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オンライン動画共有プラットフォームにおける
ソーシャルメディア機能のユーザー関係性への影響
The Impact of Social Media Features on User Relationships
on Online Video Sharing Platforms
松前 あかね
1張 雨濛
2Akane Matsumae Zhang Yumeng
【要旨】
オンラインプラットフォーム(以下、OP)での多様なソーシャルメディア機能(以下、
SMF)の発達は、ユーザーの OP への共創的参画を技術的に可能にした。他方でユーザ
ー流動性の高い環境下でユーザー集積が求められる
OP において、望ましいユーザー関
係性(獲得・維持)を実現する場のデザインは、
OP としての競争力のみならずその存立
をも左右する。そこで本研究では、国際的に主要な動画共有プラットフォーム(以下、
vOP)YouTube と中国の主要 vOP である BiliBili と iQIYI を対象に、SMF が包含する社交
特性がユーザー関係性に与える影響について定量調査及び定性調査を行った。その結果、
一体的に実装された
SMF 群により醸成される「場の雰囲気」やユーザーの創造性を発揮
しうる「共創的参画環境の保障」がユーザー獲得能力を高めること、
SMF の「他者の観
点を得る」社交特性がユーザー維持能力を高めること示唆された。
[Abstract]
Online platforms (OPs) equipped with a variety of social media features (SMFs) make it possible
for users to co-creatively participate in its content services. Furthermore, since the health of a
platform requires the accumulation of users, ba design that leads to the desirable user relationships
(acquisition and retention) is an essential issue that affects the competitiveness and even the
existence of an OP, considering its online environment of high user mobility. The authors
quantitatively and qualitatively examined the impact of various social characteristics of SMFs on
user relationships on a major international vOP (YouTube) and two major Chinese vOPs (BiliBili
and iQIYI). The results indicated that the "atmosphere" generated through well-bundled SMFs and
“ensuring an environment for co-creative engagement" enhanced vOPs’ ability to acquire users, and
that the social characteristics of SMF "I can get other points of view (from other users)" enhanced
vOPs’ ability to retain users.
キーワード:ユーザー関係性,オンラインプラットフォーム,場のデザイン,社交特性
Keywords: User Relationship, Online Platform, Ba Design, Social Characteristics
1 国立大学法人九州大学 大学院 芸術工学研究院 福岡市南区塩原 4-9-1
Faculty of Design, Kyushu University 4-9-1, Shiobaru, Minami, Fukuoka
2 国立大学法人九州大学 大学院 芸術工学府 福岡市南区塩原 4-9-1
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1.はじめに
1.1. 研究背景
1997 年の shareyourworld.com の開設以降、動画共有オンラインプラットフォーム(以下、vOP)の数 は500 以上に急増し、2006 年に Google が買収し世界最大規模の vOP である YouTube は 2020 年 11 月 時点で20 億人以上のアクティブユーザーを有し世界の vOP ユーザーの 90%を抱える[1]。vOP 市場は 数・規模ともに急速に拡大し、プラットフォーム型ビジネスモデルを採用するグローバル企業による 寡占傾向が顕著である。このような社会的背景に加え、vOP ユーザーには特定の vOP を固定的に利用 する傾向があり、vOP にとって新規ユーザーの獲得は決して容易ではない。 この点、本来地理的制約がなく流動可能性が高いオンラインプラットフォーム(以下、OP)の特性 に照らすと、OP の新規ユーザー獲得能力およびユーザー維持能力を如何に高めるか、換言すると如何 に良好なユーザー関係性を構築するか、という問いは、vOP に限らず、ユーザーの集積が存立の前提 となるOP の核心的な課題といえる。OP は様々なソーシャルメディア機能(以下、SMF)を備え、OP によりSMF の種類や実装の様相は大きく異なる。 本研究は、vOP の SMF の社交特性とユーザー関係性の影響を調査・分析することにより、SMF を 介したvOP のデザイン、ひいては OP における望ましいユーザー関係性の構築に寄与する場のデザイ ン方法論への貢献を目指す。 1.2. 先行研究 OP における SMF に関する研究は、一般的なメディア特性に加え、インターネット特有の高伝播性 や高インタラクティブ性に着目したSMF についての研究と、SMF がユーザー行動等 OP に与える影 響についての研究に大別され本研究は後者に位置づけられる。OP におけるユーザー関係性に関する 研究は乏しいが、 OP としての存立の前提となるユーザー関係性を高流動的なインターネット環境下 でデザインする本研究の文脈との類似性から、高流動化した市場環境における企業競争力として近年 注目される顧客関係性(CR: Customer Relationship)分野での顧客獲得・維持の枠組を転用し、本研究 ではユーザー関係性をユーザー維持能力・獲得能力により把握する[2][3]。 SMF が OP におけるユーザー関係性に与える影響に関する研究としては、Papacharis らはインター ネットサービス全般の利用状況の分析によりインターネットユーザーの利用動機に影響する要素を整 理し、インターネットサービスの機能がもつ社交性がユーザーの積極的利用とユーザー間での共有を 促進しOP または OP の SMF にユーザーを依存させること、また SMF の社交特性によりユーザー利 用時間が長時間化することを示唆している[4]。