807,IV−70,pp.43−54,2006

16)Iis P.Tussyadiah,Tatsuhito Kono and Hisa Morisugi:A ModelofMulti−destination Travel: lmplicationsforMarketingStrategleS,JournalofTravelResearch,Vol・44,No・4,pp・407−417, 2006 17)稲垣雅一,林山泰久,阪田和哉:環境改善施策としての環境教育の有効性,環境システム 研究論文集,Vol.34,pp.105−115,2006 18)中島一意,林山泰久,森杉寿芳:地球温暖化問題におけるカタストロフ・リスクにおける 長期的影響一動学モデルの数値解析による均衡解の性質−,環境システム研究論文集, Vo1.34,pp,123−134,2006 19)奥山忠裕,林山泰久:参照点依存型選好による環境質の価値変化:トラベルコスト法の適 川

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用のための検討,環境システム研究論文集,Vol.34,pp.315−325,2006 20)林山泰久:書評:金本良嗣・蓮池勝人・藤原徹著「政策評価ミクロモデル」,高速道路と 自動車,Vol.49,No,9,pp.315−325,2006(査読無し) 21)林山泰久,奥山忠裕:参照点依存型選好による環境評価に関する考察,会計検査研究, Vol.34,pp.169J180,2006 22)孟潮,安藤朝夫:価格差を考慮した中国経済のSCGEモデル:地域間産業連関表による検 証と実証分析,土木学会論文集D,Vol.62,No.1(CD−ROM),pP,145−156,2006 23)加藤美紀,安藤朝夫:教育投資と所得の因果関係および投資効果発現に要する時間的遅れ, 応用地域学研究,No.2(CD−ROM),2006 24)安藤朝夫,′ト尻利治,菊池祥子,中幕一意:地球温暖化の経済評価のためのリカーシブモ デルの開発,京都大学防災研究所年報,No.49−B,pp.755−770,2006 25)河野達仁,野添孝敬:道路整備が商業立地に与える影響とその便益計測方法,土木学会論 文集,2007【掲載決定】

26)Hisa Morisugi and Fabien Leurent:Cost benefitanalysis using benefitincidence table for a transport policy with pricing −the caseofthe London pricing scheme,Routes/Roads,No.

336/337,pp.58−63,2007 27)TatsuhitoKono,HisaMorisugiandFumiMiyahara:CongestionDeteriorationandTransportation ProjectEvaluation,AnnalsofRegionalScience,Vol.41,No.1,Pp.145−170,2007 28)河野達仁,宮原史,森杉寿芳:誘発交通による混雑悪化の可能性と公共投資のパラドック ス,土木学会論文集D,pp.524−535,2007 29)加藤真紀,福山敬,安藤朝夫:頭脳流出が途上国の技術進歩と人的資本蓄積に与える影響, 応用地域学研究,No.12,pp.83−94,2007 30)大橋忠宏,安藤朝夫:地域に複数の空港は必要か?:アクセスコストと輸送密度の経済性 を考慮した航空旅客市場モデル分析,国際交通安全学会誌,32巻3号,pp.206−215,2007 31)河野達仁,小徳利章,織田澤利守:人口動態変化が若年層と高齢層の都市内居住分布と厚 生に与える影響に関する理論分析,土木学会論文集D,Vol.63,No.2,pp.242−254,2007 32)池田清宏,河野達仁,赤松隆,柳本彰仁,八巻俊二:都市の集積・分散モデルの対称性破壊 分岐:群論的分岐理論によるアプローチ,土木学会論文集D,pp.553−566,2007 33)織田澤利守,赤松隆,藤原誠:不確実な経済環境における都市集積の均衡ダイナミクス: 非線形相補性アプローチ,土木計画学研究・論文集,11.24,pp.197−206,2007 34)織田澤利守,赤松隆:論文標短:集積経済下における地域間移住タイミング選択の均衡ダイ ナミクス,土木学会論文集D,Vol.63,No.4,pp.567−578,2007 く2)学会発表 り 森杉寿芳,祢津知広,河野達仁:不確実性下における補償テストと費用便益分析指標,土木 計画学研究・講演集,Vo1.32(CD−ROM),2005

2)Jane Romero,Hisa Morisugiand Kohta Kazama:Exact Measurement of Value of Time, Proceedingsofln丘astructurcPlanning,VoI.32(CD−ROM),2005

3)Hisa Morisugi andJane Romero:Benent Measurement of Value of Time using Observable Demand),ProceedingsoflnffastructurePlanning,Vol.33(CD−ROM),2006 4)織田澤利守:不完備情報下における航空運賃変更オプション行使ゲーム,土木計画学研 究・講演集,Vol.33(CD−ROM),2006 5)河野達仁,宮原史:誘発交通における混雑悪化の可能性と公共投資のパラドックス,土木 計画学研究・講演集,Vol.34(CD−ROM),2006 6)森杉寿芳,岡松明良,河野達仁:個人の防災投資行動の観察に基づく防災便益計測の可能 性、土木計画学研究・講演集,Vol.34(CD−ROM),2006 Ⅱ1

(7)

7)佐藤光晴,河野達仁:立地の外部性に対するセカンドベスト政策の分析,土木計画学研 究・講演集,bl.34(CD−ROM),2006 8)山田昌和,織田澤利守:災害避難時における群集行動形成メカニズムのモデル化とその厚 生分析,土木計画李研究・講演集,Wl.34(CD−ROM),2006 9)柳本彰仁,池田清宏,赤松隆,河野達仁:都市の集積・分散モデルとその分岐解析に関す る研究,土木計画学研究・講演集,bl.34(CD−ROM),2006 10)藤原軋 織田澤利守,赤松隆=不確実な経済環境における都市集積の均衡ダイナミクス, 土木計画学研究・講演集,Vol.34(CD−ROM),2006

11)Asao Ando and KazunoriNakajima:A Recursive Modelfor Economic Evaluation ofGlobal Warmlng and Space−Time Resolutions,53rd NRSA Meeting,Toronto,Nov・2006,andJoint SeminarofChina−JapanNortheasternUniversitiesonAgglomeration EconomicsandIndustrial Economics,Mar.2007.

