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日本の原発は輸出先でどのように見られているのか : ベトナム、ニントゥアン省および周辺出身者への聴き取り調査より: 沖縄地域学リポジトリ

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Academic year: 2021

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Author(s)

吉井, 美知子

Citation

沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of

Humanities and Social Sciences(18): 11-24

Issue Date

2016-03-07

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/20430

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〈論文〉

日本の原発は輸出先でどのように見られているのか

― ベトナム、ニントゥアン省および周辺出身者への聴き取り調査より ―

 

吉井 美知子

要 約  ベトナムでは初の原発建設計画が進められている。南部のニントゥアン第一原発を ロシアが、第二原発を日本が受注し、着工は 2022 年以降となっている。  原発に関する世論調査等は一切行われていない。外国人による現地取材や調査も非 常に難しい。そこで本研究では立地地元ではなく、国内外の離れた場所で暮らす地元 出身者への聴き取り調査を実施した。これにより現地出身者の意見を明らかにする。  調査の結果、学歴が中卒以下の人々の多くは、フクシマ事故や故郷に建つ原発の計 画を知らず、意見も持たないことがわかった。また高卒以上の人々は放射能への不安、 人材不足の懸念からの反対が多く、日本には原発ではなく再生可能エネルギーへの支 援をという声が集まった。  立地地元に情報が行き渡らず、高学歴者の間で計画への反対意見が多いなか誰ひと り意見発信ができない。言論の自由のない国を狙って原発を輸出する日本の、道義的 責任が問われている。 キーワード:原発、輸出、ベトナム、ニントゥアン、フクシマ はじめに 1. 研究の背景  ベトナムでは初の原発建設計画が進められている。2009 年に国会で南部ニントゥアン省での 建設が決定された。そして翌 2010 年には第一原発をロシアが、第二原発を日本が受注した。ニ ントゥアン省の省都、ファンラン・タップチャム市を挟んで、ロシアの第一原発が南に 20 km、 日本の第二原発が東北に 20 km の場所に位置する。着工は当初 2014 年の予定が、2020 年以 降(2014 年 1 月発表)、2022 年以降(2015 年 11 月発表)という風に、徐々にずれ込んでき ている。  着工こそまだでも、現地では周辺インフラの整備や住民移転が着々と進められている。第一 原発が立地するトゥアンナム郡フオックジン社ヴィンチュオン村1)では、すでに移転が完了、 住民は新たに建設された再定住区や自主的に選んだ場所に各々移って行った。日本の第二原発 の地元、ニンハイ郡ヴィンハイ社タイアン村2)では、2015 年 12 月現在、移転は始まらず再定 住区も未着工であるが、2018 年に移転が完了する予定となっている。両原発とも周辺道路はど んどん改修が進み、細かった悪路が見違えるような片側 2 車線の街灯つき道路になっている場 所もある。

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 この原発建設に関して、地元の住民はどのように考えているのか。  日本であれば行われるべき地元住民のパブリックコメント募集や、マスコミによる世論調査 等は一切行われていない。わずかに、比較的自由な報道をする「トゥオイチェー(若者)」紙の ようなベトナムの新聞がたまに現地ルポを掲載する程度である。外国のマスコミによる現地取 材には許可が出ないので、観光ビザでの弾丸取材しかできず、報道は非常に限定的である。  マスコミ取材と同様に、国内外の研究者にも現地調査の許可は出ない。そのため研究者は個 人観光旅行のふりをするか、学生のスタディツアーを引率するという名目ぐらいでしか現地を 訪れることしかできない状況である。 2. 研究の目的  本研究では、ニントゥアン省とその周辺住民の、原発計画への意見を明らかにしたいと考える。 インターネットで意見を表明しているような例外的な知識人ではなく、意見表明の機会を持た ない一般住民を対象とする。その中で立地地元住民の、①原発計画への意見、②第二原発を輸 出する日本に対する意見、の 2 点を明らかにする。そして、③原発建設は地域住民の主体的な 選択ではない、ということを検証したい。またこれら三点の結果を踏まえ、日本側に求められ る行動は何かということを提言したいと考える。 3. 研究の方法  先行研究を参照するとともに、聴き取り調査を行う。調査はニントゥアン周辺での実施が非 常に困難であり、無理に行うと聴き取り対象者に迷惑をかける恐れがあるため、ベトナム国内 の大都市および海外で行う。これらの場所で、ニントゥアン省および周辺地域から一時的に来 ているベトナム人を探し出して聴き取りを行うこととする。  なお原発周辺には少数民族のチャム人の村落が多くある。もともと 19 世紀中頃にチャンパ王 国が滅亡するまで、ニントゥアン周辺地域は同王国の版図であった。ベトナム初の原発がこの 地に計画されることは、先住民の権利にかかわる問題であると考えられるが、これについては 別稿に譲り、本研究では対象を多数民族のキン人に限定する。  ベトナムでは学歴や社会階層の違いによって、原発事故や原発建設計画といった時事問題へ の認識に著しい差が見られることが予想される。このため、なるべく低学歴者から高学歴者まで、 多様な社会階層の人々を含むように配慮する。  ベトナムは、インド、トルコ、カザフスタン等と並ぶ日本の原発輸出先のひとつである。受 入国の地元住民の意見を示す本研究が、日本の市民が自国の原発輸出に対する自身の態度を決 めるための指標になればと考える。 Ⅰ . 先行研究の検討 1. 原発輸出  日本では 2011 年の福島第一原発事故を受けて、多くの原発関連書籍が出版されている。しか しそのなかで、原発輸出に関するものは、あまり多くない。輸出先を限定せず、世界や日本の 原発産業との関係から日本が輸出に向う政治経済構造を論じたものとしては、鈴木 2014 と中野 2015 がある。ただし、これらの研究には本研究が主眼とする輸出先地元住民の意見への詳しい 言及はない。 2. ベトナムへの原発輸出-日本側資料-  2010 年に日本がベトナムの原発を受注した後、2011 年の福島第一原発事故を経て、ベトナ