また Gary らは YouTube について、ユーザー行動の調 査・分析によりユーザー利用動機の把握とユーザー行動の予測を試みた結果、YouTube では vOP の SMF が内包する社交特性が新規ユーザーの利用動機を高めていると結論づけている[5]。同様に小寺 らもYouTube を対象とした研究の中で、YouTube ユーザーの利用効用感の要因として利便性・情報性・ 再現性に加え、社交性が含まれることを示している[6]。 これら一連の研究からは、SMF の包含する社交性が vOP におけるユーザー関係性に影響を与える ことが示唆されるが、本研究が目指すvOP におけるユーザー関係性に着眼した場のデザインに必要な 知見、すなわちSMF の多様な社交特性が、ユーザー獲得能力あるいはユーザー維持能力に各々どのよ うな影響を与えるかについて検討した先行研究は見当たらず、また特定のvOP に留まらず異なる特徴 を有する複数のvOP を横断的に比較検討することにより、vOP において SMF が包含する社交特性が ユーザー関係性へ与える影響について一般的な知見を探る研究も見られない。
- 139 - 1.3. ソーシャルメディア機能(SMF)とオンライン動画共有プラットフォーム(vOP) マスメディアなど伝統的なコンテンツサービスにおいては、ユーザーは一方的に配信されるコンテ ンツを受信する消費者としてのみ位置づけられてきた。しかしOP に実装される SMF の深化・多様化 に伴い、ユーザーは双方向コミュニケーションの担い手(受発信者)にとどまらず、OP におけるコン テンツサービスの共創的参画者としても位置づけ得るようになり、SMF は OP におけるユーザー関係 性に本質的な影響を与えうると考えられる。 vOP の SMF について、総務省はブログ・SNS・ソーシャルブックマーク・メッセージ・動画共有・ 情報共有の 6 種類に分類した[7]。しかし、その後も vOP 市場の急速な拡大に応じて新たな SMF が 次々に開発され、例えばオススメ機能や動画コンテンツ上に表示されるリアルタイムコメント機能な ど、概してvOP ではサービス開始後も次々に新たな SMF が追加導入され、ある vOP が実装した SMF は他のvOP も追随して実装するため横並びで多機能化する傾向があり、この傾向は vOP 間で実装さ れるSMF の種類の同質化をもたらしている。
そこで本研究では、世界最大のvOP である YouTube と、YouTube へのアクセスが制限されている中 国において主要なvOP であり、実装されている SMF が同質的であるにも関わらず対照的な評のある BiliBili と iQIYI を調査対象と定め、vOP における SMF のユーザー関係性への影響を調査・分析を行 った。本研究で調査対象となる各vOP の特徴を以下に概説する。
YouTube
YouTube は Google が提供する世界最大の vOP であり、2020 年 11 月時点で月間平均アクティブユ ーザー数は 20 億人を超える。動画視聴機能の他に、コメント機能・オススメ機能・コミュニティ機 能・ライブ機能・音楽配信機能など、多様なSMF を vOP 上で展開している。
BiliBili
BiliBili は、2009 年に Mikufans としてサービス開始し、2010 年に BiliBili と名称変更した。2020 年 9 月末時点での月間平均アクティブユーザー数は 1 億 9700 万人(前年同期比 54%増加)とされる。中 国の多くの若年層を取り込んで急成長した中国における主要vOP の 1 つである。日本のニコニコ動画 に由来し、弾幕機能(動画にリアルタイムコメントを重ねる機能)をはじめ、ライブストリーミング 機能やイラスト投稿機能など多様な SMF による様々な動画視聴体験と活発なコミュニティ文化に定 評がある(図1)。 iQIYI
iQIYI は 2010 年に、中国の検索エンジン企業 BAIDU が QiYi としてサービスを開始し、2011 年に、 BAIDU から独立し iQIYI と名称変更した。 2020 年 7 月時点で iQIYI の月間平均アクティブユーザー 数は5 億 6000 万人を超える中国最大の vOP である。iQIYI は近年商用動画コンテンツを多数配信す る一方で、YouTube や BiliBili と同様に弾幕やオススメ機能、コメント機能やコミュニティ機能など多 様なSMF を積極的に導入しているものの、BiliBili では顕著にみられるコミュニティ文化は活発では ない。
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図1 BiliBili の動画視聴画面
1.4. ソーシャルメディア機能(SMF)の社交特性
Papacharissi らはインターネット利用の社交動機として、他者を助けるため(To help others)、帰属感 を得るため(To belong to a group)、 新しい人に出会うため(To meet new people)等の 12 の社交特性 を示し[4]、Gary Hanson らはそれらを参照しつつソーシャルメディア利用における社会的目的として、 同じ関心を共有するグループに所属するため(To belong to a group with the same interests as mine)、議論 に参加するため、 他者を励ますため(To show others encouragement)など、一部より具体的な表現に よる社交特性に再構成している[8] [9]。 本研究ではこれらの先行研究で示された社交特性を参照し、vOP の SMF により可能となる、「他者 を助ける」、「他者を励ます」、「応答を楽しむ」、「議論する」、「帰属感を得る」、「意見する」、「影響を 与える」、「自由に表現する」、「助けを求める」、「他者の観点を得る」、「他者の意見を得る」、「新しい 人に出会う」、の12 の社交行為について vOP における SMF の社交特性として着目する。 1.5. ユーザー関係性 市場の成熟化やサービス経済化を背景に、ユーザー関係性の重要性は一段と高まっている [10]。近 年多くの企業にとって、既存の主要ユーザーとの関係性に目配りしつつ、新規ユーザーを獲得し継続 的な関係性を構築すること、ユーザー関係性の「深さ」と「広さ」の追求は、サービスの持続力強化 ないし競争力強化の観点から重要な課題である[11]。本研究では、以下の指標によりユーザー関係性 をユーザー獲得能力およびユーザー維持力の観点から把握する。 1.5.1. ユーザー獲得能力 SMF がユーザー獲得能力に与える影響について、Idota らは SMF が日本企業の企業活動に与える影 響を分析し、企業サイトの新規ユーザー獲得能力スピードにSMF が強く影響することを示した[12]。 また、Hanson らは YouTube ユーザーの vOP 利用行動を調査し、ユーザーの特徴および行動を分析す ることでユーザー行為の予測を試み、ユーザーのYouTube 利用の動機として、ユーザーが既存メディ アでは得られない社会的なニーズを満たすために vOP を利用することを明らかにした。SMF が持つ 社交特性が、vOP のユーザー獲得能力に影響することが示唆される[8]。