12)Asao Ando:Economic growth and human capital:A model of population decreasing and increaslngCOuntries,2007TaipeiConfcrenceonRegionalandUrbanEconomics,2007.12. 13)奥山忠裕・林山泰久:相対評価型選好を考慮した観光地評価の考察,表明選好に基づく質 的変数の利用と検討,応用地域学会,2007.12 14)林山泰久・森杉寿芳・野原克仁:顕示選好データによるレクリエーション便益評価:家計生 産関数アプローチ,応用地域学会,2007.12 15)中嵩一意・林山泰久:地球温暖化適応策としての社会資本整備に関する一考察,土木計画 学研究・講演集,Vol.35(CD−ROM),2007 16)織田澤利守・赤松隆:集積経済下における地域間移住タイミング選択の均衡ダイナミクス, 日本応用経済学会,2007.6

(3)園暮

l)TakayukiUeda,TakeharuKawaiYasuhisaandHayashiyama,9.Post−eValuationofJapanese high−SPeed transport systems,in K.Kobayashi,T.R.Lakshmanan and P.W.Anderson eds. StructuralChangeinTransportatjonandCommunicationsinthe Knowledge Society,426pages, EdwardElgar,2006,pp.209−226

(8)

不確実性・多地域・動的環境での費用便益分析

の厚生経済学的基礎に関する研究:研究成果

目次

第1章研究の目的・内容・構成 1【1研究の背景と目的……・‥‥‥・‥‥・‥・‥‥・・‥‥‥‥‥‥・‥‥・‥‥‥‥・‥‥‥‥‥1 1−2 研究の内容と構成………‥2 第2章静的不確実性下における便益の定義と計測可能性並びにその補償基準との関係について 2−1森杉寿芳,祢津知広,河野達仁:不確実性下における補償テストと費用便益分析指標, 土木計画学研究・講演集,Vol.32(CD−ROM),2005.………‥”・・…・・…・・…‥11 2−2 森杉寿芳,岡松明良,河野達仁:個人の防災投資行動の観察に基づく防災便益計測の 可能性、土木計画学研究・講演集,Vol.34(CD−ROM),2006.‥‥=・=‥=‥‥…………16 第3章静的多地域経済下における便益の定義と計測可能性並びにその補償基準との関係について 3−1林山 泰久・森杉 寿芳・野原 克仁:顕示選好データによるレクリエーション便益評価:家計生産関数 アプローチ、応用地域学会、鳥取、2007.日日‥・=…………‥=………‥2g 3−2 河野達仁,森杉寿芳,樋口敦司:代替・補完財の存在による旅行費用法の適用限界,土木学会論 文集,No.807,IV−70,pp.21−2名,2006.‥‥‥‥・‥‥‥・‥・…‥‥・・‥・‥・‥・‥‥‥‥・36 3−3 河野達仁,柳田眞由美,樋野誠一:歪みのある空間経済における生活関連公共施設整備便益の計 測方法の提案,土木学会論文集,No.786,IV−67,pp.103→112,2005.‥・‥t………45 3−4 Asao Ando and MengBo,Transport Sectorand RegionalPrice Differentials:A SCGE Modelfor ChineseProvinces,52ndNRSAMeeting,Nov.2005,LasVegas,andChina−JapanJointSeminaron

AppliedRegionalScience,Sept.2006,Shanghai.=・・・・・・・・・……”………56 3−5 Tatsuhito Kono,Hisa Morisugl and Fumi Miyahara:Congestion Deterioration and Transportation

PrqjectEvaluation,AnnalsofRegionalScience,Vol.41,No.1,pP,145−170,2007.………‥86 第4章動的多地域経済下における便益の定義と計測可能性並びに補償基準との関係について 4−1中島一意,林山泰久,森杉寿芳:地球温暖化問題におけるカタストロフ・リスクにおける長期的影響 一動学モデルの数値解析による均衡解の性質−,環境システム研究論文集,Wl.34,pp.123檜134, 2006.‥‥‥‥・‥‥・‥‥‥‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥・‥・‥・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・114 4−2 中烏一意・林山泰久:地球温暖化適応策としての社会資本整備に関する一考察,土木計画学研 究・講演集,Vol.35(CD・ROM),2007.………‥127

4−3 Asao Ando and Kazunori Nakqjima:A Recursive Model for Economic Evaluation of Global WarmingandSpace−TimeResolutions,53rdNRSAMeeting,Toronto,Nov.2006,andJointSeminar OfChina・JapanNortheastern Universities on Agglomeration Economics andIndustrialEconomics,

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4−4 河野達仁,能登谷活路:費用便益分析に基づく公共投資政策の動学的不整合問題,土木学会論

文集,No.807,IV−70,pp.43−54,2006.…‥・‥…‥…‥‥…‥‥‥‥・・∴‥=……160

4−5 林山 泰久・稲垣雅一・阪田 和裁:現在偏重型選好における環境教育の長期的効果:数値解析に よるいくつかの知見,土木学会論文集G,No.797,VIト36,pp.25−36,2005.…………日・…172

第5章動的不確実性下における便益の定義と計測可能性並びにその補償基準との関係について

5 ̄1ToshimoriOtazawaand KiyoshiKobayashi‥OptimalTiming Strategy for Prqject Evaluationand

Implementation,ProceedingsofIEEESystems,Man,andCyberneticsConference,2005,pp・634− 639,2005.・‥‥‥‥‥‥=………‥‥=………‥日日184 5−2 織田澤利守,長谷川専,小林潔司:不確実性を考慮した公共事業評価スキームの設計手法に関す る考察,土木計画学研究・論文集,bl.22,pp.65−76,2005.…‥…‥…・・………190 5−3 織田薄利守,赤松隆,藤原誠:不確実な経済環ぢ引こおける都市集積の均衡ダイナミクス:非線形相 補性アプローチ,土木計画学研究・論文集,Wl.24,pp.197−206,2007.……‥‥………‥204 第6章研究の成果と課題………216

