“未来の医療 再生医療とは?” 藤田保健衛生大学 医学部 応用細胞再生医学講座 教授 赤松浩彦 〝夢の医療〟として近年、「再生医療」が注目されています。私たちが本来持 っている自己再生能力を最大限に活用し、失った機能を復元・回復させること ができる、無限の可能性を秘めた医療であり、生活の質(Quality of life)の向 上にも大きく貢献することが期待されています。一方、技術面はもちろん、倫 理面においても、まだまだ解決しなければいけない多くの課題が残されていま す。本講演では、この“未来の医療 再生医療”についてわかりやすく解説し たいと思います。 再生と「幹細胞」 人間の身体は、約200種類の細胞が60兆個も集まってできています。そ の細胞の一つ一つが私たちの健康を維持できるように、それぞれに与えられた 役割を果たしているのですから、まさに神秘の世界です。近年の研究から、こ れらの細胞の起源がわかってきました。その細胞は「幹細胞」と呼ばれ、私た ちの身体を再生する能力を秘めています。「幹細胞」は、病気や事故などでダメ ージを受けて、細胞が本来担うべき役割を果たせなくなった時に、代役を務め る新しい細胞を生み出す能力を持っている、と考えられています。 再生について分かりやすい例で言えば、お風呂に入って体を洗って垢を落と します。それは皮膚の表面を剥ぎ取っているのですが、皮膚はなくなりません。 表面がどんどん削られていっても、下層から皮膚が新たに出てきて再生するの で、皮膚はなくならないのです。このように人間の体はいつも新陳代謝をして おり、その新しいものを生み出す、再生する基となる工場が「幹細胞」です。 心臓や肝臓などすべての組織に「幹細胞」が存在しています。 「幹細胞」と「再生医療」 現在、この「幹細胞」の再生能力を応用した夢の医療として「再生医療」が 世界中で注目されています。病気や事故などで失った、または機能不全に陥っ た臓器や組織を再生・回復させる方法を研究する新しい学問である「再生医学」 に基づく新しい医療です。「幹細胞」の研究が進み、「再生医療」が確立されれ
ば、今まで治療が難しかった病気にも対応できる可能性があります。次世代の 医療といわれる由縁です。 米国防省のホームページを見ると、戦場で腕や目、足を失った人達の機能を 再生させたいということで、「再生医療」に国を挙げて取り組んでいます。戦争 でなくした腕や指、切れて動かなくなった神経を再生させるのですから、まさ に〝夢の医療〟と言っても過言ではありません。