子どもの推論過程に関する研究 : プロトコルの分析から
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(2) 120. 大竹. 祥子・高山. 佳子. になることも示唆されているo 内田も清泉も、. 6歳以下の軽骨幼児のみを柑象とした研究であり,学齢児童の因果閑孫の理解に. 関しては分析していない。 Piagetは、因果関係の理解に関する発達について、次のようなこ.とを指摘している。 7歳以前の子どもは自己中心的で、自己の興味や関心、偶然によって事象を結びつけるため、時 間的順序に応じた再構成がまだできないが、この時期に暗黙の不一致が理解できるようになり,そ のため,前後矛盾したことを避け始めるという。論理的説明が可能になるのは、因果的説明が可能. になる段階よりもはる串、に後期で、心理的つながりはその中開的な段階で獲得されるo 明示的不-一致は形式的操作期に獲得され始め,この段階で論理的推論や抽象的推論が可能となる というo このように、学齢期にほいると因果関係の理解における大きな質的変化を示すと考えられる。そ こで、本研究では,幼児から学齢期にかけて,文章産出にける推論過程がどのように発達していく かを、そのプロトコルから分析検討することを目的として行う。. Ⅱ.方法 1.被験児. 4歳児(男子1名、女子2名の計3名で,全員健常児である.) 9歳児(男子i名、女子2名の計3名で、全員健常児である。) 11歳児(男子0名、女子3名の計3名で、全員健常児である。) 各年締段階3名ずつの計9名を対象とした。. 2.材料. 因果的な関連を推測し得るA5版の絵力-ド2枚1組として、練習周2組、テスト用26観を用い た。. Tablelに絵カードの内容を概括的に示した。絵カードは彩色されている。. テスト用26組のうちJ6観は因果的鵜連が強い課題、残りの10観妄ま因果的関連の弱い課題として、 ランダムに提示したo.
(3) 121. 子どもの推論過程に関する研究. Table.1絵カードの内容 カード②(後続事象). No,. 関係性. 練習1. A. 男の子が積み木を積み始める. 積み木のビルが完成すろ. 練習2. A. 女の子と男の子が人形を取り合う. 人形の足が1本取れてしまう. 課題1.. A. 男の子がアイロンを触ろうーとする. 男の子がやけどをする. 課題2. A. 男の子が重い荷物を持つ. 二人の男が一緒に荷物を運ぶ. 課題3. B. 課題4. A. 男の子がシャワ-を浴びる. 男の子が服を着替える. 課題5. A. 男の子と女の子が犬を怖がる. 男の子と女の子が逃げ申す. 課題6. A. 男の子がトイレを我慢する. 課題7. B. 男の子が滑り台をすべる. 課虚8. B. 課題9. B. 課題10. A. 課題11. A. 女の子が風呂掃除をする. 女の子がお風呂に入る. 課虚12. B. 女の人が料理をする. 男の子がお弁当を食べる. 課題13. B. 雪と家. 男の子がセーターを着る. カード①(先行事象). 一男の子とお弁当. ・男の子が池で溺れる. 女の子が手を洗う ・男の子と女の人が折り紙をおる. にんじんとピーマン. ・男の子がトイレに行く 女の子が泣いている 女の子が飛び出しをする ショートケーキ. 男の子がかぶとをかぶる. B. 壊れた飛行機と男の子. 男の子が女の子を殴る. .課題14 課題15. A. 女の子がご飯を食べる■. 女の子が食器を洗う. 課題16. A. 親子が服を選ぶ. 親子がレジでお金を払う. 課題17. A. 女d)子がスイカ割りの準備をする. 男の子がスイカを割る. 課題18. A. 男の子が壁に落書きをする. 男の子が怒られる. 課題19. A. 男の子が風船をふくらませる. 風船が割れる. 課題20. A. 親子が洗濯をする. 親子が洗濯物を干す. 課題21. A. 女の人が種まきをする. 女の人が収穫をする. 課題22. A. 男の子が蝶を捕まえる. 男の子が蝶を逃がす. 課題23. A. 雪だるまがある. 雪だるまがとける. 課題24. B. 男の人が電話をかける. 男の人がラーメンを食べる. 課題25. B. 女の子が歯磨きをする.. 女の子が虫歯し;なる. 課題26. B. 女の子が手紙を書く. おじいさんが手紙を読む. *. A,. Bの区別について. A. ;. 2枚の絵カードの因果的関係性が強いもの. B. ;. 2枚の絵カードの因果的関係性が弱いもの. 3.手続き (1)モデル文の提示. 順向のモデル文:被験児から向かって左に練習1①のカードを置き、カ∵ドに描かれた事象 ②のカードを①の右に置き、再び の説明を求める。事象の理解がされているのを確かめた後、 事象の説明を求める。. 2枚目も事象の理解がされているのを確かめた後、実験者は2枚の絵カ. ードを指さしながら以下のような教示を行う。 「これから、 2枚の絵を見て、 2枚がつながるようにお話を作ってください。まず、私が作.