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ユーザ獲得能力の定量評価には、 Reichheld らが提唱したユーザー推奨値 NPS (Net Play Score)を 採用する[13]。あるブランドに対するユーザーの意向を定量化する指標であり、ユーザー獲得能力に 対する評価基準となる。NPS は「あなたはこの企業(製品/サービス/ブランド)を友人に薦める可能性 は、どのくらいありますか?」という質問に対して、0~10 の 11 段階で回答を求め、9~10 点を「推 奨者」、7~8 点を「中立者」、0~6 点を「批判者」と分類し、回答者全体に占める推奨者の割合(%) から、批判者の割合(%)を引いて算出する[14]。 本研究では、このユーザー推奨度NPS 値からユーザー獲得能力を定量評価し、定性調査の結果と併 せ、ユーザー獲得能力を総合的に評価する。 1.5.2. ユーザー維持能力 SMF がユーザー維持能力に与える影響について、Hui はソーシャルゲームのユーザー残存率に関す る研究でSMF に対するユーザー利用状況はユーザー維持能力を反映していることを示し[15]、また、 北沢らもEC サイトにおける顧客定着要因の特定に関する研究でユーザー利用状況、具体的には利用 頻度・利用目的・利用時間がユーザー維持能力の重要な影響要因になるとする[16]。 本研究ではこれらの先行研究を参照し、ユーザー維持能力を定量評価する際の指標としては、ユー ザー利用状況として、利用頻度・利用目的・利用時間に着目する。ここで利用頻度はユーザーが一定 期間vOP を離れた後に戻ってくる回数、利用目的はユーザーが vOP を利用する際に持つ目的性の強 弱(何か目的を達成しなければならない時のみの利用か、目的がないときにも利用するか)、利用時間 はユーザーが 1 日のうちにvOP に費やした平均時間により評価する。なお、ユーザー維持能力の評価 指標として粘着性を示すdau/mau 比率も考えられるが、各 vOP のアクティブユーザー数が必ずしも公 開されていないため本研究では採用しない。 本研究では、これら利用頻度・利用目的・利用時間の 3 つの観点からユーザー利用状況を定量評価 し、定性調査の結果と併せ、ユーザー維持能力を総合的に評価する。
2. 研究方法
本研究では、まずvOP の SMF が内包する社交特性やユーザー獲得・維持能力の評価指標について 先行研究調査により整理する。次に主要vOP である YouTube、BiliBili、iQIYI を対象として、SMF の 社交特性とユーザー獲得・維持能力についての定量調査(構造化アンケート調査)を実施する。さら に、定量調査では捉えきれない実体をより詳細かつ正確に把握するため、各vOP の SMF に対するユ ーザーの主観的な評価や評価の観点、ユーザー関係性について定性調査(半構造化インタビュー調査) を実施する。その上で、構造化アンケート調査と半構造化インタビュー調査の結果を比較し、総合的 に考察する。最後にvOP の SMF がユーザー関係性に与える影響について結論を導き、その結論に基 づき場のデザインの観点から、SMF を介した vOP のデザインについて指針を示す。3. 調査概要
3.1. 構造化アンケート調査 調査対象 中国では政策による制限のため中国本土でYouTube が使えないこと、また中国人以外の BiliBili と iQIYI のユーザー数が少ないことを考慮して、本研究で調査対象とする 3 つの vOP 全てについてユー ザー体験を有する留学生ないし留学経験がある中国人を対象にアンケート調査を実施した。- 142 - 調査方法 2020 年 1 月から 2020 年 5 月まで、 WeChat などの SNS や留学生 BBS を用いて、オンラインでの アンケート調査を実施した。 質問紙を用いて、①回答者属性、②最も利用するSMF、③社交特性を含めた各 vOP の SMF につい ての主観評価、④利用状況を含めたユーザー維持能力、⑤推奨度を含めたユーザー獲得能力、の5 区 分の調査項目について質問した。ここで③社交特性の主観評価は、1.4 既述の「他者を助ける」、「他者 を励ます」、「応答を楽しむ」、「議論する」、「帰属感を得る」、「意見する」、「影響を与える」、「自由に 表現する」、「助けを求める」、「他者の観点を得る」、「他者の意見を得る」、「新しい人に出会う」の12 の社交行為が各vOP において可能かについて回答者に尋ね、4 段階の主観評価(4:同意する、3:や や同意する、2:あまり同意しない、1:同意しない)により回答を求めた。 回答者属性 495 名の回答者(男性は 313 名、女性は 182 名)を得た。最もよく利用している vOP は BiliBili が 356 名、iQIYI が 67 名、YouTube が 42 名、回答者の年齢は概ね 18 歳〜26 歳であった。 3.2. 半構造化インタビュー調査 調査対象 構造化アンケート調査回答者の中から、各vOP について 1 日の平均利用時間が 2 時間以上とした回 答者から各10 名ずつ無作為抽出し、合計 30 名を対象にインタビュー調査を実施した。 調査方法 2020 年 6 月から 2020 年 8 月まで、 10~20 分間のオンラインの会話形式で実施した。話題が内容 から大きく逸れる場合にのみ軌道修正し、基本的には会話の流れを回答者に委ねた。①vOP の利用状 況、②SMF に対する評価、③よく利用する vOP の SMF についての評価、④あまり利用しない vOP の SMF についての評価、⑤推奨度を含めたユーザー獲得能力、⑥利用状況を含めたユーザー維持能力に ついて、必要に応じて補完的な質問も行った。会話は録音し、インタビュー調査後に文字資料にまと めた。
4. 調査結果および考察
4.1. ソーシャルメディア機能(SMF)の社交特性 各vOP における SMF の各社交特性についての主観評価を 4 段階(4:同意する、3:やや同意する、 2:あまり同意しない、1:同意しない)で調査した結果(平均値)を表 1 に示す。数値が高い方が、 回答者が各 vOP について当該社交特性を認める、すなわち社交特性が強いと評価していることを示 す。 なお本調査項目では、各vOP における SMF へのアクセスのしやすさやユーザーの利用意欲も含め、 ユーザー関係性の観点から、各vOP において SMF を通じて形成される社交特性に対する主観的なユ ーザー評価を得ることを目的としており、各vOP における形式的な SMF 実装の有無や状況、ユーザ ー関係性から独立した SMF 個別の客観的性能について評価するものではない。そのため、BiliBili、 YouTube、iQYI、全ての対象 vOP についてユーザー経験を有している者(3.1)であることは求められ るが、各vOP における個別の SMF についてのユーザー経験の有無や利用状況の差異は問われない。- 143 - 表1:各 vOP における SMF 社交特性に対する主観評価(4 段階・平均値) 他 者 を 助ける 他 者 を 励ます 応 答 を 楽しむ 議 論 す る 帰 属 感 を得る 意 見 す る 影 響 を 与える 自 由 に 表 現 す る 助 け を 求める 他 者 の 観 点 を 得る 他 者 の 意 見 を 得る 新 し い 人 に 出 会う BiliBili 3.24 3.13 2.7 3.17 3.16 2.67 2.75 3.39 3.07 4.04 4.18 2.49 YouTube 2.60 2.69 2.45 3.05 3.02 2.50 2.50 3.10 2.88 3.52 3.45 2.36 iQIYI 2.58 2.67 2.59 2.64 2.68 2.53 2.55 3.32 2.49 3.52 3.67 2.32