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ムに限定した原発輸出に関する論述が少しずつ出ている。小口ほか編 2012 ではベトナム研究者 が「(原発を輸入するかどうかは)ベトナム政府と国民が主体的に決める問題です」と述べ、ベ トナム政府が推進していることから原発輸出への賛成意見が記録されている(小口ほか 2012: 204)。吉井 2013 では輸出に伴う差別構造を分析した。坂本 2013 では、福島事故を踏まえベ トナムでの住民の安全確保が難しいことを問題点として指摘しつつ、ベトナム国会議員の反対 意見を紹介している。伊藤 2015 においても、ベトナムの知識人がインターネットで発信してい る反対意見に言及し、1992 年 6 月にこれらの知識人がネット上で実施した日本の首相宛の抗議 文書署名運動を紹介している。以上の文献では、本研究が注目する立地地元住民の意見への言 及は非常に限定的である。  伊藤・吉井編 2015 では、その地元住民のひとり、少数民族のチャム人知識人インラサラ (Inrasara)による論述が和訳されて紹介されている点が画期的であった(インラサラ 2015)。 ただし本研究では多数民族キン人の意見を中心にまとめ、チャム人に関しては別稿に譲りたい。  ノーニュークス・アジア 2015 は第 4 章で、ベトナムの原発が一党独裁のもとで進められて いる現状を紹介している。地元住民の意見が紹介されているが、これは後述する映像資料、中 井 2013 からの引用である。 3. ベトナムへの原発輸出-ベトナム側資料-  ベトナムは共産党一党独裁の社会主義国であり、言論の自由は大きく制限されている。その ため特別に身の安全が確保できていると判断したごく例外的な人びとを除き、政府が決めた原 発計画への意見を表明する機会は非常に限られる。  国内在住のベトナム人で原発反対の意見を表明しているのは、公職を引退した共産党高級幹 部が多い。もとダラット原子力研究所長のファム・ズイ・ヒエン (Phạm Duy Hiển)、もと国会議

員で伊藤・吉井 2015 にコラムを執筆しているグエン・ミン・トゥエット (Nguyễn Minh Thuyết) (グ エン 2015)等である。彼らはすでに引退ずみであるため、昇進のために党からの評価を気にす ることはない。しかも党の高級幹部であるため、少々の批判的発言では逮捕されない。身の安 全が確保されているのである。このような発言をしている知識人はすべて、ハノイやホーチミ ン市のような大都市在住であり、原発立地地元の住民とはいえない。ニントゥアン周辺出身者 でもない。  ベトナム人知識人による反対論述は、政府非公認のインターネットサイト等を介して、広く 発信されている。禁止サイトであっても、ベトナム国内で別のサイトを経由することにより危 険なく閲覧する方法があり、本研究の調査対象者のなかでも特に高学歴者の場合はこれらのサ イトから学習した人も少なくないと考えられる。 4. ニントゥアン省および周辺住民の意見  立地地元住民の意見を体系的に調査した資料は皆無といってよい。地元を見学時に観光船の スタッフとオーナーに質問した記述が伊藤 2015 にある。以下に引用する:   (…)舵手の男性は「国家が決定したのだから、耐えるしかない」と言い、社長は「原発が できても関係ない。10 年この仕事をやってきたのだから同じように続けるだけだ。何も 変わらない」と答え(…)(伊藤 2015:144) ここでは政府の決定に対するあきらめと情報の欠如という問題が指摘されている。 中井 2013 の映像資料では地元住民へのインタビューが紹介されている。対象者は 13 名いる が、全員が原発建設計画を知っていて、賛否両論に分かれる。(以下、中井 2013 をもとに筆者記述)

