日本と韓国の地方政府職員研修ガバナンス改革 : 自己マスタリー(personal mastery)を支援する制度レベルの改革を中心に
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(2) 枇浜国際経済法学第17巷第2・号 {2008年、12月). を備え,環境の変化に迅速に対応しつつ発展を続ける絃織であると定義するこ とができる:’)。なお,ピータL・センゲ(peter senge)によると,この学習す. る組織が成立するためにはt五つの要素,すなわち①あらゆる窺象を個々の部 分にとらわれず全体のシステムとして捉えるシステム思考(system thinlting),. ②自己能力開発に継続的に努力する自己マスタリー(personal mastery),③紐. 織競争組織環境などへの固定化されたイメージなどを改善していくメンタ ルモデルの改善(reVising menta1皿odel)T④共通したビジョンを形成する共有 ビジョンの確立(bui正ding shared vision),⑤共有ビジョンを達成するためにチー. ムが協働して能力を伸ばしていくチーム学習(team leaming)などが必須不可 欠であるとされる・Oe. このような学習する組織に関する譲論は1990年代に入って登場したもので あった%それまでは,主にリチャ・一ド・M・サイアー1・{Richard M. Cyert) とジェームズ・G・マーチ(James G. March)が提出した学習組織(organization. Iearnig)という概念,つまり組識が環境に適応するにあたって組識構成員の適 応を手段として活用するという概念を出発点としfi),組織学習に閥する議論が. 公共組織や経営組織の研究と閤連して展開されてきた。ところが,1990年代 に入り,とりわけ経営組織の研究において,その分析の視点を組織の学習から,. 学習する組織へと変え,より実践的な措営組織改革を強調する学習する組織と いう概念が提出された〒}。そして,その後,この概念は,経営紐織改革のみな. らず,公共組織改革に関連しても用いられることになったMe 実際,1997年頃から近年まで行われた日本の地方政府職員研修改革と,20e4 年から最近まで行われた韓国の地方政府職員研修改革には,地方政府を学習す る組織として改革するという考え方が組み込まれているといえる。その根拠と しては,日本の場合,たとえば}…1治省(現総務省)によって1997年11月28 Elに出された「地方自治・新1時代における人材育成基本方針策定指針」におい. て「学習拍風土づくり等の総合的取組の推進」という表現が用いられていたこ とmtそして韓国の場合、たとえば盧武絃政府の政府輩新地方分撞委員会(2008 180.
(3) 日本と{刺到の地方政府職貝研修ガバナンス改革. 年6月1日廃止)によって2004年10月22日に発表された「教育・訓練によ る公務員力量強化方案」において「公務員常1時能力開発体制の構築」という表. 現が入っていたことle)をあげることができる。つまり,日本においても韓国 においても,地方政府職員研修改革を進めるにあたって,地方政府を学習する. 組織として改革するという方針が,直接的には表明されていないものの,学習 する組識に関する議論において使われている「学習的風土づくり」tあるいは「常. 時能力開発」という表現を用いる形で間接的に表明されていたということであ る。ただ,現在のところ,日本と韓国において地方政府を学習する組織として 改革するという考え方は,学習する組織が成立するための五つの要素のうち,. 主に自己マスタリーと関連して議論されている。その理由は,自己マスタリー 以外の要素の場合,意識改革の側面と強く係わっているがゆえに.制度改革の レベルにおいて議論することが難しいことによると考えられる。. 本稿は,日本と韓国において行われた上記の地方政府職員研修改革が,地方 政府を学習する組織として改革するという考え方に基づくものであったという. 立場から,学習する組織の成立に係わる五つの要素のうちとりわけ自己マスタ リーに関連して,両国の地方政府職員研修改革がどのように具体化されたかを. 検討し,そして両国の地方政府職員研修ガバナンス,つまり地方政府職員研修 分野における集合的目標(collective goal)を達成することn)に係わる改革の. 特徴を明らかにしようとするものである。但し,ここで言う地方政府は,原則 的に区域(規模)が大きい地方政府,つまり日本の場合は,都道府県及び政令 指定都市,韓国の場合には特別市・広域市・道を指し,また地方政府職員は, 主に一般職職員を意味するということを断っておく。. 本研究が学習する組織の成立要素の一つに過ぎない自己マスタリーを中心に 分析を進めようとする理由は,学習する組織を構築する際に最も基本的な必要 条件が自己マスタリーであるということによる12,。ここで,誤解を招くことを. 避けるために一つ指摘しておきたいことがある。それは,本研究の場合.日本 の地方政府と韓国の地方政府のうち.どちらがより学習する組織であるといえ 181.
(4) 横浜国際経済法学第17巻第2習ト(2008年,12月). るか,あるいはどちらが学習する組織としてよりよい成果をあげているかなど を比較分析しようとするものではないということである。ある組織が他の組織 より学習する組織か否か,あるいは学習する組織としてのある組織の成果が学 習する組織としての他の組織よりよいか否かを比較する場合には,学習する組 織の成立に係わる五つの要素が相互に及ほす関係または影響を比較分析しなけ ればならない13)e本研究は,このような分析を射程に入れたものではないとい うことを断っておく。. 従来,日本と韓国の地方政府職員研修改革,あるいは地方政府職員研修ガバ ナンス改革などに潤しては,あまり比較研究がなされてこなかった!・t}。このよ. うな研究状況に鑑み,本研究は,とりわけ両国の地方分権改革の現状及び課題 を理解する新しい端緒を提供するであろうと考えられる。. 皿.分析の枠組み 本研究では,日本と韓国において自己マスタリーを支援するために行われた. 制度レベルの改革を検討するにあたって,以下に見るようにt1.人事制度の 活用に基づく地方政府職員研修改革や,2.地方政府職員研修における中央政府 と地方政府の関係という二つの視点を用いて分析の枠組みを構成する。. 1.人事制度の活用に基づく地方政府職員研修i改革. 自己マスタリーの場合,二つの要因によって成り立つとされる1「・)。その二. つの要因とは,組織構成員自身がどうありたいかというビジョンと現実の姿 との間にあるギャップ,いわゆる「クリエイティブ・テンション(creative tention:創造的緊張)」1fi)を認識し,成長に向けた努力をすることと,そうし. た組織構成員の努力が日常的に行われるうる環境を整えることである。それゆ え,地方政府を学習する組織として改革するための地方政府職員研修改革は, 182.
