Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
歯科領域におけるペインクリニック概論(特に非歯原性
歯痛について)
Author(s)
半田, 俊之; 一戸, 達也
Journal
歯科学報, 115(1): 35-37
URL
http://hdl.handle.net/10130/3552
Right
―――― カラーアトラス ――――
歯科領域におけるペインクリニック概論
(特に非歯原性歯痛について)
いち のへ たつ や はん だ とし ゆき半 田 俊 之,一 戸 達 也
東京歯科大学歯科麻酔学講座カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説
はじめに 歯科臨床を行っていると,患者は歯が痛いと訴え ているが肉眼的にもレントゲンにおいても全くう や歯周疾患が見当たらない症例に出会う事がある。 そんな時,症状を取り除きたい一心で抜髄などを 行っていませんか? このような症例に対し2011年10月に日本口腔顔面 痛学会から「非歯原性歯痛ガイドライン」1) が発行さ れた。そして日本歯科麻酔学会から「非歯原性(筋 性・神経障害性・神経血管性)歯痛の診断と治療の ガイドライン」2) が発行された。非歯原性歯痛とは上 述したような,「歯及び歯周組織に原因がないにも かかわらず歯に痛みを感じる状態」である。このよ うな症例は,来院する9%の患者に歯原性歯痛と非 歯原性歯痛が混在しており,3%は非歯原性歯痛患 者であると報告されている3) 。これらのことからも, 非歯原性歯痛の診断は非常に重要となっていきてい る。 非歯原性歯痛のメカニズムと分類 通常,歯痛は三叉神経の疼痛受容器を介して認識 される。しかし,非歯原性歯痛はこのメカニズムと 異なる経路で歯痛を発生させる。そして,発生メカ ニズムから,関連痛,神経障害性疼痛,中枢におけ る神経伝達物質などの変化や情報処理過程の変調の 三つに分けられる。非歯原性歯痛は,発症の原疾患 により図2に示す痛みが存在する。 1.筋・筋膜性歯痛 筋・筋膜性歯痛は,主に咬筋や側頭筋の筋・筋膜 痛が原因であることが多い4) とされている。筋・筋 膜痛患者のうち,非歯原性歯痛を訴えている患者は 11%であるという報告5) や,筋・筋膜痛患者の54% に関連痛があり,その関連痛が歯痛として現れる症 例は49.6%あるとの報告6) もある。 臨床症状は,持続性の鈍痛である事が多い。診断 方法として,患者の訴える歯に対し局所麻酔を行っ ても歯痛が消失しない,また周囲の筋肉を触診する 事により歯痛が再現されることで診断がつく事が多 いのが特徴である。臨床上,Travell の関連痛のパ ターン4) (図4)と一致することも多く,図5の症例 は咬筋の一部を押すことにより,上顎臼歯部に痛み を訴えているところである。 2.神経障害性歯痛 神経障害性歯痛は,末梢から中枢に至るまでのど こかの部位に障害が生じ痛みを認識する。抜髄や根 管治療後におこる難治性の痛みは神経障害性歯痛の 可能性もある。神経障害性歯痛は,発作性神経障害 性歯痛と持続性神経障害性歯痛に分類される。 発作性神経障害性歯痛には三叉神経痛や舌咽神経 痛などがある。三叉神経痛は激しい電撃様疼痛を呈 し,洗顔,ひげそり,歯磨き等で痛みを誘発する。 頭部 MRI を撮影すると,図6のような血管と三叉 神経の強い接触が認められることが多い。患者は, 顔面領域にトリガーゾーンが存在し歯痛と感じるこ とが多いため,歯科に受診することが多い。 持続性神経障害性歯痛は,代表的な疾患に帯状疱 疹後神経痛が原因で生じる歯痛がある。症状として 痛覚過敏やアロディニアがある。 3.神経血管性歯痛 神経血管性頭痛である片頭痛や群発頭痛の関連痛 としておこることが多く,初発症状が歯痛である事 が多いため歯科に来院することも多い7) 。上顎の臼 歯部に痛みを感じることが多い。 4.上顎洞性歯痛 上顎洞炎や上顎洞癌などの症状の一つとしておこ る。原因としては,原疾患の上顎洞内の内圧亢進に よる。 5.心臓性歯痛 急性冠症候群(狭心症や心筋梗塞など)により生じ る歯痛であり,その4%に歯痛が観察されていると 報告されている8) 。症状を感じる部位は左側の臼歯 部である。 6.精神疾患または心理社会的要因による歯痛 身体表現性障害や大うつ病性障害などの身体症状 の一つとして歯痛が生じる場合がある。 7.特発性歯痛 明らかな原疾患が特定されない場合,特発性歯痛 に分類する。 8.その他の様々な疾患により生じる歯痛 悪性リンパ腫や肺癌などにおいても歯痛が見られ る事がある。 次回から5回にわたり,非歯原性歯痛に対する診 察,検査,治療について解説していく。 文 献 1)非歯原性歯痛診療ガイドライン 日本口腔顔面痛学会雑 誌4⑵:0−88 http : //minds4.jcqhc.or.jp/minds/NDTA/ndta.pdf 2)「非歯原性(筋性・神経障害性・神経血管性)歯痛の診断 と治療のガイドライン」 http://kokuhoken.net/jdsa/data/file/guideline_toothache. pdf3)Sanner F Acute right-sided facial pain : a case report. Int Endod J. 43⑵:154−62
4)Simons DG, Travell JG, Simons LS Myofascial Pain and Dysfunction : The Trigger Point Manual Williams & Wilkins, 1999
5)Kim ST. Myofascial Pain And Toothaches Aust Endod J 31⑶ 106−110,2005
6)椎葉俊司,坂本英治,坂本和美,有留ひふみ,大宅永里 子,小林亜由美,城野嘉子,松本吉洋,吉田充広,仲西 修 筋・筋膜痛症患者121名の検討 日歯麻誌 33:416−421 7)JA van Vliet, P J E Eekers, J Haan, MD Ferrari :
Fea-tures involved in the diagnostic delay of cluster head-ache. J Neurol Neurosurg Psychiatry 74:1123−1125, 2003.
8)López-López J, Garcia-Vicente L, Jané-Salas E, et al. Orofacial pain of cardiac origin : review literature and clinical cases. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 17⑷:538− 544