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異常圧力低下をともなう管水路の流れ 利用統計を見る

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異常圧力低下をともなう管水路の流れ

荻原能男

(昭和52年8月1日受理)

Pipe Flow at Abnormal Pressure Drop

YoshioOGIHARA

Abstract  When the velocity of a liquid in a pipe is rapidly decreased at a point, for example, behind a rapidly・closing valve or a pump following power failure, the pressure at this point may drop to the vapor pressure of the liquid, thus causing the formation of a vapor cavity. In many cases, this cavity will collapse generating waves of high pressure propagating through the pipe.  In this report, the characteristic method may be used to calculate vapor・pressure occurences and the resulting entrapped gas bubble and column separation. 1. まえがき  管水路において,ポンプ急停止,弁誤操作,地震等 の外力による断面閉塞などが生ずると一般にに知られ ている水撃現象が発生する。現在,この現象について は管内圧力の異常低下による水の気化現象をのぞいて ほとんどが理論解析されるようになっている。  本論文は異常圧力低下にもとつく水撃現象の基礎的 性質を明確にしようとするものである。今日,圧力低 下にともなう水の気化現象を考えた解析方法としては

1962年にLEscandeおよびW・H・Liによって提

案された水柱分離理論しか存在していない。この理論 によれぽ水中に気泡が含まれる領域が無視されてお り,そのため特殊の場合をのぞいて実測値と計算値と が一致することがない。  ここでは,圧力が低下した場合にどのような条件下 では気泡のみが発生するか。また,どのような条件で 水柱分離が発生するかを実験により明確にしたい。写 真一1は上流側において弁を瞬間的に閉塞した場合,弁 の直下流に気泡が発生する状態を示し,写真一2は装 置,水温,弁操作を同じ状態として流速がもう少し大 きくなって水柱が分離したものを示している。  さらに,従来から筆者が提案する波速変化理論1)に 気泡発生速度と気泡消滅速度とを考慮した計算方法を 提案して実験値と比較検討をしたので,それについて も報告したい。 写真一1 写真一2

(2)

2.基礎方程式  水撃作用の解析に用いる基礎方程式は,現在のとこ ろ運動方程式と流体および管材の変形も考慮した連続 の方程式とである。状態方程式に相当する条件は連続 の方程式に入っているため,特に状態方程式を上記の 二式の他に用いていない。  しかし,液体中に水蒸気や空気のようなものが混在 し,それらの量を定めなければならないとすれぽ,気 体混入率に関する方程式がさらに一つ必要になる。気 体混入率が単純に圧力・流速の関数として表現される ならぽ,連続の条件として連続の方程式に加えること ができるので,基礎方程式は二式で十分である。  一般に液体中にしめる気体の率は,その現象が液体 の沸騰現象によるような場合には熱力学的要素も含ま れ,単純に関数関係を定めることができない。そのた め,現在でも,キャヴィテーションの問題,水撃圧の 低圧時の問題などについては計算方法が確立されてい ない。  しかし,気体混入率(ボイド率)は,気泡が発生す る条件が満たされてからの経過時間によって示され, また気泡が消滅する条件が満たされてからの時間によ って気泡が消滅してゆくとして計算をすすめることは 可能である。  2。1 運動方程式  図一1に示すように,管軸にそって流下方向にx軸を とり,管は円形断面とし,その内径をD,流積をAと する。  また,管内平均流速をV,動水こう配線までの基準 面よりの高さをH,流体は液体と気体と混在していて も一様に断面内に混在し,その平均密度をρとする。 管の摩擦損失係数をf,重力の加速度をg,圧力をp, 時刻をtとすると,   H=z+_互       ρ9 として運動方程式は次のように示される。

  晋+γ芸一一・讐一孟γ1γ1 (・)

 さらに,流積Aの変化は微少とし,流量Qを用いて 図一1座標系 上式を書きかえると,

去晋+4晋一一・誓「毒QIQI(・)

となる。  2.2 連続の方程式  気体が小さな気泡で水中に一様に分布しているもの とし,気泡を含んでいる水を液体と気体とに分けて, そのおのおのがそれぞれの体積弾性係数にしたがって 収縮するとして連続の方程式を導くと次のようにな る。

弓:一一・晋一・γ票  (・)

ただし,

’雨)   ④

  ρ=ρw−(ρω一ρσ)ε       (5)        Kv,       (6)