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日本の原発が建つタイアン村の幹部 2 名(村長と老人会会長)は、フクシマ事故前に日本へ の視察に招かれていて、「(…)日本では原発のすぐそばに人が多く住んでいるのを見て安心し た。原発内は二重ドアで密閉されていて安全だと思った。大きな天災は神様の意志で起こるから、 心配してもしようがない。」「日本の技術を信頼している。バイクでも家電製品でも、日本製は すばらしい。原発も大丈夫だ。(…)」と答えている。  一般住民の賛成者としては、ロシアの原発で移転させられる漁業者の若者たちが、「雇用で地 域を発展させるために必要だ。」「次世代のためにも賛成する。」「安全性については何とも言え ないが、死ぬときは皆一緒だからいい。」「世界に何千とある原発のうち事故は 2 ヶ所だけだか ら大丈夫。」 などと答えている。また別の場所の若者たちは、「原発は怖くない。」「日本で事故 があったといっても、たとえば日本の(防護用の)コンクリートが厚さ 1 メートルだったのなら、 ベトナムでは 3 倍の 3 メートルにすれば大丈夫。」と、科学技術への盲目的信頼を表明している。  最も強く反対しているのは、移転を拒むタイアン村の退役軍人の老人で、「戦争で 2 度も村を 追い出された。絶対に立ち退かずにここで死にたい。」と断言する。同じタイアン村の農民女性も、 「豊かな村を捨てて、どこへも行きたくない。」「政府の決めたことに逆らってもしようがない。」 と言うが、これらは原発というより、移転させられることへの抵抗である。  ファンランの市場で野菜を売る女性たちは、「原発は怖くない。(事故が起こっても)どうせ 死ぬのは皆一緒だし。」「(原発事故が)死ぬほど怖い。」 と、怖いか怖くないかの結論は異なっ ても、皆事故を前提に答えていて、計画への反対意見を示唆している。  本研究では、たまたま出会った場所でのインタビューからさらに踏み込み、より長い時間を かけて膝を付き合わせた面談の形でデータを取ることする。対象者は視察に招かれるような地 位にはなく、実家は移転させられる村落にはない。紹介者を挟むなどしてある程度の信頼関係 を作ってから面談する。また、対象者の完全な匿名、匿住所、匿職業等を約束することにより、 本音の意見を言いやすい条件を作る。聴き取り場所がニントゥアン周辺地域から遠く離れた場 所であること、映像資料を撮るためのカメラを回さないこと、発言を録音しないことなども、 率直な発言を促す助けになることと考える。 Ⅱ . 聴き取り調査 1. 目 的  原発事故時あるいは平常運転時に直接の放射能被害を受けやすい、原発から 80 キロ圏内の住 民の、原発計画への意見を明らかにするのが、本調査の目的である。同時に、福島事故につい ての情報の有無、そもそも自身の出身地での原発建設計画を知っているかについても明らかに する。 2. 方 法  前述のようにニントゥアンおよび周辺地域での調査は政府の許可が取れず、対象者に迷惑を かける恐れもあることから、苦肉の策として次のような条件の対象者を探した。すなわち、① ニントゥアン第一原発あるいは第二原発建設予定地のうち、近いほうから 80 キロ圏内の出身で あること。②現在は一時的に国内外の別の場所に居住していること。③親、兄弟姉妹、子等の 近親者が 80 キロ圏内の実家に居住していること。④定期的に故郷の近親者と連絡を取り合って いること。⑤ 2 年に 1 回以上の頻度で実家に帰省していること。⑥キン人であること。⑦匿名、 匿住所、匿職業等を条件に、聴き取りに同意すること。以上の七条件である。

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 聴き取りは筆者との対面で、対象者の自宅や職場、カフェ等で実施し、ひとりにつき概ね 30 分から1時間をかけた。使用言語はベトナム語で、通訳を介さず筆者が直接聴き取った。紹介 者を介している場合には同席してもらったこともある。  聴き取りは 2014 年から 2015 年にかけて、ベトナム国内の大都市や国外で実施した。対象者 の保護のため、聴き取りの日時や場所の詳細については秘すこととする。 3. 質問事項 次の十点に関して質問をした。①氏名、生年月日。②出身地住所、生い立ち、家族構成、親 や先祖がいつ、どこから移住してきたか、学歴、職歴。③現住所、現職、勤務先、肩書、連絡先。 ④現住所での滞在期間、帰省の頻度、直近の帰省時期。⑤フクシマ原発事故についての経験、知識、 感想。⑥ベトナムの原発建設計画についての知識。⑦同計画についての意見。⑧家族や地元の人々 の知識と意見。⑨今後の見通し。⑩日本への要望、提言。 4.  結 果 (1) 対象者 聴き取り対象者 15 名の詳細を表 1 に示す。 表1:聴き取り対象者 番号 仮名 年齢 ( 歳代 ) 原発からの距離 (km 圏内) 教育レベル 1 A 30 20 小学校中退 2 B 70 20 小学校中退 3 C 30 20 小卒 4 D 30 20 小卒 5 E 30 20 中卒 6 F 30 30 高卒 7 G 30 40 高卒 8 H 30 20 短大卒 9 I 30 20 大学中退 10 J 20 20 大卒 11 K 40 80 大卒 12 L 30 20 修士卒 13 M 30 70 修士卒 14 N 40 30 修士卒 15 O 40 40 修士卒         出典:聴き取りをもとに筆者作成  表 1 では便宜上、15 名を学歴の低い方から高い順に並べた。性別は表示していないが、男 6、 女 9 である。年齢では、ひとりを除いて 20 代から 40 代の働き盛りで、特に 30 代が 10 名と最 多である。これは故郷を離れた出稼ぎ先での聴き取りとなったためである。70 代の 1 名は、出 稼ぎ中の子ども夫婦と一時的に同居している老親であった。実家の原発からの距離は、15 名中 9 名が 20 キロ圏内で、もし福島と同様の事態が起これば強制移転となる地域が多くを占める。 ࢽ ࣥ ࢺ ࢗ ࢔ ࣥ ┬ 1㸸ࢽࣥࢺࢗ࢔ࣥ┬ࡢ఩⨨㸦➹⪅సᡂ㸧 ᅗ2㸸ࢽࣥࢺࢗ࢔ࣥ┬ᆅᅗ㸦➹⪅సᡂ㸧

