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高出力緑色レーザ用波長変換デバイスの作製に成功

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Academic year: 2021

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高出力緑色レーザ用波長変換デバイスの作製に成功

平成16年3月23日 独立行政法人物質・材料研究機構 [概 要] 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)、物質研究所(所長:渡辺 遵)、 光学単結晶グループ(ディレクター:北村健二)の栗村 直主任研究員らのグループは、 定比組成タンタル酸リチウム(Stoichiometric LiTaO3:SLTと略称)結晶内のドメイン (分域)1)を制御することで、高出力緑色発生用の波長変換デバイス2)を作製し、シング ルパスで平均出力 4.4 ワット(W)という高出力を実現した。従来よりも小型・低消費電 力なレーザディスプレイへの応用やアルゴンレーザの小型化などが期待される。将来的に は、現在家庭およびオフィス内で使用されている液晶プロジェクタが、より小型・低排熱 で利用できることになり、次世代大画面テレビへの展開も期待できる。 光学単結晶グループでは、従来から強誘電体3)単結晶を用いて、分極反転構造4)による 波長変換デバイスの材料とデバイス開発で世界を先導してきた。しかし、従来の強誘電体 単結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO3:LNと略称)やチタン酸リン酸カリウム(KTiOPO4: KTPと略称)を用いた波長変換デバイスでは、高出力波長変換時に熱によるビーム形状 の劣化や出力不安定が起こるなど、システム化に向けて問題を抱えていた。 今回、SLTに周期分極反転構造を周期 8μm で作製し、厚さ 1 mm の波長変換デバイス を実現した。SLTでは、材料の熱伝導率が高いことから、熱の散逸が大きく、高出力時 の安定性が向上した。この結果、レーザディスプレイなどで要求される 1 Wレベルを超え て、緑色光で 4.4 W出力が得られた。また、厚さ 1 mm と厚いデバイスが実現できたことで、 ビームの調整も容易になることから、モジュール化の際のコストも低下できるものと思わ れる。 なお、本研究成果は、3月28日から東京工科大学(東京都八王子市)で開催される応 用物理学会で発表される予定である。 1.研究の背景・経緯 半導体レーザや固体レーザの波長領域拡大は、レーザの応用分野を大きく拡げる。GaAs 系半導体レーザでは赤色レーザが、GaN 系半導体レーザでは青色レーザがそれぞれ実現され てきたが、光の3原色の残る一色である緑色は実用的な半導体材料に乏しく、高出力が得 られていない。一方、次世代テレビとして注目されているレーザディスプレイ(図1)な どでは、緑色で 1 W以上の出力が必要とされており、現在の半導体技術では実現が難しい。 従来のレーザディスプレイでは、ガスを用いたアルゴンレーザが使用されており、長さ 1 m 程度の消費電力の大きいレーザが用いられてきた(図2)。近年、波長変換技術を用いてア ルゴンレーザ(波長 514 nm、488 nm)を小型化する動きがでてきているが、波長変換デバ イスとしてはダメージや安定性の観点からホウ酸リチウムが用いられている。

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近年、これらのレーザ光の波長変換には、ホウ酸リチウムよりも大きな波長変換定数をも つLNやLTとといった強誘電体結晶の利用が検討されている。これらの強誘電体結晶は、 原子配列の、ある特定の方向に偏り(分極)を持っており、その偏りによって、その特定 方向の両端にプラスとマイナスの分極を示す。この分極は電界をかけると部分的に反転す ることができる。そこで、非常に大きな波長変換定数をもつLNやLT結晶に周期的な分 極反転構造を形成すると、効率よく入射レーザ光の波長を変換することができる。 今回のSLTを用いると、波長変換定数をホウ酸リチウムの約 10 倍にできることから、 入射レーザのパワーを 1/10 に抑えることが可能となり、低消費電力で駆動することができ る。入射レーザのパワーを低減できれば、レーザから排出される熱を低減させることがで きるようになるため、水冷システムが不要になり、実用上は非常に有用な技術である。共 振器内で波長変換する場合にも共振器内に閉じ込めるパワーを低下させることができるた め、より小型で安定な波長変換が実現できる。 また、上記緑色レーザにかかわらず高出力レーザの波長変換では、レーザ光の吸収によ る波長変換デバイスの熱擾乱が出力の制限要因となっている。従来も周期分極反転を用い た波長変換デバイスは報告されており、変換効率としては既に飽和の域に近いものの、熱 擾乱のために安定的な出力が得られず、ビームの品質も悪かった。このため、高効率、か つ安定性の高い材料が求められていた。 2.今回の研究成果 これらの波長変換の効率を上げるために、波長変換材料の自発分極(磁石の自発磁化N、 Sに対応する電気の+、−)を反転させる方法が、近年栗村らのグループを中心として報 告されてきた。電極を任意のパターンに加工した後に高電圧をかける方法で、これは栗村 らが 1992 年に世界で初めて提案した方法である。波長変換材料に周期的に分極反転構造を 施すことで、変換効率を格段に向上させることができる。 今回、波長変換材料として光学単結晶グループで開発された定比組成タンタル酸リチウ ムを用いて、波長変換デバイスを作製した。この材料は分極反転に必要とされる電界が従 来材料の 1/3 ∼1/13 と低く、厚いデバイスによる大断面積化が容易である。また、従来の 波長変換デバイスと比べて熱伝導率が約2倍以上の8W/mK(ワット・パー・メートル ケルビン)であるため、熱の散逸に優れ熱的安定性に優れる。 SLTは既に中赤外域への波長変換デバイスとして物質・材料研究機構発ベンチャー企 業 SWING から販売を開始している。しかし、分極反転電界が低いため、電界の精密制御や 加熱冷却プロセスの改善が必要であった。適切なデバイス作製パラメータを選択すること で分極反転構造の微細化が可能になり、周期 8 μm をもつ波長変換デバイスが実現できた。 また、低分極反転電界材料の分極反転特性が明らかにされたことで、誘電体物理への波及 効果も考えられる。