(5) 日本と韓国の地方政府職員研修ガバナンス改革. それが自己マスタリーを支援する制度レベルの改革と関連する場合,上記の二 つの要因に焦点をおく必要があるといえる。. 通常,自己マスタリーを支援する制度レベルの改革としては、研修制度及び 組織の再編,人事制度の活用,情報伝達システムの再構築などがとりあげられ る1%研修制度及び粗織の再編は,クリエイティブ・テンションを認識した組 織構成員に対して自己のビジョンを追求することを支援することに係わる。一 方,人事制度の活用は,組織構成員がクリエイティブ・テンションを認識・維 持し,自己能力開発に取り込むことを可能にするために,入事制度,つまり配 置・移動,ジョブローテーション,人事評価,昇進などに係わる制度を活用す ることを意味する。但し,この場合の人事制度は,能力や業績を重視すること. を前提にしたものである。他方,情報伝達システムの再構築は,組織構成員が 自己のビジョンを再検討し,クリエイティブ・テンションを維持することを可 能にするために,組織がおかれている状況を正確に伝えることと関係をもつ。. <図一1> 自己マスタリーを支援する包括的な制度レベルの改革. 〆. 巨住勾度扶び」11ほ胡†}編. 入革刊ltの」刮旦. \ {k;EG…1吏ンスアムロF}情矯. このように見ると.<図一1>に示されているとおり.入事制度を活用する という視点に基づいて自己マスタリーを支援する制度レベルの改革を行うこと. が,最も包括的な方法であるということが浮き彫りになる。その理由を三点に まとめると,次のとおりである。第一点は,研修制度及び組織の再編や,情報 伝達システムの再構築の場合,職員がクリエイティブ・テンションを認識した. 状態を前提に職員の自己能力開発を支援するものである一方でT人事制度の活 183.
(6) 横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年1.2月). 用の場合には,職員に対してクリエイティブ・テンションを認識させることを 前提に職員の自己能力闘発を支援するものであるということである。第二点は, 第一の理歯から,研修制度及び組織の再構築が最大の効果を生み出すためには,. それが人事制度を活用することと結び付いて設計される必要があるということ である。第三点はt人皐制度が一種の情報伝達システムとしての機能も有して いるだけに、人事制度を適切に活用することは情報伝達システムの再構築効果 も期待できるということである。こうしたことから,稲継裕昭が主張している. とおり,人材育成のために入事制度を活用すべきであるという考え方は強い説 得力をもっているといえるlts)。. ただ,自己マスタリーを支援する制度レベルの改革を進める挺子として人事. 制度を活用するとしても,考えうる具体的な方法や手段は様々であるe理論的 には,配置・移動,ジョブローテーション,人事評価,昇進などの人事制度の うち,一つの制度を活用することからすべての制度を最大限活用することまで 多岐にわたる。当然ながら,理想的には,すべての人事制度を最大隈活用する ことが最も望ましい。但し,これはt効用の極大化という目標を達成するため に最もよい手段を選択するという実質的合理性に基づいて行動する行為者を前 提に成立する19}。現実的には,ハーバート・A・サイモン(Herbert A Simon). が分析しでいるとおり,認知能力の限界に起因する限定合理性に基づいて行動 する行為者が,満足(satisficing)できる戦略を選択することによってt効用 の極大化という目標ではなく,高い優先順位の目標を達成していると見たほう が妥当である訓。そこで、自己マスタリーを支援するために人事制度を活用す る制度レベルの措置を講じる場合,限られた数の制度を活用するという手段や 戦略を使うことも想定することができる。そして,この場合,どのような手段 や戦略を活用するかという問題が提起される。. 本研究はr日本と韓国において,自己マスタリーを支援する制度レベルの改 革のために人事制度を活用することと閤連して,どのような戦略が採用された かを分析するものになるであろう。 1S4.
(7) 日本と蝉国の地方政府職口田印隻ガバナンス改革. 2.地方政府職員研修における中央政府と地方政府の関係. 自己マスタリーを支援する制度レベルの改革において,すでに述べたとお り,何らかの人事制度を活用する戦略を考える場合に重要な問題が一つ提起さ. れる。それは,研修制度の運営と人事制度の運営における中央政府と地方政府 の関係が如何なるものかという問題である。この問題が重要となる理由は,ど のような戦略が採用されるとしても,その戦略の突現方式に強い影響を及ぼす からである。. 一般的なレベルで言えば,中央政府と地方政府の関係に影響を及ぼす要素と しては,たとえばスティーヴン・R・リード(Steven R. Reed)が分析している とおり,権限または機能配分,財源配分,情報結果への影響.選挙結果への影響,. 政策内容.共同事業への利害関係の多少などがあげられる場合もあれば:1)t水. 平的政治競争モデルを提示した松村1岐夫が主張しているとおり,地方政府が国. 会議員を巻き込む中央政府への陳情型影響力があげられる場合もある当。とは いえ,中央政府と地方政府の関係に関する問題は,基本的に権限または機能配 分の問題であると考えられる。なぜなら,たとえ権限または機能配分を除く他 の要素が政策決定における中央政府と地方政府の関係に重大な影響を及ぼす可 能性があるとしても,その影響は法令に基づく中央政府と地方政府との間の権 限または機能配分を前提に作用するか,あるいは権限または機能配分の根拠と なっている法令の改廃によって追認されるからである。. 権限または機能配分の根拠を重視するこのような立場から,申央政府と地方 政府の関係を把握する場合に用いられる有用なモデルの一つが,天川晃によっ て提出されたく集権〉一く分権〉とく分離〉一く融合〉モデルである巳㌔〈集 権〉一〈分権〉は,中央政府との関係において,地方政府がその区域内の住民 の意思に従って,その意思を1ヨ律的に決定する範囲が狭いか(〈集権〉),あ. るいは広いか(〈分権〉)に係わる。一方,〈分離〉一く融合〉であるが.こ れは,地方政府がその区域内において.中央政府の行政機能を分担しないか(< IS「o.
(8) 横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年王2月). 分離〉〕.あるいは分担するか(〈融音〉)と欝連する廿したがって,車央政 麿と地方験麿の摺係は,〈集擁〉一く分擢〉とく分離〉一く融合〉を綴み金わ せることによってt懸つの翻蔀から把握することができる。 ただ,〈集擢〉一く分権〉とく分離〉一く融合〉モデルを撰いて.複数の蟹. 家を対象とした中央敷府と璽方敷麿の寵係を記薮し,それぞれの蟹家がく集 権〉オ㌔あるいiまく分擁〉かを論じる壕金には,留意すべき惑が一つある。そ. れは,芙撰によるく藁権〉一く分撞>tつまり地方酸欝がその区域爽の窪轟の 意悪に縫ってtその意悪を自麹麗に決定する範懸が薬いか{〈集謹≧〉き.ある いは広い毒・{〈分擢〉〕には.実{ま.麹方致欝がその琶蟻雍の琵翼の意遼に鑓ウ. て,その意慧を欝翼羅こ決定するシステム寮整っている蕊こ欝する「纏蟻鐵 の棄式垂簑暴鑓」につながる擬題志,地:ξ鍛轟夢システムを選じて慧轟羨定を餐 う範懸がどの程変毒・に孫わる「璽亥毒篭の婁質麓実嚢」iこ擾わる聾題iが含ま軽. ているということである弐この二つの翼選を、璽母霧念を嚢つて嚢え蕎謀t それぞれ違木鉦聾㊧言う地方栽欝がr彗嚢離自縫捧」穆糞蟄を5って挙る霞、 地戊「政駿が掴懸蟹丁蹟」垂こおいてど{窪窪度穆事嚢轟緩を喜して塾るか妻こ巽『感す. るといえる2㌔ところ穰顕翼iま.地亥欝篭{Z>欝式縫霧聾を塞準にLた轟会毒〈. 藁橦〉甑あるいはく登擢〉かの曇嚢と.鐘才遼譲母婁嚢聾婁轟を塞準≧こL.た. 場合Pt〈藁鐘〉熱あるい註く糞擢〉妻穀憂嚢が書ずし毒一i致Lな紅と箏うこ とで』ある26已. ここで一つ鐙簸しておきたいこと薮.’一盛毯違iき鐵寮璽式鍵tこ譲難き舞て駐 る褄麩霞璽家を聾蒙{こく集議〉か.毒る塾誌く憂轟〉毒㌔さき≧こよ聾く嚢嚢〉. 籔璽、毒轟瞬まよ聾く董}纏〉裏鍵壕量譲す蓋縫套t建i鷲藁準とLて委ま.璽違套 墓藝ど饅謹裏実嚢襲に実嚢さi},ilて恒る象r:}ま彗轟嚢殼璽ムこ註塾τぎ轟嚢轟轟. 事塞蓬懇を姦している塵運主彗嚢璽登璽ピ蟹を毒藷違こすると塾うこと章塾義こ 塾よう莚翼ると.嚢嚢緩}霧童を鑑襲童蓋繋套t辛託ぞ轟{震護嚢≧こお…鐘姦寧裏違. 轟と翼亥璽嚢露翼戴こ⊇響て,菱i羅嚢で墨義.〈薫嚢〉轟妻t毒萎霞まく愛議〉. 麺妻、さらに圭聾く薬轟書聾塾塾轟瞬ま圭彗く量嚢さ轟謹こ警嚢㌢るi襲撃と ユ藁.
