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契約の法理 契約法における合理性の轉化

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Academic year: 2021

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財 産

-契約

法に

おける合理

轉化-峯

一  近 代市民法 に お ける契約の 地位 二  契約主 義 の 系譜 三  契約 の 拘束 力 の 基礎 四  契約 の 諸 形態 五  契 約法 の 獲展 の 基調 一  近 代 市 民 法 に お け る 契 約 の 地 位 一  人間 が 自 然 に働 き かけ て これ を征 服 し たり 、外 界 に 存 在 す る 財 貨 を 利 用 す るに當 つて 、 人間 同 士 の 關 係 が そ の 利 用 の限 界を 決定 す る ことは 疑 を容 れ な い。 財 貨 に繋 す る人 の支配 は制度 化さ れ て、 法律 上 物權 とよ ばれ るも のを形 成 す る ことは 、 衣食 住 の よう な外 界 の物 資 お よ び土 地 とか機 械 とか原 料 とか い う生 産手 段 に ついて の直接 的 な 甥物 支配 に つい て みら れ る と こ ろ で あ る。 そ し てそ の原 型 を な すも のは 實 に所 有 権 であ る。物 に ついて 所有 權 を も つことは 、そ の 物 に 樹 す る根 源的 な支 配力 を も つこ とを意 味 す る。 この 意味 にお い て所有 權 は財 産 の 基 本 的 形態 の 一 つ を 形成 す ると い わ な け れば な らな い ( 1 ) 。 と こ ろ が、 人 間 は書 葉 によ つて 生き 、 また 言葉 によ つて拘束 され る 。 イ エーリ ン グ によれ ば 、 ﹁ 法 律史 の第 一 章 の上 66

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契 約 の 法理 には ﹃ 太初 に言葉 があ つた﹄ と いう標 語 が書 かれ ても よ い であ ろう ﹂ と され る が ( 2 ) 、 ま さ に人間 は 言葉 に信頼 し言葉 を守 る こと によ つ て 、將來 を 現在 に價 値 あら し め、 過去 を 現在 に價値 あ ら し め る こと がで き る。 す なわ ち 自分 の 所 有 物 を他 人 に利 用 さ せ て 將 來 報酬 を貰 う關係 を作 り、 ま た過 去 に 貸 し た物 の 返 還 を 今 日直 ち に求 め得 る關係 を も つ。 とも で き る。 この よう な關 係 は言葉 すな わ ち信 用 に よ つて つ な がれ る人 と人 との關 係 で あ るが、 財 貨 の 交 換 流 通を 内 容 とす る かぎり 、 それ は 財産 の 基 本 的 形態 の 一 つ を 形 成す ると いう こと が でき る。 それ を 法律 上 、は債 權 とよ ん で いる。 そ し て債 權 は 言葉 を 通じ て 、 い い換 えれば 、 契 約 に よ つて 無限 に 發 展 せ し めら れ る から、 物 に封 す る根源 的 な 支配 力 であ る所有 權 は 、 そ の主體 であ る所有 者 の意 思 にし た が つて債 權 の内容 とな る こ とに よ つて、 いよ いよそ の支 配 力 を擴 充 す る こと が でき る のであ る。 とり わ け財 貨 の價 値 を表 徴 す る 金 錢 ( 資 本 ) は、 所有 權 と 債 權 とを交 錯 せ し めて 、 そ の威 力 を發 揮 せ し め る ことが大 き い 。 と にか く現 代 におけ る 財 産 の 基 本 的 形態 は 、大 ま か にい えば、 法 律 的 には物 権 とり わけ 所有 權 と債權 と の二通 り のも の と して 現 われ る。 し かも 現代 の資本 主義 的法 律 生活 にお いて は、 契 約關 係 は 所有 權 の結合 制度 であ るから 、 資本 主 義 的 經 濟秩 序 に お いて 所 有 權 の自 由 は 特 に契 約 の自 由 とし て作 用 す る ( 3 ) 。 近 代 市 民法 は 、 す べて の市 民 は 法 の 前 にお いて は平等 であ る とい う格率 から 出發 す る。 す なわ ち人 は出 生 と共 に 權 利義 務 の主 體 とな る 資 格 であ る 權 利 能力 を與 え ら れ て、 そ の人格 は 一 様 に保護 され、 そ の意思 は あ くま で 尊 重 され る。 そ の結果 とし て自 由 な 意 思 の 發 現 とし て の契 約 は、 近 代市 民 法 の出發 點 であ り基 礎 であ る とさ れた 。 二  この よ う にし て近 代市 民 法 に お い て は、 個 人 意思 の合 致 であ る き れ る契 約 が私 的 生活 を規 制 す る 最 高 原 理 と な つ た。 そし て私 的 生活 に對 し て公 の 立場 か らな る べく 干 渉 しな い とい う のが經 濟 的自 由主 義 の要 請 であ る。 そ こ で、特 に 公 の秩 序 ま た は善良 の風 俗 に反 す る よう な 内容 を有 す るも の でな い かぎ り、 契 約 は 無限 に 當 事 者 を拘 束 す る。 だか ら契 約 にした が つて契 約 の内容 を實現 す る と いう ことは、 法 律 を遵守 す る こと と同 じ意 味 をも つも の とさ れ るわ け であ る。

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財 産 そ こ で市民 社會 と よ ば れ る經 濟社 會 の 私 的生 活 おり わけ 債權 關 係 を 生 ぜ し める生 活 關 係 に關 す る かぎ り、 法 律 は そ の地 位を 契 約 に譲 り若 し く は その機 能 を 契約 にま か せ たも のと い う こと が でき る ( 4 ) 。 かく し て ﹁ 舎 意 は拘 束 す る﹂ ( P a ct a s u n t se r v a n d a ) と い う原則 は、 フ ラ ン ス 民 法 に お いて は、 ﹁ 適 法 に成 立 し た契 約 は それ を締 結 し た者 に と つては 法律 に 代 る﹂ と い う 現 定 とな つて いる ( 第 一 一 三四 條) 。 ﹁ 契約 は 法律 とし て の効 力 を有 す る﹂ ( le c o n tr a t v a u t la lo i) 原 則 が 承認 され る と ころ では 、 個 人 の意 思は 積 極 釣 に 法 律 關 係を 作 り出 す こ とが でき る。 そ こ に いわゆ る私 的自 治 が 認 めら れ、 契 約自 由 の原則 が 確 立 され た。 これ が近 代 市 民法 に お いて契 約 に 與 えら れ た地 位 と任 務 とであ る ( 5 ) 。 三 しか し ﹁ 社 會組 織 の全體 に亙 つて急 テ ン ポな 變 遷 を遂 げ つ つ あ る現在 、 社 會科 學 とし て の法 學 も否 應 な し に傳統 的 乃 至 保守 的 な立 場 を 一 擲 し て、 沸騰 し つつあ る眼 前 の新 現 象 を 追及 せざ るを 得 な い。 ﹃ 法 の祭 司 ﹄ た ちは 彼等 の學問 的 静 謐 を紊 す よ うな 變 化を 率 直 に肯 定 す る こ とを躊 躇 つて居 るも の の如 く であ るが 、 法 現象 は 不可 抗 的な 威 力を 以 て我 々 の目 の前 紀 嶄 新 な 展 開を 見 せ つつあ る。 いま ま で 一 抹 の疑念 だ に 挾 まれ な か つ た根 本 的 な眞 理 が、 漸 く苛烈 な 試錬 を 曝 され 始 め光 の も、 決 し て怪 む に は當 ら な い。 家族 、 契 約 、責 任等 と共 に、 ﹃ 社 會 と いふ殿 堂 の主 柱 の ひ と つ ﹄ を 形成 す る 所有 權 制 度 も、 所 詮共 通 の運命 を 免 れ る こ とは出來 ず 、 新 し い ﹃ 風 土﹄ のも と に置 か れ て從 來 とは、 全く違 つた機能 を營 ま ざ るを 縄 な くな つた ﹂( 6 ) 。 全 く同 じ こ とが また 契 約法 に つい ても そ のま ま該 當 す る。 ﹁ 契 約 法 は、 由來 そ の 時 代 の法律 機 構 、經 濟組 織乃 至 は社 會 制度 の中樞 細 胞を 形 成 し、 地 盤 の變 化 を最 も 迅 速敏 感 に反映 す る法 域 だ から であ る。 恰 も今 日 の所有 權 がも はや完 全 な る 即、 支配 權﹄ ( d o m in io n ) で はあ り得 な い よ うに 、契 約 も また言 葉 の傳 統 的な 意味 に於 け る ﹃ 取引 ﹄ ( n eg o ti u m )の範 圍 を 逸 脱 し た 。 純 然 た る 私 的 行 爲 の 框 を 出 で て 、 公 的 な 行 爲 -換 言 す れ ば ﹃ 國 家 の行 爲 ﹄ ( " Af fa ir e , d 'E ta t") へと 近 附 い た 。 契 約 は 日 々 に 規 律 ( r e g le m e n t e r ) さ れ つ つ あ る 。 統 制 ( c on t r o le r ) さ れ つ つ あ る 。 指 導 ( d ir ig e r ) さ れ つ つ あ る 。 即 ち 公 法 化 さ れ つ つ あ る ﹂ ( 7 ) と 、 い う こ と が で き る 。 68

