Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
多様な文化こそ面白い
Author(s)
福島, 裕之
Journal
歯科学報, 119(3): 3i-3i
URL
http://hdl.handle.net/10130/4925
Right
Description
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多様な文化こそ面白い
福 島 裕 之
台湾に昨日まで出張しておりました。東アジア肺高血圧症学会に参加するためです。学会には台
湾,中国,韓国,日本の4か国から肺高血圧症の専門医が集ったのですが,同じ疾患を扱う医師とい
う共通点とともに,それぞれのお国柄といいますか,文化の違いも感じられて,大変勉強になりまし
た。刺激も受けました。
開催国である台湾の先生方は穏やかで,会長を務められた W 先生はとくに「もてなしの心」にあ
ふれた方でした。私たち日本人の心に素直に響くお心遣いをいただき,感激いたしました。中国の医
師団の代表である J 先生は大変エネルギッシュで,思考の切れ味がよく,「肺高血圧症の診療や研究
を東アジアから(本音は中国から,でしょうか?)変えてみせる」といった気迫が感じられる方でし
た。少々型破りな面がありますが,何となく憎めないところもあり,関西人の,優等生的ではない気
質をもつ福島はすぐに友達になってしまいました。学会の初日にメールでやりとりを始め,福島の発
表の際には「もうすぐ話をするから聞きに来て」と隣の部屋にいる J 先生をお誘いしたりして,今後
も交流を続ける約束をするに至りました。韓国の医師団の代表である C 先生は,韓国語のもつ勢い
と強さそのものを体現したような,パワフルな方でした。でも,いつも後輩に気を配り,講演でも楽
しい話をして,学会を盛り上げる気配りにも一流のものがありました。日本の医師団はといいます
と,もちろんそれぞれいい仕事をいたしました。講演をするにあたり,もっともきちんとした準備を
したのは日本の医師であったと思います。福島も肺高血圧症の新たな,そして東アジアに特徴的な原
因を提唱して,東アジアの医師の団結と協力を呼び掛けて参りました。
学会の終わりに,主だった参加者が W 先生に招かれて懇親会を共にしたのですが,お国柄や文化
の違いは依然として存在するものの,それ以上に4か国の人々の共通点を感じることができました。
中国料理をいただく丸テーブルを囲んで中国語,韓国語,日本語,そして共通語である英語が飛び交
い,隣のテーブルに出張をしては挨拶と杯を交わし,何ともなごやかで賑やかな時間が流れていきま
した。そう,昭和の(に限ったことではありませんが)日本で繰り広げられていた「古き良き飲み会」
の温かさと親密さがそこにはあったように思います。
本日は市川総合病院での日常に戻っています。朝,小児科チームの皆と挨拶をし,外来でお子さん
を拝見し,病院全体の医療安全に関する仕事もして,一日が過ぎていきます。私が東京歯科大学に赴
任をしてちょうど1年がたちました。あっという間であったようにも思いますし,その間たくさんの
役目や仕事をさせていただいたので,とても長かったように感じられるときもあります。私にとっ
て,もっとも有意義であったことは,東京歯科大学や市川総合病院という新しい文化を体験すること
ができたことです。ことさら,医療安全管理部の仕事をしておりますと,病院全体の様子がわかり,
異文化体験を深めることができました。
文化には正しい文化や誤った文化というものはなく,個々の文化には,尊重されるべき,形成の歴
史があるはずです。それぞれの文化に敬意を表し,共通点を見出したうえで,愛情のある意見交換を
しながらお互いの文化をよりよいものにしていく。そのような仕事を,東京歯科大学で,市川総合病
院でいたしたいと思っております。
W 先生を見習って,こういうもてなしをしてみよう。J 先生とまったく同じやり方は自分には向か
ないけれど,ときには少しアグレッシブな意見も述べてみよう。C 先生のように後輩たちを激励して
いこう。でも言葉はもう少し優しい方がいいかな。さまざまな思いが,いま私のなかで渦巻いていま
す。
海外で講演をすることは未だに得意とはいえませんが,招いていただいてよかったと心から思いま
す。多様な文化こそ面白いと再認識できた,素敵な時間でした。これからも,多くの方々との出会い
を楽しみにしたいと思います。 (東京歯科大学市川総合病院小児科 教授)
巻 頭 言 ③