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第2章 必修教科等の研究 4 理科 科学的な思考力・判断力・表現力を高める理科学習の展開―身近な素材を利用した,課題解決方法を生徒自らが考案する授業―

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Academic year: 2021

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理科 

4 理科

 

科学的な思考力・判断力・表現力を高める理科学習の展開

 ―身近な素材を利用した,課題解決方法を生徒自らが考案する授業― 多田 尚平               1.はじめに  㻌 いかにして生徒の科学的思考力を伸ばすかという 命題は理科教育の最も重要な課題である。この課題を 解決するために,これまで多くの教具が開発され,教材 や教育方法が研究・開発されてきた。並行して,学問と しての理科も発展してきた。科学史を振り返ってみると, 科学者達は観察や実験を繰り返し,自然の仕組みを解 き明かしてきた。今日でもそれは変わらない。科学者達 が日々繰り返している営みは,「課題→仮説→観察・実 験→考察→新しい課題」の流れで行われる。仮説を立 てて,観察・実験を行って,結果が示すことを判断して, あるときは帰納的に,あるときは演繹的に,課題となる自 然現象に潜む法則を見出していくのである。 㻌 学校教育における理科は,すでに発見されている科 学の法則を追体験しながら学習していくという側面があ る。そこで,過去の科学者達と同様に,課題の解決法を 生徒自らが立案し,検討しながら観察・実験することで, 教師や教科書の指示に従って行うよりも,生徒の印象 に残り,考察をスムーズに行うことができるのではないか と考えた。そこで,昨年度,3年生を対象に自分で課題 解決につながる観察・実験を立案させ,本当にその方 法で課題解決ができるのか判断させて,観察・実験を行 わせることで,考察するのにあまり抵抗なく取り組めそう だということが見えてきた( )。 㻌 そこで,今年度は1年生を対象に,この生徒達が卒業 するまでの3年間,継続して,この方法を取り組ませるこ とを考えた。3か年の初年の本年度は,身近な素材を扱 う単元について,課題解決をできる観察・実験の方法を 生徒自ら立案させて,課題解決できるか判断させ,観察 ・実験を行わせ,結果を考察させる授業を行った(図 1)。           2.研究仮説  課題を解決する方法を生徒自身に立案させ,互い に検証させて観察・実験させることで,考察が深ま り,科学的な思考力・判断力・表現力が高まるだろ う。その際,身近な材料を使うと意欲が高まって効 果的だろう。  3.対象の単元  1年生の単元のうち,身近な素材を用意しやすい 単元として,「植物の生活と種類」と「物質のすが た」を選んだ。植物は校庭に生えているものであり, 小学校時代から植物の栽培の経験が豊富である。「物 質のすがた」の単元は,身近なものを「物質」とと らえて分析的にみていく単元で,中学生になっては じめて「分析」を体験させる単元でもあるので,仮 本論の要旨  科学史をひもといてみたとき,先人達は,仮説を立て,観察・実験の方法を考案し,結果から仮説を検 証して考察するプロセスを何度も繰り返す。これを「科学の方法」と名付け,そのまま生徒の学習に適用 して,観察・実験を行うことで,結果の考察がスムーズに進められることを見いだした。今年度は身近な 素材を利用しながら,課題解決の方法を生徒自らに考案させて,方法の合理性や妥当性を互いに協議させ てゆさぶることを念頭に置いて,授業を展開した。1年生の初めから意識的に科学の方法を授業に取り入 れて,くり返し体験させることで,課題に対する姿勢が変わり,観察・実験に能動的に取り組み,課題を 解決する力が伸びてきた。  特に,植物の生活と種類の単元では,身近な素材として,ドクダミを用いた。ドクダミは生徒にとって 馴染みのあるよく知っている植物であるのにかかわらず,理科の授業ではほとんど触れられることがなか った。教材として使えるか検討したところ,植物の学習のほとんどに活用出来ることが明らかになった。 キーワード 科学的な思考力・判断力,観察・実験の方法の計画,「科学の方法」,ドクダミ 図1 科学の方法を使って授業を行うイメージ — 52 —