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契約 の法 理 本 稿 に語 いて は、 近 代市 民 社會 にお け る財 産 の 一 基 本 形態 とし て の契 約法 におけ る思想 的變 還 のあ とを探 ね て、契 約 におけ る 合 理性 の轉 化 の 過 程 を究 明 し よ うと 思 う。 (1) 末 川 博 、 ﹁ 現 代 財 産 分 析 ﹂ ( 制 度 ・ 時 ・人 所 載 ) 一五 一 頁 参 照 。 (2) J h e r i n g , Ge is t d e s r o m is c h e n Re c h t s , 5 Au f l . S . 3 4 1 . 宋 川 博 士 は 債 權 發 展 の 段 階 を 説 明 し て 、 ﹁ 債 權 法 は 今 日 い ふ と こ ろ の 不 法 行 爲 に お い て そ の萌 芽 を 發 し た の だ と 考 へ得 る が 、 人 が 毛 の理 性 に よ っ て 將 來 を 現 在 に 結 び つ け 、 物 と 物 と の交 換 に お い て も 、 一 方 が 物 を 渡 し た の に 對 し て 他 方 が 後 日 物 を 渡 す と い ふ 風 に 、 給 付 と の 間 に 時 間 的 の 間 隔 を 置 く こ と が 認 め ら れ る や う に な る と 、 そ こ に 信 用 を 基 礎 と す る 債 權 債 務 の關 係 が 成 立 し 得 る こ と ゝ な る 。 そ し て 斯 う い ふ 關 係 は 當 事 者 相 互 の 言 葉 に よ つ て 作 り 出 さ れ る ﹂ と い わ れ て い る 。 法 學 餘 録 九 二 頁 。 ( 3 ) Ra d b r u c h , Re c h t s p h i lo s o p h i e , 3 Au f l . 1 9 3 2 . S. 1 4 1 . ( 4 ) 末 川 、 ﹁ 契 約 に お け る 形 式 ﹂ ( 制 度 ・時 ・人 所 載 ) 一八 三 頁 参 照 。 (5) ﹁ 個 々 の 私 人 の意 思 に 觀 念 的 に 輝 大 な 權 威 を 認 め て 、 法 律 的 に 意 味 の あ る 私 人 相 互 の生 活 關 係 は 私 人 自 ら を し て そ の 意 思 の 向 ふ と こ ろ に 從 つ て 決 定 せ し め る の が 合 理 的 で あ り 且 つ 合 目 的 的 で あ る と す る 思 想 は 、 私 人 の 意 思 の合 致 に よ っ て 成 立 す る と 考 へら れ る 契 約 に 最 も 重 要 な 役 割 を 演 ぜ し め る こ と ゝ な つ た の で あ る 。 ﹂ 末 川 、 前 掲 一 八 二 頁 。 ( 6 ) L o u i s J o s s e r a n d , c o f f ig u r a t i o n d u d r o i t d e p r o p r i e t e d a n s l'o r d r e j u r id i q u e n o u v e a u , p . 1 . 福 井 勇 二 郎 、 佛 蘭 西 法 學 の諸 相 三 三 二 頁 参 照 。 ( 7 ) L o u is J o s s e r a n d , La " Pu b li c a t i o n " d u c o n t r a t , 福 井 、 前 掲 一 四 八 參 照 。 二  契 約 主 義 の 系 譜 一  近代 以 前 に お いて は人 の 法律 關 係 は悉 く 生 れな が ら の身 分 に よ つて固 定 し て いた 。 家族 は家長 の絶 對的 支 配權 に服 從 し 、庶 民 は 領主 の專制 的 權 力 に壓 服 さ れて いた。 各 人 の職 業 は固 定 的 な社 會 の 統 制 に服 し、 活動 の自 由 は極度 に縮 限

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財 産 さ れ て、 い た 。 し か し 社 會 の 進 化 は 漸 次 家 族 の 獨 立 の 地 位 を 認 め 、 庶 民 の 人 格 を 尊 重 し 、 各 個 人 の 職 業 の 自 由 を 伸 長 し て 來 た 。 そ し て 社 會 の 法 律 關 係 は 漸 次 固 定 的 身 分 關 係 に よ っ て 定 ま る範 圍 を 縮 限 し 、 個 人 の 意 思 即 ち 契 約 に よ つ て 創 造 さ れ る 領 域 を 増 し て 來 た 。 か か る 現 象 は ま さ に メ ー ン ( M a in e ) に よ つ て 、 ﹁ 身 分 か ら 契 約 へ ﹂ ( f ro m s ta tu s to c o n tr a ct ) と い う 標 語 に よ つ て 示 さ れ た と こ ろ の も の で あ る ( 1) 。 メ ー ンの こ の標 語 は 、 一 般 に は 法 の 進 化 の 歴 史 的 概 觀 と し て 理 解 さ れ る の み な ら す 、 更 に ま た 權 利 と義 務 と が 當 事 者 の 合 意 に よ つて 確 定 さ れ る 法 制 の 方 が 、 身 分 に よ つ て 決 定 さ れ る 法 制 よ り も 好 ま し い と す る 一つ の 政 策 的 債 値 判 斷 と し て 理 解 さ れ て き た 。 歴史 の發展 の結 果 ど のよ うな こ とが生 じ よ う とも 、何 事 略當 然 に首 尾 の好 いよ う に仕 組ま れ て い るか ら、 そ の 事 態 を 改 變 し よう と す る入間 的 努力 は 無駄 であ り且 つ 試 みら る べき では な い と いう安 易 な假 説 は 、 サ ビ ニ ー ( S av ig n y )以來 歴 史 法 學派 の 特 色 であ る のみ なら す 、ま た メー ンの 時 代 およ び 現代 の進 化論 の特 色 でも あ る。 し た が つ て今 日 の 事 態 の下 に お いて、 わ れ われ は契 約 の自 由 に 對 する何 ら かの制 限 を 必要 とす る と主 張 す るな ら ば、 それ は 歴史 の進 化 に逆 ら うも の であり 、野 蠻 に復歸 す るも の であ る とす る反 對 を受 け る かも 知 れな い。 二 わ れ われ は こ のよ うな 反 對 論 に ついて検 討 す る前 に、 メ ー ン の標 語 に ついて 少 し く考 察 す る こ と にし よ う。 ﹁ 身分 から 契約 へ ﹂ と いう メ ー ンの概 括 は、 普遍 的法 則 でも な け れば 必然 的 法則 でも な い ことは、 彼 み ず から封 建 的 土地領 有 權 に ついて 認 めて いる ( 2 ) 。し か し それ にも か かわ らず 、 メ ー ンの概括 の中 には 十 分な 眞 理 が含 まれ てい る。問 題 を個 別 的 に觀察 し な い で 一 般 的 に 論 す るなら ば 、近 代 以前 にお いて はの 法 的 拘束 力 を も つ 合 意 だ とか契 約 だ とか は、 殆 んど な か つ た と い つて よ いであ ろ う。 契 約 の發達 は主 とじ て、 原始 的 經 濟 にお け るよ り は將 來 へ の豫 測を よ り必要 とす る商 工 業 の 發 展 の産物 であ る。 第 十 七世紀 以來 の契約 制度 の擴 大 は、 北歐 に おけ る近 代 産業 革命 と密接 に關 係 す る。 産業 革命 は 全く固 定 化 し て いた 70

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契約 の法 理 産業 經 濟 を、 貨 幣 と信 用を 基礎 とす る流動 的 企業 經 濟 に 變 形 した 。 か か る形勢 が残存 す る 封 建 的觀 念 の 崩 壊 に與 つ て 力 があ つ た のみな らず 、 文藝 復 與 期 に おい てよ り イ タリ ヤ化 した ロー マ 法 の繼 受 に役 立 つ た 。 それゆ え、 法 は ﹁ 身分 か ら 契 約 へ ﹂ と進 化 し た とす る メ ー ンの見解 は 、 産 業 膨脹 期 に ついて は妥 當 す る。 だ が、 膨脹 期 に引續 いて 審 化 あ る いは組 織 化 が行 われ た 。 すな わ ち増 大 し た契 約 の自 由 の跡 を 追 つて契 約 の自 由 の制限 も また増 加 し た。 ど んな時 代 で ,も社 會 は私的 な合 意 の 効 力 を制 限 し た り調整 し た り す る權利 を 棄 て るよ うな こ とは な い ( 3 ) 。 か くし て メー ンの 格 率 は 法 の歴 史 の 中 に 完 全 な支 持 を見出 す こ とは で きな い。 それ は 近代 の宗 教 、 形 而 上學 、 心 理 學 ・倫 理學・ 經 濟 學 およ び政 治 學 説 に 現 わ れ た 一 般的 個 人注 義 哲 學 にも と つく も の と いわな け れば な らな い ( 4 ) 。 三 個 人 の 自 由 な契 約 意思 に よ つて のみ す べての 義 務 は生 ず る ことと す る のが 最 も 望 まし い 法制度 であ ると説 く 法 にお け る 契 約 主義 は、契 約 意 思書 も とつ く のみ な らず 、 更 にま た す べて の拘 束 は悪 であり 、 最 も 少 く支配 す る政治 が最 善 のも の であ る とす る政治 原 理 にも とつ いて い る。 この こ とはま た其 人 の幸 福 と個人 の自利 追 求 と の間 には豫 定 され た 調 和が あ る とす る古 典派 經 濟 學的 樂 天主 義 と 關 連 す る 。 そし て か かる經 濟觀 は、 幸 福 とは 個人 の快樂 状 態 であり 、各 人 は それ ぞ れ の快樂 が何 であ るかを 最 も よく 判定 す る ことが で き ると いう べ ンサ ム 派 の快 樂主 義的 心 理學 を内 含 し て いる。 こ のよ うな法 的 個 人主 義 の信 念 の 背 後 には 、個 人 こそは窮 極的 實在 であ ると す る近代 的 形而 上 學 上 の假定 と、 罪 悪 と は それ な し には責 任 もま た あ り えな い個 人 の自 由 意 思 の所爲 であ る とす る神 學的 見解 と がひ そ ん で いる。 自 由契 約 の制度 は其人 に對 し て最 大 の自 由 を保 證 す ると いう 主張 は 、 第 十 八 世紀 の 啓 蒙 哲 學 の 特 色 であり 、 近代 民 主 主義 の心髓 でも あ る。 かか る政 治 的見 解 を更 に堀 り 下げ れ ば、 契 約 を自 由 に結ば せ これ を 一 般 的 履 行 さ せ る制度 は 、 個人 の發 意 に より廣 い範 圍を 認 め て、 國家 の最 大 の富 を 促 進 す るも の であ る と いう經 濟 的主 張 に 基 礎 を お い て い る 。 か か る見 解 を辯 護 す るた め に三 つの 主張 が な され て い る。 第 一 は個 人 の自 利 追求 と公 釜 と の 間 に豫 定 され た 調 和を 假定 す る第 十 八世紀 的 樂 天主 義 にも とつ く議 論 で あ る。

