デジタル一眼レフカメラを
用いた光害調査
明星大学 天文学研究室 11s1019 小野 和論
目次
1. 要旨 2. 夜空について 2.1 光害とは 2.2 光害の策定 2.3 夜空を明るい要因 3. 撮影環境 3.1 デジタル一眼レフカメラとは 3.2 観測機材 3.3 撮像素子 3.4 素子サイズの計算 4.撮影手順 4.1 カメラ設定 4.2 目標天体 4.3 環境設定 4.4 撮影方法 5.夜光測定の原理 5.1 星の等級の求め方 5.2 ピクセルあたりの立体角を求める 5.3 raw2fits の使用 5.4 輝度の代入 6.測光 6.1 Makalil とカウント値 6.2 測光手順 7.観測結果 7.1 12 月 3 日での明星大学における時間変化 7.2 12 月 9 日での明星大学における時間変化 7.3 12 月 22 日での明星大学における時間変化 7.4 明星大学における月齢での変化 7.5 大学内における環境変化 7.6 郊外で撮った時の場所の変化 8.考察 9.謝辞 10.参考文献1. 要旨
小さいころから各地に出かけていきそこで星空を見るのが昔からの趣味であった。近年では同じ場所に行ったと しても光害がひどく、昔のような星空が見えなくなっているとにも感じるほど空が明るくなった様に思える。 東日本大震災が起き、計画停電などが起きてから日本ではエネルギー問題についてより一層注目が集まった。エ ネルギーの節約が求められているのに関わらず、いかに日本がエネルギーの無駄遣いをしているのかを一般的に 知る必要があるのではないかと考え本研究では東京近辺の幾つかの地域、どんな環境において光害があるか、夜 空にどのような影響があるかを調べた。その際、本研究は今後も続けていける様観測機材は手に入りやすく精度 が出るものを使用し、ソフトはフリーソフトを用いた。 その結果、夜空の1 立方秒角あたりの等級について次のようなことがわかった。 ・場所の変化としては、都心から離れた方が空が暗くなる傾向はあるが、比較的近くに光源があるかによって変 わる。 ・明星大学構内の同じ場所で撮影した場合、曇り、晴れでは1~1.5 等変わった。 ・大学では深夜になるにつれ暗くなっていき21:30~3:00 では 1 等ほどの差があった。 :・満月時は場所によらずに、18 等級ほどになった。2.夜空について
2.1 光害とは
光害(こうがい、ひかりがい)などと呼ばれるが公害と分けるためにひかりがいと称される事が多い。 光害とは人口光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用で光が漏れる(漏れ光)事によって良好な「光環 境の形成」が阻害されている状況、又はそれによる悪影響の事を光害と定義する。 そもそも照明の目的はその地域の行動、行為によって多様でありそれぞれ異なった特徴を持っている。昔か ら生活に密着した個性のある光が存在している。街並みに応じた文化的な灯り、夏の花火、建物、樹木、船 舶などのイルミネーション、美しい夕日や星 空の鑑賞等それらを良好な光環境と呼ぶ。 近年では科学技術の発展や社会環境の変化によって光環境が阻害されつつある。24 時間営業のコンビニや 自動販売機、夜間のライトアップなどが主な要因である。特に天体観測において障害となるのは夜空の上方 に向けた夜間照明である。これらは大気を照らし、夜空を明るくしている大きな要因の一つである。 http://www.arche-arche.net/journal9/images/journal9-2-1.jpg 上図は夜間の街明かりを宇宙から撮影したものである。 先進国では特に光害の影響が多く、日本においては島の形が分かり東名高速まで見えるほどである。2.2 光害の策定