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理科  説を検証するのに適していると考えた。  4.植物の生活と種類の単元  「植物の生活と種類」の単元では,ドクダミを教 材とすることを試みた。  ドクダミは,校地内に多く生えている植物である。 地下茎で分布を広げ,分断された地下茎から新たに 発芽出来るほど繁殖力が旺盛な性質がある。いわゆ る「雑草」として扱われる。生徒にとっては,「校 庭園整備作業で,引き抜かなければいけない草で, 臭い植物」という認識である。臭いが特徴的で,目 立つ形をしているので,印象に残りやすい植物であ る。他の植物名を知らなくても,ドクダミは同定で きる生徒が多い。 (1)教科書におけるドクダミの扱い  中学校理科の授業でドクダミが登場するのは, 年生の始めの方の授業だけである。具体的な植物の 学習に入る前に,理科の学習の導入として,校地内 の植物分布を調べる実習を行う。その際に,日陰を 好む植物として紹介される。その後は教材として全 く登場しない。植物の教材としては,ホウセンカ, トウモロコシ,ヒメジョオン,オオカナダモがよく 用いられる。ドクダミは,生徒にとって印象的な植 物で,かつ,校地内に豊富にあるにも関わらず,教 材としてはほとんど触れられない。 (2)ドクダミの教材化  ドクダミを教材にするにあたり,障害になるのが, 独特の臭いである。においの元はアルデヒドである ので,使用する直前まで水につけた状態に保つこと にした。また,植物体を傷つけると臭いが出るので, 丁寧に取りあつかうことにした。この  点に気をつ けるだけで,臭いについては気にならない程度に抑 えることができるようになった。 ①葉脈の観察  被子植物の葉脈は平行脈と網状脈に分けられる。 一般的には,葉脈の観察はサクラの葉やイネ科の植 物が用いられる。ツバキの葉やヒイラギの葉で葉脈 標本を作製することもよく行われる。網状脈のドク ダミでも同様のことができるか実験を行った。まず, アルカリで処理して,葉脈標本作りを試みたが,ド クダミの葉は大変柔らかく,かつ葉肉がはがれやす くて,断念した。しかし,パイプ洗浄剤を用いて, 脱色すると,葉全体が半透明になり,葉脈の観察が 容易になった。 ②:維管束の観察  維管束の観察には,ホウセンカやトウモロコシが よく用いられる。アスパラガスも入手のしやすさか らよく用いてきた。ドクダミは根のつくりが主根と 側根からなるので,維管束は茎の断面に輪のように 並ぶつくりをしている。維管束用の染色液を使って 染め,観察を試みた。その結果,他の植物と同じよ うに維管束(特に道管)を観察することができた(図 2)。          ③蒸散の実験  蒸散の実験は,ワセリンを塗る条件や葉の数なd の条件を検討する必要があり,中学生で初めて条件 整備の学習材料にもなるものである。葉の大きさと 数を揃えて,条件を整える必要がある。一般的には 葉の大きなイタドリやアジサイが用いられる。ドク ダミは茎の生長が同じだと,葉の大きさもおおよそ 同じになるので,植物体の条件を揃えるのが手軽に できる長所がある。また,イタドリやアジサイは蒸 散が盛んなので,変化がすぐに分かるのが良いが, 変化が速すぎるとも言える。ドクダミは旺盛な蒸散 はないが,ゆっくりと変化するので,じっくり準備 が出来る(図3)。  数日かけて試験管の水位が徐々に違ってくる。葉 の裏にワセリンを塗った物は全く水位が変化せず, 気孔が葉の裏に偏っていることが予想された。         ④気孔の観察  気孔の観察はその簡便さから,ツユクサがよく用 いられる。ドクダミを使って観察を試みたところ, 葉が柔らかく薄いのが幸いして,プレパラートを作 らなくても,十分に観察することができた(図4)。  観察してみると,蒸散の結果からも推測されたよ うに,葉の表側には気孔が全く見られず,裏側に多 数の気孔を見ることができた。低倍率で見ると,び っしりと気孔が並んでいることがよく分かり,倍率 を上げると,孔辺細胞などをはっきりと見ることが 図2 ドクダミの茎の横断面(×) 図3 蒸散の実験 — 53 —