  K=

    1+C箸一1)・ aは水撃圧の波速,ρ,Kはそれぞれ気液混合状態の 水の密度と体積弾性係数,εはボイド率,Eは管材の 弾性係数,bは管の肉厚, Pw,1(ωはそれぞれ液体状 態の水の密度と体積弾性係数,ρg,Kgはそれぞれ気 体状態の水の体積弾性係数である。  2.3 特性方程式  水撃現象の計算は,古くはアリエヴィの連鎖方程 式2)による遂次計算法などが用いられていたが,今日 では先に説明した運動方程式,連続の方程式より特性 方程式を求めて特性曲線によって解くのが一般であ る。  式(3)の両辺にλを掛けて式(1)と加え合わせると    器+(v+aa2)爵+λ・票+・(1+λv)爵

  一一孟酬

となる。これが全微分形に書かれるためには,   晋一v+λa2−LtiAZZv すなわち,      1   λ=±−      a でなけれぽならない。したがって,次の二組の特性方 程式が得られる。

…㌫塾)}⑦

(3)

これらの特性方程式と初期条件,境界条件を用いて電 算による数値計算をすすめることにより複雑な計算も 可能になっている。 3. 気泡発生および水柱分離の領域  この実験は,管路上流端において弁を瞬間閉塞して 管内に気泡が発生したり,水柱分離をするのを観測す るのが目的である。観測の方法は目測,高速8ミリカ メラによる分解,35ミリカメラによる瞬間時の状態の 測定を用いた。  管路は内径39mm,肉厚4.6mmの円形断面の塩化 ビニール管(上流側一部透明)を長さ91.95mに付設 したものである。管軸こう配は1/100の逆こう配とし, 管内にたまった空気などは水流により下流に排出する ようにした。管材の弾性係数はE−:(2.5∼4.2)×104 kg/cm2,粗度係数はn・=O.010,上流の高水槽と下流 の低水槽との水面落差は1.534mである。  また,上流側の透明部分にある閉塞器(弁)は図一2 に示すように,断面急縮部に円柱を流し,図の①の状 態から②の状態に至って瞬間的に閉塞されるようにな っている。  さて,このような実験装置によって,上流側に急激 に低圧を作った場合の圧力低下量の計算は次のように 行われる。  前述の特性方程式(7),(8)は流量Q,流積Aを用いて 書きなおすと,

竃1⑭IQ}  ⑨

釜:ごIQIQ}  ⑩

ただし,   B−a/(gA), R−fdx/(2gL)A2)である。 この特性方程式を用いて,上流端の弁が瞬間閉塞した 場合をx∼t面,H−Q面で図解すると図一3のように ① A

なる。  すなわち,初期定常状態における流れの状態が①で あるものとし,弁(x=o)において瞬間的にQ−0と すると,①から出発した特性曲線(式(10)が②に到達 して諸水理量が計算される。

 この場合,②の圧力H2が水の蒸気圧HVPよりも

小さい場合には圧力は,HVPより低下できないため に③の状態で水柱が分離するか,あるいは液体中に水 蒸気が発生して流体系の弾性係数が低下し,波速が減 少して④の状態になるか,③,④の中間領域になるか のいずれかである。  気泡発生ならびに水柱分離が発生する条件は②が④ の下側になることである。その度合を示す無次元量と して,

  ξ一H霊芸已

  』−H監磐一酬   ao

が考えられる。図一4は前述の実験装置により行った実 験値を整理して図示したものである。ξ>0が気泡発 生の理論条件であるが,実験によればξ〉−0.1で気 泡が発生し,ξ>0.2で水柱分離を生じる。気泡混入 状態と水柱分離の遷移領域は0,5>ξ>0.2である。  また,気泡混入の度合を示す量は流体系の弾性特性 を示す波速aである。図一3において波速変化は特性直 線のこう配Bの変化に関係する。したがって図一3H∼ Q面に示す角θは一つの気泡混入の度合を示す量にな る。すなわち, ② A ■”θ゜●..・ ● ● 、●.’・.°

図一2弁操作

① flo Q 0 Q⑪ B ④ θ 1 HγP 1∫2 ② 図一3

(4)

気泡発生 頻度 10 8 6 4 2 ξ 一〇.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 図一4気泡混合状態と水柱分離の発生頻度(1) ・一・・nθ一凪

]蓋γP   (12)