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最も遠い 80 キロ圏内も、福島事故の直後に米国が自国民を避難させた範囲に入る。  学歴については小学校中退から修士卒までと、なるべく多岐に渡るように配慮した。実際の 人口比から考えると、高学歴に偏っている感は否めない。ただ本研究の目的は、人口中の何割 が賛成で何割が反対かという風な統計を取ることにはないため、聴き取りを快諾してもらえる という条件を優先した。 (2) フクシマ原発事故についての経験・知識・感想  この設問への回答は、対象者の教育レベルや事故発生当時の住所地により大きく分かれた。 低学歴者では、フクシマ事故ばかりでなく、東日本大震災そのものもまったく知らない例が 1 名あった(B)。日本の地震と津波については知っているが、原発事故について知らないという 三例があった(A,C,D)。同じく低学歴者で、フクシマ原発と聞いて、ヒロシマ原爆と勘違いす る例もあった(E)。  高卒から大卒の 6 名中 5 名では、テレビ等で見てフクシマ事故を知っているが、その後どう なっているかの詳細については把握していないか、または「完全に収束した」という理解であ った。これはベトナム国内での報道統制の結果であると考えられる。事故当初は大々的に報道 されていた原発事故が、2011 年 5 月頃からはぱたっと止まったようだ。大卒のうちでひとり K だけが、事故が収束していないと答えたが、K は高卒から大卒までの 6 名のうちでただひとり、 事故当時より調査時までを通してずっと海外在住であった。このため他の 5 名とは異なるメデ ィアから情報を取っていたと考えられる。  修士卒の高学歴者は全員、フクシマ事故の知識があった。事故当時日本在住の O は、自身も 津波のため高台へ避難した。その後は食料の調達に苦労したことや、避難者を地元で受け入れ たことなどの体験談を語った。修士卒の 4 名は皆、フクシマの現状もフォローしている様子で あったが、3.11 を「不慮の事故」とするもの(M)がある一方で、L や N は被害の甚大さや放 射能の危険を強調し、意見が分かれた。 (3)ベトナムの原発建設計画についての知識  ベトナムの原発建設計画については、「まったく知らない」が 3 名、「少し(実家から近い方 の 1 ヶ所)だけ知っている」が 6 名、「よく知っている」が 6 名という結果になった。フクシマ 事故と同じく、教育レベルにより結果が異なり、原発から実家までの距離とはあまり関係がない。 ただし高卒から大卒のなかで 1 ヶ所だけ知っているという回答者は、すべて実家に近い方の 1 ヶ所だけを認識していた。  情報源としては、高学歴者はインターネットが多いが、それ以外では帰省時に地元の人々か ら聞いたとする回答もあった。  近親者が住む実家が 20 キロ圏内にあり、定期的に帰省しているにもかかわらず、聞いたこと がないという回答が、低学歴者のなかに 3 名もあった。ニュースに気を配るより、毎日のご飯 をどう稼ぐかということの方が優先の貧困層なのであろう。この中には、そもそも「原発」と いう語の意味をまったく解さない人もいて、聴き取りに当たり、「原発とは何か」という初歩的 な説明をすることから始める必要があった。