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理科  できた。          蒸散の実験と気孔の観察を抱き合わせて授業を行 った。蒸散の実験の準備に数週間かけたところ,葉 の裏にワセリンを塗ったものだけが枯れてしまっ た。そこで,ドクダミの様子をそのまま生徒に見せ, 違いの原因を考察させた。小学校でも蒸散について は学習してきているので,気孔の分布の差に注目す る生徒が多かった。前述したとおりドクダミは校地 内にたくさん生えているので,すぐに材料を手に入 れて観察させることができた。  表裏で気孔の数が極端に違うので,気孔から蒸散 が行われることを理解するのも大変スムーズにでき た(図5)。                  ⑤光合成の確認実験(葉緑体の観察)  一般的にはオオカナダモを使って,光合成が葉緑 体で行われていることを,ヨウ素デンプン反応によ って確かめることが多い。気孔の観察の際に,葉の 表皮細胞の葉緑体が顕微鏡下でよく観察できること が分かったので,ドクダミでも葉緑体におけるヨウ 素デンプン反応を観察できるか試みた。オオカナダ モを使った実験と同様にエタノールで脱色してヨウ 素液をかけると,葉緑体が染まる様子を確認するこ とができた。少しの光でも光合成をすることができ るようで,授業の直前に少し太陽光に当てるだけで はっきりと確認することができた。 ⑥細胞分裂の観察  ドクダミは冬季には地下茎を残して葉や茎は枯れ てしまう。そこで,地下茎を掘り出し,短く切って シャーレの中で水を与えて室内で2週間ほど置い た。すると,新しい根が出てきた。そこで,一般に はタマネギの根で行われる細胞分裂の観察をドクダ ミに変えてできないか試みた(図6)。          タマネギと同じように,塩酸で処理して,酢酸カ ーミン溶液で染色して観察した。その結果,核が2 つになっている細胞を確認することはできたが,タ マネギに見られるような分裂中の細胞を見付けるこ とができなかった。注意深く根の生長を見守ること で発見することが出来ると予想される。  ドクダミと同じように,ヘビイチゴも校内によく 見られるので,同様にして教材化を検討したが,ド クダミの方が植物体の構造が丈夫であり,ヘビイチ ゴでできてドクダミでできない実験が見当たらなか ったので,ドクダミの方が幅広く利用できそうであ った。ドクダミを使って,一連の植物の学習を行う ことで,系統立てて学習を進めることができた。学 習内容ごとに対象の植物が変わるよりも,同じ植物 を使い続ける方が学習内容を関連付けて理解させや すいと予想されるので,今後,他の植物でも活用で きないか探ることは価値がありそうであった。   本年度,植物の授業ではドクダミを多用した。葉 脈の観察,蒸散の実験,気孔の観察,光合成による デンプンの確認を全てドクダミで通した。当初の予 想どおり,生徒たちは,どれがドクダミかよく知っ ていて,摘んでくるように指示すると,嬉々として 摘んできた。つぶすとにおいがするが,優しく扱う と大丈夫であることを伝えると,その通りにして, 観察・実験に臨む姿が見られた(図7)。  一般に生徒は,極端に大きい物や小さい物や少し 臭い物が好きであるが,ドクダミはうってつけであ った。「臭い臭い」と言いながらも楽しそうに観察 していた。  図4 ドクダミの気孔(×100) 図5 ドクダミの気孔を観察した生徒ノート 図6 地下茎から生えた新しい根 — 54 —

