異文化看護(Transculturnal Nursing)の視点を取り
入れた看護英語教材の開発
著者
山本 淳子, 加固 正子, 徐 淑子
雑誌名
学長特別研究費研究報告書
巻
14
ページ
11-12
発行年
2003-06
その他のタイトル
Development of English Teaching Material on
Transcultural Nursing
-11-新潟県立看護大学学長特別研究費 平成14年度 研究報告 異文化看護(Transcultural Nursing)の視点を取り入れた看護英語教材の開発 研究者(研究代表者)山本淳子1) 共同研究者 加固正子2)徐 淑子1) 新潟県立看護大学(看護基盤科学)1)(小児看護学)2)
Development of English Teaching Material on Transcultural Nursing
Junko Yamamoto, Masako Kako, Sookja Suli Niigata College of Nursing
キーワード:異文化看護(transcultural nursing), ESP,英語教材(English teaching material)
目的
看護英語教材の開発を考える上でESP-Engish for Specific Purposes(特別な目的のための英語)の視 点は重要である.あらゆる専門分野の中でも,とくに言語と密接に関わりのある異文化看護を取り上げることは意 義あることと考えた.そのために必要な教材を開発することを目的とした. 研究方法 1)日本の看護学生用の英語教材開発のために,実際に海外で異文化看護の授業に使用されている教科書, 異文化看護に関する文献・資料を収集し内容検討をした. 2)教材開発のために,看護学生が英語教育求め る物を知るために新入生(有効回答76名)に対してアンケート調査を行った.作成に当たり渡邊1)を参考 に16項目とし,英語力・英語学習に対する意識 ESP授業の希望 ESP授業の内容の希望などを調査し た.アンケートは匿名で回答も提出も任意とした.英語能力とESPの希望の有無についての相関関係を見 るために汎用統計学パッケージx2検定を行った. 3)教材開発に必要な知識および素材・文献を求め,輿 文化看護学において先進国であるアメリカのシアトル・パシフィック大学看護学部(以下, SPU)の教授 5人・異文化看護を学習中の学生8人に聞き取り調査を行った. 結果 1)文献 日本国内で英語の教科書として使用されている看護学生用教科書を20冊(リーディング11冊 会話8 その他1冊)の内容を検討した.その結果,異文化看護を主題としている教科書は見つからなかっ た.英語教材の構成の参考にするために,外国(米国・英国)で出版されている異文化看護文献6冊の内 容を検討した項目の中でケーススタディ(以下,事例)に関する取り扱われ方について報告する. 構成について1-1)世界各国ごとに章立てをしてそれぞれの国の異文化理解を主題としている物 0冊 1-2 異文化理解が必要な項目(出産・育児・食事・ジェスチャーなど)ごとに章立てをしてその中に各国 の異文化に関する解説がされている物 5冊(Caring for Patients from Different Cultures2)他)
1-3)国ごと,項目ごとの章が並列されている物1冊(Transcultural Nursing3 )
事例について A)各章ごとに事例があり(1から2)がある物2冊(TransculturalNursing他) B)各章ごとに事例が多数(3以上)あり3冊(Culture and the Clhical Encounter^他)
C)内容すべてが事例で構成1冊(Caring for Patients from Different Cultures)
2)アンケート 県立看護大の新入生の英語レベルは低すぎず高すぎず,平均的な大学生の英語力を有している と思われる.半数以上の学生に英語に対する苦手意識が見られたが,苦手意識を持っ学生が特にESPに対して 意欲が低いというわけでもなかった.また英語力が高い学生が必ずしもESPを望んでいるということもあては まらなかった. .3)米国研修について シアトル・パシフィック大学(SPU)看護学科他で教授5人に対して聞き取り調査を行った 異文化看護授業の他に異文化看護の要素が様々な看護の教科に組み込まれていた.看護学生の選択科目には異 文化理解のために諸外国での看護研修も含まれていた.また精神科看護の授業においては,異文化看護に関 表1学生の偏差値とESP希望の有無の関係 n=71 表2 偏差値 n=75 E S P の希望 の有 無 計 希望しない 希望する 偏差値 55 以下 17 人 16 人 33 偏差値 55 以上 16 人 2 2 人 38 合計 3 3 人 3 8 人 7 1 偏 差値 有 効 値 7 1 欠 損 値 4 偏差値 の平均 値 5 2 . 6 偏 差値 の中央 値 5 5 . 0