(4) 122. 大竹. 祥子・高山. 佳子. ってみるからよく開いていてね。」 この教示の後,傾向のモデみ文を提示する。 「まさおちゃんは積み木でピ)レをつくろうと思いましたoそして1個1個、積み木を積んで いきましたo. 『ヤッタ-』とうとうビルができあがりました」. を聞かせる。. 逆向のモデル文_:練習2の絵カードを練習1の時と同様にして、 ①と②の絵か-ドの両方の 事象を理解しているかどうか確かめる。. 2枚の絵力-ドの事象が理解されていたら、. (彰一①の. 順に指さしながら以下のような教示を行うo 「今度はこちら(②)からこちら(①)にお話をつくるから開いていてください{,」 この教示の後、道南のモデ)L文を提示する。 「とうとうお人形さんの足が取れてしまいました.どうしてかというと、さっき、みほちゃ んとたかしくんが、お人形さんが欲しくて、両方からひっばりっこしたからです」 を聞かせる.。. (2)テスト試行 課題番号の順にテスト課題を与えるo具体的な手続きはモデル文提示の時と同様にし、絵力 -ドの理解がなされているかを確認した後、以下のような教示をする。 「今度は00ちゃんが、 2枚の絵がつながるように自由にお者を作ってくださ㌣、o」 頻向壁に作詩するか道南塑に作詩するかどうかも自由であることを伝えたo. (この時、. また、作話中は内. 容についての誘導はいっさい行わないようにしたo). 4.記録 産出されたプロトコルはI. Cレコ-ダーに録音したo,また、作話中の被験児の反応や様子はメモ. 用紙に記述して残したo. 5.分析の観点. (1)プロトコ)レの構造 内田(1985)の研究では、. 2つの事象を関係づけられない場合(2つの事象を述べた文間に. 飛躍や矛盾がある場合や単なる並置)を「弄統括的結合」、関係づけて統括した場合を「統括的 結合」として分けていて、. 「統括的結合」には、次のようなものを含めていた。. 1.. --一方の事象を記述した第1文と他方の事象を記述した第2文が接続詞や接続助詞によって 結合されている場合. 2.第1文の動詞が連用形となり、第2文に連結されている場合 3.前後関係を明示する副詞や動詞を使用して二つの事象を結合きせている場合o 4.第1文と第2文の閑に壌渡し文を挿入し、. 2つの文を結合させている場合. の4つである。. これに加えて、本研究では、被験児を学齢期の児童も対象にしているため、 5.接続詞や指示詞を省略しているが、'2つの事象を関係付けている場合 も「統括的結合」とみなし、プロトコルの構造として分析の観点とした。.