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理科           5「物質のすがた」から,プラスチックの授業実践   (本校研究協議会の研究授業として実施)  プラスチックは,私たちの身のまわりにありふれ ている。身近な物質であるプラスチックの性質を調 べさせるにあたり,様々なプラスチックの熱可塑性 の度合いの違いや燃え方の違いに注目させて,プラ スチックには多くの種類があることに気付かせるこ とを目指した。  この単元は,年間指導計画の中で,最初の化学分 野であった。観察・実験の方法を自分達で考案して 取り組む授業には,生物・地学分野よりも物理・化 学分野の方が適していると考えられる。何を見るか あらかじめ決まっている観察よりも,色々な試行錯 誤ができる実験の方が方法を考案する甲斐があると 考えられる。そうした実験が多いのは物理・化学分野 だからである。そこで本単元では,昨年度考案した 逆台形チャートを活用して,方法を考案させる授業 を行った(図8)。この思考ツールは昨年度も使用 したが,日常的に使用することができなかったので, 思考ツールの活用に生徒が慣れていなかったという 反省があった  。そこで,本年度では,生徒に方 法を考案させるのに適していると考えた単元では, この思考ツールをよく使用するようにして,生徒が 戸惑わずに使いこなせるように留意した。           単元に入る前に,直前の「有機物・無機物」の単 元で,プラスチックを有機物の一つとして取り上げ, ポリエチレンを例に,燃えて二酸化炭素が出ること を確認させた。プラスチックの単元の授業は,2時 間を計画し,1時間目を本校の研究協議会の研究授 業として実施した。  授業の目標は次の通りである。  プラスチックの性質を調べる実験を計画し,行う ことができる。  身近に使われているプラスチックの性質の違い を見出すことができる。   授業の展開は次の通りである。  学習内容・学習活動 導 入 1.宿題(「身のまわりでプラスチックが使われていな いものを挙げよう」)を発表する。㻌 㻌 ・窓ガラス㻌 㻌 鍋㻌 㻌 蛇口㻌 など㻌 㻌 2.プラスチックが使われていない所はどんな所か,使 われている所との違いを挙げる。㻌 㻌 㻌 㻌 例:熱がかかるところや大きな力がかかるところに はあまり使われない。㻌 展 開 3.自分の考えをノートに書く。   例:「チン」したら柔らかくなったから弱い。    鍋の取っ手は強いから,種類による。                   等 4. 意見交流する。  5. 日常生活にある「熱」で,プラスチックを調べるに はどうすればよいか,方法を考案する。    例:熱湯につける。      火に入れる。      油に入れる。 など ゆ★本当に確かめることができるか,検討させる。 6. 熱湯に入れる実験と火に入れる実験を行う。 7. 実験結果を交流し,考察する。  ま と め  8.水やエタノールに浮いたり沈んだりする性質があ ることを知る。  この授業で,どんな実験をすればプラスチックが 熱に強いかどうかを判断できるのか生徒に試行錯誤 させる時間を設け,実験させることができたのは成 果であったが,課題も残った。生徒に身のまわりの プラスチックに注目させて,高熱になるところには あまり使われていないことを思い出させるところか ら始めたいと考えていた。ところが,生徒の思いは, 「軽い」,「丈夫」というところに向かい,熱につ 身の回りのプラスチックは熱に弱いのだろうか。 身の回りのプラスチックは熱に弱いが,熱湯 には強いものもある。 図8 逆台形チャート 図7 ドクダミで実験に取り組む生徒 — 55 —

