特発|生心室頻拍 CARTO カテーテルアブレーション
洞調律中の拡張期電位を指標としてカテーテルアブレーション
を施行した左室起源特発性心室頻拍の1例
彦 名明晴
田 渕 一 石
田明
ヲ ヲ 夫 薫 藤 哲伊
木 井裕
八 桜 頃 ウ ノ剛男科
愛明山
藤 川 伊 滑はじめに
右脚ブロックを呈し左軸偏位を伴う左室起源の 特発性心室頻拍は,若年者に多くベラバミルが有 効で予後が良好な疾患である。その機序としてリ エントリー性頻拍であることが示唆されてい る1)。頻拍中に拡張期電位を検索し,それを指標と してカテーテルアブレーションを行うことで高い 成功率が認められている2∼6)。しかし,この頻拍は 臨床心臓電気生理学的検査中に誘発することが困 難な場合がある。2002年にKuckらのグループ が,洞調律中に拡張期に認められる異常電位を指 標としてカテーテルアブレーションを行い高い成 功率が得られることを報告した7)。本邦において 洞調律中にこの頻拍をカテーテルアブレーション によって治癒せしめた報告はない。今回我々は持 続的な頻拍が誘発されなかった症例に対し,洞調 律中の拡張期の異常電位を指標としてカテーテル ァブレーションを行った症例を経験したので報告 する。 症 例 患者115歳,男性 主訴:眼前暗黒感,悪心,胸部重苦感 家族歴:特記事項無し 既往歴:5歳時に川崎病に罹患。冠動脈の拡大 が認められていたが,現在は退縮しておりトレッ ドミルにても異常は認められなかった。 仙台市立病院循環器科 *伊藤医院 現病歴:2003年1月29日,入浴中に突然眼前 暗黒感,後頭部の拍動感が出現した。意識消失は なかったが悪心,嘔吐,胸部重苦感が持続したた め当院救命救急センター外来を受診した。来院時, 心電図にて心室頻拍が認められたためATP 10 mg,リドカイン60 rngを2回投与したが頻拍は 停止しなかった。電気的除細動を施行したが,一 過性に停止したもののIncessant型となり頻拍は 持続した。ベラバミル10rngを投与したところ洞 調律に復調した。2月12日,カテーテルアブレー ションを目的として入院となった。 入院時心電図(図1):洞調律,心室拍数56/分, 正常軸 頻拍時心電図(図1):心室拍数236/分。QRS波 は右脚ブロック型を呈し左軸偏位を伴っており, QRS幅は0.12 msecだった。房室解離が認められ た事から心室頻拍と診断した。 心臓超音波検査:明らかな器質的変化は認めら れず,偽性腱索8)もみられなかった。 加算平均心電図:late potentialなどの異常は 認められなかった。 入院後経過:入院後モニター心電図にて経過観 察したが心室頻拍は認められなかった。 臨床心臓電気生理学的検査(以下EPS),カテー テルアブレーション:2月14日にEPSを施行し た。EPSは過去に述べた方法9}で行った。心室頻 拍の誘発は高頻度心室刺激や早期心室刺激を頻回 に加えた。しかし,再現性をもって3∼11連発の 非持続性心室頻拍は誘発されたが,イソプロテレ ノールを加えても持続性心室頻拍を誘発すること洞調律 vr 洞調律 VT
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図1.心電図 左が洞調律時の心電図,右が心室頻拍中の心電図。洞調律時には正常軸だが,心室頻拍時には右脚ブ ロック,左軸偏位を呈している。郡㎜一一ツ
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,、._一__,、!‘熱亘《一一一…] 図2.臨床心臓電気生理学的検査 上が十二誘導心電図,下が動脈圧。250bpmの心室刺激を12回加えたところ右脚ブロック,左軸偏位 を呈する心室頻拍が誘発されたが,/1回しか持続せず洞調律へ復調している。 はできなかった(図2)。このためKuckらのグ ループの報告に基づき,電位解剖学的マッピング システム(EAMS)を用いて洞調律中の拡張期に 認められる異常電位を検索した7)。図3∼5はEAMSでのactivation mapPingの
図で,すべて右前斜位30度でやや尾側方向からの 図である。右上の目盛上赤が右心室においた基準 点のカテーテルの電位より一63 msec,紫が+73 msecを示している。洞調律中のマッピングなの で,このactivation mappingの色彩に特に大きな;;筋蒜’; ◎ 9s 込● ● ● ● 4 ㌧ .●●亀F ◆ u−一履
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二 (加∫ σθ口㎝ f −→ Bi l 図3.電位解剖学的マッピングシステム 黄色は左脚の電位,水色は拡張期異常電位が一つだけ認められた点,黄土色は複数の拡張期異常電位 が認められた点,赤色は複数の拡張期異常電位が認められカテーテルアブレーションを行った点を示 している。 :bgf㌫’ ● ● ↓㌦ ↓」4アrβf−tA2藩竃熟