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財 産 も のみな 神 お自 然 と に より で仕 組 まれ た れ ば 甚 し き利 己 も利 他 に帰 一 す る な る べし し か し かか る主 張 は、 やが て 工場 と 鑛 山 の所有 者 が男 や 女 や子 供 を イギ リ ス 人 が耐 えら れな いよ うな 仕 方 で 酷 使 し 始 めた とき、 事實 に反 す る こ とが わ か つた 。 かく し て 工場 立法 が樂 天主 義 的 獨斷 に對 す る 反駁 と して 登場 し た。 第 二は ペ ンサ ムの 心理 學的 主 張 であ る。 そ の主 張 は 最大 の快 樂 が幸 福 であり 、各 人 は 何 が各 自 に と つて最 大 の快 樂 で あ るがを 知 つ て いる から 、各 人 の望 む と ころを 自 由 に表 明 し た契 約 こそ は、 最 大 多数 の最大 幸 福 を達 放 す る最 上 の方 策 であ ると いう假 説 の上 に立 つて い る。 この議 論 は 、人 は 法 的 には自 由 に欲 す るま ま ど のよ う な契 約 でも 締結 す る ことが でき る が、 人 は現 實 に は自 由 では な いし 、 ま た經 濟 的 にも 自 由 ではな い とい う事 實 を 全く 無視 し て い る。 第 三 には右 の心 理學 的論 議 は 生物 學 的自 然 陶汰 の原 理お よ び適 者生 存 の原 理 によ つ て 受 繼 がれ た 。 正し い 者 が 報 いら れ、 正 し くな い 者 が 處 罰 され る と いう古 くか ら の道 理 は 、 適 者 が生存 し 不適 者 は 死滅 す る とい う生物 墨 的 法則 に な つ た。 生物 學 的範 疇 と道徳 的範 疇 と の 間 にお け る觀 念 的 混同 にも とつ いて、 スペ ン サ ー 派 の自 由 主義 者 た ちは 、經 濟闘 爭 におけ る 弱者 を助 け る た め にす る國家 の行 う す べて の 干渉 に 對 し て 反對 し た 。 この よう な經 濟 的 に壓 迫 され た者 の運命 に對 す る無關 心 こ そは 、 ニ ー チ エの いわゆ る弱者 を し て滅 亡 せ し めよ 、 し から ば 強者 は 生 き残 るであ ろ う という標 語 に 無 條件 に賛同 す る 結 果 にな る。 し かし 人間 を 強者 と弱者 に絶 對的 に區 分 す る こと は、批 判 的 反省 の前 に崩壊 す る 。 無 政 府 的 競爭 状態 にお いて は 弱者 であ る者 も、 賢 明 な 調整 と保護 を 受 け る事態 の下 にあ つ て は強 者 とな り得 るであ ろ う。 のみ ならず こ の主張 の弱點 は、 競 爭 にお いて浪 費 され る 恐 る べき 無駄 を 無視 し て い る こと にあ る。 社會 は 全體 として は、 成功 し た企業 と失 敗 し た企業 と の双 方 にお け る勞 働 と資 本 の形 で生産 資 を 支拂 わ な けれ ば なら な い。 のみな らず ま た最 大 の利潤 は、 必ず し も最 大 の生産 性 を隨 伴 す る とは かぎ らな い。 こ れ ら の理 由 から し ても 、今 日、自 由競 爭 を も つ て 利 己 心の社 會 的 調整 であ る とし て、 國 家 によ る勞 働契 約 の調整 に 72

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契 約 の法 理 反 對 す る こ と は 、 妥 當 で あ る と な す こ と は で き な い 。 ( 1 ) 我 妻 榮 、 現 代 債 權 法 、の基 礎 理 論 ( 日 本 國 家 科 學 大 系 七 巻 ) 七 頁 参 照 。 ( 2 ) M a in e , Am i e n t La w ( 6 t h e d , 1 8 7 6 ) p . 1 7 0 . p . 3 0 5 . ( 3 ) H o ld s w o r th , H is t o r y o f En g lis h L a w , 1 9 6 2 , 1 0 0 e t s e q . ( 4) メ ー ン の ﹁ 身 分 か ら 契 約 へ ﹂ と いう 公 式 の眞 意 は 、 大 多 敷 の 法 律 關 係 が 契 約 に よ っ て 生 せ し め ら れ る と い う 意 味 で は な く 、 法 律 関 係 一 般 が 契 約 的 で あ る と い う こ と であ る 。 ﹁ 吾 人 は 呉 れ 呉れ も こ の 公 式 を 定 型 論 と し て 見 る べ き こ と を 忘 れ て は な ら な い 。 故 に 、 そ れ は ま た 、 前 に も 述 べ た 如 く 、 次 の や う 飜 譯 す べ き だ と も い へ よ う 。 曰 く ﹃ 理 念 定 型 と し て の 身 分 的 法 制 が 、 同 じ く 理 念 定 型 と し て の契 約 的 法 制 に 移 る ﹄ と 。 ﹂ 中 川 善 之 助 、 身 分 法 の基 礎 理 論 三 二 四 頁 。 三  契 約 の 拘 束 力 の 基 礎 一  契 約 法 は契 約 の履 行 を 強要 す る。 では、 な ぜ契 約 は履 行 を強 要 さ れ るの だ ろう か 。 契 約 の拘 束 力 の根 源 は何 處 に あ るか、 と い う 疑問 が生 ず る。 そ の 答 は直 觀 論 者 ( in tu it io n is t) に よれ ば、 契 約 は神 聖 だ から であ る。 い い換 えれ ば、 傳 統 的 に契 約 を遵 守 し な い と と に つ いては 、何 か賎 し む べき も の があ るか ら であ り、 か つ 適 當 に組織 づ け ら れ た社會 は 契 約 の不履 行 には堪 えら れな いから で あ ると いう の であ る 。 し かし 直觀 論 者 の主 張 は 一 部 正 し い點 はあ るが、 明 かに安 當 を 缺 い て いる。 いか な る法制 度 も す べ て の契 約 を強 要 し よ う とも し なけ れば 、 ま た 強要 す る こ とも でき な い。 寺 院 法 で すら 、契 約 は す べて神 聖 であ る とは して いな い。 だ から わ れ われ が 守ら る べき契 約 と強 要 る べき でな い 契 約 とを區 別 し よ う とす る とき 、 契約 は す べて守 ら る べき であ る とす る 直 觀 論 者 の説 明 は 、 問 題 を 解 決 す る こ と も で き な い し 、 解 決 の た め の 原 理 を 示 す こ と も で き な い ( 1) 。

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財 産 自 己 の 契 約 を 守 る 義 務 が な け れ ば 合 理 的 社 會 は 成 り 立 た な い と 主 張 す る ラ イ ナ ツ ハ ( R e im c h ) の よ う な カ ント 學 派 の 見 解 も ま た 右 に み た 直 觀 論 者 の 見 解 に 近 い 。 経 験 的 あ る い は 歴 史 的 觀 點 か ら す れ ば 、 他 人 の 約 束 に 信 頼 す る こ と が で き る こ と は 、 社 會 的 交 通 と 企 業 に必 要 な 信 頼 を 増 大 す る と い う こ と は 疑 な い 。 し か し こ れ と て も 絶 對 的 命 題 と し て は 主 張 で き な い ( 2) 。 業 務 上 の 契 約 は す べ て 履 行 を 強 要 ざ れ る と い う パ ウ ン ド ( P o u n d ) の 學 説 も ま た 承 認 で き な い ( 3) 。 今 日 の 財 産 は 契 約 に よ つ て 構 成 さ れ て い る か ら 、 契 約 の 履 行 は 文 明 の 基 礎 と し て の 財 産 を 維 持 す る た め に 必 要 で あ る と い う パ ウ ン ド の 主 張 は 確 か に 正 當 で あ る よ う に 考 え ら れ る 。 へー ゲ ルも ま た 財 産 の 觀 念 か ら 契 約 を 説 明 し 、 契 約 を も つて 財 産 處 分 の一 つ で あ る と し て い る 。 し か し 商 人 と 錐 も す べて の約 束 の履 行 を 法 律 で 強 要 す る こ と を 希 望 す る と は い え な い 。 二  古 典 的 見 解 に よ れ ば 、 契 約 法 は 當 事 者 の 意 思 を 現 わ し か つ こ れ を 保 護 す る 、 と い わ れ て い る 。 そ の 理 由 と す る と こ ろ は 、 個 人 の 意 思 は 本 來 尊 重 さ る べき 債 値 を も つ も の だ か ら で あ る と い う に あ る 。 サ ビ ニ ー ( S a v ig n y ) 、 ウ ィ ンド シ ャイ ド ( Wi n d s c h e id ) 、 ポ テ ィ エ ( P o th ie r) 、 プ ラ ニオ ル ( P la n io l) 、 ポ ロ ック ( P o n o c k ) 、 サ ル モ ンド ( S a lmo n d ) お よ び ラ ン グ デ ル ( L a n g d el l) の よ う な 人 達 で さ え も 、 契 約 の 第 一 の 要 素 は 意 思 の合 致 あ る い は 合 意 で あ る と 主 張 し て い る 。 か か る 見 解 の 形 而 上 學 的 難 點 は 屡 々指 摘 さ れ て 來 た 。 精 神 や 意 思 は そ れ 自 體 を わ れ わ れ が 見 た り 認 識 し た り す る こ と が で き る よ う な 竜 の で は な い 。 わ れ われ は 時 と場所 と に多少 とも制 約 さ れて 生活 す る 竜 の の變化 と行動 の觀 察 に對 す るわ れ われ の 日常 の體験 によ つ て制 約 され る。し た が つ て 無形 の精神 や意 思 は、 わ れ われ の經 験 法 則 の範 圍 と能 力 を越 え るも の で あ ると いう にあ る。 し かし か かる 反對論 は、 よ く聞 く と ころ であ る が、 そ れ ほど有 力な も の ではな い。 傳統 的 な 言語 の 中 に體 現され た古 い 觀 念 の 力 は 、 意 思 説 におけ る権 制 的要 素 を承 認 す る ラ ン グ デ ルや サ ル モ ン ド のよ う な人達 に よ つてす ら克 服 され な い で い る。

