【連絡先】〒305-8506 茨城県つくば市小野川 16-2 国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 稲葉陸太 Tel: 029-850-2691 FAX: 029-850-2830 e-mail: [email protected] 【キーワード】プラスチック資源循環戦略、活動量、愛知県、製造業、建設廃棄物
廃プラスチック類の都道府県別排出量の変遷と他の産業廃棄物排出量との関係
○(正)稲葉陸太1) 1)国立環境研究所 1.はじめに プラスチックは様々な用途に用いられているが、そのほとんどが石油を原料としており、焼却処理などによる CO2 排出が温暖化に寄与することが懸念される。また、プラスチックは使い捨て製品にも多用され、海洋等の環境中に流 出してマイクロプラスチック化したものが生態系に与える影響も近年特に懸念されている。そのため、プラスチック の発生抑制、確実な回収、そして適切なリサイクル・処理が一層重要となり、日本でも 2019 年にプラスチック資源循 環戦略が策定された[1]。日本での排出量(2018 年)は、産業廃棄物系のプラスチック(以下「産廃プラ」と呼ぶ)が 462 万 t、一般廃棄物系のプラスチック(以下「一廃プラ」と呼ぶ)が 429 万 t となっている[2]。産廃プラは産業活 動に伴って、一廃プラは市民生活に伴って発生するため、排出量の時間による変遷や地域による分布は両者で様相が 異なる可能性がある。廃プラスチックの種類別・産業部門別の発生量については中谷らが詳細に分析[3]している。ま た、環境省は産廃プラを含む産業廃棄物に関する都道府県別の情報を毎年報告している[4]。ここで、産廃プラを含む 産業廃棄物の発生量が都道府県別および時系列で把握できれば、地域別の特性や経済活動などと関係する情報が得ら れ、今後のプラスチック対策の検討を支援できる。そこで本研究は、過去約 10 年間の都道府県別の産廃プラ発生量の 変遷を分析する。また、発生量が大きい自治体について他の産業廃棄物を含めた発生量の変遷も分析する。そのうえ で、産廃プラの都道府県別の排出挙動や、他の産業廃棄物との関係について考察する。 2.手法 前述したように、環境省は毎年、産業廃棄物に関する実態を調査しており、その結果を報告書にまとめて公開して いる[4]。同報告書には、各種の産業廃棄物に関する発生量などのデータが、種類別や都道府県別に記載されている。 本研究では、このうち「廃プラスチック類」を産廃プラとして捉え、その都道府県別の発生量を過去 11 年分(平成 20 年度から平成 30 年度まで)抽出し、その変遷を把握する。また、発生量が大きい自治体については、他の産業廃棄物 を含めた過去 10 年分の変遷を把握する。 3.結果 産廃プラの都道府県別の排出量を 11 年間の平均値でみると(平成 20 年度から平成 30 年度まで)、愛知県が最大で あり、次いで埼玉県、静岡県、東京都、兵庫県、神奈川県の順に大きかった(図 1)。 図 1 産廃プラ排出量の都道府県別の割合 図 2 産廃プラ排出量の都道府県別の変遷 (平成 20 年度から平成 30 年度までの平均) 北海道, 3.6% 宮城県, 2.9% 埼玉県, 5.6% 千葉県, 3.7% 東京都, 4.9% 神奈川県, 4.6% 静岡県, 5.4% 愛知県, 6.2% 大阪府, 3.9% 兵庫県, 4.7% 岡山県, 3.4% 福岡県, 3.2% 埼玉県 東京都神奈川県 静岡県 愛知県 兵庫県 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 産廃プラ排出量 [千 t/ 年 ] 第31回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2020A4-5