BiliBili は YouTube に比して「自由に表現する」「他者の観点を得る」「他者の意見を得る」、iQIYI に 比して「他者の観点を得る」「他者の意見を得る」の社交特性に対する主観評価が有意に高いことが認 められた(p<0.01)。その主な要因としては、ユーザーが実際に利用する SMF の種類が多いことがイ ンタビュー調査結果から読み取れる。
4.2. ユーザー獲得能力
ユーザー推奨度の高さにより、ユーザー獲得能力の高さを評価する[13]。アンケート調査への回答 より、調査対象vOP である BiliBili、 YouTube、 iQIYI についてユーザー推奨度 NPS 平均値を算出し たところ、BiliBili、YouTube、iQIYI の順に、-20.8、 -26.1、 -29.8 であった。BiliBili は相対的に高く、 YouTube は平均的、iQIYI は相対的にユーザー推奨度が低いユーザー獲得能力を有するものと評価で きる。なお、地域が異なり調査対象者の年代層も幅広いことから単純には比較できないが、参考まで に2019 年の日本国内のアニメ配信・vOP 分野における NPS 平均値は-24.7 である [17]。 インタビュー調査結果からも、推奨度(推奨の有無および程度)について同様の傾向を顕著に確認 し、推奨理由や推奨する際の考慮要素について把握した。具体的な内容については、次節のSMF 社交 特性との関係において示す。 4.2.1. ユーザー推奨度 各vOP における推奨度と各社交特性の関係について、アンケート調査結果から正準相関分析を行っ た結果を表2 に示す。まず vOP 全体の傾向としては、例えば YouTube では推奨度と社交特性「意見す る」「影響を与える」に対するユーザー評価との間に中程度の正の相関関係が、「他者を助ける」との 間に弱い相関関係が見られるが、BiliBili や YouTube ではみられないなど、vOP により推奨度に影響を 与える社交特性が異なる傾向がみてとれる。インタビュー調査でも、同様の傾向が確認できる。 表2:各 vOP における推奨度(NPS)と社交特性に対するユーザー評価の相関関係 他 者 を 助ける 他 者 を 励ます 応 答 を 楽しむ 議 論 す る 帰 属 感 を得る 意 見 す る 影 響 を 与える 自 由 に 表 現 す る 助 け を 求める 他 者 の 観 点 を 得る 他 者 の 意 見 を 得る 新 し い 人 に 出 会う BiliBili *0.128 *0.123 **0.179 0.070 **0.193 **0.181 **0.154 **0.226 **0.145 **0.138 **0.211 **0.219 YouTube **0.395 0.211 *0.338 *0.323 0.254 **0.415 **0.427 **0.318 0.107 0.190 0.278 0.096 iQIYI 0.131 0.019 0.131 0.211 **0.314 0.110 0.164 0.002 0.214 0.091 0.137 *0.258 (*p<0.05, **p<0.01)
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以下では、個々のvOP、 BiliBili、 YouTube、 iQIYI について、インタビュー調査結果と併せ、推 奨の有無・程度のみならず推奨内容も踏まえた考察を行う。 4.2.2. ユーザー獲得能力とソーシャルメディア機能(SMF)の社交特性の関係 BiliBili アンケート調査結果からは BiliBili のユーザー推奨度 NPS が突出して高いこと、また、ユーザー推 奨度NPS と「自由に表現する」「他者の意見を得る」「新しい人に出会える」社交特性との間での弱い 正の相関関係が読み取れた。 他方で、下記に例示するインタビュー調査結果からは、BiliBili ユーザ ーはSMF を非常に重視しており、SMF のために BiliBili を他者に推奨したいという意欲が強く、推奨 理由として弾幕機能を指摘する回答が顕著に読み取れた。 「BiliBili を誰かに勧めるなら、弾幕やコメントゾーンです。動画を見ている時は一人で寂しいから、 弾幕を見て盛り上がっている感じがします。」 「お気に入り機能では、ブックマークはお気に入りの動画を整理することができ、弾幕ではまるで他 の人と一緒に見ているかのような賑やかさと雰囲気があります。」 「BiliBiliのコミュニティは若く、特に弾幕を送信するため会員資格が必要で弾幕の質が高く、より良 い雰囲気を持っています。シェア機能やオススメは中毒性を生み出し、新しい動画をもたらし続けま す。」 「BiliBiliを他の人に紹介するのは楽しいと思います。私自身は弾幕とかSNSとかそういう機能はあま り使わない(発信しない)んですけど、みんなと一緒に見て話し合っている雰囲気が楽しいです。」 両調査結果を併せて考察すると、BiliBili ユーザーが vOP で重視するのは、特定の社交特性ではな く、 弾幕機能を始めとする BiliBili で実装されている様々な SMF 群が一体的に醸成する「場の雰囲 気」であることが読み取れる。とりわけ「自由に表現する」ことができると同時に「他者の意見を得 る」ことができ、動画コンテンツと一体化して「場の雰囲気」を生み出す弾幕機能は、自らは必ずし も弾幕を送信しない大半の BiliBili ユーザーにとっても推奨意向を高めるものであり、特にユーザー 獲得能力に影響を与えているSMF であると考えられる。 YouTube アンケート調査結果からは、YouTube のユーザー推奨度 NPS は平均的であり、YouTube のユーザー 推奨度NPS と「意見する」「影響を与える」社交特性との間には中程度の正の相関が、「他者を助ける」 「応答を楽しむ」「議論する」「自由に表現する」社交特性との間には弱い正の相関がみられる。他方 で、下記に例示するようにYouTube ユーザへのインタビュー調査結果では、SMF のユーザー推奨度へ の影響について10 人中 8 人が「ほとんど影響ない」と明言しており、両調査結果は一見矛盾している ようにみえる。 「実際はあまり人にYouTubeを勧めることはしないです。お勧めするとしてもYouTubeにしかない動 画コンテンツがあり、それを紹介する時のみです。」 「お勧めしないし、お勧めしたくない、お勧めする理由がないから、一人でしか動画を見ない。」 「これらのソーシャルメディア機能は、私が他の人にYouTubeを勧めるかどうかに影響を与えません、 そして、私の動画共有プラットフォームの選択の要因の一つにもなりません。」