(9) 日本と韓国の地方政府職員研修ガバナンス改革. しては,中央政府と地方政府の関係を規律する法令がt地方政府が担当してい る全体事務のうちどの程度の割合の事務を自治事務として認めているか,そし て申央政府による地方政府の自治事務への関与をどの程度許容しているかなど が重要となるといえる。. 〈集権〉一く分権〉とく分離〉一く融合〉モデルをこのような視点から見れ ばt地方政府職員研修改革、具体的には人事制度を活用する戦略に基づいて自 己マスタリーを支援する制度レベルの改革に関する国家間の比較を行う上で, 次の二つの示唆を引き出すことができる。. その一つは、〈分離〉一く融合〉を考慮する必要はなく,主に〈集権〉一く 分権〉を考慮すればよいということである。その理由としては,人事制度を活 用する戦略に基づいて自己マスタリーを支援する制度レベルの改革に係わる地 方政府の二つの事務,つまり地方政府による研修制度の運営と人事制度の運営 に係わる事務は,その性格上,地方政府の事務に係わるものであるということ をあげることができる。. いま一つは,地方政府による研修制度の運営と人事制度の運営に係わる中央 政府と地方政府の関係が,〈集権〉的か,あるいはく分権〉的か,さらによりく. 集権〉的か,あるいはよりく分権〉的かを比較するためには,中央政府が,地 方政府が担当している全体事務のうちどの程度の割合の事務を自治事務として 認めているか,そして申央政府による地方政府の自治事務への関与をどの程度 許容しているかなどのみならず,とりわけ申央政府が地方政府による研修制度 の運営と人事制度の運営に係わる事務にどのように関与しているかを考慮しな ければならないということである。. 本研究では,〈集権〉一く分権〉と〈分離〉一く融合〉モデルから引き出さ れるこうした示唆に基づいて,日本と韓国の場合,それぞれ地方政府による研 修制度の運営と人事制度の運営に係わる中央政府と地方政府の関係が如何なる ものであるかを考慮しつつ,両国において,人事制度を活用して自己マスタリー. を支援する制度レベルの改革を行うために採用された具体的な戦略が,どのよ 187.
(10) 横浜固際経済法学第17巻第2号(2008年12月). うな方式によって実現されたかを分析する。. m.改革前の状況 この章においては,日本と韓国において,改革が行われる前の地方政府職員 研修の実態についてまとめる。. i.日本 1)地方政府主導の研修体制 日本の地方政府職員研修体制は.①都道府県・政令指定都市レベルの地方政 府が独自的に行う研修,②申央政府,具体的には自治省の施設等機関の一つで ある自治大学校が行う研修,③市町村レベルの地方政府が共同で設置した市町 村職員中央研修所(市町村アカデミー)や全国市町村国際文化研修所(国際文 化アカデミー〕が行う研修,など主に三つの研修によって成り立っていたとい える。但し,注意すべきは,地方政府職員に対して研修を実施することは基本 的に地方政府の権限であり.自治大学校と,市町村職員中央研修所や全国市町 村国際文化研修所などが行う研修は,あくまで地方政府が独自的に行う研修を 補完するものであったということである。. 従来,日本における中央政府と地方政府の関係は,とりわけ地方自治の実質 的実現を基準にした場合にく集権〉的であったとされる。その根拠としては,. 地方政府が担当していた全体事務のうち,機関委任事務の占める割合につい て見た場合,都道府県において約80%であり,また市町村においては約30∼ 40%程度あったことm,申央政府が法令などを制定し,原則的には地方政府の 自治事務に属する事務について,中央政府の事務とする場合US)や処理方式な どを義務付ける揚合2°)があったこと,中央政府による地方政府への一一・一般的な. 関与方式の場合,2000年4月以前の地方自治法には助言・勧告と資料の提出 の要求(第245条),是正措置の要求{第246条の2)などに限られていたも 工88.
(11) 日本と韓固の地方政府職n研』曇ガパナンス改革. のの,中央政府が機閲委任事務に関する包括的指揮監督権(第150条と第151 条)に基づく認可権、訓令権,監視権、取消停止権などを背景に,事実上,地 方政府の自治事務に対しても強い影響力を行使していたこと:°)などがあげら. れる。但し,このようなく集権〉的な中央政府と地方政府の関係は,1999年7 月16日に「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法肇剖,つ まり地方分権一括法の公布によって地方19治法が改正された結果,大幅に緩和 されることになった。. さて、研修制度の運営に限って見れば地方政府は.地方分権一括法によっ て地方自治法が改正される前から比較的幅広い権限を有していたといえる。研 修制度の運営に関する地方政府の事務の場合,地方自治法に基づく機関委任事 務を除く地方政府の事務,すなわち公共事務,団体委任事務、行政事務といっ た自治事務のうち,公共事務に分類できるものであった。なお,地方政府にお ける研修制度の運営に関する事項を規律する地方公務員法には、中央政府が地 方政府による研修制度の運営に関与することを認める直接的な規定が設けられ ておらず,地方政府の職員に研修の機会が与えられなければならないこと(第. 39条第1項)や,地方政府職員に対する研修を任命権者である地方政府の長 が行うこと(同条第2項)などのみが定められていた。そして,地方公務員法 の場合,施行令なども存在していなかった。したがって,中央政府が地方政府 による研修制度の運営に関与する場合,その関与は,地方自治法が定めていた 一般的な関与方式に基づいて行われたと言ってよい。. とはいえ,地方政府職員を対象とする研修を地方政府のみが実施してきたわ けではない。中央政府,とりわけ自治省も,地方政府職員研修に対して一定の 係わりはもっていたeその一定の係わりとは,自治大学校が自治省令である自 治省設置法や自治省組織規則に定められた施設等機関の4・一.一つとして地方政府職. 員研修を実施するとともに,地方政府職員研修や地方自治等に関する調査と研 究を行ってきたということと,市町村職員中央研修所や全国市町村国際文化研 修所を設置・運営してきた財団法人市町村振興協会の所管官庁が自治省であっ Is{.
