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来し方行く末

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Academic year: 2021

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488 人 工 知 能  31 巻 4 号(2016 年 7 月) 我が国の情報分野の研究活動について,考えてみた い.1980 年頃,通商産業省の第五世代コンピュータプロ ジェクトが計画され,論理型推論と並列処理をコアに, 新たなコンピュータの研究活動が活発に行われた.ハー ドウェア,OS,言語,応用と全分野の研究活動が行わ れ,具体的な応用では,囲碁,法的推論などが取り上げ られた.その後,通産省は実世界プロジェクトを開始し, 2002年まで続いた.実世界知能分野と並列分散コンピュー ティングがその対象であり,情報統合・学習・自己組織 化などの技術開発をベースに,実世界で必要となる新た な機能としてマルチメディア相互検索,事情通ロボット などの実現を目指した.また,文部科学省では特定領域 研究として 2005 年から「情報爆発時代に向けた新しい IT基盤の研究」が開始され,新たなデータ中心科学の提 案が世界に先駆けてなされ,経済産業省の情報大航海プ ロジェクトでは,企業グループが諸メディアの解析や情 報活用によるイノベーションを目指した.また,JST の CRESTでは,開発時に完全を求めるのではなく,利用 時も含めてシステムを常時発展させるコンセプト Open Systems Dependabilityを 2006 年から 2014 年にかけて つくり上げた.さらに,ビッグデータの次世代基盤技術 プロジェクトが 2013 年に開始し,現在活動中である. この間,世界では,1990 年代には PC,インターネッ トの大きな進歩があり,世界のビジネスはそれを駆使し て発展した.論理型推論のみであらゆる知能を実現する ことの困難さが意識され,1990 年代半ば頃から,デー タマイニングにより大規模データから知識を抽出すると いう手法が注目された.一方,2012 年には Google が深 層学習機構に,ネコ画像を多く与えることで「ネコ」認 識を実現して世界を驚かせた.従来のパターン認識では 大変困難な問題だったからである.さらに,2016 年には, 同じ Google のシステム AlphaGo が,膨大な棋譜データ と自己対戦による研さんにより,囲碁で世界のプロを打 ち負かした.そして今,「今後は,IoT, AI, Big Data の 時代だ」というキーワードが世界的に蔓延し,我が国で も 2016 年現在,いくつかの関連活動が始まっている. これを俯瞰するに,我が国は世界から見ても新しいコ ンセプトに基づいた基礎研究をやってきた.しかし,そ れがビジネスとして大きく世界で伸びたかというとそう ではなく,プロジェクトが終わるとすぐにその関連活動 が終わっている. ITの世界では特に,世界で 1 位になることで世界の 富を吸収する.Amazon, Google, Apple 然りである.米 国では事業を立ち上げる場合,当初から世界市場を対象 とするものが多いのに対し,日本では日本市場が最初の ターゲットで,世界に打って出るのが 1 テンポ遅い. またここ 10 数年の情報系研究に投資される研究費も 著しく減少した.そして今の流行が来た.世界と逆フェー ズになっている.Google のネコ認識が素晴らしいのは, ニューラルネットワークの研究を継続して行ってきた 人々がいたことである.基礎研究はより長期的な視点や 投資が必要で,十分な余裕がないところに継続を求める のは難しい.基礎研究の継続は,いわばさまざまな豊か さからくる余裕の結果である. 今後,「世界的な流行」の研究が進み,さまざまな成 果が出るであろうが,その先に「汎用人工知能」という ターゲットが云々されている.汎用の意味にもよるが, これは一筋縄ではいかない問題だと思う.この実現を深 層学習のみで早急に目指すと,その困難さにまたもや挫 折が起きかねない.機能を人が使いこなすには,その機 能の意味を人が言葉で表現し理解することが有用な場面 もある.その意味でプログラミング言語,なかんずく論 理型言語との組合せによってさまざまな知能を実現して いく方法は,相補的で着実な工学的手法ではなかろうか. 21世紀に入って,サイバー攻撃が面倒な問題となって きた.一説には,それが 21 世紀最大の問題だともいわ れている.スマホやセンサの増加は,それに拍車をかけ ている.しかし,サイバー攻撃の裏には攻撃者としての 人がいる.人と人の戦いである.人工知能の発達はそれ に大きな影響を与えるであろう.しかし,国際間連携, 法制度などの支援のもとに技術を積み,その先に,安全 で信頼できる素晴らしい社会が来ることを期待したい. 「創設 30 周年記念特集─歴代会長随想─」

来し方行く末

第 6 代会長 

田中 英彦

(情報セキュリティ大学院大学) 田中 英彦(名誉会員) 1970年東京大学大学院博士課程修了.工学博士.東京大学工学部教授, 同情報理工学系研究科教授・研究科長を経て,2004 年情報セキュリティ 大学院大学教授・研究科長.2012 年同学長.計算機アーキテクチャ,知 識処理,ディペンダブル情報システムなどに興味をもつ.著書に「非ノ イマンコンピュータ」(電子情報通信学会,2004),「Parallel Inference Engine」(IOS Press, 2000)など.情報処理学会名誉会員,電子情報通 信学会フェロー,IEEE ライフフェロー.1996 ~ 97 年度本学会会長.

著 者 紹 介

参照

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