(5) 123. 子どもの推論過程に関する研究. また、産出されたプロトコルの文の数も合わせて分析した。. (2)プロトコルの内容 piaget(1969)は、. 2つの事象が統合されるときに表されるつながりの型を、因果的つながり. (原因と結果)、論理的つながり(理由と帰結)、心理的つながり(動機と行動)の3つに区別 している。. 因果的つながりは、単にある出来事を他の出来事に結びつけることを意味するのに対して、 論理的つながりは2つの観察事実ではなく、. 「誰かが肩をたたいたから、彼は振り返った」という文は因果的つながりを示している. 例えば、 が、. 2つの観念や2つの判断を結びつけることをいうo. 「人間はえらがないから水中では生きていけない」という文は論理的つながりで結びつけら. れている。つまり、論理的つながりは証明という言葉で言い換えることが出来るかもしれないo 第3の型である、心理的つながりは前述の二つの型の中間的な位置にあるといえる。因果的 っながりのように2つの事実のあいだではなく、行動と意図(2つの心理的活動)とのあいだ 「試合に負けたから、泣いた」という文は2つの に原因と結果の関係が確立している。例えば、 事実を結びつけているという点ではある意味では因果的であるが、 る。つまり、. →方では論理的な要素もあ. 2つの事象を因果的つながりで理解することは、論理的つながりや心理的つなが. りで理解することよりも容易で、より早期に獲得していくと考えられている。. 本研究では、自由に産出されたプロトコルを、単なる原因と結果を表す「因果的つながり」 と行動と意図を表す「心理的なつながり」の2つにしぼって分析する。. g.結果 (1)プロトコルの構造について 「統括的結合」と評定された数を、年齢別にグラフ化してFiglに示す。. ー0 L. 0. '■:l''''l'l'==≒;≡::;::;:;=雪:g<;=;=; :≡;::::::::虫::::,:. ≡.;l>;i./;::-:.. .:●:::不:::;:::モJ,:-.::. 90. ・====..リ,.'=■:=:'''l-''=:=ii!雲 :±,:,A:1::::. ;:::::旦::.;:::>;. 80. :::;:;∼::::::. "=H雲慧====≒:≡:::≡. ;:こ::二1:::::. 70. 富家喜畳墓=.............,=...藍写‥.r5=;. 60. -=誓書==.=萎董. 薯ii:i=:;嚢墓==整竃整. 50. 葦藁妻≡==藁葺葦. 40. ・=:≡:=写=;====:整き…≡≡三雲肇'. 30. :::::>,:::::盟::こ:::i::::$1:::. 蜜葦墓葉書. =::;:a;:::;=:-;=;=<i=.:.I.-≡...三. 20. ;:;:Fp:i.:.:.....,:{.L.... :.>;:::S:::::. ;:::;:<>;ー;:. ::::::a;:;:;::,:.:t:'.: ::,:,:i:::::. ー0. :貴賓:=;'^:H.:=:::=t::;≡:. I::=至=!=i=:..=:,",=:i'--='"'r. <:. :::::二t::::;:. :;:;:不:.:::::::豊:墨....: ;:::;土::;;::::丑::: ;:,三1こ:::≧::::,:. ・:.:.:/.A.A.. ;:;ニ≧;:;:,::::1::S:::≡:;:::i::::;:::I.:.:. ≡::::::.;::.>'.:::,:く.1:::::;:.::a::;::. 0. 9歳児 Figl統括的結合の割合. 11歳児.