(12) 横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). たということである。このことを,自治大学校の校長,市町村職員中央研修所 や全国市町村国際文化研修所の学長が,すべて現・前職の自治省官僚出身者で あったことと関連付け,中央政府が地方政府職員研修に統制を行っているとい う見方もありうる。しかし,自治省の地方政府研修への係わりを,地方政府の. 長が有している職員研修に関する権限を制約するものとして見ることは難し い0. 1953年に設立された自治大学校の場合,地方政府,とりわけ都道府県が職 員研修を充実化するために申央研修機関の設置を要望していたことや,地方 政府が機関委任事務を担当していたことなどを背景に設立されたものであっ た:ll)。また,1987年に設置された全国市町村職員中央研修所や,1993年に設. 置された市町村国際文化研修所による地方政府職員研修の場合は,市町村が 1979年から市町村振興宝くじの収益金を活用することが可能になった結果, 市町村の発展を図るために必要な事業を行う財団法人全国市町村振興協会を設 立し,その事業の一環として実施してきたものであった:SZ)。注目すべきは,自. 治大学校とt市町村職員中央研修所や全国市町村国際文化研修所,そして地方 政府の職員研修所が,類似する研修プログラムを編成・実施することを避ける ために,相互間に役割分担を体系的に行っていたということである33)。自治大. 学校は,都道府県・政令指定都市などの幹部となる職員に対して高度の研修を 実施するという目的のもとで,少数のフルコース型の研修課程を設け,長期の 知識中心の研修を実施する形で都道府県・政令指定都市などの職員研修所の研 修と差別化を図っていた。これに対して,地方政府職員に対して短期の実務中 心の研修を実施する全国市IIIT村職員中央研修所は,多様な選択型の研修課程を. 設け,市町村が共同で実施することが適切な研修を行う形で都道府県・政令指 定都市などの研修所と役割分担を行っていた。そして,市町村国際文化研修所 の場合,地方政府職員のみならず,地方政府の国際化関連団体に対して国際化 と関連した研修を実施し,他の地方政府職員研修と区別される役割を行ってき た。. 190.
(13) 日本と韓国の地方政府職員研修ガパナンス改革. こうしたことから,日本においては,地方政府職員研修は,申央政府が一定 の係わりを有していたものの,基本的に地方政府を中心に行われてきたと言っ てよい。つまり,日本では,少なくとも法制度面においては、地方政府の長がT. 地方政府の行政組織規則や研修規定などに基づいて,あらゆる階層及び職位の 職員に対して研修を実施する権限が十分保障されていたと見ることができると いうことである。. 2)研修制度の運営と人事制度の運営における蓮携不足 従来,日本においては,地方政府が研修制度の運営を人事制度の運営と体系 的に結び付ける努力が十分ではないという指摘がなされてきたM)。つまり,地. 方政府は,たとえば職員が研修に参加したことを配置・移動,ジョブローテー ション,人事評価,昇進などに体系的に反映することがそれほどなければ,配 置・移動,ジョブローテーション,人事評価,昇進などを行った結果に基づい て体系的に研修計画及びプログラムを編成・実施することもあまりなかったと いうことである。. 日本の地方政府は,すでに述べたとおり,研修制度の運営について幅広い権 限を有していた。そこで,地方政府が研修制度の運営と人事制度の運営を連携 させる可能性があったか否かを考える場合,人事制度の運営における地方政府 の権限が問題となるが,地方政府は基本的に幅広い権限を有していたといえる。. 地方分権一括法の公布によって改正される前の地方自治法において,地方政 府による人事制度の運営に関する事務も,研修制度の運営に関する事務と同様 に,公共事務の一つであった。そして,地方政府における人事制度の運営に関 する事項を規律していた地方公務員法は,地方政府の長による職員の任命.休 職,免職及び懲戒等に関する権限を規定し(第6条第1項),また職階制、給与,. 勤務条件等に関する事項を条例で規定すること(第23条第2項,第24条第6項) を定めており,地方政府に対して1幅広い権限を与えていた。したがって,中央. 政府が地方政府による人事制度の運営に関与する方式は,地方政府による研修 191.
(14) 横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). 制度の運営に関与する方式と同様であったといえる。このように見ると,地方. 政府が研修制度の運営と人事制度の運営を体系的に連携させることは十分可 能であったと言ってよい。. しかし,実際,研修制度の運営と人事制度の運営との体系的な連携に取り組 む地方政府は少なかったa地方公務員法には,地方政府:職員の任用が受験成績,. ’勤務成績その他の能力の実証に基づいて行わなければならないこと(第15条). や,地方政府の長が定期的に勤務成績評定を行い,その結果に応じた措置をと. らなければならないこと(第40条第1項)が規定されていた。それゆえ,地 方政府が,たとえば勤務成績評定の一つの要素として職員の研修実績等を反映 する形で,研修制度の運営と人事制度の運営を連携させることも可能であった。. しかし,地方公務員法において勤務成績評定に関する規定が設けられていたに もかかわらず,そもそも本格的な勤務成績評定を行っていた地方政府が多いと. はいえなかった。たとえば,地方行政運営研究会第15次公務能率研究部会が. まとめた2000年2月付の「地方公務員の評価システムのあり方に関する調査 研究一勤務評価の現状と課題一」によると,都道府県及び政令指定都市レベル. の地方政府において,勤務成績評定を実施していた地方政府の割合は81%で あったが,そのうちすべての職員に対して勤務成績評定を実施している地方政 府の割合は31%に過ぎない状況であったai)。当然ながら.これは,地方政府に. よって,人事制度の運営結果に基づいて体系的に研修計画及びプログラムが編 成・実施されることも難しかったことを意味する。. 一方,地方政府職員が,自治大学校と,市町村職員中央研修所や全国市1可村 国際文化研修所などの研修を受けた実績等の場合も,地方政府が職員を対象に 独自に実施した研修の場合と同様に,人事制度の運営に反映されることはあま りなかった。なぜなら,地方政府職員がこれらの機関から受けた研修実績等を 人事制度の運営に反映するか否かという問題は,任命権者である地方政府の長,. つまり研修の実績等を人事制度の運営に反映することにあまり関心を払ってい なかった地方政府によって決定されることになっていたからである。そして, 192.