  ただし,B。==a。/(gA), aoは気泡混入のない場合  の波速 この無次元量qは気泡混入のない場合には理論的には q−1となる。実測値をqについて整理すると図一5の ようになり,水柱分離がψ<0.85で生じ,気泡混入 と水柱分離との遷移領域が0.65<ψ<0.85であるこ とがわかる。  以上の理論展開および実験値の整理は図一2に示すよ うな上流端において流れを瞬間閉塞した場合について 行ったものである。さらに管路中間点について,ここ で用いた無次元量ξ,gを同様に定義することができ る。  図一6は管路中間点において圧力低下が生ずる場合を 示したものである。①,②の状態は既知であるとし, 特性直線法により③の状態を計算すると①および②よ り圧力の低下した状態が計算される。①,②の流量, 水圧などをQ、,Q2, H1, H2などと表現することと し,   HC」P−Hi十BoQi−RQ,lQ,l   HCM−H2−B。Q,−RQ,IQ21 とすれば③の流量および水圧は次式により計算され る。   ψ=tanθ= となる。 したがって,前述の無次元量は,

   H,−HVP

  ξ=

    HVP

       H,十H2−2H「V1) B。(Q2−Q,) } ⑬ ⑭ 気泡発生 頻度 14 12 10 8 6 4 2 9 1.1 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 水柱分離 頻度 2 4 6 8 10 12 図一5気泡混合状態と水柱分離の発生頻度(2)   ①   ③   ② で      ロ       ロロ       ぽ    ペ H ① ② 0 Q ③’ HγP ③ 図一6   4. 気泡発生速度・消滅速度を考慮した計算  4.1ボイド率と基礎方程式  水撃現象の基礎方程式は前述の式(1)で示される運動 方程式と,式(3)で示される連続の方程式である。水中に 気体が含まれると,これらの方程式において変化する のは抵抗則が変わらないとすれぽ波速aのみである。 すなわち,運動方程式

  砦+γ芸一一・誓一孟叩1 (・)

は気泡混入によって変化しないものとする。一方連続 の方程式

  嬬一一・誓一・γ晋    (・)

は気泡が混入すると方程式の形は変わらないが,係数 a(波速に相当する)が大きく変化する。すなわち, ボイド率をεとすれば,   a2−[{Pw−(P・−P9)・}{u(κ砦一1)ε

      +劃『1    ⑮

(5)

によってαが変化することになる。しかし,このこと によって式(7),(8)に示す特性方程式が変わってしまう ことはない。  4.2気泡発生および消滅の速度の導入  筆者は,従来より低圧時には水中に気泡が発生して 水撃圧波速αが変化するとした計算方法1)を提案して きた。この計算方法は特性曲線法によって計算をすす めている場合に計算圧力が水の蒸気圧HVPより小さ く計算される場合には圧力が蒸気圧に等しくなるよう に特性曲線のこう配を変化させ,それによって水中に 気泡が含まれると判定したものである。また気泡が含 まれている間は常に水圧は水の蒸気圧に等しいとして 計算をすすめるが,計算された水圧が蒸気圧以上にな った場合には瞬時にして気泡は消滅すると仮定した。 この計算方法は水柱分離理論よりはるかに実際に近い 値を与える。  しかし,気泡の発生と消滅が瞬時に行われるとした 仮定が実際とはかけはなれた仮定であることがわか る。実際には気泡の消滅は瞬時に近いが,発生するの には相当の時間が必要のようである。そのため,図一3を 例にとると,①∼③の特性曲線の傾きが,①∼④の特 性曲線の傾きに急激に変化せずに③∼④の間に値が定 まり気泡発生と水柱分離現象が同時に発生することに なる。このことは前章で説明した無次元量ψの値が実 験によると0.85で水柱分離を生ずることによっても明 確である。Pearsa11,1, S,の研究3)により示されるよ うに低圧時にはボイド率が1/1000でも波速は約1/20 に低下する。したがって,微量の気体が混入すること によって特性曲線のこう配が大きく変化することは上 の説明に加えて特に重要なことである。  そこで,ここでは圧力が蒸気圧に降下した時刻(t −T.)より気泡はある一定の法則にしたがって発生す るものとし,圧力が蒸気圧より上昇した時刻(t−T.) より気泡はある法則にしたがって消滅するものと考え る。  その法則として,次の2組の場合について今回は計 算をすすめた。