(6) 大竹. 124. Figlに示すように、. 祥子.高山. 佳子. 9遺児以降になると、ほとんどの課題が評価基準に基づき「嬢括的結合」. と評定された。 9歳児段階では、. 「舞妓括的結合」と評定された課題が3例(課題9、課題12、. 課題15)観察された。この3例のうち2例(課題9、課題15)は、どちらも2枚の絵カードの 因果的結びつきが薄い課題(B)であり、. 2枚の絵か-ドを結び付けるためには絵カードに措か. れていない情報を自分で推論し、統合させる過程や物事を抽象化させる過程が必翠な深意であ った?. 11歳児になると、全ての課凝で絵カードの理解も「統括的結合」もできていたoまた、. 因果的関連が非常に薄い課題においても、. 2つの事象を抽象化して単語のみでまとめる例も観. 察された。 4歳児は、統括的結合として評定された課題は全課題のうち、. 20課題であったo他の被験児. と同様に, 2枚の絵カードの理解に関しては、実際に絵の内容を説明してもらうかたちで確認. した。日常生活に密着していない絵ヤシンjif)レ化されたマークの意味を理解することが困難で あったが、ほとんどの課題で適切に言語化することができていた。また」統括的結合であると 評定した20課題のうち18課題は、. 4歳. 2-の事象の関連が非常に強固な課題であった。また、. 児は統括的結合が出来る、出来ないにかかわらず,順向型産出であっ.たのに対して、. 9歳見や. 11歳児は絵力-ド②から逆向型に物語を産出する例がみられた。 次に産出プロトコルの長さと数について述べる。産出プロトコルの長さは、年齢が上がるに 従い長くなり、プロトコル数が少なくなる傾向があった。つまり、 賞して表現することが多かったo. 4歳児は単語をいくつも並. 9歳児段階では,接続詞や接続助詞によって、短文を複数つ. なげて作話をすることが多く、第一文の動詞が連用形となり、第2文に結合する例は極端に少. なかった。また、結合の仕方がバうェティに富んでいるのも特徴的である。それに対し、 11歳 児になると、第1文の動詞が連用形となサ、第2文をつなげる形で、 2つの事象を結びつける場 合が非常に多く、. 4番目の橋渡し文を挿入して結合させる例は1例も観察されなかったo. 5番目の、接続詞や指示詞を省略しているが、 降に観察され、・ 4歳児では、 また、. 2つの事象を関係付けている例ほ、. 9歳児以. 1例も観察されなかった。. 11歳児になると、主語やすでに明白である内容については言及されなくなり、非常に. 省略的な構造となるのが特徴的であった。 この結果をFig2に示すo. ,. (2)プロトコ)レの内容 統括的結合と孝司走されたプロトコルのうち、その内容が因果的つなが吟であるか、あるいは 心理的つながりであるかを分析した.その結果がFig3であるo Fig3に示すように、. 4歳児も9歳児も11歳児も因果的つながりで2つの事象を理解すること. は出来ていた。年齢によって、特徴が明確に表れたのは、. 2つの事象を心理的つながりで結合. させた数である。 4歳児段階では、ほとんどが因果的つながりで結合させており、心理的つながりでの結合は 1例のみであったo年齢が上がるにつれて心理的つながりで結合させる割合が多くなり、 近くも観察されたo_個人差はあるものの、. 40%. 2枚の絵の事象を心理的つながりで統合する数が多. くなり、その割合が半数をしめる被験児もいたoまた、全く関係のない絵を抽象化し、一つの 単語によって東嶺する場合も1例であったが観察された。 また、これにともない、感情語の表出数にも特徴が表れたので、. Fig4に示す..
(7) 子どもの推論過程に関する研究. 4歳児. 125.