社会の中で照明はとても重要な役割を果たしている。夜間、暗がりを歩くときなど現代では照明が無ければ安全 に歩く事はできない。なので、すべての照明を光害と定義する事はできない。環境省でも光害対策マニュアルを 出しているが「光害対策」=「照明を消す、撤去する」という事ではなく必要な照度、照明目的を確保しつつ、 周囲への悪影響を低減することとある。 ではどのようなものを光害と呼ぶのか。 地域照明環境計画策定マニュアルより https://www.env.go.jp/air/life/m-syomei/ 上図の照明領域が本来照らすべき所で、その照明領域から漏れた光を漏れ光という。 本来、照明領域だけ照らせばよいものなのでこの漏れ光が良好な光環境を阻害するということで光害に定義され る。 さらにこの漏れ光の内、光の量、方向、またはその両者によって人の活動や生物に悪影響を及ぼす光を障害光と 呼ぶ。悪影響には夜空の明るさの拡大、人に対するグレア(まぶしさ)、動植物の生育への影響などを差す。 この障害光も光害と定義する。2.3 夜空が明るい要因
夜空の明るさを定義する上で人や地表が及ぼしている幾つかの要因はあるが、もしも人が地球にいない、光源が 地上に無く、月もでていない場合を考える。地表からの光源がない場合でも大気には光が届いていて夜空はある 程度の明るさを自然に有している。これを「夜天光」と呼び、「大気光」「黄道光」「星野光」の 3 つが主な光源 とされる。 1、「大気光」 太陽から放射された特に波長の短い紫外線などに地球の上層大気の分子や原子が刺激されて発する光。 大気層に沿って広く分布するため地表近くを観察する程明るさは増すが、天頂から半径 30 度以内では殆ど差は 見られない。 2、「黄道光」 太陽系内に存在する微粒子が太陽光によって散乱されて生じる。天の川よりも淡いため夜間の暗い場所でしか観 測できない。 3、「星野光」 恒星や星雲の光の集積である光。 大気光が23.4 等級、黄道光が 22.5 等級、星野光が 22.5 等級の明るさを持っている。そのため地球表面から光 学観測する場合は22.5 等級以下の光度は観測する事はできない。 この夜天光の他に地球では月明かりの影響があるためその影響を考える。 4、「月」 月は太陽の光を反射して光っているがその光度は強く満月時では‐12 等級、半月時でも‐10 等級ほどの明るさ がある。そのため天体観測においては避けるべき対象であり夜空を明るく照らしている。 最後に明るく照らしている物として人口光があげられる。 5、「人口光」 自動車や上方方向に発せられた光。近年では自動販売機なども要因になっている3.撮影環境
3.1 デジタル一眼レフカメラの原理
今研究は天体写真を撮るためデジタル一眼レフカメラを使用した。 デジタル一眼レフカメラを説明する。以下にデジタル一眼…(略) デジタルとはフィルムカメラと異なり撮影風景をデジタルデータとして保存できるカメラ。そして、一眼とはカ メラに使われているレンズが一つであるという事。レフとはレフレックス(光の反射)の意味でカメラ本体内部 のミラーで入射した光を反射をさせることにより1 つのレンズが撮影とファインダーの役割を担うことのできる もの。 レフレックスカメラと対照的なものをミラーレスカメラという。こちらはカメラ内部にミラーが入っていないた めファインダーがついておらずそのまま液晶にライブビューが映し出される。 左図一眼レフカメラ 右図ミラーレスカメラ http://diji1.ehoh.net/contents/tigai.html より画像引用 データ撮像に当たっては目標対象が天体よりも光度が低い夜空を撮影したため絞り、露出時間、ISO 感度も対象 に合わせながら調節した。 絞りとはカメラレンズの穴の大きさを変化させる事によりレンズに入る光の量をコントロールするものである。 絞りの値が低いほどたくさんの光を拾う事ができるためシャッタースピードが長くなくとも光量が小さい光源 を写真に写す事ができる。 絞りの数字は大きいほどレンズの前の穴の径が小さくなり、入射する光量が少なくなる。その分、シャッターを 長い時間開けておかないと同程度の光量が取り入れられない。しかし、焦点付近の光域が狭くなるので背景まで くっきり移すことができる。 f1.8 f16 http://www.sony.jp/support/ichigan/enjoy/photo/word6.html より画像引用露出時間(シャッタースピード)とはカメラで写真を撮る際にシャッターを切ってレンズ前のふたを開けている 時間の長さの事を差す。 