-12-表3 英語苦手・得意意識とBP希望の関係 n=75 E SP の希望の有無 計 希望 しない 希望する 英語が得意 7 人 9 人 16 (2 1% ) 普通 8 人 7 人 15 (20% ) 不得意 19 人 25 人 44 (59% ) 合計 34 人 41 人 75 (100% ) 練した資料(雑誌・新聞の切り抜き,ジャーナルの 中の記事など)が教科書と併用して使われており準 備に多大な時間がかけられている.全課程の中でも 異文化看護が重要な位置を占めている説明を受け た.教陵陣から提供された資料も人種差別・多様な 背景を持つ患者への対処法・異文イ出動牢のための民 話・ビデオ教材など多岐にわたり,授業の内容の深 さが現れていた. 学生に対しては20・50歳代の8人にグループで話を聞いた.将来,現場で出会う様々な背景を持つ患者 のために,異文化を人種の問題としてではなく,人種差別・麻薬・アルコール中毒問題など多種多様な問題 も含めた人間理解という観点から,あらゆる状況にも対処できるような教育が提供されていた. 考察 1)日本で使用されている看護学生用英語教材で,異文化看護をテーマにしたものはない.これは日本の 特徴から考え,欧米ほど必要性がないためもあると考えられる.しかし国際化が都市部だけでなく地方にも 広がる現在,このテーマを学ぶことはますます意義が高まると予測できる.外国の文献では,国ごとの異文 化を個々に学ばせるというより,ユニバーサルな異文化問題を多角的な視野で学ばせる構成になっている傾 向が見られる.6冊の書籍のうち4冊は具体的な事例が中心である.このような具体的な事例を通して学習 することで内容理解が促進され,ひいては学生の英語力の向上につながることが期待できる.興味を持続さ せ魅力的な内容にするという意味においても国内外で収集した事例の素材を多用することは効果的である と考える.2)本学の学生のレベルは看護学生として全国的にも平均的であるが,苦手意識を持つ学生が44 人(59%)と過半数を占めている.しかしどのレベルにおいてもESPを希望する学生がそれぞれ約半数存在 する.英語が得意であるほどESPを希望する,英語が不得意であるほどESPは希望しないと立てた仮定 に反し,両方とも上記の関係において有意差はなかった.別の見方をすれば,看護知識も大学レベルの英語 も基礎段階にある一年次ですでに,半数以上の学生が,得意・不得意にかかわらずESPを望んでいるとも 言える.このことは,看護大学で英語を学習する以上,英語力と看護の知識をできるだけ吸収したいという, 学生たちの強い意欲の表れであると考え,その意欲に応える教材開発の必要性を感じる. 3)SPUでの実践のように多角的な視点で様々な異文化の知識を深めさせ,あらゆる状況に柔軟に対処する 態度を洒養する教育は日本でも重要性が高まるであろう.英語教育の枠組みのなかで異文化看護を考える以 上 理解しやすい基本的な英語教材の開発を念頭に入れるべきであると考察する. 結論 文献検討や本学の看護学生に対する調査結果・米国での聞き取り調査などを通じて,異文化看護の重要性 を認識しこのテーマに関する教材を開発することの意義を再確認した.学生の英語能力は平均的だが,苦手 意識を持つ割合も高いため,学生の興味をひく基礎的レベルの英語教材開発に努める必要がある.異文化理 解と外国語理解は密接な関わり合いがあるため,二つを結びつけることで相乗効果が上がることも期待でき る.今後は教材研究会の参加・専門家へのインタビューなどを通し,看護学生のための英語教材の開発を目 指していきたい. 文献 1)渡邊 容子.臨床看護婦の英語の必要分析 The LanguageTeacher. 1988; 22(7): 29-37.
2) Galanti, G. Caring for Padents from Different Cultures. Philadelphia- University of Pennsylvania Press; 1997.
3) Giger JN, Davidhizar RE. Transcultural Nursing. Missouri- Mosby; 1999.