(8) 大竹. 126. 祥子.高山. 佳子. Fig4を見ても明らかなように、感情語の表出も、心理的つながりでの結合と同様に、年齢が上昇 するとともに多くなっていたo. Ⅳ.考察 Figlの結果から、. 2つの事. 4歳児は,内田(1985)の知見どおり、物事の生起額を理解したり、. 象を関連づけながら統合することが可能になり始める時期であるということが示唆される。しかし、 このことは、提示された2つの事象が因果的つながりの強固な課題や実際場面で経験したことのあ. る日常生活に密着した課題については確かにあてはまるが二2つの事象の因果的関連が弱い課蓮や 日常場面で経験しにくい内容の課題に関しては、たちまち統合することが困難になってしまうとい うことが示唆された。また、. 4歳児では因果的関連の醜さや日常生活と密着しているかどうかは、. 物喜吾の一貫性に非常に影響していた。経験的な内容については4産児段階でも、一貫性のある物語を 生成できることが示唆される。) ノまた、. 4歳児が因果約な関連の強さに大きく影響を受けるということは、. 5歳後半にならなむ■、と. 「夢」とか「桓‡想」のような「組み込み技法」を用いた、ファンタジーを生成することが出来ない という内田(1982)の知見と関連があると考えられるのでほないだろうか。なぜなら、因果的な関 連が弱い課題の場合、. 2つの事象を理解するだけでほなく、自分でストJ)-を生成する過程が必. 要になるからである.つまり、. 4歳児段階では、この「自分でストJ)-の生成を行う」ことが出. 来にくいと考えられる。このようなことから、. 4歳児は日常体験の影響を強く受けており、その体. 験そのものや体験によって得た知識を断片卿二再構成することにとどまってし■、ると考えられる。 歳児以降の産出プロトコルも分析している内田(1983)は、. 5. 5歳児後半になると体験ヤ知識を、現. 実の鶴約と想像陛界の調和のもとに観み合わせ厳格をつけて、よりもっともらしい表象へと作り上 るというoこれによって、精練化した表境を構成することが出来るようにな巧,基本的には大入の もつ方略のほとんどを使うようになると述べている。. 4歳児についてほ、統括的結合が出来る、也来ないに関わらず、最初に言及するのは綾ヵード①.
(9) 127. 子どもの推論過程に関する研究. からであり、すべて順向型であった。この結果は、. 2つの事象がある場合に、原因が結果に先行す. るという因果の理解はかなり早く\から可能であるという知見や、幼児にとって、. 2つの事象を逆向. き(後ろから前へ)に言語化することは難しいという内田(・1985)の知見を支持するものといえるo 文法に関しては、格助詞を適切に使用していることや、順接の接続詞を適切に使用していること 4歳児では、 2語の が数例ではあるが観察された一方で、主語や助詞の欠如が目立ったことから、 組み合わせの中で用いられる格助詞の使用は可能であるが、. 3語以上になると困難になることや、. 逆接によって2つの事象を統合することは困難であること、事象の説明を行う場合、対象の行動の みを言語化して終始する傾向があることが示唆される。 4歳児の. 図版の理解に関して、シンボル的に用いられた記号やマークの理解が困難だったのは、. みであったことから、他の被験児より日常生活や体験の影響を大きく受けていると同時に、既有知 識の不足が指摘できるのではないだろうか。 9歳児と11歳児の両者に言えることは、プロトコルの内容が非常に現実的で一貫性があり、主語 と述語の照応が出来ていることや、矛盾する事態についても経験的推論を用いて理解が可能である こと,文章を産出する前にゆっくり時間をかけてから言語化するため、言い直しが少ないこと、暗 黙の不一一致についての理解も十分可能であるということであるムまた、明示的不一致についても9 歳児段階でも使用できる可能性が示唆できる例が観察された。. 暗黙的不一致と明示的不一致について区別すると、暗黙的不一致は単なる驚きや対比を表してお り,一般的規則に対する例外を十分には明示しない○これに対して、明示的な不一-一一致は、言い換え ると従位接続詞によって表される不一致で、. -一般的命題に関する知識を必然的に前提とする()例え 「桜は春に咲く」とか「暖かくな. ば、 「まだ12月なのに桜の花が咲いた」という文を産出するには,. らないと桜は咲かない」という一般的な法則を理解していなければならない。つまり、明示的不一 致の使用には、暗黙の不一致の使用よりも,一般的命題と必然的推理を使いえることがはるかに必 要となる。したがって、暗黙の不一致に関しては7-8歳ころから獲得し始めるが、明示的不一致 の使用は11-12歳ころにならないと獲得されないという。 本研究では,. 9歳児段階でも明示的不一致を使用できるが可能性が示唆される例が観察されたの. で,その具体的なプロトコルを下記に示す。 課題25において. 「ぅーんと、ある日、歯磨きをしました。その後に歯磨きをしたのに歯がいたっ、虫歯になってし まいました」 (9歳児) 「ちゃんと歯磨きしていたのに虫歯ができてしまった」. この課題において、. (11歳児). 「歯磨きをすれば虫歯にならない」という一般的な法則を知っているという点. で、明示的不一致と考えられるが、この点については、更なる検討が必要で、本研究では仮説的に 述べるにとどまることにする. 一方,. 9歳児と11歳児の異なる点も複数観察された。. まず、 9歳児段階になると、. 2つの事象の因果的関連が弱い課題で3例ほど続括的結合として物. 語を産出することが出来なかったが、. ず統括的に結合することが出来た。. 11歳児になると2つの事象の因果的関係が強い轟いに関わら.