 購二二‡::ll::}

      ⑯

』2

?f㍍:1:㌫ご}(・カ

 ただし,εo,aoは気泡発生のはじまる直前のボイド 率と波速,ε1,alは気泡消滅のはじまる直前のボイド 率と波速,また,T。, Ti,α,βは定数である。  4.3実測値と計算値との比較  計算の詳細は昭和52年度土木学会年次学術講演会に おいて発表したのでここでは省略する4)。実験装置は 管路長294.2m,管内径]05mm,の一様単一管路を高 水槽より低水槽(両貯水槽の水面落差10.6m)に導い たものの下流端において弁を急閉塞するものである。  図一7は式⑯で示されるCase 1の方法で実験値と計 算値とを比較したものである。この図からもわかるよ うに,気泡発生速度が遅く,気泡消滅速度がはやい場 合の計算値の方が実験値と一致する。  前述のPearsallの文献によれば,低圧時に波速が 正常時の0.7倍に落ちるに必要なボイド率は10−6∼ 10『7である。この実験装置における水撃圧の周期は約 1秒であるため,この1秒間に上記のボイド率が発生 するためには,To−106∼107 secでなけれぽならな い0  0.7倍に波速が落ちることは,前章で述べた無次元 量ψが0.7になることを意味している。気泡消滅の速 度は発生速度の約1000倍ぐらいにとるのが良好の計算 結果をあたえる。  図一8は式⑰で示されるCase 2の方法で実験値と計 算値とを比較したものである。αが小さいほど気泡発 生速度が遅いことを意味している,αとβとを同じ値 にとると計算結果が実験値と一致しなくなり発生した 気泡が消えにくいために波形が乱れる。αに比較して 180 50 0 50 0 50 0 50 0 50 0

H

5 10sec 10 計算値㍗一10,000,000〃 Tl=  5,000” 5 10 計一算値τ。=1,000,000” τ1=  1,000” 5 10 計算値τ。−1,000,000”       A sI= ’50,000” 5 図一7Case 1による計算例 10 t t t

(6)

m 100

H

50 100 50 50 皿Osec 50 0 α=0.25 β=0.5 α=0.5 β=0.5 計算値 α=0.5 タ=1.5 0 5 10 図一8Case 2による計算例 t t t βが大きいときは良好な計算結果を与える。  図一7,8に示す計算例は従来の波速変化理論,水柱 分離理論に比較してはるかに実験値に近い計算結果を 与える。しかしながら,T。, T,,α,βなどの係数に ついては,さらに理論・実験両面より検討を加えなけ れぽならない。  一つの無次元量は水圧低下強度を示すξであり,他 の一つは気泡混入の度合を示すψである。  これらの無次元量を用いれば,気泡発生条件とし て,   ξ>0   ψ<1 水柱分離発生条件としてξ>0.2,ψ<O.・85気泡発生 と水柱分離との遷移領域は0.5>ξ>0.2,0.65<ψ< 0.85であることがわかった。  次に,圧力が低下して水が蒸気圧に達しても気泡は ある速度をもって発生していくものとし,また圧力が 上昇しても気泡が消滅するのにある時間が必要であ る,とした計算方法を提案した。この計算は通常の特 性曲線法のこう配を気泡発生量によって変化させ,そ れまでの間に流速差のある断面では水柱分離が生ずる としたもので,従来から用いられている水柱分離理論 と筆者が以前に提案した波速変化理論の両者の特性を もつものでより現実的な理論である。このような複雑 な条件を入れながら計算が可能になったのは高速な電 子計算機が利用できるようになったためである。  この研究は,文部省科学研究費自然災害特別研究 (1),(研究代表者 本間 仁)によって行った。また 小池一男,浅野哲男,渡辺耕一の三氏に実験・計算に つき協力を頂いた。ここに深甚なる謝意を表したい。 5. あとがき  この研究は管水路において地震時等に発生する管断 面の閉塞,ポソプ急停止,その他流速が急変するよう な現象が生じ,管内に水撃現象が発生した場合を想定 して行ったものである。  特に,低圧時の水撃現象については水の沸騰による 気体混入があるため理論的に不明の点が多い。そのた め,ここでは気泡発生および水柱分離発生の領域を実 験により明確にするため,二つの無次元量を提案し た。

参考文献

1)荻原能男1水柱分離前の水撃現象の計算法,土木学会  第18回水理講演会論文集(1974). 2)本間 仁,石原藤次郎著:応用水理学,中1,丸善,  (1958)初版,pp.174∼238. 3)Pearsall,1, S:The Velocity of Water Hammer  Waves. Proc. Instn. Mech. Engrs. VoI.180, Pt.   3E,1965∼66, pp.12−20. 4) 小池一男,荻原能男:低圧時における気泡発生を伴う   水撃圧の研究,土木学会第32回年次学術講演概要集第   2部pp.511∼512.

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