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契 約 の 法理 古 典 的 學説 の 論 理的矛 盾 は 、 われ わ れ が法 は 意思 を保 護 す る のでは な く、 意思 の表 示あ るいは 宣言 口 を 保護 す るから と て、是 正 され るも のでは な い ( 4 ) 。 す べて ,の契約 は 當事 者 の 合 意を 現わ す と 主 張 す る意 思説 に 對 す るより 重要 な反 封 は、 この分野 に おけ る 訴 訟 の大 半 は、 當事 者 が取引 を 行 つた當初 には 全 く豫見 しな か つ た事 態 が惹 起 し た と いう 理由 から 生 ず る と いう事 實 であ る 。 通 常 訴 訟 は當事 者 間 に眞 の 合 意 が存 在 し な い き う から生 ず る。 若 し も當 事 者 が困 難 豫 見 し たな らば 、契 約 がなさ れ る當 初 に お いて、 何ら か 對策 がな され るに違 いな い。 そ こで裁 判所 は契 約 にお け る用語 を 解 釋し よう と す ると き には、 そ の 用 語 が從 來 實際 に意味 し た と ころ を發 見 し よう とす る のみな らず 、 そ の諸 條 件 のも とに おけ る當事 者 の權利 と 義 務 との 平等 を決 定 す る のが普 通 であ る。 そ し てか か る法律 關係 は 利 害 組 反 す る當事 者 の合 意 によ つて では な く、裁 判 所 によ つ て 決 定 され る。 プ ラ ニ オ ル 派 の學者 は契 約 の効 果 は當事 者 によ つて豫見 され な い の に、 そ の契 約本 來 の 目 的 から 効 力 を生 ず る から、 結果 は 當事 者 の意思 にも とつ い で 効 力 を 生ず ると 主 張 す る ( 6 ) 。 し かし 實 際 に 豫見 し な か つ た 事 柄を 豫見 し た と し て、 法 は 一 定 の義 務を 認 め る と論ず る こ とは、 法律 論 にお いて 普 通 には な され な い混 同 であ る。 この よう な事 實存 在 す る こと と 理 論 上存 在 す べき こと と の 混 同 は、 責 任 の領 域 に お いても 行 わ れ て い る 。 契 約 に お いてλ 々 は實 際 に豫見 し な か つた事 柄 に對 して も責 任 が あ る。 それゆ え當事 者 が 豫見 し な か つた こ とを 意圖 した と 論 ず る ことは 、 意思 説 の た め に 考 えら れ た 一 つ の 擬 制 にす ぎな い ( 6 ) 。 か くし て 意 思説 は 法律 行 爲 の客 觀 主義 に よ つて代 ら れな けれ ば な ら な くな る。 三  契 約 の拘束 力 に つ いて の信頼 侵 害 説 ( In ju ri o u s R e m ce T h e o ry ) によ れば 、 諾 約者 は對 債を 給 付 す るかあ る いは 合 意 を 信頼 し て自 分 のな す べき行 爲 を 始 めた か、 そ の いず れ か でな け れば 相 手方 に樹 して履 行 を 請求 す べき道 徳 的請 求 權 はな いと いう の であ る 。 こ の學説 の骨 子 は次 の三點 にあ る。 す な わ ち契 約 上 の義 務 は、 ( 一 ) 君 語 で明 示的 にか、 行

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財 産 動 によ つ て 黙 示的 にか約 束 が 行 われ 、 ( 二) 何 人 か が その 約束 を 信頼 し、 ( 三) そ の こと に よ つて 何ら か の損 害 を被 つ た場合 に獲 生 す る こと にな る 。 第 一 に こ の主 張は 契 約 は守 ら る べ き であ る のみ なら ず 、 ま た そ の契 約 を信 頼 し た こと によ つ て 故 なく 損 害を負 つ た 者 は、 損 害を 惹 起 した 者 に對 し て 賠償 を 請 求 す る権 利 があ る とい う道 徳 的感 情 に訴 え ると ころ があ る。 シ ョ ー ペ ン ハ ウ ワ ーが主 張し たよ う に、 悪 の感 情 こそ が、 人間 に おけ る窮 極 の法源 であ ると す るなら ば 、 契約 の拘 束 力を 信頼 し た 者 の被 つた損 害 を基 礎 とす る こと は、 何 か實 際 に 根 源 的 な も の に訴 え る と ころ があ るよ う に思 わ れ る。 第 二 に との主 張 は 現代 の 法 學 者 に強 く訴 え ると ころ があ る。 と いう のは 、 そ の主 張 が客 観 的 であ り社 會 的 であ る と考 えら れ るか ら であ る。裁 判 所 が契 約 者 の意 思 を探 求 す る必 要 は な い。 裁 判 所 は被 告 が何 を いい、 何 をな し た かを考 慮 す る代 り に、當 該 事情 の下 で 一 般 に人 が その契 約 に 信 頼 す るか ど うか を考 えれば い いわけ であ る。 そう すれ ば損 害 の程度 は直 接 に證 明 さ れ測 定 さ れ得 るであ ろ う。 し かし な がら この主 張 は 現行 法 と 全然 一 致 しな い のみ なら ず 、 法 は如 何 にあ る べき か、 と いう ことを 十分 に 論 明す る こと はで きな い。 契 約 上 の義 務 の範 圍は 、信 頼 を 侵害 し た範 圍 と 合 致 し な い。 とい うわ け は、 (一 ) それ に對 して は何 ら契 約 上 の 義 務 のな い ような 信 頼 と 侵害 の 場 合 が あ るし 、 ( 二 )信頼 もな け れば 侵 害も な いよ うな義 務 を も つ 事 件 屯あ る から であ る。 それゆ え法 は、 他 人 の言動 を信 頼 し たす べて の人を 保 護 す る とは かぎ ら な いし、 また 法 は契 約 に 對 し て何 ら の 信 頼 を も おかず 、 そ の 不履 行 に よ つて何 ら の侵 害 をも 受 けな いよ うな 契 約 の 履 行 を も 保證 す る こ とは も ちろ ん であ る。 更 に、 法 は侵 害 に 對 し て救 濟 を與 え るの みな らず 、 契 約 の履 行 に よ つて得 べかり し利 益 を もま た 保護 す ること をみ のが す べき では な い 。 か くて われ わ れ は信頼 侵 害説 の契約 法 に おけ る支配 的 地位 を 無視 す るも の では な いが 、 必ず し も契 約 の拘 束 力 に つ い

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契 約 の法 理 て の 十 分 な説 明 とい う とと は で き な い。 い わ ゆ る信頼 と侵 害 と に ついて 適當 な限 定 が な され な いか ぎり 、 現行 法を説 明 す るには 不適 當 であ る。 四  極 く 普 通 の見 方 によ れば 、契 約 は給 付 交換 關 係 にあ るから 、 守ら れな け れば な らな いと され て い る。 契 約 におけ る 對 價 説 ( E q u iv a le n t T h e o r y ) によれ ば 、 對價 のな い無 因契 約 は性 質 上拘 束力 がな い から 、法 律上 の拘束 力 を もた な い。 と い うわ け は、第 一 に對價 のな い約束 を し た人 を信 頼 す る者 は 無謀 輕 卒 な約 束 を した 人 であ つて、 このよ う な 理由 のな い期 待 は保 護 され な い 。 第 二 に對 價 のな い約束 を す る者 は、 た だ外 見 上約 束 を した にす ぎな い の であ つ て 、 熟 慮 の 結 果 結 ん だも の で はな い。 第 三 に約束 に甥 す る交 換 とし て若 し く は相 手 の約 束を 信頼 し て既 に 對 價 を引 渡 し た者 は、 も し 相 手 が その約 束 を 守ら な い場合 には 、自 分 の 財 産 を侵 害 さ れ た こと にな る から で あ る。 對 價論 は カ ノ ン 法 の影響 を受 け、 ゲ ル マ ン 法 の債 務原 因 ( c a u s a d e d en d i) に理論 的根 據 を與 えたも ので あ る。 そし て そ の主 張 は法 が保 護 す る利 益 を否 認 す る。 ま た 對價 を も つ て熟 慮 とい う こと と同 様 に老 え るが、 約束 が 眞 意 にも とつ い て な され た か否 か は、 對價 の 有 無 では な く、 契 約 の當事 者 とり わけ 要約 者 が そ れ によ つ て拘 束 さ れ る 意思 をも つた か否 か にあ る と いわな け れば な らな い。 更 に この説 によ れば 、 契 約 の不 履行 の場合 には 當事 者 の 一 方 は、 既 に引渡 し た對 價 の取 戻 を請 求 す れば それ で よ い こと にな る。 對 價説 は要物 契 約 ( r e a l co n tr a c t) の優 位を 認 め る 普 通 人 の感情 に も とつ く も の で あ るが 、 契 約 と 對價 との等 價 と い う こと に ついて、 果 し て對 價 と は何 であ る かと いう こと およ び等 個 で あ るか 否 か に ついて は 、 當 事 者 の極 く素 朴 な 主観 に よ つて決 定 す る より ほ かな い ごと にな る。 五  ホ ウ ムズ 判 事 (J u s ti c e Ho lme s) は 法 的 契 約 は 賭 事 と 老 え ら れ る と い う 意 味 の こ と を 述 べ て い る 。 こ の こと に つ い て は 各 方 面 か ら す る非 難 が み ら れ る が 、 あ ら ゆ る 人 間 關 係 に お け る 危 險 に 關 す る彼 の 一 般 哲 學 と 結 び つ け て 廣 義 に 理 解 す る な ら ば 、 深 い 味 の あ る 言 葉 で あ る 。