(10) 大竹. 128. 産出プロトコルの内容についても、. 祥子・高山. 佳子. 9歳児段階で心理的つながりは獲得されてはいるが、. 11歳児に. なると2つの事象を心理的つながりで結合す′る割合が多くなり、半数を占める被験児が観察された り、無関係な2つの事象を抽象化して言語化することが可能になったo この,抽象化の具体的なプロトコ)レを下記に示す。 課題8において. 「う…ん、うーん、. ・・-・. 'どっちも危ない」 (11歳児). 4歳児や9歳児は作話することが出来なかったo他. この課題は、まったく無関係の絵カードで、 の課題と違って、. ---一見無関係である絵カードを「危険」という抽象化された共通点でまとめあげた 点からも,概念化形成が可能になる段階であることが示唆される。 文法に関しても、. 9歳児と11歳児とでは大きな変イヒが見られたo まず、 9歳児では、固有名詞や. 代名詞を用いて、主語と述語を必ず明示するのに対して、 的であったo. また、構造にも違いが見られ、. 11歳児になると、主語を明示せず、省略. 9歳児では接続詞や接続助詞を用いて短文を複数文つ. 11歳児になると、長文ひとつで統合する例が圧倒的に多かったo なげて、帯食するのに対して、 以上のような結果から、言語的な推論を行う上で,プランニングする機能や反対の属性を理解す ること、刺激の選択的受容が9歳児段階から可能になることが示唆される。また、 客観的動機づけで2つの事象を嬢合していることは、 るというPiaget 一方で、. 9歳児段階から. 8嵐以降から思考の自己中心性の減退が始ま. (1969)を支持する結果といえるのではないだろうか。. 9歳児と11歳児の大きな発達的変化は、事象を一般化したり、抽象化することが可能に. なること、自己をモニターする横能がより発達することなのである。本研究でほ、. 11歳児では、因. 果的関連の非常に弱い2つの事象を統合することや、無関係な事象を関係づけることが可能であっ たo. また、非常に省略的であるのに、意味の通る一貫した物語を産出できるのは、刺激の選択的受. 容に加えて、モニター機能によって自己の推論過程を絶えず振り返り確認していると考えられる。 このようなことからモニター機能ヤプラン機能は9歳児から獲得してはいるが、11歳児段階になると、 より機能的になっていくと考えられるo 以上のようなことから、学齢期に入ると、知識の獲得に加えて,プランニングやモニタリングの 機能も獲得し、意識的にも無意識的にもうまく活用して推論を行っているが、高学年になるにつれ て、これらの械能がよりダイナミックになっていくのであろう。 本研究では、子ども′の産出したプロトコ)レをもとに、推論過程の発達について考察したが、健常 児についてのデータを分析するにとどまった.今後の課題としては、本研究のデータをもとに、発 達障害児の推論過程について解きほぐすことがあげられる。発達障害児の産出プロトコルを質的に 分析することによって、発達障害児も健常児と同様の推論過程をたどるのか、また、もし特徴が表 れるのなら、どこにつまずきを抱えているのかを個別的に見極め、今後の発達障害児の具体的な支. 援方法を構築することが今後の課題である去.
