若者支援の現場からみるユースワーカーの役割について 佐久間 玲子 SAKUMA Reiko 1. はじめに 筆者は、修士論文「Youth 世代男性の移行期を支える支援のあり方~社会的自立を支援する居 場所づくりの可能性」において、Youth 世代男性の移行期を支える支援のあり方として、社会的 自立を支援する居場所づくりの可能性について考察した。 本研究の目的は、移行期の若者を専門に支援する「ユースワーカー」が重要な役割を果たすこ とを明らかにすることである。 2. Youth 世代男性の現状 (1) Youth 世代の定義 Youth という言葉は、日本語にすると青春時代、青年期で、(主に 10 代の男性の)若い人を指 している。厚生労働省の「若年者雇用に関する参考資料1(p21)では、若者の範囲について「若 者の範囲は、各施策にごとに異なっており統一的な定義は存在しない」としている。 また、内閣府の「子供・若者白書について」の「各種法令等による子ども・若者の年齢区分」2 によると、施策により定義がまちまちになっているが、「勤労青少年福祉法」に限れば「おおむ ね 35 歳未満」が若者とされている。単に「若者」では範囲が不明瞭になる印象が否めないた め、本論文では日本の青年研究ではまだなじみのない「Youth」という表現を援用する。 (2) 男性の生きづらさに着目して 近年、高度成長期の頃と比較して、学校から社会にスムーズに移行できず、就職先が決まらな いまま卒業し、無業状態からの貧困や、非正規雇用を繰り返すことで、社会的に孤立する若者が 増えている。経済的に自立できないことが原因で、家庭の中にも居場所を得られず、社会とのつ ながりを断つように引きこもりをする若者男性に支援が必要なのではないかという危機感がある。 日本国内では 15 歳~24 歳は、義務教育を終え高校・大学進学などを経て社会への参加が本格 的に始まる時期である。子どもから大人へと移行するこの時期は、肉体的にも精神的にも形成途 上にあり、経済的には困窮しているとまでは言えなくとも、進路について親との関係や教師との 関係構築が上手くいかず、自己を確立するための居場所を強く求める時期と言える。このこと自 体は性別にかかわらず、女性にも同じことが言えるが、特に男性は、「男たるもの強くあれ」とい う無意識の常識にしばられ、弱音を吐くことがためらわれ、一人で抱えこむ傾向が、女性よりも 高いと言えるのではないか。周囲の目を気にして、誰にも相談できずに挫折してしまい、孤立状 1 「若年者雇用に関する参考資料」https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000058032.pdf(2019 年 11 月 24 日アクセス) 2 「各種法令等による子ども・若者の年齢区分」 https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h22honpenhtml/html/honpen/sanko_03.html(2019 年 11 月 24 日アクセス)
態から引きこもりや無就労となるケースも多い。男性、特に移行期にある若い男性こそ、支援を 求めているのではないか。家庭環境に恵まれていない、また家族がいても家の中に居場所がなく、 生きづらさを自分ひとりで抱えこんでしまうケースが増えているのではないかと考えた。 仮説をもとにユースワーカーがいる組織には、以下の特色があることがわかった。 表 1 参与観察した主な組織名と特色 組織名 運用形態・特色 NPO法人パノラマ (校内カフェ) 毎週木曜日の必休みに図書館で開かれている「ぴっかりカフェ」 開催場所は、神奈川県立田奈高校で、利用者も在籍する生徒に限定されている 提供される飲み物やお菓子は主に寄付で賄われている 毎回、多様な経歴を持つボランティアが参加している 常時 2 名のユースワーカーがいる NPO法人日向ぼっこ (勉強会) 月 1 回、事前に決められたテーマをもとに、参加者が自由に発言している 開催場所は、事務所を置く建物の一室 飲み物やお菓子は事前に用意されているが、差し入れもある 参加者は社会的養護の当事者や大学生、大学院生、LGBT 当事者など 常時 2 名のユースワーカーがいる よこはまユースワーク 休館日以外は毎日朝9時から 22 時まで利用可能 主な利用者は近隣の中高生など 一人で勉強をしたり、友達とゲームなどをして過ごす。相談したいことがある 人は在籍するワーカーに相談できる。小学生から 25 歳未満までが利用可能 複数のユースワーカーがいる さっぽろ Youth+ 月曜日から土曜日までの 10 時~18 時まで利用可能 主な利用者は近隣の中高生で、午前中の生徒の利用がない時間は地域住民が会 合などで施設利用ができる 義務教育修了から 39 歳までが利用可能 複数のユースワーカーがいる 3. 結論 学校内居場所カフェ、語り場への参与観察やユースワーカーへのインタビュー調査から、男性 には「家制度」の価値観による無意識に刷り込まれたジェンダー規範により、女性より上に立た なければならないなどの意識から、困ったことがあっても自分で解決しようとする傾向が強いと いうことがわかった。また高校生へのアンケートから困ったことがあっても相談できる人がおら ず「人を信用していいことはない」「うまく話せないから、1人で考えた方が楽」という回答が得 られた。「相談できる人はいない」と考える Youth 世代男性には、信頼できる大人と出会う場、大 人を信頼する機会の必要性が明らかとなった。