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食品のビタミンB2の日光照射に対する安定性

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Academic year: 2021

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食品のビタミンB2の日光照射に対する安定性

佐  藤  藤  子

The stability of the飴vin compounds under

the sunlight irradiation

Masako Sato 序 袷 59 前報1)2)で牛乳のB2の日光に対する安定性について,照射時間,日光の強さ,容器による影響な どを比較検討し,牛乳のB2が日光に対してきわめて不安定である1)2)3)4)ことを知ったが,調理によ るB2の安定性は食品の種類により異ることが報告されており5),他方,食品のB2形態に相異がみ られること6)7)8)などから, B2の日光に対する安定性に及ぼす因子を検討し,併せて食品のB2の日 光に対する安定性, FAD*, FMN** FR***の安定性を比戟検討したので報告する。 実 験 方 法 1.定量方法 総B2の定量はルミフラビン蛍光法9'により,測定は島浮八木式微量蛍光光度計UM-S型を用い た。 B2の分別定量はロ紙クロマトグラフィー,ルミフラビン蛍光法併用による分別定量法7)10)ll)か ら求めた。即ち試料の一定量を10倍以上の水で温浸し,上澄液の一部は総B2定量に用い,残部は 硫安飽和させ除蛋白後フェノール抽出を行ない,少量の水-移行させ,その一部をロ紙(東洋口紙 No.51A)に塗付し, n-ブタノ-ル:酢酸:水-4:1:5を溶媒とし上昇法により FAD, FMN, FRの比率を求め各々の含量をFR量として算出した。対照にはFAD, FMN, FR結晶を用い同 様に処理した。 2.照射実験 日光照射は快晴の日を選び,試料をビン又はシャーレに入れ,戸外の日の当る場所に置き,照射 時間は正午を中心にその前後とした。一定時間毎に液体のものは充分摸拝後,固体のものは照射面 に対し直角に試料を切断しその一部を分析に使用した。 、、 3.試  料 調製粉乳は森永ドライミルク,その他は市販のものを用いた FADは協和醸酵工業製, FMNは Sigma社を使用した。

F A D-flavin adenine dinucleotide ** FMN=:丑avin mono nucleotide ***  FR=free flavin

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結果及び考察

1.溶液の状態と日光照射に対するB2安定性 牛乳のB2は日光に対してきわめて不安定であり,日光の強い夏期,正午近く照射すると1-2 時間でB2ほほとんど分解され1)てしまう。 FR水溶液は牛乳のB2よりも更に不安定であり,照射 1 20-30分でB2は分解され残存率は0となる。これら牛乳のB2とFR水溶液のB2の安定性の違 いをみるために表示のように, FR水溶液のはかにFRを牛乳に溶解したもの,牛乳:水-1:1 混液に溶解したものについて,その安定性を比較検討した。 FR添加量は牛乳のB2と大体同じ濃 度になるように添加し, FR無添加の牛乳のみ,及び牛乳:水-1 :1混液を対照とし同時照射実験 を行った。照射は夏期と冬期に行い,夏期は正午1時間前から2時間,冬期は計2時間30分前から 計5時間行った。残存率はそれぞれの溶液の照射前のB2を100として表わした。 I その結果は表1, 2,図1, 2に示したが, FRを水に溶解したもの,牛乳に溶解したもの,午 乳:水=1 : 1混液に溶解したものでは分解率に大きな差がみられた。 夏期には照射30分後の残存率をそれぞれ比較するとFRを水に溶解したものは残存率1 %であ りB2はほとんど分解されてしまったが,同じ照射時間で牛乳:水-1:1混液に溶解したものでは 残存率37' 牛乳に溶解したものでは残存率60%であった。 B2残存率曲線で比戟すると, FRを 表1 溶液状態と日光照射に対するB2安定性(夏期) 午 表 2  溶液状態と日光照射に対するB2安定性(冬期) 午