シャッターを開けている時間が長ければ長いほどセンサー部分に光が貯まるためより多くの光子を取り組むこ とができる。 左図 シャッターを切っていない状態。ミラーによってファインダーに光路が移っている 右図 シャッター-が開いたことでセンサーに光子が入り込む。 ISO 感度とはデジタルカメラが光を捕える能力を示すもの。デジタルカメラは撮像素子に当たった光を電気信号 に変えて処理をするためISO 感度を高くすれば光を電気信号に変えた値は高くなる。ISO 感度を 2 倍にする事 で電気信号は2 倍になる。 以上の事から ISO 感度 ∝ 露出時間!! という関係が分かる。 ISO 感度を 2 倍にする事で撮像素子に当たる光の量が 2 倍になるため適正露出の半分の時間で同等の光量を取り 込むことができる。ISO400、露出時間 1/10 s で写真を撮った場合 ISO 800 まで上げたとすれば露出時間は 1/5 s で適正露出になる。 今研究では対象を夜間の天体としたためf 値はなるべく低く露出時間は長め、ISO800 と設定して撮像を行った。
3.2 観測機材
図3-1 図3-2 ・Canon EOS 10D を使用した。(図 3-1) ・24 ㎜~70 ㎜の望遠レンズを使用。(図 3-2) 以下、Canon のカメラカタログから抜粋 http://cweb.canon.jp/e-support/faq/answer/eosd/9102-1.html [カメラ部] 形式 ストロボ内蔵、デジタル一眼レフレックス AF・AE カメラ 撮像画面サイズ 22.7×15.1mm [撮像素子] 形式 高感度・高解像度大型単板カラーCMOS センサー 画素数 カメラ部有効画素:約 630 万画素 総画素:約 650 万画素 アスペクト比 3:2 カラーフィルター方式 原色フィルター ローパスフィルター 撮像素子前面に配置、取り外し不可 [露出制御] ISO 感度 簡単撮影ゾーン:Auto 応用撮影ゾーン:ISO100/200/400/800/1600 相当/拡張により H(3200) [シャッター] [動作環境] 使用可能温度 0℃~+40℃ 使用可能湿度 85%以下形式 電子制御式フォーカルプレーン式全速電子制御メカシャッター シャッター速度 1/4000~30 秒(1/2、1/3 段ステップ)、bulb、X=1/200 秒 レリーズ方式 ソフトタッチ電磁レリーズ セルフタイマー 10 秒後撮影 リモコン リモートスイッチ RS-80N3 対応 [大きさ・質量] 大きさ 149.7(幅)×107.5(高さ)×75.0(奥行)mm 質量 重量 790g(電池・CF カード別)
3.3 撮像素子
今研究ではCOMS センサーの撮像素子で構成されているカメラを使用した。 電荷のバケツリレーを行うCCD とは違い COMS は素子一つ一つに光子を読みだす装置が設けられている。その ため、CCD に比べ光子の読み出しが素子ごとバラバラになってしまいノイズの発生が起こりやすかったり感度 はCCD の方が勝る。そのかわり、CCD よりも単価であり素子が小さいため消費電力も少なく、スミアやブルー ミングを抑える事ができる。 CCD や CMOS など他の撮像素子には色の識別能力はなくカラーフィルタを用いて分光を行う必要がある。その ため、一般的な分光方法としてベイヤー配列を用いられている事が多い。 ベイヤー配列とは右図のような配列になっておりRED、BLUE の素子と二つの GREEN の素子で構成されている。ここで、G の画素だけ 2 倍に設けているのは人間の分光感度が 緑付近をピークとしていてG の解像度が見かけ上の解像度を向上させるためである。3.4 素子サイズの計算
素子サイズを計算する場合は画像処理ソフトを起動し センサー幅から素子の数(ピクセル数)を割る事で 素子一個当たりの大きさを出す事ができる。 素子サイズ= センサー幅 ピクセル数 右図はすばる画像処理ソフトマカリを使いピクセル数を 出したもの。 FITS ヘッダーをクリックすると写真の詳細情報が出てくる。 NEXIS1 が x 軸のピクセル数で NEXIS2 がy軸のピクセル数になっている。 EOS 10D はセンサー幅が縦 22.7mm なので 22.7 1544 = 0.0147 𝑚𝑚4.撮影手順