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(4)ベトナムの原発建設計画についての意見  回答を表 2 に示す。 表 2:ベトナム原発建設計画への意見 番号 仮名 意 見 1 ~ 3 A ~ C 意見はない 4 D 立地場所近くに水源がある。ここが放射能で汚染されたら周辺地域の飲み水が なくなり大変なことになるので反対 5 E 政府が決めたことなので意見は持たない 6 F 人材不足なので反対。地元には水力発電があるので不要 7 G 原発周辺には水源地があるので反対。技術不足で事故になる。観光地が全滅し、 罪のない住民が被害を受ける 8 H 3 つの理由で反対する。第一に、地震はなくても他の天災があるから。第二に、 ベトナムでは安全文化に欠け、情報が伝達されにくいから。第三に、世界的に 脱原発の方向だから 9 I 雇用ができるので賛成する。地元には地震も津波もないから大丈夫。日本製品 は信用できる。ロシアについては不明 10 J 安全が確実に保障されるなら賛成。雇用が増えてよい。ロシアも日本も信用で きる。安全でないなら反対する。食物の汚染が心配だ 11 K 計画発表当初は賛成、3.11 を経て反対に転じた。事故が起こると周辺で暮らす 最貧の人々が犠牲になる。日本と異なり政府からの救済がない 12 L 電力供給と雇用というメリットはあるが、事故被害というデメリットが大きす ぎる。周辺の水源やエコツーリズムが全滅する。政府が核武装を狙っているよ うで反対だ 13 M 3.11 以前は生活向上や雇用促進のため賛成だったが、事故を経て反対に転じた。 同様の事故がニントゥアンでも起こる。計画は中止すべきだ 14 N 事故のない平時でも安全管理ができないので反対する。事故時には地元だけで なく全国の子どもたちが犠牲になるので反対だ 15 O 日本でさえも原発事故被災者の支援がちゃんとできていない。ましてやベトナ ムでは益々できないので反対。責任の所在が不明で資金や技術が伴わないベト ナムでは無理 出典:聴き取りをもとに筆者作成  ベトナムの原発建設計画についての意見は、表 3 に挙げたように、「賛成」1 名(I)、「条件つ き賛成」1 名(J)、「反対」9 名、「意見なし」4 名となった。  全体的に反対が賛成を大きく上回るなか、学歴による意見の差が明白に浮かび上がった。そ して出身地の原発からの距離には関連がない。 すなわち、中卒以下の低学歴層 5 名のうち 4 名が自身の故郷での原発建設計画に対して「意 見なし」と回答している(A, B, C, E)。唯一の例外は、自身の故郷での原発建設の話を初めて聞 き、水源地を理由に即座に反対意見を表明した D の場合である。  高卒から大卒にかけての層では、意見が割れた。2 名だけの賛成者 I, J(条件つきを含む)は

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この層に入り、ほかの 4 名は明確に反対意見を述べている。  修士卒の 4 名は、全員が反対意見を表明している。  賛成の理由としては、地元での雇用創出効果と電力供給による生活向上が挙げられている。 これらは、フクシマ事故前までは賛成だったという K や M、また結論として反対ではあるが原 発のメリットとして L が指摘している。  反対の理由としては、事故の危険性、水源地や海洋などの環境汚染、食物汚染、観光業への打撃、 人材・技術不足、安全管理の不備、責任者不在、被災者支援の欠如、資金不足、核武装への憂慮、 世界的な脱原発、等が挙げられている。多くが「事故が起こる」「起こったら大変」という前提 で反対しているなか、通常運転時の汚染や建設計画そのものにかかる資金不足、核武装、世界 的な脱原発の方向等について言及した L, N, O の修士学歴者の発言が目を引く。 (5)地元の家族や近隣住民の意見  聴き取り対象者以外の、地元に残った家族や近隣住民の意見を尋ねた設問であったが、これ も学歴によって大きく分かれた。小卒以下で 20 キロ圏内の低学歴者は自身の家族についてだけ 回答し、一切原発が話題にならないと述べている。またより遠い 30 - 40 キロ圏内で高卒のふ たりは、家族では話さないが近隣住民の不安の声を聞いている。  高学歴の人々は、周辺の低学歴の住民について、フクシマ事故を知っていても「今日のご飯」 が優先で、原発には関心がないと述べている。ただしその場合の「フクシマ事故」は、完全に 収束した過去の話となっていて、これらの住民に現状は知らされていない。唯一 N だけは地元 の高学歴同窓生について述べ、原発着工後に遠方への転居準備中であることを証言した。  転居に関しては、2015 年 9 月、ファンラン市内のカフェで筆者が偶然聴き取った事例がある。 労働者風の地元住民が数人集まっているテーブルに相席で座ったところ、日本人だと知って問 わず語りに話してくれた。「わしらは金がないから無理だが、近所の金持ちはもうすでに引っ越 していったよ。」との由であった。  そもそも言論の自由のないベトナムで、原発計画に住民が反対意見を表明ことなどできない。 唯一の異議申し立て方法は、さっさと遠方へ転居することであろう。ただしこれには、転居先 で生活が成り立つという条件が必要であり、結局、高学歴の自由業者や退職者で金銭的余裕の ある層に限られることになる。 (6)今後の見通し  ベトナムの原発建設計画の今後の見通しについて、質問を投げてみた。  小卒以下の聴き取り対象者からは、まったく回答が得られなかった。筆者の意図した建設計 画の見通しよりも、危険性や事故時のことなど、「将来への不安」を口に出した回答が多かった。 また、他の電源の可能性に言及した E、原発の電気が大都市だけに送られ、地元の生活向上に つながらない心配を述べた H、大規模プロジェクトが破綻しかけているボーキサイト開発を例 に不安を述べた L、言論の自由がないため計画を止められないとする M、収賄や戦争に言及し た N など、回答は多岐に渡った。全体に、反対意見を表明した対象者からの不安と憂慮が述べ られたという印象である。