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、     5 1 -臣 ・ b b 一 r -ぎ ・ -1 ・ -・ ∼ 1 1 1 ・ -r J 王 p -1 ︰       -  叩             -    1 J l h い ・ = J u r ︻     ・           て \ ヽ 1 \             ヽ     ー 一 m 佐  藤  雅  子      〔研究紀要 第25巻〕  61 15   30   45 照射時間 ) ) ) ) ) i -I C < I C O " * * i n ( ( ( ( ( F   ニ 穴 水 か 吋 l . l l ) ) ● ■ ● ● \ J L L L L + 扮 朝 粥 朝 里 刺 ( ( ( ( ( p n r R 1:D+CFR 1:1) 12、345 照射.時間(時) (1)(*SL)+(FR) (2)(4^'L) (3)(-:*-i:l)+(FR) (4)(4^L:*-i:l) (5)(*)+(FR) 図1溶液状態と日光照射に対するB2安定性(夏期) 図2 溶液状態と日光照射に対するB2安定性(冬期) 牛乳に溶解したものがもっとも残存率曲線はゆるやかであり,水に溶解したものでは短時間で曲線 は下降し,牛乳:水-1 : 1混液に溶解したものは,両者の大体中間位に残存率曲線を示した。 溶液の組成が同じものについてFR添加のものと無添加のものを比較すると,牛乳にFRを添加 したものはFR無添加の牛乳のみの残存率曲線とほとんど同じであり,牛乳:水=1:1混液にFR を添加したものはFR無添加の牛乳:水-1 : 1混液の残存率曲線と大体同じであった。 冬期は夏期に比べ日光が弱いため,照射時間に対するB2分解量は少いが,夏期と同様の現象がみ られ, FRは水よりも牛乳に溶解したもので安定性は高く,又同一溶液であれば, FR添加のもの も無添加のものも残存率はほとんど同じであった。 牛乳にFRを溶解したものが,水に溶解したものよりも安定であるのは,牛乳がコロイド溶液で あるためだと思われる。 2.液体と固体の日光照射に対するB2安定性 同一試料について液体と固体の違いによる日光に対するB2安定性を検討した。試料は調製粉乳を 用い,一方は粉末のままシャ-レに入れ,他方は牛乳と大体同じB2量になるように水で溶解して液 体(粉乳)とし,シャーレに入れ, 8時から16時まで照射を行い, 2時間毎に残存B2量及び照射 による重量変化を測定した。 重量変化は粉末では吸湿してやや増加がみられ,液体の粉乳では逆に減少したが,いずれの場合 もこれらの増減量は小さく,照射前を100として重量換算率を求めたが補正の必要はみられなかっ た。 その結果は表3 ,図3に示したが同一試料でも粉末と液体の粉乳ではB2安定性に大きな相異がみ

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調製粉末 調製粉乳 2      4      6      8 照射時間(時) 図3 液体と固体の日光照射に対するB2安定性(夏期) られ,粉末では照射によりB2ほ徐々に分解され,残存率でみると2時間後7096 時間で50%, 6時間40%, 8時間35%であるが,水で溶解して液体にすると,照射2時間で残存率は10%以下 となり・きわめて不安定であった。 シャ-レの大きさ,試料の容量を変えて比較したが(I- I),残存率に相異はみられなかった. 5・固体の日光照射に対するB2安定性 豚肝臓,鶏肉,チーズ等,固体のものについて日光に対するB2安定性を比較した。試料はいずれ も大体1cmの厚さになるように切断しシャーレに入れ,夏期と冬期に照射実験を行った。一定時 間毎に残存B2量及び重量変化を測定した。

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佐  藤  雅  子      〔研究紀要 第25巻〕 63 これらの試料は照射による重量の減少が大きくみられ,照射前を100とし重量換算率を求め,残 存B2量はこの換算率から補正し,その結果は表4, 5,図4に示した。表4,表5のⅢのB2は重 量補正したものの値である。 固体では,試料によりB2安定性に大きな相異がみられた。 チーズのB2は照射に対しきわめて不安定であり,夏期には照射2時間で残存率30  その後徐 々に減少し8時間後は残存率15%であった。鶏肉のB2ほ照射に対し比較的安定であり,夏期には 照射2時間で残存率60%, 8時間後は35%であり,冬期には照射9時間で残存率は70%程度であ った。調製粉末は鶏肉と残存率は大体同じであった。豚肝臓はもっとも安定しており,夏期では8 時間照射で残存率8096,冬期には9時間照射で残存率99%でありB2ほほとんど分解されなかっ た。 表 4  固体の日光照射に対するB2安定性(夏期) 鶴 表 5  固体の日光照射に対するB2安定性(冬期) 鶏

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図4  固体の日光照射に対するB2安定性(夏期) 4. FR, FMN, FADの日光照射に対する安定性 FR,FMN,FADをそれぞれB2量として約0.3mg になるように1%酢酸200mlに溶解し, 表    FR, FMN, FADの日光照射に対する安定性(夏期) 率 12   16   20 照射時間(分) ●一一  e FAD o o FR e o FMN 図   FAD, FMN, FRの日光照射に対する安定性(夏期) 30 ヽ 一,