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財 産 あ らゆ る人 間 の取 引 は何 ほど か不 安 定を 免 れ えな い 將 來 に向 け ら れ て いる。 そ れゆ え、 われ われ の取引 のす べ て は危 險 の 負 擔 を 内 含 し て い る 。 歸 宅 の 途 中 電車 に乗 ると き には 、 無事 に 歸 り着 く ま で は自 分 の生命 を 賭 け る こ と にな る。 そ こで約束 や契 約 は 豫測 さ れた 利得 あ る いは損 失 の 分 配 に對 す る合 意 と みら れ得 る であ ろ う。 若 しも あ る 商 品 を販 賣 す る ことを 承諾 す るな ちば 、 そ の代 價 の支 拂 を 受 け る ことを 期 待 でき ると 同時 に、ま た支 拂 わ れた 金銭 で 他 の商 品 を購 入 で き る こ と を も 期 待 でき る。 わ れ われ は 一 般 に は支 拂 を受 け る貸幣 の 購 買力 が、 支拂 わ れ た とき急 激 に下落 す るかも 知れ な いと いう ことま でも 計 算 に入 れ な い。 そ れゆ え た と え契 約當 事 者 が約 束 を結 ぶ とき 、 お互 に相 手方 の意思 を 理解 し た とし ても 、契約 から生 す る 一 切 の 結 果 に對 す る人間 の豫 測 力 に は限度 があ る。 そ こで紛議 や論 爭 が生 ぜ ざ るを えな い わ け であ る。 し た が つて契 約 法 はあ ら かじ め 契 約 當 事 者 に よ つて 豫測 さ れ た とは 違 つた事情 あ る いは初 め から 明確 に規定 され な いで、漠 然 とし た事情 の 下 にお け る契 約當 事 者 の權 利義 務を 確 定 す る企 圖 として 考 えら れ る。 か く て裁 判所 の 判 決 は利得 と損失 とを 配分 す る方 法 と して 原 契 約 を修 補 す るも のと いう こと が でき よ う。 かか る 觀 點 か らわ れ われ は 契 約法 を裁 判 所 が 損得 の配 分を す るの に 基 準 とす る法規 の體 系 であ るとみ るこ とが でき る であ ろ う。 それ ゆ え契 約當 事 者 の合 意 から のみ結 果 が 生す る とす る見 せ かけ は 、擬 制 的 な も の であ る。 恰も 法規 の 解 釋 の過 程 が補助 的 立 法 の過程 であ るの と同 様 に、 契約 の 解 釋 は、實 際 には 、 紛議 を 解決 す る に 必 要 な條 項 に よ つて原契 約 を修 補 す る方法 であ る。 若 し契 約法 を も つて人 を し て契 約 に信頼 せ しめ る こと によ つ て 取 引 の安 全性 を 強 化 す る こと に向 けら れ たも のと す る なら ば、 それは 契約 の 實 際 的作 用 の 一 面 觀 にすぎ な い。 契 約 の他 の 一 面は 、契 約 當事 者 が 豫測 しな か つたり 取り き めを し な か つた突發 的事 故 に ついて 、契 約 當事 者 の 權 利 義 務を 決定 す ると いう こと にあ る。 契 約法 にお け る重要 性 は、契 約 當事 者 の 合 意 に成 る と こ ろ が履 行 さ れ る ことを 保證 す ると いう 一 面 か ら、 危險 負 擔 の配分 の問題 に移行 し た と いう こと が で き る であ ろ う ( 6 ) 。

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契 約 の 法理 (1) ﹁ 契 約 は 守 ら る べ き で あ る﹂ ( p a c t a s u n t s e r v a n d a ) と いう 考 え 方 は 、 近 代 初 期 の自 然 法 學 者 た ち に み ら れ る ふ つ う の 態 度 で あ る。 恒 藤 恭 、 契 約 ( 岩 波 ・倫 理 學 十 四 册 ) 一四 頁 参 照 。 ( 2) ヵ ン ト は 契 約 に よ る 義 務 を 合 意 か ら で は を 、 權 利 を 移 轉 す る と いう 自 由 な 合 意 に 求 め た 。 ラ イ ナ ツ ハは 法 現 象 學 的 考 察 の 立 場 か ら 約 束 の も つ拘 束 性 を 、 契 約 者 が 契 約 を す る 作 用 そ の も の に 求 め た 。 す な わ ち 約 束 と い う 特 殊 の 社 會 的 作 用 そ の も の の本 質 を 的 確 に 直 觀 す る こ と に よ つ て、 そ の 主 張 の 妥 當 性 が 證 明 さ れ る と いう の で あ る。 Re in a c h , Ap r io lis c h e n Gr u n d la g e n d e s b u r g e r lic h e n Re c h t s , 1 9 2 2 , § § 2 -4 . な お ハ 約 束 す る 主 體 と 約 束 の 相 手 方 で あ る 主 體 と の 間 に 成 り 立 つ體 験 と 共 感 と の關 連 に着 眼 し て 、 契 約 の 狗 束 力 の 由 來 を 説 明 す る リ ッ プ ス ( L i p p s ) の 心 理 主 義 的 見 解 お よ び 契 約 の當 事 者 を 内 面 に 包 容 す る 社 會 的 全 體 の 觀 點 か ら 契 約 の拘 束 力 を 考 え よ う と す る シ エ ー ラ ー ( M a x S c h e le r ) や フ イ ー ア カ ン ト ( Vi e r k a n t ) の 主 張 に つ い て は 、 恒 藤 博 士 の前 掲 論 文 に ゆ ず る 。 そ こ に お い て 恒 藤 博 士 は 、 ﹁ お も ふ に 、 契 約 の拘 束 力 の 根 源 の 問 題 を 解 決 す る た め に は 、 客 觀 的 ・ 法 的 規 範 の う ち に そ の根 源 を 探 求 す る し か た も 、 主 體 的 ・ 心理 的 聯 關 ま た は 主 體 的 ・ 社 會 的 聯 關 の う ち に そ の 根 源 を 探 求 す る し か た も 、 共 に 一面 的 に偏 す る 方 法 た る こ と を 免 れ ず 、 客 觀 的 側 面 と 主 體 的 側 面 と の 双 方 か ら 考 察 適 す し す め る こ と に よ つ て の み 、 問 題 の 全 面 的 解 決 へ の 到 達 を 期 す る こ と が で き る で あ ら う 。 ﹂ と 正 し く 指 摘 さ れ て い る。 前 掲 論 文 一六 頁 -一七 頁 。 (3 ) P o u nd, I nt r od u c t i o n t o t h e p hi lo s o ph y of La w , 1 9 2 2. PP . 23 7 . 2 7 6 . (4 ) 意 思 の 表 示 と 同 様 に 義 務 づ け る 眞 實 の 意 思 が あ る 筈 で あ る と 主 張 す る 人 達 の 間 に お け る 論 爭 に つ い て は 、 次 の 文 献 に 詳 し い 。 W i n ds c he i d, Pa nd ek t e n, 1 9 0 0 , § 7 5. ; E n ne c ce r u s , L e h r b u c h d e s Bur ge r li c he n R e ch t s , 1 91 3 . § § 13 6. 1 5 5 ; S ta u di n ge r , K o m m e n t ar z u m B u r g e r li c he n G e s e t z bu c h u n d d e m Ei n z u h un g s e t z e, 1 91 2 , s . 4 3 4 ; M a ni gk, W il l e ns e r kl a r u n g i n T a t b e s t a n d d e s R e c h t s g e s c h a f t e s , 191 0 , SS. 5. 6. A r c h i v f u r R e c h t s -un d W i r t s c h af t s -p hi lo s o ph i e . Sa l e i ll e s , D e l a D e c la r a t ion de V o lo nt e, 1 9 01 ; Le r e bo ur s -Pi g e on ni e r e , L 'O e uv r e J u r id i qu e d e R a y m o nd Sa le i ll e s , 1 91 4, p. 3 9 9. e t s e q.; Bon ne c a s e, Sc i e n c e du D r o i t e t R o m a nt is m e , 1 9 28 , p. 2 2 9 . et s e q. (5 ) Pl a ni ol , T r a it e E le m e nt a i r e de D r oi t C ivi l , 1 91 2 , § 94 4. ( 6 ) ラ ー ド ブ ル ツ フ に よ れ ば 、 ﹁ 當 事 者 の 意 志 は 又 そ の 大 部 分 が 契 約 當 事 者 の も の と 見 做 さ れ た 立 法 者 の 意 志 で あ る 。 當 事 者 の 意 志 が 自 ら を 拘 束 す る の , で は な く 、 法 律 が 當 事 者 を 彼 の意 志 に 拘 束 す る の で あ る 。 ﹂ ﹁ 意 志 が拘 束 す る の で は な く 、 契 約 の拘 束 性 は、 そ れ が 意 志 に結 び つ け ら れ て ゐ る と き と 雖 も そ れ は 法 律 に よ り 意 志 に 結 び つ け ら れ て ゐ る 。 ﹂ Ra d b r u c h , Re c h t s

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-財 産 p hi los o phi e, S . 1 4 4. 田 中 耕 太 郎 譯 、 ﹁法 哲 學 ﹂ 二 一 一 頁 。 (7 ) Coh e n, M or r is , T he Ba s is of C o n t r a ct , H a rv a r d L a w R e v i e w , v o l . X L VI , N o . 4 . p. 5 8 3 .

四 

一  近代 市 民 社曾 の典型 は、 その基 本 構造 に お いて 、自 由競 爭 と營 利欲 と があ らゆ る經 濟活 動を 支 配 す る ﹁ 自 由 營 利經 濟組 織﹂ であ り、 普 通 に ﹁ 自由 資 本 主義 ﹂ と よ ばれ る とこ ろの も の で あ る。 こ の自 由資 本主 義 すな わ ち 自 由營 利經 濟 は、 古 い手 工技 術 と狭 い經 濟 社曾 を 前提 とす るギ ル ド 統制 と、 恣 意 的官 僚 の重 商主 義 政策 とが 一 國 の 經 濟的發 展 を阻 害 し て いた, の に對 し て 擡 頭 し たも の であ る 。 各 人 をし て そ の生活 に 全責 任 を負 わ し め 、 從 つ て 營 利 の自 由を 認 め た こと は、 一 國經 濟 の發 展 を 阻 害し て き た諸 種 の社 會 的拘 束 を撤 廢 し 、 國家 社 會 の生産 力 を發 展 せ し め、 從 つて國 富を増 加 せ し めた こと によ つて 、 そ の社會 的 根 據を 見出 した のみ なら ず 、 一 世紀 以 上 の長 き にわ た つて人 類 に對し て絢 爛 た る寄與 を な し、 た め に世界 經 濟 の指導 原 理と し て永劫 の眞 理 た るか の如 き観 を 呈 し た。 この自 由營 科 經 濟機 構 の 下 では 、自 由 競爭 と營 利欲 とが支 配 的 で あ るか ぎり 、 物 の 價 格 は自 然 的 に形 成 され る。 と い う のは、 自由 競 爭 と營 利 欲 と が相反 的 な 力を なす か ら であ る 。 すな わ ち 一 方 にお いて は營 利 欲 に支 配 され て供給 者 は自 己 の商品 の 販 賣 價格 を 可 及的 に 引 上 げ 、需 要 者 は可 及的 に 購 買價 格 を 引下 げ よ う とす る 。 然 る に 他 方 にお いては こ れ と は 正反署 に 競 爭 に支 配 され て 、供 給 者 は相互 に 競 爭者 を 排 除 せん が た め に 購 買 價 格 を引 上 げ る。 こ の 相 反的 な 力 が統 一 し て作 用 する結 果 、價 格 の 自 由 變 動 を介 し て需 要 供給 の均衡 が自動 的 に調節 さ れ る。 從 つてな ま じ っか な社會 統制 は 、 この價格 法 則 の 機 能 を妨 げ 、却 つて そ の目 的 に反 す る結果 を 齎 す こ と にな る。 ま た自 由資 本主 義 には 内在 的疾 患 とし て の恐慌 があ つ た 。 す なわ ち そ こに は 均衡 回復 力 と同 時 に 均衡破 壊 力 が存在 す