(15) 日本と韓国の地方政府職貝研修ガパナンス改革. 自治大学校と,市町村職員中央研修所や全国市1町村国際文化研修所なども,一. 応それぞれの設立趣旨に基づいて地方政府職員を対象とする研修を行っていた ものの,主に人脈づくりの場としての機能が高く評価される場合が多く:fi),そ. の研修計画及びプログラムは、地方政府が人事制度の運営に反映させることを 当然視するほど,効果の高いものとはいえなかった。. 3)職場外研修の重視 通常,地方政府職員研修には,職場研修,職場外研修,自己啓発等があると 言われる。ただ,目本の地方政府は,これらの研修のうち,職場外研ll多によっ て研修を行う傾向が強かった37)。つまり,地方政府は,職場研修,職場外研修,. 自己啓発に係わる多様な研修プログラムを運営する権限を有していたにもかか わらず,独自の職員研修所を設け,職員に対して研修を実施するか.あるいは 自治大学校と,市町村職員中央研修所や全国市1可村国際文化研修所などの研修 に職員を参加させるといった形で,研修制度を運営していたということである。. 地方政府によって職場外研修が重視されることになった背景としては,時代. 環境の変化に伴う組識形態の変化,IT化やNPMの進展,ルーチン業務の減少 などがあり,職場研修の機能が形骸化されつつあること:・},地方政府が,自己. 啓発の場合,基本的に職員の意欲に基づくものであるという立揚から,−i時的. な支援,たとえば書籍の購入や資格取得への費用支援などの支援のみを行って いたこと3・)などがあげられる。しかし,地方政府が職場外研修を重視する最. 大の理由は,職場外研修の場合,職場研修や自己啓発と異なり,議会や市民に 対して説明が可能な有形の研修であったこと,研修予算を計測することが可能 であったこと,受講者数などに基づく研修実蘭を測定することが可能であった ことなどがあったとされる4a)。. しかし,地方政府職員研修が職場外研修を中心に行われることについては,. 次のような指摘がなされていた。それは,研修効果があまり期待できないとい うことであった・1t}。地方政府が独自に設置した研修所,自治大学校,市町村職. 193.
(16) 横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). 員中央研修所や全国市町村国際文化研修所などは,研修計画及びプログラムの 編成・実施において,その顧客が地方政府の職員ではなく.あくまで地方政府 であっただけに,研修に参加する職員のニーズより地方政府のニーズに基づい て行われる場合が多かった‘:’)。つまり、地方政府と中央政府は、地方政府職員. に対して研修を実施していたものの,その研修を主に職場外研修を中心に運営 する一方で,研修効果が高いとされる自己啓発には十分関心を払わない傾向が あったということである。. こうした傾向は,地方政府による研修制度の運営と人事制度の運営との連携 が十分ではなかったことと相挨って,地方政府職員研修の効果を制限する要因 として作用していたといえる。このように見ると,地方政府を中心に実施され ていた地方政府職員研修は,職員の自己マスタリーを支援する研修とはいえな いものであったといえる。こうしたことから,日本において,地方政府が職員. の自己マスタリーを支援するためにはt少なくとも制度レベルにおいて,研修 制度の運営と人事制度の運営を連携させるとともに,自己啓発を促す仕組みを つくらなければならなかったことが明らかになる。. 2.韓国 1)中央政府主導の研修体制. 韓国においては,地方政府職員研修改革が行われる以前は,地方政府職員研 修体制は,①特別市・広域市・道などの広域地方政が独自に行う研修,②中央 政府,つまりり行政自治部(現行政安全部)所属の地方政府職員研修所(現地 方行政研修院)が行う研修,③行政自治部長官が認める中央政府職員研修機関, 行政機関,民間機関が行う研修などによって成立していた。このように見ると,. 韓国の地方政府職員研修体劉は,外見上は日本の地方政府職員研修体制と類似 する面をもっていたといえる。しかし,韓国の地方政府は,目本の地方政府と 異なり,研修制度の運営に関して十分な権限をもっていなかった。一方,韓国 の中央政府は,地方政府職員研修に対して,地方政府が独自に行う研修を補完 194.
(17) 日本と韓国の地方政府職員研修ガバナンス改革. する意味の係わりではなく,あくまで法令に基づく権限の行使という意味の係 わりを有していた。. 韓国では,1991年に地方議会議員選挙が30年ぶりに復活して以来,1995年 には首長選挙が実施され,地方自治が本格的に行われた。したがって,韓国の 場合,比較的最近になって地方自治の形式的保障を基準にした場合のく分権〉 が始まったといえるeその後,現在に至るまで地方自治の実質的実現のための 取り組みが行われている。こうしたことは,韓国における中央政府と地方政府 の関係が,地方自治の実質的実現を基準にした場合,日本よりさらにく集権〉. 的であることを意味する。事実,韓国の場合,2002年の時点においても,地 方政府の全体事務のうちt機関委任事務を含む国家事務の占める割合が約76% に達していた4%また,中央政府が法令などを制定することによって,地方政 府の自治事務に属する事務を中央政府の事務とする場合だけでなく,画一的な 処理方式などを義務付ける場合も少なくなった9・t)。そして,中央政府による地. 方政府への一般的な閲与方式を定めていた地方自治法においては,機関委任事. 務に関する包括的指揮監督(第156条第1項及び第2項)のみならずt自治事 務に関する助言・勧告及び資料の提出の要求(第155条第1項),是正命令・ 取消・停止(第157条第ユ項),報告及び書類・帳簿・会計監査(第158条第 1項)などを認める規定が設けられていた。韓国では,中央政府と地方政府に. おけるこうしたく集権〉的な性格を緩和するという目的のもとで,1999年8. 月には中央行政権限の地方委譲促進に関する法律,そして2004年1月には5 年聞の時限法律である地方分権特別法が制定され,最近まで中央政府から地方 政府への行政権限の委譲が推進されてきた。しかし,中央政府が地方政府に権 限を委譲する方式は,日本の地方分権一括法のような法律を制定し,地方自治 法を含む関連法律を大幅に改正するというものではなく,地方自治法の改正を 最小化しつつ,関連個別法律の改正を通じて単位事務を移譲するというもので あった一t・」”・)。その結果,地方自治法には,中央政府と地方政府の権限または機能. 配分に関する集権的な性格が今日に至るまで維持されている。. 195.
(18) 横浜1到際経済法学第17巻第2号 (2008’i三12月). 韓国において,上記のような中央政府と地方政府の閲係におけるく集権〉的 な性格は,地方政府による研修制度の運営のあり方に現れていた。地方自治法. には,研修制度の運営に関する事務が57個の自治事務の一つとして例示(第 9条第2項)されていたが自治事務に関する地方政府の権限を他の法律によっ て制限できるという規定(第9条第2項)も設けられていた。その他の法律と しては,地方公務員法と地方公務員教育訓練法があった。地方公務員法には, 地方政府職員が法令による研修を受けることを義務付ける規定(第74条第1項). と,地方政府の長が日常業務を適じて職員研修を行う責務を有するという規定 (同条第3項)があったものの,地方自治に関する中央政府の長,つまり行政 自治部長官に対して地方政府職員研修に関する総合的な企画,調整及び監督に 関する権限を与える規定(同条第2項)も設けられていた。そして,地方公務 員教育訓練法には,行政自治部長官は地方政府職員研修に関する一般指針の策 定・運営なとS,地方政府職員研修に関する事務を総括するという規定(第3条 第1項)が設けられており,また行政自治部長官が地方政府職員研修に関する 一般指針を策定するとともに,それを地方政府の長に対して通知すること(第. 7条第1項)も定められていた。したがって,行政自治部は,地方政府職員研 修に強い権限を行使することを可能であり.毎年,教育訓練の目標,重点事項,. 計画,内容,運営などに関する地方公務員教育訓練指針を作成し,地方政府に 対して通知していた。. 一方,地方自治を所管する中央政府,すなわち行政自治部は,地方政府職員. 申央研修所4fi),つまり地方自治が中断されていた1965年9月に設置され,6 か月以上の長期研修,中問管理職である5級への昇進者を対象とする基本研修,. 共通の職務分野と特定の職務分野に必要な専門知識・技術に関する専門研修, 外国語研修,施策等に関する特別研修,外国公務員を対象とした研修など,様々. な研修を行っている所属機関を通じて,地方政府が独自に設置した職員研修所 に対して強い影響力を行使していた。地方公務員法には,行政自治部長官によ る地方政府職員中央研修機閲の設置が可能であるという規定(第75条第1項) 196.
