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海の極小!いきもの図鑑 誰も知らない共生・寄生の不思議

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Academic year: 2021

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タクサ No. 50 (2021) 築地書館 2020年5月28日発行 176 pp. ISBN978–4–8067–1599–3 C0645 2,000円+税 誰も知らない世界,新たな生き物の世界を目にし たい…本誌の読者には,そんな好奇心を抑えきれず に日々の調査研究に没頭している方が多いのではな いだろうか.かくいう私も,学部の研究室配属時 に,直径わずか1 mm程度,微小で見つけにくいス ナギンチャク目未記載種に出会ったことで人生の方 向性が大きく変わった.いまだに,“誰も知らない” 生き物の世界を追い求め続ける生活を止められてい ない.本書には,小さく,しかし無限に広がる新た な世界が彩鮮やかに広がっていた. 本書の著者は,伊豆大島で年間500本以上の潜水 を行うネイチャーガイドとのこと.本書では,伊豆 大島沿岸で見られる体長数ミリから数センチの小さ な海洋生物たちの寄生・共生に関わる生態を,300 枚を超える写真に添えて紹介している.表紙カバー に紹介されている生き物の名前を見てみよう.「コ ケムシやゴカイ,カラフルなウミウシにホヤ,(中 略)イノチヅナアミヤドリ,そして新種のヨコエビ 類」,「カイアシ類,ウオノエ類,ムツボシウミクワ ガタ,オニナナフシ類」.私にとっては惹かれる名 前の羅列ではあるが,研究関係以外の知人との会話 でだそうものなら,秒速で話題を変えられること必 至なワードのオンパレードである.これが一般向け 書籍として市販されるのだから,すごい時代になっ たものだと感心させられる. ページをめくり,読み進めてみる.まず,特筆す べきは目次.そこに示されたテーマの多様さであ る.前書きに続くのが,「海洋生物の分類」.なるほ ど,より正確に,科学的な情報をもとに観察し撮影 した生き物たちの世界を社会に伝えようと苦心さ れ,限られた時間の中で様々な先生方と協力されつ つ制作されたであろうことは,本書の端々に見て取 れる.つづいて,「岩礁・岸壁の生物たち」「岸壁を 彩る生物たち」…と生息環境の一般的な説明がつづ き,8項目には,早くも(?)「マストを作り子育 てするキンシャクトリドロノミ」ときた.学会発表 以外では耳にすることが少ないだろう単語の羅列 に,まるでゲームだかSF映画だかの一場面の説明 でもされているかのうように感じる一般読者も少な くないかもしれない.目次を読み進めるだけでワク ワクしてしまう.以後,50以上もの,温帯浅海域 で目をこらせば観察することができるのだろう海の 生き物たちの共生・寄生など生態に関わるテーマが ずらりと並んでいる.この,見開き2ページの目次 の羅列を目にして感じる雑多さこそ,まさに生物多 様性を体現しているとも捉えられる.一方,ポップ な表紙に導かれて新たに海の「極小!」な生き物に 興味をもち,その世界を覗き見ようとしてくれる一 般読者に対しては,初っ端から難解な専門書にも見 えてしまうかもしれない.本書は,索引がないこと も相まって,環境や生物名から写真や解説を探すよ うな,一般的な図鑑のような使い方にはむかないだ ろう.環境や分類群ごとに大見出しをつけ,より馴 染みやすい章構成にして欲しかった,という気持ち もあるが,特に野外観察をすればするほど,(著者 も前書きにて述べているように)特定の生物の生息 環境を線引きできなくなることが多いのは大いに共 感するところがある.昨今では主流となっている体 系だった図鑑というよりは,面白生き物エッセーの ように読み進める,あるいはパラパラと多彩な写真 を眺めて楽しむ写真集,というようなイメージを もって本書を手に取れば,より楽しめるのではない かと思う. いざ,生き物たちの写真と解説ページを読み進め てみる.片側A5より少し小さいサイズの見開きに, 200 ~300字程度の解説と共に,本来は数cm四方で あろう極小!な生き物たちの生態写真が彩鮮やかに 紹介されている.そこに掲載されている写真はどれ も,そこに写された生き物たちの形態あるいは生態 海の極小!いきもの図鑑 誰も知らない共生・ 寄生の不思議 星野 修(著)