4.1 カメラ設定
夜の星景写真をデジタルカメラで撮る際に先に以下のカメラ設定を行った。 ・カメラ内の時間を合わせる。 ステラナビゲーターを用いて基準星の光度を調べるためにデジカメの時計の時間を合わせておく。 デジタルカメラの時計はバッテリー切れなどでずれている事があるため注意する。 ・長時間ノイズ低減をON にする。 暗 い 場 所 で 撮 影 し た と し て も 黒 い 点 々 な ど が 移 る 事 が あ る 。こ れ を カ メ ラ の 暗 電 流 ノ イ ズ と い い 撮 影 素 子 に 光 が 当 た り 電 気 信 号 に 変 換 さ れ る 時 、回 路 内 部 の 熱 な ど に よ り 余 計 な 電 子 が 発 生 で 起 き る 。 長 時 間 露 出 を 続 け て い る 場 合 こ の 暗 電 流 ノ イ ズ も 溜 ま る が こ の ノ イ ズ に は 規 則 性 が あ り 同 じ 条 件 で 撮 影 す る 場 合 、ほ ぼ 同 じ 場 所 に 同 じ よ う に ノ イ ズ が 発 生 す る 。長 時 間 ノ イ ズ 低 減 を O N に す る 事 で 撮 影 後 全 く 同 じ 条 件 で シ ャ ッ タ ー を 閉 じ た 状 態 で 写 真 を 撮 り 、撮 影 画 像 か ら ノ イ ズ を 差 し 引 い た 画 像 を 出 力 す る 。 ・ 高 感 度 ノ イ ズ 低 減 を オ フ に す る 上 述 の 暗 電 流 ノ イ ズ は I S O を 高 く し た 時 に も 表 れ る 。 I S O が 2 倍 に な っ た 分 、 2 倍 余 計 な 電 子 を カ ウ ン ト し て し ま う た め 高 く す れ ば す る ほ ど 大 き く ノ イ ズ が 出 る 。 そ の た め デ ジ タ ル カ メ ラ に は 高 感 度 ノ イ ズ 低 減 を 減 ら す 機 能 が 備 わ っ て い る 。が 、こ の ノ イ ズ 低 減 機 能 は 低 感 度 の 時 で も 働 い て し ま う た め に 低 感 度 時 に 解 像 度 が 僅 か だ が 低 下 す る 恐 れ が あ る 。 そ の た め 、 こ の ノ イ ズ 低 減 機 能 は オ フ に し て お く 。 ・ 撮 影 デ ー タ 設 定 は R AW に し て お く 。 R AW デ ー タ と は 「 生 デ ー タ 」 と 呼 ば れ る 未 加 工 の 写 真 デ ー タ の 事 を 差 す 。 デ ジ タ ル カ メ ラ は セ ン サ ー に 当 た っ て 出 て き た 信 号 を デ ジ タ ル デ ー タ に 変 換 し 画 像 と し て 出 力 、保 存 す る 際 デ ー タ を 圧 縮 加 工 し て J P E G な ど に 変 換 す る 。 そ の 際 、 圧 縮 す る 時 な ど に 様 々 な デ ー タ が 失 わ れ て し ま う た め 解 析 を 行 え る よ う R AW デ ー タ で 保 存 を す る 。 ・ フ ラ ッ シ ュ の 設 定 は O F F に し M F ( マ ニ ュ ア ル フ ォ ー カ ス ) で 撮 影 。 暗 い 所 で は フ ォ ー カ ス は 合 わ せ ら れ な い た め AF ( オ ー ト フ ォ ー カ ス ) で は 撮 影 す る 事 は で き な い 。4.2 目標天体