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第1章 研究の目的・内容・構成

1−1研究の背景と目的

本研究は,便益の定義,計測可能性,効用水準との整合性,補償基準との整合性に関する見解の整 理を行うことにより,実用に供している費用便益分析(CBA)の厚生経済学的基礎・意義を理論的に裏付 けることを目的とする. 通常の実務や教科書のレベルでは,正の支払い意思額を示す便益が負の支払い意思額をしめす 費用を上回れば費用を負担する人を便益を得た人が補償することができるので補償基準を満たす という説明が行われ,費用便益分析の効率性判定の根拠になっている.ところが,この費用便益 分析と補償基準の必要十分性は一般には成立するとは限らないことがわかっている.しかし,ど のような定義でどのような状況下で必要性や十分性が成立するか否かが整理されていないのが現 状である. 状況の分類としでは,一点経済対多地域,確実性下対不確実性下,市場財対非市場財,完全競 争下対ゆがみのある経済,静的状況対動的状況が考えられる. 一点経済,確実性下,市場財および非市場財両者を含むが市場は完全競争下でゆがみがなく, 静的経済における便益の定義と計測可能性と効用水準と補償基準との関係については長い研究の 歴史がある.一点静的完全競争下の便益の定義としては等価的偏差(EV),補償的偏差(CV), 消費者余剰(MD),アレー余剰(AS),便益関数(BF)が提案されている.そして,アレー余剰 はゆがみの有り無しにかかわらず補償基準(厳密には弱基準)の必要十分条件であることが証明 されている(常木2000).また,計測可能性の検討の必要性はほとんどの便益の定義が補償需要 関数または補償均衡需要関数を必要とするという事実に基づく.この補償(均衡)需要関数の計 測が通常の需要(均衡)関数で近似できるか否かがポイントである.実は,計測も近似的に一般均 衡解を計算することで可能であることがわかっている.しかし,通常実務で適用されている対象 とする市場の一般均衡需要曲線のみの消費者余剰を計測すればよいというショートカット理論の 成立は証明されていない.この理論を根拠付ける仮定は効用関数がゴーマン型と仮定することで ある.このとき,ASのみならずEVもCVも補償基準と必要十分であることが常木(2000)によ って証明されている.また,EV については森杉(1989)によってショートカット理論が成立す ることも証明されている. 以上のように一点経済では相当の研究の蓄積があるが,不確実性,多地域,動的経済下では以 下に示すように不満足な研究の状況にあり,この課題(望ましい便益の定義,計測可能性と計測 方法の提案,補償基準との必要性また十分性とその条件の明確化)を解決することが本研究の目 的である. 第1に,不確実性下での定義としては,期待EV(CV,MD,アレー余剰),Optionprice(OP), Certaintyequiva】ent(CE),fairbetprice(FP)が提案され,これらと個人の効用との関係は確立され ている,すなわち,OPとFPは効用変化と符号条件もその大きさの順序も同じであるという意味 で整合性をもっている(上田・高木1997),多々納(1998)).しかし,OPとFPと補償基準との関 係と計測可能性についての研究はほとんどない(Freeman(1991)).また,情報の価値や情報の非 対称性にかんする多くの研究があり,暗黙裡にOPで情報の価値を定義しているのが,それらと 補償基準との関係と計測可能性についての研究もほとんどない.本研究は不確実性下におけるこ の点(望ましい便益の定義,計測可能性と計測方法の提案,補償基準との必要性また十分性とそ の条件の明確化)の確立を目指す.この成果は、本報告書第2章に記載した。 第2に,多地域経済では,異なる地域に居住する個人の効用が等しくなることと異なる地域の 住民が直面する価格ベクトルが異なることが問題となる.すなわち,一点経済と同様の定義を適 用すると効用の変化が同じであるのに便益の値が異なるという矛盾が生じる.そこである地域の 価格ベクトルと基準として便益を定義することが考えられる.しかし,このとき,定義した便益 1

(11)

の計測可能性とその補償基準との関係が問題になる.このため,本研究は多地域経済におけるこ の点(望ましい便益の定義,計測可能性と計測方法の提案,補償基準との必要性また十分性とそ の条件の明確化の確立)を目指す.特に便益の計測に関しては,ゆがみがあるような場合にも計 測可能なような新へドニツク方式の確立を目指す.この成果は、本報告書第3章に記載した。 第3に,勤的環境下では,時間的経路の変化の便益の定義を必要とする.この分野の研究はほ とんどないが,まず,王朝モデルのように世代が存在しない場合には上記の一点経済に概念を適 用すればよい.しかし,重複して生存する世代が存在するときには個別世代の便益の集計が問題 となり,不確実性下の便益とおなじ状況が発生し,さまざまな便益の定義が考えられる.まずは, 静的な状況下での便益の定義の素直な適用から不確実性下における便益の定義を異時点間に応用 し,それらが補償基準とどのような関係にあるかを明確にする.本研究はこの点(望ましい便益 の定義,計測可能性と計測方法の提案,補償基準との必要性また十分性とその条件の明確化)の 確立を目指す.この成果については、本報告書第4章に記載した。 第4に,不確実性下の動的経済における望ましい便益の定義,計測可能性と計測方法の提案, 補償基準との必要性また十分性とその条件の明確化)の確立を目指す.この分野は、リアルオプ ション理論を用いて事業評価の基準づくりの研究を行う。その成果は、本報告書第5章に記載し た。

1−2 研究の内容と構成

本研究の内容と構成は、以下のとおりである。 第2章は、静的不確実性下における便益の定義と計測可能性並びにその補償基準との関係に関 する研究の主要な成果を記載している。 2−1は、森杉寿芳,祢津知広,河野達仁:不確実性下における補償テストと費用便益分析指標, 土木計画学研究・講演集,Vol.32(CD−ROM),2005 を掲載している。本研究の概要は以下のとおりである。 不確実性下においては,便益定義や期待効用との関係についての研究蓄積は豊富にあるものの 1),便益指標(純便益が正であること)と補償テストとの関係に言及した研究蓄積は乏しい.Freeman (1991)2)はCVの概念を用いて,便益指標と補償テストの関係を検討した.便益指標としては, OptionPriceとFairBetExpeCtedValueを対象とし,前者(後者)が正であることは,補償テストをパ スすることの十分条件(必要条件)であることを示した.ただし,Freemanは補償テストの定義とし て個人の条件付支払い意志額の状態別比率が一定であるという不必要な条件を課して検討してい る.本研究は,このFreemanの補償テストの定義は妥当でないと指摘し,正しくはシトフスキー 曲線で検討するべきであるという主張を行う.次に,シトフスキー曲線に基づく補償テストを定 義した上で,各種の便益指標と補償テストとの関係を検討する.本論文では,シトフスキー曲線 を用いて,不確実性下の便益指標と補償テストとの関係について,EV系及びCV系の概念で検討 した.その結果は,表・1及び表・2の通りである.補整Fair Bet ExpeCted Valueや補整Certainty EquivalentExpectedValueは必要十分条件を満たす.この2つの定義が最も望ましい性質をもつ. 以上の結論は,災害発生確率少の変化を考慮した時や保険市場を考慮した場合にも成立する.ま た,完全保険市場では平常時も災害時も同じ所得を持つようになるため所得ベクトルは45度線 上の点になり,またOptionPriceとFairBetExpectedValue及びCertaintyEquivalentExpeCtedValue は補償テストをパスすることの必要十分条件になることを示した。ただし、これらの便益を個人 の防災行動を観察することによって計測することができないことが問題である。そのためには、 以下の論文で示すアレー余剰がよいことが判明した。 2−2は、森杉寿芳,岡松明良,河野達仁:個人の防災投資行動の観察に基づく防災便益計測の 可能性、土木計画学研究・講演集,Vol.34(CD−ROM),2006 2