- 145 - 「YouTubeを利用する最大の理由は、BiliBili がより多様で複雑なのに対し、動画視聴が非常にシンプ ルだからです。」 両調査結果を併せ考察すると、「他者を助ける」「意見する」「影響を与える」社交特性をもつ動画投 稿機能を利用しない大半のユーザーにとっては、YouTube は専ら動画コンテンツ視聴を目的とする vOP であるため、YouTube では動画コンテンツ自体が主な推奨理由となり、動画コンテンツの視聴体 験を損ないうるSMF は避けられる。そのため YouTube ではユーザー獲得能力への積極的な SMF の影 響は動画投稿機能利用者に留まるため限定的になるものと考えられる。 iQIYI アンケート調査結果からは、iQIYI のユーザー推奨度 NPS は低く、iQIYI のユーザー推奨度 NPS と 「帰属感を得る」「新しい人に出会える」社交特性はNPS との間で弱い正の相関関係が読み取れる。 他方で、下記に例示するインタビュー調査結果からは、むしろiQIYI の SMF に起因する不満を理由に 推奨意欲を持てないという意見が目立つ。 「私自身は毎日使っていますが、他人に勧めたいとは思わないですよね、なんというか、おすすめで きるところもない気がします」 「iQIYIはドラマをみるだけで、私が他のユーザーとコミュニケーションを取りたい、知り合いになり たいと思うようなプラットフォームではないので私のお勧め意向に影響しません。」 「ホラー映画のようなコンテンツを見るときは、弾幕などがあるとそれほど怖くないので、友達にお すすめします」 「iQIYI の弾幕はボットが出している感じで、人に勧められても、見たくないだろう。そして、コメン ト欄もほとんどが公式スタッフから出したのもので、この人達と話したいという欲求はまったくあり ません。」 「iQIYIは自分以外のユーザーの存在感が弱いです。(中略)コンテンツも公式のものが多いです。だ から全然推奨したくないです。」 YouTube と同様、動画コンテンツの視聴を重視するユーザーは SMF による推奨度への影響はない という回答が多い。他方で、特にBiliBili と比較しつつ、iQIYI では vOP の運営に iQIYI 公式の主導を 強く感じ、SMF により期待される他のユーザーの考えや存在感を感じにくいという指摘が多く、それ らはiQIYI ユーザーの推奨意欲を下げる要因になっていることが看取される。 YouTube とは異なり、iQIYI では弾幕など本来であれば強い推奨理由になりうる SMF が実装されて おり、ユーザーのSMF への期待も読み取れるが、現状では SMF への評価が低いため、むしろ SMF が ユーザー獲得能力を下げている側面がある。そのためiQIYI での SMF の影響は 1 人で動画を視聴す る際の物足りなさや心細さを緩和する程度の帰属感に留まっているものと考えられる。 4.3. ユーザー維持能力 4.3.1. ユーザー利用状況 アンケート調査回答者らが、自らの vOP 利用状況について、利用頻度・利用時間の観点から 1〜4 の4 段階で、利用目的の観点から 1〜3 の 3 段階(1:目的があるときに利用する、2:目的がなくても 利用することがある、3:暇さえあれば利用する)で回答した結果の平均値を表3 に示す。数値が高い
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方が、利用頻度が高く、利用時間が長く、目的性の低い利用が多い、すなわちユーザー利用状況が高 く、ユーザー維持能力が高いと評価できる[15]。
表3:各 vOP におけるユーザー利用状況(平均値) BiliBili YouTube iQIYI 利用頻度 3.84 3.74 3.12 利用目的 2.14 1.91 1.56 利用時間 3.86 3.67 3.06 概して、BiliBili、YouTube、iQIYI の順に利用状況が高い、つまりユーザー維持能力が高い傾向が示 された(p<0.05)。インタビュー調査結果でも、ユーザー利用状況について同様の傾向を看取すると 同時に、さらに利用状況の背景や具体的な利用状況について把握した。次節のSMF 社交特性との関係 で示す。 4.3.2. ユーザー維持能力とソーシャルメディア機能(SMF)の社交特性の関係 各vOP におけるユーザー利用状況(利用頻度・利用目的・利用時間)と各社交特性の関係について、 アンケート調査結果から正準相関分析を行った結果を各々表4、 5、 6 に示す。 表4:各 vOP における社交特性と利用頻度の相関関係 他 者 を 助ける 他 者 を 励ます 応 答 を 楽しむ 議 論 す る 帰 属 感 を得る 意 見 す る 影 響 を 与える 自 由 に 表 現 す る 助 け を 求める 他 者 の 観 点 を 得る 他 者 の 意 見 を 得る 新 し い 人 に 出 会う BiliBili 0.022 0.020 -0.040 0.084 -0.027 0.112 0.023 *0.119 0.013 0.000 -0.066 -0.046 YouTube 0.118 -0.013 -0.111 0.044 0.061 0.044 0.043 -0.180 0.139 0.050 -0.057 -0.066 iQIYI 0.119 0.094 -0.075 0.033 0.070 0.045 0.035 0.199 0.125 0.180 **0.318 0.057 (*p<0.05, **p<0.01) 表5:各 vOP における社交特性と利用目的の相関関係 他 者 を 助ける 他 者 を 励ます 応 答 を 楽しむ 議 論 す る 帰 属 感 を得る 意 見 す る 影 響 を 与える 自 由 に 表 現 す る 助 け を 求める 他 者 の 観 点 を 得る 他 者 の 意 見 を 得る 新 し い 人 に 出 会う BiliBili 0.065 0.059 -0.004 0.046 *0.132 0.075 0.101 0.029 0.089 0.025 *0.112 0.090 YouTube 0.059 -0.053 -0.127 -0.082 -0.159 -0.109 -0.212 0.007 -0.099 -0.166 0.017 -0.014 iQIYI -0.059 -0.015 -0.096 -0.010 -0.148 -0.044 0.026 -0.139 0.164 0.017 0.138 0.176 (*p<0.05, **p<0.01)