図4-2 参照。オリオン座の天頂方面から見て ・320Ori :4.20 等級 ・47ωOri :4.50 等級 ・560Ori :4.76 等級 場所ごとの時間変化をみるためにも目標天体はすべて上の 3 つで行った。 明るい星では夜空の影響が少なくなってしまうが暗すぎる 星ではそもそも写らなくなってしまうため4~5 等級の間 の星を選んで撮影を行った。 さらになるべく等級差がないようにするためこの3 つを 選んだ。 図4-2 4 . 3 環 境 設 定 夜 光 を 観 測 す る 際 に な る べ く 同 じ 撮 影 環 境 で 撮 る た め 以 下 の 事 に 気 を 付 け た 。 ・ 明 星 大 学 で 撮 る 際 三 脚 は 同 じ 位 置 に 立 て る 。 ・ 三 脚 は 水 平 機 を 使 い 水 平 に す る 。 ・ カ メ ラ の 高 さ も 揃 え て 撮 影 を 行 う 。 ・ 郊 外 で 撮 る 際 に は 目 標 天 体 が 天 頂 時 に 来 る 時 間 帯 を 調 べ 天 頂 時 の 撮 影 を 行 う 。 ・ な る べ く 月 明 か り 、天 候 の 影 響 を 受 け な い よ う に 新 月 又 は 月 齢 が 低 い 時 期 、雲 量 の 低 い 時 を 狙 い 撮 影 を 行 う 。4.4 撮 影 方 法
カ メ ラ 設 定 I S O 感 度 : 8 0 0 f 値 : 2 . 8 露 出 時 間: 1 0 秒 焦 点 距 離: 3 5 ㎜ 1 . オ リ オ ン 座 が 真 ん 中 へ 来 る よ う に 入 れ る 。 2 . 焦 点 距 離 は 3 5 m m 、 フ ォ ー カ ス は ∞ に 合 わ せ る 。 3 . 露 出 時 間 が 1 0 s の た め リ モ コ ン を 使 用 し 撮 影 。 4 . 1 0 s の 間 触 ら な い 。 時 折 、 車 や 懐 中 電 灯 な ど の 光 が 差 し た 場 合 は 取 り 直 し 。 冬 の 時 期 、特 に 郊 外 の 場 合 は 気 温 が 低 く な り レ ン ズ が 曇 っ た り 、氷 点 下 で カ メ ラ が 動 か な く な る た め 木 炭 カ イ ロ を 使 用 し そ の 都 度 温 め る 。5.夜光観測の原理
6.1 星の等級の求め方
星の等級は紀元前2 世紀頃、ギリシャの天文学者のヒッパルコスが肉眼で見える最も明るい 20 個の恒星を 1 等 星、次に明るい星を2 等星、その次が3等、4等、5等、肉眼で見える限界の星を 6 等星、と 6 段階にグループ 分けをした。その後、イギリスの天文学者ハーシェル親子によって1等星と6 等星の明るさの差は 100 倍である 事と1 等と 2 等、2 等と 3 等と各等級ごとの明るさの比が約 2.5 倍違う事を発見した。ハーシェル親子の結果を 元に等級を式で表す観測技術が進歩してくると数値としてしっかり表す必要が出てきた。そこで、1853 年、イ ギリスのポグソンが定量的に測定を行い「1 等星は 6 等星の 100 倍明るい」という観測結果を元に次のように定 義した。 2 つの星の等級を𝑚!= 1 , 𝑚! = 6 としそれぞれの明るさを𝑏!, 𝑏! とすると 𝑚!− 𝑚! = 5 𝑏! 𝑏!= 100 となり、常用対数を用いて表すと log 𝑏1 𝑏2 = 2 5 × 𝑚!− 𝑚! または 𝑚!− 𝑚! = −2.5× log(𝑏1 𝑏2) と表せる。 これより、 基準星の等級:𝑀!" 夜空のバックグラウンドの単位立体角あたりの等級:𝑀!" 基準星の明るさ:𝐵!" 夜空のバックグラウンドの単位立体角あたりの明るさ:𝐵!" とすると 𝑀!"− 𝑀!" = −2.5× log(𝐵!" 𝐵!") ∵ (𝑀!" < 𝑀!") となり、求めたい𝑀!" は 𝑀!" = 𝑀!"+ 2.5× log(𝐵!" 𝐵!") で求まる。夜空の立体角 カメラレンズ カメラセンサー θ 焦点距離 f 素子サイズ d
6.2 ピクセル辺りの立体角を求める
マカリによって測定した値はピクセルあたりに検出された光子の量なので1ピクセルが見込む空の立体角を求 める。 カメラーセンサーの素子サイズ一辺の大きさをd とするとその一辺が見込む角θは焦点距離fとの関係から 𝑡𝑎𝑛𝜃 2 = 𝑑 2 𝑓 と、求められる。 θ=の式に展開すると 𝜃 = 2× tan!![𝑑 2𝑓] となる。 これより、一辺d の正方形のピクセルが見込む空の立体角は𝜃!となる。6.3 raw2fits の使用