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契 約 の法 理 るため 、 一 定 期間 にわ た つて供給 に比 し て需 要 が 旺 盛 な状態 を 持續 し 、 一 般 に物價 は騰 貴 し 、景 氣 は上 昇 が起 り、 好況 に刺戟 され て各 企 業家 は過慶 の生 産擴 張を 行 い、や が て過 剰生 産 に陷 り、 極 端 な供給 過 剰 の結 果 恐慌 が勃 發 す る。 とは い え、 市場 にお け る經 濟上 の 優 者 は經 濟 上 の弱 者を 壓 倒し て 、茲 に恐慌 によ る價格 の 自 動 變動 作 用 が行 われ た 。 す な わ ち 生産 過剰 となれ ば價 格 は 激落 す る結 果 、限 界 に あ る弱體 企業 は倒 れて 、 過剰 な 供給 は縮 小 さ れ、 需要 は再び 増 大 し、 供給 と 需 要 との自 動 的 調節 がな さ れ る。 か くて 恐慌 の影響 は 極 めて輕 微 であり 、 回復 も 早く 、 寧 ろ そ の 後 の大 な る 發 展 の基 礎 づ け とも な つた の であ る ( 1 ) 。 この よう な事態 のも と に、近 代 法 は觀 念 的 な個 人を 前提 し、 自由 か つ平等 な個 人 を想 定 し 、 そ の 合 理的 思惟 と 活動 と をも つて社 會構 成 の 基 礎 と し た結 果、 契 約 に對 し て不 當 な地 位を 與 えた。 契 約主 義 觀念 の擴大 は 、婚 姻 や家 族 關 係を す ら契 約 とし て説 明 す る こ と に な つた 。 今 日、普 通 には結 婚式 には嚴 そか な夫 婦約 束 が な され るし、 ま た持 参 金 そ の 他 夫 婦 財 産 契約 がな され る ことも あ る。 し か し夫婦 の特 別 な法律 關 係 は 法律 によ つて定 め ら れ て いて、 當事 者 が勝 手 に 變 更 す る こと が できな い ことは 、 恰 も將來 夫 婦 の 間 に生 れ る子供 に對 す る兩親 の義 務 を、 夫 婦 が勝 手 に變更 す る こと が でき な い のと同 様 であ る。 兩親 と未 成年 の子供 と の 間 には契 約 と いわ る べ き 關係 がみ られ な い よ う に、夫 婦 の間 にも契 約 關 係 とは いわれ な いも のが存 在 す る、 と いわ な けれ ば なら な い。 婚 姻 や養 子縁 組 の成 立 審 つては 、あ く ま で當 事 者 の意 思 が 尊 重さ れな け れば な ら な い と いう事 實 は、 その行 爲 の 法 的 結果 を 當 然 に契 約 的な ら し め るも の では な い ( 2 ) 。 契 約 主義 思 想は 第 十 八世 紀 の西 欧 公 法學 者 お よび第 十 九 世紀 の ア メリ カ の 裁 判 官 た ちが 、 社會 契 約 をも つて社 會 お よ びあ らゆ る法 の基 礎 であ る と主 張 す る に至 つ て 、 そ の 極 限 に到逹 し た。 こ こでは 社會 契 約説 に つ いて立 入 つて論 す る こと はし な い。 た だ 、 す べて の 法 的義 務を 契 約 に よ つて基 礎 づけ よ う と す る ことは できな い ことを 指摘 す る にとど め る。 子 供 は そ の兩親 に對 し て いろ い ろな義 務 を負 う が、 それ は決 して契 約 上 のも の では な い。 ﹁ わ れ われ の 組 先 が承 諾 し た とし ても 、 現 にわ れ われ 自 身 が應 諾 しな い法 に、 何故 われ われ は 從 わ 81

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財 産 なけ れば なら な い のだ ろう か ﹂ 、更 に、 ﹁ われ われ が 年 少 で 經 験 も 少 く 世 事 にも疎 か つた往 時 の約束 を 、 何故 今 日守 ら なけ れば なら な い のだ ろ うか﹂ 、 と反 問 す る こと が でき よ う。 こ れ ら の 疑問 に答 え得 る合 理的 な答 があ る と すれ ば、 そ れ は われ われ が約束 を 守 る こ とが 寄 與 す る 公 益あ る いは 社會 的 必 要 と いう 形式 を と る に違 いな い。 若 し そう だ とす れ ば 、 子供 が 兩親 に 從 順 であり 、 親 を扶 養 す る こ と が 寄 與 す る そ の 同 じ公 益 な り 社 會 的 必要 な り が、 財 産 の 所 有 者 を し て、 た と え彼等 が承 諾 し な い にせ よ、 な お 下水 工 事 や教 育 や そ の他 の 共 同必 要 の ため に 支 出 せし め る こと にな ら﹂ な いで あ ろう か。 かか る論議 の長 所 は擬 制 的契 約 の 導 入 に よ つて は實際 上影響 を 受 け な い。 それ にも か かわら ず 、經 濟 的自 由 主義 の發展 す る に つ れ て 、 ﹁ 個 人的 利 益 の 自 由 な活 動 ﹂ ( F re e p la y o f in d iv id u a l in te re st s ) が廣 範 圍 に認 めら れ、 契 約自 由 の原則 が近 代 市 民法 の 根 幹 を な す 原 理的 要請 とな つた 。 い わゆ る ﹁ 契 約締 結 の 自 由 ﹂ 、﹁ 内 容決 定 の 自 由 ﹂ 、 ﹁ 相手 方選 擇 の自 由し およ び ﹁ 方式 の 自 由 ﹂ を 要素 とす る自 由契 約 が 契約 の典型 的 形態 と し て登 場 し た こと は、 既 に述 べた通 り であ る。 自 由契 約 は近 代 市 民社 會 にお け る私 的自 由 主義 およ び私 的 個人 主 義 の當 然 の 要 請 と して 、合 理 的發 現 形式 を と つた も の であ る。 か かる近 代法 的 思惟 の 根 柢 には自 利 心 の 自 由 か つ 完 全な發 動 は 、 や が て社 會 全體 の福 祉を増 進し、 意識 的自 利 は無 意 識 の うち に よく利 他 の 作 用 を な すも の であ る とす る樂 天 的 豫定 調 和 の觀 念 が 支配 し て いた 。 そ こにお い ては、 各個 人 の 社會 的 地位 にも とつ く 個別 性 は 無視 され 、 孤 立的 に構想 され た個 人 のみ が法 の 主 體 と され た 。 それ は しば しば 樹を 見 て 森 を 視 ず 、 個 人 を 見 て そ の 社 會 的 地 位 を み な い 。 そ の よ う な 見 地 を 最 も 明 瞭 に 示 す も の は 、 生 き た 人 間 ( M e n s ch ) を 無 視 す る 人 格 者 ( P e rs o n ) の 概 念 で あ る 。 そ れ は あ ら ゆ る 差 別 性 を 無 視 し た 平 等 の 概 念 で あ る 。 平 等 の 概 念 は 、 ラ ー ド ブ ル ッ フ の 指 摘 し た よ う に 、 自 由 の 概 念 で あ り 、 個 人 の 意 志 が 人 間 存 在 の秩 序 の根 源 と さ れ た ( 3) 。 か く し て 近 代 市 民 法 は 意 思 主 義 の 法 と し て 、 所 有 と 契 約 の 自 由 を 原 理 と す る 法 と な つ た わ け で あ る ( 4 ) 。 要 す る に 、 個 人 の 意 思 は 積 極 的 に法 の 干 渉 を 受 け る こ と な し に 、 自 由 に 法 律 關 係 を 作 り 出 す こと が で き る と す る 考 え 82