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理科  いてはなかなか意見が出なかった。前時にポリエチ レンを燃やす実験をしてしまったことも影響したと 考えられる。また,「熱に強いか」という課題につ いても,大変曖昧で,基準がはっきりしないので, 自分の考えを出すのに,生徒が戸惑ってしまってい た。  授業後の協議会で,参会者からは,プラスチック の扱いについて, ◯日常の物につなげようとしていたのが印象的だっ た。そのものをそのまま燃やしても良かったのでは ないか。 ◯プラスチックを2種類くらいにしぼって進めても 良かったのではないか。盛りだくさんだった。 ◯生徒の関心を引くために,あらゆるプラスチック を紹介し,違いがあることを紹介して,「調べたい」 という動機を高めることで,学習がスムーズに進ん だのではないか。 という意見が出た。 また,授業の進め方について, ◯熱の定義を押さえなかった。何℃から熱に強いと するのか。 ◯熱と燃やすは違うのではないか。同じ扱いにして よいのか。 ◯実験の進度に班ごとの時間差が大きかった。時間 を区切って進めると良かったのではないか。 ◯教師の「判断をゆさぶる」場面で,本当にゆさぶ られていたのか。 ◯燃やした時の,各班の結果の違いがどれくらい生 徒に分からせられたかが分からない。 ◯子どもからもっと意見を出させることが必要だっ たのではないか。 ◯予想させて,生徒の書いた物を使いながらゆさぶ れると良いのではないか。 ◯前時に 3( を燃やす経験をしていたので,燃やすこ とが生徒の意識の中心になってしまっていた。初め に燃やしてしまっても大丈夫な工夫が求められる。 どの段階でどの力をどこでつけさせるのか考えて工 夫する必要がある。「この力をつけるために,ここ は考えさせる。」という明確な意図を持って工夫す ることが大事だ。 という意見がでた。         さらに,逆台形チャートについては, ◯自分の考えを持つことができなくて困るが,逆台 形チャートを使うことで,根拠を持って自分の考え が書けていて感心した。 ◯理由を述べて具体的に意見を出していた。 ◯逆台形チャートの形に意味があるのか。長方形で はダメなのか。 ◯ チャートが三階層になっているが,仮説・方法 ・予想・視点という四階層にするのはどうだろうか。 という意見が寄せられた。  この授業のあと,プラスチックの性質をあらため て表にまとめて,身のまわりには様々な性質のプラ スチックがつくられて,あふれていることを認識さ せた。  6アンケート  研究の対象となった1年生80名を対象に年度末 にアンケート調査を行い,79名の回答を得た。  ドクダミを使って植物の学習を進めたことについ て,質問した。「ドクダミを使った植物の学習は印 象に残っているか」問うたところ,「そう思う」ま たは「ややそう思う」と回答した生徒が,全体の  %にのぼった(図9)。             さらに,「ドクダミを使ったことで,植物のこと がよく分かった」かどうか尋ねたところ,「そう思 う」と回答した生徒は,9%に止まったが,「やや そう思う」と合わせると,62%にのぼった(図 )。  これらのことから,生徒にとって本当に身近な素 材を教材として用いることで,長い間印象に残って, 学習内容が定着しやすいことが示唆される。さらに, 植物の学習においては,できるだけ同じ素材を使う ことも大事であると言えよう。  昨年度から,課題解決の方法を生徒自ら考案する 授業の展開を模索している。昨年度は3年生を対象 に研究し,生徒にとっては突然授業のスタイルが変 わって戸惑うところがみられた。今年度は対象が1 年生なので,初めから取り組ませることができた。 図9 生徒アンケート    「ドクダミは記憶に残っているか」 そう思う 46% ややそう 思う 32% あまりそ う思わな い 16% そう思わ ない 6% — 56 —