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また、産廃プラの都道府県別の排出量を時系列でみると(図 2)、全国的には平成 24 年度頃に減少し、その後平成 28 年度にかけて増加していた。そのうち、愛知県は平成 26 年度からの変動が大きいことが分かった。一方、埼玉県、 静岡県、東京都および神奈川県の排出量は比較的安定していた。兵庫県の排出量は平成 28 年度頃から増加していた。 つぎに、排出量が最大で時系列の変動が大きかった愛知県に注目し、産廃プラ以外の産業廃棄物の排出量も把握し、 比較検討した。排出割合(平成 20 年度から平成 30 年度までの平均)でみると(図 3)、汚泥(48%)が最大で、つい でがれき類、動物のふん尿、ばいじん、鉱さい、金属くずの順で大きく、プラスチック類はそれらに次ぐ7番目の大 きさ(2%)であった。また、これらの排出量を上位7種類と産業廃棄物全体について時系列でみると(図 4)、産業廃 棄物全体としてはわずかに減少傾向であった。半数近くを占める汚泥は若干の変動はあるものの横ばい傾向、がれき 類は増減が大きいが全体としては減少傾向、動物のふん尿は減少傾向、ばいじんは横ばい傾向、および金属くずは平 成 27 年度や平成 29 年度に大きく増加した。プラスチック類は減少傾向だが平成 27 年度や平成 29 年度に大きく増加 する挙動を示した。 図 3 愛知県における種類別の産業廃棄物排出割合 図 4 愛知県における種類別の産業廃棄物排出量の変遷 (平成 20 年度から平成 30 年度までの平均) (平成 20 年度を 100 とした場合) 4.まとめ 産廃プラの都道府県別排出量で上位となる地域の特徴として、人口の多さや製造業が盛んであることが挙げられる が、過去 11 年間の平均値で最大であった愛知県はいずれも兼ね備えている。平成 28 年度には愛知県で産廃プラ排出 量が急減した一方、全国としては最大値を示している。これは、兵庫県、神奈川県、千葉県などで増加した積算結果 であり、関連産業の活動量と関係している可能性が考えられる。愛知県での産業廃棄物全体に対する産廃プラ(廃プ ラスチック類)の排出量割合は 2.0%で、全国の割合(1.7%)[4]と大きな差はない。全体の傾向ががれき類と、近年 の挙動が金属くずと似ている理由として、これらが建設廃棄物として排出される割合が大きければ、このように連動 する可能性が考えられる。 今後の課題を以下で述べる。本稿が参考にした環境省の調査報告書[4]では、産業廃棄物の種類、都道府県および業 種という 3 要素に関して 1 対ずつのデータのみが表で示されているが、それらの元データを入手できれば「都道府県 別の廃プラスチック類の業種別の排出量」に基づいて前述の連動性を検証できるはずである。また、都道府県別の元 データがどのような手順や情報に基づいて導出されているかを把握する必要がある。廃プラスチック類の排出量は製 造業と建設業が非常に大きい [4]が、これらの産業の活動量との相関も確認が必要である。 参考文献: [1]消費者庁,外務省,財務省,文部科学省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省,環境省:プラスチ ック資源循環戦略(2019) [2] プラスチック循環利用協会:2018 年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 マテリアルフ ロー図(2019) [3]中谷隼,丸山多聞,森口祐一: 容器包装の利用製品と購入部門に着目したプラスチックの物質フロー分析,第 15 回日本 LCA 学会研究発表会(2020) [4]環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課:令和元年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 平成 30 年 度速報値(概要版)(2020) 燃え殻 1% 汚泥 48% 廃油 1% 廃酸 0% 廃アルカリ 1% 廃プラス チック類 2% 紙くず 0% 木く ず 1% 繊維く ず 0% 動植物性残さ 1% 動物系固形 不要物 0% ゴムくず 0% 金属くず 3% ガラス、コン クリート及び 陶磁器くず 2% 鉱さい 6% がれき類 15% 動物のふん尿 11% 動物の死体 0% ばいじん 8% 0 50 100 150 200 250 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 産廃排出量( H 2 0 年 度を 10 0 とし た 場合 ) 汚泥 廃プラスチック類 金属くず 鉱さい がれき類 動物のふん尿 ばいじん 合計 第31回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2020