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を改良した論文(土木学会論文集に投稿中)を掲載している。本研究の概要は以下のとおりであ る。 防災プロジェクトの費用便益分析マニュアル(治水・海岸及び道路事業マニュアル)では,便 益を観察可能な期待被害額で計測している・しかし,人々は必ずしもリスク中立的とは限らず, 完全保険の存在も現実的でないため,期待被害額は便益指標として適切ではない.本研究では, 計測値の信頼性を高めるために,非現実的である完全保険や,観察が困難である効用関数形を仮 定せず,実際に観察可能である個人の行動結果に基づく便益計測手法を提案する.具体的には, 便益の定義として弱(Hicks)補償基準と等価であることがわかっているアレー余剰dgを採用し て,防災プロジェクトによる個人の防災投資行動の変化を観察することによって,防災プロジェ クトの便益を計測する方法を開発することを目的としている.そして、想定した防災プロジェク トの便益dgは,災害確率のみの変化によって生じる便益恥公共施設水準のみの変化によって生 じる便益β,災害時所得のみの変化によって生じる便益†の三項目に分けて考えることができ, これらの単純和で表すことができることを示した,αは確実性下の環境変化の便益計測式である 旅行費用法に等しく,βは確実性下の価格変化の便益計測式,†は確実性下の所得変化の便益計測 式に対応しており,各便益を個人の防災投資行動におけるヒックスの防災投資額の補償需要関数 で表すことができた.ここで,ヒックスの補償需要関数の式では観察することができないという 問題に対しては,ヒックスの補償需要関数を変化後の点の周りにおいてテイラー展開することに より,観測可能なマーシャルの需要関数およびそのパラメータに関する微係数で表現した.した がって,防災プロジェクトの便益を観察可能な個人の防災投資額とその微係数によって表すこと ができたといえる.また,便益を計測するにあたって,テイラー展開の次元を上げることで,近 似における精度を高めることができることも示した. 第3章は、静的多地域経済下における便益の定義と計測可能性並びにその補償基準との関係に 関する主要な研究成果を記載している。 3−1は、林山 泰久・森杉 寿芳・野原克仁:顕示選好データによるレクリエーション便益評価: 家計生産関数アプローチ、応用地域学会、鳥取、2007 を掲載している。本研究の概要は以下のとおりである。 旅行費用法は,環境改善がもたらすレクリエーション便益の評価に数多く適用されている,し かしながら,旅行費用法は,禁止価格の設定および補償需要関数と需要関数の整合性といったい くつかの問題を有している.そこで,本研究では,レクリエーション体験というコモディティは, レクリエーションサイトの環境質とレクリエーション需要から生産されるものと仮定し,市場で 観察可能な家計生産関数の概念を導入することにより,上記問題を回避し,市場で観察可能な顕 示選好データのみでレクリエーション便益を評価する理論を提案する.以下の知見を得た。 ①本研究では,Ebert(2007)によるレクリエーション行動モデルを拡張し,旅行時間を明示的に考 慮した場合においても,市場で観察可能な顕示選好データのみで環境質の価値が定義されるこ とを明らかにした. ②本研究では,時間価値を市場で観察可能な顕示選好データから,環境質の価値と整合的に計測 可能であることを示した.このことは,従来,TCMによる便益計測結果に対して,その現実 性が疑問視されていた最大の原因の一つが時間価値であることから,本研究により説得力のあ る計測値が得られる可能性が高いものと考えられる. ③マーシャルの環境価値AI′OEについては,経路独立性の問題が残されていることには,注意が 必要であり,この間題を回避するためには,EVおよびCVの定義が望ましい.さらに,本研究 において導出したEVおよびCVの近似式は,市場で観察可能な顕示選好データにおける価格, 時間,環境水準でのテイラー展開から誘導されている.このことは,市場で観察不可能な禁止 3

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価格を用いなければならない弱補完性理論に基づいているTCMに比べて,便益計測精度が向 上することが考えられる. 本研究の最大の課題は,第1に家計生産関数という仮定の成立性と第2にその推定可能性の問 題であろう・すなわち,前者の問題は,本研究の仮定は式(10)における効用関数を車7,′(ガ,9))と しているものの,①〟(Z,/,′(ズ,2),可,或いは,②車7,′(ズ,9),9)の場合が存在することを意味して いる.この間題について,特に,②の場合についてはEbertも指摘しており,検討を要する処で ある.したがって,この間題は,後者の推定可能性とも連動しており,本研究の最重要課題であ る. 3−2は、河野達仁,森杉書芳,樋口敦司:代替・補完財の存在による旅行費用法の適用限界,土 木学会論文集,No.SO7,ⅠⅤ−70,pp.21−28,2006 を掲載している。その概要は以下のとおりである。 本研究では,(i)評価対象の環境財に関して代替施設が存在する場合,(ii)評価対象財への訪問 者の宅地代が変化する場合の2つのケースについて,TCMの利点である顕示選好データに基づく 便益評価が,どのような状況では不可能となるか,すなわちTCMの適用範囲を分析した.本研 究で得られたことを(i)に関して整理すると, (l)旅行費用法で用いるべき需要関数は,対象施設への入場料金に関する需要関数である.とこ ろが,入場料金に関する需要関数は世の中に存在しないので,TCMでは対象施設への旅行費 用に関する需要関数で代用する.しかし,この代用は代替・補完財が存在しない場合のみ正 しい. (2)そこで,代替・補完財がある場合,市場データ(顕示選好データ)から入場料金に関する需 要関数を推計可能かについて検討した.その結果,理想的な状況を想定しても,可能なのは, 完全代替施設しか存在しないケースと不完全代替施設が一つのケースに限られる. (3)(2)に示したように,顕示選好データのみに基づくTCMが適用可能かは,完全,不完全代替施 設数に依存する.また,需要関数を特定化する場合も,代替施設を特定化できると便利であ る.そこで,中立施設かどうかの判断方法として,サンプリングの違うデータに基づく需要 関数の違いから判断するという手法を提案した. TCMは顕示選好データから便益計測を行える点が利点である.しかし,不完全代替財が複数あ るケースでは,TCMに必要な顕示選好データは存在していない.これは,TCMの適用限界を示し ている. (2)の結論と夷務におけるTCMを比較すると,実務では不完全代替施設が複数ある場合にTCMを 適用している例がある例えば7).本研究の結論によると,このような場合,追加的な情報なしには 市場データからだけでは便益計測は行えないはずである.実は,実務では暗黙裏に市場では得ら れない情報を仮定している.具体的には,需要関数型を特定化することで市場データからは得ら れない代替・補完の程度について需要関数で仮定を行い,入場料金に関する需要関数を求めてい る.関数の特定化の妥当性は,本研究が示すように,市場データ(顕示選好データ)からは行え ない.■ したがって,誤った便益計測を行う危険性が高いことが本研究の結果から指摘できる. また,(ii)評価対象財ぺの訪問者の宅地代が変化する場合,宅地代が一定であり旅行費用が異 なるデータが得られれば,市場データのみからTCMで用いるべき需要関数が同定できることを示 した.しかし,そのようなデータの入手が不可能な場合は効用関数を特定化する必要がある. 本研究では,TCMとして,整備前後の需要関数を観察し,その需要関数の消費者余剰から整備 便益を計測する方法を想定した.この方法の代わりに,ランダム効用理論を用いる方法実証例として8) も頻繁に用いられる.すなわち,効用関数のパラメータを推計し,ログサムを用いて便益を計測 する方法である.ただし,このランダム効用理論を用いる場合でも,本研究で指摘した結論は同 様に当てはまる. 3−3は、河野達仁,柳田眞由美,樋野誠一:歪みのある空間経済における生活関連公共施設整 4