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理科 6 アンケートで,自分で仮説を立てて方法を考えて観 察・実験を行うと,考察がしやすくなると感じるか 問うたところ,「そう思う」あるいは「ややそう思 う」と回答した生徒が75%にのぼった。この結果 は,昨年度と比べても4ポイント高く,ほぼ同じで, 考察への抵抗が少なくなることが分かった。その理 由として,「自分で仮説を立てて観察・実験を行う と,結果の意味が分かりやすくなる」と思うか問う 設問には,86%もの生徒が「そう思う」または「や やそう思う」と答えていることが挙げられる(図 11)。観察・実験をして,得られる結果が,与えら れる物ではなく,自分達が能動的に得たものになり, 生徒の中で価値を高めていると考えられる。そのた め,結果を考察することもスムーズに進むと考えら れる。 7.成果と反省 次年度に向けて 昔の科学者と同じように,課題を解決するための 方法を生徒自身が考案し,その方法が妥当か検討し て,観察・実験を行い,結果を考察するという流れ で授業を展開した。その結果,ただ義務的に行う観 察・実験とは違って,生徒は能動的に実験に取り組 むようになり,考察にも抵抗なく取り組む姿が見ら れるようになった。「知りたい」という思いに加え て,「(自分の考えた方法を)はやく試してみたい。」 という動機がそこにはあると感じる。学年末に,水 溶液の単元で,1つの水溶液が均一であることを確 かめる授業を行った。中には,「しばらく置けば底 の方が濃くなる。」と考える生徒がいて,どうすれ ばはっきりするかじっくり考えさせた。蒸発乾固を 試みたり,密度を測定したりして,生徒の力で「水 溶液はどこも均一である。」ことを導き出すことが できた。 次年度以降も生徒自らが方法を考案して観察・実 験をおこなう授業を続けて行きたい。3年間の積み 重ねによって,科学的な方法で課題を解決する力を 持った生徒を育成していきたい。 8.ドクダミHouttuynia cordataについて 低山地の木陰や庭などのやや湿った日陰の場所に多 い多年草で,全体に臭気がある。地下茎は白く,細長 く,よく枝分かれしており,節にこげ茶色のりん片葉がつ いている。茎は高さ 20~50cm。葉は互生,広卵形で長 さ 3~8cm,幅 3~6cm あり,両面無毛,さきはやや伸び てとがっており,基部は心臓形。托葉は葉柄に癒合して いて,さきはとがらない。花は 6~7 月に咲き,両性,花 被がなく,長さ 1~3cm の穂に密に集まってついており, 穂の基部には白い花弁のような総包がある。総包片は4 個あり,だ円形で長さ 1.5~2cm,大きさはふぞろい。お しべは3個。めしべは1個,子房は1室,花柱は 3~4 個。種子は褐色。本州・四国・九州でふつうに見られ, 琉球・台湾・中国・ヒマラヤ・ジャワにある。(*2) 民間では腫れ物の外用薬とする。精油成分からは皮膚 病薬をつくる。 生葉に触れなければ臭気はもれない。また,乾燥すると 臭気はなくなる。鳥取県では,地下茎から澱粉をとって 食用にする。澱粉は味もにおいもなく,色は白い。別名 をジュウヤク(重薬,十薬)とよび,腫れ物の吸い出し, 利尿剤,駆虫剤などに用いる。(*3) 参考文献 *1 多田 尚平「科学的な思考力・判断力・表現力を高 める理科学習の展開-課題の解決方法を自ら見いだ し,観察・実験に取り組む,思考する理科学習-」,『滋 賀大学教育学部附属中学校研究紀要第 57 集』, 2014,pp.52-57 *2 『標準原色図鑑全集 植物Ⅱ』,保育社 *3 『図解 植物観察事典』,地人書館 本研究の一部は,平成26年(2014 年)度科学研究 費補助金(奨励研究,課題番号 26909024)の助成を 受けて行った。 図 10 生徒アンケート 「ドクダミを使ったことで植物の内容が 分かったか」 そう思う 9% ややそう 思う 53% あまりそ う思わな い 27% そう思わ ない 11% 図 11 生徒アンケート 「自分で仮説を立てると,結果の意味が 分かりやすくなる。」 そう思う 40% ややそう 思う 46% あまりそ う思わな い 10% そう思わ ない 4% — 57 —

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