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佐  藤  雅  子 ⊂研究紀要 第25巻〕  65 照射実験を行った。その結果は表6,図5に示した。 B2量はいずれもFR量で表わした。 FR, FMN, FAD水溶液ではFADがもっともB2残存率は高く,照射12分で残存率50 30分で20%であった。 FRは照射12分で残存率10%以下となりFADに比べるとかなり不安定で あるがFMNはFRよりも更に不安定であった。冬期にも同様の実験を行ったが, FADがもっと も照射に対して安定であり, FRはFMNよりやや安定であるが,いずれもFADよりかなり不安 定であった。 5.食品のFAD, FMN, FR の日光照射に対する安定性 調製粉末と豚肝臓について日光照射によるFR, FMN, FADの変化を検討した。照射3時間毎 に試料の重量変化,総B2量, FR, FMN, FADの定量を行った。それぞれの残存率は,照射前の 総B2を100として表わした。 表 7  食品のFAD, FMN, FRの照射による変化 その結果は表7に示したが調製粉末,肝臓いずれもFADの残存率は総B2量の残存率よりも幾 分小さいが,大体比例していた。調製粉末ではFMNがわずかながら増加し肝臓でもFRの増加が 詫められ, FAD, FMN, FRの日光に対する安定性はFADが最も高く, FMN, FRはFADよ

りも不安定であることを考えると, FADは日光照射により分解を受ける一方わずかながら一部は FMN, FRに変化していることが考えられる FAD, FMN, FR溶液について照射によるB2形 態の変化を検討したが, FAD溶液ではFADが96%以上を占め, FMN, FRはほとんど認めら れず, FMN, FR溶液についても同様の現象がみられた。これらのことから照射によるB2形態の 変化はほとんどないものと考えられる。 B2形態と日光照射に対する安定性の関係をみると FAD, FMN, FR溶液のB2としての安定性 は明らかに異っているが,調製粉末,肝臓はいずれもFADは70-80 であり, B2形態は比較的 表 8  食品のB2形悲

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にFRを添加したものと無添加のものではB2形態の組成は変化することが考えられるが,両者の 残存率は大体同じであり,食品のB2の日光に対する安定性には, B2形態以外に他の因子が関係し ていることが考えられる。食品のB2形態は同じ食品でも試料によりかなり異っており8)本実験でも 表8に示したように異っていたので,これらのことも考慮して食品のB2安定性について検討して いきたい。 要 約 食品のB2の日光照射に対する安定性には種々の因子が関係しているが, 1・同じ固体であるものについては試料により安定性は異なり,チーズのB2は不安定であり照射 2時間で残存率は30%である。鶏肉,調製粉末はやや安定で照射2時間で残存率は6096,肝 臓のB2はきわめて安定であり8時間照射で残存率は80%以上であった。 2・同一試料について固体のものと水で溶解して液体にしたものでは安定性は異り,調製粉末は 粉末のままでは2時間照射で残存率60%であるが,水で溶解して液体(粉乳)にすると,きわ めて不安定である。 3・同じ液体のものについては溶液の状態が関係し, FRを水に溶解したものはきわめて不安定 であり照射10-30分でB2はほとんど分解されてしまうが,牛乳のようなコロイド溶液に溶解 すると分解率は小さくなり安定である。 4・牛乳にFR添加したものと無添加のものの残存率はほとんど同じであり,溶液状態が同じで あればB2形態が異っても安定性は同じである。

5. FAD, FMN, FRの安定性はFADがもっとも高く FMN, FRは大体同じであり, FAD よりも不安定である。 6. FAD, FMN, FRの照射によるB2形態の変化はほとんどみとめられない。 参 考 文 献 1)林ミキ子,佐藤雅子:鹿大教育学部紀要, 24, 40 (1972). 2)佐藤雅子,林ミキ子:鹿大教育学部紀要, 24, 50 (1972). 3) Mainzer, L. H. : Milchwissenschaft, 13, 528 (1958). 4) Kon, S. K.: Ann. Nutr. Alin., 5, 211 (1951). 5)高木節子:栄養と食糧, 10, 288 (1958).

6)蒲田久輝,河井文雄,三好歳堆,濃化誌, 32, 847 (1958).

7) Kunio, Yagi: /. Biochem., 38, 161 (1951).

8)長沢太郎,葛谷泰雄,茂田信子:日蓄会報, 32, 240 (1961). 9)八木国夫:ビタミン, 9, 349(1955).

10) Kunio Yagi: /. Biochem., 43, 635 (1956). ll) Kunio Yagi: ibid., 51: 231 (1962).

参照

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