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備便益の計測方法の提案,土木学会論文集,No・786,ⅠV67,pp.103−112,2005 を掲載している。その概要は以下のとおりである。 現実の経済には・限界便益と限界費用の乗離,すなわち歪みが存在している.本研究の目的は, 市場に歪みのある空間経済を対象にした,生活関連公共施設整備便益の新しい計量手法の提案で ある・まず,歪みとして混雑の外部性と環境質の外部性を明示化したモデルを構築し,経済厚生 変化を経済変量で表現する便益計測式を2本導出する・次に,便益計測式に含まれる環境質に対 する支払い意思額を推計する方法として従来研究にはない方法の提案を行う,更に,事前評価の ために,間接効果の予測方法を示す.最後に,提案した環境質の支払い意思額の推計方法に関し て実証分析を行い,その妥当性を検討する・導出した便益計測式には環境質の外部性の項を含む. 環境質の外部性の項は,市場からの直接観察できない環境質に対する支払い意思額に環境質の変 化を乗じたもので構成される・そこで,補償所得の変化が地域間で等しい仮定(第一次近似とし て効用増分が地域間で等しいことに対応)を利用した「市場データを用いた環境質の支払い意思 額の計量方法」を提案した・さらに,事前評価を考慮して,間接効果の予測方法を示した.本研 究で提案した環境質の支払い意思額の推計手法は,地域間の移住費用は0というopenの仮定を必 要とする・→方、へドニツクアプローチでは,更にsmallの仮定が必要である.したがって,本 研究で提案した手法は一般的に用いられているへドニツクアプローチよりも比較的一般性を持っ ていると考えられる・また,本分析では時点間及び地点間での変化しない環境質に関するデータ は必要がない・したがって,必要なデータの数を節約できる上に,多重共線性を防げることなど の利点がある・また・提案した環境質の支払い意思額の計量方法を実証分析し,概ね良好な結果 が得られる等,その適用可能性を示した. 3−4はAsaoAndoandMengBo,TransportSectorandRegionalPriceDifTerentials:ASCGEModelfor ChineseProvinces,52ndNRSAMeeting,Nov・2005,LasVegas,andChina−JapanJointSeminar OnAppliedRegionalScience,Sept.2006,Shanghai.(交通部門と地域価格差:中国SCGEモ デル) を掲載している。その概要は以下のとおりである。 SCGEモデルは,限られた地域データしか利用できない国においても,詳細な地域分析を可能 にする有望な枠組みを与える・本研究は、財輸送を派生需要と見なすことで,FOB/CIF価格を区 別し得るSCGEモデルを提案し,中国の省レベル地域に適用している.つぎに、モデルの概略を 説明した後・中国における唯一のsurveyに基づく地域間産業連関表であるIchimura=Wangの1987 年表と本モデルの基準均衡解を比較することで,モデルの包括的な検証を行う.また基準均衡解 に含まれる生産量・価格・効用水準などを用いて,中国の地域経済構造・空間価格体系などの要 約が可能であるが,ここでは1997年の基準均衡解を加えることで,地域間格差の時間的変化も検 討している・結果は、いろいろな変化が適切に表現されていることが判明した。

3−5は、Tatsuhito Kono,Hisa Morisugi and Fumi Miyahara:Congestion Deterioration and Transportation Prqject Evaluation,Annals of RegionalScience,Vol,41,No.1,Pp.

145−170,2007(混雑悪化現象と交通プロジェクト評価) を掲載している。その概要は以下のとおりである。 近年の大都市では,交通施設整備が新たな交通需要を誘発し,結局混雑緩和にはつながらない という現象が生じている可能性がある.例えば東京都では,多くの交通施設整備が行われてきた にも関わらず,バスの平均運行速度は12・Okm′h(1980年)から11・3km/h(2000年)へと低下している。 これらの混雑悪化現象は,人口移動に起因する新たな交通需要の誘発,すなわち誘発交通により 生じていると考えられる・現在各省庁において整備されている費用便益分析マニュアルで採用さ 5