マカリを使う際、RAW データのままでは解析する事ができないため RAW データを FITS ファイルにする。 そのため、今回は星空公団の作成したraw2fits を使い変換を行った。 h t t p : / / w w w . k o d a n . j p / p r o d u c t s . p h p ベイヤー配列はG の画素が 2 倍になっており、raw2fits で変換する時に G1、G2 の加算した値を出力している。 4 ピクセルを合計しているため立体角θはそれぞれ縦横 2 倍した値になるので実効的な立体角Ωは 𝛺 = 4𝜃! となる。 今 回 は 素 子 サ イ ズ 0 . 0 1 4 7 m m 、 焦 点 距 離 3 5 m m で 行 っ た の で 立 体 角 𝛺 は 𝛺 = 7506 秒角 と な る 。
6.4 輝 度 の 代 入
単 位 立 体 角 あ た り の 夜 空 の 等 級 𝑀!" = 𝑀!"+ 2.5× log(𝐵!" 𝐵!") の式から、単位立体角あたりの夜空のバックグラウンドの等級を1 平方秒角あたりの等級として算出する。 ここで基準星の明るさ𝐵!" については 𝐵!" = マカリで調べた基準星のカウント値 とする。 一方、夜空のバックグラウンドについてはマカリではピクセルあたりのカウント値が示されるので、それを1 ピ クセルが見込む立体角 𝛺 = 7506 秒角 の数値で割って 𝐵!" = (マカリで調べた1ピクセルあたりの夜空のカウント値) 𝛺 とする。 これより夜空の1 平方秒角あたりの夜空のバックグラウンドの等級𝑀!" が求まる。5.測光
フ リ ー ソ フ ト の M a k a l i ’l ( マ カ リ ) を 使 用 。 今 回 は 夜 空 の バ ッ ク グ ラ ウ ン ド を 調 べ る た め に 基 準 星 を 用 い て 背 景 の 等 級 を 測 定 す る 。 人間の分光感度は緑にピークがあるので今回はGREEN のカラー画像を使い測光を行った。5.1 Makali’l( マカリ)とカウント値
M a k a l i ’l ( マ カ リ ) とは FITS データを解析する事ができるフリーソフトである。取り込んだ画像データか ら測光を行いカウント値などを計測する事ができる。 カ ウ ン ト 値 と は カ メ ラ セ ン サ ー に 入 っ た 1 ピ ク セ ル 辺 り の 光 の 量 を 差 す 。 カ ウ ン ト 値= 光 子 の 数 で は な く 、 使 っ た カ メ ラ や セ ン サ ー 感 度 に よ っ て も 変 わ り 、 解 析 ソ フ ト に よ っ て も 異 な る の で 撮 影 素 子 一 つ 一 つ に 検 出 さ れ た 光 子 の 量 と い う 事 に な る5.2 測光手順
下 左 写 真 は オ リ オ ン 座 の 一 部 。 白 丸 で 囲 っ た 星 は β 星 の リ ゲ ル 。 下 右 図 は そ の リ ゲ ル を マ カ リ を 使 い 3 D グ ラ フ に し た も の 。 図 の オ レ ン ジ の 部 分 が バ ッ ク グ ラ ウ ン ド の カ ウ ン ト 値 、針 の よ う に な っ て い る の が 基 準 星 の カ ウ ン ト 値 。 基 準 星 の カ ウ ン ト 値 は 全 体 の カ ウ ン ト 値 か ら バ ッ ク グ ラ ウ ン ド の カ ウ ン ト 値 を 引 い た 値 に な る た め 全 体 の カ ウ ン ト 値 − 背 景 の カ ウ ン ト 値 = 基 準 星 の カ ウ ン ト 値 と い う 式 に な る 。マ カ リ の 開 口 測 光 を 用 い て 測 光 を 行 と 。 開 口 測 光 で は 内 円 ( 赤 色 ) が S TA R 外 の 2 重 線 が S K Y の 値 を 差 し そ れ ぞ れ の 座 標 ピ ク セ ル 数 な ど を 計 算 し て 表 示 し て い る 。 C o u n t は S T A R 総 計 - S K Y の カ ウ ン ト × ピ ク セ ル 数 な の で 、 基 準 星 は C o u n t の 値 、 バ ッ ク グ ラ ウ ン ド は S k y の 値 を 読 む こ と で カ ウ ン ト 値 を 知 る 事 が で き る 。 