(11) 129. 子どもの推論過程に関する研究. 参考文献 藤原政雄. (1964) :′ト学生の言語力の発達.国立国語研究所,明治図書 (1993) :プロトコル分析入門一発話データから何を読むか-.新曜社. 海保博之・原田悦子.. (1990) :一兎矛盾する課題の解決過程における知識の役割,教育心理学研究, 38,. 金野祥子.. 、. -134.. 仲真紀子.. 126. (1983) :接続詞「だから」の獲得過程一論理的推論と経験的推論における「だから」の 31,. 使用の発達.教育心理学研究,. 28-37.. 仲真紀子. (1988) :接続詞「だけど」の使用に見られる推論枠組みの使用とその発達・教育心理学 研究,. 36,. 220-228. 大宮明子・内田伸子(2002). (pp. 29-53).東京:金子書房. 38. 児童心理学の進歩1999年版,. :子どもの思考方略の発達一条件推論課題に.おけるカテゴリー化に基づ 73. く代替例の検索-.心理学研究, (1969). piaget,J.. : Le. 「物と他者」について推論する・. (1999) :日常行動場面における推論-. 大泉郷子・波多野誼余夫.. jugement. (1),. 10-17. et le raisonnement. chez. l■enfant滝沢武久,岸田秀(釈). (1969). ,. 判断と推理の発達心理学.国土社. 佐伯肝編. (1982) :認知心理学講座3一推論と理解-.東京大学出版会 佐伯肝編・土屋俊.. (1991) :認知科学の基礎2一言語への認知的接近-.産業図書. 坂原茂.. (1985) :認知科学選書2一目常言語の推論∴東京大学出版会 (1994) :質問一応答関係検査2一質的分析と会話能力 佐竹恒夫・外山浩美・知念洋美・久野雅樹. の段階設定-.音声言語医学,. 35,. 349-358.. 清水由紀. (2000) :幼児における特性理論の発達一特性・動機・行動の因果関係の理解-・教育心 理学研究,. 48,. 255-256.. (1994) :質問一応答関係検査1一検査の作成とノーマ. 外山浩美・久野雅樹・知念洋美・佐竹恒夫. ルデーター.音声言語医学, & Kephart,C,N.(1947). strauss,A,A,. cbild(Ⅱ )-Progress 杉村智子.. in Theory. 35,. 338-348. : Psychopathology. and. Clinic,. New. and. Education. of. Inc,. : Grune&Stratton,. York. Brain-Injured. the. (1996) :幼児期における推論と想像力の発達一心の理論研究を中心とした研究動向-I. 福岡教育大学紀要,. 45. (4),. 291-298. (1988) :論理的思考の発達過程一差と類についての志向の発達-・田研出版株式会社 住吉チカ. (1998) :カテゴリに基づく帰納推論の発達-5 6歳児の一般帰納論証の確証度判断に 杉原一昭.. ・. 69 (3), 235-241 ついて-.心理学研究, (1988) :テレビ漫画を材料とした物語理解の発達的研究.教育心理学研究, 高橋登・杉岡津岐子. 36. (2).. 内田伸子. (1982) :幼児はいかに物語を創るか?教育心理学研究,. 30. (3),. 内田伸子. (1985) :幼児における事象の因果的統合と産出,教育心理学研究,. 211-222,. 33. (2). 124-134. 内田伸子. (1989) :物語ることから文字作文-一読み書き能力の発達と文字作文の成立過程一読書 科学,. 33. (1). 10-24,. 内田伸子. (1990) :シリーズ人間の発達1、子どもの文章一書くこと考えること-東京大学出版会.
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