- 147 - 表6:各 vOP における社交特性と利用時間の相関関係 他 者 を 助ける 他 者 を 励ます 応 答 を 楽しむ 議 論 す る 帰 属 感 を得る 意 見 す る 影 響 を 与える 自 由 に 表 現 す る 助 け を 求める 他 者 の 観 点 を 得る 他 者 の 意 見 を 得る 新 し い 人 に 出 会う BiliBili 0.107 0.045 *0.130 0.063 0.056 0.005 0.072 0.046 *0.111 0.063 0.010 **0.147 YouTube 0.090 0.043 -0.051 0.054 -0.064 0.015 -0.072 0.266 0.170 -0.038 -0.009 0.161 iQIYI 0.156 0.086 -0.036 *0.293 0.212 0.149 *0.243 0.214 *0.241 0.180 **0.322 0.190 (*p<0.05, **p<0.01) まずアンケート調査結果からは、各vOP の社交特性と利用状況について、 iQIYI の「議論する」「影 響を与える」「助けを求める」「他者の意見を得る」が「利用時間」と、同じくiQYI の「他者の意見を 得る」が「利用頻度」と弱い正の相関があることを除き、いずれのvOP においても統計的有意(p<0.05) な相関係数が得られていないか、有意な相関係数が見られた場合でも正負いずれの相関関係も認めら れない。その解釈として、BiliBili と YouTube では vOP の社交特性がユーザー利用状況に影響を与え ていない可能性、あるいは、両vOP のユーザー利用状況が同質的であることに併せ考察すると、利用 状況に影響を与えている社交特性がユーザーごとに様々に異なる可能性、が考えられる。 そこで、利用時間・利用頻度・利用目的、いずれも最も利用状況が高い回答者群について、各々社 交特性間で一元配置分散分析を行ったところ、後者、すなわち高い利用状況に影響を与えている社交 特性がユーザーごとに顕著に異なることが確認された。さらに、そのような分散的な傾向の中でも、 SMF の「他者の意見を得る」社交特性は、他の全ての社交特性に比して、利用時間・利用頻度・利用 目的いずれの観点からもユーザー利用状況に有意に高い影響を与えていることを Q 検定により確認 した(p<0.01)。 このようにアンケート調査結果から、BiliBili ユーザーと YouTube ユーザは比較的利用状況が同質的 であるのに対して、iQIYI のユーザーの利用状況は、利用目的について動画コンテンツ視聴のみを目 的とするユーザー層と SMF を含む視聴体験をも期待するユーザー層、2 つの異なるユーザー層が混 在する特徴が確認できる。iQIYI では「他者の意見を得る」をはじめとする社交特性と、「利用時間」 をはじめとするユーザー利用状況との間に弱い正の相関関係がみられるのは、主に後者、SMF を含む 視聴体験をも期待するユーザー層の存在によるものと考えられる。 他方でインタビュー調査結果からは、SMF がユーザー利用状況に及ぼす影響について、非常に多く の具体的な回答が得られており、同傾向が裏付けられる。 BiliBili アンケート調査からは、他のvOP に比して BiliBili のユーザー維持能力は最も高いことが確認でき るが(表3)、特定の社交特性とユーザー利用状況との間では有意な相関関係は確認できない。以下で は利用時間・利用頻度・利用目的の観点から、ユーザー利用状況へのSMF の影響についてインタビュ ー調査結果を例示した上で考察する。 「ソーシャルメディア機能は、動画の視聴以外、弾幕やコメントが面白いのでよく見ています。弾幕 を見るだけでも十分おもしろくて、いつも他の人のツッコミを見たいです。」
- 148 - 「大体は娯楽や新しい知識の習得のために、BiliBiliを利用しています。(中略)そして、ランキングや レコメンド機能は、確かに私の利用状況を向上させます。」 「動画を見ながら弾幕を見ることは、私の利用時間を伸ばします。」 「弾幕があるとより深く使うようになります。その他の機能は他のオンライン動画共有プラットフォ ームとあまり変わりません。」 上記に例示するように、BiliBili ユーザーへのインタビュー調査では 10 人中 9 人が、SMF により自 らの利用時間・利用頻度・利用目的が高められていると指摘している。とりわけ弾幕機能についての 言及が顕著であり、自分では弾幕を送信したくないと考えるユーザーからも、他のユーザーの弾幕は 動画より見応えがあるという指摘がある。弾幕機能は本来の利用目的である動画コンテンツ視聴以外 でのvOP 利用を強く促し、結果的にユーザーの利用頻度と利用時間も高めていると考えられる。 アンケート調査結果と併せ考察すると、BiliBili の SMF は弾幕機能を中心に相互連携が強く、動画 コンテンツとSMF を介したユーザーの発信が一体的に絡み合い、「他者の意見を得る」をはじめ様々 な社交特性を内包した複合的視聴体験をユーザーに提供することで、ユーザーの利用状況を向上させ、 ユーザー維持能力に強い影響を与えていると考えられる。 YouTube
アンケート調査からは、YouTube のユーザー維持能力は BiliBili に比して低く iQIYI に比して高いこ とが確認でき(表3)、特定の社交特性とユーザー利用状況との間では有意な相関関係は確認できない。 以下では、利用時間・利用頻度・利用目的の観点から、ユーザー利用状況へのSMF の影響についてイ ンタビュー調査結果を例示し考察する。 「YouTubeは7、8年前から使っていますが、基本的に1日1時間くらいは音楽を聴くために利用して います。…BiliBili に関してはソーシャルメディア機能があるからこそ使うと言えますが、YouTubeに 関してはソーシャルメディア機能があるからといって頻繁に使うようになるわけではありません。」 「YouTubeのソーシャルメディア機能はどうでもいいよ、動画を見られるだけで十分だ。」 「YouTubeのSMFはわかりづらく隠されていて、動画を見たいだけの時にはもっと簡単に動画を見る ことができるようになっています!」 以上に例示するように、 YouTube も多くの SMF を実装しているが、YouTube ユーザーの回答には SMF への満足・不満いずれの指摘も少なく、指摘がある場合でも主張の程度が弱い。また SMF は利 用状況に影響を与えていないという指摘も多い。YouTube ユーザーは利用目的である動画コンテンツ 視聴に集中しており、SMF による視聴体験を期待していないためと考えられる。 アンケート調査結果と併せ考察すると、YouTube では SMF が独立的で動画コンテンツとの関連づ けも弱く、ユーザーに認知さえされていないSMF も多い。そのため YouTube ユーザーの動画コンテ ンツ視聴を妨げない限りユーザーの利用目的に影響を与えず、利用状況ひいてはユーザー維持能力に もYouTube の SMF は影響を与えない傾向にあると考えられる。 iQIYI アンケート調査結果からは、社交特性「他者の意見を得る」と利用頻度の間(表4)、また「他者の