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タクサ No. 50 (2021)

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の面白さや背景に秘められたストーリーを感じさせ る.例えば,同じ“海藻表面に棲管を作るヨコエ ビ”に関しても,棲管から出かけるヨコエビ,棲管 が作られている基質の海藻,棲管の配置の俯瞰な ど,異なるスケールや角度で複数の視点からの写真 が並べられている.また別の例,貝形虫類のなかま ウミホタルの紹介.波間に妖しく光るウミホタルの 写真は過去に何らかの写真集で扱われていたかもし れない.しかし,その代名詞ともいえる光の風景は 一切使わず,砂に潜ろうとしている日中のウミホタ ルを掲載して「とても可愛らしい」(p. 118)と紹介 した書籍は過去に存在するのだろうか.筆者も若輩 者 で は あ る が, そ れ な り に 広 い 興 味 を も っ て ス キューバ潜水を重ねてきたつもりではあった.しか し,日中のウミホタルの姿は想像できこそすれ,実 物を目にしたことはなかった.脱帽.一方,偶然に も本書を読み進める直前に筆者自身が実物を前に感 動した生き物も掲載されていた.裏表紙でも名前が 挙げられている“アミヤドリ”のなかまである.小 さな甲殻類アミ.その甲殻表面にとりつく寄生性等 脚類のアミヤドリは,宿主の大きさに対して不釣り 合いなほど大きく(それでも,目をこらさないと見 えない小ささ!),一緒に潜っていた先輩研究者に 見せていただいた時には,そのえげつなさ,小さく 大きな異物を背負ったアミへの同情の念に感動した ものである.おそらく,著者も当生物に対して思い 入れがあったのだろう,豪華8ページを割いて,雌 にとりつく雄の行動や卵の発達などを紹介してい る.どのページで紹介されている生き物たちの姿か たち,生き様も,魅力にあふれている.本書を読み 終えた人同士で,その行動や性質の意味,実際に観 察した情報等々を語り合いたくなるものばかりであ る. 目次につづいて一点,残念な点があった.生き物 たちのサイズ感が伝わりづらい写真がある.解説文 に縮尺が付記されているものもあるが,そのスケー ルがどの部位の長さを指し示すものか初見の読者に は分からないかもしれない.写真の大きさを「1 cm 四方にひしめく…」とする説明は読者に“極小!” を感じさせるに十分だが,一方,縮尺に関する説明 がない生き物については,いかほどの小ささなの か,特に対象生物に詳しくない読者には伝わらない 項もあるだろう.野外で撮影した生態写真に縮尺を 当てる難しさは身に染みて感じるところがある.し かし,もし次作を刊行される機会があれば,「極 小!」ないきものたちの小ささと面白さがビシビシ 伝わる貴重な写真が並んでいるからこそ,「極小!」 を視覚的に理解してもらえるよう一工夫を期待した い. 掲載されている写真の裏には,膨大な量の未使用 写真,あるいは撮影にも至らず消費することになっ た潜水時間があるのだろう.掲載された情報はどれ も,著者の自然観察に対する視野の広さ,知識の広 さを感じさせる内容だった.「新たな出会いを求め て水中ではあらゆる生物に対して貪欲に観察を行 う.何よりも目の前の生物を「知る」ことが大切 だ」(p. 88).探している生き物がいっこうに見つか らず,大した成果も得られず潜水調査から戻って 「仕事にならなかった」としょぼくれている自分に, 改めて喝をいれたい.「ちなみに本書で紹介してい る生物のほとんどは普通に観察が可能な生物ばかり である」(p. 89).すぐ身近にある自然にも,未知の 世界が広がっている.早く,潜水器材をカバンに詰 めて,近場の海に出かけたくなってきた. 藤井琢磨 (鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)

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