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契 約 の法 理 方 のもと にお いて は、 契 約 は各 個 人 の利 己 心 の社 會的 調整 であ る自 由競 爭 によ る結果 であ る から神 聖 な も の で あ つて、 裁 判 官 はも ち ろ ん法律 と雖 も これ に 干渉 す べき では な い とさ れ た。 經 濟的 自由 主義 のも と に おい ては 、個 人 相互 の 關 係 を 規 制 す る規 範 は、 各 人 の自由 意 思 にも と つく 自發 的 制 約 でな けれ ばな ら な い から 、 各 人 の自由 意思 にも とづ く 自發 的制 約 の定型 とし て の 自 由契 約 が 、 す べて の法 律關 係 發 生 の原 因 と さ れ たゆ えん があ る。 經 濟 的自 由 主義 のも と に お いて は、 如 何 に財 貨 が交 換 され 配分 され る かは、 す べて各 人 の自 由 意思 の 合 致 か ら な る契 約 によ つて の み決 定 され る 。 財 貨 交 易 手段 とし て の自 由契 約 の合 理 性も ま た この 點 にあ つたわ け であ る。 二 資 本 制經 濟 の發 逹 に伴 つて 、 自由 契 約 の名 の も とに資 本 の 蓄 積 を めぐ つて展 開 され た自 由 競 爭 は、 資本 と 企 業 の 集 中 の傾向 を 示し 、大 企業 な いし そ の結 合 が經 濟社 會 におけ る 獨 占 的 地位 を 獲得 す る 。 一 方 に お いて 自由 競 爭 は そ の 反 對 物 であ る獨占 へ 轉 化し 、 他 方 にお いて 技術 の進歩 ば大企 業 施設 を 可 能 なら し め た ので、 そ の取引 は 大量 的 ・ 劃 一 的 とな つ て 、人 々 は契 約 内容 を 自由 に 締 結 す る 自 由 を 失 つた 。 し かも 大資 本 や大 企 業 は市 場 を獨 占 す る結 果 、 人 々 は契 約 を締 結 す る と せざ る と の 自 由 を すら 失 う こ とに な つた。 大 企業 な いし大 資 本 は そ の獨 占力 を 利用 し て、 そ の取引 相 手 と の 間 に 多 数 の契 約 を迅 速 に締 結 す るた め に、豫め 一 定 の約款 (一 般 的 契約 條 項 、 一 般 的業 務約 款 、 普 通取引 約款 ) を作 成 し 、 個 々の 契 約 内容 を 悉 く これ に從 つて決 定 し よう と す る。 勞 働者 の雇傭 、 運送 ・ 電 氣 ・ 瓦斯 ・ 水道 な ど の供給 、保險 ・ 株 式 ・ 社債 な ど の 募 集 、生 活 必需 品 の 購 入 な ど に至 る ま で、 企業 主 體 ま た は そ の 團 體 が 一 方的 に 定 め る 條 件 にし た が つて な され る ほか はな くな つた。 すな わ ち そ こに お いては 、優 勢 な 支配 力 を有 す る 契 約 當 事者 の 一 方 が契 約條 項を 豫 め作 成 し、 不特 定多 数 の相 手方 に 弱 し 契 約條 件 の決 定 に ついて討 議 を許 さず 、 提 示條 項を 應 諾 す る か否 か の擇 一 的自 由 のみを 與 え て契 約 を締 結 し、 契 約 關 係 を成 立 せしめ んと す るも の であ る。 いわゆ る 附 合 契 約 ( C o n tr a t d 'a d h e si o n )が それ であ る ( 5 ) 。 かか る契 約 に お いて は、個 人は その契 約 内容 を 自 己 の意 思 にも とつ い て決定 す る自由 は全 然も た な い。 のみ な らず 、

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財 産 その企業 の獨 占 性 と そ の社會 生活 におけ る 不可 缺性 と に應 じ 、 契 約 を締 結 す ると せ ざ ると の 自 由 さ え 甚 だ しく 縮 限 す る。 附 合契 約 の概 念 決 定は いろ い ろ であ り、 とり わ け そ の 本 質 如 何 に ついて は 學説 も 一 定 し な い ( 6 ) 。 し かし そ の特 徴 と し ては、 通常 次 のよ うな 諸點 があ げら れ て いる。 す な わ ち ﹁ ( イ) 當事 者 の 一 方 と な る べき 者( 經營 主 廢 ) は 一 定 の條 件 の下 に何 人も 制用 し 得 る よ うな 一 般 的 欝 つ 繊 續 的 な提 供 を し て いる。 だ から そ 耽 には制 度 納 な歌 態 ( 。・ ぎ 鎚 識 § 鯵 S 簿綴 ・ tざ 琴ぎ ) が作 夢出 さ れ て いる と い い得 る。 ( ロ ) そ し て提 供 さ れ る物 體 は廣 く 公 衆 が利 用 し得 る如 き竜 0であ つて而 も そ の提供 虜 體 は多 かれ 少 か れ獨 露 的 の挫質 を 麿 し て いる。 だ から そ こには 公共 的 効 罵 の獨 占 的提 供 ( 窯ぐ p st a 鳳 9 欝 o 蓉 P a , 冨 鱈 器 島 .昼 h 審 p u 匪 q 幕) があ る と い い得 る。 ( ハ )契 約 の 成 立 に賞 つて用 いられ る方式 は 掛 郵 の饒 地 がな いよ う に豫 め 型 に は ま つて いて 、極 め て複 雑 な 不可變 的な 條 項 竜、 印 羅 物 とな つて い る ので、簡 單 容 易 に 契 約 の内容 と 盛 れ る。 だ か ら 契約 の成 立 にお い ては簡 易 確 實 ( s imp lic it e e t s e c u r it e ) が支 配す るが、 契 約 の 内容 にお いて は經 營 主體 によ つ て 一 方 的 に 定 め られ る 複 雑 な細 か い 條 項 が約 定 さ れ る こと にな つて いる。 ﹂ ( 7 ) 近 代 市民 法 上 は、 經 濟的 に ま たは 心 理的 に強 制 ざ れ て いる 意思 も な お意 思 と觀 るほ か はな いが、 かか る意味 の意思 さ えも附 合契 約 に お いて は僅 に 契 約 の 成 立 に つい て のみ 認 め ら れ る にと どま り 、 契 約 の内容 には 及 び得 ない 。附 合契 約 に お いて は、運 送 約款 や 保險 約 款 な ど にみ る よう に、 そ の 内容 は 一 方 的 に 決 定 さ れ て いて 、 各 個 の當事 者 は これ に ついて 一 々 商議 し 得 る餘 地は 殘 つて いな い。 一 旦 契 約 が成 立 し たな ら ば 、當 事 者 は そ の意思 の如何 に拘 らず 、ま た知 不知 に拘 ら ず客觀 的 に 與 えら れた も の とし て そ の内容 は 拘束 さ れ、 し かも そ の内 容 は す べて の當 事者 に對 し て 一 様 に 拘 束 力を有 する。 か くて附 合 契約 は そ れ自 身 の特 性 と して契 約 自 由 の原 則 に對 す る制 限 を包 藏 す る と いわ なけ れば な ら な い 。 附合 契 約 にみ られ る 一 般 的契 約 條 項は 、 個 人 の自 由 意思 によ る合 理性 を も つて 、社 會 進歩 の原動 力 と した近 代 法 の 理 想 のも と に 發 生 し た 現象 であ る。 經 濟 的自 由 主義 進 展 の 極 致 とし て 自 ら生 じ たも の で あ る 。 し かも そ の極致 にお い て

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契 約 の法理 は 、自 ら そ の 出 發 點 を 裏 切 つて自 由 なき 一 箇 の組 織 に轉 じ よ うと して い る。 し たが つて それは 個 人主 義契 約 理 論 の地 盤 を 全然 離 れ て、 制度 化す る傾 向を と るよ う にな つた。 三 第 一 次世 界 大職 後 におけ る 資 本 制經 濟 組織 にお け る 基 本 構造 は、 自由 經 濟 から 獨 占經 濟 へ 移 行 し たた め、 需給 均衡 の自動 的 調節 作 用 は停 止し てし ま つ た 。 すな わ ち獨 占 經濟 にお いて も營 利欲 は 強 く存 續 す るが 、自 由競 爭 は次 第 に 獨 占 によ つて代置 され る結 果 、 營 利 欲 と自 由競 爭 と の相 反 的な 力 の作 用 に よる價 格 の 自 動 變動 を媒 介 とす る需 給 の 自 動 的調 節 作 用は 行 わ れず 、獨 占 強 化 によ る價格 の自 由變 動性 喪 失 は、 一 た び 均衡 が破 毀 さ れて 恐慌 が勃發 す ると、 大戰 前 の如 く速 か に自動 的 に回復 さ れず 、慢 性 的 に 長引 かず には いな い。 かく て 國家 は政 治 上 の理由 から 機會 あ る毎 に企 業 に干渉 し、 保護 し、 助 成 す る。大 資 本主 義 の 基 礎 におけ るギ ル ド制 度 と いわれ るも のが すな わ ち それ であ る。 し かし な がら 獨 占經 濟 にあ つて は、 在來 のよ う な無数 の企業 主 體 におけ る 自 由 競 爭 によ つて釀 し出 され る社 會 經 濟 に おけ る ア ナー キ ーは克 服 され 廢棄 され る が、 そ の 代 り 金融 資本 が經 濟 の 全面 に絶 大 な優 越 性を 示す いわ ゆ る獨 占 的段 階 に 特 有 な 社會 經 濟的 矛 盾 の 發 生を 餘 儀 な く せし めら れ た。 すな わ ち獨 占段 階 にお いて は、 資 本 は自 ら の統 制組 織 を 通じ て企業 主 體間 にお け る自 由競 爭 を排 除 す る こ と によ つて、 破 壞 さ れ た均 衡 を回 復 す べき自 動 的 な力 を 喪失 す る こと にな つ牝 。 かく て獨 占 段階 には 自然 的な 均衡 回 復力 は存 在 し な い から 、 外 部 か ら の統 制 が當 然 に必 要 とな る。 いい か えれ ば 、 均衡 回復 のた め には 、資 本 によ る 統 制 の統制 が必 要 とな る。 ま さに この點 に統 制經 濟 が 獨 占的 經 濟 の 一 定 の段 階 に おい て生 じ たゆ え ん があ る ど いわな け れば な らな い ( 8 ) 。 し か も 統 制 經 濟 に おけ る經 濟 過程 に對 す る 外 部 から の 關 與 は 、 いず れも 國家 の統 制 立法 の 形 態 で法 とし て制 定 さ れ發 現 しな け れ ばな ら な い。 それ ゆ え統 制法 は 尨 大 となり 煩 瑣 に な つて、統 制 上 の機 構 も また 非常 に面 倒 にな らず には い な い ( 9 ) 。 次 に經 濟體 制 と して の 続 制 經 濟 は、 全體 經 濟 の發 展 の モメ ン ト すな わ ち生 産費 の低 下、 商 品 價格 の低減 、 國民 生 活 水 準 の向 上 とな つて 現わ れ るよ うな 社會 的 ・ 經 濟 的進渉 の モメ ン トを そ の體制 のう ち に具備 し て いな い。 從 つてそ の發 展 85