- 149 - 意見を得る」はじめ複数の社交特性と利用時間の間にのみ弱い正の相関が読み取れる(表6)。つまり、 iQIYI は BiliBili と同様に弾幕機能を含め多くの SMF を実装しているが、SMF のユーザー利用状況へ の影響は限定的である。以下に、利用時間・利用頻度・利用目的の観点から、ユーザー利用状況への SMF の影響について記述されたインタビュー調査結果を例示し考察する。 「iQIYI がSNS機能を持っていることは知っていましたが、使ったことがなく、どこから使えるのか わからず、時間をかけて見る気にもなりません。」 「iQIYIでSNS機能を使いたいと思う人はいないでしょう。見られる価値のあるコンテンツは少ない と思います。」 「動画を見ながら弾幕を見ることで、他の人の感想やネタバレ情報を見ることができて、なんだか好 きです。(中略)特にホラー映画やサスペンス映画を見るときには弾幕の有無は重要です。」 「弾幕を見るときは、自分と同じ気持ちの人が他にもいるかどうかを主に見ています。」 インタビュー調査結果より、iQIYI のユーザー維持能力への SMF の影響が限定的なものにとどまる 理由として、まずYouTube 同様、iQIYI では利用目的を動画コンテンツ視聴に限るユーザーが多いこ と、また動画コンテンツとの関連づけが弱いSMF は認知されていないか、認知されていたとしても概 して iQIYI では SMF への評価が低くユーザーの利用意欲を喚起せず、あまり利用されていないこと が挙げられる。他方で動画コンテンツと関連づけの強い弾幕機能は、動画コンテンツ視聴に付随して ユーザーの共感を喚起し「他者の意見を得る」社交特性を発揮しているが、iQIYI ではあくまで動画コ ンテンツ視聴に付随する位置づけにとどまり、利用目的・利用頻度・利用時間を独自に増長させるほ どの強度には至らずSMF の影響は限定的といえる。 4.4. 場のデザインの観点からの総合考察 本研究では vOP におけるユーザー関係性について、SMF の社交特性とユーザー推奨度および利用 状況に着目したが、インタビュー調査結果では、ユーザー関係性に影響を及ぼす要因として、直接的 には「(場の)雰囲気」「(場の)自由度」等の表現で、vOP の「場の在り方」への指摘が繰り返された。 以下では、前節までの個別vOP ごとの結果および考察を踏まえ、場のデザインの観点から SMF の社 交特性がユーザー関係性に与える影響について総合的に考察する。 まず、専ら動画コンテンツ視聴を目的とするユーザー層にとっては、vOP のユーザー獲得能力およ びユーザー維持能力は当該 vOP でアクセスできる動画コンテンツによって左右され、SMF が動画コ ンテンツ視聴を妨げるようなプッシュ型である場合には否定的な影響がみられるが、そうでない限り はSMF の影響はほぼみられない。本研究では、YouTube ユーザーと iQIYI の一部ユーザーに見られ た傾向である。 「YouTubeのソーシャルメディア機能はどうでもいいよ、動画を見られるだけで十分だ」 「YouTubeが一番嫌いなのは、私が中国語を使っていることがわかると、(SMFにより)すぐ政治関連 のコンテンツをプッシュしたり、政治的な宣伝コンテンツを勧めてきて、本当に探しているものや見 たいコンテンツはまったく紹介されないことです。そのため、私は使用する言語を英語に変更しなけ ればなりませんでした。他の中国人にも勧めたくないという気持ちもあります。」 「iQIYIを7年ほど使っていますが、ドラマがあるときは毎日見ていて、ドラマがないときは月に一度
- 150 - も見ていません。(中略)これらのソーシャルメディア機能は同質化しているので、私がこの動画共有 プラットフォームを他の人に勧めるかどうかには影響しません。」 4.4.1. ユーザー獲得能力 ユーザー獲得能力についてのインタビュー調査結果を概観すると、vOP が良質な「場の雰囲気」を 持ち、ユーザーがコミュニケーションを主導していると感じるとき、つまり「共創的参画環境」が保 障されているとユーザーが感じるとき、SMF が vOP のユーザー獲得能力を高めることが示唆される。 逆にvOP の「場の雰囲気」が悪い時や、ユーザー同士のコミュニケーションが制限され vOP 運営側 に誘導・管理されていると感じる場合、むしろSMF により vOP のユーザー獲得能力が損なわれるこ とが看取される。 つまり、自らSMF で発信しないユーザーも含め、SMF も含めた動画コンテンツ視聴体験を期待す るユーザー層では、vOP の「場の雰囲気」や「共創的参画環境」を vOP 推奨に際して重視しており、 これらはユーザー獲得能力に影響を及ぼすものと考えられる。この点、本研究ではBiliBili で肯定的な 影響が顕著に、iQIYI で否定的な影響が見られた点である。 場の雰囲気 「場の雰囲気」の醸成は個別のSMF や社交特性によってではなく、相互に連携し動画コンテンツと 一体的に機能するSMF 群の設計により醸成され、その質は場に参画するユーザーの質に依存する。そ のため、ユーザーの質を担保するため、発信には会員資格を求めるなどの仕組みは有効だと考えられ る。 「iQIYI のコメントや弾幕は特別なものではありませんが、BiliBili の方が魅力的で面白く、若々しい 雰囲気があります。」 「質の高い弾幕も、私がBiliBiliを選んだ理由の一つです。」 「YouTube はブロック機能があまり充実していないことは残念です。見たくないコメントがある時は ちょっと面倒くさくて、時々コメントの雰囲気は悪くなって、全く見たくないこともあります。」
「iQIYIの動画鑑賞の雰囲気に比べて、BiliBiliはSNS機能があり、iQIYIよりもずっと盛り上がってい
ます。」 アンケート調査結果と併せて考察すると、SMF 群の設計について「帰属感を得る」「新しい人に出 会う」社交特性を包含するSNS(コミュニティ)機能や、「自由に表現する」「他者の意見を得る」社 交特性を包含する弾幕機能が動画コンテンツと一体化された場合にvOP の「場の雰囲気」に影響を与 える傾向が高いことが示唆される。さらに、弾幕機能は動画コンテンツ上での1 対多数の間接的かつ 瞬間的なコミュニケーションであるという特性から、ユーザー相互の共感を柔らかく喚起しうる機能 として広くユーザーに受け入れられていることも下記インタビュー調査結果より読み取れる。 「弾幕は出しますがコメントはせず、他の人のコメントを読むだけです。コメントを投稿すると他の 人と議論しているような感覚になるのに対し、弾幕を出すのは自分の名前を残さず、自分の意見を一 人で述べるような感覚になるのでストレスが少なく、負担が少ないです。」 「私はネットで積極的に他者と交流するような人間ではないので、弾幕で雰囲気を見るだけであれば、