(19) 日本と韓国の地方政府職貝研修ガバナンス改革. があり.Tまた地方政府職員中央研修機関の設置などに閲する事項を大統領令に. 委任するという規定(同条第3項)があった。そして,大統領令である行政自 治部とその所属機閲職制においては,行政自治部所属の地方政府職員中央研修 所の一般的な機能などが定められ,そしてこの大統領令に基づく行政自治部令 では,.地方政府職員中央研修機閤について,単に地方政府職員研修の実施T地. 方政府職員研修や地方自治制度に関する調査と研究を担当する機能のみなら ず,地方政府の職員研修所を指導・支援する機能などが規定されていた。なお.. 地方公務員教育訓練法には,5級以上の地方政府職員に対する研修を,行政自 治部所属の地方政府職員中央研修所が独占的に実施することに関する根拠規定 (第5条)が設けられていた。. さらに,韓国の場合,地方政府職員研修を実施することが可能な機関として は,行政自治部所属の地方政府職員中央研修所や地方政府の職員研修所以外に もt行政自治部長官が認める中央政府職員研修機関・行政機関・民問機関が係 わっていた。韓国において,あらゆる機関によって行われる地方公務員職員研 修は,地方公務員教育訓練法施行令に基づいて,主に新任者を対象とする基本. 研修,共逓の職務分野と特定の職務分野に必要な専門知識・技術に関する専. 門研修,通常6か月以上の長期研修,施策研修その他の研修などに分類(第 16条第1項)されていた。こうした研修のうち,後に詳しく述べるが,専門 研修は,行政自治部の部令である地方公務員評定規則の規定(第18条第2項) によると,共通専門研修と選択専門研修に分けられていた。共通専門研修は, 行政自治部所属の地方政府職員中央研修所や地方政府の職員研修所のほかに,. 中央政府職員研修機関が実施することが可能であった。そして,選択専門研修 の場合,行政自治部所属の地方政府職員中央研修所や地方政府の職員研修所の ほかに,申央政府職員研修機関,行政機関,民間機悶も行うことが可能であった。. ここで注目すべきは,地方公務員評定規則の規定(第18条第2項)によると, とりわけ選択専門研修に係わる研修課程を設置・運営しようとする行政機関と. 民間機関の場合は,行政自治部に申請・協議を行いt地方政府職員専門研修機 197.
(20) 横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). 関として指定を受ける必要があったということである47)。これはT行政自治部. が,選択専門研修を実施しようとする行政機関と民間機閥に対して影響力を行 使することができることを意味していた。. こうした韓国の地方政府職員研修体制と関連して一つ言及しなければならな いことは,行政自治部所属の地方政府職員中央研修所が行う研修,地方政府の 職員研修所が行う研修,中央政府職員研修機関,行政機関,民間機関が行う研 修においては,類似する研修プログラムが編成・運営されることがよく見られ るという指摘がなされていたことであるIS)。つまり,地方政府職員に対して研. 修を実施する機関の問において,それぞれの役割分担が円滑に行われていな かったということである。その最大の原因としては,綿密な役割分担がなされ ておらず,中央政府によって策定された地方公務員教育訓練指針に基づいて枠 付けされた研修プログラムが編成されていたことをあげることができる4D}。. 2)研修制度の運営と昇進制度の運営における形式的連携 従来,韓国では,地方政府職員研修制度の運営を地方政府に’よる人事制度の. 運営とりわけ昇進制度の導営と連携させる制度が確立していた。しかし,こ の制度に対しては,地方公務員研修を歪めているという批判がなされていた !SC’)。その最大の理由は,地方政府職員が昇進するためには,行政自治部所属の. 地方政府職員中央研修所が行う研修,地方政府の職員研修所が行う研修,中央 政府職員研修機関,行政機関,民間機関が行う研修に参加し,一定の科目を履 修するか,あるいは一定の点数以上をとることを要求していたものの,管理職. である4級以上職員への適用排除不十分な研修時間,昇進機会の不足などと いった問題点があり.研修が形式的に運営されている側面が強かったからであ る5㌔. ただ,地方政府が上記のような制度を主体的に運営していたわけではなかっ た。韓国において,行政自治部が地方政府職員研修体制において中心的な機能. を担っていたことについてはすでに述べたとおりであるが行政自治部は,地 198.
(21) 日本と韓国の地方政府職貝研修ガパナンス改革. 方政府による人事制度の運営においても大きな影響力を行使していたe韓国の 地方自治法には,人事制度の運営に関する事務も自治事務の一つとして例示(第. 9条第2項)されていた。また,地方公務員法においては,地方政府の長が 地方公務員法に基づいて,所属職員の任命,休職免職及び懲戒等を行う権限 を有するという規定(第6条第1項)が設けられていた。しかし,地方公務員 教育訓練法,地方公務貝法に基づく大統領令である地方公務員任用令,地方公 務員任用令に基づく行政自治部令である地方公務員評定規則などは,地方政府 の長による人事制度の運営に対して一定の制約を課していた。. 地方公務員法には,地方政府職員の研修成績等を人事管理面に反映させるこ. とを義務付ける規定(第74条第4項)があった。また,地方公務員任用令に は,入事委員会の構成や事務分掌、新規任用,特別任用,試補任用、配置・移 動,昇進,求職及び時間制勤務などに関する具体的な要件なとが定められてい た。この令は,地方政府の長が昇進の要件(主に勤務年数)を備えた{戻補者 を対象に勤務成績評定(50点満点),経歴評定(30点満点),訓練成績評定(20 点満点)を行い,昇進候補者順位決定に反映すること(第32条)を定めていた。. そして,地方公務員評定規則には,勤務成績評定,経歴評定、訓練成績評定に ついてきめ細かい規定が設けられていた。. 具体的には,地方公務員評定規則によると,勤務成績評定の場合,5級以下 の地方公務員を対象に実施するとともに,勤務成績60%,職務遂行能力30%,. 職務遂行態度10%を反映させること(第8条第4項,第16条第1項,第19条 第1項)になっていた。ただ,1999年からは4級以上の地方公務員に対して も目標達成度を基準に勤務成績評定を実施することになった。一方,5級以下 の地方公務員のみを対象に実施する経歴評定は,地方公務員の人事記録カード に基づいて専門職位などに,どの程度の期間勤務したかを基準に評定を行うこ. と(第14条第1項)になっていた。他方,訓練成績評定の場合は,地方政府 職員がT行政自治部所属の地方政府職員中央研修所,特別市・広域市・道の研 修所が実施した基本研修,行政自治部所属の地方政府職員中央研修所,特別市・. 199.
