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ACMチューリング賞50周年記念大会:チューリング賞に関して感ずること

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Academic year: 2021

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(1)小特集 ACM チューリング賞 50 周年記念大会. 《コラム》. チューリング賞に関して感ずること 喜連川優(国立情報学研究所/東京大学). 996. 2013 年 ACM フェローを授与された際にサンフ. グ賞は「理論研究」が多いと感じられる賞であるが,. ランシスコで開催された ACM の式典に出向いた.. トランザクション処理システムにおいて多大な貢. この式典ではかなりたくさんの賞が次から次へと授. 献をした J. Gray 氏が受賞した際には,理論ではな. 与されるが,その中で最も立派な賞がチューリング. く,「システム」の研究で初めての受賞者とデータ. 賞であることは言うまでもない.年によって異なる. ベース業界では話題となった.DEC, Tandem, IBM,. のかもしれないがその年は Intel と Google がスポ. Microsoft を始め多くの企業において実システムに. ンサーだったようで,お祝いの言葉が Intel 社から. おける豊かな経験を有する同氏の研究のテイストは. 述べられたことを記憶している.米国の経済成長の. きわめて華麗で,常に深い味がある.いかなる障害. 25%は IT によるという米国政府の見解が出ている. からも回復を可能とするトランザクションというフ. が,大手企業がしっかりとこの歴史ある IT の頂点. レームワークは今日の IT システムに非常に大きな. となる賞を支えている.ACM には企業名を冠した. インパクトを与えたと言える.ずいぶん前に彼を訪. 賞ももちろんある.チューリング賞においてはスポ. 問した際,議論を始めようとすると次から次と電話. ンサーが自社の名前を出さないところがなんとも奥. がかかり,現場に密着している迫力を感じたが,電. ゆかしい.日本においても同様の構図を本会がプロ. 話の線をひっこ抜いて,若い日本人に向かって, 「さ. デュースできないものかと感ずる.筆者が会長時代,. あ,これからは君の時間だ.話そう!」と言ってく. 種々案件であまりに忙しくそこまで手が出なかった. ださった温もりのある顔は今でも忘れられない.. ことが残念である.. 加えて,M. Stonebraker 氏もユニークであった.. もう 1 つチューリング賞について記憶すること. 同氏の受賞講演の際,その友人が,チューリング賞. について述べる.筆者はデータベースを研究領域と. に最も近い研究のスタイルは 1 つのことを深く長. するが,この領域においては近年では,1998 年に. く掘り下げることであるが,M. Stonebraker 氏は. Jim Gray 氏が,2014 年に Mike Stonebraker 氏が. 関係データベースに関してとてもたくさんの要素技. 受賞された.受賞講演の場として好きな国際会議. 術を生み出し,このスタイルのチューリング賞は. を選択でき,ACM の主催には限らないようである.. 初めてだと祝辞を述べた.POSTGRES(後に Post-. J. Gray 氏 は IEEE ICDE で,M. Stonebraker 氏 は. greSQL) は最初の大規模オープンソース データベー. VLDB(International Conference on Very Large. スソフトウェアである.オープンソースという言葉. Data Bases)で講演をしたが,筆者はお二人のファ. が生み出される以前に巨大なコードベースを大学が. ンでもあり両名の受賞講演に参加した.チューリン. 構築しオープンにした.多様な機能を次々と組み込. 情報処理 Vol.58 No.11 Nov. 2017.

(2) 小特集 ACM チューリング賞 50 周年記念大会. みながら育てたため,必然的に色々な要素技術を作. けている点がすばらしい.未踏領域に取り組む新し. らざるを得なかったとも言える.M. Stonebraker. いプレイヤにとっての憧れを生み出し続けているの. 氏は J. Gray 氏の優しさとは異なり,日米摩擦まっ. である.その維持に費やされる多大な努力に頭が. さかりの 80 年代に最初に会ったときは相手にして. 下がる.. くれなかったが,晩年になり,仲良く話をしてくだ. 本会は従前,産の会員が学のそれに比べてずっと. さるようになった.POSTGRES は非常に多くのユー. 多かったが,最近では,逆転している.産と学がよ. ザを生みその貢献は計り知れない.. り有機的に共創すべく,過去の研究の貢献の本質を. 受賞者の貢献をどのように考えるかはほかの大き. 議論することは実は互いの立場を理解するうえで非. な賞でも多様かつ深い議論があり大変な作業である.. 常に有益と感じる.チューリング賞に学ぶところは. チューリング賞においても,深淵な議論がなされて. きわめて大きい.. いるものと想定される.IT なる研究領域は進化が. (2017 年 9 月 5 日受付). 著しく激しく,賞の基準の設定は悩ましいところで はないかと推察される.一般に理論研究は従前の水 準との差分が明快であるのに対し,システムに関連 する研究はその貢献を明確化するのは大変難しい. チューリング賞の対象領域がそのような困難を乗り 越え,システム技術を評価し,しっかりと進化し続. 喜連川優(正会員) [email protected] 1983 年東大工学系研究科情報工学博士課程卒業,工学博士.1984 より東京大学生産技術研究所に務める.現在教授.2012 年より国 立情報学研究所所長.本会第 27 代会長.. 情報処理 Vol.58 No.11 Nov. 2017. 997.

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