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(7)日本への要望・提言 表 6:日本への要望・提言 番号 仮名 意 見 1 ~ 7 A ~ G 回答なし 8 H 風力や太陽光など別の方法で支援してほしい。先進国だけ脱原発して、途上 国に押し付けるのはやめてほしい 9 ~ 10 I ~ J 回答なし 11 K 風が強いので風力発電を。原発でなく観光開発を 12 L 援助はうれしいが、下心があるのでは。国際的な名声か、日越関係の緊密化か、 儲けか、核兵器開発か 13 M 支援はありがたいが、ぜひ異なる方法の支援に切り替えてほしい。でないと フクシマと同様の事故がもう1 回起こってしまう 14 N 被ばく経験のある日本が、なぜ技術不足のところに持ち込むのか。フクシマ 事故のあとで輸出を続ける理由が不明。世界の趨勢に従い、太陽光や風力発 電に援助を。ベトナム反戦運動のときのように、日本の市民社会の運動で止 めてほしい 15 O 支援をやめてほしい。途上国には途上国なりの別の方法がある 出典:聴き取りをもとに筆者作成  この設問に関しては、学歴大卒以下の多くの対象者から回答が得られないままに終わった。 低学歴者にとっては、判断材料となる情報がない上に、そもそも「自分の意見を述べる」とい う行動自体に不慣れだということもあろう。また、日本人である筆者を前にして、日本に対す る批判は言いにくかったかもしれない。  しかし要望・提言を述べてくれた 6 名からは、非常に示唆に富むデータが得られた。原発で はなく、太陽光、風力など他の電源への援助を要望した回答者が 3 名(H, K, N)いた。また、 電源とは明示せずに、観光開発や「他の方法」という一般的なオルタナティブを提言した回答 者も 3 名いた(K, M, O)。  Lからは、日本政府には別の隠された目的があるとして、輸出による経済的利益や核開発に までも言及があった。N は日本の真意を測りかねるとした上で、過去のベトナム反戦運動を例に、 「日本の市民社会が運動をして輸出を止めてほしい」という切実な願いを語った。市民運動がで きない国の市民からの、心からの叫びとらえることができる。 Ⅲ . 考 察  本聴き取り調査は、対象者がわずか 15 名と少なく、非常に限定的なデータしか集められてい ないことは十分承知の上である。それでも対象者が特定されないという条件下で率直な意見を 取れたと思われ、住民の本音に近づくことができたと考える。  本章では、六点のポイントから調査結果を考察する。 (1) 原発反対意見が多い  15 名中 9 名が反対している。しかも最も高学歴の 4 名は揃って反対であった。低学歴で、フ クシマの事故も、自国の原発計画もまったく知らない対象者のなかにも、説明を聞いてすぐに

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反対を表明する D のようなケースもあった。  フクシマ事故のこと、その後の汚染水漏れや廃炉作業の様子、住民の避難状況や健康被害等 が正確に伝われば、多くの住民が反対すると考えられる。  唯一条件なしの賛成を表明したIも、日本の技術は信用できるとしながらも、ロシアについ ては分からないとしている。そもそもIは、ロシアの第一原発の計画をまったく知らなかった。 フクシマ事故の情報は、国内の新聞とテレビニュースから得ており、「天災だったからしようが ない」「事故は完全に収束した」と断言していて、ベトナム政府による情報操作の成功例ととら えることができる。  もうひとりの条件つき賛成者 J は、「絶対に安全ならば」という条件つきで賛成していて、こ の条件に見合う原発は世界中に皆無だと考えられる。そのことを J が理解した時点で、この賛 成意見は消滅するであろう。  情報を持たず、意見を表明しなかった 4 名を考慮しても、全体に反対意見が多い趨勢は変わ らないといえる。 (2) 特に低学歴者に情報が十分に伝わっていない  「原発」という言葉が通じない例が1件(E)、フクシマ原発事故を知らない例が 5 件あった。 特に中卒以下の低学歴者に、原発事故の情報がまったく伝わっていない。自身の故郷にできる 原発の計画も知らない。地元の家族も原発の話をしないし、尋ねても原発についての自身の意 見を述べることはなかった。将来の環境汚染や事故の話よりも、目前の生活に追われ、わずか な余暇にはテレビでサッカーやドラマを見るという。  聴き取り調査は、「何か訳の分からないことばかり尋ねる変な外人」を相手のおしゃべりと化 し、「原発」が彼ら彼女らにとってまったくお呼びでない、場違いの話題であることを痛感した。 それでも一生懸命原発について説明するうち、聴き取り調査は原発広報活動の様相を呈してし まった。  高卒や大卒レベルでは、実家から遠い方の原発計画の情報が抜け落ちているケースや、フク シマの事故は知っていても、現状について理解がないことが多かった。これは、対象者の居住 地が国内外を問わず観察できたことである。中には、日本在住であっても「日本にはフクシマ 以外に原発があるのか」という様な発言もとび出し、筆者を驚かせた。ここでも筆者は、日本 国内の原発についてのレクチャーをする羽目になった。  全体に、情報の欠如がすなわち関心の欠如につながっている。あるいは情報操作により一部 の情報だけ伝わるために、現状の容認が進む。より正確な詳細情報を取れている数少ない高学 歴者の役割が重要である。 (3) 反対理由のトップは安全性  最も多くの対象者が挙げた反対の理由は、安全に関するものであった。ベトナムでは技術や 人材が不足しているため、原発の安全な運転は困難であるとする。また責任の所在が不明で、 事故になったときに誰も責任を取らないという指摘もあったが、これは日本から学習したので はないかと思われるほど、フクシマの現状にそっくりである。安全文化の欠如、福祉予算の不 足による住民救済の不備の指摘もあった。反対者の多くが、事故が必ず起こることを前提にし ていたことも特筆できる。  そのほか多く見られた意見として、後背地に貴重な水源を抱え、第二原発の建つタイアン村 の環境汚染を指摘した例があった。ニントゥアン省は雨が少ないので、淡水が出る山を住民が