(22) }黄i兵i匡庄祭経ijif法学第17巻第2』号’ {2008=lf−12月). 広域市・道の研修所,行政自治部長官が認める中央政府職員研修機関が実施し た共通専門研修,行政自治部所属の地方政府職員中央研修所T特別市・広域市・. 道の研修所,行政自治部長官が認める中央政府職員研修機潤,行政機関t民問 機関が実施した選択専門研修などに参加し,一定の科目を履修したか,あるい は一定の点数以上をとったかに基づいて評定を行うこと(第18条第2項)になっ ていた。. こうしたことから,韓国では,法令に基づいて地方政府による研修制度の運 営と人事制度,とりわけ昇進制度の運営を一一.L応連携させていたといえる。一つ. 注意すべきは,この制度が,韓国において地方自治が復活されてから施行され ることになったわけではないということである。この1前度は,実は,1961年. に勤務成績評定や経歴評定が施行された直後の1963年から施行されてきた制 度であり甜),地方自治が復活してから地方公務員勤務成績評定規則に基づいて. 実施されていた。とはいえ,韓国においてはt地方政府による研修制度の運営 と人事制度,とりわけ昇進制度の運営が連携されていたにもかかわらず,地方. 政府職員の年平均研修時間は,訓練政策評定が適用されない管理職である2∼. 4級の場合は5∼8時問程度,そして訓練成績評定が適用される5級の場合にr も14時間程度に過ぎず,その効果に対しても疑問が提起されていたss)。こう. したことから,韓国では,研修制度の運営が昇進制度の運営に強い影響を及ぽ す仕組みがあったものの,それが形式的なものであるという指摘がなされてい たのである。. 3)職場外研修及び昇進点数重視 韓国の地方政府職員研修においても,日本と同様に,職場研修,職場外研修,. 自己啓発という研修体系のうちTその効果があまり高くないとされる職場外研 修が重視される傾向が強かった。したがって,地方政府,あるいは中央政府に よる地方政府職員に対する研修に対しては,職場研修や自己啓発を軽視してい るという批判がなされていたf’t)。ただ,韓国において,地方政府職員研修と関 200.
(23) 日本と韓国の地方政府職口研修ガバナンス改革. 連して職場外研修が重視される傾向は,地方政府によってつくられた部分もあ. れば法令,すなわち地方公務員法,地方公務員教育訓練法t地方公務員任用 令,地方公務員評定規則などによってつくられた部分もあった。. 韓国において,地方政府が,職場外研修を重視する背景には,日本の場合と. 基本的に同様であったといえる。しかし,韓国の地方政府が,日本の地方政府 と異なり,職場外研修を重視する理由には,もう一つの背景があった。それは、. 地方政府が,職員による研修実績等を昇進候補者順位決定に反映させなければ ならなかったということである。職場研修や自己啓発の実績を昇進候補者順位 決定に反映させることは,その研修の性格上,客観性に問題が提起される可能 性が高い。これは,たとえば地方公務員教育訓練法において,地方政府の長は. 職場研修を人事管理に反映することができるという規定(第15条第2項)が 設けられていたにもかかわらず,職場研修より職場外研修を重視する結果をも たらしたと考えられる。. 一方,行政自治部も,地方政府が職場外研修を中心に職員研修制度を運営す ることを助長していた。韓国の地方政府は,日本の地方政府と異なり,研修制 度の運営に関する権限が不十分であり,行政自治部が地方政府職員研修などに 基づいて策定した地方公務員教育訓練指針に従い,研修を実施していた。問題 は,このような行政自治部の地方公務員教育訓練指針が職場外研修を重視して いたことである。こうしたことは,たとえば訓練成蘭評定の場合t主に職場研 修と職場外研修,具体的には行政自治部所属の地方政府職員中央研修所.特別 市,広域市,道などの地方政府の研修所が行う研修,行政自治部長官が認める 中央政府職員研修機関,行政機関,民間機関が行う研修のみを訓練成績評定の 対象にしていたことからもうかがえる。したがって,地方政府が,職場外研修 を中心に研修制度を運営することは当然ともいえた。. こうした状況のなか,地方政府職員が,職場研修や自己啓発に取り組もうと するより,訓練成績評定の対象となる職場外研修に参加し,昇進候補者順位を 高めるために一定の科目を履修しようとするか,あるいは一定の点数以上をと 201.
(24) 横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). ろうとするのは自然であったeうまり,韓国においても,日本と同様に,職員 一人ひとりにクリエイティブ・テンションを認識させることを前提に職員の自 己能力開発を支援するという考え方,すなわち自己啓発を支援するという考え 方に基づく研修は行われていなかったということである。これは,韓国におい て,地方政府職員の自己マスタリーを支援するためには,制度レベルの改革を 行い,職場外研修を中心に一定の科目を履修するか,あるいは一定の点数以上 をとるという形で実施されている研修方式を,自己啓発を支援する研修方式へ と変える必要があったことを意味する。 ,. Iv.改革戦略 日本の場合,地方政府職員研修改革は長期間にわたって順次に行われた。一 方,韓国の地方政府職員研修改革は,全体像が示されてから短期聞に具体化さ れたものであった。この章では,こうした両国における地方政府職員研修改革. の違いを踏まえ,日本の地方政府職員研修改革の戦略を,初期,第1期t第2 期に,そして韓国の地方政府職員研修改革の戦略を初期,中間段階最終段階 に分けて,それぞれ検討する。. 1.日本. 1)初期:地方分権推進委員会の第2次勧告 日本において,地方分権や行政改革に伴う地方政府職員研修改革が始まった 時…期は,1995年5月に地方分権推進法が制定されるとともに,7月に内閲総理 大臣の諮問機関として地方分権推進委員会が設置されてからであった。地方分. 権推進委員会は,1996年から1998年にかけて5次にわたる勧告を行い,2000. 年に2回の意見を提出した後,2001年6月14日に最終報告を行った経緯があ る。このような地方分権推進委員会の活動によって,地方分権一括法が制定さ れ,地方自治法が大幅に改正された。権限または機能配分の注目する場合,代 202.
(25) 日本と韓国の地方政府職員研修ガバナンス改革. 表的な改正内容としては,自治事務(公共事務,団体委任事務、行政事務)と 機関委任事務という地方政府の事務が自治事務と法廷受託事務に再編されると ともに,機関委任事務に係わる中央政府の包括的指揮監督権が廃止されたこと や,申央政府の地方政府への関与も見直され,自治事務に対して助言及び勧告,. 資料の提出の要求,協議、是正措置要求などのみが認められる一方で,法廷受 託事務に関しては助言及び勧告,資料の提出の要求,協議同意,許可・認可・ 承認,指示,代執行などが定められるなど,中央政府による自治事務への関与 における法定主義が明文化されたこと等をあげることができる「ss)。. 地方分権一括法が制定される前,地方分権推進委員会による5次にわたる勧. 告の中で,とりわけ1997年7月8日付の地方分権推進委員会第2次勧告にはt 地方分権の推進に対応した行政体制整備の一環として,地方政府が徹底的な行 政改革に取り組む必要があり,中央政府と地方政府がとるべき措置が次のよう に示されていたSS)。それは,地方政府が自らの事務・事業,組織・機構,定員 管理等行政全般にわたる総点検を実施したうえで,行政改革大me 57)の改正及. び実施計画の策定,定員管理及び給与などの適正化,人材交流と人材育成,住 民への情報提供などに係わる具体策を講じ,そして中央政府によってそのため の指針,とりわけ行政改革大綱の改正及び実施計画の策定に関する指針が作成 される必要があるということであった。そして,地方政府職員研修改革は,こ うした勧告のうち,人材育成と関連して言及されていた。. ただ,地方分権推進委員会が,人材育成,っまり地方政府職員研修改革と関 連して勧告していた具体的な内容は,共同研修の開催等による研修機会の多様 化や研修レベルの向上,研修内容の充実等に努めることと,地方公共団体間の 人事交流,地方公共団体と民間の人事交流の円滑化に積極的に取り組むことな どだけであった・us)。したがって,地方分権推進委員会は,通常,地方政府職員. 研修改革と関連して言及されてきた極めて一般的な内容を勧告していたといえ る。こうしたことから,当時の地方分権推進委員会での議論においては,研修 制度及び組織の整備が強調されている一方で,ノ週[制度活用に関しては人事交. 203.