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作製された分極反転構造の写真を図3に示す。周期 8 μm の構造が厚さ 1 mm のウェハの 両面に作製されており、高いアスペクト比をもっていることがわかる。厚さ 1 mm が実現で きたことで高出力緑色発生の可能性がでてきた。この周期分極反転構造にレーザ光を入射 し、シングルパスの第二高調波発生5)による波長変換実験を行った(図4)。波長変換素子 では変換可能な波長は周期と対応し、周期 8 μm において室温付近で波長 1.06 μm の赤外 レーザを 0.532 μm の緑色レーザに波長変換できた。緑色光出力は約 4.4 Wにも達し、レ ーザディスプレイへの応用においても有力な候補と考えられる。 3.今後の展開と波及効果 従来の周期分極反転型波長変換デバイスでは、強誘電体LNやKTPが用いられていた が、高出力時の安定性やビーム品質に難があり実用上問題があった。今回の成果により緑 色領域では高出力波長変換が実証されSLTが高出力材料として有望であることが示され た。SLTは紫外領域まで透明な材料であり分極反転周期を短くすることで青色光や紫外 光の発生にも対応できるため、今後ドメインを微細制御してさらなる短周期を目指したい と考えている。 高出力の緑色レーザ波長変換デバイスは、半導体プロセスにおけるトリミング工程の高 速化、小型高出力緑色レーザを光源とした小型紫外光源への応用、レーザプリンタのマル チビームによる高速化など、様々な応用が考えられ波及効果が大きい。 <用語解説> 1)ドメイン(分域) 結晶内で異なる自発分極をもつ領域。電気的なプラス、マイナスをもつため、電界をか けることで制御することができる。 2)波長変換デバイス レーザ光の波長をさまざまな光学現象により異なる波長に変換するデバイス。レーザデ ィスプレイや光通信では次世代技術として重要視されている。 3)強誘電体 電界をかけなくても結晶の構造から自発的に電気分極をもつ材料。強誘電体の自発分極 は、一般に自発分極と反対方向に電界をかけることにより、分極の方向を反転させること ができる。

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4)分極反転構造

強誘電体の自発分極を反転させた構造。周期的な分極反転構造を作製すると、レーザの 波長変換デバイスとして動作する。定比組成タンタル酸リチウム(LT)では、分極反転 構造による電界が従来材料よりも低いため、厚いデバイスを作製するのに有利である。 5)光第二高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)

入射したレーザ光の2倍の振動数(波長半分)をもつ光(第二高調波)を放射する現象。 レーザの短波長化に利用され、低いエネルギーのレーザ光から高いエネルギーのレーザ光 をとり出すことができる。 (問い合わせ先) 〒305-0047 茨城県つくば市千現1−2−1 独立行政法人物質・材料研究機構 広報室 TEL:029-859-2026 (研究内容に関すること) 独立行政法人物質・材料研究機構 物質研究所光学単結晶グループ 主任研究員 栗村 直(くりむら すなお) TEL:029-860-4365(ダイヤルイン)、029-860-4692(オフィス)

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図1 レーザディスプレイの使用例 図2 レーザディスプレイの装置例

図3 厚さ 1mm を貫通する高アスペクト比分極反転構造

図4 波長変換デバイスによる緑色光発生

参照

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