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れている便益評価手法は,ファーストベストの経済を仮定し,交通市場における一般均衡需要曲 線に基づく消費者余剰で交通施設整備の便益を計測する,費用便益分析マニュアルを,交通施設 整備後に交通所要時間が上昇する先の例に適用すると,交通施設整備の便益は負であるという分 析結果が得られる.このような結果は正しいのであろうか?本研究では2都市の一般均衡モデル を定式化し,どのような条件において交通施設整備後に交通所要時間が上昇,すなわち誘発交通 による混雑悪化が発生するかを理論的に検討する.その結果として,人口移動と集積の経済が存 在することがその必要条件であることを示した.さらに,数値シミュレーションにより,既存交 通施設量が大きい都市,および集積の経済が大きい都市に交通施設整備を行った場合,実際に誘 発交通による混雑悪化が発生することを示している. 第4章は、動的多地域経済下における便益の定義と計測可能性並びに補償基準との関係に関す る主要な研究成果を記載している。 4−1は、 中島一意,林山泰久,森杉毒芳:地球温暖化問題におけるカタストロフ・リスクに おける長期的影響一動学モデルの数値解析による均衡解の性質−,環境システム研 究論文集,Vol.34,pp.123−134,2006 を掲載している。その概要は以下のとおりである。 温暖化による将来のリスクの1つとして不可逆的なカタストロフ事象により損害を被るリスク を定量的に評価し,かつ経済活動による気候変動が経済活動に及ぼす影響を内生的に評価できる 枠組みが今後の温暖化影響研究において不可欠であると考えられる.そこで本研究では,温暖化 による将来のリスクを定量的に評価するための基礎的研究として,内生的経済成長モデルにカタ ストロフ・リスク(CatastropheRisks)を明示的に組み込んだ動学的モデルを構築し,数値解析によ ってモデルの挙動特性の把握と均衡解の性質に関して分析することを目的とする.具体的には、 気温変化によるカタストロフ・リスクの存在が競争経済と社会的最適における長期均衡解の性質 にどのような影響を及ぼすかということについて数値シミュレーションを用いて分析を行った. 以下に,本研究での数値シミュレーションによって得られた結論をまとめる. ①   競争経済において,カタストロフ・リスクの存在は,資本・消費割合と経済の成長率に 影響を及ぼすものの,均衡解が単一もしくは複数存在するかについては影響を及ぼさない. ②   競争経済において,カタストロフ・リスクの存在は,効用と生産に対する損害関数の形 状に関係なく,均衡での地表平均気温が産業革命前の水準と等しくなるような排出税が最適な 水準となり,排出税の変化は必ずしも厚生の改善をもたらさない. ③   社会的最適において,その均衡解が単一もしくは複数存在するかについては,効用と生 産に対する損害関数の形状だけでなく,カタストロフ・リスクの大きさを含めたこれらの相対 的関係により決まり,これらの関係には単一均衡解と複数均衡解との開値が存在する. 4−2は、 中島一意・林山泰久:地球温暖化適応策としての社会資本整備に関する一考察, 土木計画学研究・講演集,Vol,35(CD−ROM),2007 を掲載している。その概要は以下のとおりである。 本研究では,温暖化被害に対する適応策としての社会資本を生産要素に考慮した生産関数の推 定を行った.わが国の社会資本を生産に直接的に寄与する産業型社会資本と,間接的に寄与する 国土保全型社会資本に分類することにより,国土保全型社会資本を温暖化被害に対する適応策と して捉え,また気温変化を変数とした温暖化被害関数を生産関数に組み込むことにより,国土保 全型社会資本が気温変化による温暖化被害の軽減を通じて,わが国の生産性へ及ぼす影響を計測 した.その結果,国土保全型社会資本が温度変化による生産力減少を抑え,間接的に生産に貢献 することを明らかにした,また,産業型社会資本が生産に及ぼす影響に関しても,限定的な場合 6

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ではあるが,生産に正の効果を及ぼすことが明らかにされた.しかしながら,本研究で得られた 推定結果は,温暖化によるカタストロフ・リスク存在下での温暖化政策の費用便益分析と温暖化 の被害推定を評価するためにこれまで筆者らが構築してきた温暖化モデルにおいて用いることを 想定しているため,有意に推定された結果が経済学的意味をもたないようなものや,推定値の有 意性が低い係数が多いことを考慮すると,これらの結果を適用するためには,より詳細な検討が 必要である.

4−3では、 AsaoAndo and KazunoriNakajima:ARecursive ModelforEconomiC EvaIuation of GlobalWarmlngandSpace−TimeResolutions,53rdNRSAMeeting,Toronto,Nov・2006,

andJoint Seminar of China−Japan Northeastern Universities on Agglomeration

EconomicsandIndustrialEconomics,Mar.2007(地球温暖化の経済評価のためのリ カーシブモデルの開発) を掲載している。その概要は以下のとおりである。 地球温暖化問題に対して大循環モデル(GCM)を用いて長期的な気候変化に関する緻密な予測が なされている。しかしGCMの予測は,経済活動に関する固定的なシナリオに基づいており,排 出権価格の上昇や災害の増加が経済活動へ及ぼす影響は考慮され得ない。本研究は、気候変動モ デルと対話的に実行されることを想定した経済活動モデルを提示することを目的とする。モデル は準動学的なSCGE(空間応用一般均衡)モデルとして記述され,水災害の影響を考慮した財生産・ CO2排出量とそれらの価格が地域別に算出可能な枠組みを提供するが,技術的にはGCMとSCGE モデルの空間約・時間的解像度の相違に関するインターフェイスの提案がポイントとなる。気候 変動モデルの計算は300kmメッシュ・時間単位で進行するのに対し,経済活動モデルは大陸レベ ルの大地域・年単位を基本とする。このため、まず、経済活動モデルから得られる地域別CO2排 出量は,補助モデルを用いてメッシュ単位に変換される。気候変動モデルからはメッシュ単位の 気温や降水量が得られるが,その経済活動への影響は直接的ではない。そこで,経済活動モデル において気候変動の影響を考慮する範囲を特定する。メッシュ単位の降水量は流出モデルを通じ てメッシュ単位の水深に変換され,時間解像度の調整を通じてメッシュ単位の洪水・渇水状況に 変換される。それを大地域レベルで集計して初めて,経済活動モデルへの反映が可能となる。経 済活動モデルの枠組みは,地域産業連関モデルをベースとするSCGEモデルに依拠している。企 業・家計・政府の各主体別の行動と市場均衡条件の定式化においては,消費部門でのC02の排出 削減を重視する立場から,エネルギー部門を需要側で定義し,排出権を一種の生産要素として扱 う。世界政府は排出権の総枠を地域別に割り当て,地域政府は独自に排出枠を定めて過不足を排 出権取引を通じて調整するが,地域政府はそれ以外に徴税と国債発行を通じて政府消費と公共投 資を行う。本モデルは,民間産業資本・公共資本の蓄積とC02の環境への蓄積に関して準動学的 である。 4−4は、 河野達仁,能登谷活路:費用便益分析に基づく公共投資政策の動学的不整合問題, 土木学会論文集,No.807,IV−70,pp.43−54,2006 を掲載している。その概要は以下のとおりである。 本稿では公共事業に対して費用便益分析を義務化することによって動学的不整合が発生し,そ の結果社会全体の厚生が減少することを示した.具体的には住民が費用便益分析に基づく交通投 資を期待して行動しないときの最適投資がなされている点(この点は社会的にみて最善)と,期 待して行動する場合を比較し,それによる社会全体の厚生の変化,住民の効用の変化の関係を示 した.考慮した交通投資のケースと得られた結果を以下に示す. 考慮した交通投資のケースは以下の4つである. (i)交通投資は勤務地と住宅地ゾーン2の間になされ,「交通資本ストック」の整備ケース (追)交通投資は勤務地と住宅地ゾーン2の間になされ,「フローの交通サービス」の整備ケース 7