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重要視していることが伝わってきた。同地はヌイチュア国立公園に指定されていて、エコツー リズムの観光コースにもなっている。  原発の隠れた目的として、核兵器開発を挙げた回答者が 1 名あった。また別の回答者は、目 的は核開発ではなく、単なる商売上の利益の追及や賄賂だとしていて、意見の分かれるところ であった。  ニントゥアンが立地場所となった理由としては、他に目ぼしい産業のない貧しい省であるこ とが多くの回答者から聞き取れたが、中国と領有権争いのある南沙諸島に近いからだという意 見と、逆に、そんな場所に原発を建てると危険きわまりないという意見の両方が出た。第二原 発が軍港のあるカムラン湾に近接していることを不安視する声もあった。どの意見も、結論と して計画に反対する理由として挙げられている。 (4) 再生可能エネルギー要望の声  多くの回答者が再生可能エネルギーの可能性について言及した。ニントゥアン省周辺は、ベ トナム国内でも例外的に雨が少なく、年間を通して晴天の日が多い。また南隣のビントゥアン 省内のニントゥアンとの省境に近い場所に風力発電所があることからも分かるように、よく風 が吹く。日本への要望を尋ねた際に、原発ではなく太陽光発電や風力発電に援助を、という回 答が寄せられた所以である。  回答者のひとり、E は決して教育レベルが高いわけではないのだが、次のような故郷に伝わ る詩を引用して回答してくれた:  Nắng như Rang 日照りは火あぶりのよう  Gió như Phan  風は岩のよう    (筆者和訳) 脚韻を踏んだ短詩であるが、ニントゥアンで日差しや風が強いことを表現している。そして語 尾の脚韻を逆に並べると、Phan Rang となり、省都のファンランを示している。だから、原発 でなく太陽光や風力が使えるという意見であった。 (5) 日本の道義的責任  聴き取りをする中で、日本人として胸の痛い思いになる発言があった。被ばく国なのに、な ぜ原発を輸出するのか。先進国だけ脱原発して、途上国に押し付けるのはやめてほしい。輸出 すればフクシマと同じことになる。金儲けが目的で輸出するのだろう、云々。  日本政府の言い分は、「売りたいという民間企業があって、相手国が買いたいと言っているの だから支援する」(中井 2013: 経済産業省でのインタビュー映像)というものだが、果たしてそ れでよいのか。  ベトナムの人々から見ると、日本は民主国家に見える。民主的に選ばれた政府が決めた援助 なのだからと、日本国民の道義が問われる事態になっている。 (6) 日本の市民社会への期待  回答者のうちのひとり N は、原発建設計画を止めるのに、日本の市民社会が運動をしてほし いという期待を述べている。例として、1960 年代から 1970 年代にかけてのベトナム反戦運動で、 日本や世界の国々の市民社会が反戦運動をしてアメリカに戦争をやめさせたことを挙げている。  それなら自分たちも運動すれば、というのが日本の市民としての正直な反応であろう。ベト ナム戦争中も、少なくとも当時の南ベトナムではサイゴン大学等を中心に反戦集会が持たれ、 運動が広がっていた。しかし現政権の下で、ベトナムの市民、特に原発立地地元周辺の住民に できることは非常に限られている。