(26) 横浜固際経済法学第17巻第2晋(2008年13月). 流などが言及されており,地方政府職員研修改革のために人事制度を活用する という考え方が強く現れていなかったと見ることができる。. 2)第1期:地方政府職員研修改革への人事制度活用戦略 自治省は,地方分権推進委員会第2次勧告に基づいて具体案を検討する過程 において,地方政府職員研修改革を,単に研修制度及び組織の整備や,人事交 流などに限定せず,より総合的な視点から取り級おうとしたと考えられる。そ. れを示すのが,地方行政運営研究会第13次公務能率研究部会によってまとめ. られた1997年2月13日付の「地方公共団体職員の人材育成一分権時代の人材 戦略一」である{・ 9)。この報告藷:には,地方政府職員研修改革のためにはt能力. 開発に職員の主体的な取り組みが必要であり,職場ニーズに応じた職員の能力 開発が目的であるという認識から,とりわけ人事lii町度をも活用すべきであると. いう考え方が強く打ち出されていた。その具体的な内容は,次のとおりである fn).o. 一つは,従来における職員の能力開発体系,つまり自己啓発職場研修,職 場外研修によって構成される体系における研修手法を改革するということで あった。具体的にはT自己啓発を個人の自覚に任せるだけではなく,たとえば 自主研究グループ,通信教育等の奨励・支援,自己啓発度チェックシートの活 用,職員間の相互啓発の促進,自己啓発結果の顕彰・適正な評価等などを用い て組織的な支援を行うこと,職場研修を場当たり的に行わず、たとえば管理職 者による計画的な指導・助言及び職場研修実施の責務化,職場研修マニュアル の作成・配布等を通じて計画的に実施すること,職場外研修を与えられる研修. ではなく,たとえば職場ニーズに対応したプログラムの実施課題演習等の実 施,住民・民間企業人との共同研修の実施,派遣研修先の拡充等によって主体 的に参加する研修へと変えること,などであった。. いま一つは,職場のあらゆるステージを活用するということであった。これ は,地方政府職員研修改革を行う際に,首長のリーダーシップ,管理職者の指 204.
(27) 日本と韓国の地方政府職封研修ガバナンス改革. 導・助言,職場診断表の活用,人材育成強化月問の設定等を通じて意欲的な職 員を支援・評価するなど,自己啓発が促進されるような職場の学習的瓜土を醸 成すること、職務分担・責任の明確化,権限委譲、職員参加の目標管理,職場 での話し合い情報の共有等,仕事を遂行していく一連の過程を通して同時に人 材育成も図れるように仕事の進め方を積極的に工夫し,活用すること,適正な 人事考課(面接.直己申告等),ジョブローテーションの確立,経歴管理の実施,. 管理職レポート,挑戦加点,庁内公募制の導入等によって,職員が公務員とし て勤める全期問を通してその能力を系統だてて育成し,適材適所に配置して活 用していくことなど,従来とは異なる視点を採用するということであった。. 上記の考え方は,少なくとも制度レベルにおいて,地方政府を学習する組織 へと改革することや,その一環として自己マスタリーに係わる地方政府職員研 修改革を行うといった考え方につながるものであったともいえる。つまり,自. 治省における地方政府職員研修改革に関する議論は,地方分権推進委員会にお ける議論と異なり,地方政1音の職員一人ひとりを含む地方政府が環境の変化に. 迅速に対応しつつ発展を続ける組織,すなわち学習する組織になるために,成 長に向けた努力をする職員の取り組みが日常的に行われるうる環境を整えると いう考え方に基づいて,とりわけ人事制度を活用する戦略によって地方政府職 員研修改革を実施することを目指すものであったということである。;のよう. に見ると,自治省は,人事制度本来の機能の一つである有能な人材の内部蓄積. 機能,つまり業務に関連する高度な知識や能九スキルをもつ人材や.勤労意 欲と組織に対するコミットメントが高い人材を確保する機能を最大限活かすと ともにG1)Tそれに基づいて職員の自己能力開発を支援する研修制度及び組織の. 再編・創設や,情報伝達システムの再構築といった効果を引き出し,地方政府 職員研修改革を進めることを試みていたと言ってよい。. 地方政府職日研修改革のために人事制度の活用に力点をおくという自治省の. 戦略は,自治省が地方分権推進委員会第2次勧告に基づいて作成した1997年 11月14日付の「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進の 205.
(28) 横浜国際経済法学第17巻第2号(2008年12月). ための指針」においてG2),地方政府に対する人事育成基本方針策定指針を作成. することが盛り込まれた結果,人事育成基本方針策定指針に基づいて進められ ることになった。そして,その後,先に掲げた「地方自治・新時代における人 材育成基本方針策定指針」が出されたのである。こ.の指針には,「地方公共団. 体職員の人材育成一分権時代の人材戦略一」に記されていた内容が,そのまま 盛り込まれていた。. 自治省が人事制度を活用することを中心に地方政府職員研修改革を進めると いう戦略を採用した背景には、次の二つがあったと考えられる。第一は,地方 政府職員研修改革を単に研修制度及び組織の整備や,人事交流などに限定する. 場合,自己啓発職場研修,職場外研修といった研修のうち,とりわけ従来か ら研修効果が低いと指摘されてきた職場研修と職場外研修のみが改革の中心に なり,結局その改革が研職場研修や職場外研修のプログラムの調整に終わる可 能性が極めて高いということであった。つまり,自治省にとって,研修制度及 び組織の整備や,人事交流などは,職員一人ひとりにリエイティブ・テンショ ンを認識させることを前提に職員の自己能力開発を支援することにつながるも のではなかったということである。第二は,地方政府職員研修改革を,地方政 府の行政改革と関連付けることができるということである。人事制度を活用し て地方政府職員研修改革を行うことは,地方政府の研修施設などが十分でない 場合においても,また地方政府の予算が少ない場合においても、特に問題なく. 実施することが可能である側面を有していた。自治省は,まさにこの点に注 目していたと考えられる。「地方公共団体職員の人材育成一分権時代の人材戦. 略一」においてT地方政府の研修予算に閲して何の言及もなかったことは、そ の現われであったといえる。. 3)第2期:人事制度活用戦略から人事評価活用戦略へ ①人事制度活用戦略の新展開 日本では,地方分権一括推進法が制定・施行されてから,地方分権を実現す 206.
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