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(揖)交通投資は勤務地と両住宅地ゾーンの間になされ,「交通資本ストック」の整備ケース (緑)交通投資は勤務地と両住宅地ゾーンの間になされ,「フローの交通サービス」の整備ケース これらのケースに対する結果は,住民の戦略的な移住があることで, (i)のケースでは,住民の効用水準は増加し,社会全体の厚生は減少. 用)のケースでは,住民の効用水準,社会全体の厚生ともに変化しない. (揖)のケースでは,住民の効用水準は増加し,社会全体の厚生は減少. (わ)のケースでは,社会的最適点が安定な場合では社会全体の厚生,住民の効用水準ともに変 化しない.社会的最適点が不安定な場合では社会全体の厚生は減少し,住民の効用水準は上昇 する場合も下降する場合もありうる. これらの結論から,道路などの「交通資本ストック」の整備の場合,費用便益分析の義務化は, 整備される交通資本ストックが単一路線であっても,動学的不整合問題を引き起こすといえる. 一方,バス政策のように「フローの交通サービス」政策の場合,整備対象が単一路線であれば, 問題が起こらないことが(ii)のケースで確認されている.しかしながら,多くの場合複数路線の整 備が政策の対象と想定される.そのため,やはり動学的不整合問題が起こりうる.特に,(毎)の ケースの社会的最適な点が不安定な場合,住民が費用便益分析を戦略的に利用できる結果,かえ って達成される住民の効用水準は,戦略的行動ができない場合の均衡効用水準(社会的最適)よ り低くなる場合がある.さらに社会全体の厚生も下がる.このような場合は特に,費用便益分析 に基づく交通投資政策は望ましくない.また,交通政策のみならず一般的な公共投資モデルの場 合も同様の問題が生じるといえる,さらに,住民の行動をあらかじめ考慮するなどした費用便益 分析に変更しても,費用便益分析があらかじめ設定されている限り,同様に動学的不整合問題は 生じる.今後の研究としては,本研究で示した費用便益分析に基づく公共投資政策による社会厚 生の低下をどのように防いでいくかの研究が必要である.例えば,都市計画では,スプロールに よる都市施設整備の増大に対処するために市街化区域の設定を行っている.このような政策は次 善政策として有効である可能性が高い.また,住民移動に対して費用を課す等,他の様々な規制 政策を検討する必要がある. 4−5は、 林山 泰久・稲垣雅→・阪田 和哉:現在偏重型選好における環境教育の長期的効果: 数値解析によるいくつかの知見,土木学会論文集G,No.797,VIト36,pp.25−36,2005 を掲載している。その概要は以下のとおりである。 本研究において想定する個人は,合理的な個人月,自制問題を有する単純な個人〃(Na†Ye Person),将来の自制問題を完全に予測して行動することができる洗練された個人S(Sophisticated Person),個人Ⅳと個人方の中間に位置づけられる部分的に洗練された個人P(Partially SophisticatedandNaTvePerson)を考えるものとする.まず,個人Rは,現時点(t=0)において将来 の行動を完全に予測することができ,かつ,その通りに行動する.したがって,環境教育を施し ても個人月は既に合理的に行動しているために,環境教育の効果は無い.次に,個人〃は,現時 点の効用に大きなウェイトを置くものの,将来は合理的に行動すると予測する.しかしながら, 途中時点で自制問題が発生し,当初計画の変更を余儀なくされる.また,個人βは,最終期から 後方帰納的に推測,すなわち,将来の自制問題を完全に予測して行動する.特に,個人βについ て,現時点の効用に特別なウェイトを置かない場合には,個人月と一致することになる.最後に, 個人タは,個人月,個人〃および個人タをその特殊解として内包化した最も一般的な行動を行う. したがって,本研究において一般的に定式化する個人は,個人タに相当することになる.近年で は,行動経済学および実験経済学における研究蓄積により,個人行動は新古典派経済理論では説 明不可能な事例が多数指摘されている.特に,異時点間送好問題においては,個人が享受する教 育および情報により意思決定メカニズムが変容することが容易に想像できる.本研究は,教育投 資による効果が,個人の非合理的意思決定から合理的意思決定に変容する過程およびその効果を 分析するための基礎的準備を行ったものである.すなわち,本研究は,現在偏重型選好であり, かつ,自制問題を有する最も一般的な個人戸を想定し,擬似双曲線型割引関数を用いた環境教育 による態度行動変容モデルを構築し,数値解析を行った.本研究における数値解析においては, 個人〃および個人タが環境教育によって個人タに変容するプロセスを洗練化,また,個人方が環 8