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 2012 年 6 月には、インターネット上で当時の日本の野田首相宛に、原発輸出への支援に反 対する抗議文書への署名運動が起こり、国内外のベトナム人ら 621 名が署名した。ベトナムで は命がけの行動である。しかし、今回の聴き取り調査で反対意見を表明した地元出身者のうち、 だれひとりとしてこれに署名はしていない。ニントゥアン省在住のキン人署名者は、わずか 6 名である(インラサラ 2015:78)。  聴き取りを通して、特に高学歴者が非常に広い視野で状況を分析し、明確な反対意見を述べ る場面に遭遇した。しかし、この人々はその意見を一切、外部で表明していない。恐らく筆者 の聴き取りに同意して話したのが、初体験であったと考えられる。それほどに、いかに明確な 強い反対意見を持っていても、いかに故郷を離れて住んでいても、定期的に帰省して故郷に残 した家族に会いたいと願っている限り、何も発言できない。だからこそ、日本の市民社会に期 待するしかないという状況が生まれている。 おわりに  本研究では、現地調査が困難であるなか、別の場所で聴き取りを実施し、非常に限られたデ ータのなかで結果の考察を行った。調査対象者の保護のために、回答者の属性を秘匿する必要 があったことも、データの少なさに輪をかけた。それでも、住民の意見を分析するような先行 研究がほとんど存在しないなか、一定の事実を明らかにできたことは大きな成果であったと考 える。  研究の第一の目的である地元出身者の原発計画への意見については、多数が反対意見を持っ ていること、賛成意見を述べた 2 名も、事実が正確に伝わればその意見が変わる可能性がある ことが明らかになった。意見を持たない回答者については、意見を持つだけの情報が行き渡っ ていない状況が観察できた。すなわち、フクシマ事故やその後の現状、ニントゥアン原発計画 の内容などが正確に伝えられれば、およそ地元住民は多くが反対に回るのではないかと考えら れる。  第二の研究目的である、ニントゥアン第二原発を輸出する日本に対する意見については、回 答者の全員が原発反対であったが、日本の同義的責任を問い、原発でなく再生可能エネルギー やその他の分野への支援への要望が上がった。そして、原発計画を止めるために日本の市民社 会に期待する声も上がってきた。  調査から明らかになったのは、原発建設は地域住民の主体的な選択ではないという事実であ る。そもそも原発誘致に、住民の意見を反映させるしくみがベトナムにはまったく存在しない。 ニントゥアン省人民委員会主席は、住民が自由な選挙で選んだ日本の県知事のような存在では ないし、計画に当たって説明会が開かれることもない。 このようなベトナムで原発建設が可能なのは、住民の反対意見を表明する場がない、強権的 な体制が成り立っているからである。裏を返せば、そういう強権的な国にこそロシアや日本の ような国から、原発が輸出されやすい。現に日本国内では、既存原発の再稼動こそわずかに進 んできてはいるが、新規の立地は不可能だといわれている。住民が反対するからだ。そこで住 民の反対が出ない国を選んで輸出することになる。  基本的人権が保障され、表現の自由がある日本から、人権が保障されず言論の自由のない国々 を探し出しては原発を輸出する。その方法に道義的な責任はないのか。  聴き取りから明らかになった、「原発ではなく、再生可能エネルギーに支援してほしい」とい

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う声なき民の声を、日本政府は真摯に受け止めるべきだ。そして「日本の市民社会が運動して(原 発輸出を)止めてほしい」という声を日本の市民社会が真摯に受け止め、自国の政府に対して 強い異議申し立てを行っていくべきだと考える。   謝 辞  調査に協力して下さった聴き取り対象者の皆様方に心よりお礼申し上げる。 本研究は日本学術振興会科学研究費、基盤研究 (C) (26510007)「原発震災と市民社会研究」 をもとに実施した。ここに記してお礼申し上げる。 引用文献 伊藤正子(2015)「誰のための原発計画か」伊藤正子・吉井美知子編『原発輸出の欺瞞- 日本 とベトナム、「友好」関係の舞台裏-』第 5 章 , 明石書店 , pp.133-170 インラサラ(2015)「チャム人と原発建設計画」伊藤正子・吉井美知子編『原発輸出の欺瞞- 日本とベトナム、「友好」関係の舞台裏-』明石書店 , pp.74-84 小口彦太ほか編(2012)『3.11 後の日本とアジア―震災から見えてきたもの』めこん 中野洋一(2015)『世界の原発産業と日本の原発輸出』明石書店 グエン・ミン・トゥエット(2015)「民族の生命を外国技術の賭けの対象にはできない」伊藤正 子・吉井美知子編『原発輸出の欺瞞- 日本とベトナム、「友好」関係の舞台裏-』明石書店 , pp.171-177 ノーニュークス・アジア(2015)『原発をとめるアジアの人びと』八月書館 坂本恵(2013)「福島原発事故の教訓からみた、ベトナムへの原発輸出の課題」『福島大学地域創造』 第 25 巻,第 1 号,9 月,pp.44-64. http://hdl.handle.net/10270/3931 鈴木真奈美(2014)『 日本はなぜ原発を輸出するのか』平凡社新書,平凡社 吉井美知子(2013)「日本の原発輸出-ベトナムの視点から-」三重大学国際交流センター編『三 重大学国際交流センター紀要』Vol.8, pp.39-53 映像資料 中井信介(2012)『忍びよる原発~福島の苦悩をベトナムに輸出するのか』FoE Japan 制作, ドキュメンタリー映画

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Abstract

Attitudes toward the Japanese nuclear power plant project

from the perspective of the importing country

- Interviews with people from Vietnam’s Ninh Thuan Province and nearby areas -

Vietnam prepares to build its first nuclear power plants (NPP) in Ninh Thuan Province, Russia and Japan as the suppliers.

This study conducted interviews with the locals of Ninh Thuan and nearby areas who temporarily stay and work in major Vietnamese cities or overseas to acquire their opinions on the NPP.

Results showed that those with low-level education lack knowledge of and opinions about nuclear project. Those with higher-level education oppose the project and have concerns about nuclear disaster, but lack the ability to express their opinions.

Japan’s targeting of countries without freedom of expression for NPP project places its moral responsibility in question.

Key Words: Nuclear power plant, export, Vietnam, Ninh Thuan, Fukushima ―――――――――――――

1) Làng Vĩnh Trường, Xã Phước Dinh, Huyện Thuận Nam, Tỉnh Ninh Thuận 2) Làng Thái An, Xã Vĩnh Hải, Huyện Ninh Hải, Tỉnh Ninh Thuận

参照

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