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財 産 のた め には 、 一 の 統 制 方式 を も つて發 展 の モ メ ン トを 創設 す るよ り ほ か に途 はな い。 この作 爲 的 な モ ・メ ン ト こそが 統 制 經 濟 立 法 に おけ る バ ラ ンスの弛 め の仕 組 であ る。 そ れゆ え 統 制 經 濟 立法 にお け る統 制 方式 は 一 の定型 を と る。 す な わち 多 く の 場 合 、統 制 立 法 は 一 方 に お いて は獨 占 體 の 統 制 力 を 促進 強 化 す るた め の 規 定 を 設 け、 他 方 に お いて は そ の 統 制 力 の強 化 に 甥 す るも のと し て、 会 益 的 立場 か ら す る獨 占體 に對 す る監 督 取締 を 嚴 格 なら し め る よう な規 定 を設 け て い る。 一 方 に 統 制 力 の 強 化 が あり 、 他 方 に いわゆ る公 益規 定 の強 化 が これ に 對 置 す るの が、 統 制經 濟立 法 におけ る 形 式 的 な バ ラ ン ス であ る ( 10) 。 か くし て獨 占 經 濟 のも と にお い て、 個 人 の自 由 な契 約 に 代 つて登 場 した いわゆ る契 約を 統 制 す る契 約 ( c o n tr a t d ir i g e a n t) の制度 化 は、 公 共 の福 祉 に 關 係 す る と ころ が大 き いから 、 こ れ に對 し て、共 同 經 濟 とし て の 國 民 經 濟 に おけ る需 給 の調整 を 目的 とす る觀點 から 干渉 が試 みら れ る こと にな つた 。 われ わ れは 個 人的 契 約 の自 由 一 般 に對 す る國家 的 統 制 原 理 の進展 のう ち に、契 約 の本 質 の轉 化 を見 出 す の であ る。 す な わ ち契約 の締結 およ び履 行 に 關 し て社 會 立 法 によ る 統 制 の行 わ れ る 經 濟 法 およ び勞 働 法 におけ る 契 約 にお いて、 も は や人類 の 利 己的 本 能 によ る合 理性 を も つて 社 會 進歩 の原動 力 とし て第 一 義 的 なも のと み る思想 を 棄 て去 つて、 こ れ を そ の 一 部 分 と して 包攝 す る 共 同 經 濟體 とし て の國 民經 濟 組織 の共 同的 合 理 性を 維 持 し發展 せ し める ことをも つて、 法秩 序 の 理想 とす る思 想 へ の轉 化 がみ ら れ る ( 11 ) 。 い い換 えれ ば、 契 約 を も つ て 、 觀 念的 に 自 由 にし て 平等 な個 人 の合 理的 思 惟 と行動 とに よ つて成 立 す るも のとな し 、 こ れ によ つて 成 立す る 法 律關 係を 確 保 す る ことを も つて國家 の 任 務 と す る 近 代法 の理想 か ら、 契 約 をも つて個 人 の有 機 的綜 合 から な る 共 同 經 濟社 會 に お いて、 各 個 人を し て そ の 職 分 に應 じ て全 能 力 を 擴 充 發展 せし め るた め に、 尊 重 せら る べき 法 的手 段 の 一 つと す る 考 え方 へ の 轉 向を み た と い わな けれ ば なら な い。 この契 約法 におけ る 合 理性 の轉 化 の 理念 的契機 は、 前 述 の國 民經 濟 構造 にお け る自由 經 濟 から 統 制經 濟 へ の 轉 化 と いう現 實的 契機 に照 應 す るも の にほ かな らな い。

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契 約 の法 理 い わ ゆ る規 制 契 約 ・ 強 制 契 約 ・ 命 令 契 約 の 登 場 は 、 契 約 を し て 財 の交 易 に關 す る 法 秩 序 の 技 術 的 な 一 手 段 と し て の 性 格 を 明 ら か な ら し め た 。 そ れ ら に お い て は 契 約 條 件 の 決 定 者 は も は や 契 約 當 事 者 で も な け れ ば 、 需 要 と 供 給 の 經 濟 法 則 で も な い 。 法 律 自 體 で あ り 、 契 約 内 容 の 公 正 な 調 整 を 標 榜 す る 公 權 力 自 身 で す ら あ る ( 12 ) 。 例 え ば 公 定 價 格 の あ る品 物 に つ い て は 、 公 定 價 格 に よ る の ほ か 賣 買 契 約 を な す こ と は で き な い。 ま た 勞 働 條 件 に つ い て は 、 法 定 の 基 準 に よ る の ほ か 勞 働 契 約 を す る こ と は で き な い ( 勞基法 一 三 條 、組 合 法 一 六 條 。) 。 す な わ ち 契 約 當 事 者 が 公 定 價 格 以 上 で 取 引 を 行 い 、ま た 法 定 基 準 以 下 の 勞 働 條 件 で 契 約 を し て も 、 そ れ ら 契 約 に よ る 價 格 や 勞 働 條 件 の 代 り に 、 法 定 の 價 格 お よ び 勞 働 條 件 に よ る 契 約 と し て の 効 力 を 生 ず る も の と い わ な け れ ぱ な ら な い 。 な ぜ な ら ば 契 約 の 内 容 が 法 定 さ れ て い る 限 り に お い て 、 そ の 契 約 の 自 由 は 廢 棄 さ れ た こ と を 意 味 す る か ら で あ る 。 そ し て 契 約 の 成 立 、 内 容 お よ び 終 了 に 至 る す べて の 過 程 が 、 、公 共 の 福 祉 ( 13 ) と い う よ り 高 次 な 理 念 に よ つて 規 制 さ れ る と こ ろ に 、 そ の 合 理 性 が 求 め ら れ る こ と に な つた ( 14) 。 ( 1) 拙 著、 ﹁ 經 濟 法 の 基 本 問 題﹂ 五 二頁。 ( 2) へーゲ ルは 婚姻 の 契 約 的形 相 にも か か わ らず 、 そ の 本 質 にお いて異 な るゆ え んを 次 のよう に説明 し て いる。 ﹁ 婚 姻 は契 約 關 係 を そ の本 質 的基 礎 とし な い 。 と い う わけ は、 婚 姻 は個 別 的 に獨 立な 人 格 の間 に結 ば れる 契 約 の立場 か ら出 發 し て、 し かも こ の 立 場 を止揚 す るも ので あ る。 ﹂ He g e l, G ru n d lin ie n d e r P h il o s o p h ie d e s R e c h ts , § 16 3. 中 川善 之 助、 ﹁ 身 分法 の基礎 理 論﹂ 一 九 一 頁 以下 参 照。 ( 3) ラ ード ブ ルツ フ、 ﹁ 個 人法 より 社 會法 へ ﹂ 、 橋本 文 雄 、 ﹁ 社 會 法 の研究﹂ 一 二 三頁 参 照。 ( 4 ) 拙 著 、 ﹁ 經 濟 法 の 基 本 問 題﹂ 一 七〇 頁参 照。 ( 5 ) 杉 山直 治 郎 、 ﹁ 附 合契 約 の觀 念 に つ いて ﹂ 、 法學 協會 雜 誌 四 二 巻 七 、 八、 九 、 一 一 、 一 二號、 末 川 博、 ﹁ 契 約 總論 ﹂ 三 一 頁 以下參 照。 ( 6) 石 碕 政 一 郎、 ﹁ 契 約定 型 と附 合契 約﹂ ( 杉 山教 授 還暦 祝 賀 諭文 集 ) 九 〇 頁 以下 参 照。 ( 7) 末 川 、 ﹁ 附 合契 約﹂ ( 法律 學 辞典 四 巻 二三 一 三頁) 參 照。

(23)

財 産 ( 8 ) 拙 著 、 前 掲 五 四 頁 參 照 。 ( 9 ) 有 澤 廣 巳 、 ﹁ 統 制 經 濟 の 問 題 ﹂ 四 八 頁 參 照 。 ( 10 ) 有 澤 、 前 掲 五 二 頁 參 照 。 ( 11 ) 我 妻 、 前 掲 八 頁 參 照 。 ( 12) 石 田 文 次 郎 、 ﹁ 契 約 の基 礎 理 論 ﹂ 一 〇 九 頁 以 下 參 照 。 ( 13 ) こ こ に ﹁ 公 共 の 福 祉﹂ と は 、 全 體 の資 格 に お い て 考 え ら れ た ﹁ 國 民 全 體 ﹂ の意 味 で あ る 。 そ れ は 社 會 全 員 と し て の被 支 配 者 から な る社 會 す な わ ち國 家 社會 と し て の價値 を現 わ し た も の であ る。 こ の價値 の 維 持 増 進 を目 標 と す る團 體 が支 配 者 から な る政 治 的 權力 團 體 とし て の國 家 團體 であ る。 拙 稿 、 ﹁ 法規 範 の全 體 規 範 的 性 格﹂ 、 季刊 法律 學 九號 一 頁 以下參 照。 ( 14) 契 約 關 係 終 了 に つ いて の 規 制 の 顯 著 な 事 例 を勞 働 契 約 に つ いてみ る こと が でき る。 勞働 契 約 のよう な 勞働 者 の 使 用者 に對 す る 經 濟的 從 屬 を伴 う繼續 的契 約 關 係 に お いては 、 當事 者 の 一 方 に契 約 を存續 せし め る こと のでき な い程度 の重 大 な信 義 則 違 反 の行 爲 が な いか ぎ り、 一 方 當 事 者 の 主 觀 的 な都 合 に よ つ て 、 勞働 契 約 の 解 約 告 知 をす る こと が禁 ぜ ら れ る 。 勞 働者 の 解 雇 に つ い ては告 知 一 般 に關 す る 理諭 は 適 用 さ れな いも のと いわ な け れば な ら な い 。 なお 勞 働基 準 法第 二〇 條 の 解 雇 豫告 の 規 定 を も つ て、 告知 に よ つて 勞働 契 約 を終 了 せし め るた め の 猶 豫 期 間 と解 す る 向 も あ るが 、 本 條 は第 一 一 九 條 の罰 則 と の 關 係 を示 す も のであ つて、 民 法 第 六 二七 條 の例 外 を規 定 した も のと解 す べ き で はな い 。 五  契 約 法 の 發 展 の基 調 自 由經 濟 におけ る私 人 の經 濟 的自 由 に對 應 す るも のと して の自 由契 約 は、 契 約 をも つて、 一 方 では 國家 の 側 から統 制 干渉 を被 る ことな く、 自 己 の欲 す るま ま に經 濟的 活動 を す る こ とが でき 、 他 方 では他 人 と平 等 の立場 に 立 つて經 濟的 交 渉 の でき る 私 人 の 財 貨 の 交 易 のため の法的 手段 たら し めた 。 か くて 各自 は ﹁ 契 約 の 自 由 ﹂ に よ つて自 己 の欲 す る よう な 仕 方 で法 律關 係 を 形成 す る こ とが でき た。 これ に よ つて さま ざま な 法律 關係 が、 そ の とき ど き の 經 濟 的事 情 の變 動 に應

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