- 151 - 弾幕が口論になっていない限り、非常に良い体験です。主に共感を得るために弾幕を見ています。弾 幕だけ見ても十分面白いと思います。」 共創的参画環境 vOP 運営側主導で動画コンテンツやプロモーションを一方的に押しつけられたり、ユーザー同士の コミュニケーションが制限されていないと感じる時、換言すると、ユーザーの共創的参画環境が保障 されていると考える場合に、ユーザーはSMF を積極的に利用し、vOP 上での社交的活動を高め、その vOP の他者への推奨動機が高まる傾向がいずれの vOP でも顕著にみられた。 「コメント欄を見る主な理由は、自分と同じような考えの人がいるかどうかを見るためです。いろい ろな国の人の反応や考え方が見られるのは本当に面白いので、YouTube を使ったことがない人にも見 てもらいたいです」 「本来なら YouTube のコメント欄は他のサイトよりも自由に開放されているはずなのに、私の一般的 なコメントの一部はすぐに削除されてしまいました、何がルール違反なのかはすべて google が決め ることで理不尽です。今は動画を見たらそのままホームページを閉じます。」 「iQIYIにもSNS機能があることは知りませんでした。でも使いたくないと思います。(中略)iQIYIが より多くのユーザーメイドのコンテンツを奨励し、促進してくれる方がいいと思います。」 これらの結果から「共創的参画環境」は各vOP の制度設計により運営側でデザイン可能といえよう。 この点、本研究対象のvOP は各々対照的である。例えば、BiliBili ではユーザーが自由にコンテンツを 投稿し、ルール違反として報告されたコメントについての妥当性はユーザーが参画して判定する「風 紀委員会」制度を整備しており、YouTube では運営側が一方的に違反か否かを判断している。iQIYI で はマーケティングコンテンツやビジネスレイアウトに応じて、iQIYI 運営側でコンテンツやコミュニ ケーションの方向性を管理し、iQIYI が著作権を保有する動画コンテンツのプロモーションを行うが、 これらはユーザー推奨度、ひいてはvOP のユーザー獲得能力を低下させているとの指摘もみられる。 4.4.2. ユーザー維持能力 自らSMF で発信しないユーザーも含めて、SMF も含めた動画コンテンツ視聴体験を楽しむユーザ ー層では、特に「他者の意見を得る」社交特性、つまり動画コンテンツ視聴に際して他のユーザーの 考えや感情、ひいては他のユーザーの存在感を感じ取り、自らの考えや感情と比較し、時に共感する こと、また1 人での視聴をためらう動画コンテンツ視聴時の不安や恐怖を紛らわすことは、単なる動 画コンテンツ視聴とは異なるSMF により新たに付加される利用目的として認識されている。 「ドラマを見ながら弾幕から他の人の考えを見るのは面白いと思います。今は弾幕がなければ、全然 ドラマを見たくない状況になりました。」 このようなSMF の「他者の意見を得る」社交特性による利用目的の付加が、vOP の利用頻度と利用 時間の増加をもたらし、ユーザー維持能力を高めているものと考えられる。ただし、このSMF の vOP ユーザー維持能力への影響力は、SMF と動画コンテンツとの関連づけの強弱により左右されているこ とが調査結果から示唆される。これらSMF と動画コンテンツの関連づけが弱い場合には、SMF が実 装されていてもユーザーに認知されず利用されない、あるいは認知はされていても動画コンテンツ視
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聴に付随した利用目的の付加が起こりにくく、利用状況ひいてはユーザー維持能力への影響も限定的 なものに留まると解される。
この点、本調査では BiliBili と YouTube が対照的な結果を示し、BiliBili では「他者の意見を得る」 特性をもつ弾幕機能が動画コンテンツと緊密に連携づけられており、ユーザー維持能力を大幅に高め ていることが示唆された。他方でYouTube ユーザーは動画コンテンツ視聴に集中することを望む傾向 が強く、YouTube にもリアルタイムコメント機能はあるものの基本的には SMF は動画コンテンツか ら独立して配されているため、SMF はユーザー維持能力に影響を与えていないものと解しうる。iQIYI では弾幕機能以外のSMF と動画コンテンツの関連づけは BiliBili ほど強くなく、ユーザー維持能力へ の影響も限定的である。
5. 結論
5.1. 本研究で得られた知見 本研究では、vOP の SMF がユーザー関係性に与える影響について、SMF がもつ社交特性に着目し て調査・分析を行った。その結果、以下の知見が得られた。 1) SMF と動画コンテンツ間の連携の強弱は、総じて SMF が vOP におけるユーザー関係性へ及ぼす 影響の強弱として反映される。2) vOP の「場の雰囲気」は vOP のユーザー獲得能力に影響を及ぼす。vOP の「場の雰囲気」は動画 コンテンツを介して一体的に相互連携するSMF 群により醸成され、その質は SMF を通じて vOP で展開されるコミュニケーションの質に依存する。 3) vOP の「共創的参画環境」の保障は、ユーザーの SMF の積極的な利用による vOP への主体的な 関与を促し、vOP へのオーナーシップを高めうる。その結果、vOP のユーザー推奨度が高まりユ ーザー獲得能力が高まる。「共創的参画環境」の保障はvOP の制度設計に依存する。 4) 「他者の意見を得る」社交特性を含む SMF と動画コンテンツ間の密接な連携は、ユーザーの動画 コンテンツ視聴に他のユーザーの存在感や感情・思考の獲得を新たな利用目的として付加しうる。 その結果、利用頻度および利用時間も増長しvOP のユーザー維持能力を高める。 以上、vOP において SMF がユーザー関係性に影響を及ぼすメカニズムに関する知見は、vOP にお ける望ましいユーザー関係性の実現に向けた場のデザインに貢献しうる。 5.2. 本研究の限界と今後の課題 本研究で得られたvOP における SMF のユーザー関係性への影響に関する知見の射程を考える際に 特に留意・検討すべき点として以下が挙げられ、これらについては別途あらためて慎重な検討が必要 と考える。 1) 本研究の調査回答者は中国人留学生または留学経験のある中国人若年層であり、彼らと社会的・ 文化的背景が異なるユーザー関係性
2) vOP は今なお成長著しい分野であり、例えば TikTok など、本研究で調査対象とした BiliBili、 YouTube、 iQIYI とは大きく性質が異なりうる vOP
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6. おわりに
本研究はオンライン動画共有プラットフォーム(vOP)におけるソーシャルメディア機能(SMF) のユーザー関係性への影響についての調査結果に基づく研究であるが、分析過程において個々人と社 会の関係性のメカニズムや、望ましい社会的関係性を導く場のデザインに通底する本質が浮き彫りに なった。今後、本研究で得られた知見を適切に拡張し、様々な場面でのユーザー関係性や顧客関係性 への応用はもとより、より一般的なオンラインプラットフォームやプラットフォームの場のデザイン への適用を試みたい。倫理規程に関する宣言
本論文に関して利益相反関連事項はない。本研究は所属機関の定める倫理規程を遵守し、調査に際し ては非回答による不利益は一切ないこと、回答の目的外利用はされないこと、個人が特定できる形で 回答が利用されないことについて、回答者に事前に伝えた上で実施した。謝辞
本研究はJSPS 科研費 JP20K20119 の助成を受けたものです。参考文献
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(2020年12月30日受付) (2021年02月28日採録)