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境教育によって個人f=こ変容するプロセスを合理化と定義した.その結果,洗練化は負の便益を もたらす可能性があり,一方,合理化は正の便益をもたらすことが明らかとなった.さらに,現 在偏重型選好パラメータが,生涯効用に与える感度が極めて敏感であることおよび環境教育の早 期拡充が必要不可欠であることが示された.また,本研究の結果から,環境教育の経済学的効果 を定量的に計測し得る可能性が示されたものと考えられる.このことは,本研究における式(14) の推定が可能か否かが問題となるが,この場合,オイラー方程式のいくつかのパラメータを外生 的に与えるなどの強い前提が必要となる可能性があるものの,例えば,枯渇性資源の消費に関す る時系列データを利用すれば,その推定が可能であろう.なお,本研究で構築したモデルは,固 定端の離散時間モデルある.したがって,個人の生涯効用最大化問題を考える上で,固定端,す なわち,最終期が既知であれば,それ以降の期は存在しないことからストックを残すインセンテ ィブは働かないという構造になっている.しかしながら,自由端(±=∞)のモデルを想定した場 合には,最終期が未知となることから,前述のインセンティブが働くこととなり,数値解析の結 果が変わる可能性があることを再度指摘しておきたい. 第5章は、動的不確実性下における便益の定義と計測可能性並びにその補償基準との関係に関 する主要研究成果を記載している。 5▼1は、ToshimoriOtazawaandKiyoshiKobayashi:OptimalTimingStrategyforPrqjectEvaluation andImplementation,ProceedingsofIEEESystems,Man,andCyberneticsConference,2005,Pp・ 634−639,2005(プロジェクトの最適な評価・実施タイミング戦略) を掲載している。その概要は以下のとおりである。 本研究では,「nOW−Or−neVer原則」に基づく伝統的な費用便益分析ではなく,プロジェクトの 実施の延期を明示的な選択肢に含めたリアルオプション理論によるプロジェクト評価の方法論 を提案する.伝統的な費用便益分析の1つの限界は,プロジェクトが現時点で実施されるか,あ るいは永遠に実施されないか,という「now−Or−neVer原則」に基づいており,「意思決定を延期 し,将来に再評価を実施する可能性」を無視している.しかし,プロジェクトの将来価値に関す る不確実性が大きければ,現時点でプロジェクトを実施するためにはリスクを相殺する程度にプ ロジェクト価値が大きくなければならない.プロジェクト価値が不十分な場合には,より確実に 大きなプロジェクト価値を獲得できるようになるまで意思決定を延期することが必要となる.リ アルオプション理論に基づけば,あるプロジェクトの費用便益分析の結果が不十分な場合には意 思決定を延期し,将来時点で再び費用便益分析を実施するという戦略を明示的に考慮することが 可能となる.しかし,従来のリアルオプション理論は,対象となる資産価値が常に市場で観測可 能な場合を想定している.公共プロジェクトの場合,プロジェクト価値に関する情報が常に獲得 できるわけではなく,その情報を獲得するためには費用便益分析等のプロジェクト評価を実施す ることが必要となる.その際に支払わなければならない評価費用を無視することはできない.し たがって,期待プロジェクト価値を最大にするような最適なプロジェクトの評価・実施のタイミ ングを決定することが必要となる. こうした問題意識の下,本研究では,プロジェクトの最適な評価・実施タイミングを決定する 最適評価・実施モデルを定式化するとともに,プロジェクトの実施の有無,および延期した場合 に次期の評価タイミングを決定する簡単な評価ルールを求める方法を開発した.その上,数値計 算により,1)プロジェクトリスクが大きいほど,プロジェクトの採択基準となる臨界的な費用 便益比は大きくなること,2)プロジェクト価値の観測値が小さいほど,次回の評価時刻までの 時間間隔は長くなることを明らかにした 5−2は、織田澤利守,長谷川尊,小林潔司:不確実性を考慮した公共事業評価スキームの設計 手法に関する考察,土木計画学研究・論文集,Vol.22,pp.65−76,2005 を掲載している。その概要は以下のとおりである。 これまでに著者らが提案した公共事業の事前・再評価モデルは理論モデルであり,評価スキー 9

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ムの実行可能性およびアカウンタビリティーの観点から実務への適用に限界があった.本研究は, 理論モデルと可能な限り整合的であり,かつ簡便な事前・再評価スキームを設計するための方法 論を開発する.その際,公共事業評価の事前・再評価結果に大きな影響を及ぼすと考えられる要 因として便益リスクと遅延リスクに着目し,公共事業をとりまくリスク特性を可能な限り合理的 に反映しうる実用的な事前・再評価スキームを提案する.さらに,数値計算事例を通じて本研究 で提案した評価スキーム設計手法の有効性について検証する.具体的には,事業に介在する便益 リスクの大きさと再評価時点における進捗度に基づき事業をタイプ分けし,それに応じて適応さ れる評価ルールを決定するための方法論を提案した.さらに,数値計算事例を通じて,本研究で 開発した評価スキーム設計のための方法論の有効性について検証した.なお,提案手法を用いて 設計した評価スキームは,事業に関する意思決定の判断材料を提供する簡便的な感度分析ツール としても利用することができる.本研究で構築した方法論の実用化に向けては,対象となる事業 ごとに,介在するリスク特性を把握し,標準的なリスクタイプを設定する必要がある.現在のと ころ,事業リスクに関する情報は十分に蓄積されているわけではなく,今後,事業の再評価,事 後評価の結果を収集,分析,蓄積することにより,これらのリスク情報を蓄積することが不可欠 である.また,マクロ経済指標や人口データとプロジェクトの便益過程との間の相関性を明らか にすることを通じて,予測精度の向上を図る必要がある. 5−3は、織田澤利守,赤松隆,藤原誠:不確実な経済環境における都市集積の均衡ダイナミク ス:非線形相補性アプローチ,土木計画学研究・論文集,Vol.24,pp.197−206,2007 を掲載している。その概要は以下のとおりである。 本研究では,都市集積均衡パターンの選択問題に対して,不確実な経済環境下における人口移 動の完全予見的ダイナミクス(perfect−foresightdynamics)を記述したモデルを構築し,その効率 的な解法を提案する.具体的には,不確実性下における労働者の地域間移住に関する意思決定モ デルを定式化し,人口移動ダイナミクスの均衡条件が非線形相補性問題■(NCP:Nonlinear ComplementarityProblem)に帰着することを示す.その上で,この間題を効率的に解くための数 値計算手法の開発を行う.また、提案手法を用いた分析により,確率的に発生する輸送費用Xのサ ンプルパスに応じて,人口移動ダイナミクスの均衡経路が決定されることを示した.以上に述べ た本研究の成果は,従来研究の確定論的な枠組みでは未解決であった都市集積モデルの均衡選択 問題に対し,新たな均衡選択原理を確立するための第一段階として位置付けられる.次のステッ プとして,著者らは既に,提案手法により求めた均衡人口移動ダイナミクスに関して,確定論的 ダイナミクスとの対応関係や不確実性の度合いが及ぼす影響について分析を行っている.さらに, 長期的に実現する都市集積・分散パターンの性質を明らかにし,その政策的含意を示している. 10

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