マ カ リ は こ の 他 に グ ラ フ を 用 い て カ ウ ン ト 値 の 値 を 読 む こ と が で き る 。 右 図 の よ う に 写 真 の 上 か ら 線 を 引 く 事 で 縦 軸 の 線 上 に あ る カ ウ ン ト 値 を 読 み 取 る 。 こ の 場 合 、 上 か ら ま っ す ぐ 垂 直 に 引 い た た め 写 真 の 上 か ら 下 に か け て 段 々 と カ ウ ン ト 値 が 高 く な っ て い る 事 が 分 か る 。
7.観測結果
7-1 12 月 3 日の明星大学における時間変化 月齢 12.1
大学構内で撮像した結果を以下の表に示す。
表7-1-1 12 月 3 日、大学内での等級の時間変化
図7-1-2 12 月 3 日、大学内での等級の時間変化
時間
32Ori
47ω Ori 56Ori
平均
21:30
17.19
17.12
16.73
17.01
22:00
17.38
17.35
16.95
17.23
22:30
17.59
17.52
17.20
17.43
23:00
17.81
17.78
17.42
17.67
23:30
17.88
17.94
17.55
17.79
0:00
17.87
18.04
17.72
17.88
0:30
18.04
18.12
17.79
17.98
1:00
18.12
18.15
17.80
18.02
1:30
18.08
18.15
17.76
17.99
2:00
18.20
18.23
17.88
18.10
2:30
18.20
18.34
18.07
18.20
3:00
18.28
18.32
17.97
18.19
3:30
18.28
18.42
18.01
18.24
16.5 16.7 16.9 17.1 17.3 17.5 17.7 17.9 18.1 18.3 18.5 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30 1:00 1:30 2:00 2:30 3:00 3:30 等級 時間 32Ori 47ωOri 56Ori 平均図7-1-3 写真をy軸で切った時の時間変化 図7-1-3 を見ると時間帯が遅くなればなるほど高度が低ければ低いほどカウント値が高くなっている。 21:30 ではまだ町明かりが強く 23:30 頃目標天体が天頂に上がってくる頃を境に高度のカウント値の差がなくな っている。 右側のカウント値がピークを過ぎた後下がってしまっているのはフラット処理を行っていないので周辺減光に よるものと考えられる。 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
カ
ウ
ン
ト
数
y軸 ピクセル
21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30 1:00 1:30 2:00 2:307-2 12 月 9 日の明星大学における時間編 月齢 16.1
大学構内で撮像した結果を以下の表に示す。
表7-2-1 12 月 9 日、大学内での時間変化
図7-2-1 12 月 9 日、大学内での時間変化 時間 32O ri 47ωO ri 560O ri 平均
21:00 17.87 17.93 17.60 17.80 21:30 17.89 17.93 17.59 17.80 22:00 18.18 18.21 17.79 18.06 22:30 18.13 18.16 17.79 18.03 23:00 18.33 18.28 17.99 18.20 23:30 18.35 18.43 18.05 18.28 0:00 18.49 18.45 18.19 18.37 0:30 18.48 18.45 18.17 18.36 1:00 18.44 18.53 18.16 18.38 1:30 18.59 18.58 18.25 18.47 2:00 18.46 18.46 18.10 18.34 2:30 18.45 18.58 18.17 18.40 3:00 18.39 18.37 18.17 18.31 3:30 18.43 18.45 18.18 18.35 17.5 17.7 17.9 18.1 18.3 18.5 18.7