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三 運_慧 ㊤三.二 e の 一一一一一・ ei −、: 図4.電位解剖学的マッピングシステム 水色の点の双極電位をみると,QRSからかなり離れた部位に異常電位が認められた。 意味はないと考えられる。左室204点の記録を 行った。黄色は左脚の電位,水色は拡張期異常電 位が一つだけ認められた点,黄土色は複数の拡張 期異常電位が認められた点,赤色は複数の拡張期 異常電位が認められカテーテルアブレーションを 行った点を示している。図の右側の心電図は上か ら順に,12誘導心電図のII誘導,基準点とした右 室から記録された双極電位,アブレーションカテーテルの先端から記録された単極電位,双極電 位を示している(図3)。水色の点の双極電位をみ ると,QRSからかなり離れた部位に異常電位が認 められた。水色,黄土色,赤で示された異常電位 は横26.12mrn,縦12.30 mmの範囲で認められた (図4)。複数の拡張期異常電位が認められアブ レーションを行った部位の双極電位では,図のよ うにQRSからかなり離れた部位の電位に加えて QRSの直後に鋭いmultiple componentの電位 が認められた(図5)。1点アブレーションを行う 毎に頻拍の誘発を行い,2連発以上の頻拍が誘発 された場合には次の点をアブレーションした。最 終的に頻拍と同様の波形が全く誘発されなくなる までには,赤い点で示される横11.45mm,縦9.61 mmの範囲のアブレーションを要した。
EAMSで示した部位をEPS記録装置で振り返
り,同様の電位が認められたと思われる部位の双 極電位を示す(図6)。中段に鋭い拡張期電位が記録され,下段にそれに加えて,QRSの直後に
multi−componentを示す電位が認められている。 アブレーションを行ったうちの一点のレントゲ ン写真を示す(図7)。矢印で示すアブレーション カテーテルの先端は左室の下壁,中隔側に位置し ていた。 アブレーション後も経過良好のため2月19日 に退院した。以降外来にて経過観察を行っている が,8ヶ月間心室頻拍の再発は認められていない。 考 察 左室由来の特発性心室頻拍(以下ILVT)は,若 年者に多く予後が良好な心室頻拍である。心室頻 拍としてはQRS幅が比較的狭く,左軸偏位を伴 う右脚ブロック型の波形を呈し,ベラバミルが有 効であることが知られている1)。この頻拍の機序 は未だ明確とはなっていないが,最近は異常な Purkinje networkを介するリエントリーという 説が有力である3・4)。実際頻拍中に拡張期電位が記 録された部位での通電により頻拍が消失すること が報告されている2−‘)。 本症例では,臨床的に記録されている心室頻拍 の心室拍数が240∼250bpmと速く胸部重苦感が 強いこと,EPS時に持続性心室頻拍を誘発できな かったことから洞調律中のカテーテルアブレー ションを試みた。 過去の報告では,ILVTに対して最早期心室興 奮部位,プレポテンシャル,拡張期電位などを指 標として頻拍中にアブレーションを行った報告は 多数見られるが2”’6・8・1°∼15),洞調律中にアブレー ションを行った報告は海外に1論文が見られるの みである7)。Kuckらのグループは9例を対象とし て検討を行っており,全例で心室刺激による頻拍 の停止が可能であり,EAMSでは洞調律中および 心室頻拍中の両者で同形の拡張期電位が記録され ている。アブレーションの成功部位は洞調律中の プレポテンシャルから拡張期電位までの時間が最 も短い部位であり,3例では洞調律中のアブレー ションで頻拍を消失させている。 本症例は持続性の心室頻拍を誘発することがで きなかったため,上記の報告を参考として洞調律 中にEAMSを用いて詳細な検討を行い,プレポ テンシャルを同定し,プレポテンシャルー拡張期 電位時間が比較的短かかった部位でアブレーショ ンを行った。 ILVTの頻拍中の拡張期電位に関して, Tu− chiyaら3)が詳細に検討を行っている。頻拍中は 左脚分枝部に近い比較的近位部の小さな範囲で拡 張期電位が記録され,同部位でのアブレーション が有効であることを報告している。また本症例と 同様にEAMSを用いた検討7)では,洞調律中の拡 張期電位はinferosepta1の小さな領域に認められ ると報告されている。しかし,本症例では横26.12 rnm,縦12.30 mrnの比較的広い範囲で拡張期電 位が認められ,比較的プレポテンシャルー拡張期 電位間隔が短かかった部位はinferior, septal, apicalに存在し,カテーテルの固定が困難で十分 な通電が行えなかった。そのためか同部位の一度 のみの通電では3∼4連発の頻拍がアブレーショ ン後に誘発され,頻拍の消失には拡張期電位がみ られた広範囲への多数回に及ぶアブレーションが 必要であった。最終的に頻拍が誘発されなくなっ たアブレーション後には拡張期電位は記録されな くなった。.._Jt「nnp t 書 “ 『
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三 Uni 、 o.eOca1 トー・ ei l ‘ 図5.電位解剖学的マッピングシステム 複数の拡張期異常電位が認められアブレーションを行った部位の双極電位では,図のようにQRSか らかなり離れた部位の電位に加えてQRSの直後に鋭いmultiple compoエ〕entの電位が認められた。一一