等級
時間
32Ori 47ωOri 560Ori 平均図7-2-3 写真をy軸で切った時の時間変化 図7-2-3 は 12 月 3 日の時間帯より 30 分早く撮影したもの。21:00 から 21:30 と 30 分の間でも大分差が大き い。 0 500 1000 1500 2000 2500
カ
ウ
ン
ト
数
y 軸ピクセル
21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 0:30 1:00 1:30 2:00 2:307-3 明星大学 12 月 22 日 月齢 29.1 大学構内で撮像した結果を以下の表に示す。
図7-3-1 12 月 22 日、大学内での時間変化
図7-3-2 12 月 22 日、大学内での時間変化
時間
32O ri
47ωO ri 560O ri
平均
21:30
18.47
18.51
18.26
18.41
22:00
18.55
18.58
18.23
18.45
22:30
18.80
18.80
18.37
18.66
23:00
18.84
18.85
18.52
18.74
23:30
19.03
19.04
18.77
18.95
0:00
19.02
19.01
18.70
18.91
1:00
19.08
19.15
18.80
19.01
1:30
19.09
19.09
18.83
19.00
2:00
19.16
19.17
18.81
19.05
2:30
19.34
19.34
19.08
19.25
18.0 18.2 18.4 18.6 18.8 19.0 19.2 19.4 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 0:00 1:00 1:30 2:00 2:30 等級 時間 32Ori 47ωOri 560Ori 平均図7-3-3 写真をy軸で切った時の時間変化 図7-3-2 の時間帯が飛び飛びになってしまっているのは時間ちょうどにとる事ができなかったため 図7-3-3 を見ると満月時に比べ高度のカウント値の差が少なくなっている事が分かる 0 500 1000 1500 2000 2500
カ
ウ
ン
ト
数
y 軸ピクセル
21:00 22:00 22:30 23:00 0:00 0:30 1:00 1:30 2:00 2:30 3:007-4 明星大学における月齢による変化の値
満月の月齢はおよそ15 なので 3 日と 9 日で違いは 0.8 等ほど変わった。 新月時は最高で1.5 等ほど変わる事が分かった。 時間帯の変化として深夜帯になればなるほど等級が暗くなっている事が分かった。 図7-4 大学内における日月齢での変化7-5 大学内での環境変化
16.5 17.0 17.5 18.0 18.5 19.0 19.5 等級 時間 12月3日 月齢12.1 12月9日 月齢16.1 12月22日 月齢29.1 平均 16.5 17.0 17.5 18.0 18.5 19.0 19.5 新月・晴れ 満月 曇り等級
大学内環境変化
32Ori 47ωOri 56Ori 平均図7-5 大学内における曇り時、満月時比較
7-6 場所ごとの変化
図7-6 は大学から離れた場合の等級の変化。 図7-6 場所ごとの変化 図7-6 を見ると満月時では大学から離れ都心部の光が届かなくとも 18 等級ほどになってしまう事が分かる。 16.0 17.0 18.0 19.0 20.0 21.0 22.0等級
場所の変化
32ori
47ωori
56Ori
平均
図7-6-1 場所ごとのy軸の変化 図7-6-1 では都心部と地方での高度による明るさによる変化を見ている。 すべて、オリオン座が天頂に来た時に撮影を行った。 0 100 200 300 400 500 600 700