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2=c 図6.心室からの電位記録 上段は洞調律中の左脚の厄位,中段は洞調律中の拡張期電位,下段は洞調律中のmulti−comPonelltを 呈す電位。 第一斜位 第二斜位 図7.アブレーション時のカテーテル位置 矢印で示すアブレーションカテーテルの先端は左室の下壁, 中隔側に位置していた。本症例では,洞調律中のアブレーションによる 頻拍の消失は可能であったが,Kuckらの報告と は異なり多数回の比較的広い範囲の通電を要し た。洞調律中の拡張期電位は比較的広い範囲で記 録され,アブレーションの指標と報告されている 短いプレポテンシャルー拡張期電位間が最も良い 指標となるかどうかはより多数例での検討を要す ると思われた。 ︶ 1 文 献 Ohe T:Idiopathic tained left ventricular tachycardia. dio116:139−141,1993 verapamil−sensitive SUS・ Clin Car一 2) Kottkamp H et al:Idiopathic left ventricular ︶ 3 ︶ 4 ︶ 5 ︶ 6 tachycardia:new insights illto electro一 physioユogical characteristics and radiofrequen・ cy catheter ablation. Pacing Clin Electro− physiol 18:1285−1297,1995 Tsuchiya T et al:Signi丘cance of Iate diastolic potential preceding Purkinje potential in ver− apanユil−serlsitive idiopathic left ventricular tachycardia. Circulation 99:2408−2413,1999 Nogami A et al l Demonstration of diastolic and presystolic Purkinje potentials as critical potentials in a macroreentry circuit of ver・ apamil−sensitive idiopathic left ventricular tachycardia. J Am Coll Cardiol 36:811−823, 2000 Wen MS et al:Successful radiofrequency ab− lation of idiopathic left ventricular tachycar・ dia at a site away from the tachycardia exit. JAm Coll Cardiol 30:1024−1031,1997 Tsuchiya T et al:Effects of verapamil and lidocaine on two components of the re−entr}・ circuit of verapamil−sensitive idiopathic left ︶ 7 ︶ 8 ︶ 9 10) 11) 12) 13) 14) 15) ventricular tachycardia. J Am Coll Cardiol 37: 1415−1421,2001 Kuck KH et a1:Electroanatomic substrate of idiopathic left ventricular tachycardia:unidir− ectional block and macroreentry within the purkinje network. Circulation 105:462−469, 2002 西村重敬 他:偽性腱索の関与が示唆された右 脚ブロック+北西軸型Verapamil感受性特発性 左室心室頻拍の1例.臨床心臓電気生理24:85− 91,2001 Yagi T et al:Electrophysiologic comparison between incessant and paroxysmal tachycar− dia in patients with permanent form of jun− ctional reciprocating tachycardia. Am J Car− diol 78:697−700,1996 1esaka Y et al:Verapamil−sensitive left ante− rior fascicular ventricular tachycardia: results of radiofrequency ablation in six patients. J Cardiovasc Electrophysio1 9: 1269−1278,1998 Nakagawa H et al:Radiofrequency catheter ab]ation of idiopathic left ventricular ta− chycardia guided by a Purkinje potential. Circualtion 8812607−2617,1993 Zardini M et a1:Catheter ablation of idiopath− ic left ventricular tachycardia. Pacing Clin Electrophysiol 18:1255−1265,1995 谷口興一 他:高周波カテーテル焼灼術後に逆 行性Purkinje電位が記録されたVerapamil感 受性特発性心室頻拍の2例.臨床心臓電気生理 22: 49−60,1999 早川弘一 他:左室特発性心室頻拍における緩 徐伝導路.臨床心臓電気生理22:61−71,1999 和泉 徹 他:リエントリー回路の遅延伝導路 入口部を推定しえた左室中隔起源特発性心室頻 拍の1例.臨床心臓電気生理24:85−91,2001